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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-159616(P2017-159616A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】曲面セメント合板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 13/00 20060101AFI20170818BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   B32B13/00
   E21D11/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-48363(P2016-48363)
(22)【出願日】2016年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】大本 晋士郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩二
【テーマコード(参考)】
2D055
2D155
4F100
【Fターム(参考)】
2D055BA05
2D055BB02
2D055CA03
2D055GC04
2D055KB07
2D055LA16
2D055LA17
2D155BA05
2D155BB02
2D155CA03
2D155GC04
2D155KB07
2D155LA16
2D155LA17
4F100AE01A
4F100AE01C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100DB12
4F100DB18
4F100DH00D
4F100EJ17
4F100GB07
4F100GB08
4F100GB90
(57)【要約】
【課題】製造管理、製造時間、製造コストの面で優れた曲面セメント合板の製造方法を提供する。
【解決手段】曲面セメント合板の製造方法は、セメントを主成分として平板に形成された一方のセメント板100aの板面とセメントを主成分として平板に形成された他方のセメント板100bの板面とを接着剤120で貼り合わせてセメント合板110を形成するステップと、セメント合板100の板面111;112に圧力を加えてセメント合板110の板面111;112を曲面に形成するステップと、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを主成分として平板に形成された一方のセメント板の板面とセメントを主成分として平板に形成された他方のセメント板の板面とを接着剤で貼り合わせてセメント合板を形成するステップと、
セメント合板の板面に圧力を加えてセメント合板の板面を曲面に形成するステップと、
を備えたことを特徴とする曲面セメント合板の製造方法。
【請求項2】
セメント板の板面とセメント板の板面との間に補強材を介在させた構成の曲面セメント合板を製造することを特徴とする請求項1に記載の曲面セメント合板の製造方法。
【請求項3】
径の小さい方の曲面側に補強材が位置するように構成された曲面セメント合板を製造することを特徴とする請求項2に記載の曲面セメント合板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板面が曲面に形成される曲面セメント合板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板面が曲面に形成されたセメント板が知られている(例えば特許文献1;2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−227211号公報
【特許文献2】特開2000−141546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、完全には硬化していない予備硬化体に荷重を加えて曲面を形成するようにしているので、予備硬化体を製造するための製造管理が必要となり、また、予備硬化体が硬化するまで予備硬化体に荷重を加えた状態で長時間(例えば120時間)養生しなければならない。従って、特許文献1では、木質セメント板を曲面板に製造するための製造管理が煩雑であって、製造時間が長くなり、製造コストが嵩む。
また、特許文献2では、再活性化性結合剤(水分の存在下で加熱すると軟化し冷却すると再度硬化する結合剤)を成分とする表裏層、及び、芯層を積層一体化した無機質板を曲面成形しているので、再活性化性結合剤を成分として含む特殊な表裏層、及び、芯層を成形する必要があり、また、無機質板を水分の存在下で再活性化性結合剤を加熱したり冷却するといった特別な製造工程が必要となる。従って、特許文献2では、突板貼り無機質板を曲面板に製造するための材料や製造工程が特殊なものになってしまい、材料費が嵩むとともに、製造管理が煩雑であり、製造時間が長くなり、製造コストが嵩む。
