特開2017-160257(P2017-160257A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人神奈川大学の特許一覧
<>
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000042
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000043
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000044
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000045
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000046
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000047
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000048
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000049
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000050
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000051
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000052
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000053
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000054
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000055
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000056
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000057
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000058
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000059
  • 特開2017160257-光分解性カップリング剤 図000060
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-160257(P2017-160257A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】光分解性カップリング剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20170818BHJP
   C07D 311/18 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   C07F7/18 V
   C07D311/18
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-113211(P2017-113211)
(22)【出願日】2017年6月8日
(62)【分割の表示】特願2012-199021(P2012-199021)の分割
【原出願日】2012年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-197882(P2011-197882)
(32)【優先日】2011年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-246978(P2011-246978)
(32)【優先日】2011年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-116304(P2012-116304)
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 和夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 倫子
【テーマコード(参考)】
4C062
4H049
【Fターム(参考)】
4C062EE27
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ21
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU22
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】両末端に異なる反応性基を備え、二光子励起でも切断可能な光分解性カップリング剤を提供する。
【解決手段】光分解性カップリング剤は、両末端に反応性基を有し、その間にクマリニルメチル型光分解性基を有する。
クマリニルメチル型としては、一般式(1)又は(2)にて表される構造を備える。

【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両末端に反応性基を有し、
一般式(1)
【化1】
にて表される構造を備えることを特徴とする光分解性カップリング剤。
【請求項2】
両末端に反応性基を有し、
一般式(2)
【化2】
にて表される構造を備えることを特徴とする光分解性カップリング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両末端に異なる反応性基を備えるカップリング剤であって、二光子励起でも切断可能な光分解性カップリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer,SAM)を形成するシランカップリング剤(非特許文献1参照)やチオール系カップリング剤(非特許文献2参照)は、無機材料表面に有機物を固定化して表面を機能化するための表面修飾剤として有用である。片末端に有機官能基、もう一端に表面との結合基を有する構造をしており、シランカップリング剤ではシリル基がシリコンやガラスなどの表面にあるヒドロキシ基と反応し、またチオール系カップリング剤ではチオール基がスルフィド結合を介して金などの表面に結合する。これらカップリング剤に光分解性基を導入したものが感光性表面修飾剤である。感光性表面修飾剤を用いれば、基板表面の化学的および物理的性質(官能基の導入やぬれ性の変換など)を光により時空間制御することが可能となり、フォトマスクを介した光照射によりSAMにパターンを形成することができることから、ケミカル・バイオセンシングやエレクトロニクスなど多様な用途への応用が期待される。
また、ポリマー間を光分解性リンカーで連結し、ブロック間を光で容易に分解することを可能にしたものが光分解性ブロックコポリマーである。特に、親水性ブロックと疎水性ブロックから構成される両親媒性ブロックコポリマーは、例えば、水溶液中では自己集合して、外殻に親水性ブロックが配向して疎水性ブロックが内部に存在するように分子が集合したミセル構造や二重膜となったポリマーソーム構造を形成することが知られている。ミセルやポリマーソームは、内部に薬剤を保持させることができるため、薬剤などのキャリアーとしてドラッグデリバリーシステム(DDS)に有用である。DDSでは、薬剤の運搬だけではなく、目的地に到達した後には薬剤を放出することが重要となる。光で崩壊するミセルやポリマーソームであれば、任意の時に任意の場所で、容易に内包物を放出することが可能である。さらに、照射する光量を調節することで、内容物を徐放することも可能となる。
【0003】
