【課題】電池の内部抵抗が低くサイクル特性を良好に維持できる非水系二次電池を製造可能な非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物及びそれを被覆した活物質を提供することを目的とする。
【解決手段】炭素数1〜12の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a11)及びアニオン性単量体(a12)を含んでなる単量体組成物の重合体であり、酸価が30〜700である重合体を含んでなる非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物。
炭素数1〜12の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a11)及びアニオン性単量体(a12)を含んでなる単量体組成物の重合体であり、酸価が30〜700である重合体を含んでなる非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物。
前記アニオン性単量体(a12)が、炭素数3〜9のラジカル重合性不飽和カルボン酸、炭素数2〜8のラジカル重合性不飽和スルホン酸及び炭素数2〜9のラジカル重合性不飽和ホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物。
前記アニオン性単量体の塩(a13)が、ビニルスルホン酸アニオン、アリルスルホン酸アニオン、スチレンスルホン酸アニオン又は(メタ)アクリル酸アニオンとリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンとの塩である請求項3に記載の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物。
前記単量体組成物中に含まれるアニオン性単量体(a12)の重量割合が、エステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の合計重量に基づいて10〜90重量%である請求項3又は4に記載の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物。
非水系二次電池用活物質(Y)の表面の少なくとも一部に請求項1〜6のいずれかに記載の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物を含んでなる被覆層を有する非水系二次電池用被覆活物質。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物は、炭素数1〜12の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a11)[以下、エステル化合物(a11)と記載する]及びアニオン性単量体(a12)を含んでなる単量体組成物の重合体であり、酸価が30〜700である重合体を含んでなる非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物である。
なお、本願において(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。
【0012】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物に含まれる重合体の酸価は、活物質の体積変化抑制等の観点から、30〜700である。酸価が30より小さくても700より大きくても被覆活物質間の界面抵抗が上昇し良好な電気特性を発揮できない。酸価は使用する活物質及び電解液の種類に応じて調整することができるが、電気特性等の観点から500〜700が更に好ましい。
なお、本明細書における非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物に含まれる重合体の酸価は、JIS K 0070−1992の方法で測定され、本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物に含まれる重合体の酸価は単量体組成物に含まれるアニオン性単量体(a12)の含有量を調整することで前記の範囲とすることができる。
【0013】
まず、エステル化合物(a11)について説明する。
エステル化合物(a11)は炭素数1〜12の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物であり、炭素数1〜12の1価の脂肪族アルコールとしては、炭素数1〜12の1価の分岐又は直鎖脂肪族アルコールが挙げられ、メタノール、エタノール、プロパノール(n−プロパノール、iso−プロパノール)、ブチルアルコール(n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール)、ペンチルアルコール(n−ペンチルアルコール、2−ペンチルアルコール及びネオペンチルアルコール等)、ヘキシルアルコール(1−ヘキサノール、2−ヘキサノール及び3−ヘキサノール等)、ヘプチルアルコール(n−ヘプチルアルコール、1−メチルヘキシルアルコール及び2−メチルヘキシルアルコール等)、オクチルアルコール(n−オクチルアルコール、1−メチルヘプタノール、1−エチルヘキサノール、2−メチルヘプタノール及び2−エチルヘキサノール等)、ノニルアルコール(n−ノニルアルコール、1−メチルオクタノール、1−エチルヘプタノール、1−プロピルヘキサノール及び2−エチルヘプチルアルコール等)、デシルアルコール(n−デシルアルコール、1−メチルノニルアルコール、2−メチルノニルアルコール及び2−エチルオクチルアルコール等)、ウンデシルアルコール(n−ウンデシルアルコール、1−メチルデシルアルコール、2−メチルデシルアルコール及び2−エチルノニルアルコール等)、ラウリルアルコール(n−ラウリルアルコール、1−メチルウンデシルアルコール、2−メチルウンデシルアルコール、2−エチルデシルアルコール及び2−ブチルヘキシルアルコール等)等が挙げられる。
【0014】
エステル化合物(a11)として好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−メチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルが更に好ましい。
【0015】
アニオン性単量体(a12)について説明する。
アニオン性単量体(a12)はラジカル重合性を有する重合性基とアニオン性基を有する単量体であり、ラジカル重合性基として好ましいものとしては、ビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、アニオン性基として好ましいものとしては、ホスホン酸基、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
【0016】
アニオン性単量体(a12)として好ましいものとしては、炭素数3〜9のラジカル重合性不飽和カルボン酸、炭素数2〜8のラジカル重合性不飽和スルホン酸及び炭素数2〜9のラジカル重合性不飽和ホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0017】
炭素数3〜9のラジカル重合性不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜9のラジカル重合性不飽和脂肪族モノカルボン酸及び炭素数9のラジカル重合性不飽和芳香族モノカルボン酸が挙げられ、炭素数3〜9のラジカル重合性不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、ブタン酸(2−メチルブタン酸及び3−メチルブタン酸等の置換ブタン酸を含む)、ペンテン酸(2−メチルペンテン酸及び3−メチルペンテン酸等の置換ペンテン酸を含む。)、ヘキセン酸(2−メチルヘキセン酸及び3−メチルヘキセン酸等の置換ヘキセン酸を含む。)、ヘプテン酸(2−メチルヘプテン酸及び3−メチルヘプテン酸等の置換ヘプテン酸を含む。)及びオクテン酸(2−メチルオクテン酸及び3−メチルオクテン酸等の置換オクテン酸を含む。) 等が挙げられる。
