(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-159983(P2017-159983A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】建設機械の油圧回路
(51)【国際特許分類】
B66D 1/44 20060101AFI20170818BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
B66D1/44 C
F15B11/08 B
F15B11/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-44082(P2016-44082)
(22)【出願日】2016年3月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】奥村 高好
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA59
3H089AA60
3H089BB30
3H089CC08
3H089CC12
3H089DA02
3H089DB03
3H089DB08
3H089DB43
3H089EE05
3H089EE12
3H089EE22
3H089GG02
3H089JJ08
(57)【要約】
【課題】 1軸2ドラム方式の操作系で1軸1モータ方式の2台のウインチドラムを操作できる建設機械の油圧回路を提供する。
【解決手段】 第1ドラム22を第1クラッチ24を介して駆動する第1油圧モータ25と、第2ドラム23を第2クラッチ26を介して駆動する第2油圧モータ27と、第1クラッチを操作する第1クラッチパイロット弁28と、第2クラッチを操作する第2クラッチパイロット弁29と、第1油圧モータの回転方向を設定する第1回転方向設定弁31と、第2油圧モータの回転方向を設定する第2回転方向設定弁32と、第1回転方向設定弁及び第2回転方向設定弁を作動させる回転方向設定用パイロット弁33と、第1クラッチパイロット弁及び第2クラッチパイロット弁の操作に応じて作動する第1回転方向中継パイロット弁34及び第2回転方向中継パイロット弁35及びパイロット圧遮断経路36とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ドラムを第1クラッチを介して駆動する第1油圧モータと、
第2ドラムを第2クラッチを介して駆動する第2油圧モータと、
第1クラッチに供給する第1クラッチ用パイロット圧を入り切りして前記第1クラッチを作動させる第1クラッチパイロット弁と、
第2クラッチに供給する第2クラッチ用パイロット圧を入り切りして前記第2クラッチを作動させる第2クラッチパイロット弁と、
油圧ポンプから前記第1油圧モータに供給する作動油の経路を切り替えて前記第1油圧モータの回転方向を設定する第1回転方向設定弁と、
前記油圧ポンプから前記第2油圧モータに供給する作動油の経路を切り替えて前記第2油圧モータの回転方向を設定する第2回転方向設定弁と、
前記第1回転方向設定弁及び前記第2回転方向設定弁に供給する回転方向設定用パイロット圧を切り替えて前記第1油圧モータ及び前記第2油圧モータの回転方向を設定する回転方向設定用パイロット弁とを備え、
回転方向設定用パイロット弁からの正回転パイロット圧の経路及び逆回転パイロット圧の経路には、前記第1クラッチパイロット弁及び前記第2クラッチパイロット弁が共にクラッチ切り位置のときには、前記正回転パイロット圧の経路及び逆回転パイロット圧の経路を前記第1回転方向設定弁及び前記第2回転方向設定弁にそれぞれ連通させ、前記第1クラッチパイロット弁のみが入り位置になったときには、該第1クラッチパイロット弁からのパイロット圧によって前記正回転パイロット圧の経路及び逆回転パイロット圧の経路を前記第1回転方向設定弁の正回転側経路及び逆回転側経路にそれぞれ連通させるとともに前記第2回転方向設定弁へのパイロット圧の経路を遮断し、前記第2クラッチパイロット弁のみが入り位置になったときには、該第2クラッチパイロット弁からのパイロット圧によって前記正回転パイロット圧の経路及び逆回転パイロット圧の経路を前記第2回転方向設定弁の正回転側経路及び逆回転側経路にそれぞれ連通させるとともに、前記第1回転方向設定弁へのパイロット圧の経路を遮断する一対の第1回転方向中継パイロット弁及び第2回転方向中継パイロット弁が設けられ、
