【実施例】
【0059】
(分析方法)
以下の実施例において、LC/MSによる分析は次の条件で行なった。
カラム:Inertsil ODS−4(GLセイエンス社製)、サイズ直径3.0mM×長さ250mM、40℃
移動層:2mM 酢酸アンモニウム水溶液(A)、2mM 酢酸アンモニウム含有メタノール溶液(B)、0−5分 5%B、5−35分 5−100%B、35−40分 100%B、流速0.5ml/分
検出:QSTAR Elite ESI quadruple time−of−flight(Q−TOF)MS instrument(AB Sciex社製)
【0060】
〔実施例1〕配列番号1のDNAをクローニングした放線菌によるトレハンジェリンの生産
K07−0510株を、酵母エキス1%、グルコース1%より成るYD培地で適当な温度(例えば27℃)で数日間培養した。培養後、得られた培養液より遠心分離により菌体を取得し、菌体より常法(モレキュラー・クローニング第2版)に従い染色体DNAを単離精製した。
【0061】
配列番号1の4つのオープンリーディングフレーム(orf)を便宜上、塩基配列番号の少ない方から、orfA、orfB、orfC、orfDと命名した。orfA〜Dの配列番号1における位置と機能は以下の通りである。
orfA(配列番号2:配列番号1の塩基番号1−828、エノイル−CoAハイドラターゼをコード)
orfB(配列番号4:配列番号1の塩基番号875−1900、3−ケトアシル−CoAシンターゼをコード)
orfC(配列番号6:配列番号1の塩基番号1905−2684、アシルトランスフェラーゼをコード)
orfD(配列番号8:配列番号1の塩基番号2681−3475、3−ケトアシル−CoAレダクターゼをコード)
上記4つの遺伝子を十分発現させるような組換え体プラスミドをPCR法〔Science,230,1350 (1985)〕を用いて下記方法により構築した。
【0062】
放線菌Polymorphospora rubra K07−0510株の染色体DNAを鋳型として、配列番号10に示した5’末端にPstI制限酵素サイト及びリボソーム結合配列を有するセンスプライマー、配列番号11に示した5’末端にStuI制限酵素サイトを有するアンチセンスプライマー及びTaq DNA polymerase(ロシュ・ライフサイエンス社製)を用い、DNA Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社製)でPCRを行うことによりorfA、orfB、orfC及びorfD(以下、「orfABCD」という)を発現させるDNAを増幅した。PCRは、95℃で30秒間、68℃で30秒間、72℃で4分間からなる反応工程を1サイクルと30サイクル行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。増幅されたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製し、制限酵素PstIとStuIとで消化することで、PstIとStuI処理orfABCDを発現させるDNAを含有するDNA断片(以下、「orfABCD含有DNA断片」という)を取得した。
【0063】
pOSV556t〔Nat.Chem.,3,338,(2011)〕を制限酵素PstIとStuIで消化し、PstIとStuI処理pOSV556t断片を取得した。上記で取得されたPstIとStuI処理orfABCD含有DNA断片をPstIとStuI処理pOSV556t断片と混合した後、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。
【0064】
該組換え体DNAを用い、E.coli Top10株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をアンピシリン100μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。該形質転換体より定法に従って組換えDNAを含むプラスミドを単離した。該組換え体DNAがorfABCDであることをDNA配列を決定することによって確認し、このプラスミドをpOSV556−orfABCDと命名した。
【0065】
pOSV556−orfABCDを常法によりE.coli ET12567/pUZ8002株〔Practical Streptomyces Genetics (2000)〕に導入し、カナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール25μg/ml、アンピシリン100μg/mlに耐性を示すE. coli ET12567/pUZ8002/pOSV556−orfABCD株を得た。さらに、pOSV556−orfABCDを常法によりE. coli ET12567/pUZ8002株から放線菌Streptomyces albus J1074株に接合伝達させることによりハイグロマイシン50μg/mlに耐性を示すStreptomyces albus/pOSV556−orfABCDを得た。
【0066】
