【解決手段】角膜内皮細胞撮影装置は、照射系と、受光系とを含む。照射系は、被検眼の角膜に向けてスリット光を照射する。受光系は、照射系に対して斜めに配置されている。受光系は、第1スリット部材と、第1移動機構と、撮像素子とを含む。第1スリット部材には、第1スリットが形成されている。第1移動機構は、第1スリット部材を移動することにより照射系によりスリット光が照射された角膜からの反射光の光路における第1スリットの位置を変更する。撮像素子は、角膜からの反射光のうち第1スリットを通過した成分を受光する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係る角膜内皮細胞撮影装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0012】
以下では、被検者から見て左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、被検者から見て光学系の奥行き方向(光軸方向、前後方向)をZ方向とする。X方向及びY方向をXY方向と表記する場合がある。
【0013】
実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置は、被検眼にスリット光を照射し、スリット光が照射された被検眼の角膜からの反射光のうち角膜内皮からの反射成分を受光して角膜内皮細胞を撮影することが可能な装置である。角膜内皮細胞撮影装置は、基台と、基台の上方に設けられたベース部と、ベース部に対してX方向、Y方向及びZ方向に移動可能な測定ヘッドとを含む。測定ヘッドには、被検眼の角膜内皮細胞を撮影するための光学系が設けられている。基台には、顎受け部と額当て部とを保持する保持部材が設けられている。例えば公知のアライメント手法を用いて、顎受け部に顎を載せつつ額当て部に額を当てた被検者に対して測定ヘッドを移動させることにより、被検眼に対する光学系のアライメントを行うことが可能である(特許文献1を参照)。
【0014】
以下では、実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置が広視野の角膜内皮細胞の画像を取得する場合について説明する。実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置は、撮影範囲が異なる複数の角膜内皮細胞の画像を取得し、これらの画像を合成することで広視野の角膜内皮細胞の画像をパノラマ画像として取得する。
【0015】
<第1実施形態>
[光学系]
図1に、第1実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置の光学系の構成例を示す。
図1に示す光学系は、上記の測定ヘッドに設けられている。
図1では、被検眼に対する光学系のアライメントを行うための構成の図示が省略されている。
【0016】
角膜内皮細胞撮影装置1は、照射系10と、受光系20とを含む。照射系10には、被検眼Eの角膜Cに向けてスリット光を照射するための光学系が設けられている。受光系20には、照射系10によりスリット光が照射された被検眼Eの角膜Cからの反射光のうち角膜内皮からの反射成分を受光するための光学系が設けられている。角膜Cにおいて照射系10の光軸O2(例えば照射系10の対物レンズの光軸)が受光系20の光軸O3(例えば受光系20の対物レンズの光軸)に交差するように、受光系20は照射系10に対して斜めに配置されている。すなわち、被検眼Eの正面方向の軸をO1とすると、軸O1と照射系10の光軸O2とのなす角度がθi(例えばθi=30度)となるように照射系10が設けられ、軸O1と受光系20の光軸O3とのなす角度がθoとなるように受光系20が設けられる。θoはθiと等しい角度であってよい。
【0017】
(照射系)
照射系10は、光源11と、コリメータレンズ12と、スリットが形成されている視野絞り13と、開口部が形成されている開口絞り14と、対物レンズ15とを含む。光源11は、例えば赤外発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を含む。視野絞り13には、1以上のスリットが形成されている。視野絞り13は、光源11からの光の光路(以下、光源光路)におけるスリットの位置を変更可能に構成されている。この実施形態では、視野絞り13は、図示しない移動機構(後述の移動機構13M)により移動可能である。移動機構により視野絞り13を移動することにより、コリメータレンズ12を通過した光の光路におけるスリットの位置が変更される。
【0018】
例えば、視野絞り13は、光源光路に略平行に設けられた回動軸を中心に回動可能なターレット板を含む。このターレット板には、回動軸を中心とする円周方向に沿って1以上のスリットが形成されている。ターレット板に2つのスリットが形成されている場合、移動機構は、一のスリットの一部と他の一のスリットの一部とが光源光路において重複するようにターレット板を回動させる。ターレット板に1つのスリットが形成されている場合、移動機構は、回動前のスリットの一部と回動後のスリットの一部とが光源光路において重複するようにターレット板を回動させる。
【0019】
或いは、視野絞り13は、光源光路に交差する方向にスライド可能なスライド板を含んでもよい。このスライド板には、1以上のスリットが形成されている。スライド板に2以上のスリットが形成されている場合、移動機構は、一のスリットの一部と他の一のスリットの一部とが光源光路において重複するようにスライド板を移動させる。スライド板に1つのスリットが形成されている場合、移動機構は、移動前のスリットの一部と移動後のスリットの一部とが光源光路において重複するようにスライド板を移動させる。
【0020】
視野絞り13は、光源光路におけるスリットの位置が被検眼Eの角膜内皮と光学的に略共役になるように配置されている。
【0021】
光源11から出力された光は、コリメータレンズ12により平行光束とされる。平行光束とされた光源11からの光は、視野絞り13に照射される。コリメータレンズ12により平行光束とされた光が視野絞り13に形成されたスリットを通過することによりスリット光が形成される。形成されたスリット光は、開口絞り14に形成された開口部を通過し、対物レンズ15に導かれる。対物レンズ15に導かれた光は、角膜Cに向けて斜めから照射される。光源光路におけるスリットの位置を変更することにより、角膜Cにおけるスリット光の照射領域を変更することができる。
【0022】
(受光系)
受光系20は、対物レンズ21と、凹レンズ22と、リレーレンズ23と、スリットが形成されている視野絞り24と、反射ミラー25と、リレーレンズ26と、反射ミラー27と、撮像素子28とを含む。対物レンズ21、リレーレンズ23、及びリレーレンズ26は、制の屈折力を有するレンズ(正レンズ)である。凹レンズ22は、対物レンズ21と撮像素子28との間に配置され、負の屈折力を有するレンズ(負レンズ)である。
【0023】
