(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-15630(P2017-15630A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】計測器用支持装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20161222BHJP
【FI】
G01C15/00 105R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-134842(P2015-134842)
(22)【出願日】2015年7月4日
(71)【出願人】
【識別番号】509097677
【氏名又は名称】中村 貞美
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】中 村 貞 美
(57)【要約】
【課題】 取付対象部分の幅や太さ、或いは材質や形状などに応じて使用するクランプを変更し、様々な場所に対して設置できるように工夫した、レーザー墨出し器をはじめとした各種計測器用の支持装置を提供すること。
【解決手段】 計測器具の取り付け部を有すると共に、伸縮自在に形成された脚部ロッドと、当該脚部ロッドの下端側を保持する保持部材とからなり、当該保持部材には、土木建築物における構造部分又は躯体部分等を挟持する挟持部を備えたクランプを着脱自在に保持するクランプ取付け部と、当該土木建築物の構造部分又は躯体部分に当接して鉛直方向又は水平方向の傾きを調整するガイド部材と、が設けられている計測器用支持装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測器具の取り付け部を有すると共に、伸縮自在に形成された脚部ロッドと、
当該脚部ロッドの下端側を保持する保持部材とからなり、
当該保持部材には、土木建築物における構造部分又は躯体部分等を挟持する挟持部を備えたクランプを着脱自在に保持するクランプ取付け部と、当該土木建築物の構造部分又は躯体部分に当接して鉛直方向又は水平方向の傾きを調整するガイド部材と、が設けられている事を特徴とする計測器用支持装置。
【請求項2】
前記保持部材には、前記クランプ取付け部に保持されたクランプの挟持部が挟持する土木建築物の構造部分又は躯体部分と対向する面に、相互に離れた位置に突出する2つ以上のスペーサ部材が設けられている、請求項1に記載の計測器用支持装置。
【請求項3】
前記クランプは市販されているL型クランプ又はC型クランプであって、
前記クランプ取付け部は、当該クランプの握り部を着脱自在に保持すると共に、前記脚部ロッドと交差する向きに延伸する溝として前記保持部材に設けられている、請求項2又は3に記載の計測器用支持装置。
【請求項4】
前記クランプ取付け部は、市販のL型クランプの握り部を収容すると共に、当該L型クランプの当て座の当接面を前記ガイド部材と面一に保持する溝部として形成されている、請求項1〜3の何れか一項に記載の計測器用支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木や建築の現場などで使用される様々な計測器具を支持するための計測器用支持装置に関し、特に市販のクランプを使用して任意の場所に設置する事ができるようにした計測器用支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、土木や建設の現場では、構造部材の設置や組み合わせなどに際して、相互の距離を計測したり、水平や垂直方向を確認する為に様々な計測器具が使用されている。特に、コンクリート型枠の設置や、柱、梁、デッキ等の建築構造物の設置や組み付け時における水準や墨出し等の測量を行う際には、レーザー墨出し器等の各種測量器が使用されている。
【0003】
このレーザー墨出し器は、レーザーレベルやレーザー墨出し器とも称されて、水平方向あるいは鉛直方向に真っ直ぐな基準線(レーザー光)を照射できることができることから、例えば、建築現場などにおいて、天井の墨出し、ドア、窓の垂直出しなどの作業を行うときに利用されている。
【0004】
かかるレーザー墨出し器は、通常は三脚台の上にセットして使用されるが、これを安定して設置するためには、三脚をある程度広げるための設置スペースが必要であった。そしてこのような設置スペースを確保できない場合には、作業者が手で支えながら不安定な状態で使用しなければならず、作業効率条および計測精度上において少なからず問題を有するものとなっていた。