さらに、前記第1クラッチパイロット弁及び前記第2クラッチパイロット弁が共に入り位置になったときに、前記第1クラッチパイロット弁及び前記第2クラッチパイロット弁からのパイロット圧により、前記第1クラッチパイロット弁及び前記第2クラッチパイロット弁から前記第1回転方向中継パイロット弁及び前記第2回転方向中継パイロット弁へのパイロット圧の経路を遮断するパイロット圧遮断経路を備えていることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項2】
前記第2回転方向設定弁は、中立位置では、前記油圧ポンプからの作動油を前記第1回転方向設定弁に供給する状態になり、正回転側経路又は逆回転側経路にパイロット圧が作用した第2油圧モータ作動位置では、前記油圧ポンプからの作動油を前記第2油圧モータに供給し、該第2油圧モータ駆動後の作動油を前記第1回転方向設定弁に供給する状態になることを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧回路。
【請求項3】
前記パイロット圧遮断経路は、前記第2クラッチパイロット弁からのパイロット圧によって第1クラッチパイロット弁からのパイロット圧が作用する経路を切り替える第1パイロット圧切替弁と、該第1パイロット圧切替弁によって切り替えられた経路のパイロット圧によって前記第1クラッチパイロット弁から回転方向中継パイロット弁を作動させる経路を遮断する第1パイロット圧遮断弁と、前記第2クラッチパイロット弁から回転方向中継パイロット弁を作動させる経路を遮断する第2パイロット圧遮断弁とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械の油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の油圧回路に関し、詳しくは、複数のウインチドラムを備えた建設機械に設けられる油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のウインチドラムを搭載したクレーンや杭打機などの建設機械では、通常、一つのモータに一つのドラムを配置する1軸1モータ方式が多く採用されている。この場合の操作系は、モータの回転レバーが一つに付き、クラッチレバーも一つになる。したがって、ウインチドラムを2台搭載したものでは、回転レバーが二つ、クラッチレバーも二つになる(例えば、特許文献1参照。)。これに対して機械の設置スペースや油圧系統の制約から、二つのドラムを同一軸上に配置し、一つのモータで二つのドラムを駆動する場合もある。この1軸2ドラム方式の場合は、回転レバーが一つで、クラッチレバーが二つの構成となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−166888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1軸2ドラム方式では、一つ当たりのドラム幅が狭く、ドラムに巻回するワイヤロープの長さに限界があるため、使用するワイヤロープを長くしようとする際には、1軸1モータ方式に改造することが考えられる。しかし、1軸1モータ方式のウインチドラムを2台設置した場合は、操作レバーの数が1軸2ドラム方式に比べて多くなり、操作レバーに直結するリンク関係も変更する必要があることから、改造が大掛かりとなり、容易に変更することはできなかった。
【0005】
