【課題】低硫黄燃料油の潤滑性を改良し、低温状態において、曇ったり、固化や結晶が析出したりすることがなく、通油性が良好な燃料油用潤滑性向上剤、及び該潤滑性向上剤を含む低硫黄燃料油組成物の提供。
Rは炭素数2〜16の不飽和炭化水素を構成単位とする炭化水素重合体から水素原子を2つ除いた残基;pは0又は1;Xは水素原子又は水酸基。かつ、重量平均分子量が200〜50,000、溶解度パラメーターが7.0〜10.0(cal/cm
脂肪酸(A)が、炭素数8〜22の飽和脂肪酸からなる群から選ばれる2種以上の飽和脂肪酸及び炭素数8〜22の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる2種以上の不飽和脂肪酸を含有する混合物であって、前記混合物の飽和脂肪酸含量が前記混合物の重量に基づいて1.0〜8.0重量%である請求項1又は2記載の燃料油用潤滑性向上剤。
一般式(1)で示される化合物(B)のRが炭素数3〜14の脂肪族不飽和炭化水素からなる群から選ばれる1種以上を構成単位とする炭化水素重合体から水素原子を2つ除いた残基である請求項1〜3のいずれか記載の燃料油用潤滑性向上剤。
脂肪酸(A)と及び一般式(1)で示される化合物(B)との合計重量に基づいて脂肪酸(A)の割合は60〜99重量%であり、化合物(B)の重量の割合は1〜40重量%である請求項1〜4のいずれか記載の燃料油用潤滑性向上剤。
更に、曇点降下剤(C)、酸化防止剤(D)及び炭化水素系溶剤(E)からなる群から選ばれる1種以上を含有させてなる請求項1〜5のいずれか記載の燃料油用潤滑性向上剤。
示差走査熱量計による脂肪酸(A)の結晶化開始温度(ta)及び示差走査熱量計による曇点降下剤(C)の結晶化開始温度(tc)が下記(1)〜(3)を満たす請求項6記載の燃料油用潤滑性向上剤。
10℃ ≧ ta ≧ −20℃ (1)
20℃ ≧ tc ≧ −10℃ (2)
20℃ ≧ tc−ta ≧ −10℃ (3)
曇点降下剤(C)が、ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤(C1)であって、(C1)が、炭素数1〜15のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(c)を構成単量体として含有する共重合体である請求項6又は7記載の燃料油用潤滑性向上剤。
請求項1〜10のいずれかに記載の燃料油用潤滑性向上剤と、硫黄含量が0.001重量%以下の低硫黄燃料油とを含む低硫黄燃料油組成物であって、燃料油用潤滑性向上剤を含有してなる低硫黄燃料油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における脂肪酸(A)としては、脂肪酸であれば特に限定はないが、燃料油への潤滑性の観点から、好ましくは炭素数8〜22の不飽和脂肪酸及び炭素数8〜22の飽和脂肪酸等が挙げられる。
炭素数8〜22の不飽和脂肪酸としては、モノ不飽和モノカルボン酸(2−オクテン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸等)、ジ不飽和モノカルボン酸(ソルビン酸、リノール酸、トランス−2、シス−4−デカジエン酸、トランス−10、トランス−12−オクタデカジエン酸等)、トリ不飽和モノカルボン酸(ヒラゴ酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、ドコサトリエン酸、エイコサトリエン酸、等)、テトラ不飽和モノカルボン酸(モノクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、ドコサテトラエン酸、等)、及びペンタ不飽和モノカルボン酸(エイコサペンタエン酸、イワシ酸等)等が挙げられる。
これら不飽和脂肪酸のうち、潤滑性向上剤の曇点の観点から好ましくは、モノ不飽和モノカルボン酸、モノ不飽和モノカルボン酸、トリ不飽和モノカルボン酸であり、更に好ましくは、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸である。
炭素数8〜22の飽和脂肪酸としては、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸等が挙げられる。
これらの脂肪酸は単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0009】
脂肪酸(A)の溶解度パラメーター(以下、SP値と略記する)は、燃料油に対する溶解性の観点から、好ましくは8.0〜9.6(cal/cm
3)
1/2であり、更に好ましくは8.5〜9.2(cal/cm
3)
1/2である。
なお、(A)のSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147〜154)に記載の方法で算出される値である。
脂肪酸(A)の分子量は、燃料油への潤滑性の観点から、好ましくは200〜350であり、更に好ましくは250〜300である。
なお、(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定する。
<(A)の分子量の測定条件>
装置 :「Alliance」[日本ウオーターズ(株)製]
カラム :「TSK gel Super H4000」1本
「TSK gel Super H3000」1本
「TSK gel Super H2000」1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置 :屈折率検出器
標準 :ポリスチレン
脂肪酸(A)の酸価(AV)は、好ましくは150〜250mgKOH/gであり、更に好ましくは175〜225mgKOH/g、特に好ましくは185〜215mgKOH/gである。
脂肪酸(A)の酸価は日本基準油脂試験方法3.3.1で測定した値である。
脂肪酸(A)のヨウ素価は好ましくは60〜188g/100gであり、更に好ましくは100〜170g/100gである。
脂肪酸(A)のヨウ素価は日本基準油脂試験方法3.3.3で測定した値である。物質100グラムと反応するハロゲンの量を、ヨウ素のグラム数に換算して表す。
脂肪酸(A)のSP値、分子量、酸価及びヨウ素価の範囲の値のすべてを満足する場合は、燃料に対する溶解性、金属表面への吸着力、抗乳化性、水の抱きこみ性、又は防錆性等において、更に優れた効果を発揮できるという観点で好ましい。
【0010】
SP値、分子量、AV及びヨウ素価の好ましい範囲を満たし、脂肪酸原料の入手性及び脂肪酸組成物の曇点が低くなるという観点から、脂肪酸(A)は、好ましくは炭素数8〜22の飽和脂肪酸からなる群から選ばれる2種以上の飽和脂肪酸と、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸からなる群から選ばれる2種以上の不飽和脂肪酸とを含有する混合物であり、さらに好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸からなる群から選ばれる2種以上の飽和脂肪酸と、オレイン酸、リノール酸並びにリノレン酸からなる群から選ばれる2種以上の不飽和脂肪酸を含有する混合物である。