光分解性基は有機合成のために光で脱保護できる保護基として開発された(非特許文献3参照)。光分解性保護基の代表的なものとしては2−ニトロベンジル基が知られており、固相合成のリンカーとしての使用(非特許文献4参照)、また最近注目されているのがケージド化合物としての利用である(非特許文献5参照)。ケージド化合物とは、生理活性分子を光分解性基で化学修飾することで一時的に活性を失わせ、光で脱保護することで活性を覚醒させることのできる化合物の総称である。
有機合成の保護基としてはさほど注目されなかった光分解性基であるが、光による局所的制御に適することからその利用は近年になって再認識されている。
【0004】
また、従来は紫外線を用いた一光子励起による光分解のみであったが、近赤外線を用いた二光子励起による光分解が可能な光分解性保護基も注目されている(非特許文献6〜8)。二光子励起では、エネルギーの低い近赤外パルスレーザーを光源とし、光源を集光することによって光子密度が非常に高くなる焦点領域のみで二つの光子を吸収することにより励起され、光分解性基が切断される。そのため、非常に高い三次元分解能を実現できる。すなわち、焦点の位置を制御することにより、三次元の微細パターンを精密に作製することも可能となる。一方、従来の一光子励起では、エネルギーの高い紫外光などを光源とするため、光源の焦点以外の領域でも光分解が起こるために分解能は低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Stephen R. Wasserman et al., Langmuir, 1989, 5, 1074-1087
【非特許文献2】Ralph G. Nuzzo et al., Journal of the American Chemical Society, 1983, 105, 4481-4483
【非特許文献3】V. N. Rajasekharan Pillai, Synthesis, 1980, 1980, 1-26
【非特許文献4】Christian G. Bochet, Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1, 2002, 125-142
【非特許文献5】Daniel Gilbert et al., ChemBioChem, 2007, 8, 89-97
【非特許文献6】Alexandre Specht et al., ChemBioChem, 2006, 7, 1690-1695
【非特許文献7】Toshiaki Furuta et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 1999, 96, 1193-1200
【非特許文献8】Ryan G. Wylie et al., Journal of Materials Chemistry, 2008, 18, 2716-2721
【非特許文献9】Shahrul A. Alang Ahmad et al., Journal of the American Chemical Society, 2009, 131, 1513-1522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光分解性保護基として用いられる2−ニトロベンジル基は、光分解でニトロソ体を生じるため、ケージ解除後の副生成物に毒性があり、また、光分解でアルデヒドあるいはケトンを生じるため、副反応の恐れがある(非特許文献9)。さらには、二光子励起による光分解効率が悪いため、一光子励起による光分解では細胞等の生体材料に対してダメージが懸念されると共に2次元的なパターニングのみしか可能でない、等の問題点が指摘されている。
【0007】
また、本出願人は、先に、同一分子内に異なる反応性基を備えるヘテロ二価性のカップリング剤であって、加水分解性シリル基、アミン反応性基、及びチオール反応性基からなる群から選択される2つの異なる反応性基を備え、この両反応性基の間に光分解性基を備えた光分解性カップリング剤(具体的には、一方の末端に加水分解性シリル基を有し、他方の末端にアミン反応性基又はチオール反応性基を有し、これら両末端基の間に光分解性基を含む光分解性カップリング剤、又は、一方の末端にアミン反応性基を有し、他方の末端にチオール反応性基を有し、これら両末端基の間に光分解性基を含む光分解性カップリング剤)や(特開2007−186472号公報)、同一分子内に、アジド反応性基(アルキン)又はアルキン反応性基(アジド)と、アミン反応性基又はチオール反応性基とを同一分子内にスペーサを介して備えるヘテロ二価性架橋剤であって、一方の末端にクリックケミストリーによりアジドと反応するアルキン、又は、アルキンと反応するアジドを含み、他末端にアミン反応性基又はチオール反応性基を含み、これら両反応性基の間に光分解性基を設けた光分解性へテロ二価性架橋剤(特開2010−260831号公報)について提案している。
これらの光分解性カップリング剤や光分解性ヘテロ二価性架橋剤にあっても、従来の光分解で用いていた紫外光の2倍の波長の可視光(波長700〜800nm)を光源とする二光子励起による光分解が可能となれば、細胞などの生体材料に対してダメージが少なくなり、また、2次元でなく3次元での材料のパターニングが可能になるなど、利用用途が大きく広がることとなる。
【0008】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、光分解による分解生成物の毒性が低く、また、光分解によって生じる生成物による副反応の恐れがなく、さらには、近赤外線による二光子励起による光分解を可能として、光分解時に生体材料へのダメージを少なくすると共に一光子励起に比べて高い3次元の空間分解能で局所的に照射することを可能とし、さらには、従来の光分解性カップリング剤や光分解性ヘテロ二価性架橋剤においても二光子励起による光分解を可能として利用用途を拡大することが可能な新規な光分解性カップリング剤を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る光分解性カップリング剤は、両末端に反応性基を有し、その間にクマリニルメチル型光分解性基を有することを特徴としている。
【0010】
具体的には、下記一般式(1)
【化1】
にて表される構造を備えるものや、下記一般式(2)
【化2】
にて表される構造を備えるものが有用である。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたクマリニルメチル型光分解性基を備えた光分解性カップリング剤によれば、以下の諸効果が得られる。
(1)光分解でニトロソ体を生じないため、光照射後の生成物の毒性が低い。
(2)光分解でアルデヒドまたはケトンを生じないため、副反応の恐れがない。
(3)一光子励起(紫外線)に加えて、二光子励起(近赤外線)による光分解も可能であるため、長波長(1/2のエネルギー)の光で切断が可能であり、細胞等の生体材料へのダメージが少なく、また、1光子励起に比べて高い3次元の空間分解能で局所的に照射することが可能となり、3次元での材料のパターニングが可能である。
(4)従来の光分解性カップリング剤や光分解性ヘテロ二価性架橋剤においても二光子励起による光分解を可能として利用用途を拡大することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロピル N−スクシンイミジルカーボネートの合成スキームを示す図である。
図2図2は、基板に2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロピル N−スクシンイミジルカーボネートを修飾した状態を示す図である。
図3図3は、図2(a)に示すように修飾した基板に光照射をして水の接触角の変化を測定した図である。
図4図4は、図2(a)に示すように修飾した基板上でアジド化合物を反応させた基板に光照射をして水の接触角の変化を測定した図である。
図5図5は、図3及び図4の基板のXPS測定の図である。
図6図6は、図2(a)に示すように修飾した基板上で図4とは異なるアジド化合物を反応させた基板に光照射をして水の接触角の変化を測定した図である。
図7図7は、図6の基板のXPS測定の図である。