そこで本発明は、1軸2ドラム方式の操作系で1軸1モータ方式の2台のウインチドラムを操作することができ、1軸2ドラム方式を採用した建設機械を1軸1モータ方式に変更する際の改造にも容易に対応可能な建設機械の油圧回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械の油圧回路は、第1ドラムを第1クラッチを介して駆動する第1油圧モータと、第2ドラムを第2クラッチを介して駆動する第2油圧モータと、第1クラッチに供給する第1クラッチ用パイロット圧を入り切りして前記第1クラッチを作動させる第1クラッチパイロット弁と、第2クラッチに供給する第2クラッチ用パイロット圧を入り切りして前記第2クラッチを作動させる第2クラッチパイロット弁と、油圧ポンプから前記第1油圧モータに供給する作動油の経路を切り替えて前記第1油圧モータの回転方向を設定する第1回転方向設定弁と、前記油圧ポンプから前記第2油圧モータに供給する作動油の経路を切り替えて前記第2油圧モータの回転方向を設定する第2回転方向設定弁と、前記第1回転方向設定弁及び前記第2回転方向設定弁に供給する回転方向設定用パイロット圧を切り替えて前記第1油圧モータ及び前記第2油圧モータの回転方向を設定する回転方向設定用パイロット弁とを備え、回転方向設定用パイロット弁からの正回転パイロット圧の経路及び逆回転パイロット圧の経路には、前記第1クラッチパイロット弁及び前記第2クラッチパイロット弁が共にクラッチ切り位置のときには、前記正回転パイロット圧の経路及び逆回転パイロット圧の経路を前記第1回転方向設定弁及び前記第2回転方向設定弁にそれぞれ連通させ、前記第1クラッチパイロット弁のみが入り位置になったときには、該第1クラッチパイロット弁からのパイロット圧によって前記正回転パイロット圧の経路及び逆回転パイロット圧の経路を前記第1回転方向設定弁の正回転側経路及び逆回転側経路にそれぞれ連通させるとともに前記第2回転方向設定弁へのパイロット圧の経路を遮断し、前記第2クラッチパイロット弁のみが入り位置になったときには、該第2クラッチパイロット弁からのパイロット圧によって前記正回転パイロット圧の経路及び逆回転パイロット圧の経路を前記第2回転方向設定弁の正回転側経路及び逆回転側経路にそれぞれ連通させるとともに、前記第1回転方向設定弁へのパイロット圧の経路を遮断する一対の第1回転方向中継パイロット弁及び第2回転方向中継パイロット弁が設けられ、さらに、前記第1クラッチパイロット弁及び前記第2クラッチパイロット弁が共に入り位置になったときに、前記第1クラッチパイロット弁及び前記第2クラッチパイロット弁からのパイロット圧により、前記第1クラッチパイロット弁及び前記第2クラッチパイロット弁から前記第1回転方向中継パイロット弁及び前記第2回転方向中継パイロット弁へのパイロット圧の経路を遮断するパイロット圧遮断経路を備えていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の建設機械の油圧回路は、前記第2回転方向設定弁が、中立位置では、前記油圧ポンプからの作動油を前記第1回転方向設定弁に供給する状態になり、正回転側経路又は逆回転側経路にパイロット圧が作用した第2油圧モータ作動位置では、前記油圧ポンプからの作動油を前記第2油圧モータに供給し、該第2油圧モータ駆動後の作動油を前記第1回転方向設定弁に供給する状態になることを特徴としている。
【0008】
また、前記パイロット圧遮断経路は、前記第2クラッチパイロット弁からのパイロット圧によって第1クラッチパイロット弁からのパイロット圧が作用する経路を切り替える第1パイロット圧切替弁と、該第1パイロット圧切替弁によって切り替えられた経路のパイロット圧によって前記第1クラッチパイロット弁から回転方向中継パイロット弁を作動させる経路を遮断する第1パイロット圧遮断弁と、前記第2クラッチパイロット弁から回転方向中継パイロット弁を作動させる経路を遮断する第2パイロット圧遮断弁とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建設機械の油圧回路によれば、一つの回転方向設定用パイロット弁の操作によって第1油圧モータ及び第2油圧モータの回転方向を設定し、二つの第1クラッチパイロット弁及び第2クラッチパイロット弁でクラッチを入り切りすることにより、所望のドラムを回転させることができるとともに、使用しないドラムの油圧モータを停止させた状態にすることができる。したがって、回転レバーが一つで、クラッチレバーが二つの1軸2ドラム方式の操作系で1軸1モータ方式の2台のウインチドラムを操作することができる。これにより、1軸2ドラム方式を採用した建設機械を1軸1モータ方式に変更する際の改造も、操作系を改造することなく容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の建設機械の油圧回路の一形態例を示す油圧回路図である。