視野絞り24は、被検眼Eに対する光学系(照射系10及び受光系20)のアライメントが合致した状態で角膜上皮からの反射光束の部分を遮光し、角膜内皮の反射光束の部分だけがスリットを通過するように配置されている。視野絞り24は、照射系10によりスリット光が照射された角膜Cからの反射光(特に、角膜内皮からの反射成分)の光路におけるスリットの位置を変更可能に構成されている。この実施形態では、視野絞り24は、視野絞り24と同様に、図示しない移動機構(後述の移動機構24M)により移動可能である。移動機構により視野絞り24を移動することにより、リレーレンズ23を通過した光の光路におけるスリットの位置が変更される。
【0024】
例えば、視野絞り24は、角膜Cからの反射光の光路(以下、角膜反射光路)に略平行に設けられた回動軸を中心に回動可能なターレット板を含む。このターレット板には、回動軸を中心とする円周方向に沿って1以上のスリットが形成されている。ターレット板に2以上のスリットが形成されている場合、移動機構は、一のスリットの一部と他の一のスリットの一部とが角膜反射光路において重複するようにターレット板を回動させる。ターレット板に1つのスリットが形成されている場合、移動機構は、回動前のスリットの一部と回動後のスリットの一部とが角膜反射光路において重複するようにターレット板を回動させる。
【0025】
或いは、視野絞り24は、角膜反射光路に交差する方向にスライド可能なスライド板を含んでもよい。このスライド板には、1以上のスリットが形成されている。スライド板に2以上のスリットが形成されている場合、移動機構は、一のスリットの一部と他の一のスリットの一部とが角膜反射光路において重複するようにスライド板を移動させる。スライド板に1つのスリットが形成されている場合、移動機構は、移動前のスリットの一部と移動後のスリットの一部とが角膜反射光路において重複するようにスライド板を移動させる。
【0026】
反射ミラー25は、視野絞り24に形成されているスリットを通過した光(角膜内皮からの反射成分)を偏向する。反射ミラー27は、反射ミラー25により偏向された光を撮像素子28に向けて偏向する。リレーレンズ23及びリレーレンズ26は、角膜内皮からの反射成分を撮像素子28の撮像面に結像させる。撮像素子28は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を含む。
【0027】
視野絞り24は、角膜反射光路におけるスリットの位置が被検眼Eの角膜内皮と光学的に略共役になるように配置されている。撮像素子28の撮像面は、被検眼Eの角膜内皮と光学的に略共役になるように配置されている。
【0028】
照射系10により角膜Cに照射されたスリット光の反射光は、対物レンズ21に導かれる。反射光の光束は、
図2に示すように反射光束R1、R2、R3を含む。反射光束R1は、角膜Cの角膜上皮である角膜表面Caの反射光束である。反射光束R2は、角膜内皮Cbの反射光束である。反射光束R3は、角膜Cの角膜実質Ccの反射光束である。反射光束R1、R2、R3は、対物レンズ21、凹レンズ22、及びリレーレンズ23を通過する。リレーレンズ23を通過した光は、視野絞り24に照射される。視野絞り24に照射された角膜Cからの反射光(反射光束R1〜R3)のうち角膜上皮等からの反射光(反射光束R2、R3)は遮光され、角膜内皮からの反射成分(反射光束R2)がスリットを通過する。角膜Cの形状や角膜Cにおける照射系10によるスリット光の照射領域に応じて角膜反射光路におけるスリットの位置を変更することにより、ほぼ角膜内皮からの反射成分だけがスリットを通過するように調整することができる。スリットを通過した角膜内皮からの反射成分は、反射ミラー25により反射され、リレーレンズ26を通過し、反射ミラー27により反射され、撮像素子28の撮像面に結像される。それにより、撮像素子28の撮像面に角膜内皮細胞像が結像され、この角膜内皮細胞像が撮像される。
【0029】
[処理系]
図3に、角膜内皮細胞撮影装置1の処理系の構成例のブロック図を示す。角膜内皮細胞撮影装置1の処理系は、制御部100を中心に構成される。
【0030】
(制御部)
制御部100は、角膜内皮細胞撮影装置1の各部の制御を行う。制御部100は、主制御部101と、記憶部102とを含む。主制御部101の機能は、例えばマイクロプロセッサにより実現される。記憶部102には、角膜内皮細胞撮影装置1を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このコンピュータプログラムには、光源制御用プログラム、撮像素子制御用プログラム、データ処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部101が動作することにより、制御部100は制御処理を実行する。
【0031】
主制御部101は、照射系制御部101Aと、受光系制御部101Bと、連係制御部101Cとを含む。
【0032】
照射系制御部101Aは、照射系10の制御を行う。照射系10の制御には、光源11の制御や、移動機構13Mを駆動する駆動部13Dの制御(視野絞り13の制御)などがある。光源11の制御には、光源11の点灯、消灯、光量調整などがある。移動機構13Mは、上記のように、光源光路に略平行に設けられた回動軸を中心に回動可能な視野絞り13のターレット板を回動させる。駆動部13Dには、例えば、移動機構13Mを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。照射系制御部101Aは、駆動部13Dに対して制御信号を送ることにより移動機構13Mに対する制御を行うことができる。
【0033】
受光系制御部101Bは、受光系20の制御を行う。受光系20の制御には、移動機構24Mを駆動する駆動部24Dの制御(視野絞り24の制御)、撮像素子28の制御などがある。移動機構24Mは、上記のように、角膜反射光路に略平行に設けられた回動軸を中心に回動可能な視野絞り24のターレット板を回動させる。駆動部24Dには、例えば、移動機構24Mを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。受光系制御部101Bは、駆動部24Dに対して制御信号を送ることにより移動機構24Mに対する制御を行うことができる。撮像素子28の制御には、露光調整やゲイン調整や撮影レート調整などがある。受光系制御部101Bは、撮像素子28からの出力信号(映像信号)を取得することができる。
【0034】
連係制御部101Cは、照射系制御部101Aによる照射系10に対する制御と受光系制御部101Bによる受光系20に対する制御とを連係させる制御を行う。連係制御部101Cは、照射系10の視野絞り13(駆動部13D)に対する照射系制御部101Aの制御内容に応じて、受光系制御部101Bに視野絞り24(駆動部24D)に対する制御を実行させることが可能である。
【0035】
制御部100は、各種情報を後述のUI部120に含まれる表示デバイスに表示させる。表示デバイスに表示される情報には、制御部100により生成された情報、データ処理部110によるデータ処理後の情報などがある。
【0036】
(データ処理部)
データ処理部110は、各種のデータ処理を実行する。データ処理の例として、撮像素子28により得られた画像データに対する処理がある。この処理の例として、各種の画像処理や、画像に対する解析処理や、画像データに基づく画像評価などの診断支援処理がある。
【0037】
