特開2017-157811(P2017-157811A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-157811(P2017-157811A)
(43)【公開日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】SOI基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20170810BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20170810BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20170810BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/265 Q
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-139399(P2016-139399)
(22)【出願日】2016年7月14日
(31)【優先権主張番号】201610120843.4
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516145552
【氏名又は名称】上海新昇半導體科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】肖徳元
(72)【発明者】
【氏名】張汝京
(57)【要約】      (修正有)
【課題】重水素ドープ層を備えるSOI基板の製造方法を提供する。
【解決手段】第1半導体基板を用意し、第1ウェハを形成するために第1半導体基板の上面で第1絶縁層を成長させ、第1絶縁層の上面から既定の深さまでドープ層を形成するために第1半導体基板にイオンビームを照射し、第2基板を用意し、第2ウェハを形成するために第2半導体基板の上面で第2絶縁層を成長させ、第1ウェハを第2ウェハに接合し、第1ウェハ及び第2ウェハを重水素雰囲気中でアニールし、第1ウェハの一部を第2ウェハから分離し、重水素ドープ層を第2ウェハ上に形成することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体基板を用意するステップと、
第1ウェハを形成するために前記第1半導体基板の上面に第1絶縁層を形成するステップと、
前記第1絶縁層の上面から既定の深さまでドープ層を形成するために前記第1半導体基板にイオンビームを照射するステップと、
第2半導体基板を用意するステップと、
第2ウェハを形成するために前記第2半導体基板の上面で第2絶縁層を成長させるステップと、
前記第1ウェハを前記第2ウェハに向い合わせで接合するステップと、
前記第1ウェハ及び前記第2ウェハを重水素雰囲気中でアニールするステップと、
前記第1ウェハの一部を前記第2ウェハから分離するステップと、
重水素ドープ層を前記第2ウェハ上に形成するステップと、を含む、
SOI基板の製造方法。
【請求項2】
前記イオンビームは水素イオンビームであり、前記水素イオンビームの加速電圧は1〜200kevであり、前記水素イオンビームのドープ量は1016イオン/cm〜2x1017イオン/cmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1ウェハを前記第2ウェハに向い合わせで200〜400℃で接合することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1ウェハを第2ウェハに接合するステップはさらに、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層を湿潤させ、前記第1絶縁層を前記第2絶縁層と接触させ、前記第1絶縁層を前記第2絶縁層上に接合するために前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層に加圧することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記重水素雰囲気の圧力は10〜1000トールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記重水素ドープ層のドープ濃度は1010原子/cm〜8x1018原子/cmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1ウェハ及び前記第2ウェハをアニールするステップはさらに、前記第1ウェハ及び前記第2ウェハを600〜1200℃まで加熱し、前記第1ウェハ及び前記第2ウェハを400〜600℃まで冷却することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1ウェハの一部を前記第2ウェハから分離した後に、前記第2ウェハを600〜1200℃まで再度加熱するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1ウェハ及び前記第2ウェハを再度加熱する時間は30分〜8時間であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
半導体基板と、
前記半導体基板の上面で成長させた絶縁層と、
前記絶縁層の上面で成長させた重水素ドープ層と、を備える、