【
図2】同じく、第1油圧モータ及び第2油圧モータの回転方向を正方向に操作し、第1クラッチ及び第2クラッチを共に切った状態を示す油圧回路図である。
【
図3】同じく、第1油圧モータ及び第2油圧モータの回転方向を正方向に操作し、第1クラッチを入れて第2クラッチを切った状態を示す油圧回路図である。
【
図4】同じく、第1油圧モータ及び第2油圧モータの回転方向を正方向に操作し、第2クラッチを切って第2クラッチを入れた状態を示す油圧回路図である。
【
図5】同じく、第1油圧モータ及び第2油圧モータの回転方向を正方向に操作し、第1クラッチ及び第2クラッチを共に入れた状態を示す油圧回路図である。
【
図6】複数のウインチドラムを搭載した建設機械の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図6は、本発明の建設機械の油圧回路を適用可能な建設機械の一つであるクローラクレーンを示す側面図である。このクローラクレーン11は、下部走行体12と、該下部走行体12の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体13とを有しており、上部旋回体13は、中央部に、エンジンや油圧ポンプ等を備えた機器室13aと、主巻ロープ14aや補巻ロープ14b、起伏ロープ14cをそれぞれ巻回した複数のウインチとが設けられ、前部には、前後方向に傾動可能なブーム15と運転席13bとが設けられている。運転席13b内には、前記複数のウインチやクローラ、旋回などの操作を行うための複数の操作レバーや操作ペダル、押しボタンスイッチなどの操作機器が設けられており、機器室13a内には、これらの操作機器によって制御されるエンジンや油圧回路が設けられている。
【0012】
本発明の油圧回路は、基本的には、周知の油圧回路と同様に、動力用の油圧ポンプから供給される動力用の作動油の経路を、複数のコントロールバルブでそれぞれ切り替えることにより、例えば、油圧モータの正転と逆転とを制御したり、シリンダの伸縮を制御したりするもので、前記コントロールバルブの切り替えは、図示しないパイロット油圧ポンプから供給されるパイロット油の経路を、操作レバーなどの操作機器によってパイロット弁を開閉したり、切り替えたりすることによって行うようにしている。
【0013】
図1乃至
図5は、1軸2ドラム方式の操作系で1軸1モータ方式の2台のウインチドラムを操作できるように形成した本発明の油圧回路の一形態例を示している。
【0014】
すなわち、本形態例に示す油圧回路21は、前記主巻ロープ14aを巻回した第1ドラム22と、前記補巻ロープ14bを巻回した第2ドラム23と、前記第1ドラム22を第1クラッチ24を介して駆動する第1油圧モータ25と、前記第2ドラム23を第2クラッチ26を介して駆動する第2油圧モータ27と、前記第1クラッチ24に供給する第1クラッチ用パイロット圧を入り切りして前記第1クラッチ24を作動させる第1クラッチパイロット弁28と、前記第2クラッチ26に供給する第2クラッチ用パイロット圧を入り切りして前記第2クラッチ26を作動させる第2クラッチパイロット弁29と、油圧ポンプ30から前記第1油圧モータ25に供給する作動油の経路を切り替えて前記第1油圧モータ25の回転方向を設定する第1回転方向設定弁31と、前記油圧ポンプ30から前記第2油圧モータ27に供給する作動油の経路を切り替えて前記第2油圧モータの回転方向を設定する第2回転方向設定弁32と、前記第1回転方向設定弁31及び前記第2回転方向設定弁32に供給する回転方向設定用パイロット圧を正転側パイロット弁33a及び逆転側パイロット弁33bで切り替えて前記第1油圧モータ25及び前記第2油圧モータ27の回転方向を設定する回転方向設定用パイロット弁33と、第1クラッチパイロット弁28及び第2クラッチパイロット弁29の状態に応じて作動する一対の第1回転方向中継パイロット弁34及び第2回転方向中継パイロット弁35と、同様に、第1クラッチパイロット弁28及び第2クラッチパイロット弁29の操作状態に応じて作動するパイロット圧遮断経路36とを備えており、該パイロット圧遮断経路36には、第1パイロット圧切替弁37、第1パイロット圧遮断弁38及び第2パイロット圧遮断弁39が設けられている。第1クラッチパイロット弁28、第2クラッチパイロット弁29及び回転方向設定用パイロット弁33は、操作ボタンや操作レバーなどの周知の操作機器によって操作することができる。