炭素数9のラジカル重合性不飽和芳香族モノカルボン酸としては、3−フェニルプロペン酸及びビニル安息香酸等が挙げられる。
【0018】
炭素数2〜8のラジカル重合性不飽和スルホン酸としては、炭素数2〜8のラジカル重合性不飽和脂肪族モノスルホン酸及び炭素数8のラジカル重合性不飽和芳香族モノスルホン酸が挙げられる。
炭素数2〜8のラジカル重合性不飽和脂肪族モノスルホン酸としては、ビニルスルホン酸(1−メチルビニルスルホン酸及び2−メチルビニルスルホン酸等の置換ビニルスルホン酸を含む)、アリルスルホン酸 (1−メチルアリルスルホン酸及び2−メチルアリルスルホン酸アニオン等の置換アリルスルホン酸を含む。)、ブテンスルホン酸(1−メチルブテンスルホン酸及び2−メチルブテンスルホン酸等の置換ブテンスルホン酸を含む。)、ペンテンスルホン酸(1−メチルペンテンスルホン酸及び2−メチルペンテンスルホン酸等の置換ペンテンスルホン酸を含む。)ヘキセンスルホン酸(1−メチルヘキセンスルホン酸及び2−メチルヘキセンスルホン酸等の置換ヘキセンスルホン酸を含む。)及びヘプテンスルホン酸(1−メチルヘプテンスルホン酸及び2−メチルヘプテンスルホン酸等の置換ヘプテンスルホン酸を含む。)等が挙げられる。
炭素数8のラジカル重合性不飽和芳香族モノスルホン酸としては、スチレンスルホン酸が挙げられる。
【0019】
炭素数2〜9のラジカル重合性不飽和ホスホン酸としては、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、ビニルベンジルホスホン酸、1−又は2−フェニルエテニルホスホン酸、(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸、アクリルアミドアルキルジホスホン酸、ホスホノメチル化ビニルアミン及び(メタ)アクリルホスホン酸等が挙げられる。
これらのアニオン性単量体は混合物であってもよい。
なお、アニオン性単量体を含有することで、靭性が向上し、充放電時のリチウムイオンの脱挿入反応に伴う正極活物質及び負極活物質の膨張収縮によるストレスを受けにくくなる。
【0020】
これらのアニオン性単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。中でも重合体の酸価が30〜500である場合には、アニオン性単量体(a12)は、炭素数3〜9のラジカル重合性不飽和カルボン酸、炭素数2〜8のラジカル重合性不飽和スルホン酸及び炭素数2〜9のラジカル重合性不飽和ホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも2種を併用することが好ましく、炭素数3〜9のラジカル重合性不飽和カルボン酸と炭素数2〜8のラジカル重合性不飽和スルホン酸又は炭素数2〜9のラジカル重合性不飽和ホスホン酸とを併用することが更に好ましい。
【0021】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物において、単量体組成物に含まれるエステル化合物(a11)の含有量は、活物質との接着性等の観点から、エステル化合物(a11)及びアニオン性単量体(a12)の合計重量に基づいて5〜99重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%であり、更に好ましくは30〜70重量%である。
【0022】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物において、単量体組成物に含まれるアニオン性単量体(a12)の含有量は、イオン導電性の観点から、エステル化合物(a11)及びアニオン性単量体(a12)合計重量に基づいて1〜99重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%であり、更に好ましくは30〜70重量%である。
【0023】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物は、前記単量体組成物が更にアニオン性単量体の塩(a13)を含むことが好ましい。
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物は、アニオン性単量体の塩(a13)を含有することで内部抵抗を低減することが出来る。
【0024】
アニオン性単量体の塩(a13)について説明する。
アニオン性単量体の塩(a13)を構成するアニオン性単量体のアニオンとしては、前記のアニオン性単量体(a12)で例示したものと同じアニオン性単量体のアニオンが挙げられ、ビニルスルホン酸アニオン、アリルスルホン酸アニオン、スチレンスルホン酸アニオン及び(メタ)アクリル酸アニオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンが好ましい。
アニオン性単量体の塩(a13)を構成するカチオンとしては、1価の無機カチオンが挙げられ、アルカリ金属カチオン及びアンモニウムイオンが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンがより好ましく、リチウムイオンが更に好ましい。
アニオン性単量体の塩(a13)は1種類を用いても複数を併用しても良く、アニオン性単量体の塩(a13)が複数のアニオンを有する場合、カチオンはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンであることが好ましい。
【0025】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物において、前記単量体組成物がアニオン性単量体の塩(a13)を含む場合、単量体組成物に含まれる前記エステル化合物(a11)の含有量は、活物質との接着性等の観点から、エステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の合計重量に基づいて5〜95重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%であり、更に好ましくは30〜70重量%である。
【0026】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物において、前記単量体組成物がアニオン性単量体の塩(a13)を含む場合、単量体組成物に含まれるアニオン性単量体(a12)の含有量は、イオン導電性の観点から、エステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の合計重量に基づいて10〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80重量%であり、更に好ましくは30〜70重量%である。
【0027】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物において、前記単量体組成物がアニオン性単量体の塩(a13)を含む場合、単量体組成物に含まれるアニオン性単量体の塩(a13)の含有量は、内部抵抗等の観点から、エステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の合計重量に基づいて0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0028】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物に含まれる重合体の重量平均分子量は、活物質との接着性等の観点から、20,000〜96,000であることが好ましく、後述する重合体を得る方法において、その重合条件を好ましい範囲とすることで重量平均分子量を好ましい範囲にすることができる。