脂肪酸(A)の飽和脂肪酸含量が脂肪酸混合物の重量に基づいて、脂肪酸組成物の曇点が低くなるという観点から、好ましくは1.0〜8.0重量%、更に好ましくは、1.2〜5.0重量%である。
【0011】
本発明における化合物(B)は下記一般式(1)で示される化合物である。
【化1】
[Rは炭素数2〜16の不飽和炭化水素を構成単位とする炭化水素重合体から水素原子を2つ除いた残基;pは0又は1の数;Xは水素原子又は水酸基。]
【0012】
一般式(1)で示される化合物(B)におけるRは、炭素数2〜16の不飽和炭化水素を構成単位とする炭化水素重合体(以下、「炭化水素重合体」と略記する)から水素原子を2つ除いた残基である。
炭素数2〜16の不飽和炭化水素としては、炭素数2〜16の脂肪族不飽和炭化水素[エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、テトラデセン及びヘキサデセン等]、炭素数5〜16の脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、ピネン及びエチリデンビシクロヘプテン等]等が挙げられる。
これらのうち、(B)の結晶化開始温度と燃料油への溶解性の観点から、好ましくは炭素数2〜16の脂肪族不飽和炭化水素であり、より好ましくは炭素数3〜14の脂肪族不飽和炭化水素であり、更に好ましくは炭素数4〜10の脂肪族不飽和炭化水素であり、特に好ましくはイソブチレン、1−ブテン及び1,3−ブタジエンである。
炭素数2〜16の不飽和炭化水素は、単独で構成単位としてもよいし併用してもよい。
【0013】
炭化水素重合体としては、炭素数2〜16の不飽和炭化水素に加え、以下の(1)〜(2)を構成単量体とする重合体が挙げられる。
炭化水素重合体は、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数17〜36の不飽和炭化水素(例えばヘプタデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)及び炭素数5〜16のジエン(例えばイソプレン、1,4−ペンタジエン、(ジ)シクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、リモネン、ビニルシクロヘキセン及び1,7−オクタジエン等)等]、
(2)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン及びインデン等)等が挙げられる。
炭化水素重合体が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。
【0014】
炭化水素重合体の合計構成単量体数に基づき、炭素数2〜16の不飽和炭化水素の合計が30モル%以上であり、更に好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上、最も好ましくは60モル%以上である。
【0015】
一般式(1)におけるpは0又は1の数である。
【0016】
一般式(1)におけるXは、Xは水素原子又は水酸基である。
【0017】
(B)の水酸基には、更にアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加してもよい。
【0018】
(B)の重量平均分子量(以下、Mwと略記する)は、200〜50,000であり、潤滑性向上剤の潤滑性能の点から、好ましくは1,000〜30,000、さらに好ましくは2,000〜10,000である。
【0019】
なお、(B)及び後述する曇点降下剤(C)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定する。
<(B)及び(C)のMwの測定条件>
装置 :「HLC−802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置 :屈折率検出器
標準 :ポリスチレン
【0020】
(B)のSP値は、燃料油への溶解性及び潤滑性向上剤の潤滑性の観点から、7.0〜10.0(cal/cm
3)
1/2であり、好ましくは7.5〜9.0(cal/cm
3)
1/2であり、さらに好ましくは7.5〜8.5(cal/cm
3)
1/2である。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147〜154)に記載の方法で算出される値である。
炭化水素重合体のSP値は、(B)を構成する単量体それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体のSP値を、構成単量体単位のモル分率に基づいて平均した値である。
炭化水素重合体のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。
【0021】
(B)は、示差走査熱量計により測定した結晶化開始温度(tb)が−15℃以下であり、好ましくは−20℃以下、更に好ましくは−40℃以下であり、特に好ましくは−60℃以下まで検出されないものである。
結晶化開始温度が−15℃以下であると、潤滑性向上剤の貯蔵安定性が良好である。
本発明の発明において、(B)の結晶化開始温度(tb)、脂肪酸(A)の結晶化開始温度(ta)及び曇点降下剤(C)の結晶化開始温度(tc)は、示差走査熱量計「UNIX(登録商標)DSC7」(PERKIN−ELMER社製)を使用し、試料5mgを10℃/分の等温速度で50℃から−60℃まで冷却したときに観測される結晶化開始温度である。
【0022】
本発明における更に曇点降下剤(C)、酸化防止剤(D)及び炭化水素系溶剤(E)からなる群から選ばれる1種以上を含有してもよい。
【0023】
本発明における曇点降下剤(C)は、潤滑性向上剤の曇点を降下させる点で配合されていることが好ましく、下記(1)〜(3)を満たすとさらに好ましい。
10℃ ≧ ta ≧ −20℃ (1)
20℃ ≧ tc ≧ −10℃ (2)
20℃ ≧ tc−ta ≧ −10℃ (3)
taが10℃より高くなると、潤滑性向上剤の曇点が高くなる場合があり、−20℃より低くなると、潤滑性向上剤の曇点は低くなる場合があるが、酸化安定性が悪化する場合がある。
taを調整するためには、(A)の中の不飽和脂肪酸含量(特に、ジ又はトリ不飽和脂肪酸の含量)を少なくする又はヨウ素価を低くすればtaが上がり、不飽和脂肪酸含量(特に、ジ又はトリ不飽和脂肪酸の含量)を多くする又はヨウ素価を高くすれば、taが低くなる。
tcが(2)の範囲から外れると、潤滑性向上剤の曇点は高くなる場合がある。
tcは(C)が重合体である場合には、構成単量体のアルキル基又はアルキレン基の炭素数によって調整できる。
さらに、ta及びtcが(3)を満たさないと、潤滑性向上剤の曇点が高くなる場合がある。
【0024】
ta及びtcは、曇点を更に低くできるという観点から、下記(4)を満たすことが更に好ましく、下記(5)を満たすことが特に好ましい。
20℃ ≧ tc−ta ≧ 0℃ (4)
15℃ ≧ tc−ta ≧ 5℃ (5)
【0025】
