【発明を実施するための形態】
【0015】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
【0016】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0017】
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10〜40℃の範囲内の温度を意味する。
【0018】
本明細書中、「Cn−m」(ここで、n、およびmは、それぞれ自然数である。)は、有機化学分野で慣用されている通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0019】
本明細書中、「フルオロメチレン基」は、特に限定の無い限り、モノフルオロメチレン基、及びジフルオロメチレン基を包含する。
【0020】
本明細書中、特に限定のない限り、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が例示される。
【0021】
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」は、その構成原子として1個以上の炭素原子を含有する基を意味する。
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」としては、炭化水素基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシ基、エステル基、エーテル基、及びアシル基が例示される。
【0022】
本明細書中、特に限定のない限り、「炭化水素基」は、その構成原子として、1個以上の炭素原子、及び1個以上の水素原子を含有する基を意味する。
本明細書中、特に限定のない限り、「炭化水素基」としては、脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基(アリール基)、及びそれらの組み合わせ等が例示される。
【0023】
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせであることができる。
【0024】
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」は、飽和、又は不飽和であることができる。
【0025】
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルキル基が例示される。
【0026】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びヘキシル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数1〜10のアルキル基が例示される。
【0027】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例、1〜3個、1〜6個、1〜12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
「フルオロアルキル基」は、パーフルオロアルキル基を包含する。「パーフルオロアルキル基」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
【0028】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルケニル基」としては、例えば、ビニル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、及び5−ヘキセニル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数1〜10のアルケニル基が例示される。
【0029】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、及び5−ヘキシニル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数2〜6のアルキニル基が例示される。
【0030】
本明細書中、特に限定のない限り、「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル等の炭素数3〜10(好ましくは、炭素数4〜10)のシクロアルキル基が例示される。
【0031】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルコキシ基」は、例えば、RO−(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0032】
本明細書中、特に限定のない限り、「エステル基」は、例えば、RCO
2−(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0033】
本明細書中、特に限定のない限り、「エーテル基」は、エーテル結合(−O−)を有する基を意味し、ポリエーテル基を包含する。ポリエーテル基は、式:Ra−(O−Rb)n−(式中、Raはアルキル基であり、Rbは各出現において同一又は異なって、アルキレン基であり、及びnは1以上の整数である。)で表される基を包含する。アルキレン基は前記アルキル基から水素原子を1個除去して形成される2価の基である。