なお、本明細書における非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物に含まれる重合体の重量平均分子量は、以下の条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと略記する)により測定される。
<GPCの測定条件>
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED−B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0029】
単量体組成物には、エステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の他に、活性水素を含有しない共重合性ビニルモノマー(c)「以下、共重合性ビニルモノマー(c)と記載する」が含まれていてもよい。
【0030】
共重合性ビニルモノマー(c)としては、下記(c1)〜(c5)が挙げられる。
【0031】
(c1)炭素数13〜20の分岐又は直鎖脂肪族モノオール、炭素数5〜20の脂環式モノオール又は炭素数7〜20の芳香脂肪族モノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるカルビル(メタ)アクリレート
上記モノオールとしては、(i)炭素数13〜20の分岐又は直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)炭素数5〜20の脂環式モノオール(シクロヘキシルアルコール等)、(iii)炭素数7〜20の芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0032】
(c2)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)アルキル(炭素数1〜18)エーテル(メタ)アクリレート[メタノールのエチレンオキシド(以下EOと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキシド(以下POと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート等]。
【0033】
(c3)窒素含有ビニル化合物
(c3−1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3〜30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N−ジアルキル(炭素数1〜6)又はジアラルキル(炭素数7〜15)(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド等)及びジアセトンアクリルアミド。
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4〜20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN−メチル−N−ビニルアセトアミド、環状アミド[炭素数6〜13のピロリドン化合物(N−ビニルピロリドン等)]。
【0034】
(c3−2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜4)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びモルホリノエチル(メタ)アクリレート等]。
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]をハロゲン化アルキル等の4級化剤を用いて4級化した4級化物等}。
【0035】
(c3−3)複素環含有ビニル化合物
炭素数7〜14のピリジン化合物(2−又は4−ビニルピリジン等)、炭素数5〜12のイミダゾール化合物(N−ビニルイミダゾール等)、炭素数6〜13のピロール化合物(N−ビニルピロール等)及び炭素数6〜13のピロリドン化合物(N−ビニル−2−ピロリドン等)。
【0036】
(c3−4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3〜15のニトリル基含有ビニル化合物[(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアルキル(炭素数1〜4)アクリレート等]。
【0037】
(c3−5)その他ビニル化合物
炭素数8〜16のニトロ基含有ビニル化合物(ニトロスチレン等)等。
【0038】
(c4)ビニル炭化水素
(c4−1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2〜18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)、炭素数4〜10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン等)等。
【0039】
(c4−2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4〜18又はそれ以上の環状不飽和化合物{シクロアルケン(シクロヘキセン等)、(ジ)シクロアルカジエン[(ジ)シクロペンタジエン等]、テルペン(ピネン、リモネン及びインデン等)}。
【0040】
(c4−3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8〜20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物及びそれらの誘導体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン及びベンジルスチレン等)等。
【0041】
(c5)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン及び不飽和ジカルボン酸ジエステル
(c5−1)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4〜15の脂肪族カルボン酸(モノ−又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート及びビニルメトキシアセテート等)等]。
芳香族ビニルエステル[炭素数9〜20の芳香族カルボン酸(モノ−又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(ビニルベンゾエート、ジアリルフタレート及びメチル−4−ビニルベンゾエート等)及び脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(アセトキシスチレン等)等]。
【0042】
(c5−2)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3〜15のビニルアルキル(炭素数1〜10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル及びビニル2−エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1〜6)アルキル(炭素数1〜4)エーテル(ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル及びビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2〜4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2〜6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等)等]。
炭素数8〜20の芳香族ビニルエーテル(ビニルフェニルエーテル及びフェノキシスチレン等)。
【0043】
(c5−3)ビニルケトン
炭素数4〜25の脂肪族ビニルケトン(ビニルメチルケトン及びビニルエチルケトン等)。
炭素数9〜21の芳香族ビニルケトン(ビニルフェニルケトン等)。