図8図8は、図2(b)に示すように修飾した基板上でアミン化合物を反応させた基板に光照射をして水の接触角の変化を測定した図である。
図9図9は、図8の基板のXPS測定の図である。
図10図10は、図2(b)に示すように修飾した基板上でアミン化合物を反応させた基板に図8とは異なる条件で光照射をして水の接触角の変化を測定した図である。
図11図11は、図2(b)に示すように修飾した基板上で図8とは異なるアミン化合物を反応させた基板に光照射をして水の接触角の変化を測定した図である。
図12図12は、クマリニルメチル型光分解性シランカップリング剤の合成スキームを示す図である。
図13図13は、基板にクマリニルメチル型光分解性シランカップリング剤を修飾した状態を示す図である。
図14図14は、図13に示すように修飾した基板に光照射をして水の接触角の変化測定した図である。
図15図15は、図14の基板のXPS測定の図である。
図16図16は、クマリニルメチル型光分解性カップリング剤の合成スキームを示す図である。
図17図17は、基板にクマリニルメチル型光分解性カップリング剤を修飾した状態を示す図である。
図18図18は、図17に示すように修飾した基板に光照射をして水の接触角の変化を測定した図である。
図19図19は、図18の基板のXPS測定の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を説明する。
本発明の光分解性カップリング剤は、両末端に異なる反応性基を備え、その間に、ニトロベンジル型光分解性基に代えて、ニトロフェネチル型光分解性基(参考例)またはクマリニルメチル型光分解性基を備えたものである。
【0014】
ニトロフェネチル型光分解性基を両末端の反応性基の間に含む光分解性カップリング剤としては、下記の一般式(1)で示される2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロピル N−スクシンイミジルカーボネートが考えられる。
【0015】
【化3】
【0016】
また、クマリニルメチル型光分解性基を両末端の反応性基の間に含む光分解性カップリング剤としては、下記の一般式(2)で示される光分解性カップリング剤や、一般式(3)で示される光分解性カップリング剤が考えられる。
【化4】
【0017】
このような光分解性カップリング剤を用いることにより、従来のニトロベンジル型光分解性基と比較すると、光分解でニトロソ体を生じないので毒性が低く、また、光分解でアルデヒド又はケトンを生じないので、副反応がない。
また、一光子励起(紫外線)での光分解に加えて、二光子励起(近赤外線)による光分解も可能である。このため、2倍の長波長の光、即ち、約半分のエネルギーの光で切断が可能であり、また、2次元ではなく、3次元での分解能が得られる(3次元での材料のパターニングが可能となる)。
【0018】
以下において、上述した光分解性をより具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。尚、以下の例において、水とはイオン交換水を指す。
【参考例】
【0019】
ニトロフェネチル型光分解性カップリング剤の例として、2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロピル N−スクシンイミジルカーボネートを示す。
【0020】
このニトロフェネチル型光分解性カップリング剤を図1に示す工程により合成した。
先ず、500 mLナスフラスコに4-ethylguaiacal 5.34 g (35.1 mmol, 1.0 eq)をacetone 200 mLに溶かし、K2CO3 56.7 g (410 mmol, 2.5 eq)を加えて1時間攪拌した。その後、benzyl bromide 39 mL (328 mmol, 2.0 eq)を加えて14時間還流した(オイルバス温度70 ℃)。反応液を濃縮後、H2O 200 mLを加え、chloroform (200 mL×3)で抽出し、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥した。減圧蒸留でbenzyl bromideを留去し、淡黄色オイル37.2 g (154 mmol)を得た(ステップ1)。
【0021】
【化5】
【0022】
上記合成で得られた1−ベンジルオキシ−4−エチル−2−メトキシベンゼンの同定結果を以下に示す。

【0023】
次に、100 mL二口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、nitronium tetrafluoroborate 0.629 g (4.73 mmol, 1.1 eq)を入れ、dry-acetonitrile 20 mLで溶解した。フラスコに2-picoline 0.467 mL (0.440 g, 0.473 mmol, 1.2 eq)をdry-acetonitrile 20 mLで溶解し、-30 ℃下において、滴下ロートを用いて0.5時間かけて滴下し、さらに0.5 時間攪拌した。1-benzyloxy-4-ethyl-2-methoxybenzene 1.05 g (4.30 mmol, 1.0 eq)をdry-acetonitrile 10 mLで溶解し、滴下ロートを用いて1時間かけて滴下し、ゆっくりと室温に戻して12 時間攪拌した。濃縮後、sat. NaHCO3 aq. 100 mLを加え、ethyl acetate (100 mL×3)で抽出した。その後anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥を行い、黄褐色固体1.30 gを得た。ethyl acetateで再結晶し、第一結晶0.654 g ( 2.28 mmol)、第二結晶0.222 g ( 0.777 mmol)を得た。また第三結晶をカラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate = 5 : 1 [ カラム径 3 cm シリカ長 15 cm ])で単離精製し、濃縮、真空乾燥を行い、黄色固体0.184 gを得た(ステップ2)。
【0024】
【化6】
【0025】
上記合成で得られた1−ベンジルオキシ−4−エチル−2−メトキシ−5−ニトロベンゼンの同定結果を以下に示す。

【0026】
次に、300 mL 二口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、1-benzyloxy-4-ethyl-2-methoxy-5-nitrobenzene 7.21 g (25.0 mmol, 1.0 eq)、paraformaldehyde 3.42 g (104 mmol, 4.1 eq)、dry-dimethylslufoxide 40 mLを入れ、dry-dimethylslufoxide 5 mLに溶かしたTriton B 2.76 mL (2.93 g, 17.5 mmol, 0.7 eq)を滴下し、17時間攪拌した。その後、sat.NH4Cl aq. 100 mL加え、ethyl acetate (100 mL×3)で抽出し、有機層をsat.NaCl aq. (×3)で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥を行い、黄色オイル7.95 g を得た。その後カラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate = 1 : 1 [ カラム径 6 cm シリカ長 15 cm ]) で単離精製し、濃縮、真空乾燥を行い、黄色オイル 6.19 g (19.5 mmol)を得た(ステップ3)。
【0027】
【化7】
【0028】
上記合成で得られた2−(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)プロパノールの同定結果を以下に示す。

【0029】
