【実施例】
【0028】
以下、本発明に従う具体的な実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<実施例1〜2並びに比較例1:炭酸カルシウムの成形体からの製造>
(実施例1)
水酸化カルシウムに、10モル%となるように水酸化マグネシウムを混合して混合粉末を得た。なお、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムとしては、市販の試薬を用いた。混合粉末0.05gを、直径6mmの円形金型を用いて約10kg/cm
2の軸圧で圧縮成形した。得られた成形体に相対湿度100%の二酸化炭素気流下で炭酸化を行い、炭酸カルシウムの成形体を得た。得られた成形体については、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルから炭酸カルシウムであることを確認した。
【0030】
得られた炭酸カルシウムの成形体を、1モル濃度の第1リン酸ナトリウム(NaH
2PO
4)水溶液で水熱処理した。水熱処理条件は、200℃、24時間とした。水熱処理後の成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
図1に、「Mg10mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0031】
(実施例2)
水酸化カルシウムに20モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用いる以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
図1に、「Mg20mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0032】
(比較例1)
水酸化マグネシウムを混合せず、水酸化カルシウムのみを用いて炭酸カルシウムの成形体を作製し、実施例1と同様にして水熱処理を行った。水熱処理後の成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、炭酸アパタイトであることを確認した。
図1に、「Mg0mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0033】
<実施例3〜6並びに比較例2:炭酸カルシウムの成形体からの製造>
(実施例3)
水酸化カルシウムに12.4モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、150℃、12時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0034】
(実施例4)
水酸化カルシウムに12.4モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、150℃、24時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0035】
(実施例5)
水酸化カルシウムに12.4モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、200℃、6時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0036】
(実施例6)
水酸化カルシウムに12.4モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、200℃、24時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0037】
(比較例2)
水酸化カルシウムに6.3モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、200℃、24時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPと炭酸アパタイトが混合した成形体であることを確認した。
【0038】
<実施例7〜8並びに比較例3:硫酸カルシウムの成形体からの製造>
(実施例7)
硫酸カルシウム半水和物(普通石膏)に、10モル%となるように水酸化マグネシウムを添加し、これを水で練和して直径6mmの円柱状の成形体を作製した。得られた硫酸カルシウムの成形体を、1モル濃度の第2リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)水溶液で水熱処理した。水熱処理条件は、150℃、20時間とした。水熱処理後の成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
図2に、「Mg10mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0039】
(比較例3)
水酸化マグネシウムを混合せず、硫酸カルシウム半水和物(普通石膏)のみを用いて硫酸カルシウムの成形体を作製し、実施例7と同様にして水熱処理を行った。水熱処理後の成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、水酸アパタイトであることを確認した。
図2に、「Mg0mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0040】
(実施例8)
1モル濃度の第2リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)水溶液に代えて、0.5モル濃度の第2リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)水溶液を用い、水熱処理条件を、200℃、20時間とする以外は、実施例7と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0041】
<実施例9〜13:硫酸カルシウムの成形体からの製造:炭酸マグネシウムの使用>
(実施例9)
10モル%の水酸化マグネシウムに代えて、10モル%の炭酸マグネシウムを用い、1モル濃度の第2リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)水溶液に代えて、0.5モル濃度の第2リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)水溶液を用い、水熱処理条件を、200℃、20時間とする以外は、実施例7と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0042】
(実施例10)
0.5モル濃度の第2リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)水溶液に代えて、1モル濃度の第2リン酸ナトリウム(Na
2HPO
4)水溶液を用い、水熱処理条件を、150℃、10時間とする以外は、実施例9と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0043】
(実施例11)
水熱処理条件を、150℃、20時間とする以外は、実施例10と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0044】
(実施例12)
水熱処理条件を、200℃、5時間とする以外は、実施例10と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0045】
(実施例13)
水熱処理条件を、200℃、10時間とする以外は、実施例10と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0046】
<実施例14:炭酸カルシウムの成形体からの製造>
(実施例14)
水酸化カルシウムに10モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、100℃、24時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0047】
<実施例15:炭酸カルシウムの成形体からの製造:炭酸マグネシウムの使用>
(実施例15)
水酸化マグネシウムに代えて、炭酸マグネシウムを用いる以外は、実施例14と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0048】
<結晶子サイズの測定>
実施例3及び実施例7のβ−TCP、並びに焼成して作製した比較のβ−TCPについて、以下のシェラーの式から、結晶子サイズを測定した。比較の焼成体は、市販のβ−TCP粉末(太平化学産業)0.05gを直径6mmの円形金型を用いて約10kg/cm
2の軸圧で圧縮成形して円柱状試料を作製した。これを、昇温速度10℃/minで1200℃まで加熱し3時間保持した後、10℃/minで900℃まで冷却し、900℃で6時間保持した後、炉冷することにより作製した。
【0049】
D=Kλ/Bcosθ
D:結晶子サイズ、K=0.94、λ:X線波長、B:半値幅、θ:回折角
【0050】
図3に、実施例3及び実施例7のβ−TCP、並びに比較のβ−TCPのX線回折チャートを示す。
図3において、「10wt%Mg(COH150−12h)」は実施例3、「10mol%Mg(CS150−20h)」は実施例7、「Sintered」は比較の焼成体を示している。
【0051】
実施例3及び実施例7のβ−TCP、並びに比較の焼成体について、ミラー指数(1 2 −4)、(0 2 10)及び(2 2 0)の各ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めたそれぞれの結晶子サイズ及び結晶子サイズの平均値を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、実施例3及び実施例7のβ−TCPの結晶子サイズの平均値は、比較の焼成体の結晶子サイズの平均値よりも小さくなっている。したがって、実施例3及び実施例7のβ−TCPは、従来のβ−TCPに比べ、結晶性が低く、生体吸収性に優れていることが期待される。
【0054】
本発明のβ−TCPの成形体は、ミラー指数(1 2 −4)、(0 2 10)及び(2 2 0)の各ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めた結晶子サイズの平均値が、40nm以下である。このため、結晶性が低く、生体吸収性に優れている。結晶子サイズの平均値は、好ましくは35nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。