Streptomyces albus/pOSV556−orfABCDを酵母エキス1%、グルコース1%からなる液体培地10ml中、27℃で1日間震盪培養し、20%トレハロース水溶液1mlを添加した後、さらに27℃で4日間震盪培養した。得られた培養液にエタノール10mlを加えて1時間撹拌した。次にその抽出液中のエタノールを減圧留去し、得られた水溶液に5mlの酢酸エチルを加えよく撹拌後、酢酸エチル層を回収した。濃縮乾固し、メタノール100μlに溶解させ、LC/MSで分析を行なうことでトレハンジェリンの生産を確認した(
図1)。
【0067】
〔実施例2〕配列番号4の塩基配列によりコードされた酵素タンパク質(orfB)の機能確認
3−ケトアシル−CoAシンターゼをコードする遺伝子(orfB)を十分発現させるような組換え体プラスミドをPCR法〔Science,230,1350(1985)〕を用いて下記方法により構築した。
【0068】
放線菌Polymorphospora rubra K07−0510株の染色体DNAを鋳型として、配列番号12に示した5’末端にNdeI制限酵素サイトを有するセンスプライマー、配列番号13に示した5’末端にXhoI制限酵素サイトを有するアンチセンスプライマー及びTaq DNA polymerase(ロシュ・ライフサイエンス社製)を用い、DNA Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社製)でPCRを行うことによりorfBを増幅した。PCRは、95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間からなる反応工程を1サイクルと30サイクル行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。増幅されたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製し、制限酵素NdeIとXhoIとで消化することで、NdeIとXhoI処理orfB含有DNA断片を取得した。
【0069】
pET−15b(ノヴァジェン社製)を制限酵素NdeIとXhoIで消化し、NdeIとXhoI処理pET15−b断片を取得した。上記で取得されたNdeIとXhoI処理orfB含有DNA断片をNdeIとXhoI処理pET−15b断片と混合した後、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。
【0070】
該組換え体DNAを用い、E.coli Top10株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をアンピシリン100μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。該形質転換体より定法に従って組換えDNAを含むプラスミドを単離した。DNA配列を決定することにより、配列番号4に記載の塩基配列が得られたことから、DNA該組換え体DNAがorfBであることを確認し、このプラスミドをpET−15b−orfBと命名した。
【0071】
pET15−b−orfBを常法によりDE3を有するE.coli BL21(DE3)株(ノヴァジェン社製)に導入し、アンピシリン100μg/mlに耐性を示すBL21(DE3)/pET15−b−orfB株を得た。BL21(DE3)/pET15−b−orfB株をアンピシリン100μg/mlを含むLB液体培地200ml中、37℃で培養し、600nmの濁度が0.5に達した時点で、培養液を2時間冷蔵した後、イソプロピルチオガラクトシドを終濃度0.5mMになるように添加した。さらに18℃で16時間培養した後、遠心分離(9000rpm、2分間)によって培養上清を除いた。この菌体を洗浄緩衝液〔20mMトリス塩酸(pH8.0)、100mM NaCl、50mMイミダゾール、10%グリセロール〕10mlに懸濁し、90mg/mlフェニルメチルフルフォニルフルオライド(PMSF)を10μl添加し、超音波破砕機(和研薬社製)を用いて氷冷しつつ破砕した。得られた菌体破砕液を遠心分離(10,000rpm、20分間、4℃)にかけ、上清を回収した。この細胞抽出液遠心上清をNi Sepharose 6 Fast Flow resin (GE Healthcare社製)に通し、20mlの洗浄緩衝液で洗浄した。ついで溶出緩衝液〔20mMトリス塩酸(pH8.0)、100mM NaCl、500mMイミダゾール、10%グリセロール〕5mlを通塔し、溶出させた。溶出液をAmicon Ultra Centrifugal Filter(メルク社製)を用いて濃縮した。
【0072】
次に、得られた組換え酵素タンパク質(OrfB)がアセチル−CoAとメチルマロニル−CoAから2−メチルアセトアセチル−CoAの生成を触媒するかどうか以下の反応条件で調べた。100 mMリン酸緩衝液(pH7.5)、250μMアセチル−CoA、250μMメチルマロニル−CoA、2.5μgorfBを含む反応液100μlを調製し、27℃で16時間反応させた。メタノール100μlを添加して反応を停止させた後、LC/MSで分析を行なった。
【0073】
その結果、2−メチルアセトアセチル−CoAの生産が確認された(
図2)。この結果は、OrfBが、アセチル−CoAとメチルマロニル−CoAから2−メチルアセトアセチル−CoAの生成を触媒することを示しており、本酵素タンパク質が、3−ケトアシル−CoAシンターゼであることが確認された。