【0015】
なお、第1回転方向設定弁31が設けられているバルブユニットには、走行用などの各種コントロールバルブが設けられ、回転方向設定用パイロット弁33が設けられている制御操作部には、ブーム起伏用操作レバーなどが設けられており、油圧回路内には複数のチェックバルブなどが設けられているが、これらは、通常の油圧回路に設けられているものと同等のものであるから、第1ドラム22及び第2ドラム23の操作に関係しないものについての説明は省略する。
【0016】
以下、
図1乃至
図5に基づいて本形態例に示す油圧回路の動作を説明する。なお、各図の説明中、作動油が流れる経路及びパイロット圧が作用している作動中の経路のみ符号を付し、非作動中の経路の符号は省略する。
【0017】
まず、
図1は、回転方向設定用パイロット弁33が中立位置、第1クラッチパイロット弁28及び第2クラッチパイロット弁29が共に切り位置(クラッチ非接続状態)にあるときの状態を示している。このとき、クラッチ用のパイロット圧は、第1クラッチパイロット弁28及び第2クラッチパイロット弁29で遮断されているため、第1クラッチ24及び第2クラッチ26は共に切り状態であり、第1ドラム22及び第2ドラム23は停止している。また、第1回転方向中継パイロット弁34及び第2回転方向中継パイロット弁35も中立位置にあり、第1パイロット圧切替弁37、第1パイロット圧遮断弁38及び第2パイロット圧遮断弁39は、非作動位置になっている。
【0018】
一方、タンク50から経路51を介して油圧ポンプ30に吸引され、所定圧力に昇圧された作動油は、経路52を通り、スプールが中立位置にある第2回転方向設定弁32を通過して経路53を通り、スプールが中立位置にある第1回転方向設定弁31を通過して経路54からタンク50に戻される。したがって、第1油圧モータ25及び第2油圧モータ27も停止状態となっている。
【0019】
図2は、回転方向設定用パイロット弁33を正転側、例えば巻き上げ側に操作した状態を示している。回転方向設定用パイロット弁33を正転側に操作することにより、正転側パイロット弁33aが連通状態になり、正転側パイロット弁33aからのパイロット圧は、中立状態にある第1回転方向中継パイロット弁34内で2方向に分流し、一方のパイロット圧は、経路71を通って第1回転方向設定弁31のスプールを正方向回転側に押動する。他方のパイロット圧は、経路72をを通って第2回転方向設定弁32のスプールを正方向回転側に押動する。
【0020】
これにより、油圧ポンプ30で昇圧された作動油は、第2回転方向設定弁32から経路55に向かって流れ、第2油圧モータ27を正方向に回転させた後、経路56を通って第2回転方向設定弁32に戻る。第2回転方向設定弁32から経路53に流出した作動油は、第1回転方向設定弁31から経路57に流出し、第1油圧モータ25を正方向に回転させる。第1油圧モータ25からの作動油は、経路58,第1回転方向設定弁31,経路59,経路54を通ってタンク50に戻る。
【0021】
このように、回転方向設定用パイロット弁33を正転側に操作しただけの状態では、第1クラッチ24及び第2クラッチ26が共に切り状態になっているため、第1ドラム22及び第2ドラム23は停止状態となっており、第1油圧モータ25及び第2油圧モータ27は空回り状態となっている。
【0022】
図3は、回転方向設定用パイロット弁33を正転側に操作した状態で、第1クラッチパイロット弁28を入り位置に操作した状態を示している。第1クラッチパイロット弁28を入り位置に操作することにより、第1クラッチパイロット弁28からのパイロット圧が経路73を通って第1クラッチ24に伝達され、第1クラッチ24を入り状態にして第1油圧モータ25と第1ドラム22とを連結した状態にする。
【0023】
また、経路73から分岐した経路74のパイロット圧は、さらに、経路75と経路76とに分岐し、経路75のパイロット圧は、定位置にある第1パイロット圧切替弁37によって遮断される。経路76のパイロット圧は、定位置にある第1パイロット圧遮断弁38を通過し、経路77から経路77aと経路77bとに分かれる。経路77aと経路77bのパイロット圧は、第1回転方向中継パイロット弁34及び第2回転方向中継パイロット弁35の各スプールをそれぞれ第1回転位置に押動する。
