特開2017-158935(P2017-158935A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-158935β型リン酸三カルシウムの製造方法及びβ型リン酸三カルシウム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-158935(P2017-158935A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】β型リン酸三カルシウムの製造方法及びβ型リン酸三カルシウム
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/00 20060101AFI20170818BHJP
   C01B 25/32 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   A61L27/00 K
   C01B25/32 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-48123(P2016-48123)
(22)【出願日】2016年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】391009187
【氏名又は名称】株式会社白石中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸田 道人
(72)【発明者】
【氏名】荒平 高章
(72)【発明者】
【氏名】松家 茂樹
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB01
4C081AC03
4C081CF021
4C081CF24
4C081DA01
4C081DB03
4C081EA05
(57)【要約】
【課題】低い温度でβ−TCPの成形体を製造することができるβ−TCPの製造方法及びβ−TCPを提供する。
【解決手段】マグネシウム化合物を7〜25モル%含有したカルシウム化合物の成形体を作製する工程と、上記カルシウム化合物の成形体をリン酸塩水溶液中で水熱処理して、β型リン酸三カルシウムの成形体を製造する工程とを備えることを特徴としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム化合物を7〜25モル%含有したカルシウム化合物の成形体を作製する工程と、
前記カルシウム化合物の成形体をリン酸塩水溶液中で水熱処理して、β型リン酸三カルシウムの成形体を製造する工程とを備える、β型リン酸三カルシウムの成形体の製造方法。
【請求項2】
前記カルシウム化合物の成形体が、炭酸カルシウムの成形体である、請求項1に記載のβ型リン酸三カルシウムの成形体の製造方法。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムの成形体が、水酸化カルシウムとマグネシウム塩の混合粉末を成形してなる成形体を、炭酸化して得られる成形体である、請求項2に記載のβ型リン酸三カルシウムの成形体の製造方法。
【請求項4】
前記カルシウム化合物の成形体が、硫酸カルシウムの成形体である、請求項1に記載のβ型リン酸三カルシウムの成形体の製造方法。
【請求項5】
前記硫酸カルシウムの成形体が、硫酸カルシウム半水和物とマグネシウム塩の混合物を水と反応させて硬化させた成形体である、請求項4に記載のβ型リン酸三カルシウムの成形体の製造方法。
【請求項6】
前記水熱処理の温度が、50〜250℃の範囲内である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のβ型リン酸三カルシウムの成形体の製造方法。
【請求項7】
X線回折パターンにおけるミラー指数(1 2 −4)、(0 2 10)及び(2 2 0)の各ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めた結晶子サイズの平均値が、40nm以下である、β型リン酸三カルシウムの成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β型リン酸三カルシウムの製造方法及びβ型リン酸三カルシウムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
β型リン酸三カルシウム(β−TCP)は、優れた生体親和性と骨再生能を有する骨補填材として臨床応用されている。また、β−TCPはハイドロキシアパタイトに比べ、溶解性が高く、生体内で新生骨形成とともに吸収され、骨に置換されることが期待されている。このため、骨補填材として用いることができるβ−TCPの成形体が望まれている。
【0003】
従来、β−TCPの成形体を製造する方法としては、アパタイトの成形体を1000〜1500℃の高温で焼成する方法が提案されている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−179539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の製造方法では、高温で焼成する必要があるという問題を有している。このため、従来より、低い温度でβ−TCPの成形体を製造する方法が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、低い温度でβ−TCPの成形体を製造することができるβ−TCPの製造方法及びβ−TCPを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の製造方法は、マグネシウム化合物を7〜25モル%含有したカルシウム化合物の成形体を作製する工程と、上記カルシウム化合物の成形体をリン酸塩水溶液中で水熱処理して、β型リン酸三カルシウムの成形体を製造する工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の製造方法の第1の実施形態では、上記カルシウム化合物の成形体が、炭酸カルシウムの成形体であることを特徴としている。
【0009】