【0074】
〔実施例3〕配列番号8の塩基配列によりコードされた酵素タンパク質(orfD)の機能確認
3−ケトアシル−CoAレダクターゼをコードする遺伝子(orfD)を十分発現させるような組換え体プラスミドをPCR法〔Science,230,1350(1985)〕を用いて以下の方法により構築した。放線菌Polymorphospora rubra K07−0510株の染色体DNAを鋳型として、配列番号14に示した5’末端にNdeI制限酵素サイトを有するセンスプライマー、配列番号15に示した5’末端にXhoI制限酵素サイトを有するアンチセンスプライマー及びTaq DNA polymerase(ロシュ・ライフサイエンス社製)を用い、DNA Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社製)でPCRを行うことによりorfDを増幅した。PCRは、95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間からなる反応工程を1サイクルと30サイクル行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。増幅されたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製し、制限酵素NdeIとXhoIとで消化することで、NdeIとXhoI処理orfD含有DNA断片を取得した。
【0075】
pET−15b(ノヴァジェン社製)を制限酵素NdeIとXhoIで消化し、NdeIとXhoI処理pET15−b断片を取得した。上記で取得されたNdeIとXhoI処理orfD含有DNA断片をNdeIとXhoI処理pET−15b断片と混合した後、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。
【0076】
該組換え体DNAを用い、E.coli Top10株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をアンピシリン100μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。該形質転換体より定法に従って組換えDNAを含むプラスミドを単離した。DNA配列を決定することにより、配列番号8に記載の塩基配列が得られたことから、該組換え体DNAがorfDであることを確認し、このプラスミドをpET15−b−orfDと命名した。
【0077】
pET15−b−orfDを常法によりDE3を有するE.coli BL21(DE3)株(ノヴァジェン社製)に導入し、アンピシリン100μg/mlに耐性を示すBL21(DE3)/pET15−b−orfD株を得た。BL21(DE3)/pET15−b−orfD株をアンピシリン100μg/mlを含むLB液体培地200ml中、37℃で培養し、600nmの濁度が0.5に達した時点で、培養液を2時間冷蔵した後、イソプロピルチオガラクトシドを終濃度0.5mMになるように添加した。さらに18℃で16時間培養した後、遠心分離(9000rpm、2分間)によって培養上清を除いた。この菌体を洗浄緩衝液〔20mMトリス塩酸(pH8.0)、100mM NaCl、50mMイミダゾール、10%グリセロール〕10mlに懸濁し、90mg/ml PMSFを10μl添加し、超音波破砕機(和研薬社製)を用いて氷冷しつつ破砕した。得られた菌体破砕液を遠心分離(10,000rpm、20分間、4℃)にかけ、上清を回収した。この細胞抽出液遠心上清をNi Sepharose 6 Fast Flow resin (GE Healthcare社製)に通し、20mlの洗浄緩衝液で洗浄した。ついで溶出緩衝液〔20mMトリス塩酸(pH8.0)、100mM NaCl、500mMイミダゾール、10%グリセロール〕5mlを通塔し、溶出させた。溶出液をAmicon Ultra Centrifugal Filter(メルク社製)を用いて濃縮した。
【0078】
次に、得られた組換え酵素タンパク質(OrfD)が2−メチルアセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシ−2−メチルブチリル−CoAの生成を触媒するかどうか以下の反応条件で調べた。100mMリン酸緩衝液(pH7.5)、250μMアセチル−CoA、250μMメチルマロニル−CoA、500μM NADPH、2.5μg orfB(実施例2で取得)、0.8μg orfDを含む反応液100μlを調製し、27℃で16時間反応させた。メタノール100μlを添加して反応を停止させた後、LC/MSで分析を行なった。
【0079】
その結果、3−ヒドロキシ−2−メチルブチリル−CoAの生産が確認された(
図2)。この結果は、OrfBが、2−メチルアセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシ−2−メチルブチリル−CoAの生成を触媒することを示しており、本酵素タンパク質が、3−ケトアシル−CoAレダクターゼであることが確認された。
【0080】