【0034】
本明細書中、特に限定のない限り、「アシル基」は、アルカノイル基を包含する。本明細書中、特に限定のない限り、「アルカノイル基」は、例えば、RCO−(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0035】
本明細書中、特に限定のない限り、「芳香族基」は、アリール基、及びヘテロアリール基を包含する。
本明細書中、「アリール基」の例は、フェニル基、及びナフチル基等のC6−10アリール基を包含する。
本明細書中、「ヘテロアリール基」の例は、環構成原子として、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群より選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含む5〜14員(単環、2環、又は3環式)複素環基を包含する。
本明細書中、「ヘテロアリール基」の具体例は、
(1)フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、トリアジニル基等の単環式芳香族複素環基;並びに
(2)キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、インドリル基、インダゾリル基、ピロロピラジニル基、イミダゾピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾチアゾリルピラゾロピリジニル基、ピラゾロチエニル基、ピラゾロトリアジニル基等の多環式(例、二環式)芳香族複素環基を包含する。
【0036】
製造方法
本発明の、式(1);
【化8】
[式中、
R
1は、有機基を表し、
R
Xは、水素原子、又はフッ素原子を表し、及び
R
2a、R
2b、R
2c、及びR
2dは、同一又は異なって、−Y−R
21、又は−N(−R
22)
2を表し、或いはR
2bとR
2cとは連結して結合を形成してもよく、
Yは、結合手、酸素原子、又は硫黄原子を表し、
R
21は、水素原子、又は有機基を表し、
R
22は、各出現において同一又は異なって、水素原子、又は有機基を表す。]
で表される化合物、又はその閉環誘導体、若しくは開環誘導体の製造方法は、
式(2):
【化9】
[式中、Xは脱離基を表し、及びその他の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物を、
還元剤の存在下、且つ光照射下で、
式(3):
【化10】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物と反応させる工程Aを含む。
【0037】
以下に、前記各化学式中の記号を説明する。
【0038】
R
1で表される「有機基」の好適な例は、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシカルボニル基、及び芳香族基を包含する。
R
1で表される「有機基」のより好適な例は、フルオロアルキル基を包含する。
【0039】
前記「アルコキシカルボニル基」の例は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンタブトキシカルボニル、イソペントキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基等のC1−6アルコキシカルボニル基等を包含する。
【0040】
前記「芳香族基」の好適な例は、アリール基を包含し、及びより好適な例は、フェニル基、及びナフチル基等のC6−10アリール基を包含する。
【0041】
R
Xは、好ましくはフッ素原子である。
【0042】
R
2bとR
2cとが連結して結合を形成する場合、当業者が容易に理解する通り、式(1)の構造は、以下の化学式:
【化11】
の構造になり、及び式(3)の構造は、以下の化学式:
【化12】
の構造になる。
【0043】
R
2a、R
2b、R
2c、及びR
2dのうちの1個以上は、好適に、電子供与性基であることができる。
【0044】
本発明の好適な一態様において、R
2a、R
2b、R
2c、及びR
2dのうちの1個以上は、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基であることができる。
当該置換基の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基(より好ましくは、1個以上の置換基を有していてもよい5〜18員のヘテロアリール基)、
1個以上の置換基を有していてもよいチオエーテル基、及び
1個以上の置換基を有していてもよいシラザン基
を包含する。
【0045】
これらの「1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基」、「1個以上の置換基を有していてもよいチオエーテル基」、及び「1個以上の置換基を有していてもよいシラザン基」における「置換基」の好適な例は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素)、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、パーフルオロ有機基(好ましくは炭素数1〜8のパーフルオロ有機基、より好ましくはトリフルオロメチル基)、ペンタフルオロスルファニル基(F