次に、200 mLナスフラスコに、2-(4-benzyloxy-5-methoxy-2-nitrophenyl)propanol 6.19 g (19.5 mmol)、tetrahydrofrane 40 mLを加え、conc.HCl aq. 130 mLを滴下ロートで滴下し、室温で16時間攪拌した。反応溶液に、5% NaHCO3 aq. 250 mLを加え、ethyl acetate (250 mL×3)で抽出し、続いて有機層をsat. NaCl aq. (×3)で洗浄、anhydrous MgSO4 で乾燥、濃縮、真空乾燥を行い、緑色固体8.81 gを得た。ethyl acetateで再結晶を行い、第一結晶9.96 g (34.7 mmol)、第二結晶3.50 g (12.2 mmol)、また第二結晶のろ液をカラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate = 1 : 1 [ カラム径 5 cm シリカ長 20 cm ])で単離精製し、濃縮、真空乾燥を行い、黄色固体0.521 g を得た(ステップ4)。
【0030】
【化8】
【0031】
上記合成で得られた2−(4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)プロパノールの同定結果を以下に示す。

【0032】
次に、100 mL二口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、2-(4-hydroxy-5-methoxy-2-nitrophenyl)propanol 1.01 g (4.44 mmol, 1.0 eq)、dry-acetonitrile 20 mL、K2CO3を1.22 g (8.87 mmol, 2.0 eq)加え、室温で1時間攪拌した。その後、propargyl bromide 0.504 mL (0.792 g, 6.65 mmol, 1.5 eq)を加え、14.5時間還流した(オイルバス温度90℃)。その後、反応溶液にsat. NH4Cl aq. 30 mL, 2N HCl aq. 20 mLを加え、ethyl acetate (50 mL×3)で抽出し、続いて有機層をsat. NaCl aq. (×3)で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥、濃縮、真空乾燥を行い、黄色固体1.20 gを得た。カラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate = 1 : 1 [カラム径 3 cm シリカ長 15 cm])を行い、黄色固体1.17 g (4.40 mmol)を得た(ステップ5)。
【0033】
【化9】
【0034】
上記合成で得られた2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロパノールの同定結果を以下に示す。

【0035】
次に、20 mL 二口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、2-(5-methoxy-2-nitro-4-prop-2-ynyloxyphenyl)propanol 126 mg (0.475 mmol, 1.0eq)、dry-acetonitrile 10 mL, N,N-disuccinimidyl carbonate 370 mg (1.43 mmol, 3.0 eq)を入れ、triethylamine 0.199 mL (1.43 mmol, 3.0 eq)を入れ、室温で22.5時間攪拌した。反応溶液に、sat. NH4Cl aq. 50 mLを加え、chloroform (50 mL×3)で抽出し、続いて有機層をsat. NaHCO3 aq. (×3)で洗浄、anhydrous MgSO4 で乾燥、濃縮、真空乾燥を行い、黄色オイル 346 mgを得た。カラムクロマトグラフィー(dichloromethane : ethyl acetate = 10 : 1 [カラム径 2 cm シリカ長 15 cm])を行い、淡黄色固体170 mg (0.418 mmol)を得た(ステップ6)。
【0036】
【化10】
【0037】
上記合成で得られた2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロピル N−スクシンイミジルカーボネートの同定結果を以下に示す。

【0038】
以上の工程で得られた光分解性カップリング剤としての2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロピル N−スクシンイミジルカーボネートを用いて表面修飾を行う場合の例を図2に示す。図2(a)は、アミノ基を含むシランカップリング剤を用いて基板表面上に単分子膜を形成し、このアミノ基に上述した光分解性カップリング剤の一方の反応基を結合させたものであり、図2(b)は、アルキン反応性基(アジド基)を含むシランカップリング剤を用いて基板表面上に単分子膜を形成し、このアジド基に上述した光分解性カップリング剤の他方の反応基を結合させるものである。さらに、光分解性カップリング剤を修飾した各基板において表面上に残るもう一方の反応性基を利用して、図2(a)においてはアルキニル基に対してアジド化合物を修飾することができ、図2(b)においてはスクシンイミジル基に対してアミン化合物を修飾することができる。
【0039】
先ず、図2(a)の場合の実施例を示す。
先ず、シリコンウェハー基板をH2O、methanolで超音波洗浄し、窒素気流により乾燥させた後、UVオゾンクリーナーを用いて前処理をした。次いで、50 mL太口ナスフラスコに窒素雰囲気下においてdry-toluene 10 mL、3-aminopropyltrimethoxysilane 1.76 μL (1.79 mg, 10.0 μmol)を入れ、1 mM toluene溶液を調製した。その溶液に前処理済みのシリコンウェハー基板を入れ、100 ℃で4時間浸漬させた。その後methanolで洗い、methanolで超音波洗浄(10 min)を行った。次いでchloroformで洗い、chloroformで超音波洗浄(10 min)を行ない、表面を窒素気流で乾燥させた。この基板表面の水の接触角は46°であり、基板上にアミノ基が導入されたと考えられる。
さらに、10 mL二口試験管に窒素気流下においてdry-dimethylsulfoxde 6 mL入れ、2-(5-methoxy-2-nitro-4-prop-2-ynyloxyphenyl)propyl N-succinimidyl carbonate 60 mg (0.148 mmol)、triethylamine 60 μL (8.17 mmol)加え、1%DMSO溶液を調製した。その溶液に前記のアミノ化基板を入れ、室温で23時間浸漬した。その後methanolで洗い、methanolで超音波洗浄(10 min)を行った。次いでchloroformで洗い、chloroformで超音波洗浄(10 min)を行ない、表面を窒素気流で乾燥させた。この基板表面の水の接触角は71°であり、水の接触角が上昇したことから疎水性になったことを示し、基板上に光分解性リンカーが導入されたことが考えられる。
【0040】
その後、2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロピル N−スクシンイミジルカーボネートを表面に導入した修飾基板の光分解を調べるために、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して一定時間ごとに光照射し(波長 > 320 nm、光量 50 mW/ cm2)、水の接触角測定を行った。
光分解は次式のようになされ、図3に示す水の接触角測定より、時間と共に光分解が進行していることが確認された。
【0041】
【化11】
【0042】