〔実施例4〕配列番号2の塩基配列によりコードされた酵素タンパク質(orfA)の機能確認
エノイル−CoAハイドラターゼをコードする遺伝子(orfA)を十分発現させるような組換え体プラスミドをPCR法〔Science,230,1350(1985)〕を用いて以下の方法により構築した。放線菌Polymorphospora rubra K07−0510株の染色体DNAを鋳型として、配列番号16に示した5’末端にNdeI制限酵素サイトを有するセンスプライマー、配列番号17に示した5’末端にBamHI制限酵素サイトを有するアンチセンスプライマー及びTaq DNA polymerase(ロシュ・ライフサイエンス社製)を用い、DNA Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社製)でPCRを行うことによりorfAを増幅した。PCRは、95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間からなる反応工程を1サイクルと30サイクル行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。増幅されたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製し、制限酵素NdeIとBamHIとで消化することで、NdeIとBamHI処理orfA含有DNA断片を取得した。
【0081】
pET15−b(ノヴァジェン社製)を制限酵素NdeIとBamHIで消化し、NdeIとBamHI処理pET15−b断片を取得した。上記で取得されたNdeIとBamHI処理orfA含有DNA断片をNdeIとBamHI処理pET15−b断片と混合した後、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。
【0082】
該組換え体DNAを用い、E.coli Top10株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をアンピシリン100μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。該形質転換体より定法に従って組換えDNAを含むプラスミドを単離した。DNA配列を決定することによって、配列番号2に記載の塩基配列が得られたことから、該組換え体DNAがorfAであることを確認し、このプラスミドをpET15−b−orfAと命名した。
【0083】
pET15−b−orfAを常法によりDE3を有するE.coli BL21(DE3)株(ノヴァジェン社製)に導入し、アンピシリン100μg/mlに耐性を示すBL21(DE3)/pET15−b−orfA株を得た。BL21(DE3)/pET15−b−orfA株をアンピシリン100μg/mlを含むLB液体培地200ml中、37℃で培養し、600nmの濁度が0.5に達した時点で、培養液を2時間冷蔵した後、イソプロピルチオガラクトシドを終濃度0.5mMになるように添加した。さらに18℃で16時間培養した後、遠心分離(9000rpm、2分間)によって培養上清を除いた。この菌体を洗浄緩衝液〔20mMトリス塩酸(pH8.0)、100mM NaCl、50mMイミダゾール、10%グリセロール〕10mlに懸濁し、90mg/ml PMSFを10μl添加し、超音波破砕機(和研薬社製)を用いて氷冷しつつ破砕した。得られた菌体破砕液を遠心分離(10,000rpm、20分間、4℃)にかけ、上清を回収した。この細胞抽出液遠心上清をNi Sepharose 6 Fast Flow resin (GE Healthcare社製)に通し、20mlの洗浄緩衝液で洗浄した。ついで溶出緩衝液〔20mMトリス塩酸(pH8.0)、100mM NaCl、500mM イミダゾール、10%グリセロール〕5mlを通塔し、溶出させた。溶出液をAmicon Ultra Centrifugal Filter(メルク社製)を用いて濃縮した。
【0084】
次に、得られた組換え酵素タンパク質(OrfA)が3−ヒドロキシ−2−メチルブチリル−CoAからアンジェリル−CoAの生成を触媒するかどうか以下の反応条件で調べた。100mMリン酸緩衝液(pH7.5)、250μMアセチル−CoA、250μMメチルマロニル−CoA、500μM NADPH、2.5μg orfB(実施例2で取得)、0.8μg orfD(実施例3で取得)、15.8μg orfAを含む反応液100μlを調製し、27℃で16時間反応させた。メタノール100μlを添加して反応を停止させた後、LC/MSで分析を行なった。
【0085】
その結果、アンジェリル−CoAの生産を確認した(
図2)。この結果は、OrfAが、3−ヒドロキシ−2−メチルブチリル−CoAからアンジェリル−CoAの生成を触媒することを示しており、本酵素タンパク質が、エノイル−CoAハイドラターゼであることが確認された。
【0086】