5S−)を包含する。
本発明の好適な一態様において、R
2a、R
2b、R
2c、及びR
2dのうちの1個以上は、無置換の炭化水素基(好ましくは、炭素数1〜10の炭化水素基)であることができる。
【0046】
当該「炭化水素基」の好適な例は、アルキル基(好ましくは、C1−10アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは、C3−10、好ましくはC4−8シクロアルキル基)、及びアリール基(好ましくは、C6−10アリール基)を包含する。
【0047】
本発明のより好適な一態様においては、R
2aが、アルキル基、又はアリール基であり、且つR
2b、R
2c、及びR
2dが、水素原子である。
【0048】
Xで表される脱離基の例は、
ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、
アルキルスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のC1−6アルキルスルホニルオキシ基)、及び
アリールスルホニルオキシ基(例、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等のC6−10アリールスルホニルオキシ基)を包含する。
Xのより好適な例は、ハロゲン原子を包含する。
Xの更に好適な例は、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を包含する。
Xのより更に好適な例は、臭素原子を包含する。
【0049】
本発明の好適な一態様においては、
R
1が、フルオロアルキル基、アルコキシカルボニル基、又はアリール基であり、
R
Xが、フッ素原子であり、
R
2a、R
2b、R
2c、及びR
2dは、同一又は異なって、アルキル基(好ましくは、C1−10アルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは、C3−10シクロアルキル基、より好ましくはC4−8シクロアルキル基)、又はアリール基(好ましくは、C6−10アリール基)であり、且つ
Xが、臭素原子である。
【0050】
工程Aにおける、化合物(3)の使用量は、化合物(2)の1モルに対して、好ましくは、0.5〜10モルの範囲内、より好ましくは、1〜8モルの範囲内、及び更に好ましくは、1.2〜6モルの範囲内である。
【0051】
化合物(3)が、式(3)の構造式において示されている炭素−炭素二重結合に加えて1個以上の炭素−炭素二重結合を有する場合、閉環反応により、化合物(1)は、前記式(1)で表される化合物の閉環誘導体になり得る。当該閉環反応により形成される環は、好ましくは5〜7員環であることができる。当該閉環反応により形成される環は、炭素環、又は環構成原子として、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子からなる群より選ばれる1個以上(好ましくは、1、又は2個)のヘテロ原子を含む複素環であることができる。
【0052】
R
2aがエポキシ基である場合(すなわち、化合物(3)がエポキシ化合物である場合)、開環反応により、化合物(1)は、前記式(1)で表される化合物の開環誘導体(すなわち、エポキシ開環誘導体)になり得る。
【0053】
工程Aの反応は、還元剤の存在下で実施される。
【0054】
本発明で用いられる前記還元剤は、無機、又は有機の還元剤であることができ、その例は、水素、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸−トリエチルアミン、トリエチルシラン、テトラメチルジシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン、NaBH
3CN、NHCBH3(N-heterocyclic carbene boranes)、およびN−H部(イミノ基)を有する含窒素不飽和複素環化合物を包含する。
【0055】
本発明で用いることができる前記還元剤の好適な例は、N−H部を有する含窒素不飽和複素環化合物を包含する。
【0056】
本発明で用いることができる前記還元剤としての前記「N−H部を有する含窒素不飽和複素環化合物」の好適な例は、式(4):
【化13】
[式中、
R
3a、R
3b、R
3c、及びR
3dは、同一又は異なって、アルキル基を表す。]
で表される化合物[本明細書中、化合物(4)と称する場合がある。]を包含する。
【0057】
R
3aは、好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはメチル基、又はエチル基である。
【0058】
R
3bは、好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはメチル基、又はエチル基である。
【0059】
R
3cは、好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはメチル基、又はエチル基である。