【0005】
そこで従前においては、このような土木や建築の現場で使用される計測器具(特にレーザー墨出し器)を、三脚以外で保持する事が種々検討されている。
【0006】
例えば特許文献1(特開2005−337888号公報)では、手で支える必要がなく、より正確に測量が行える測量器用支持装置を提供するべく、H形鋼のフランジ部に対して着脱自在にクランプされるクランプ機構を一側面に有する取付基板と、取付基板の他側面に、水平軸回りに回動調整自在な姿勢調整機構を介して取付支持されたL字形支持板と、レーザー墨出し器が着脱自在に取付可能とされると共に、L字形支持板の上面に高さ調整機構を介して取付支持された可動支持台とを備える測量器用支持装置が提案されている。
【0007】
また、特許文献2(特開2004−347518号公報)では、簡便に取り付けることができるレーザー墨出し器用のホルダーとして、柱部材を挟持する溝型断面になるクランプと、レーザー墨出し器を保持するとともに該クランプの本体基部の背面に回転可能に連結するベース部材からなるレーザー墨出し器のホルダーが提案されている。
【0008】
そして、特許文献3(実用新案登録第3101610号公報)では、被固定物の任意の位置への固定やレーザー墨出し器の支持が、簡単に確実に且つ安定的に行えるようにしたレーザー墨出し器用支持装置として、クランプ部と支持部とを備え、支持部は、基台と、ガイド筒と、昇降マストと、受台と、昇降用ハンドルと、ロックネジと、取付ネジとを有し、取付ネジを介してレーザー墨出し器を受台に装着可能で、昇降用ハンドルの回転操作でレーザー墨出し器を自在に昇降できるよう形成し、ロックネジの回転操作でレーザー墨出し器の昇降を停止できるよう構成したレーザー墨出し器用支持装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−337888号公報
【特許文献2】特開2004−347518号公報
【特許文献3】実用新案登録第3101610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の通り、従前においても土木や建設の現場で使用する計測器具、特にレーザー墨出し器を、三脚台を用いることなく、柱などにクランプして設置する為の支持装置やホルダーは種々提案されている。
【0011】
しかしながら、従来提供されているレーザー墨出し器の支持装置やホルダーは、何れも柱などの構造物に固定するクランプ部分を伴って構成されており、専用のものとして形成されていたことから、設置できる柱などの構造物の大きさや形状などが制限されるものとなっていた。
【0012】
そこで本発明は、従来のレーザー墨出し器の支持装置やホルダーにおける、柱などの取付対象部分に対する取付構造を見直し、取付対象部分の幅や太さ、或いは材質や形状などに応じて使用するクランプを変更し、様々な場所に対して設置できるように工夫した、レーザー墨出し器をはじめとした各種計測器用の支持装置を提供する事を第1の課題とする。
【0013】
また、当該レーザー墨出し器を使用する際、または使用した後においては、三脚が転倒する場合を考慮して、レーザー墨出し器を三脚台から取り外し、床や台などに置いておくことが行われていた。しかしながら、土木や建築現場などの渾然とした環境においては、不注意などによって、取り外したレーザー墨出し器を蹴ってしまったり、落下させてしまうこともあり、その結果、基準が狂い調整が困難な場合もあった。
【0014】
そこで本発明は、使用しない時でも、転倒や落下のおそれを無くして、更に望ましくは煩雑な作業現場においても目立つ状態で、簡易に保管する事の出来るようにした、レーザー墨出し器をはじめとした各種計測器用の支持装置を提供する事を第2の課題とする。
【0015】
更に、レーザー墨出し器などの計測器具を、柱などの土木建築物の構造部分又は躯体部分に固定する際、当該土木建築物の構造部分又は躯体部分が水平又は鉛直に設けられていれば、当該レーザー墨出し器の傾きを考慮する必要はない。しかしながら、建築物のリフォーム工事などでは、柱や梁などの構造部分自体が傾斜したり変形している場合もある。このような場合、傾斜した柱などにレーザー墨出し器をそのまま設置したとすれば、基準となる墨出し線自体が傾斜してしまう事が考えられる。
【0016】