データ処理部110は、画像合成部111と、解析部112とを含む。画像合成部111は、移動機構13Mによる視野絞り13の移動や移動機構24Mによる視野絞り24の移動によってスリットの位置が互いに異なる状態で撮像素子28により得られた2以上の画像を合成して合成画像(パノラマ画像)を生成する。画像合成部111は、画像の端部の一部が互いに重複するように得られた2つの画像に対して当該重複部分が一致するように位置合わせ処理を施し、位置合わせが行われた2つの画像を並べて配置することで2つの画像を合成する。画像合成部111は、このような合成処理を繰り返すことで合成画像を生成する。
【0038】
解析部112は、撮像素子28からの出力信号に基づいて角膜内皮細胞の状態を表す情報を求める。例えば、解析部112は、撮像素子28からの出力信号に基づいて生成され複数の角膜内皮細胞が描出された画像を解析することにより角膜内皮細胞の境界を特定し、特定された境界に基づいて角膜内皮細胞を特定する。解析部112は、特定された角膜内皮細胞の面積や形状を求め、角膜内皮細胞の状態を表す情報を求める。角膜内皮細胞の状態を表す情報には、細胞の数、細胞の密度、最小細胞面積、最大細胞面積、平均細胞面積、細胞面積の標準偏差、細胞面積の変動係数、細胞面積のヒストグラム、六角形細胞出現率、形状のヒストグラムなどがある。
【0039】
なお、画像合成部111は、解析部112により特定された重複領域内の角膜内皮細胞の境界に基づいて2つの画像の位置合わせを行い、位置合わせが行われた2つの画像を並べて配置することで2つの画像を合成してもよい。
【0040】
(UI部)
UI(User Interface)部120は、ユーザと角膜内皮細胞撮影装置との間で情報のやりとりを行うための機能を備える。UI部120は、表示デバイスと操作デバイス(入力デバイス)とを含む。表示デバイスは、表示部を含んでよく、それ以外の表示デバイスを含んでもよい。操作デバイスは、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。制御部100は、操作デバイスに対する操作内容を受け、操作内容に対応した制御信号を各部に出力することが可能である。操作デバイスの少なくとも一部と表示デバイスの少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
【0041】
視野絞り24はこの実施形態に係る「第1スリット部材」の一例である。移動機構24Mはこの実施形態に係る「第1移動機構」の一例である。視野絞り13はこの実施形態に係る「第2スリット部材」の一例である。移動機構13Mはこの実施形態に係る「第2移動機構」の一例である。照射系制御部101A、受光系制御部101B及び連係制御部101Cはこの実施形態に係る「第1制御部」の一例である。
【0042】
[動作]
この実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1の動作について説明する。以下では、視野絞り13が、光源光路に略平行に設けられた回動軸O2´を中心に回動可能であり、回動軸O2´を中心とする円周方向に2以上のスリットが形成されているターレット板を含むものとする。また、視野絞り24が、角膜反射光路に略平行に設けられた回動軸O3´を中心に回動可能であり、回動軸O3´を中心とする円周方向に2以上のスリットが形成されているターレット板を含むものとする。この実施形態では、照射系10は、2以上のスリットのそれぞれを通過することにより形成されたスリット光により角膜Cにおける照射領域を変更する。受光系20は、光源光路に配置された視野絞り13のスリットに対応した視野絞り24のスリットを角膜反射光路に配置することにより角膜上皮からの反射成分を遮光し、角膜内皮からの反射成分だけを撮像素子28に導く。角膜内皮細胞撮影装置1は、互いに角膜Cにおける照射領域が異なる状態で撮像素子28により2以上の画像を取得し、取得された取得された2以上の画像を並べて配置することでパノラマ画像を生成する。
【0043】
図4に、第1実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1の動作の一例を示す。
図4は、角膜内皮細胞のパノラマ画像を取得する場合の第1実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1の動作例のフロー図を表す。
【0044】
(S1)
主制御部101は、公知のアライメント手法により被検眼Eに対する光学系のXY方向の位置合わせを行う。例えば、主制御部101は、被検眼Eにアライメント視標光を投影させ、その反射光を撮像素子(撮像素子28でも可)の撮像面に結像させる。それにより、当該撮像素子の撮像面にアライメント視標光のプルキンエ像による像が結像される。主制御部101は、当該撮像素子によるアライメント視標光の反射光の受光結果に基づいてUI部120の表示デバイスにアライメント視標光による像を表示させる。ユーザは、当該像を所定のアライメントマーク内に誘導するようにUI部120に含まれる操作デバイスに対する操作を行うことにより、光学系を含む測定ヘッドをXY方向に移動させてXYアライメントを行う。自動でXYアライメントを行う場合、主制御部101は、アライメントマークに対する像の変位をキャンセルするように測定ヘッドをXY方向に移動させる。
【0045】
次に、主制御部101は、公知のアライメント手法により被検眼Eに対する光学系のZ方向の位置合わせを行う。例えば、主制御部101は、Zアライメントを行うためのスリット光を被検眼Eに投影させる。主制御部101は、その反射光をラインセンサ等で受光し、その受光位置がZ方向のアライメントが適正となる位置としてあらかじめ決定された位置となるように光学系を含む測定ヘッドをZ方向に移動させてZアライメントを行う。
【0046】
連係制御部101Cは、照射系制御部101A及び受光系制御部101Bを制御する。連係制御部101Cからの指示を受けた照射系制御部101Aは、視野絞り13に形成された2以上のスリットのうち所定のスリットが光源光路に配置されるように移動機構13Mを制御する。また、連係制御部101Cからの指示を受けた受光系制御部101Bは、視野絞り24に形成された2以上のスリットのうち所定のスリットが角膜反射光路に配置されるように移動機構24Mを制御する。
【0047】
(S2)
主制御部101は、撮像素子28の撮像面に結像された角膜内皮細胞を撮影させる。主制御部101は、撮像素子28により得られた映像信号を取得し、当該映像信号に基づく画像データ(又は映像信号)を記憶部102に記憶させる。
【0048】
(S3)
次に、連係制御部101Cは、視野絞り13及び視野絞り24のそれぞれが当該光路に配置されるスリットを変更するように照射系制御部101A及び受光系制御部101Bを制御する。連係制御部101Cにより制御された照射系制御部101Aは、回動前のスリットの一部と回動後のスリットの一部とが光源光路において重複するように駆動部13Dを制御して移動機構13Mによりターレット板を回動させる。また、連係制御部101Cにより制御された受光系制御部101Bは、回動前のスリットの一部と回動後のスリットの一部とが角膜反射光路において重複するように駆動部24Dを制御して移動機構24Mによりターレット板を回動させる。それにより、S2において撮影が行われたときの角膜Cにおけるスリット光の照射領域が移動され、照射領域が移動されたスリット光の角膜Cからの反射光のうち角膜内皮からの反射成分だけを撮像素子28に導くことができる。