本発明は、製造管理、製造時間、製造コストの面で優れた曲面セメント合板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る曲面セメント合板の製造方法によれば、セメントを主成分として平板に形成された一方のセメント板の板面とセメントを主成分として平板に形成された他方のセメント板の板面とを接着剤で貼り合わせてセメント合板を形成するステップと、セメント合板の板面に圧力を加えてセメント合板の板面を曲面に形成するステップと、を備えたので、一対のセメント板の板面同士を接着剤で貼り合わせてセメント合板を形成した後、プレス加工でセメント合板の板面を曲面に成形するだけであり、特殊な材料を使用せず、特殊な製造工程が不要となるので、製造管理、製造時間、製造コストの面で優れた曲面セメント合板の製造方法を提供できる。
また、セメント板の板面とセメント板の板面との間に補強材を介在させた構成の曲面セメント合板を製造するので、補強材で補強された曲面セメント合板を製造できる。
また、径の小さい方の曲面側に補強材が位置するように構成された曲面セメント合板を製造するので、引張力に強い曲面セメント合板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】(a)はセメント板の斜視図、(b)はセメント合板の断面図。
図2】曲面セメント合板形成ステップを示す工程図。
図3】成形型の下型を示す斜視図。
図4】(a)は曲面セメント合板の斜視図、(b)は曲面セメント合板の拡大側面図。
図5】補強構造をブロック材積みトンネルの中心軸と直交する断面で示す図。
図6】補強構造をブロック材積みトンネル覆工部の内側から見て示す斜視図。
図7】ブロック材積みトンネル覆工部の補強構造を示す分解斜視図。
図8】補強板位置決め部材の固定構造を示す断面図。
図9】補強板の固定方法の例を示す断面図。
図10】補強構造をブロック材積みトンネル覆工部の内側から見て示す正面図。
図11】補強板の固定方法の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
曲面セメント合板の製造方法は、セメント板形成ステップと、セメント合板形成ステップと、曲面セメント合板形成ステップとを備える。
以下、図1図4に基づいて、各ステップについて説明する。
【0008】
セメント板形成ステップでは、セメントを主成分として平板に形成された図1(a)に示すようなセメント板100を複数枚製造する。
【0009】
セメント合板形成ステップでは、図1(b)に示すように、二枚のセメント板100:100を貼り合わせてセメント合板110を形成する。すなわち、セメントを主成分として平板に形成された一方のセメント板100a(100)の一方の板面101とセメントを主成分として平板に形成された他方のセメント板100b(100)の他方の板面102とが接着剤120で貼り合わされてセメント合板110が形成される。
尚、接着剤120としては、例えば、エポキシ系の接着剤を用いることが好ましい。
【0010】
曲面セメント合板形成ステップでは、図2(a);(b)に示すように、セメント合板110の両方の板面111;112に圧力を加えてセメント合板110の両方の板面111;112を曲面に形成する。
例えば、セメント合板110の一方の板面111(=他方のセメント板100bの一方の板面101)を成形型130の下型131の成型面138上に設置した後、成形型130の上型132の成型面137でセメント合板110の他方の板面112(=一方のセメント板100aの他方の板面102)を押圧(プレス)することにより、セメント合板110の両方の板面111;112に圧力を加えてセメント合板110の両方の板面111;112を曲面に成型する。
成形型130としては、例えば、長方形の平面における互いに向かい合う短辺135と短辺135との間の中央を通過して短辺135;135と平行な中心線136を頂点とする湾曲面に形成された成型面138を有した下型131(図3参照)と、当該下型131の成型面138の湾曲面と対応する湾曲面に形成された成型面137を有した上型132とを備えた湾曲成形型を用いる。
例えば、接着剤120が固化していない状態から接着剤120が完全に固化するまでの間、セメント合板110の両方の板面111;112に圧力を加え続けることにより、図4(a)に示すような、曲面セメント合板60が製造される。
【0011】
以上により形成された曲面セメント合板60は、図4(a);(b)に示すように、径の小さい方の曲面141が一方のセメント板100aの他方の板面102により曲面に形成され、径の大きい方の曲面142が他方のセメント板100bの一方の板面101により曲面に形成され、一方のセメント板100aの一方の板面101により形成された曲面143と他方のセメント板100の他方の板面102により形成された曲面144とが接着剤120により接合された構成である。
【0012】
このように、一方のセメント板100aの一方の板面101と他方のセメント板100bの他方の板面102とが接着剤120により接合された状態のセメント合板110の両方の板面111;112に圧力が加えられたことにより、他方のセメント板100bの一方の板面101側に当該板面101に沿った引張力F11が加わって当該板面101が曲面142に形成され、かつ、一方のセメント板100aの他方の板面102側に当該板面102に沿った圧縮力F21が加わって当該板面102が曲面141に形成されるとともに、一方のセメント板100aの一方の板面101側に当該板面101に沿った引張力F12が加わって当該板面101が曲面143に形成され、かつ、他方のセメント板100bの他方の板面102側に当該板面102に沿った圧縮力F22が加わって当該板面102が曲面144に形成される。そして、この一方のセメント板100a及び他方のセメント板100bの板面が湾曲となった曲面状態が接着材120の固化により維持された構成の曲面セメント合板60となる。