そこで本発明は、土木建築物の構造部分又は躯体部分など、このレーザー墨出し器を設置する対象物が傾斜していても、これを補正できるようにし、更に望ましくは、当該土木建築物の構造部分又は躯体部分に対する傾きの調整を簡易に実施する事ができるようにした、レーザー墨出し器をはじめとした各種計測器用の支持装置を提供する事を第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では市販のクランプを使用して、土木建築物の構造部分又は躯体部分に取り付ける事ができるようにした、レーザー墨出し器等の計測器用の支持装置を提供するものである。
【0018】
即ち、本発明では、計測器具の取り付け部を有すると共に、伸縮自在に形成された脚部ロッドと、当該脚部ロッドの下端側を保持する保持部材とからなり、当該保持部材には、土木建築物における構造部分又は躯体部分等を挟持する挟持部を備えたクランプを着脱自在に保持するクランプ取付け部と、当該土木建築物の構造部分又は躯体部分に当接して鉛直方向又は水平方向の傾きを調整するガイド部材と、が設けられている計測器用支持装置を提供する。
【0019】
上記本発明にかかる計測器用支持装置に設置できる計測器具は、土木や建築の分野で使用される各種の計測器であって良く、レーザー墨出し器の他、回転レーザーレベル、オートレベル、デジタルセオドライト、トータルステーション、レーザー距離計等であっても良い。よって、これら計測器具の取り付け部は、設置する計測器具に応じて適宜形成する事ができ、多くの場合は、当該計測器具を設置する水平面または当該計測器具を取り付ける固定部を備えて形成する事ができる。
【0020】
かかる計測器具の取り付け部は、伸縮自在に形成された脚部ロッドの上端に設ける事ができ、その他にも当該脚部ロッドの側方に展開するように設ける事ができる。かかる脚部ロッドは、ラックとピニオンを伴って構成する事ができ、ハンドル操作によってピニオンを回転させることで、ラックが昇降するエレベータとして形成する事ができる。また、前記計測器具の取り付け部を当該脚部ロッドの上端に設ける場合には、当該取付回転部を水平方向に回動自在に形成する事ができ、更に当該計測器具の取り付け部を回動させることによって昇降できるように、当該計測器具の取り付け部を、ネジ溝を形成したシャフトによって脚部ロッドに取り付ける事もできる。
【0021】
前記保持部材は、上記した脚部ロッドの下端側を保持するものであり、後述するクランプ取付け部を備えている。かかる構成を伴う保持部材は、当該クランプ取付け部に保持したクランプによって、土木建築物における構造部分又は躯体部分に固定する為の基部として機能するものであり、塊状である他、フレーム構造に形成しても良い。
【0022】
また、上記保持部材には、クランプ取付け部を設けている。かかるクランプ取付け部は、土木建築物における構造部分又は躯体部分等を挟持する挟持部を備えたクランプを着脱自在に保持するものであり、保持するクランプの形状や構造に合わせて適宜設計する事ができる。但し、本発明にかかる計測器用支持装置は、その取付対象となる部分又は構造の幅や太さ、或いは材質や形状などに応じて、使用するクランプを適宜変更できるように構成する事が望ましい。保持するクランプを適宜変更可能とする事により、様々な場所に対して設置できる為である。そして、市販されているクランプを保持できるように構成する事で、当該計測器用支持装置に取り付けるクランプのバリエーションを広げる事ができる。
【0023】
かかるクランプ取付け部は、望ましくは市販されているクランプを保持できる構造であれば特に制限されるものではないが、当該クランプの交換が容易であり、更にグラつきを無くして確実に保持できるように構成するのが望ましい。よって、保持するクランプとして、市販されているL型クランプ又はC型クランプを使用する場合には、当該クランプ取付け部は、これら市販のクランプの握り部を着脱自在に保持すると共に、前記脚部ロッドと交差する向きに延伸する溝として、前記保持部材に設ける事が望ましい。更に、クランプ取付け部を溝状に形成し、L型クランプ又はC型クランプの握り部を収容するように構成した場合には、収容した握り部の脱離を阻止する為に、当該溝内に収容した握り部を保持する支持部を設ける事も望ましい。このような支持部としては、当該溝を開閉自在に動作するプレートなどによって実現する事ができる。
【0024】