【0024】
これにより、正転側パイロット弁33aからのパイロット圧は、第1回転方向中継パイロット弁34から経路71のみに伝達され、前記同様に、第1回転方向設定弁31のスプールを正方向回転側に押動する。また、第2回転方向設定弁32に接続した経路72は、第1回転方向中継パイロット弁34から経路78を経て経路79に連通した状態になり、第2回転方向設定弁32のパイロット圧がタンク50に開放され、第2回転方向設定弁32のスプールがスプリングの作用で中立位置に復帰する。
【0025】
このように、回転方向設定用パイロット弁33を正転側に、第1クラッチパイロット弁28を入り位置に、それぞれ操作すると、油圧ポンプ30で昇圧された作動油は、第2回転方向設定弁32から経路53を経て第1回転方向設定弁31に入り、第1回転方向設定弁31から経路57を通って第1油圧モータ25を正方向に回転させる。
【0026】
第1油圧モータ25からの作動油は、前記同様に、経路58,第1回転方向設定弁31,経路59,経路54を通ってタンク50に戻る。一方、第2油圧モータ27には作動油が供給されないため、第2油圧モータ27は停止する。したがって、回転方向設定用パイロット弁33で設定した回転方向に第1ドラム22のみを回転させることができる。
【0027】
図4は、回転方向設定用パイロット弁33を正転側に操作した状態で、第2クラッチパイロット弁29を入り位置に操作した状態を示している。第2クラッチパイロット弁29を入り位置に操作することにより、第2クラッチパイロット弁29からのパイロット圧が経路80を通って第2クラッチ26に伝達され、第2クラッチ26を入り状態にして第2油圧モータ27と第2ドラム23とを連結した状態にする。
【0028】
また、経路80から分岐した経路81のパイロット圧は、一部が第1パイロット圧切替弁37のスプールを作動位置に押動する操作に用いられ、残部は、定位置にある第2パイロット圧遮断弁39を通過した後に経路82と経路83とに分岐し、各経路82,83のパイロット圧は、第1回転方向中継パイロット弁34及び第2回転方向中継パイロット弁35の各スプールをそれぞれ第2回転位置に押動する。また、第1回転方向設定弁31に接続した経路71は、第1回転方向中継パイロット弁34から経路78を経て経路79に連通した状態になり、第1回転方向設定弁31のパイロット圧がタンク50に開放され、第1回転方向設定弁31のスプールがスプリングの作用で中立位置に復帰する。
【0029】
このように、回転方向設定用パイロット弁33を正転側に、第2クラッチパイロット弁29を入り位置に、それぞれ操作すると、油圧ポンプ30で昇圧された作動油は、第2回転方向設定弁32から経路55を経て第2油圧モータ27を正方向に回転させる。第2油圧モータ27からの作動油は、前記同様に、経路56を通って第2回転方向設定弁32に戻り、第2回転方向設定弁32から経路53を通って中立位置にある第1回転方向設定弁31を通過し、経路54を通ってタンク50に戻る。一方、第1油圧モータ25には作動油が供給されないため、第1油圧モータ25は停止する。したがって、回転方向設定用パイロット弁33で設定した回転方向に第2ドラム23のみを回転させることができる。
【0030】
図5は、回転方向設定用パイロット弁33を正転側に操作した状態で、第1クラッチ24及び第2クラッチ26を共に入り位置にした状態を示している。第1クラッチパイロット弁28を入り位置に操作することにより、前記
図3に示す状態と同様に、第1クラッチパイロット弁28からのパイロット圧が経路73を通って第1クラッチ24を入り状態にする。
【0031】
また、経路73から分岐した経路74のパイロット圧は、さらに、経路75と経路76とに分岐する。一方、第2クラッチパイロット弁29を入り位置に操作することにより、第2クラッチパイロット弁29からのパイロット圧が経路80を通って第2クラッチ26を入り状態にするとともに、経路80から分岐した経路81のパイロット圧により、第1パイロット圧切替弁37のスプールを作動位置に押動する。これにより、経路75のパイロット圧が第1パイロット圧切替弁37を通過して経路84に伝達され、経路84から分岐した経路84aのパイロット圧によって第1パイロット圧遮断弁38のスプールを作動位置である遮断位置に押動するとともに、経路84bに分岐したパイロット圧によって第2パイロット圧遮断弁39のスプールを作動位置である遮断位置に押動する。