さらに、上述の工程で得られた光分解性カップリング剤を修飾した基板を用いて、他方の反応基であるアルキニル基に対するアジド化合物の修飾も行った。すなわち、50 mL 太口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-heptadecafluoroundecyl azide 12.5 mg(24.8 μmol)、dry-tetrahydrofuran 10 mLを入れ、約2 mM混合溶液を調製した。混合溶液に bromotris(triphenylphosphine)copper 14.3 mg (15.2 μmol), N,N-diisopropylethylamine 50 μL(36.5 mg , 0.282 mmol)を加え、リンカーを修飾した基板を入れ、60 ℃で25時間浸漬した。その後methanolで洗い、methanolで超音波洗浄(10 min)を行った。次いでchloroformで洗い、chloroformで超音波洗浄(10 min)を行ない、表面を窒素気流で乾燥させた。この基板表面の水の接触角は97°であり、大きく上昇したことから疎水性であるフッ化アルキル鎖が基板上に導入されたことを示す。また、図5に示すXPS測定からもフッ化アルキル鎖が導入されたことを確認した。
【化12】
【0043】
その後、得られた修飾基板の光分解を調べるために、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して一定時間ごとに光照射し(波長> 320 nm、光量 50 mW/ cm2)、水の接触角測定を行った。
光分解は次式のようになされ、図4に示す水の接触角測定より、時間と共に光分解が進行していることが確認された。また、図5に示すXPS測定において、光照射後にフッ化アルキル鎖及びニトロ基由来のピークが消失していることからも光分解を確認した。
【化13】
【0044】
また、光分解性カップリング剤を修飾した基板に対して、上述とは異なるアジド化合物の修飾も行った。すなわち、50 mL太口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、PEG350-azide 11.8 mg(31.5 μmol)、dry-tetrahydrofuran 10 mLを入れ、約3 mM混合溶液を調製した。混合溶液にbromotris(triphenylphosphine)copper 12.1 mg(13.0 μmol), N,N-diisopropylethylamine 60 μL(44.5 mg, 0.344 mmol)を加え、カップリング剤を修飾した基板を入れ、60 ℃で24時間浸漬した。その後methanolで洗い、methanolで超音波洗浄(10 min)を行った。次いでchloroformで洗い、chloroformで超音波洗浄(10 min)を行ない、表面を窒素気流で乾燥させた。この基板表面の水の接触角は48°であり、大きく減少したことから親水性であるポリエチレングリコール鎖が基板上に導入されたことを示す。
【化14】
【0045】
その後、得られた修飾基板の光分解を調べるために、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して一定時間ごとに光照射し(波長> 320 nm、光量50 mW/ cm2)、水の接触角測定を行った。
光分解は次式のようになされ、図6に示す水の接触角測定より、時間と共に光分解が進行していることが確認された。また、図7に示すXPS測定において、光照射後にニトロ基由来のピークが消失していることからも光分解を確認した。
【化15】
【0046】
次に、図2(b)の場合の実施例を示す。
先ず、シリコンウェハー基板をH2O、methanolで超音波洗浄し、窒素気流により乾燥させた後、UVオゾンクリーナーを用いて前処理をした。次いで、50 ml太口ナスフラスコに(3-azidopropyl)trimethoxysilane 17.5 mg (85.2 μmol)入れ、tetrahydrofuran 4 mL、2N HCl 10 μL、cyclohexane 16 mL入れた。その溶液に前処理済みのシリコンウェハー基板を入れ、室温で18.5時間浸漬した。その後methanolで洗い、methanolで超音波洗浄(10 min)を行った。さらにchloroformで洗い、chloroformで超音波洗浄(10 min)を行ない、表面を窒素気流で乾燥させ、接触角を測定した。この基板表面の水の接触角は70°であり、基板上にアジド基が導入されたと考えられる。
さらに、50 mL太口ナスフラスコに2-(5-methoxy-2-nitro-4-prop-2-ynyloxyphenyl)propyl N-succinimidyl carbonate 60.5 mg (0.149 mmol)を入れ、窒素気流下においてdry-acetonitrile 10 mL、copper(I) bromide 2.8 mg (19.5 μmol, 0.1eq)を加え、0.5% acetonitrile溶液を調製した。その溶液にアジド化基板を入れ、50 ℃で71時間浸漬した。その後EDTA・Na水溶液で超音波洗浄(10 min)、純水で超音波洗浄(10 min)、methanolで超音波洗浄(10 min)、chloroformで超音波洗浄(10 min)を行ない、表面を窒素気流で乾燥させ、接触角を測定した。この基板表面の水の接触角は64°であり、基板上に光分解性カップリング剤が導入されたことが推測される。
【0047】
さらに、上述の工程で得られた光分解性カップリング剤を修飾した基板を用いて、他方の反応基であるスクシンイミジル基に対するアミン化合物の修飾も行った。すなわち、50 mL太口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-heptadecafluoroundecylamine 31.5 mg (63.6 μmol), dry-acetonitrile 10 mL、triethylamine 4.0 μL (2.9 mg, 28.6 μmol)加えた。その溶液にカップリング剤を修飾した基板を入れ、室温で24時間浸漬した。その後methanolで超音波洗浄(10 min)を行った。さらにchloroformで超音波洗浄(10 min)を行ない、表面を窒素気流で乾燥させ、接触角を測定した(図8)。この基板表面の水の接触角は108°であり、大きく上昇したことから疎水性であるフッ化アルキル鎖が基板上に導入されたことを示す。また、図9に示すXPS測定からもフッ化アルキル鎖が導入されたことを確認した。
【化16】
【0048】
その後、得られた修飾基板の光分解を調べるために、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して一定時間ごとに光照射し(波長> 320 nm、光量50 mW/ cm2)、水の接触角測定を行った。
光分解は次式のようになされ、図8に示す水の接触角測定より、時間と共に光分解が進行していることが確認された。また、図9に示すXPS測定において、光照射後にフッ化アルキル鎖のピークが消失していることからも光分解を確認した。
【化17】
【0049】
また、上記修飾基板の光分解を調べるために、別の条件での光照射も行った。すなわち、石英セルにアセトニトリル-トリエチルアミン10%溶液中に修飾基板を入れ、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して一定時間ごとに光照射し(波長> 320 nm、光量 50 mW/ cm2)、水の接触角測定を行った。
図10に示す水の接触角測定より、空気中で光照射するよりも光分解が促進され、時間と共に光分解が進行していることが確認された。
【0050】
また、光分解性カップリング剤を修飾した基板に対して、上述とは異なるアミン化合物の修飾も行った。すなわち、50 mL太口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、PEG350-NH2 22.6 mg (64.8 μmol)、dry-acetonitrile20 mL、triethylamine 10.0 μL (7.26 mg, 71.7 μmol)加え、溶液を調製した。その溶液にカップリング剤を修飾した基板を入れ、室温で22時間攪拌した。その後methanolで超音波洗浄(10 min)を行った。さらにchloroformで超音波洗浄(10 min)を行ない、表面を窒素気流で乾燥させ接触角を測定した。この基板表面の水の接触角は50°であり、減少したことから親水性であるポリエチレングリコール鎖が基板上に導入されたことを示す。