上記本発明にかかる計測器用支持装置において、前記クランプ取付け部は、特に望ましくは市販のL型クランプの握り部を収容する溝として形成する。かかるL型クランプは、握り部が直線状であることから、アーム杆が直線状にスライド移動する事ができ、よって柱や梁などの側面を挟持するのに適しているためである。また、かかるL型クランプの握り部は真っ直ぐに形成されていることから、前記クランプ取付け部を溝として形成した場合には、握り部の任意の箇所を保持する事ができる。
【0025】
また、当該計測器用支持装置と共に使用するクランプがL型クランプである場合には、前記ガイド部材と共に、計測器用支持装置の鉛直または水平方向の傾きを調整するように機能する事が望ましい。そこで本発明では、前記クランプ取付け部は、市販のL型クランプの握り部を収容すると共に、当該L型クランプの当て座の当接面を前記ガイド部材と面一に保持する溝部として形成されている事が望ましい。
【0026】
そして上記のようにクランプ取付け部を設けた保持部材には、更に当該保持部材、更には計測器用支持装置の鉛直方向の傾きを調整するガイド部材を設ける。かかるガイド部材は、この計測器用支持装置を設置することになる土木建築物の構造部分又は躯体部分に当接するように構成されるものであり、当該保持部材から、土木建築物の構造部分又は躯体部分に向かって突出する板又は2つ以上の突起として構成する事ができる。即ち、この計測器用支持装置を設置する土木建築物の構造部分又は躯体部分は、多くの場合、柱や梁などの様に鉛直な面又は水平な面を具えている事から、当該鉛直な面または水平な面に当接することによって、この保持部材、更には計測器用支持装置の鉛直方向又は水平方向の傾きを調整する事ができるように形成される。
【0027】
また、このガイド部材は、保持部材に対する傾きを補正する傾き補正機構を備える事が望ましい。かかるガイド部材を前記の様に板状に形成した場合は、当該保持部材に対する板状のガイド部材の傾斜の向きを調整できる事が望ましく、またガイド部材を前記の様に2つの突起として形成した場合は、当該突起同士が並ぶ向きを調整できる事が望ましい。このようにガイド部材の傾きを調整できるように構成する事で、仮に当該計測器用支持装置を設置する当該土木建築物の構造部分又は躯体部分が傾いていたとしても、その傾きを補正して鉛直または水平な向きに補正する事ができる為である。特に、リフォーム工事などの様に建築年数が経っている建築物の場合には、その構造部分や躯体が傾斜や変形している場合もあり、このような構造部分や躯体に設置する場合には有効である。
【0028】
上記保持部材は、クランプを介して土木建築物の構造部分又は躯体部分に設置されることになる。その際、当該保持部材を土木建築物の構造部分又は躯体部分に当接させて設置する他、所定の間隔をあけて設置する事も望ましい。即ち、当該保持部材と土木建築物の構造部分又は躯体部分との間には、スペーサを設ける事が望ましい。かかるスペーサを設ける事により、クランプによる土木建築物の構造部分又は躯体部分の挟持を簡易に行う事ができ、また計測器具の取り付け部に設置した計測器具の動作領域を広く確保する事ができる為である。
【0029】
よって、上記本発明にかかる計測器用支持装置において、前記保持部材には、前記クランプ取付け部に保持されたクランプの挟持部が挟持する土木建築物の構造部分又は躯体部分と対向する面に、相互に離れた位置に突出する2つ以上のスペーサ部材を設ける事が望ましい。
【0030】
かかるスペーサ部材は、更に当該土木建築物の構造部分又は躯体部分に対する傾きを補正する為に、その設置面に対して進退自在に形成されるのが望ましい。例えば、当該スペーサをネジによって保持部材の設置面に固定することにより、ネジの進退具合によって、当該スペーサの突出加減を調整する事ができる。例えば、このスペーサ部材を、保持部材の設置面に水平方向に並べて設けた場合には、当該土木建築物の構造部分又は躯体部分に対する水平方向の角度を調整する事ができ、一方で当該保持部材を鉛直方向に並べて配置した場合には、当該土木建築物の構造部分又は躯体部分に対する水平方向の角度を調整する事ができる。したがって、この計測器用支持装置を設置する構造部分又は躯体部分が変形していたり、傾斜している場合には、このスペーサ部材の突出加減を調整することにより、その変形や傾きを補正する事ができる。
【発明の効果】
【0031】
上記本発明の計測器用支持装置によれば、当該土木建築物の構造部分又は躯体部分を挟持するクランプを着脱自在に保持するクランプ取付け部を具えている事から、設置する場所に応じた任意のクランプを用いて取り付ける事ができる。よって、柱などの取付対象部分の幅や太さ、或いは材質や形状などに応じて、使用するクランプを変更し、様々な場所に対して設置できるように工夫した、レーザー墨出し器をはじめとした各種計測器用の支持装置を提供することができる。