上記炭酸カルシウムの成形体は、例えば、水酸化カルシウムとマグネシウム塩の混合粉末を成形してなる成形体を、炭酸化して得られる成形体である。
【0010】
本発明の製造方法の第2の実施形態では、上記カルシウム化合物の成形体が、硫酸カルシウムの成形体であることを特徴としている。
【0011】
上記硫酸カルシウムの成形体は、例えば、硫酸カルシウム半水和物とマグネシウム塩の混合物を水と反応させて硬化させた成形体である。
【0012】
本発明において、水熱処理の温度は、50〜250℃の範囲内であることが好ましい。
【0013】
本発明のβ型リン酸三カルシウムの成形体は、X線回折パターンにおけるミラー指数(1 2 −4)、(0 2 10)及び(2 2 0)の各ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めた結晶子サイズの平均値が、40nm以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、低い温度でβ−TCPの成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の製造方法の第1の実施形態に従い製造したβ−TCPの成形体のX線回折チャートを示す図である。
図2】本発明の製造方法の第2の実施形態に従い製造したβ−TCPの成形体のX線回折チャートを示す図である
図3】本発明に従い製造したβ−TCPの結晶子サイズを測定するためのX線回折チャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<カルシウム化合物の成形体の作製>
本発明においては、第1の工程として、マグネシウム化合物を7〜25モル%含有したカルシウム化合物の成形体を作製する。本発明において、マグネシウム化合物は、マグネシウムを含有する化合物であり、例えば、マグネシウムの水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩などが挙げられる。マグネシウム化合物は、カルシウム化合物の形態に応じて、固相状態で添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。マグネシウム化合物は、複数の種類を併用して用いてもよい。
【0018】
本発明において、カルシウム化合物は、カルシウムを含有する化合物であり、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物(石膏)、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フッ化カルシウム、ギ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水素化カルシウム、ヨウ化カルシウム、乳酸カルシウム、アパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸カルシウム、金属カルシウムなどが挙げられる。カルシウム化合物は、複数の種類を併用して用いてもよい。
【0019】
カルシウム化合物の成形体におけるマグネシウム化合物の含有量(Mg/(Ca+Mg))は、7〜25モル%であり、好ましくは8〜24モル%であり、さらに好ましくは9〜23モル%である。マグネシウム化合物の含有量が少なすぎると、β−TCPよりも安定なアパタイトが生成する場合がある。マグネシウム化合物の含有量が多すぎると、純度の高いβ−TCPが得られず、他の生成物が副生したり、リン酸化が抑制される場合がある。
【0020】
本発明によれば、90モル%以上、好ましくは95モル%以上のβ−TCPを製造することができる。
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態において、カルシウム化合物の成形体は、炭酸カルシウムの成形体である。炭酸カルシウムの成形体は、例えば、水酸化カルシウムとマグネシウム塩の混合粉末を成形してなる成形体を、炭酸化して得ることができる。マグネシウム塩としては、上記マグネシウム化合物と同様のものを用いることができる。例えば、水酸化カルシウムとマグネシウム塩の混合粉末を一軸圧縮成形し、得られた成形体に水蒸気存在下で二酸化炭素と反応させると、炭酸カルシウムが析出し、成形体の一部あるいは全部が炭酸カルシウムである炭酸カルシウムの成形体を製造することができる。
【0022】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態において、カルシウム化合物の成形体は、硫酸カルシウムの成形体である。硫酸カルシウムの成形体は、例えば、硫酸カルシウム半水和物(石膏)とマグネシウム塩の混合物を水と反応させ硬化させて得ることができる。マグネシウム塩としては、上記マグネシウム化合物と同様のものを用いることができる。例えば、石膏とマグネシウム塩の混合物を水で練和し、所望の型枠に流し込むことで石膏が硬化し硫酸カルシウムの成形体が製造される。石膏等の水硬性セメントでカルシウム化合物の成形体を製造する場合、任意形状の成形体を容易に製造することができる。
【0023】
<リン酸塩水溶液中での水熱処理>
本発明においては、第2の工程として、第1の工程で得られたカルシウム化合物の成形体をリン酸塩水溶液中で水熱処理して、β型リン酸三カルシウムの成形体を製造する。
【0024】
本発明におけるリン酸塩は、リン酸基を含有する化合物であり、例えば、リン酸、リン酸三アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウムアンモニウム、リン酸ナトリウム二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三マグネシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素マグネシウムリン酸三ジアセチル、リン酸ジフェニル、リン酸ジメチル、リン酸セルロース、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸テトラブチルアンモニウム、リン酸銅、リン酸トリエチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリストリメチルシリル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリメチル、リン酸グアニジン、リン酸コバルトなどが挙げられる。これらのリン酸塩は、複数の種類を併用して用いてもよい。これらの中でも好ましいリン酸塩は、第1〜第3リン酸塩M3−xPO(MはNa、K、またはNHであり、xは0〜2の整数である。)である。水熱処理におけるpHを調整するため、第1〜第3リン酸塩を混合して用いてもよい。