【化18】
【0051】
その後、得られた修飾基板の光分解を調べるために、石英セルにアセトニトリル-トリエチルアミン10%溶液中に修飾基板を入れ、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して一定時間ごとに光照射し(波長 > 320 nm、光量 50 mW/ cm2)、水の接触角測定を行った。
光分解は次式のようになされ、図11に示す水の接触角測定より、時間と共に光分解が進行していることが確認された。
【化19】
【0052】
また、このニトロフェネチル型光分解性カップリング剤は下記の式で示されるように、先に片末端に加水分解性シリル基をもつアミンまたはアジドと反応させてから表面に導入することも可能である。
【化20】
【0053】
50 mL 二口ナスフラスコに窒素雰囲気下において、2-(5-methoxy-2-nitro-4-prop-2-ynyloxyphenyl)propyl N-succinimidyl carbonate 300 mg (0.738 mmol, 1.0 eq)、dry-tetrahydrofuran 10 mLを入れ、dry-tetrahydrofuran 2 mLに溶解した3-aminopropyltrimethoxysilane 0.147 g (0.818 mmol, 1.1 eq)を加え、室温で2時間攪拌した。濃縮後、中圧カラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate : acetone : tetramethoxysilane = 50 : 25 : 25 : 1)、次いでカラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate : tetramethoxysilane = 200 : 100 : 3)を行い、黄色粘体185 mg (0.393 mmol)を得た。
【0054】
【化21】
【0055】
上記合成で得られた2−(5−メトキシ−2−ニトロ−4−プロパ−2−インイルオキシフェニル)プロピル (3−トリメトキシシリル)プロピルカルバメートの同定結果を以下に示す。
Yield 185 mg (0.393 mmol) 53%
Rf値 0.10 (hexane : ethyl acetate = 2 : 1)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ= 0.61 (3H, t, J = 8.1 Hz, -CH2-CH2-CH2-Si-)
= 1.33 (2H, d, J = 7.0 Hz, Ar-CH-CH3)
= 1.57 - 1.62 (2H, d, J = 7.0 Hz, Ar-CH-CH3)
= 2.59 (3H, t, J = 2.4 Hz, CH≡C-)
= 3.12 (2H, q, J = 6.7 Hz, NH-CH2)
= 3.56 (9H, s, -Si-(OCH3)3)
= 3.89 - 3.95 (4H, m, Ar-OCH3, -CH(CH3)-CH2)
= 4.13 - 4.24 (2H, m, -CH(CH3)-CH2)
= 4.78 - 4.81 (3H, m, CH≡C-CH2-, NH)
= 6.85 (1H, s, Ar-H)
= 7.60 (1H, s, Ar-H)
IR (NaCl)
3340 cm-1 (NH)
3294 cm-1 (C-H alkyne)
2122 cm-1 (C≡C)
1712 cm-1 (C=O)
1520 and 1338 cm-1(-NO2)
【実施例】
【0056】
クマリニルメチル型光分解性シランカップリング剤及びクマリニルメチル型光分解性カップリング剤の実施例を示す。
【0057】
このクマリニルメチル型光分解性シランカップリング剤を図12に示す工程により合成した。
先ず、水分離器を取り付けた冷却管を装着した100 mLナスフラスコに4-bromoresorcinol 4.00 g (21.2 mmol, 1.0 eq)、toluene 45 mL、ethyl 4-chloroacetoacetate 5.23 g (31.8 mmol, 1.5 eq)、p-toluenesulfonic acid monohydrate 0.42 g (2.2 mmol, 0.10 eq)を入れ、撹拌しながら14時間加熱還流した。反応混合物を室温まで放冷後、冷水60 mLを加えて30分撹拌した。析出物を吸引ろ過にて回収し、真空乾燥を行い、茶色固体4.32 g (14.9 mmol, 71%)を得た(ステップ7)。
【0058】
【化22】
【0059】
上記合成で得られた6−ブロモ−4−クロロメチル−7−ヒドロキシクマリンの同定結果を以下に示す。
Yield 4.32 g (14.9 mmol, 71%)
Rf = 0.47 (hexane : ethyl acetate = 1 : 1)
1H NMR (CD3OD / TMS) 400 MHz: δ = 4.82 (2H, s, -CH2-Cl), 6.42 (1H, s, -CH-C=O), 6.85 (1H, s, -CH-C-OH), 7.95 (1H, s, -CH-C-Br)
IR (KBr): 1703 cm-1(C=O), 3400 cm-1 [Br] (O-H)
【0060】
次に、10 mLナスフラスコに6-bromo-4-chloromethyl-7-hydroxycoumarin 67.1 mg (0.23 mmol, 1.0 eq)、dry benzene 2 mL、4-pentenoic acid 48 μL (0.47 mmol, 2.0 eq)、DBU 131 μL (0.88 mmol, 3.8 eq)を入れ、N2雰囲気下、1.5時間還流した。ethyl acetateで希釈後、1 N HClでクエンチし、ethyl acetateで抽出、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮した。真空乾燥を行い、淡褐色固体71.3 mgを得た。カラムクロマトグラフィー(展開溶媒chloroform : methanol = 20 : 1)、黄色固体65.2 mg (80%)を得た(ステップ8)。
【0061】
【化23】
【0062】
上記合成で得られた6−ブロモ−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル 4−ペンテノアートの同定結果を以下に示す。
Yield 65.2 mg (0.18 mmol, 80%)
Rf = 0.33 (hexane : ethyl acetate = 1 : 1), 0.23 (chloroform : methanol = 20 : 1)
1H NMR (CD3OD / TMS) 400 MHz: δ = 2.41 (2H, q, J = 7 Hz, -CH2-CH2-CH=CH2), 2.58 (2H, t, J = 7 Hz, -CH2-CH2-CH=CH2), 5.00 (1H, d with fine coupling, J = 10 Hz, -CH=CH2), 5.07 (1H, d with fine coupling, J = 17 Hz, -CH=CH2), 5.31 (2H, d, J = 1.3 Hz, -CH2-O-C(=O)-), 5.86 (1H, ddt, J = 17, 10, 7 Hz, -CH=CH2), 6.26 (1H, t, J = 1.3 Hz, -CH-C=O), 6.85 (1H, s, -CH-C-OH), 7.83 (1H, s, -CH-C-Br)