【0049】
(S4)
主制御部101は、撮像素子28の撮像面に結像された角膜内皮細胞を撮影させる。主制御部101は、撮像素子28により得られた映像信号を取得し、当該映像信号に基づく画像データを記憶部102に記憶させる。
【0050】
(S5)
主制御部101は、次の撮影を行うか否かを判定する。角膜Cにおける照射領域を変更しつつ撮影を行う回数はあらかじめ決められており、主制御部101は、当該回数に基づいて次の撮影を行うか否かを判定することができる。また、主制御部101は、UI部120の操作デバイスに対するユーザの操作内容に基づいて、次の撮影を行うか否かを判定してもよい。次の撮影を行うと判定されたとき(S5:N)、角膜内皮細胞撮影装置1の動作はS3に移行する。S5から移行された2回目のS3における光源光路におけるスリットの一部は、1回目のS3における光源光路におけるスリットの一部と重複するように配置される。
【0051】
図5A及び
図5Bに、
図4のS2〜S5の動作説明図を示す。説明の便宜上、
図5A及び
図5Bは、
図1の光学系の一部を模式的に表している。
図5A及び
図5Bにおいて、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図5A及び
図5Bでは、視野絞り13のターレット板は、光源光路に略平行に設けられた回動軸O2´を中心に回動可能であり、回動軸O2´を中心とする円周方向に3つのスリットSL1、SL2、SL3が形成されているものとする。また、視野絞り24のターレット板が、角膜反射光路に略平行に設けられた回動軸O3´を中心に回動可能であり、回動軸O3´を中心とする円周方向に3つのスリットSL11、SL12、SL13が形成されているものとする。すなわち、スリットSL1により形成されたスリット光を用いて取得された第1画像、スリットSL2により形成されたスリット光を用いて取得された第2画像、及びスリットSL3により形成されたスリット光を用いて取得された第3画像のうち少なくとも2つを並べて配置することでパノラマ画像が生成されるものとする。
【0052】
まず、S2では、
図5Aに示すように、光源光路にスリットSL1が配置され、角膜反射光路にスリットSL11が配置される。スリットSL1により形成されたスリット光は、角膜Cにおける照射領域SP1に照射される。このとき、角膜Cからの反射光が視野絞り24に導かれる。スリットSL11は、スリットSL1を通過したスリット光が照射領域SP1に照射されたときに角膜内皮からの反射成分だけを通過するように配置される。視野絞り24に導かれた角膜Cからの反射光のうち角膜上皮からの反射成分等は遮光され、角膜内皮からの反射成分はスリットSL11を通過する。スリットSL11を通過した角膜内皮からの反射成分は、撮像素子28に導かれる。
図5Aにおいて、角膜内皮からの反射成分に基づく像IC2は撮像素子28の撮像面PSに結像されない。
【0053】
次に、1回目のS3では、視野絞り13のターレット板が回動軸O2´を中心に回動され(回動C1)、視野絞り24のターレット板が回動軸O3´を中心に回動される(回動C11)。それにより、光源光路にスリットSL2が配置され、角膜反射光路にスリットSL12が配置される。このとき、スリットSL2は、スリットSL1の一部とスリットSL2の一部とが光源光路において重複するように配置される。スリットSL12は、スリットSL2を通過したスリット光が照射領域SP2に照射されたときに角膜内皮からの反射成分だけを通過するように配置される。それにより、1回目のS4では、
図5Bに示すようにスリットSL2により形成されたスリット光の照射領域がE1方向に移動し、角膜Cにおける照射領域SP2に照射される。照射領域SP2の一部は照射領域SP1の一部に重複する。このとき、撮像素子28の撮像面PSにおいて、角膜内皮からの反射成分がD1方向に移動する。それにより、角膜内皮からの反射成分に基づく像IC2がD1方向に移動し、撮像素子28の撮像面PSに結像される。
【0054】
同様に、2回目のS3では、視野絞り13のターレット板が回動軸O2´を中心に回動され(回動C2)、視野絞り24のターレット板が回動軸O3´を中心に回動される(回動C12)。それにより、光源光路にスリットSL3が配置され、角膜反射光路にスリットSL13が配置される。従って、2回目のS4では、
図5Bに示すようにスリットSL3により形成されたスリット光が角膜Cにおける照射領域SP3に照射される。このとき、スリットSL3は、スリットSL2の一部とスリットSL3の一部とが光源光路において重複するように配置される。スリットSL13は、スリットSL3を通過したスリット光が照射領域SP3に照射されたときに角膜内皮からの反射成分だけを通過するように配置される。照射領域SP3の一部は照射領域SP2の一部に重複する。このとき、角膜Cにおけるスリット光の照射領域がE1方向に移動し、照射領域SP3に照射されるため、撮像素子28の撮像面PSにおいて、角膜内皮からの反射成分がD1方向に更に移動する。それにより、角膜内皮からの反射成分に基づく像IC2がD1方向に移動し、撮像素子28の撮像面PSに結像される。
【0055】
S5において次の撮影を行わないと判定されたとき(S5:Y)、角膜内皮細胞撮影装置1の動作はS6に移行する。
【0056】
(S6)
次の撮影を行わないと判定されたとき(S5:Y)、画像合成部111は、S2及びS4において取得された2以上の画像を合成して合成画像を生成する。
【0057】
(S7)
次に、解析部112は、S6において生成された合成画像を解析することにより、上記のように角膜内皮細胞の状態を表す情報を求める。
【0058】
(S8)
次に、主制御部101は、S7において求められた情報をUI部120の表示デバイスに表示させる。このとき、主制御部101は、S6において生成された合成画像と共に当該情報を表示デバイスに表示させることが可能である。以上で、角膜内皮細胞撮影装置1の動作は終了する(エンド)。
【0059】
以上説明したように、照射系10は、一のスリットの一部が他の一のスリットの一部を光源光路において重複するように2以上のスリットが形成された視野絞り13を設け、移動機構13Mにより視野絞り13を移動するようにしている。それにより、角膜内皮の異なる照射領域に対するスリット光の順次的な照射を高速化することができる。従って、非常に簡素な構成で、パノラマ画像の生成に必要な角膜内皮細胞の画像を短時間に取得することが可能になる。
【0060】
例えば、固視標の呈示位置を変更することにより新たな角膜内皮細胞が描出された画像の取得に要する時間は最低でも10秒〜20秒程度であるため、その間に眼球が動いてしまう。この場合、眼球の移動により画像の位置合わせが困難になり、パノラマ画像の生成ができない場合が多い。これに対し、実施形態では新たな画像の取得に要する時間は1秒以下(例えば0.2秒程度)であるため、被検者に負担をかけることなく、パノラマ画像を容易に取得することが可能になる。
【0061】