言い換えれば、一方のセメント板100a(あるいは他方のセメント板100b)が曲がった状態から平板の状態に戻ろうとする力が他方のセメント板100b(あるいは一方のセメント板100a)を曲げている力に阻止されていることにより曲面が維持された曲面セメント合板60が構成されている。
【0013】
実施形態1による曲面セメント合板の製造方法によれば、一対のセメント板100;100の面同士を接着剤で貼り合わせたセメント合板110の両方の板面111;112に圧力を加え続けて接着剤120を完全に固化させるので、曲面状態が強固に維持される曲面セメント合板60を容易に製造することができる。
【0014】
実施形態1による曲面セメント合板の製造方法によれば、一対のセメント板100;100の板面同士を接着剤で貼り合わせてセメント合板110を形成した後、プレス加工でセメント合板110の板面を曲面に成形するだけであるので、特殊な材料を使用せず、特殊な製造工程が不要となり、製造管理、製造時間、製造コストの面で優れた曲面セメント合板60の製造方法を提供できる。
【0015】
実施形態2
実施形態1では、二枚のセメント板を接着材で張り合わせた曲面セメント合板を製造したが、三枚以上のセメント板の板面同士を接着材で張り合わせて曲面セメント合板を製造してもよい。
【0016】
実施形態3
セメント板の板面とセメント板の板面との間に補強材を介在させた構成の曲面セメント合板を製造してもよい。
この場合、補強材としては、例えば、炭素繊維シート等の補強シートを用いれば良い。
実施形態3では、補強材で補強された曲面セメント合板を製造できる。
【0017】
使用例1
次に、図5乃至図10を参照し、上述した本発明の曲面セメント合板の製造方法により製造された曲面セメント合板60を用いてブロック材積みトンネル覆工部を補強する方法及び構造について説明する。
図5に示すように、ブロック材積みトンネル覆工部1は、トンネルの内面にレンガ2、コンクリートブロック、石等のブロック材2Aを積み重ねて形成されたトンネル覆工部である。
ブロック材積みトンネル覆工部1(以下、単に「覆工部1」という)の補強方法は、溝形成ステップと、補強板位置決め部材固定ステップと、補強板固定ステップとを備える。
溝形成ステップでは、覆工部1の内面3の上部側に、内面3のトンネル延長方向(トンネルの中心軸)と直交する内面3の周方向に沿って延長する半円弧状の溝4を、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて複数形成する。
補強板位置決め部材固定ステップでは、溝形成ステップで形成された各溝4に内面3の周方向に沿って延長する補強板位置決め部材5を覆工部1に固定する。
補強板固定ステップでは、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて固定された互いに隣り合う各補強板位置決め部材5;5の間の内面3を覆うように補強板6を設置して、覆工部1の内面3の上部側全体を覆うように補強板6を覆工部1に固定する。
【0018】
即ち、覆工部1の補強構造は、図6図7に示すように、覆工部1の上部の内面3において当該内面3の周方向に沿って形成されかつトンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて形成された複数の溝4と、複数の溝4にそれぞれ設けられて後述する固定手段10(図8参照)及び溝4内に充填された固定用の充填材7(図9参照)によって覆工部1に固定された補強板位置決め部材5と、トンネル延長方向に沿って所定間隔を隔てて互いに隣り合った各溝4;4にそれぞれ設けられた補強板位置決め部材5と補強板位置決め部材5との間における内面3を覆うように設置されて板の両方の端部69;69(内面3を覆うように設置された場合のトンネル延長方向の両方の端部)が補強板位置決め部材補強板5と溝4内に充填されて固化した充填材7との間に位置された補強板6(図9参照)と、補強板6の端部69と補強板位置決め部材5とを連結した後述する連結具80又は連結用の充填材8(図9参照)等の連結手段とを備える。
当該覆工部1の補強構造によれば、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて覆工部1に固定された互いに隣り合う各補強板位置決め部材5;5の間の内面3を覆うように補強板6が覆工部1に固定されるので、互いに隣り合うレンガ2とレンガ2との間の目地に充填された目地材が剥離して脱落する、所謂、目地やせ現象が生じた場合の、レンガ2の落下を防止できる。
【0019】