【0060】
R
3dは、好ましくはC1−6アルキル基、より好ましくはメチル基、又はエチル基である。
【0061】
本発明で用いることができる前記還元剤のより好適な例は、次の化学式の化合物を包含する。これらの化合物は所謂Hantzschエステルである。
【化14】
【0062】
有機化学分野の技術常識によれば、化合物(2)を包含するハロゲン化アルカン誘導体は酸化を受けやすいので、ハンチエステル(Hantzsch Ester)のような還元剤は、これと直接、酸化還元反応を起こし、従って、工程Aの反応は進行せず、及び化合物(1)は得られない、と考えられる。しかし、意外にも、工程Aの反応は、ハンチエステル(Hantzsch Ester)を包含する化合物(4)の存在下で、好適に進行した。この結果を実施例に示した。
【0063】
これらの還元剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
工程Aの反応においては、所望により、アミン等の除酸剤を用いることができる。
ここで、化合物(4)を用いる場合、好適に、その他のアミンを用いないことができる。
【0065】
工程Aにおいて還元剤を用いる場合、その量は、基質である前記式(2)で表される化合物の1モルに対して、好ましくは、0.5〜10モルの範囲内、より好ましくは、1.0〜5.0モルの範囲内、及び更に好ましくは、1.2〜3.0モルの範囲内である。
【0066】
工程Aの反応は、触媒の存在下、又は実質的若しくは完全な不存在下で実施することができる。
工程Aの反応は、好ましくは触媒の存在下で実施される。
【0067】
本発明で用いることができる前記触媒の例は、遷移金属錯体、及び有機色素化合物を包含する。
【0068】
本発明で用いることができる前記遷移金属錯体が有する中心金属種の例は、コバルト、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、オスミウム、及び白金を包含する。
当該中心金属種の好適な例は、ルテニウム、イリジウム、及びパラジウムを包含する。
【0069】
本発明で用いることができる前記遷移金属錯体が有する配位子の例は、及び含窒素化合物、含酸素化合物、及び含硫黄化合物を包含する。
【0070】
配位子としての当該「含窒素化合物」の例は、ジアミン化合物(例、エチレンジアミン)、及び含窒素複素環化合物(例、ピリジン、ビピリジン、フェナントロリン、ピロール、インドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタラジン、キナゾリン、及びキノキサリン)を包含する。
【0071】
配位子としての当該「含酸素化合物」の例は、ジケトン(例、ジピバロイルメタン)、及び含酸素複素環化合物(例、フラン、ベンゾフラン、オキサゾール、ピラン、ピロン、クマリン、及びベンゾピロン)を包含する。
【0072】
配位子としての当該「含硫黄化合物」の例は、含硫黄複素環化合物(例、チオフェン、チオナフテン、及びチアゾール)を包含する。
【0073】
前記遷移金属錯体において、これらの配位子の数は1個以上であることができる。但し、いうまでもなく、その数は必ずしも明らかでなくてもよい。
【0074】
工程Aの反応に触媒を用いる場合、工程Aにおける、触媒の使用量は、化合物(2)の1モルに対して、好ましくは、0.0001〜0.1モルの範囲内、より好ましくは、0.001〜0.05モルの範囲内、及び更に好ましくは、0.005〜0.02モルの範囲内である。
【0075】
本発明で用いることができる前記有機色素化合物は、分子内に金属原子を含有しない化合物であることができる。
当該有機色素化合物の例は、ローズベンガル、エリスロシン、エオシン(例、エオシンB、エオシンY)、アクリフラビン、リポフラビン、及びチオニンを包含する。
【0076】
当該触媒の好適な例は、[Ir{dF(CF
3)ppy}
2(dtbpy)]PF
6、[Ir(dtbbpy)(ppy)
2][PF
6]、Ir(ppy)
3、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O、[Ru(bpz)
3][PF
6]
2、[Ru(bpm)
3][Cl]
2、[Ru(bpy)
2(phen−5−NH
2)][PF
6]
2、[Ru(bpy)
3][PF
6]
2、Ru(phen)
3Cl
2、Cu(dap)
2クロリド
、9−メシチル−10−メチルアクリジニウム・ペルクロラート、Ir(ppy)
3、及びPd(PPh
3)
4を包含する。
【0077】
これらの触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
工程Aで用いられる触媒は、好ましくはphotoredox触媒であることができる。
【0079】
工程Aで用いられる触媒は、担体(例、ゼオライト)に担持されていてもよい。
【0080】
工程Aの反応は、溶媒の存在下、又は実質的若しくは完全な不存在下で実施することができる。
工程Aの反応は、好ましくは、溶媒の存在下で実施される。
【0081】
本発明で用いることができる前記溶媒の例は、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、CH