また、受光系20は、一のスリットの一部が他の一のスリットの一部を角膜反射光路において重複するように2以上のスリットが形成された視野絞り24を設け、視野絞り13の移動に連係して移動機構24Mにより視野絞り24を移動するようにしている。それにより、照射系10によりスリット光が照射された角膜Cからの反射光のうち角膜内皮からの反射成分だけを受光することが可能になり、角膜内皮細胞の画像の画質を向上させることができる。
【0062】
<第2実施形態>
実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1の光学系の構成は
図1に示す構成に限定されるものではない。
【0063】
[光学系]
図6に、第2実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置の光学系の構成例を示す。
図6において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0064】
この実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1aの構成が角膜内皮細胞撮影装置1の構成と異なる点は、照射系10に代えて照射系10aが設けられている点である。照射系10aは、第1スリット光出力系30Aと、第2スリット光出力系30Bと、第3スリット光出力系30Cと、ハーフミラーHM1、HM2と、開口絞り14と、対物レンズ15とを含む。
【0065】
第1スリット光出力系30Aは、第1光源11Aと、第1コリメータレンズ12Aと、第1視野絞り13Aとを含む。第1光源11Aは、光源11と同様である。第1視野絞り13Aには、第1スリットが形成されている。第1視野絞り13Aは、第1光源11Aからの光の光路に配置されている。
【0066】
第2スリット光出力系30Bは、第2光源11Bと、第2コリメータレンズ12Bと、第2視野絞り13Bとを含む。第2光源11Bは、光源11と同様である。第2視野絞り13Bには、第2スリットが形成されている。第2視野絞り13Bは、第2光源11Bからの光の光路に配置されている。第2スリットは、当該スリットを通過した第2スリット光の角膜Cにおける照射領域の一部が第1スリットを通過した第1スリット光の角膜Cにおける照射領域の一部と重複するように形成されている。
【0067】
第3スリット光出力系30Cは、第3光源11Cと、第3コリメータレンズ12Cと、第3視野絞り13Cとを含む。第3光源11Cは、光源11と同様である。第3視野絞り13Cには、第3スリットが形成されている。第3視野絞り13Cは、第3光源11Cからの光の光路に配置されている。第3スリットは、当該スリットを通過した第3スリット光の角膜Cにおける照射領域の一部が第2スリットを通過した第2スリット光の角膜Cにおける照射領域の一部と重複するように形成されている。
【0068】
ハーフミラーHM1は、第1光源11Aからの光の光路と第2光源11Bからの光の光路とを結合する。ハーフミラーHM2は、ハーフミラーHM1により結合された光路と第3光源11Cからの光の光路とを結合する。
【0069】
第1視野絞り13Aは、第1光源11Aからの光の光路におけるスリットの位置が被検眼Eの角膜内皮と光学的に略共役になるように配置されている。第2視野絞り13Bは、第2光源11Bからの光の光路におけるスリットの位置が被検眼Eの角膜内皮と光学的に略共役になるように配置されている。第3視野絞り13Cは、第3光源11Cからの光の光路におけるスリットの位置が被検眼Eの角膜内皮と光学的に略共役になるように配置されている。
【0070】
以上のような構成により、第1光源11A、第2光源11B及び第3光源11Cを選択的に点灯することにより、角膜Cにおけるスリット光の照射領域が変更される。照射系10aは、角膜Cにおける一のスリット光の照射領域の一部と他の一のスリット光の照射領域の一部とを重複させることができる。
【0071】
第2光源11B及び第3光源11Cが消灯された状態で第1光源11Aが点灯されると、第1光源11Aから出力された光は、第1コリメータレンズ12Aにより平行光束とされる。平行光束とされた第1光源11Aからの光は、第1視野絞り13Aに照射される。第1コリメータレンズ12Aにより平行光束とされた光が第1スリットを通過することにより第1スリット光が形成される。第1スリット光は、ハーフミラーHM1、HM2を透過し、開口絞り14に形成された開口部を通過し、対物レンズ15に導かれる。対物レンズ15に導かれた光は、角膜Cに向けて斜めから照射される。
【0072】
第1光源11A及び第3光源11Cが消灯された状態で第2光源11Bが点灯されると、第2光源11Bから出力された光は、第2コリメータレンズ12Bにより平行光束とされる。平行光束とされた第2光源11Bからの光は、第2視野絞り13Bに照射される。第2コリメータレンズ12Bにより平行光束とされた光が第2スリットを通過することにより第2スリット光が形成される。第2スリット光は、ハーフミラーHM1により反射され、ハーフミラーHM2を透過し、開口絞り14に形成された開口部を通過し、対物レンズ15に導かれる。対物レンズ15に導かれた光は、角膜Cに向けて斜めから照射される。
【0073】
第1光源11A及び第2光源11Bが消灯された状態で第3光源11Cが点灯されると、第3光源11Cから出力された光は、第3コリメータレンズ12Cにより平行光束とされる。平行光束とされた第3光源11Cからの光は、第3視野絞り13Cに照射される。第3コリメータレンズ12Cにより平行光束とされた光が第3スリットを通過することにより第3スリット光が形成される。第3スリット光は、ハーフミラーHM2により反射され、開口絞り14に形成された開口部を通過し、対物レンズ15に導かれる。対物レンズ15に導かれた光は、角膜Cに向けて斜めから照射される。
【0074】
[処理系]
図7に、この実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1aの処理系の構成例のブロック図を示す。
図7において、
図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0075】
制御部100aは、角膜内皮細胞撮影装置1aの各部の制御を行う。制御部100aは、主制御部101aと、記憶部102aとを含む。主制御部101aの機能は、主制御部101と同様に、例えばマイクロプロセッサにより実現される。記憶部102aには、記憶部102と同様に、角膜内皮細胞撮影装置1aを制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部101aが動作することにより、制御部100aは制御処理を実行する。
【0076】
主制御部101aは、照射系制御部101Aaと、受光系制御部101Bと、連係制御部101Caとを含む。
【0077】
照射系制御部101Aaは、照射系10aの制御を行う。照射系10aの制御には、第1光源11Aの制御や第2光源11Bの制御や第3光源11Cの制御などがある。第1光源11Aの制御には、第1光源11Aの点灯、消灯、光量調整などがある。第2光源11Bの制御には、第2光源11Bの点灯、消灯、光量調整などがある。第3光源11Cの制御には、第3光源11Cの点灯、消灯、光量調整などがある。制御部100aは、第1光源11A〜第3光源11Cを順次に択一的に点灯させることにより、角膜Cにおけるスリット光の照射領域を変更することができる。