溝4は、例えば、溝幅(トンネル延長方向に沿った方向の長さ)が200mm、溝深さが覆工部1の複数レンガ層のレンガ一層分の長さに形成され、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて設けられる溝4と溝4との間隔は1000mmに形成される。溝4は、例えば、レンガ2を切断するカッター等を用いて、内面3側の一層分のレンガ2をトンネル延長方向に沿った溝幅分だけ内面3の周方向に沿って延長する半円弧状に除去して形成される。溝4の底面42は、例えば覆工部1の上部の内面3の周方向に沿った湾曲面と平行な湾曲面に形成される。
【0020】
補強板位置決め部材5としては、例えば、H形鋼50を用いる。即ち、例えば折り曲げ加工機(ヴェンディング・マシーン)を用いてH形鋼のフランジ51;52の面がH形鋼の延長方向に沿って湾曲するように形成されたH形鋼50を用いる。例えばフランジ51;52の面が覆工部1の上部の内面3の周方向に沿った湾曲面に合致する湾曲面に形成されたH形鋼50を用いる。
【0021】
補強板6として、本発明による曲面セメント合板の製造方法によって製造された曲面セメント合板60を用いる。
尚、曲面セメント合板60として、炭素繊維シート等の補強シート(補強材)が曲面セメント合板60の板厚方向の中心位置から外れた位置である一方の板面側(例えば図4(b)に示した曲面セメント合板60の径の小さい方の曲面141側)に位置するように層状に挟み込まれた構成、言い換えれば、繊維シートが曲面セメント合板60の一方の板面側に偏った位置(偏芯した位置)に配置された構成の曲面セメント合板60を用い、当該曲面セメント合板60の一方の板面側に引張力が加わるように当該曲面セメント合板60を設置することにより、当該引張力に強い補強板6を構成できる。即ち、当該曲面セメント合板60はセメント系部材であり、圧縮に強く、引張りに弱いという性質があるので、一方の板面側(例えば図4(b)に示した曲面セメント合板60の径の小さい方の曲面141側)に引張力が加わって他方の板面側(例えば図4(b)に示した曲面セメント合板60の径の大きい方の曲面142側)に圧縮力が加わるように当該曲面セメント合板60を設置することにより、一方の板面側に引張力が加わった場合、補強シートが鉄筋コンクリートの鉄筋(引張部材)の役割を果たし、引張力に強い曲面セメント合板60となる。
上述した曲面セメント合板60の径の大きい方の曲面142側を覆工部1の内面3側に向け、当該曲面セメント合板60の径の小さい方の曲面141側をトンネル空洞部11(図5参照)側に向けるようにして、内面3を覆うように当該曲面セメント合板60を覆工部1に固定することにより、山側から覆工部1に力が加わり、曲面セメント合板60の径の小さい方の曲面141側に引張力が加わった場合に、当該引張力に対して引張強度の大きい補強板6を構成できる。
即ち、厚さ寸法の異なるセメント板100;100の板面間に補強シート(補強材)が挟まれて径の大きい方の曲面側に補強シートが位置するように構成された曲面セメント合板60を製造したり、あるいは、厚さ寸法の同じセメント板100を奇数枚用いて何れか一対のセメント板100;100の板面間に補強シートが挟まれて径の小さい方の曲面側に補強シートが位置するように構成された曲面セメント合板60を製造することにより、引張力に強い曲面セメント合板60を製造できる。
【0022】
補強板位置決め部材固定ステップは、補強板位置決め部材両端部固定ステップと補強板位置決め部材全体固定ステップとを備える。
補強板位置決め部材両端部固定ステップでは、図8に示すように、各溝4における内面3の周方向の両端部に、補強板位置決め部材5を覆工部1に固定するための固定手段10を用いる。
当該固定手段10は、例えば、溝4における内面3の周方向の端部に位置される補強板位置決め部材5としてのH形鋼50の長手方向の一端部に溶接等で固定された部材側連結部12と、覆工部1に固定されて部材側連結部12と連結される溝側連結部13とを備える。
【0023】
溝側連結部13は、溝4における内面3の周方向の端部において、溝4の終端面41と向かい合う第1面板部15と溝4の底面42と向かい合う第2面板部16とを有したアングル状連結板17と、第2面板部16を覆工部1に固定する固定用アンカー18と、第1面板部15に形成されたねじ孔19に締結されて当該第1面板部15に設けられたボルト20と、部材側連結部12に形成されたボルト通孔21に通されたボルト20に締結されて部材側連結部12と第1面板部15とを連結するナット22とを備える。
【0024】
補強板位置決め部材固定ステップでは、まず、溝4における内面3の周方向の両端側にアングル状連結板17を設け、当該アングル状連結板17の第1面板部15の面を溝4の終端面41に設置し、第2面板部16の面と溝4の底面42とが接触するように固定用アンカー18を第2面板部16に形成された貫通孔23を介して覆工部1に打ち込んでアングル状連結板17を溝4における内面3の周方向の両端側に固定する。そして、溝4における内面3の周方向の両端側に位置される補強板位置決め部材5の一端部に固定された部材側連結部12のボルト通孔21にアングル状連結板17の第1面板部15より突出するボルト20を通して当該ボルト20にナット22を締結することにより、各溝4における内面3の周方向の各端部側に位置させる各補強板位置決め部材5:5の一端側が、各溝4における内面3の周方向の各端部側に固定されることになる。そして、図5に示すように、溝4における内面3の周方向の中央側に位置させる1つ又は複数の補強板位置決め部材5を、各溝4における内面3の周方向の各端部側に位置させる各補強板位置決め部材5;5の他端側に連結部材25を介して連結することにより、各溝4における内面3の周方向に沿って複数の補強板位置決め部材5が設置される。