3CN、エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサン、及びベンゾトリフルオライド(BTF)を包含する。
【0082】
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
工程Aの反応の開始時において、その反応系の混合物における、化合物(2)の濃度は、好ましくは1〜10000mMの範囲内、より好ましくは10〜1000mMの範囲内、及び更に好ましくは50〜200mMの範囲内である。
【0084】
工程Aの反応の開始時において、その反応系の混合物における、化合物(3)の濃度は、好ましくは5〜50000mMの範囲内、より好ましくは50〜5000mMの範囲内、及び更に好ましくは250〜1000mMの範囲内である。
【0085】
工程Aの反応に触媒を用いる場合、その反応系の混合物における、触媒の濃度は、好ましくは0.01〜100mMの範囲内、より好ましくは0.1〜10mMの範囲内、及び更に好ましくは0.5〜2mMの範囲内である。
【0086】
工程Aは、例えば、化合物(2)、化合物(3)、所望による還元剤、所望による触媒、及び所望による溶媒を混合することによって、実施できる。
当該混合の方法としては、慣用の方法を採用できる。
当該混合は、全ての物質を同時に混合してもよく、又は逐次的若しくは段階的に混合してもよい。
【0087】
工程Aの反応は、光照射下で実施される。
当該光照射に用いられる照射光としては、例えば、工程Aの反応を開始、及び/又は促進できる光であれば特に限定なく使用することができる。その光源の例は、低圧、中圧、若しくは高圧の水銀灯、タングステンランプ、及び発光ダイオード(LED)が挙げられる。
照射光は、好適に可視光であることができる。
照射光は、好ましくは300〜600nmの波長の光を含む光、より好ましくは400〜500nmの光を含む光であることができる。
照射時間は、好ましくは1〜24時間の範囲内、より好ましくは10〜18時間であることができる。
光照射の開始は、前記混合の、前、途中、同時、又は後であることができる。
光照射の強度は、工程Aの反応を開始、及び/又は促進できるエネルギーが供給される程度であればよく、これは、例えば、工程Aの反応が適当に進行するように、技術常識に基づき、光源の出力、及び光源と工程Aの反応系の距離等を調整することにより適宜調整することができる。
【0088】
工程Aの反応は、不活性ガスの存在下で実施してもよい。このような不活性ガスの例は、窒素、及びアルゴンを包含する。
【0089】
工程Aの反応温度は、好ましくは、0〜120℃の範囲内、より好ましくは、10〜80℃の範囲内、更に好ましくは、20〜60℃の範囲内である。
当該反応温度が低すぎると、工程Aの反応が不十分になる虞がある。
当該反応温度が高すぎると、コスト的に不利であり、及び望ましくない反応が起こる虞がある。
【0090】
工程Aの反応時間は、好ましくは、1〜24時間の範囲内、より好ましくは、5〜18時間の範囲内、更に好ましくは、10〜15時間の範囲内である。
当該反応時間が短すぎると、工程Aの反応が不十分になる虞がある。
当該反応時間が長すぎると、コスト的に不利であり、及び望ましくない反応が起こる虞がある。
【0091】
工程Aの反応は、好適に、バッチ式、又はフロー系により実施できる。
【0092】
本発明の製造方法により得られる化合物(1)は、所望により、所望により、溶媒抽出、乾燥、濾過、蒸留、濃縮、及びこれらの組み合わせ等の公知の精製方法によって精製することができる。
【0093】
本発明の製造方法によれば、原料である化合物(2)の転化率は、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上であり、更に好ましくは80%以上であることができる。
本発明の製造方法によれば、化合物(1)の選択率は好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であることができる。
本発明の製造方法によれば、化合物(1)の収率は好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上であることができる。
【0094】
本発明の製造方法で得られる化合物(1)は、例えば、医薬品中間体等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
以下の実施例において、特に記載の無い場合、収率は単離収率である。
。
【0097】
実施例1
【化15】
(1)容器に、photoredox触媒としてのRu(bpy)
3Cl
2・6H
2O (7.5 mg, 1mol%)、及びHantzsch ester a (380.7 mg, 1.5 mmol)を加えてDMF(5 mL)で溶かした後、(bromodifluoromethyl)benzene(206.6 mg, 1.0 mmol)、1-octene(0.78 mL, 5.0 mmol)、Et
3N(201.0 mg, 1.99 mmol)、及びDMF(5 mL)を加え、Ar置換を行った後、白色灯照射下、12時間攪拌した。