【0025】
水熱処理の温度は、50〜250℃の範囲内であることが好ましく、80〜230℃の範囲内であることがより好ましく、90〜220℃の範囲内であることが特に好ましい。水熱処理の温度が低すぎると、リン酸化が十分に進行せず、β−TCPが生成しない場合がある。水熱処理の温度が高すぎると、β−TCPだけではなく、アパタイトや他のリン酸カルシウム系化合物が副生する場合がある。
【0026】
水熱処理の時間は、特に限定されるものではないが、一般には1時間〜72時間の範囲内であることが好ましい。
【0027】
以上のようにして、カルシウム化合物の成形体をリン酸塩水溶液中で水熱処理することにより、β型リン酸三カルシウムの成形体を製造することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明に従う具体的な実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
<実施例1〜2並びに比較例1:炭酸カルシウムの成形体からの製造>
(実施例1)
水酸化カルシウムに、10モル%となるように水酸化マグネシウムを混合して混合粉末を得た。なお、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムとしては、市販の試薬を用いた。混合粉末0.05gを、直径6mmの円形金型を用いて約10kg/cmの軸圧で圧縮成形した。得られた成形体に相対湿度100%の二酸化炭素気流下で炭酸化を行い、炭酸カルシウムの成形体を得た。得られた成形体については、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルから炭酸カルシウムであることを確認した。
【0030】
得られた炭酸カルシウムの成形体を、1モル濃度の第1リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液で水熱処理した。水熱処理条件は、200℃、24時間とした。水熱処理後の成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。図1に、「Mg10mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0031】
(実施例2)
水酸化カルシウムに20モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用いる以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。図1に、「Mg20mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0032】
(比較例1)
水酸化マグネシウムを混合せず、水酸化カルシウムのみを用いて炭酸カルシウムの成形体を作製し、実施例1と同様にして水熱処理を行った。水熱処理後の成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、炭酸アパタイトであることを確認した。図1に、「Mg0mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0033】
<実施例3〜6並びに比較例2:炭酸カルシウムの成形体からの製造>
(実施例3)
水酸化カルシウムに12.4モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、150℃、12時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0034】
(実施例4)
水酸化カルシウムに12.4モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、150℃、24時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0035】
(実施例5)
水酸化カルシウムに12.4モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、200℃、6時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0036】
(実施例6)
水酸化カルシウムに12.4モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、200℃、24時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0037】
(比較例2)
水酸化カルシウムに6.3モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、200℃、24時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPと炭酸アパタイトが混合した成形体であることを確認した。
【0038】
<実施例7〜8並びに比較例3:硫酸カルシウムの成形体からの製造>
(実施例7)
硫酸カルシウム半水和物(普通石膏)に、10モル%となるように水酸化マグネシウムを添加し、これを水で練和して直径6mmの円柱状の成形体を作製した。得られた硫酸カルシウムの成形体を、1モル濃度の第2リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液で水熱処理した。水熱処理条件は、150℃、20時間とした。水熱処理後の成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。図2に、「Mg10mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0039】