【0044】
(c5−4)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4〜34の不飽和ジカルボン酸ジエステル[ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1〜22の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基)及びジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1〜22の、直鎖、分岐鎖もしくは脂環式の基)
【0045】
単量体組成物が共重合性ビニルモノマー(c)を含む場合、共重合性ビニルモノマー(c)の含有量は、単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて4.5〜6.5重量%であることが好ましい。なお、本発明において、単量体成分とは、エステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)等の重合性を有する単量体成分を意味し、単量体組成物が共重合性ビニルモノマー(c)を含む場合、単量体成分の合計重量には共重合性ビニルモノマー(c)の重量も含む。
【0046】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物に含まれる重合体のガラス転移点[以下Tgと略記、測定法:DSC(走査型示差熱分析)法]は、電池の耐熱性の観点から好ましくは50〜200℃、更に好ましくは70〜180℃、特に好ましくは80〜150℃であり、後述する重合体を得る方法において、その重合条件を好ましい範囲とすることでTgを好ましい範囲にすることができる。
【0047】
本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂に含まれる重合体は、エステル化合物(a11)及びアニオン性単量体(a12)並びに必要により用いるアニオン性単量体の塩(a13)及び共重合性ビニルモノマー(c)を構成成分とする単量体組成物を重合することで得ることができ、重合方法としては、公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)を用いることができる。
重合に際しては、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等]、パーオキシド系開始剤(ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド及びラウリルパーオキシド等)等}を使用して行うことができる。
重合開始剤の使用量は、単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜2重量%である。
【0048】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、エステル溶剤[好ましくは炭素数2〜8のエステル化合物(例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)]、アルコール[好ましくは炭素数1〜8の脂肪族アルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール及びオクタノール)]、炭素数5〜8の直鎖、分岐又は環状構造を持つ炭化水素(例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン及びキシレン)、アミド溶剤[例えばN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記)及びジメチルアセトアミド]及びケトン溶剤[好ましくは炭素数3〜9のケトン化合物(例えばメチルエチルケトン)]等が挙げられ、使用量は単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて通常50〜200重量%であり、単量体組成物の濃度としては、通常30〜70重量%である。
【0049】
乳化重合及び懸濁重合の場合に使用される溶媒(分散媒)としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル溶剤(例えばプロピオン酸エチル)及び軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10〜24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10〜24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム及びメタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。さらに安定剤としてポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
乳化重合又は懸濁重合における単量体組成物の濃度は通常5〜95重量%、重合開始剤の使用量は、単量体組成物の合計重量に基づいて通常0.01〜5重量%、粘着力及び凝集力の観点から好ましくは0.05〜2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン及びn−ブチルメルカプタン等)及びハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素及び塩化ベンジル等)を使用することができる。使用量は単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて通常2重量%以下、樹脂強度等の観点から好ましくは0.5重量%以下である。
【0050】
また、重合反応における系内温度は通常−5〜150℃、好ましくは30〜120℃、反応時間は通常0.1〜50時間、好ましくは2〜24時間であり、重合反応の終点は、未反応単量体の量が、単量体組成物に含まれる単量体成分の合計重量に基づいて通常5重量%以下、好ましくは1重量%以下となる点であり、未反応単量体の量はガスクロマトグラフィー等の公知の単量体含有量の定量方法により確認できる。
【0051】
本発明の非水系二次電池用被覆活物質は、非水系二次電池用活物質(Y)の表面の少なくとも一部に本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物を含んでなる被覆層を有する非水系二次電池用被覆活物質であり、非水系二次電池用活物質(Y)の表面の少なくとも一部に本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物を結着することで得ることができる。
なお、電池の内部抵抗等の観点から、前記被覆層は、本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物及び導電助剤(X)を含んでなることが好ましい。
【0052】
本発明の非水系二次電池用被覆活物質が、その表面の少なくとも一部に本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物及び導電助剤(X)を含んでなる被覆層を有する場合、導電助剤(X)としては、導電性を有する材料から選択されることが好ましい。
導電助剤(X)として好ましいものとしては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの導電助剤(X)は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物として用いられてもよい。
なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、更に好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、特に好ましくはカーボンである。