1H NMR (CDCl3 / TMS) 400 MHz: δ = 2.45 (2H, q, J = 7 Hz, -CH2-CH2-CH=CH2), 2.59 (2H, t, J = 7 Hz, -CH2-CH2-CH=CH2), 5.06 (1H, d with fine coupling, J = 10 Hz, -CH=CH2), 5.10 (1H, d with fine coupling, J = 17 Hz, -CH=CH2), 5.25 (2H, s, -CH2-O-C(=O)-), 5.84 (1H, ddt, J = 17, 10, 7 Hz, -CH=CH2), 6.37 (1H, s, -CH-C=O), 7.06 (1H, s, -CH-C-OH), 7.64 (1H, s, -CH-C-Br)
【0063】
次に、20 mL二口ナスフラスコに、6-bromo-7-t-butoxycarbonyloxycoumarin-4-ylmethyl 4-pentenoate 200 mg (0.566 mmol, 1.0 eq)と撹拌子を入れて1時間真空乾燥した後、dry THF 1.0 mL、trimethoxysilane 721 μL (5.66 mmol, 10 eq)、Karstedt’s catalyst 5 drops(パスツールピペット使用、ca. 90 mg)を加え、N2雰囲気下、遮光して室温で16時間撹拌した。エバポレータで濃縮した後、カラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒hexane : chloroform : ethyl acetate : tetramethoxysilane = 5 : 5 : 1: 0.1→4 : 4 : 1 : 0.1)、白色固体146 mg (0.308 mmol, 54%)を得た(ステップ9)。
【0064】
【化24】
【0065】
上記合成で得られた6−ブロモ−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル 5−トリメトキシシリルペンタノアートの同定結果を以下に示す。
Yield 146 mg (0.308 mmol, 54%)
Rf = 0.37 (hexane : ethyl acetate = 1 : 1)
1H NMR (CDCl3 / TMS) 400 MHz: δ = 0.65-0.71 (2H, m, -CH2-CH2-CH2-CH2-Si(OCH3)3), 1.44-1.54 (2H, m, -CH2-CH2-CH2-CH2-Si(OCH3)3), 1.74 (2H, quint., J = 7.7 Hz, -CH2-CH2-CH2-CH2-Si(OCH3)3), 2.47 (2H, t, J = 7.6 Hz, -CH2-CH2-CH2-CH2-Si(OCH3)3), 3.57 (9H, s, -Si-(O-CH3)3), 5.22 (2H, s, -C(=O)-O-CH2-), 6.02 (1H, s, -OH), 6.37 (1H, s, -CH-C=O), 7.03 (1H, s, -CH-C-OH), 7.64 (1H, s, -CH-C-Br)
【0066】
以上の工程で得られたクマリニルメチル型光分解性シランカップリング剤を用いて表面修飾を行う場合の例を図13に示す。
先ず、50 mL太口ナスフラスコにconc. H2SO4 (14 mL)と30% H2O2 (6 mL)を入れて混合し、ピラニア溶液(conc. H2SO4: 30% H2O2 = 7 : 3)20 mLを調製した。シリコンウェハー基板を入れ、100 ℃で1 h静置した。室温まで放冷後、溶液を除去して、純水約20 mLで3回洗浄し、純水約30 mL中で10 min超音波洗浄した。窒素気流で乾燥し、表面修飾に用いた。
続いて、50 mL太口ナスフラスコに6-bromo-7-hydroxycoumarin-4-ylmethyl 5-trimethoxysilylpentanoate (9.5 mg, 0.02 mmol)の1 mM dry toluene溶液20 mLを調製し、シリコンウェハー基板を入れ、N2雰囲気下、遮光して室温で3 h静置した。基板を取り出し、methanolでリンスし、methanol約30 mL中で10 min超音波洗浄し、次いでchloroformでリンスし、chloroform約30 mL中で10 min超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。この基板表面の水の接触角は61°であり、基板上にクマリニルメチル型光分解性シランカップリング剤が導入されたことが推測される。
【0067】
その後、6−ブロモ−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル 5−トリメトキシシリルペンタノアートを表面に導入した修飾基板の光分解を調べるために、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して1% DMSO-H2O溶液中で一定時間ごとに光照射し(波長 > 320 nm、光量15 mW/ cm2)、水の接触角測定を行った。
光分解は次式のようになされ、図14に示す水の接触角測定より、時間と共に光分解が進行していることが確認された。また、図15に示すXPS測定において、光照射後にブロモ基由来のピークが消失していることからも光分解を確認した。
【0068】
【化25】
【0069】
また、クマリニルメチル型光分解性カップリング剤を図16に示す工程により合成した。
先ず、200 mLナスフラスコに6-bromo-4-chloromethyl-7-hydroxycoumarin 2.03 g (7.01 mmol, 1.0 eq)、DMF 60 mL、1 N HCl 30 mLを入れ、100 °Cで19時間(終夜)撹拌した。減圧蒸留によりDMFを除去し、残渣にsat. NaCl aq. 50 mLを加え、ethyl acetate (100 mL x 2, 50 mL x 3)で抽出し、有機層をanhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮した。真空乾燥(湯浴45 °C)を行い、茶色固体1.68 g (6.20 mmol, 88%)を得た(ステップ10)。
【0070】
【化26】
【0071】
上記合成で得られた6−ブロモ−7−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルクマリンの同定結果を以下に示す。
Yield 1.68 g (6.20 mmol, 88%)
Rf = 0.18 (hexane : ethyl acetate = 1 : 1)
1H NMR (CD3OD / TMS) 400 MHz: δ = 4.77 (2H, d, J= 1.4 Hz, -CH2-OH), 6.38 (1H, t, J = 1.4 Hz, -CH-C=O), 6.84 (1H, s, -CH-C-OH), 7.82 (1H, s, -CH-C-Br)
【0072】
次に、20 mL二口ナスフラスコに、6-bromo-7-hydroxy-4-hydroxymethylcoumarin 200 mg (0.74 mmol, 1.0 eq)、DMAP 55.8 mg (0.46 mmol, 0.6 eq)、EDC・HCl 177 mg (0.92 mmol, 1.3 eq)、dry THF 4 mL、5-hexynoic acid 98 μL (0.89 mmol, 1.2 eq)を入れ、N2雰囲気下、遮光して室温で5時間撹拌した。1 N HCl (5 mL)を加えてクエンチし、ethyl acetate (5 mL x 3)で抽出、有機層をsat. NaCl aq. (5 mL)で洗浄後、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮した。真空乾燥を行い、茶色粘体118 mgを得た。カラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒chloroform : ethyl acetate = 15 : 1)、淡茶色固体86 mg (32%)を得た(ステップ11)。
【0073】
【化27】
【0074】
上記合成で得られた6−ブロモ−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル 5−ヘキシノアートの同定結果を以下に示す。