(3)を満たす曇点降下剤(C)としては、ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤(C1)、EVA(エチレン酢酸ビニル)系流動点降下剤(C2)及びASA(アルケニルコハク酸)系流動点降下剤(C3)等が挙げられる。
【0026】
ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤(C1)は、炭素数1〜15のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(c)を構成単量体として含有する共重合体である。
(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート及びイソペンタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、重合体の結晶化温度の調整しやすさという観点から、好ましくは炭素数8〜15、更に好ましくは10〜15のアルキル(メタ)アクリレートである。炭素数1〜15のアルキル基は直鎖及び分岐のアルキル基であって、かまわない。
【0027】
(C1)の重量に基づいて(c)の含有量は、潤滑性向上剤中の結晶性物質との共結晶を生成し易いという観点から、好ましくは20〜100重量%であり、更に好ましくは30〜100重量%である。
【0028】
(C1)は構成単量体として更に(c)以外の他のラジカル重合性単量体(f)〜(p)を使用することができる。
【0029】
炭素数16〜32のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(f):
(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸2−オクチルデシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキシルドデシル、(メタ)アクリル酸2−メチルヘプタデシル、(メタ)アクリル2−メチルオクタデシル、(メタ)アクリル酸n−エイコシル、(メタ)アクリル酸2−オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸n−ドコシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2−ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2−テトラデシルオクタデシル等が挙げられる。
【0030】
(f)のうち、(C1)の結晶化温度の調整のしやすさから好ましくは、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸n−エイコシル、(メタ)アクリル酸2−オクチルドデシル及び(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルである。
【0031】
窒素原子含有単量体(g)としては、以下の単量体(g1)〜(g4)が挙げられる。
【0032】
アミド基含有単量体(g1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−n−又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、N−(N’−モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−(N’−メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’−エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’−イソプロピルアミノ−n−ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN−(N’−n−又はイソブチルアミノ−n−ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N−(N’,N’−ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN−(N’,N’−ジ−n−ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N−ビニルカルボン酸アミド[N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−又はイソプロピオン酸アミド及びN−ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0033】
ニトロ基含有単量体(g2):
4−ニトロスチレン等が挙げられる。
【0034】
1〜3級アミノ基含有単量体(g3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3〜6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1〜6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6〜12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1〜6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N−(N’,N’−ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0035】
ニトリル基含有単量体(g4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0036】
(g)のうち好ましくは、(g1)及び(g3)であり、更に好ましくは、N−(N’,N’−ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0037】
水酸基含有単量体(h):
水酸基含有芳香族単量体(p−ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ−又はビス−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール及び1−ウンデセノール等]、炭素数4〜12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール及び2−ブテン−1,4−ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル(2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3〜8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3〜10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3〜8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1〜4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100〜300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130〜500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110〜310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150〜230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0038】