またこれらの導電助剤(X)としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料[好ましくは、上記した導電助剤(X)のうち金属のもの]をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0053】
導電助剤(X)の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であってもよい。
【0054】
導電助剤(X)の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01〜10μm程度であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤(X)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0055】
本発明の非水系二次電池用被覆活物質が、その表面の少なくとも一部に本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物及び導電助剤(X)を含んでなる被覆層を有する場合、非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物と導電助剤(X)の比率は特に限定されるものではないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物(樹脂固形分重量):導電助剤(X)が1:0.01〜1:50であることが好ましく、1:0.2〜1:3.0であることがより好ましい。
【0056】
非水系二次電池用活物質(Y)としては、リチウムイオン二次電池用正極活物質(Y1)及びリチウムイオン二次電池用負極活物質(Y2)が挙げられる。
リチウムイオン二次電池用正極活物質(Y1)は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いることができるものであれば特に限定されないが、好ましいものとしてはリチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO
2、LiNiO
2、LiAlMnO
4、LiMnO
2及びLiMn
2O
4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO
4、LiNi
1−xCo
xO
2、LiMn
1−yCo
yO
2、LiNi
1/3Co
1/3Al
1/3O
2及びLiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiM
aM’
bM’’
cO
2(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO
4、LiCoPO
4、LiMnPO
4及びLiNiPO
4)、遷移金属酸化物(例えばMnO
2及びV
2O
5)、遷移金属硫化物(例えばMoS
2及びTiS
2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ−p−フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
リチウムイオン二次電池用負極活物質(Y2)は、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いることができるものであれば特に制限されないが、好ましいものとしては黒鉛、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン、ポリキノリン及びポリピロール)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金)等が挙げられる。
【0057】
本発明の非水系二次電池用被覆活物質は、本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物、非水系二次電池用活物質(Y)及び必要に応じて用いる導電助剤(X)を混合することによって製造することができる。
非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物、非水系二次電池用活物質(Y)及び導電助剤(X)を混合する順番は特に限定されず、例えば、事前に混合した非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物と導電助剤(X)からなる樹脂組成物を非水系二次電池用活物質(Y)とさらに混合してもよいし、非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物、非水系二次電池用活物質(Y)及び導電助剤(X)を同時に混合してもよいし、非水系二次電池用活物質(Y)に非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物を混合し、さらに導電助剤(X)を混合してもよい。
【0058】
本発明の非水系二次電池用被覆活物質は、非水系二次電池用活物質(Y)を本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物で被覆することで得ることができ、例えば、非水系二次電池用活物質(Y)を万能混合機に入れて30〜500rpmで撹拌した状態で、非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物を含む樹脂溶液を1〜90分かけて滴下混合し、さらに必要に応じて導電助剤(X)を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
【0059】
本発明の非水系二次電池用被覆活物質における非水系二次電池用活物質(Y)と非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物の配合比率は特に限定されるものではないが、重量比率で非水系二次電池用活物質(Y):非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物=1:0.001〜1:0.1であることが好ましい。
【0060】
非水系二次電池用活物質(Y)としてリチウムイオン二次電池用正極活物質(Y1)を用いることによりリチウムイオン二次電池用の正極が得られ、リチウムイオン二次電池用負極活物質(Y2)を用いることによりリチウムイオン二次電池用の負極が得られる。
【0061】
リチウムイオン二次電池用の電極を作製する場合、例えば、本発明の非水系二次電池用被覆活物質を溶媒に分散させた電極スラリーを作製し、この電極スラリーを集電体に塗布、乾燥する方法が挙げられる。上記電極スラリーには、必要に応じて導電助剤(X)や通常のリチウムイオン電池用の電極に含まれるPVdF等のバインダーを添加してもよいが、PVdF等のバインダーは添加しないことが好ましい。通常のリチウムイオン電池用の電極においては、バインダーで活物質を電極内に固定することで導電経路を維持する必要がある。しかし、本発明の非水系二次電池用被覆活物質を用いた場合は、本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物の働きによって活物質を電極内に固定することなく導電経路を維持することができるため、バインダーを添加する必要がない。バインダーを添加しないことによって、活物質が電極内に固定化されないため電極活物質の体積変化に対する緩和能力が更に良好となる。
【0062】
本発明の非水系二次電池用被覆活物質を含む電極を用いたリチウムイオン二次電池は、対極となる電極を組み合わせて、セパレーターと共にセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することで得られる。
また、集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成して双極型電極を作製し、双極型電極をセパレーターと積層してセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでも得られる。