Yield 86 mg (0.23 mmol, 32%)
Rf = 0.28 (chloroform : ethyl acetate = 15 : 1)
1H NMR (CDCl3 / TMS) 400 MHz: δ = 1.92 (2H, quint., J = 7.2 Hz, -CH2-CH2-CH2-C≡CH), 2.01 (1H, t, J = 2.7 Hz, -CH2-CH2-CH2-C≡CH), 2.32 (2H, td, J = 6.9, 2.7 Hz, -CH2-CH2-CH2-C≡CH), 2.63 (2H, t, J = 7.5 Hz, -CH2-CH2-CH2-C≡CH), 5.23 (2H, d, J = 1.4 Hz, -CH2-O-C(=O)-), 6.00 (iH, br s, -OH), 6.38 (1H, t, J= 1.4 Hz, -CH-C=O), 7.03 (1H, s, -CH-C-OH), 7.64 (1H, s, -CH-C-Br)
【0075】
以上の工程で得られたクマリニルメチル型光分解性カップリング剤である6−ブロモ−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル 5−ヘキシノアートは、ステップ7で得られた6−ブロモ−4−クロロメチル−7−ヒドロキシクマリンから1段階で合成することもできる。
すなわち、100 mL二口ナスフラスコに、6-bromo-4-chloromethyl-7-hydroxycoumarin 0.500 g (1.73 mmol, 1.0 eq)、potassium carbonate 0.371 g (2.68 mmol, 1.6 eq)、5-hexynoic acid 0.311 g (2.77 mmol, 1.6 eq) 、dry DMF 12.5 mLを入れ、N2雰囲気下80 ℃で2時間加熱した。反応溶液にethyl acetate (25 mL x 3)、1 N HCl 25 mLを加えて抽出し、有機層をsat. NaCl aq. (50 mL x 5)で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮した。カラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒chloroform : methanol = 20 : 1)、淡黄色固体444 mg (1.22 mmol, 70%)を得た(ステップ12)。
【0076】
【化28】
【0077】
以上の工程で得られたクマリニルメチル型光分解性カップリング剤を用いて表面修飾を行う場合の例を図17に示す。アルキン反応性基(アジド基)を含むシランカップリング剤を用いて基板表面上に単分子膜を形成し、このアジド基に上述したクマリニルメチル型光分解性カップリング剤の反応基(アルキニル基)を結合させるものである。
【0078】
先ず、シリコンウェハー基板をピラニア溶液(conc. H2SO4: 30% H2O2 = 7 : 3)中、100 ℃で1 h前処理した。次いで、50 mL太口ナスフラスコに(3-azidoproply)trimethoxysilane 18.3 mg (89.1 μmol)、tetrahydrofuran 4 mL、2N HCl 10 μL、cyclohexane 16 mLを入れて溶液を調製した。その溶液に前処理済みシリコンウェハー基板を室温で22 h浸漬した。methanolでリンスし、methanolで10 min超音波洗浄し、次いでchloroformでリンスし、chloroformで10 min超音波洗浄した。表面を窒素気流で乾燥した。この基板表面の水の接触角は75°であり、基板上にアジド基が導入されたと考えられる。
続いて、50 mL太口ナスフラスコに6-bromo-7-hydroxycoumarin-4-ylmethyl 5-hexynoate 55.3 mg (0.151 mmol)を入れ、窒素気流下においてdry-acetonitrile 15 mL、copper(I) bromide 33.4 mg (0.233 mmol, 1.2 eq)を加え、acetonitrile溶液を調製した。その溶液にアジド化基板を入れ、撹拌下50 ℃で24時間浸漬した。その後methanolで10分間超音波洗浄、EDTA・Na aq.で10分間超音波洗浄、純水で15分間超音波洗浄、methanolで10分間超音波洗浄、chloroformで10分間超音波洗浄し、窒素気流で乾燥した。この基板表面の水の接触角は63°であり、基板上に光分解性カップリング剤が導入されたことが推測される。
【0079】
その後、6−ブロモ−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル 5−ヘキシノアートを表面に導入した修飾基板の光分解を調べるために、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して1% DMSO-H2O溶液中で一定時間ごとに光照射し(波長 > 320 nm、光量15 mW/ cm2)、水の接触角測定を行った。
光分解は次式のようになされ、図18に示す水の接触角測定より、時間と共に光分解が進行していることが確認された。また、図19に示すXPS測定において、光照射後にブロモ基由来のピークがほぼ消失していることからも光分解を確認した。
【0080】
【化29】
【0081】
尚、以上の光分解性カップリング剤は、特開2007−186472号公報に示される光分解性カップリング剤のスペーサR(光分解性基)として用いるようにしても、また、特開2010−260831号公報に示される光分解性ヘテロ二価性架橋剤のスペーサR(光分解性基)等として用いるようにしてもよい。
即ち、下記一般式(4)で表されるヘテロ二価性の架橋剤(光分解性カップリング剤)として、無機材料と反応する加水分解性を有するシリル基(加水分解性シリル基)、生体分子などのアミノ基と反応するアミン反応性基、及び生体分子などのチオール基と反応するチオール反応性基の中から選択された2つの異なる反応性基X,Yを有し、この2つの異なる反応性基の間に上述したリンカー(ニトロフェネチル型光分解性基またはクマリニルメチル型光分解性基):Rを用いるようにしてもよい。
X−R−Y (4)
【0082】
加水分解性シリル基は、加水分解して無機材料(ガラス、シリコンなど)と結合するものであり、アルコール型、クロロ型、酢酸型、オキシム型、アミド型、アセトン型などが利用可能であり、中でもクロロシリル基またはアルコキシシリル基が好ましい。
【0083】
アミン反応性基は、生体分子等にあるアミン官能基と共有結合するものであり、N-ヒドロキシスクシンイミド( NHS )エステル基、イミドエステル基、イソシアネート基、ニトロフェニルハライド基などが利用可能であり、好適な例としては、下記の構造式(5)で示されるN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基を含有するものである。
【0084】
【化30】
【0085】
チオール反応性基は、生体分子等にあるチオール官能基と共有結合するものであり、マレイミド、ピリジルジスルフィド、チオフタルイミド、活性ハロゲン、ハロアセトアミド、ジスルフィド、チオサルフェートなどが利用可能であり、好適な例としては、下記の構造式(6)又は(7)で示される マレイミドを包含するものである。尚、構造式(6)はチオール反応性基であるが、構造式(7)は加熱によって(6)を生成するチオール反応性基の前駆体である。
【0086】
【化31】
また、一方の末端にクリックケミストリーによりアジドと反応するアルキン、又は、アルキンと反応するアジド(反応性基Xとする)を有し、他末端に上述した加水分解性シリル基又は上述したアミン反応性基又は上述したチオール反応性基(反応性基Yとする)を有し、これら異なる2つの反応性基X,Yの間に上述したリンカー(ニトロフェネチル型光分解性基またはクマリニルメチル型光分解性基):Rを用いるようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19