【0078】
連係制御部101Caは、照射系制御部101Aaによる照射系10aに対する制御と受光系制御部101Bによる受光系20に対する制御とを連係させる制御を行う。連係制御部101Caは、第1光源11A〜第3光源11Cの選択的な点灯制御と、受光系制御部101Bによる視野絞り24(駆動部24D)に対する制御とを連係させることが可能である。
【0079】
制御部100aは、制御部100と同様に、受光系20やデータ処理部110やUI部120を制御することができる。
【0080】
第1視野絞り13A〜第3視野絞り13Cの任意の2つのそれぞれはこの実施形態に係る「第3スリット部材」、「第4スリット部材」の一例である。ハーフミラーHM1又はハーフミラーHM2はこの実施形態に係る「光路結合部材」の一例である。照射系制御部101A、受光系制御部101B、及び連係制御部101Caはこの実施形態に係る「第2制御部」の一例である。
【0081】
[動作例]
図8に、この実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1aの動作の一例を示す。
図8は、角膜内皮細胞のパノラマ画像を取得する場合の角膜内皮細胞撮影装置1aの動作例のフロー図を表す。
【0082】
(S11)
主制御部101aは、公知のアライメント手法により被検眼Eに対する光学系の位置合わせを行う。S11は、S1と同様である。
【0083】
(S12)
主制御部101aは、第1光源11Aを点灯させ、第2光源11B及び第3光源11Cを消灯させる。また、主制御部101aは、第1視野絞り13Aに形成された第1スリットに対応した視野絞り24のスリット(例えば
図5AのスリットSL11)を角膜反射光路に配置させる。それにより、第1光源11Aから出力された光は、第1コリメータレンズ12Aを通過し、第1視野絞り13Aに形成された第1スリットを通過することにより第1スリット光とされる。第1スリット光は、ハーフミラーHM1、HM2を透過し、開口絞り14に形成された開口部を通過し、対物レンズ15に導かれる。対物レンズ15に導かれた光は、角膜Cにおける所定の照射領域(例えば
図5Aの照射領域SP1)に照射される。それにより、照射領域SP1に照射された第1スリット光の反射光のうち角膜内皮からの反射成分だけが撮像素子28に導かれるようになる。
【0084】
(S13)
主制御部101aは、撮像素子28の撮像面に結像された角膜内皮細胞を撮影させる。S13は、S2と同様である。
【0085】
(S14)
主制御部101aは、第2光源11Bを点灯させ、第1光源11A及び第3光源11Cを消灯させる。また、主制御部101aは、第2視野絞り13Bに形成された第2スリットに対応した視野絞り24のスリット(例えば
図5AのスリットSL12)を角膜反射光路に配置させる。それにより、第2光源11Bから出力された光は、第2コリメータレンズ12Bを通過し、第2視野絞り13Bに形成された第2スリットを通過することにより第2スリット光とされる。第2スリット光は、ハーフミラーHM1により反射され、ハーフミラーHM2を透過し、開口絞り14に形成された開口部を通過し、対物レンズ15に導かれる。対物レンズ15に導かれた光は、角膜CにおいてS12の照射領域の一部に重複する照射領域(例えば
図5Bの照射領域SP2)に照射される。それにより、照射領域SP2に照射された第2スリット光の反射光のうち角膜内皮からの反射成分だけが撮像素子28に導かれるようになる。
【0086】
(S15)
主制御部101aは、撮像素子28の撮像面に結像された角膜内皮細胞を撮影させる。S15は、S4と同様である。
【0087】
(S16)
主制御部101aは、第3光源11Cを点灯させ、第1光源11A及び第2光源11Bを消灯させる。また、主制御部101aは、第3視野絞り13Cに形成された第3スリットに対応した視野絞り24のスリット(例えば
図5AのスリットSL13)を角膜反射光路に配置させる。それにより、第3光源11Cから出力された光は、第3コリメータレンズ12Cを通過し、第3視野絞り13Cに形成された第3スリットを通過することにより第3スリット光とされる。第3スリット光は、ハーフミラーHM2により反射され、開口絞り14に形成された開口部を通過し、対物レンズ15に導かれる。対物レンズ15に導かれた光は、角膜CにおいてS14の照射領域の一部に重複する照射領域(例えば
図5Bの照射領域SP3)に照射される。それにより、照射領域SP3に照射された第3スリット光の反射光のうち角膜内皮からの反射成分だけが撮像素子28に導かれるようになる。
【0088】
(S17)
主制御部101aは、撮像素子28の撮像面に結像された角膜内皮細胞を撮影させる。S17は、2回目のS4と同様である。
【0089】
(S18)
画像合成部111は、S13、S15及びS17の少なくとも2つにおいて取得された複数の画像を合成して合成画像を生成する。S18は、S6と同様である。
【0090】
(S19)
次に、解析部112は、S18において生成された合成画像を解析することにより、上記のように角膜内皮細胞の状態を表す情報を求める。S19は、S7と同様である。
【0091】
(S20)
次に、主制御部101aは、S19において求められた情報をUI部120の表示デバイスに表示させる。S20は、S8と同様である。以上で、角膜内皮細胞撮影装置1aの動作は終了する(エンド)。
【0092】
以上説明したように、照射系10aは、角膜Cにおける照射領域が互いに異なる複数のスリット光出力系を設け、それぞれのスリットを通過したスリット光を角膜Cの互いに異なる領域に順次に照射する。それにより、実施形態と同様に、非常に簡素な構成で、パノラマ画像の生成に必要な角膜内皮細胞の画像を短時間で取得することが可能になる。特に、実施形態と異なり、視野絞りを移動させる必要がないため、構成の簡素化と作動音の発生の抑制とが可能になる。
【0093】
なお、本変形例では3つのスリット光出力系を設けた場合について説明したが、2つのスリット光出力系、又は4以上のスリット光出力系を設けてもよい。
【0094】
<第3実施形態>
上記の実施形態では、角膜反射光路に配置されるスリットが形成されている視野絞り24を移動することにより角膜内皮からの反射成分だけを撮像素子28に導くようにしていたが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。例えば、角膜内皮からの反射成分だけを受光するように撮像素子28を移動してもよい。
【0095】
この実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1bの光学系は、照射系10と、受光系20bとを含む。この光学系の構成は
図1とほぼ同様であるため図示を省略するが、受光系20bの構成が受光系20の構成と異なる点は、その撮像面に略平行な方向に撮像素子28が1次元的又は2次元的に移動可能である点である。この場合、撮像素子28は、図示しない移動機構(後述の移動機構28M)により移動される。以下、視野絞り24はスリットの位置を変更できないように構成されているものとして説明するが、第1実施形態と同様にスリットの位置を変更できるように構成されていてもよい。また、照射系10は、第2実施形態に係る照射系10aであってもよい。