連結部材25は、例えば、隣り合う各補強板位置決め部材5;5の端部のフランジ51;52及びウェブ54に跨るように設けられる添設板26とこの添設板26を各補強板位置決め部材5;5の端部のフランジ及びウェブに固定するボルト及びナットのような固定手段27とにより構成される。
尚、1つ1つの溝4毎に、それぞれ、溝4における内面3の周方向の両端に跨る長さの半円弧状の1本のH形鋼50を補強板位置決め部材5として設置して覆工部1に固定してもよい。この場合、連結部材25は不要となる。
【0025】
そして、図9(a)に示すように、補強板位置決め部材5が覆工部1に固定された状態の溝4内に固定用の充填材7としての例えばモルタル7Aを吹き付ける。そして、吹き付けたモルタル7Aの表面71と内面3とで同一平面を形成し、吹き付けたモルタル7Aの固化を待つ。
さらに、溝4の溝底42とH形鋼50の他方のフランジ52との間には充填材79としてのモルタル等の裏込材を注入して、当該充填材79の固化を待つ。この充填材79は、覆工部1の山側から図外の注入路を形成し、当該注入路を介して注入する。
以上により、補強板位置決め部材5が充填材7;79により覆工部1に固定された構造となる。このように溝4が形成されている部分の覆工部1に固定された補強板位置決め部材5としてのH形鋼50のトンネル空洞部11側に位置される一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間の距離は、補強板6の端部69が入り込めるように補強板6のボード厚さ寸法と同程度の寸法に形成される。
【0026】
補強板固定ステップでは、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて設置された2つの補強板位置決め部材5;5の間の内面3を複数の補強板6で覆うように設置していって、覆工部1の上部側の内面3における各補強板位置決め部材5;5の間の内面3全体を複数の補強板6で覆うように当該複数の補強板6が覆工部1に固定される。この場合、図6図10に示すように、トンネル延長方向に沿って互いに隣り合うように設けられた各補強板位置決め部材5;5の間の内面3において、トンネルの周方向に隣り合う各補強板6のトンネル周方向の端面67;67同士が付き合わされて複数の補強板6が内面3の周方向に沿って並ぶように設置される。
つまり、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて設置された2つの補強板位置決め部材5;5の間に設けられる補強板6におけるトンネル延長方向の両方の端部69;69を、補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に挿入する。この際、補強板6としての曲面セメント合板60の一方の端部69を一方の補強板位置決め部材5のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に挿入して曲面セメント合板60の一方の端部69の縁を一方の補強板位置決め部材5のウェブ54に突き当てるとともに曲面セメント合板60の他方の端部69側の板面(曲面)を内面3に押し当てた状態で当該曲面セメント合板60を他方の補強板位置決め部材5側に移動させて当該他方の補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に挿入する。このようにして、曲面セメント合板60の一方の端部69側が一方の補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に位置されるとともに曲面セメント合板60の他方の端部69側が他方の補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に位置される。即ち、補強板6の板の両方の端部69;69は、補強板位置決め部材5としてのH形鋼50の一方のフランジ51の裏面72である湾曲面と固化した充填材であるモルタル7Aとの間に位置される。
【0027】
次に連結具80を用いて補強板6の端部69と補強板位置決め部材5とを連結する。連結具80は、例えば、図9(a)に示すように、補強板6のボード面の4隅部分に形成された貫通孔であるねじ孔81と、補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の表面と接触する第1板部82と補強板6の表面63に接触する第2板部83とを備えて当該第2板部83には当該第2板部83を貫通するねじ孔84が形成された補強板押さえ板85と、ボルト86とを備える。そして、第1板部82の面と一方のフランジ51の表面87とを接触させ、かつ、第2板部83の面と補強板6の表面としてのボード面63とを接触させた状態でボルト86をねじ孔84;81に挿入し、ボルト86の先端を固化したモルタル7Aの表面71と接触させて、第1板部82と補強板6とで一方のフランジ51を挟み付けるようにすることで、補強板6の端部69とフランジ51とが連結される。この場合、補強板6のトンネル延長方向の両方の端部69;69が補強板位置決め部材5の一方のフランジ51;51の裏側に隠れるので、補強板6のトンネル延長方向の両方の端部69;69がフランジ51の端部縁である1本の湾曲線状に見えるようになる。