SOI基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板及び半導体基板の製造方法、特にSOI(silicon on insulator)基板及びSOI基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの業界でシリコンウェハ片の代わりにSOI基板を使用して半導体集積回路が製造されている。SOI基板の使用には、ドレイン領域と基板との間の寄生容量が低下するという利点があるため、半導体集積回路の性能を改善できる。
【0003】
半導体デバイスの製造方法に関し、例えば、特許文献1は、水素イオンをシリコンウェハにドープし、イオンドープ層をシリコンウェハの既定の深さに形成する方法を提供している。次に、この水素イオンをドープしたシリコンウェハを別のシリコンウェハに結合させ、酸化ケイ素膜を2枚のシリコンウェハ間に形成する。次に、これら2枚のシリコンウェハを熱処理によりイオンドープ層で分離すると、単結晶シリコン膜をイオンドープ層上に形成できる。
【0004】
例えば、特許文献2は、基板成長物であるゲート酸化物を重水素雰囲気中でアニールする方法を提供しており、これによりゲート酸化物と基板との間のダングリングボンドを除去できる。しかしながら、この方法は極めて高い重水素圧力下で進めなくてはならないため、半導体デバイスの製造コストが上昇する。
【0005】
上記の従来技術に鑑みて、少なくとも上記の欠点を解決できる改善されたSOI基板製造方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5374564号明細書
【特許文献2】米国特許第5872387号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の目的はSOI基板及びその製造方法を提供することであり、このSOI基板は、ドレイン領域と基板との間の寄生容量を低下させるという利点を有し、またSOI基板の製造コストを削減できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本願は、SOI基板の製造方法を提供する。
本方法は、第1半導体基板を用意し、第1ウェハを形成するために第1半導体基板の上面で第1絶縁層を成長させ、第1絶縁層の上面から既定の深さまでドープ層を形成するために第1半導体基板にイオンビームを照射し、第2半導体基板を用意し、第2ウェハを形成するために第2半導体基板の上面で第2絶縁層を成長させ、第1ウェハを第2ウェハに接合し、第1ウェハ及び第2ウェハを重水素雰囲気中でアニールし、第1ウェハの一部を第2ウェハから分離し、重水素ドープ層を第2ウェハ上に形成することを含む。
【0009】
本願はさらにSOI基板を提供し、SOI基板は、半導体基板と、この半導体基板の上面で成長させた絶縁層と、この絶縁層上で成長させた重水素ドープ層とを備える。
【0010】
以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むことで、実施形態例がより容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態によるSOI基板の製造方法のフローチャートである。
図2A】SOI基板の製造プロセスの断面図である。
図2B】SOI基板の製造プロセスの断面図である。
図2C】SOI基板の製造プロセスの断面図である。
図2D】SOI基板の製造プロセスの断面図である。
図2E】SOI基板の製造プロセスの断面図である。
図2F】SOI基板の製造プロセスの断面図である。
図2G】SOI基板の製造プロセスの断面図である。
図2H】SOI基板の製造プロセスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示及びその利点をより完全に理解するために、ここで添付の図面を参照しながら以下の説明に入るが、同様の参照番号は同様の特徴を示す。当業者ならば、本明細書に記載のものを含めて、実施形態例を実行するための他の変化形があることがわかる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態によるSOI基板の製造方法及びこの製造方法のステップを示したものであり、以下の各ステップを含む。
ステップ101(S101):第1半導体基板を用意する。
ステップ102(S102):第1ウェハを形成するために第1半導体基板の上面に第1絶縁層を形成する。
ステップS103(S103):水素をソースガスとして使用し、第1絶縁層の上面から既定の深さまでドープ層を形成するために、第1半導体基板に水素イオンビームを照射する。
ステップ104(S104):第2半導体基板を用意する。
ステップ105(S105):第2ウェハを形成するために第2半導体基板の上面に第2絶縁層を形成する。
ステップ106(S106):第1ウェハを第2ウェハに向い合わせで接合する。
ステップ107(S107):第1ウェハ及び第2ウェハを重水素雰囲気中でアニールする。
ステップ108(S108):第1ウェハの一部を第2ウェハから分離する。
ステップ109(S109):重水素ドープ層を第2ウェハ上に形成する。
ステップ110(S110):第1ウェハの分離部を再使用する。
【0014】
SOI基板の製造方法をより具体的に説明するために、図2A〜2GにSOI基板の製造プロセスの断面図を示す。
【0015】
第1ステップについて図2Aを参照する。第1半導体基板100を用意し、第1半導体基板100の材料はIV族、SiGe、III−V族化合物、III族−窒素化合物又はII−VI族化合物になり得る。一実施形態において、第1半導体基板100の材料は単結晶シリコンである。別の実施形態において、第1半導体基板100の材料はSiGeであり、ゲルマニウムの重量パーセントは5〜90%である。
【0016】