【0096】
[処理系]
図9に、この実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1bの処理系の構成例のブロック図を示す。
図9において、
図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0097】
制御部100bは、角膜内皮細胞撮影装置1bの各部の制御を行う。制御部100bは、主制御部101bと、記憶部102bとを含む。主制御部101bの機能は、主制御部101と同様に、例えばマイクロプロセッサにより実現される。記憶部102bには、記憶部102と同様に、角膜内皮細胞撮影装置1bを制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部101bが動作することにより、制御部100bは制御処理を実行する。
【0098】
主制御部101bは、照射系制御部101Aと、受光系制御部101Bbと、連係制御部101Cbとを含む。
【0099】
受光系制御部101Bbは、受光系20bの制御を行う。受光系20bの制御には、撮像素子28を移動する移動機構28Mを駆動する駆動部28Dの制御(撮像素子28の移動制御)、撮像素子28の制御などがある。移動機構28Mは、撮像素子28の撮像面に略平行な方向に撮像素子28を移動させる。駆動部28Dには、例えば、移動機構28Mを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。受光系制御部101Bbは、駆動部28Dに対して制御信号を送ることにより移動機構28Mに対する制御を行うことができる。受光系制御部101Bbは、撮像素子28による角膜内皮からの反射成分の受光結果に基づいて駆動部28Dを制御する。受光系制御部101Bbは、撮像素子28の撮像面のおける所定の位置で角膜内皮からの反射成分を受光するように駆動部28Dを制御することが可能である。撮像素子28の制御には、露光調整やゲイン調整や撮影レート調整などがある。受光系制御部101Bbは、撮像素子28からの出力信号(映像信号)を取得することができる。
【0100】
連係制御部101Cbは、照射系制御部101Aによる照射系10に対する制御と受光系制御部101Bbによる受光系20bに対する制御とを連係させる制御を行う。連係制御部101Cbは、照射系10の視野絞り13(駆動部13D)に対する照射系制御部101Aの制御内容に応じて、受光系制御部101Bbに移動機構28M(駆動部28D)に対する移動制御を実行させることが可能である。
【0101】
制御部100bは、制御部100と同様に、照射系10やデータ処理部110やUI部120を制御することができる。
【0102】
[動作例]
図10に、この実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置1bの動作の一例を示す。
図10は、角膜内皮細胞のパノラマ画像を取得する場合の角膜内皮細胞撮影装置1bの動作例のフロー図を表す。
【0103】
(S31)
主制御部101bは、公知のアライメント手法により被検眼Eに対する光学系の位置合わせを行う。S31は、S1と同様である。
【0104】
連係制御部101Cbは、照射系制御部101A及び受光系制御部101Bbを制御する。連係制御部101Cbからの指示を受けた照射系制御部101Aは、視野絞り13に形成された2以上のスリットのうち所定のスリットが光源光路に配置されるように移動機構13Mを制御する。また、連係制御部101Cbからの指示を受けた受光系制御部101Bbは、撮像素子28が所定の位置に配置されるように移動機構28Mを制御する。
【0105】
(S32)
連係制御部101Cbは、照射系制御部101Aにより視野絞り13のターレットを回動させることにより光源光路に所定のスリットを配置させる。連係制御部101Cbは、受光系制御部101Bbにより光源光路に配置された視野絞り13のスリットに対応する位置に撮像素子28を移動させる。それにより、照射領域SP1に照射されたスリット光の反射光のうち角膜内皮からの反射成分だけが撮像素子28に導かれるようになる。
【0106】
(S33)
主制御部101bは、撮像素子28の撮像面に結像された角膜内皮細胞を撮影させる。S33は、S2と同様である。
【0107】
(S34)
連係制御部101Cbは、照射系制御部101Aにより視野絞り13のターレットを回動させることにより光源光路に所定のスリットを配置させる。連係制御部101Cbは、受光系制御部101Bbにより光源光路に配置された視野絞り13のスリットに対応する位置に撮像素子28を移動させる。それにより、照射領域SP2に照射されたスリット光の反射光のうち角膜内皮からの反射成分だけが撮像素子28に導かれるようになる。
【0108】
(S35)
主制御部101bは、撮像素子28の撮像面に結像された角膜内皮細胞を撮影させる。S35は、S4と同様である。
【0109】
(S36)
連係制御部101Cbは、照射系制御部101Aにより視野絞り13のターレットを回動させることにより光源光路に所定のスリットを配置させる。連係制御部101Cbは、受光系制御部101Bbにより光源光路に配置された視野絞り13のスリットに対応する位置に撮像素子28を移動させる。それにより、照射領域SP3に照射されたスリット光の反射光のうち角膜内皮からの反射成分だけが撮像素子28に導かれるようになる。
【0110】
(S37)
主制御部101bは、撮像素子28の撮像面に結像された角膜内皮細胞を撮影させる。S37は、2回目のS4と同様である。
【0111】
(S38)
画像合成部111は、S33、S35及びS37の少なくとも2つにおいて取得された複数の画像を合成して合成画像を生成する。S38は、S6と同様である。
【0112】
(S39)
次に、解析部112は、S38において生成された合成画像を解析することにより、上記のように角膜内皮細胞の状態を表す情報を求める。S39は、S7と同様である。
【0113】
(S40)
次に、主制御部101bは、S39において求められた情報をUI部120の表示デバイスに表示させる。S40は、S8と同様である。以上で、角膜内皮細胞撮影装置1bの動作は終了する(エンド)。
【0114】
[効果]
上記の実施形態の効果について説明する。
【0115】
実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置(角膜内皮細胞撮影装置1、1a)は、照射系(照射系10、10a)と、受光系(受光系20)とを含む。照射系は、被検眼(被検眼E)の角膜(角膜C)に向けてスリット光を照射する。受光系は、照射系に対して斜めに配置されている。受光系は、第1スリット部材(視野絞り24)と、第1移動機構(移動機構24M)と、撮像素子(撮像素子28)とを含む。第1スリット部材には、第1スリットが形成されている。第1移動機構は、第1スリット部材を移動することにより照射系によりスリット光が照射された角膜からの反射光の光路における第1スリットの位置を変更する。撮像素子は、角膜からの反射光のうち第1スリットを通過した成分を受光する。