【0032】
これにより、第1回転方向中継パイロット弁34に作用するパイロット圧が遮断されるので、第1回転方向中継パイロット弁34は、前記
図2に示す状態と同様に、スプールが中立位置にあるため、正転側パイロット弁33aからのパイロット圧は、第1回転方向中継パイロット弁34内で2方向に分流し、一方のパイロット圧は、経路71を通って第1回転方向設定弁31のスプールを正方向回転側に押動し、他方のパイロット圧は、経路72をを通って第2回転方向設定弁32のスプールを正方向回転側に押動する。
【0033】
油圧ポンプ30で昇圧された作動油は、第2回転方向設定弁32から経路55に向かって流れ、第2油圧モータ27を正方向に回転させた後、経路56を通って第2回転方向設定弁32に戻り、第2回転方向設定弁32から経路53を通って第1回転方向設定弁31から経路57に流出し、第1油圧モータ25を正方向に回転させた後、経路58,第1回転方向設定弁31,経路59,経路54を通ってタンク50に戻る。
【0034】
このように、必要に応じて、第1クラッチ24及び第2クラッチ26を共に入り位置に操作することにより、回転方向設定用パイロット弁33で設定した回転方向に第1ドラム22及び第2ドラム23を同時に回転させることができる。
【0035】
前記
図3及び
図4で説明したように、第1ドラム22のみ、あるいは、第2ドラム23のみを回転させる場合、他のドラムを回転させる油圧モータを停止状態にできるので、使用しない油圧モータの負担を軽減することができ、油圧モータの寿命を延ばすことができる。また、
図2で説明したように、両油圧モータを同時に空回しすることができ、
図5で説明したように、両ドラムを空回しすることもできるので、クラッチ調整などの各部の点検、調整を容易に行うことができる。さらに、クラッチパイロット弁を適宜入り切りすることにより、しゃくり操作も容易に行うことができる。
【0036】
特に、油圧回路のみで構成できるので、電気的な制御が不要であり、1軸2ドラム方式を採用した建設機械を1軸1モータ方式に変更する際の改造を容易かつ低コストで行うことができ、1軸2ドラム方式の操作系で1軸1モータ方式の2台のウインチドラムを操作することが可能となる。
【0037】
ドラムを逆方向に回転させる際には、回転方向設定用パイロット弁33を逆転側に操作し、回転方向設定用パイロット弁33の逆転側パイロット弁33bからパイロット圧を第2回転方向中継パイロット弁35を介して第1回転方向設定弁31及び第2回転方向設定弁32に伝達し、両回転方向設定弁31,32のスプールを逆方向回転側に押動した状態で、前記同様に、第1クラッチパイロット弁28及び第2クラッチパイロット弁29を操作することにより、各ドラム22,23を逆方向に回転させることができる。
【0038】
なお、建設機械としてはクローラクレーンに限定されるものではなく、複数のウインチドラムを搭載した各種建設機械、例えば、杭打機やアースドリルなどにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
11…クローラクレーン、12…下部走行体、13…上部旋回体、13a…機器室、13b…運転席、14a…主巻ロープ、14b…補巻ロープ、14c…起伏ロープ、15…ブーム、21…油圧回路、22…第1ドラム、23…第2ドラム、24…第1クラッチ、25…第1油圧モータ、26…第2クラッチ、27…第2油圧モータ、28…第1クラッチパイロット弁、29…第2クラッチパイロット弁、30…油圧ポンプ、31…第1回転方向設定弁、32…第2回転方向設定弁、33…回転方向設定用パイロット弁、33a…正転側パイロット弁、33b…逆転側パイロット弁、34…第1回転方向中継パイロット弁、35…第2回転方向中継パイロット弁、36…パイロット圧遮断経路、37…第1パイロット圧切替弁、38…第1パイロット圧遮断弁、39…第2パイロット圧遮断弁