また、正極、負極を共に本発明の非水系二次電池用被覆活物質を含む電極としてリチウムイオン二次電池としてもよい。
【0063】
セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン製フィルムの微多孔膜、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0064】
電解液としては、リチウムイオン二次電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
【0065】
電解質としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6及びLiClO
4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2及びLiC(CF
3SO
2)
3等の有機酸のリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPF
6である。
【0066】
非水溶媒としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン及びこれらの混合物を用いることができる。
【0067】
ラクトン化合物としては、5員環(γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ−バレロラクトン等)等を挙げることができる。
【0068】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)及びブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート及びジ−n−プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0069】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン及び1,4−ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0070】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2−エトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン、2−トリフルオロエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン及び2−メトキシエトキシ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
非水溶媒のうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液である。
【実施例】
【0072】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0073】
[非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物の製造]
<実施例1>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル9.5部、アクリル酸90.0部、スチレンスルホン酸リチウム0.5部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−1)を得た。共重合体(A−1)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、以下の条件で測定した共重合体の酸価は700であり、以下の条件のGPCで測定した共重合体の重量平均分子量は70,000であった。
【0074】
<酸価測定条件>
装置:自動滴定装置 COM−1700(平沼産業社製)
JIS K 0070−1922に記載の電位差滴定法に準じて、自動滴定装置[COM−1700(平沼産業社製)]を用いて測定した。
【0075】
<GPC測定条件>
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン、DMF、THF
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PL g e l 10um,MIXED−B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0076】
<実施例2>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸ブチル21.0部、アクリル酸77.0部、スチレンスルホン酸ナトリウム2.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−2)を得た。共重合体(A−2)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は599であり、共重合体の重量平均分子量は66,000であった。
【0077】
<実施例3>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル13.0部、メタクリル酸85.0部、スチレンスルホン酸リチウム2.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−3)を得た。共重合体(A−3)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は554であり、共重合体の重量平均分子量は60,000であった。
【0078】
<実施例4>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル22.0部、メタクリル酸ブチル20.0部、アクリル酸45.0部、ビニルスルホン酸2.0部、ビニルホスホン酸8.0部、アリルスルホン酸ナトリウム3.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.4部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−4)を得た。共重合体(A−4)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は444であり、共重合体の重量平均分子量は51,000であった。
【0079】
<実施例5>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸ドデシル39.0部、メタクリル酸45.0部、ビニル安息香酸8.0部、ビニルホスホン酸7.0部、スチレンスルホン酸リチウム1.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−5)を得た。共重合体(A−5)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は407であり、共重合体の重量平均分子量は96,000であった。
【0080】
<実施例6>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル49.0部、メタクリル酸40.0部、ビニルスルホン酸6.0部、フェニルエテニルホスホン酸5.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.6部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−6)を得た。共重合体(A−6)に使用したエステル化合物(a11)及びアニオン性単量体(a12)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は322であり、共重合体の重量平均分子量は26,000であった。