【0116】
このような構成によれば、角膜の形状や角膜におけるスリット光の照射領域に応じて第1スリットの位置を変更するようにしたので、角膜内皮細胞の画像の画質の劣化を低減することができるようになり、簡素な構成で、広視野で高画質の角膜内皮細胞の画像の取得が可能になる。
【0117】
実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置では、第1スリット部材は、光路に略平行に設けられた回動軸(回動軸O3´)を中心に回動可能なターレット板を含み、ターレット板には、回動軸を中心とする円周方向に沿って形成された2以上のスリットが形成され、第1移動機構は、2以上のスリットのうちの一のスリットの一部が他の一のスリットの一部と光路において重複するようにターレット板を回動させてもよい。
【0118】
このような構成によれば、ターレット板を回動させることによりスリットの位置を変更するようにしたので、角膜内皮細胞撮影装置の画像の画質の劣化の低減が可能な角膜内皮細胞撮影装置の構成及び制御を簡素化することができる。
【0119】
また、実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置(角膜内皮細胞撮影装置1)では、照射系(照射系10)は、第2スリットが形成された第2スリット部材(視野絞り13)と、第2スリット部材を移動することにより光源(光源11)からの光の光路における第2スリットの位置を変更する第2移動機構(移動機構13M)と、を含んでもよい。角膜内皮細胞撮影装置は、第1移動機構と第2移動機構とを連係制御する第1制御部(連係制御部101C)を含んでもよい。
【0120】
このような構成によれば、照射系において、スリットが形成されている視野絞りを移動機構により移動するようにしたので、角膜内皮の異なる照射領域に対するスリット光の順次的な照射を高速化することができる。それにより、非常に簡素な構成で、画質を劣化させることなく角膜内皮細胞の画像を短時間に取得することが可能になり、被検者に負担をかけることなく画像を容易に取得することができる。
【0121】
また、実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置(角膜内皮細胞撮影装置1a)では、照射系(照射系10a)は、第1光源からの光の光路に配置され、第3スリットが形成された第3スリット部材(第1視野絞り13A〜第3視野絞り13Cのいずれか1つ)と、第2光源からの光の光路に配置され、第4スリットが形成された第4スリット部材(第1視野絞り13A〜第3視野絞り13Cのいずれか別の1つ)と、第1光源からの光の光路と第2光源からの光の光路とを結合する光路結合部材(ハーフミラーHM1又はハーフミラーHM2)と、を含み、第3スリットを通過したスリット光と第4スリットを通過したスリット光とを角膜の互いに異なる領域に順次に照射してもよい。角膜内皮細胞撮影装置は、第1光源と第2光源との選択的な点灯制御と、第1移動機構の制御とを連係的に制御する第2制御部(照射系制御部101Aa、受光系制御部101B、連係制御部101Ca)を含んでもよい。
【0122】
このような構成によれば、照射系において、複数の光源と複数の視野絞りとにより角膜における照射領域が互いに異なるようにスリット光を照射するようにしたので、角膜内皮の異なる照射領域に対するスリット光の順次的な照射を高速化することができる。それにより、非常に簡素な構成で、画質を劣化させることなく角膜内皮細胞の画像を短時間に取得することが可能になり、被検者に負担をかけることなく画像を容易に取得することができる。また、視野絞りを移動する必要がなくなるため、構成の簡素化と作動音の発生の抑制とが可能になる。
【0123】
実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置(角膜内皮細胞撮影装置1b)は、照射系(照射系10、10a)と、受光系(受光系10b)とを含む。照射系は、被検眼(被検眼E)の角膜(角膜C)に向けてスリット光を照射する。受光系は、照射系に対して斜めに配置されている。受光系は、照射系によりスリット光が照射された角膜からの反射光の光路に配置された撮像素子(撮像素子28)と、撮像素子を移動する移動機構(移動機構28M)と、を含む。角膜内皮細胞撮影装置は、角膜からの反射光のうち角膜内皮からの反射成分を撮像素子が受光するように移動機構を制御する制御部(受光系制御部101Bb)を含む。
【0124】
このような構成によれば、角膜の形状や角膜におけるスリット光の照射領域に応じて撮像素子を移動するようにしたので、角膜内皮細胞の画像の画質の劣化を低減することができるようになり、簡素な構成で、広視野の高画質の角膜内皮細胞の画像の取得が可能になる。
【0125】
また、実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置は、照射系及び受光系の設定条件が互いに異なる状態で撮像素子により順次に得られた2以上の画像を合成して合成画像を生成する画像合成部(画像合成部111)を含んでもよい。
【0126】
このような構成によれば、広視野で高画質の角膜内皮細胞のパノラマ画像を取得することが可能になる。
【0127】
また、実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置は、合成画像を解析することにより角膜内皮細胞の状態を表す情報を求める解析部を含んでもよい。
【0128】
このような構成によれば、角膜の形状やスリット光の照射領域に依存することなく、角膜内皮細胞に関して精度の高い情報を提供することができる。
【0129】
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0130】
実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置の光学系の構成は
図1又は
図6に示す構成に限定されるものではない。
【0131】
実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置の照射系において、視野絞り13や複数のスリット光出力系を用いることにより角膜Cにおけるスリット光の照射領域を変更する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。例えば、開口絞り14と対物レンズ15との間に補正部材(光学素子)を設け、光軸O2に対して当該補正部材を傾斜配置させ、光軸O2に対する傾斜角度を変更することにより、当該補正部材を通過するスリット光の角膜Cにおける照射領域を変更してもよい。
【0132】
実施形態に係る角膜内皮細胞撮影装置の受光系において、視野絞り24を用いて角膜Cからのスリット光の反射光のうち角膜内皮からの反射成分を通過させる場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。例えば、対物レンズ21と凹レンズ22との間に補正部材(光学素子)を設け、光軸O3に対して当該補正部材を傾斜配置させ、光軸O3に対する傾斜角度を変更することにより、角膜内皮からの反射成分だけを通過させるようにしてもよい。