以上により、図9(a)に示すように、覆工部1の補強構造が完成する。
【0028】
使用例1による覆工部1の補強構造によれば、覆工部1の内面3に補強材6が設けられたので、目地やせ現象が生じた場合の、レンガ2の落下を防止できる。
また、使用例1によれば、固定手段10、固定用の充填材7、連結具80によって、補強板6を覆工部1に確実に固定できるとともに、補強板6のトンネル延長方向の両方の端部69;69がフランジ51の端部縁である1本の湾曲線状に見えるようになるので内面3の周方向に隣り合う補強板6の端面同士を1つの線上に簡単に一致させることができるので、美観上に優れた補強構造を提供できる。
【0029】
使用例2
図9(b)に示すように、連結手段として充填材8を用いた構成としてもよい。この場合、H形鋼50のトンネル空洞部11側に位置される一方のフランジ51には、フランジ51を貫通する貫通孔による注入口53が形成される。
例えば、図9(a)に示すように、連結具80により、補強板6をフランジ51に連結した状態で、図9(b)に示すように、注入口53より補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と吹き付けたモルタル7Aの表面71との間に充填材8としてのモルタル8Aを注入して当該モルタル8Aが固化することにより、補強板6の端部69が補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71とに固定状態に強固に連結され、補強板6が内面3を覆うように覆工部1に強固に固定されることになる。即ち、補強板6の板の両方の端部69;69は、補強板位置決め部材5としてのH形鋼50の一方のフランジ51の裏面72である湾曲面と固化した充填材であるモルタル7Aとの間に位置される。
モルタル8Aが固化して補強板6が内面3を覆うように覆工部1に固定された後は、ボルト86を外して補強板押さえ板85を外す。
以上により、図9(b)に示すように、覆工部1の補強構造が完成する。
【0030】
使用例2によれば、連結手段としての充填材8によって、補強板6を覆工部1に対してより強固に固定できるとともに、補強板6のトンネル延長方向の両方の端部69;69がフランジ51の端部縁である1本の湾曲線状に見えるようになるので内面3の周方向に隣り合う補強板6の端面同士を1つの線上に簡単に一致させることができ、さらに、補強板6の一方のボード面63(表面)に点在して露出する物も無くなるので、より美観上に優れた補強構造を提供できる。
【0031】
使用例3
使用例1;2では、補強板位置決め部材5としてH形鋼50を用いた例を示したが、補強板位置決め部材5として、使用例1;2でのH形鋼50の他方のフランジ52を除去した図11に示すような断面T字形のT形鋼50Aを用いてもよい。即ち、一方のフランジ51の面が覆工部1の上部の内面3の周方向に沿った湾曲面に合致する湾曲面に形成されたT形鋼50Aを補強板位置決め部材5として用いる。
使用例3の場合、補強板位置決め部材5としてのT形鋼50Aのウェブ54Aを溝4に挿入した後、溝内にモルタル7A等の充填材7を充填することによりT形鋼50Aを覆工部1に固定する。即ち、補強板6の板の両方の端部69;69が、補強板位置決め部材5としてのT形鋼50Aの一方のフランジ51の裏面72である湾曲面と固化した充填材であるモルタル7Aとの間に位置される。そして、実施形態1のように連結具80を用いて補強板6が覆工部1に固定されたり(図11(a)参照)、使用例2のように充填材8を用いて補強板6が覆工部1に固定される(図11(b)参照)。
使用例3によれば、覆工部1の山側から図外の注入路を介して充填材79としてのモルタル等の裏込材を注入する作業をなくすことができる。また、溝4の溝幅を小さくできるので、溝4を形成するための作業手間、作業効率を向上できる。
【0032】
尚、上述した充填材7;8;79としては、上述したモルタル、又は、コンクリート等のセメント系組成物を用いればよい。
【0033】
また、補強板位置決め部材5としてH形鋼50やT形鋼50A等の形鋼を用いた例を示したが、形鋼以外のものを用いても良い。
【0034】
本発明により製造された曲面セメント合板は、上述した使用例で説明したブロック材積みトンネル覆工部の補強以外に、例えば、トンネル覆工コンクリートの内壁、建築物の外壁等の補強にも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
60 曲面セメント合板、100a(100) 一方のセメント板、
100b(100) 他方のセメント板、110 セメント合板。
図1
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図5
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図11