【0081】
<実施例7>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル35.0部、メタクリル酸メチル15.0部、メタクリル酸35.0部、ビニル安息香酸3.0部、フェニルエテニルホスホン酸7.0部、スチレンスルホン酸リチウム5.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.2部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−7)を得た。共重合体(A−7)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の配合量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は282であり、共重合体の重量平均分子量は48,000であった。
【0082】
<実施例8>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル34.0部、メタクリル酸ドデシル20.0部、メタクリル酸20.0部、ビニル安息香酸10.0部、ビニルスルホン酸10.0部、アリルスルホン酸ナトリウム1.0部、スチレン5.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.6部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−8)を得た。共重合体(A−8)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)アニオン性単量体の塩(a13)及び活性水素を含有しない共重合性ビニルモノマー(c)の配合量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は239であり、共重合体の重量平均分子量は20,000であった。
【0083】
<実施例9>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル37.9部、メタクリル酸メチル15.2部、メタクリル酸27.9部、スチレンスルホン酸10.0部、スチレンスルホン酸リチウム10.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.08部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続した。次いで2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.2部をDMF1.0部に溶解した開始剤溶液を追加で投入しさらに反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−9)を得た。共重合体(A−9)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は217であり、共重合体の重量平均分子量は61,900であった。
【0084】
<実施例10>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル15.0部、メタクリル酸メチル40.0部、メタクリル酸ドデシル10.0部、メタクリル酸28.0部、ビニルスルホン酸2.0部、スチレンスルホン酸リチウム1.0部、メタクリル酸リチウム4.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.6部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.4部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−10)を得た。共重合体(A−10)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は193であり、共重合体の重量平均分子量は41,000であった。
【0085】
<実施例11>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル40.0部、メタクリル酸メチル15.0部、ビニル安息香酸30.0部、ビニルスルホン酸10.0部、スチレンスルホン酸ナトリウム5.0部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−11)を得た。共重合体(A−11)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は165であり、共重合体の重量平均分子量は60,000であった。
【0086】
<実施例12>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル77.7部、アクリル酸10.0部、スチレンスルホン酸12.3部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.6部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、80℃に昇温し反応を5時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−12)を得た。
共重合体(A−12)に使用したエステル化合物(a11)及びアニオン性単量体(a12)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は116であり、共重合体の重量平均分子量は76,300であった。
【0087】
<実施例13>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル87.7部、メタクリル酸5.0部、ビニルホスホン酸5.0部、スチレンスルホン酸リチウム2.3部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−13)を得た。共重合体(A−13)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は99であり、共重合体の重量平均分子量は80,000であった。
【0088】
<実施例14>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル94.9部、メタクリル酸4.0部、ビニルスルホン酸1.0部、スチレンスルホン酸リチウム0.1部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A−14)を得た。共重合体(A−14)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は31であり、共重合体の重量平均分子量は80,000であった。
【0089】
<比較例1>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸2−エチルヘキシル96.0部、メタクリル酸3.2部、スチレンスルホン酸リチウム0.8部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A’−1)を得た。共重合体(A’−1)に使用したエステル化合物(a11)、アニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は21であり、共重合体の重量平均分子量は86,000であった。
【0090】