【0032】
また、本発明にかかる計測器用支持装置は、市販のクランプを使用して、柱や梁などの高所に設置する事ができる為、従前における三脚を不要とする事ができる。したがって、土木や建築現場などの渾然とした環境であっても、不注意などによって、取り外したレーザー墨出し器を蹴ってしまったり、落下させてしまうことが無くなり、目立つ状態で、簡易に保管する事の出来るようにした、レーザー墨出し器をはじめとした各種計測器用の支持装置を提供することができる。
【0033】
更に、本発明にかかる計測器用支持装置は、土木建築物の構造部分又は躯体部分に当接して鉛直方向又は水平方向の傾きを調整するガイド部材を具えている事から、建築物のリフォーム工事などの様に、柱や梁などの構造部分自体が傾斜したり変形している場合であっても、これを補正することができ、当該傾きの調整を簡易に実施する事ができるようにした、レーザー墨出し器をはじめとした各種計測器用の支持装置を提供することができる。特に、保持部材に、2つ以上のスペーサ部材を設けた場合には、複雑な変形や傾きであっても、これを補正する事の出来る計測器用支持装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本実施の形態にかかる計測器用支持装置を示す斜視図
【
図6】スペーサ部材による傾き補正状態を示す右側面図
【
図7】桁に取り付けた状態の計測器用支持装置を示す(A)正面図、(B)背面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる計測器用支持装置10を具体的に説明する。
図1は本実施の形態にかかる計測器用支持装置10を示す斜視図であり、
図2は当該計測器用支持装置10を示す正面図であり、
図3は当該計測器用支持装置10を示す背面図であり、
図4は当該計測器用支持装置10を示す右側面図であり、
図5はガイド部材12により傾斜を補正する状態を示す正面図であり、
図6はスペーサ部材13により傾きを補正する状態を示す右側面図であり、
図7は桁80に取り付けた状態の計測器用支持装置10を示す(A)正面図、(B)背面図である。
【0036】
特に本実施の形態にかかる計測器用支持装置10は、特にレーザー墨出し器(計測器具)60を保持するように構成されており、L型クランプ20を組み付けて使用するように構成されている。特に本発明にかかる計測器用支持装置10は、このL型クランプ20をセットにして提供する事ができる。
【0037】
この実施の形態にかかる計測器用支持装置10は、L型クランプ20を着脱自在に保持する溝14を正面側に形成した保持部材11と、この保持部材11の背面側に設けられた脚部ロッド30とからなり、この保持部材11の側面には、正面から突出状に設けられたガイド部材12を設けると共に、当該保持部材11の正面側であって、上下方向の端部寄りには突出状にスペーサ部材13を設けている。このガイド部材12とスペーサ部材13とは、保持部材11との距離を調整できるように取り付けており、例えばネジによって取付け、ネジの進退によって保持部材11との距離を調整できるように設ける事ができる。これらガイド部材12及びスペーサ部材13の保持部材11に対する設置位置を調整できるように構成する事で、後述の
図5及び6に示す様に、当該計測器用支持装置10の傾きを補正する事ができる。
【0038】
保持部材11に設けられる溝14は、L型クランプ20の握り部21を収容する大きさに形成されており、正面側に出現する開口の近傍には、溝14内に収容したL型クランプ20を保持する支持プレート15が設けられている。この支持プレート15は、保持部材11の正面に沿って回動自在に軸支されており、溝14を塞ぐ状態において、溝14内に収容したL型クランプ20の握り部21を保持する事ができる。よって本実施の形態では、この溝14と支持部材によって、L型クランプ20の握り部21を着脱自在に保持するクランプ取付け部31を構成している。なお、支持プレート15は、溝14内に収容したL型クランプ20を保持するものであることから、これに変えて他の構成を伴っても良い。例えば溝14内にL型クランプ20を収容した状態において、溝14の壁面とL型クランプ20との間に嵌入する楔状部材を使用する事もできる。