以上により、実施例1において、OrfA、OrfB、OrfC、及びOrfDを組み合わせて発現させることにより、トレハンジェリンが生成することが確認された。また、実施例2〜4により、OrfBがアセチル−CoAとメチルマロニル−CoAを反応させて、2−メチルアセトアセチル−CoAを生成させること、OrfDが2−メチルアセトアセチル−CoAを3−ヒドロキシ−2−メチルブチリル−CoAに変換させること、及び、OrfAが3−ヒドロキシ−2−メチルブチリル−CoAをアンジェリル−CoAに変換させることが確認された。よって、実施例1の試験系においてOrfCは、アンジェリル−CoAとトレハロースを反応させてトレハンジェリンを生成させている、すなわち、アシルトランスフェラーゼ活性を有することが示された。
【0087】
〔実施例5〕コリネバクテリウムを用いたトレハンジェリンの産生
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)を用いて、トレハンジェリンを産生した。
(1)分析方法
カラム:YMC−PACK ODS−AQ 250×4.6mm S−5mm,12nm、30℃
移動相:0.1%ギ酸(A)、アセトニトリル(B)、15%B、30分、0.5mL/min
検出:Agilent 6224 TOF LC/MS(アジレントテクノロジー社)
【0088】
(2)コリネバクテリウム・グルタミカムへのトレハンジェリン生合成酵素遺伝子の導入
orfAB及びorfCDをコリネバクテリウムにコドン最適化した配列として、それぞれ、配列番号18及び配列番号19の核酸配列を設計した。設計された核酸配列を基に、orfAB及びorfCDをコードする核酸分子を人工合成により得た。次いで、orfABCDを連結し、ベクターに挿入した。
【0089】
具体的には、PrimeSTAR Max DNA Polymerase(TAKARA)を用いて、98℃ 1min反応後、98℃ 10sec、68℃ 30secを1サイクルとして30サイクルで、orfAB及びorfCDをそれぞれのプライマーを用いてそれぞれPCR増幅した。orfABプライマー及びorfCDプライマーとして、以下のプライマーを用いた:
orfABプライマー(forward):AGAGGAGACACAACGAGCTCATGTCCGTTTCCCGCGTTG(配列番号20)
orfABプライマー(reverse):AGCGGAGGTGGTCATCACTTTAGCGAACGCAGTTG(配列番号21)
orfCDプライマー(forward):ATGACCACCTCCGCTCTG(配列番号22)
orfCDプライマー(reverse):CCGATATCCTGCAGGAGCTCTTAGCCCAGGCCGTAGCC(配列番号23)。
【0090】
得られたPCR断片をGel/PCR エクストラクションキット(日本)を用いてDNA精製した。精製したPCR断片をSacI消化したベクターと混合し、In−Fuion HD Cloning Kitを用いて二つの遺伝子断片を連結し、同時にベクターに挿入した。ベクターとしては、gapA遺伝子プロモーターを有するpYTKA9−PgapAを用いた。pYTKA9−PgapAは、pHSG298ベクター(タカラバイオ株式会社)にコリネの代表的なoriであるpBL1 ori(Santamaria, R., Gil, J.A., Mesase, J.M. and Martin, J.F.. (1984) J. Gen. Microbiol. 130, 2237−2246.)を人工合成し、gapA遺伝子プロモーター(Hasegawa et al., Appl Environ Microbiol. (2012) 78(3):865−75)と共に導入することにより得た。得られたorfAB及びorfCDをコードする核酸分子を有するベクターは、カナマイシン(50μg/mL)含有LB培地中の大腸菌HST02株に形質転換した。更に、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株にエレクトロポレーション法を用いて形質転換し、トレハンジェリン生合成酵素遺伝子を有するコリネバクテリウム・グルタミカムを得た。
【0091】
(3)コリネバクテリウム・グルタミカムの前培養
1000mLの純水中にBrain Heart infusionを37g含有するBHI培地5mLに、上記で作製したトレハンジェリン生合成酵素遺伝子を有する、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株のグリセロールストックを添加した。30℃、180rpmで24時間、これらのコリネバクテリウム・グルタミカムを振盪培養して、前培養液を得た。
【0092】
(4)コリネバクテリウム・グルタミカムの本培養
3%量の前培養液を、坂口フラスコ中の50mLのBHI培地に添加した。培養開始時にグルコースの初期濃度が20g/Lとなるように、BHI培地へ400g/Lのグルコース溶液を2.5mL添加した。また、培養開始から24及び48時間後にも同グルコース溶液を2.5mLずつ追加した。また、100g/Lのトレハロース溶液を、培養開始時に1mL添加し、培養開始から24及び48時間後に0.25mLずつ添加した。pH調整のため、20%炭酸カルシウム溶液1.25mLを、培養開始後4及び24時間後にそれぞれ添加した。培養は、30℃、180rpmで72時間、振盪培養することにより行った。
【0093】
(5)培養液上清の分析
本培養開始後72時間の培養液上清をLC/MSで分析することで標品と同じ保持時間にトレハンジェリンのピークを検出した。