<比較例2>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF70.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、アクリル酸99.6部、スチレンスルホン酸リチウム0.4部及びDMF20部を配合した単量体組成物と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部をDMF10.0部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度50%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して120℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の共重合体(A’−2)を得た。共重合体(A’−2)に使用したアニオン性単量体(a12)及びアニオン性単量体の塩(a13)の種類と量を表1に示す。また、実施例1と同様に測定した共重合体の酸価は775であり、共重合体の重量平均分子量は70,000であった。
【0091】
【表1】
【0092】
[リチウムイオン二次電池用被覆正極活物質の作製]
<実施例15>
実施例1で作製した共重合体(A−1)2部及びDMF10.4部を配合して樹脂組成物を調製した。
その後、コーヒーミルにコバルト酸リチウム94部と上記樹脂組成物を投入し室温、1分間の混合攪拌を行った。次いでアセチレンブラック[電気化学工業(株)製]4部を投入し、さらに5分間の混合攪拌を行って活物質ケーキを得た。
活物質ケーキをテフロン(登録商標)製のバットに移し、120℃、0.01MPaで1時間の減圧乾燥を行った。減圧乾燥後はコーヒーミルに戻し10秒間撹拌して解砕を行い、本発明の被覆正極活物質(D−1)を得た。被覆正極活物質の組成を表2に示す。
【0093】
<実施例16〜28>
共重合体の種類及び使用量、並びにDMF、コバルト酸リチウム及びアセチレンブラックの使用量を表2に示した種類と部数に変更したほかは、実施例15と同様の手順で活物質を被覆し、実施例16〜28に係る本発明の被覆正極活物質(D−2)〜(D−14)を得た。各被覆正極活物質の組成を表2に示す。
【0094】
<比較例3,4>
共重合体(A−1)2部を、比較例1で作製した共重合体(A’−1)2部又は比較例2で作製した共重合体(A’−2)2部にそれぞれ変更して用いたほかは、実施例15と同様の方法で活物質を被覆し、被覆正極活物質(D’−1)及び被覆正極活物質(D’−2)をそれぞれ作製した。
【0095】
<比較例5>
共重合体(A−1)2部を、ポリフッ化ビニリデン(クレハ社製)2部に変更して用いたほかは、実施例1と同様の方法で被覆正極活物質(D’−3)を作製した。
【0096】
【表2】
【0097】
[リチウムイオン二次電池用被覆負極活物質の作製]
<実施例29>
実施例1で作製した共重合体(A−1)2部及びDMF17.6部をそれぞれ配合し樹脂組成物を調製した。
コーヒーミルに黒鉛粉末[日本黒鉛工業(株)製]88部、上記樹脂組成物を投入し室温、1分間の混合撹拌を行った。次いでアセチレンブラック[電気化学工業(株)製]10部を投入しさらに5分間の混合撹拌を行って活物質ケーキを得た。
活物質ケーキをテフロン(登録商標)製のバットに移し、120℃、0.01MPaで1時間の減圧乾燥を行った。減圧乾燥後はコーヒーミルに戻し10秒間撹拌して解砕を行い、実施例29に係る本発明の被覆負極活物質(E−1)を得た。
【0098】
<実施例30〜42>
共重合体の種類及び量、並びにDMF及び黒鉛粉末の使用量を表3に示した種類と部数に変更したほかは、実施例29と同様の手順で活物質を被覆し、実施例30〜42に係る本発明の被覆負極活物質(E−2)〜(E−14)を得た。各被覆負極活物質の組成を表3に示す。
【0099】
<比較例6、7>
共重合体(A−1)2部を比較例1及び2で得られた共重合体(A’−1)2部及び共重合体(A’−2)2部にそれぞれ変更して用いたほかは、実施例29と同様の方法で活物質を被覆し、被覆負極活物質(E’−1)及び被覆負極活物質(E’−2)をそれぞれ作製した。
【0100】
<比較例8>
共重合体(A−1)2部を、ポリフッ化ビニリデン(クレハ社製)2部に変更して用いたほかは、実施例29と同様の方法で被覆負極活物質(E’−3)を作製した。
【0101】
【表3】
【0102】
[被覆活物質を用いたリチウムイオン二次電池の評価]
<製造例1〜17、比較製造例1〜3>
以下の方法でリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用負極及びこれらを用いたリチウムイオン二次電池を作製し、それぞれについてサイクル特性試験を行った際のサイクル初期及びサイクル終期の内部抵抗の値を測定して表4に記載した。
【0103】
[リチウムイオン二次電池用正極の作製]
実施例15〜28及び比較例3〜5でそれぞれ作製した被覆正極活物質(D−1)〜(D−14)及び(D’−1)〜(D’−3)10部をそれぞれジエチルカーボネート5部と乳鉢中で混練することで正極スラリーを得た。得られた正極スラリーを大気中でワイヤーバーを用いて厚さ20μmのアルミニウム電解箔上の片面に250μmの厚みで塗布し、50℃で15分間乾燥させた後、さらに120℃、0.01MPaで12時間減圧乾燥を行い15mmφに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用正極を作製した。
【0104】
[リチウムイオン二次電池用負極の作製]
実施例29〜42及び比較例6〜8でそれぞれ作製した被覆負極活物質(E−1)〜(E−14)、(E’−1)〜(E’−3)10部をそれぞれジエチルカーボネート5部と乳鉢中で混練することで負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを大気中でワイヤーバーを用いて厚さ20μmの銅電解箔上の片面に330μmの厚みで塗布し、50℃で15分間乾燥させた後、さらに120℃、0.01MPaで12時間減圧乾燥を行い15mmφに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
【0105】
[リチウムイオン二次電池の作製]
2032型コインセル内の両端に、リチウムイオン二次電池用正極とリチウムイオン二次電池用負極とを表4に記載の組み合わせとなるように組み合わせて負極の塗布面が正極の塗布面に向き合うように配置し、更に正極と負極との間にセパレーター(セルガード2500:ポリプロピレン製)を3枚挿入し、リチウムイオン二次電池用セルを作製した。セルに電解液を注液密封し、以下の方法で内部抵抗を評価した。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)に混合溶媒に対して0.5重量%濃度で1,3−プロパンスルトン(PS)を溶解した非水溶媒にLiPF
6を1mol/Lの割合で溶解させて得たリチウムイオン電池用電解液を用いた。
【0106】
[サイクル特性試験初期及び終期の内部抵抗の測定]
室温(25℃)下、充放電測定装置「バッテリーアナライザ1470型」[東陽テクニカ(株)製]を用いて4.2Vまで、定電流定電圧充電を行った。10分間の休止後、0.1Cの電流値で2.5Vまで放電を行った。2サイクル目は0.2Cの電流で放電し、3サイクル目は0.5Cの電流で放電した。その後は1Cの電流での放電を197サイクル目までの194サイクル行い、198サイクル目は0.5Cの電流で、199サイクル目は0.2Cの電流で、200サイクル目は0.1Cの電流で放電を行った。
1〜4サイクル目におけるそれぞれの[「放電開始時の電圧」と「放電して10秒後の電圧」との差(ΔV)]と各サイクルの電流値(I)とから[降下電圧(ΔV)−電流(I)]のグラフを作成し、最小二乗法を用いてΔV=RIとなる抵抗値Rを算出し、サイクル初期の内部抵抗とした。
同様の手順で、197〜200サイクル目のΔVとIから算出したRをサイクル終期の内部抵抗とした。測定した結果を表4に記載した。
【0107】
【表4】
【0108】
表4に示された結果から、本発明の非水系二次電池活物質被覆用樹脂組成物で活物質の表面を被覆した非水系二次電池用被覆活物質(D−1)〜(D−14)及び(E−1)〜(E−14)を用いたリチウムイオン二次電池は、初期の内部抵抗が低く、さらに終期の内部抵抗も低いことから継続使用による内部抵抗の増加を抑制できることがわかる。