反応後溶液にEtOAc /Hexane = 9/1の溶液を40 mL加え、有機層を純水20 mLで3回、及び飽和食塩水30 mLで1回、洗浄した。その後有機層を脱水、ろ過、及び乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:Hexane)により1,1-difluoro-1-phenylnonane(151.6 mg, 収率 63%)を得た。
(2)photoredox触媒を使用しなかったこと以外は、前記(1)の反応と同様の反応を実施した。
(3)更に、Et
3Nを使用しなかったこと以外は、前記(1)の反応と同様の反応を実施した。
結果を次表に示した。これから理解される通り、photoredox触媒を用いた場合、転換率が向上した。Et
3N存在下、及び不存在下のいずれでも、反応が好適に進行した。
【0098】
【表1】
a undecaneを内部標準として用いてGCで決定した。
b NMR 収率
【0099】
(4)
前記(1)と同様の方法で、但し、次表の化合物(2)、及び化合物(3)を用いて、次表の化合物(1)を得た。前記(1)の結果とともに、これらの結果を次表に示した。
【0100】
【表2】
【0101】
(5)前記(1)〜(4)の反応では、一部の原料化合物(次表)について、目的化合物 a[化合物(1)]以外に臭素原子移動体 b、オレフィンが2分子関与した還元的付加体 c、及びオレフィンが2分子関与した臭素原子移動体 dが同時に得られたことを確認した。次表に、そのそれぞれについて、収率、並びに化合物a、b、c、及びdのGCエリア比を示した。
【化16】
(各式中のRは、R
2aに対応する。)
【表3】
【0102】
実施例2
実施例1(1)と同様の方法で、但し、次表に記載の条件で、実施例1(1)の反応を実施した。結果を次表に示した。
【表4】
【0103】
実施例3
実施例1(1)の方法と同様の方法で、容器に、(bromodifluoromethyl)benzene(1.0 mmol)、1-octene(5.0 mmol)、次表に記載のphotoredox触媒[(bromodifluoromethyl)benzeneに対して1 mol %、又は0 mol %]、Hantzsch ester a (1.5 mmol)、Et
3N(2.0 mmol)、及びDMF(10 mL)を入れ、Ar置換を行った後、次表に記載の光源で光照射をしながら12時間攪拌した。白色灯としては、白色LED(5W)を用いた。昼光色灯としては、SOLARBOX 1500e(CO.FO.ME.GRA社、キセノンランプ、ソーダライムガラスUVフィルター)を用いた。
反応後溶液にEtOAc /Hexane = 9/1の溶液を40 mL加え、有機層を純水20 mLで3回、及び飽和食塩水30 mLで1回、洗浄した。その後有機層を脱水、ろ過、及び乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:Hexane)により1,1-difluoro-1-phenylnonaneを得た。
転換率、及びGC収率を次表に示した。
【表5】
【0104】
実施例4
【化17】
実施例1(1)の方法と同様の方法で、容器に、ethyl 2-bromo-2,2-difluoroacetate(1.0 mmol)、1-butene(次表の量)、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O[ethyl 2-bromo-2,2-difluoroacetateに対して1.0 mol %]、Hantzsch ester a (1.5 mmol)、Et
3N(1.0 mmol)、及びDMF(5 mL)を入れ、Ar置換を行った後、白色灯照射下、12時間攪拌した。
反応後溶液を実施例1(1)の方法と同様の方法で精製して、化合物4Aを得た。
収率、及びGC収率を次表に示した。
【0105】
【表6】
【0106】
実施例5
【化18】
実施例1(1)の方法と同様の方法で、容器に、ペルフルオロヘキシルブロミド
5(1.0 mmol)、1-octene(次表の量)、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O[ペルフルオロヘキシルブロミド
5に対して1 mol %]、Hantzsch ester a (1.5 mmol)、Et
3N(1.0 mmol)、及びDMF(5 mL)を入れ、Ar置換を行った後、白色灯照射下、12時間攪拌した。
反応溶液を実施例1(1)の方法と同様の方法で精製して、化合物 5Aを得た。
収率、及びGC収率を次表に示した。
これに示される通り、1-オクテンの量を5モル当量から20モル当量に増やした場合、化合物5Aの収率は向上したが、同時に1-octeneが2分子付加した副生成物(化合物5B, 化合物5C)が生じ、化合物5Aの選択性は低下した。
【表7】
【0107】
実施例6
【化19】
実施例1(1)の方法と同様の方法で、容器に、ブロモフルオロ酢酸エチル(1.0 mmol)、1-octene(ブロモフルオロ酢酸エチルに対して、5モル当量、10モル当量、又は20モル当量)、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O[ブロモフルオロ酢酸エチルに対して、1 mol %]、Hantzsch ester a (1.5 mmol)、Et