【0039】
更に、このクランプ取付け部3114,15は、L型クランプ20の握り部21を、保持部材11に対して着脱自在に取り付ける事の出来る構造であればよく、例えば当該L型クランプ20を羅着するネジ等であっても良い。但し、このクランプ取付け部3114,15は、市販されているクランプを着脱自在に保持する事が望ましい。よって、前記の様にL型クランプ20の握り部21を収容する溝14部として形成する場合には、当該溝14の深さや開口幅を適宜調整できるように構成するのも望ましい。その為に、当該溝14には、その開口幅や深さを調整する板状の部材を嵌め込む様に構成する事もできる。更に、溝14の開口幅及び深さを同時に調整する場合には、断面凹状又はL字状に形成した長尺部材を使用する事も望ましい。また、その他の構成や部材によって溝14の深さは開口幅を調整できるように形成するのも望ましい。
【0040】
本実施の形態において、保持部材11の溝14に装着するクランプとして、L型クランプ20を示しているが、これに限らず、C型クランプ等の他のクランプを使用する事もできる。特に本実施の形態にかかるL型クランプ20は、長尺に形成された握り部21の先端側に当て座22が設けられており、握り部21には、その長さ方向に摺動自在にスライドアーム23を設けている。このスライドアーム23は、握り部21の長さ方向に移動可能であって、任意の位置において、少なくとも当て座22から離れる向きの移動を規制可能にするラチェットなどの移動防止機構を備えている。またこのスライドアーム23の先端側には、握り部21の伸長方向に進退自在に羅着された押圧杆24を具えている。したがって、このL型クランプ20は、柱70や梁などの構造物を、当て座22とスライドアーム23(更には押圧杆24の先端)とで挟持することで固定する事ができる。
【0041】
また、保持部材11の側面であって、前記L型クランプ20の当て座22が存在する側には、当該保持部材11の正面から突出するようにして、板状のガイド部材12を設けている。このガイド部材12は、
図2の正面図に示す様に、柱70などの構造物の側面に当接することにより、当該計測器用支持装置10の垂直方向の傾きを規制することになる。本実施の形態では、このガイド部材12は側面の上下2箇所にそれぞれ形成しているが、高さ方向に長い板状に形成しても良い。
【0042】
図2に示す様に、このガイド部材12が柱70などの側面であって、上下方向に垂直な面に当接することにより、当該計測器用支持装置10の上下方向、特にL型クランプ20の握り部21の延伸方向に沿う向きの傾斜を適正なものとする事ができる。但し、このガイド部材12は、保持部材11に対する設置距離を任意に調整できるように設けるのが望ましい。リフォーム工事などにおいては、柱70自体が傾斜している場合もあり、このような場合において、当該傾斜を補正する為である。
【0043】
即ち、
図5に示す様に、この計測器用支持装置10を取り付ける対象となる構造部分又は躯体部分が傾斜している場合には、保持部材11に対するガイド部材12の設置位置を調節することで当該傾斜を補正し、この計測器用支持装置10を鉛直に設置するものである。
図5では、柱70などの取付対象部分は、上方が左に傾いている状態であり、この傾きを補正する為に、下側のガイド部材12を保持部材11から離して取付けている。即ち、このガイド部材12によって、当該保持部材11の正面に沿う面内の傾きを補正することができる。なお、このガイド部材12における保持部材11に向かう面には、摩擦抵抗を増大させるべく、ゴムなどの緩衝材を設けるのも望ましい。また、当該ガイド部材12は、上下方向に離れて設けてあることが望ましい。柱70などに設置する際に、その傾きを極力なくすためである。よって、当該ガイド部材12同士の間隔を広く確保する為に、前記保持部材11は、直方体形状に形成されると共に、当該ガイド部材12を長辺側に並べて設ける事が望ましい。
【0044】
また、上記保持部材11の正面には、突出状態でスペーサ部材13を設けている。本実施の形態では、円錐台形状に形成したスペーサ部材13を、上下方向に2個づつ設置している。かかるスペーサ部材13は、金属や樹脂など各種の材料で形成する事ができるが、当該計測器用支持装置10を設置する構造部分又は躯体部分との摩擦抵抗を高め、また設置時の衝撃を和らげるために、ゴムを含有する樹脂で形成するのが望ましい。
【0045】
かかるスペーサ部材13は、