(比較例3)
水酸化マグネシウムを混合せず、硫酸カルシウム半水和物(普通石膏)のみを用いて硫酸カルシウムの成形体を作製し、実施例7と同様にして水熱処理を行った。水熱処理後の成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、水酸アパタイトであることを確認した。図2に、「Mg0mol%」として、2θ=20〜40degの範囲のX線回折チャートを示す。
【0040】
(実施例8)
1モル濃度の第2リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液に代えて、0.5モル濃度の第2リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液を用い、水熱処理条件を、200℃、20時間とする以外は、実施例7と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0041】
<実施例9〜13:硫酸カルシウムの成形体からの製造:炭酸マグネシウムの使用>
(実施例9)
10モル%の水酸化マグネシウムに代えて、10モル%の炭酸マグネシウムを用い、1モル濃度の第2リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液に代えて、0.5モル濃度の第2リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液を用い、水熱処理条件を、200℃、20時間とする以外は、実施例7と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0042】
(実施例10)
0.5モル濃度の第2リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液に代えて、1モル濃度の第2リン酸ナトリウム(NaHPO)水溶液を用い、水熱処理条件を、150℃、10時間とする以外は、実施例9と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0043】
(実施例11)
水熱処理条件を、150℃、20時間とする以外は、実施例10と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0044】
(実施例12)
水熱処理条件を、200℃、5時間とする以外は、実施例10と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0045】
(実施例13)
水熱処理条件を、200℃、10時間とする以外は、実施例10と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0046】
<実施例14:炭酸カルシウムの成形体からの製造>
(実施例14)
水酸化カルシウムに10モル%となるように水酸化マグネシウムを混合した混合粉末を用い、水熱処理条件を、100℃、24時間とする以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0047】
<実施例15:炭酸カルシウムの成形体からの製造:炭酸マグネシウムの使用>
(実施例15)
水酸化マグネシウムに代えて、炭酸マグネシウムを用いる以外は、実施例14と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、粉末X線回折パターンおよびフーリエ変換赤外分光スペクトルを測定した結果、β−TCPの成形体であることを確認した。
【0048】
<結晶子サイズの測定>
実施例3及び実施例7のβ−TCP、並びに焼成して作製した比較のβ−TCPについて、以下のシェラーの式から、結晶子サイズを測定した。比較の焼成体は、市販のβ−TCP粉末(太平化学産業)0.05gを直径6mmの円形金型を用いて約10kg/cmの軸圧で圧縮成形して円柱状試料を作製した。これを、昇温速度10℃/minで1200℃まで加熱し3時間保持した後、10℃/minで900℃まで冷却し、900℃で6時間保持した後、炉冷することにより作製した。
【0049】
D=Kλ/Bcosθ
D:結晶子サイズ、K=0.94、λ:X線波長、B:半値幅、θ:回折角
【0050】
図3に、実施例3及び実施例7のβ−TCP、並びに比較のβ−TCPのX線回折チャートを示す。図3において、「10wt%Mg(COH150−12h)」は実施例3、「10mol%Mg(CS150−20h)」は実施例7、「Sintered」は比較の焼成体を示している。
【0051】
実施例3及び実施例7のβ−TCP、並びに比較の焼成体について、ミラー指数(1 2 −4)、(0 2 10)及び(2 2 0)の各ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めたそれぞれの結晶子サイズ及び結晶子サイズの平均値を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、実施例3及び実施例7のβ−TCPの結晶子サイズの平均値は、比較の焼成体の結晶子サイズの平均値よりも小さくなっている。したがって、実施例3及び実施例7のβ−TCPは、従来のβ−TCPに比べ、結晶性が低く、生体吸収性に優れていることが期待される。
【0054】
本発明のβ−TCPの成形体は、ミラー指数(1 2 −4)、(0 2 10)及び(2 2 0)の各ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めた結晶子サイズの平均値が、40nm以下である。このため、結晶性が低く、生体吸収性に優れている。結晶子サイズの平均値は、好ましくは35nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。
図1
図2
図3