3N(1.0 mmol)、及びDMF(5 mL)を入れ、Ar置換を行った後、白色灯照射下、12時間攪拌した。
反応溶液を実施例1(1)の方法と同様の方法で精製して、化合物 6Aを得た。
収率、及びGC収率を次表に示した
これに示される通り、1-octeneの量を5モル当量から20モル当量に増やすと化合物6Aの収率が向上した。
【0108】
【表8】
【0109】
実施例7
【化20】
実施例1(1)の方法と同様の方法で、容器に、ペルフルオロヘキシルヨージド
7(1.0 mmol)、1-octene(5.0 mmol)、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O[ペルフルオロヘキシルヨージド
7 に対して1.0 mol %]、Hantzsch ester a (1.5 mmol)、Et
3N(0、又は2.0 mmol)、及びDMF(5から10 mL)を入れ、Ar置換を行った後、白色灯照射下、12時間攪拌した。
反応後溶液を実施例1(1)の方法と同様の方法で精製して、化合物 7Aを得た。
転換率はいずれも100%であった。
収率及びGC収率を次表に示した。
これに示される通り、トリエチルアミンの有無にかかわらず化合物 7Aが良好な収率で得られた。
【0110】
【表9】
【0111】
実施例8
【化21】
実施例1(1)の方法と同様の方法で、容器に、ペルフルオロオクチルブロミド
8(1.0 mmol)、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O[ペルフルオロオクチルブロミド
8 に対して1.0 mol %]、1-octene(20 mmol)、Hantzsch ester a (1.5 mmol)、Et
3N(0、又は2.0 mmol)、及びDMF(5から10 mL)を入れ、Ar置換を行った後、白色灯照射下、12時間攪拌した。
反応後溶液を実施例1(1)の方法と同様の方法で精製して、フッ素化合物 8Aを得た。
収率を次表に示した。
【0112】
【表10】
【0113】
実施例9
【化22】
実施例1(1)の方法と同様の方法で、容器に、(bromodifluoromethyl)benzene(1.0 mmol)、アクリロニトリル(5.0 mmol)、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O[(bromodifluoromethyl)benzene に対して1.0 mol %]、Hantzsch ester a (1.5 mmol)、Et
3N(1.0 mmol)、及びDMF(5 mL)を入れ、Ar置換を行った後、白色灯照射下、12時間攪拌した。
反応後溶液を実施例1(1)の方法と同様の方法で精製して、化合物 8Aを得た。
収率は77%であった。
【0114】
実施例10(フロー系での反応1)
【化23】
ethyl 2-bromo-2,2-difluoroacetate(1.0 mmol)と1-octene(5.0 mmol)との反応を、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O[ethyl 2-bromo-2,2-difluoroacetateに対して1.0 mol %]、Hantzsch ester a (1.5 mmol)、Et
3N(2.0 mmol)、及びDMF (10 ml)の存在下、幅1mm、深さ300μm、及び長さ2.35mの流路を有する光マイクロリアクター(白色灯(白色LED)照射)を用いて、フロー系で行った。
その結果、滞留時間30分で、化合物10Aが56%の収率で得られた。
【0115】
実施例11(フロー系での反応2)
【化24】
(bromodifluoromethyl)benzene(1.5 mmol)と1-octene(7.5 mmol)との反応を、Ru(bpy)
3Cl
2・6H
2O[(bromodifluoromethyl)benzeneに対して1.0 mol %]、Hantzsch ester a [(bromodifluoromethyl)benzeneに対して1.5モル当量(2.25 mmol)]、及びDMF(15 mL)の存在下、幅2mm、深さ1mm、長さ3mの流路を有する光マイクロリアクター(白色灯照射)を用いて、フロー系で行った。
その結果、滞留時間30分で、化合物10Aが56%の収率で得られた。
各滞留時間での転換率、及びGC収率を次表に示した。
【0116】
【表11】
これに示される通り、滞留時間の延長により、収率の向上が見られた。
同様の反応を反応(12h)で実施した結果、化合物 11AのGC収率は86%(収率64%)であった。反応時間を考慮すると、フロー系の反応では、バッチ式反応よりも効率よく目的物が得られることが確認された。
【0117】
実施例12(フロー系での反応3)
基質として1-octeneに換えてアクリル酸メチルを用いたこと以外は実施例11の方法と同様にして、フロー系での反応を実施した。
結果を次表に示した。
同様の反応を反応(12h)で実施した結果、化合物 12AのGC収率は90%(収率72%)であった。反応時間を考慮すると、フロー系の反応では、バッチ式反応よりも効率よく目的物が得られることが確認された。
【0118】
【表12】