図4の部分透視右側面図に示す様に、取付対象となる柱70などに接して、当該柱70から伝わる振動を減衰させると共に、当該柱70との摩擦抵抗を増大させて、当該計測器用支持装置10の落下を阻止するものとして機能する事ができる。また、このスペーサ部材13は、当該保持部材11の正面に直交する向きの面内の傾斜を補正する為に使用する事もできる。
【0046】
図6は、このスペーサ部材13によって傾きを補正した状態を示す右側面図である。この
図6では、当該計測器用支持装置10を設置する柱70が左側に傾いている状態であって、この傾きを補正する為に、保持部材11正面の上側に設けたスペーサ部材13の突出幅を大きくしている。かかるスペーサ部材13は、例えばネジによって保持部材11に羅着すれば、当該ネジの進退によって、スペーサ部材13の突出幅を調整する事ができる。その結果、仮に当該計測器用支持装置10を設置する柱70が傾斜している場合であっても、当該保持部材11の正面に交差する向きの面内の傾きを補正して垂直に設置する事ができる。
【0047】
上記の様に柱70等に固定されるL型クランプ20を着脱自在に保持する保持部材11には、更に脚部ロッド30を設けている。この脚部ロッド30は長さ方向に伸縮自在であって、その上端側には、レーザー墨出し器60などの計測器具を取り付ける為の取付け部31を具えている。そしてその下端側を、当該保持部材11に固定している。本実施の形態では、
図3に示す様に、保持部材11の背面側に脚部ロッド30の下端側をU字ボルト32によって固定している。但し、この脚部ロッド30は、保持部材11に固定されていればよく、当該保持部材11に溶着によって一体化しても良く、更に保持部材11の上面に当該脚部ロッド30の下端側を内嵌する開口を設けて両者を一体化しても良い。
【0048】
特に、この脚部ロッド30は、保持部材11に対して任意の向きに取り付ける事ができるように構成するのが望ましい。即ち、
図1〜6に示す様に、L型クランプ20における握り部21の延伸方向と交差する向きに設置する他、
図7(A)に示す様にL型クランプ20における握り部21の延伸方向に沿う向きに設置できるように構成するのが望ましい。本実施の形態では、当該脚部ロッド30をU字ボルト32で固定している事から、
図7(B)に示す様に、L型クランプ20における握り部21の延伸方向に沿う向きで脚部ロッド30を固定するように、U字ボルト32の挿入孔を形成する事ができる。即ち、当該脚部ロッド30は、クランプ取付け部31に保持するクランプが挟持する向きに対して沿う向きにも、直交する向きにも設置できるように構成する事が望ましい。この様に形成すれば、縦方向に延伸する柱70のみならず、横方向に延伸する桁80に対しても設置する事ができる。
【0049】
また、この脚部ロッド30は伸縮自在に形成されている。本実施の形態では、当該脚部ロッド30にラックとピニオンを設け、ハンドル33を操作してピニオンギアを回動させることにより、ラックを設けた上側部分(クランプ取付け部31が存在する側)が上下昇降するように形成している。このように、脚部ロッド30を伸縮自在に形成することにより、当該脚部ロッド30の上端に設置したレーザー墨出し器60による水平高さを調整する事ができる。
【0050】
特に、本実施の形態にかかる計測器用支持装置10によれば、柱70などの取付対象部材に対して、任意の高さに設置する事ができ、更に脚部ロッド30は伸縮自在に設けられていることから、例えば内装クロスの上縁等の高所を墨出しする場合などにおいても、正確に計測する事ができる。
【0051】
なお、上記の実施の形態では、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更する事ができ、計測器具としてレーザー墨出し器60以外のものを使用したり、或いは上記した構成要素の何れかを他の構成要素と一体化して形成する事もできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上記本発明にかかる計測器用支持装置10は、土木や建築の現場などで使用される各種の計測器具を保持する為に利用する事ができ、従前における三脚に代わるものとして利用する事ができる。
【符号の説明】
【0053】
10 計測器用支持装置
11 保持部材
12 ガイド部材
13 スペーサ部材
14 溝
15 支持プレート
20 L型クランプ
23 スライドアーム
24 押圧杆
30 脚部ロッド
33 ハンドル
60 レーザー墨出し器(計測器具)
70 柱
80 桁