次のプロセスについて図2Bを参照する。第1ウェハ106用に第1絶縁層104を第1半導体基板100の上面102に形成し、第1絶縁層104の材料は二酸化ケイ素、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含み得る。一実施形態において、第1絶縁層の材料は二酸化ケイ素であり、第1絶縁層104の厚さは0.1〜500nmである。
【0017】
次のプロセスについて図2Cを参照する。水素又は重水素をソースガスに使用し得て、また電界効果によりソースガスのプラズマを発生させることができる。ソースガスのイオンビームは、プラズマのイオンの使用により発生させ得る。
【0018】
一実施形態において、水素をソースガスに使用し、第1絶縁層104の上面110から既定の深さHまで水素ドープ層112を形成するために、第1ウェハ106に水素イオンビーム108を照射する。既定の深さHは、水素イオンビーム108の加速エネルギー及び水素イオンビーム108の入射角により制御し得て、水素イオンビーム108の加速エネルギーは加速電圧及びドープ濃度により制御し得る。一実施形態において、既定の深さHは0.01〜5μmであり、水素イオンビーム108の加速電圧は1〜200keVであり、水素イオンビーム108のドープ量は1016イオン/cm〜2x1017イオン/cmである。
次のステップについて図2Dを参照する。第2半導体基板200を用意し、第2半導体基板200の材料はIV族、SiGe、III−V族化合物、III族−窒素化合物又はII−VI族化合物になり得る。一実施形態において、第2半導体基板200の材料は単結晶シリコンである。
【0019】
次のプロセスについて図2Eを参照する。第2ウェハ206用に第2絶縁層204を第2半導体基板200の上面202で成長させ、第2絶縁層204の材料は二酸化ケイ素、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムを含み得る。一実施形態において、第2絶縁層204の材料は二酸化ケイ素であり、第2絶縁層204の厚さは0.05〜10nmになり得る。
【0020】
次のステップについて図2Fを参照する。第1ウェハ106を第2ウェハ206に向い合わせで接合する。一実施形態においては、第1ウェハ106を第2ウェハ206に親水性接合法で接合し、第1ウェハ106を第2ウェハ206に200〜400℃で接合する。
親水性接合法の詳細なステップにはさらに、第1絶縁層104及び第2絶縁層204を湿潤させるステップと、湿潤した第1絶縁層104を湿潤した第2絶縁層204と接触させるステップと、第1絶縁層104を第2絶縁層204に緊密に接合するために第1絶縁層104及び第2絶縁層204に加圧するステップとが含まれる。
【0021】
次のステップについて図2Gを参照する。第1ウェハ106及び第2ウェハ206を重水素雰囲気中でアニールする。一実施形態において、重水素雰囲気の圧力は10〜1000トールであり、アニールプロセスは、第1ウェハ106及び第2ウェハ206を600〜1200℃まで加熱し、第1ウェハ106及び第2ウェハ206の加熱時間は0.5〜8時間であるステップと、第1ウェハ106及び第2ウェハ206を400〜600℃まで冷却し、第1ウェハ106及び第2ウェハ206の冷却時間は30〜120分であるステップとを含む。第1ウェハ106及び第2ウェハ206のアニール後、水素ドープ層112は複数の重水素ドープバブル300に変化する。
【0022】
次のステップについて図2Hを参照する。重水素ドープ層400を形成するために、第1ウェハ106の一部を第2ウェハ206から分離し、重水素ドープ層400は第1絶縁層104に接合され、水素又は重水素発生バブル300はこの重水素ドープ層400内にある。ウェハの分離はバブル300の領域で起きやすい。重水素ドープ層400の重水素濃度は1010原子/cm〜8x1018原子/cmである。
【0023】
第1ウェハ106の分離部をさらに化学機械研磨(CMP)で処理し、清浄化すると、コスト削減のために第1ウェハ106の分離部を再使用し得ることは注目に値する。重水素ドープ層400に接合された第2ウェハ206はさらに600〜1200℃まで加熱し得て、第2ウェハ206の加熱時間は30分〜8時間である。
【0024】
ダングリングボンドは高い活性を有することから、捕獲中心が発生して電子が正孔と再結合する場合がある。結果的に、ホットキャリア効果に対する半導体デバイスのレジリエンスが低下する。
本発明は、半導体デバイス製造用のSOI基板を提供する。このSOI基板は、半導体デバイスのドレインとソースとの間の寄生容量を低下させることができ、SOI基板にドープされた重水素原子(又は重水素イオン)は、SOI基板上でのゲート酸化物の成長後、ゲート酸化物とSOI基板との間の界面へと拡散し得て、重水素原子(又は重水素イオン)は半導体原子に共有結合してダングリングボンドを排除し且つホットキャリア効果に対する半導体デバイスのレジリエンスを上昇させる。さらに、このSOI基板の製造方法は極めて高い重水素圧力を必要とせず、SOI基板の製造コストを大幅に削減できる。
【0025】
開示した原理にしたがった様々な実施形態について説明してきたが、これらの実施形態が単なる例として挙げられたものであり限定的ではないことを理解すべきである。したがって、実施形態例の幅及び範囲は、上記の実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、請求項及び本開示から生じる均等物のみにしたがって定義されるべきである。さらに、記載の実施形態は上記の利点及び特徴を備えたものであるが、出願された請求項の適用を、上記の利点の一部又は全てを達成するプロセス及び構造のみに限るものではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H