(h)のうち好ましいのは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びN,N−ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミドである。
【0039】
リン原子含有単量体(i)としては、以下の単量体(i1)〜(i2)が挙げられる。
【0040】
リン酸エステル基含有単量体(i1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2〜4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、アクリロイロキシ又はメタクリロイロキシを意味する。
【0041】
ホスホノ基含有単量体(i2):
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2〜4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2〜12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0042】
(i)のうち好ましいのは(i1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2〜4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0043】
脂肪族炭化水素系単量体(j):
炭素数2〜20のアルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)及び炭素数4〜12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエン及び1,7−オクタジエン等)等が挙げられる。
【0044】
脂環式炭化水素系単量体(k):
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
【0045】
芳香族炭化水素系単量体(l):
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、4−クロチルベンゼン、インデン及び2−ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0046】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(m):
炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1〜12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル及びビニル−2−ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1〜8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0047】
エポキシ基含有単量体(n):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0048】
ハロゲン元素含有単量体(o):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0049】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(p):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1〜8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0050】
EVA系流動点降下剤(C2)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−2−エチルヘキサン酸ビニル3元共重合体、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル3元共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜5)−カルボン酸(炭素数1〜10)ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のフマル酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル共重合体のマレイン酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−2−エチルヘキサン酸ビニル3元共重合体のフマル酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−2−エチルヘキサン酸ビニル3元共重合体のマレイン酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル3元共重合体のフマル酸エステルグラフト物、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル3元共重合体のマレイン酸エステルグラフト物、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜5)−カルボン酸(炭素数1〜10)ビニル共重合体のフマル酸エステルグラフト物、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜5)−カルボン酸(炭素数1〜10)ビニル共重合体のマレイン酸エステルグラフト物等が挙げられる。
【0051】
ASA系流動点降下剤(C3)としてはアルケニル基の炭素数が8〜50のアルケニルコハク酸アミド等が挙げられる。
【0052】
(C)のSP値は、結晶性物質の結晶形状の制御の点から、好ましくは8.5〜10.5であり、更に好ましくは8.9〜10.0である。
なお、(C)のSP値は、(C)を構成する単量体それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体のSP値を、構成単量体単位のモル分率に基づいて平均した値である。(C)のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより8.5〜10.5(cal/cm
3)
1/2にすることができる。
【0053】
(C)のMwは、結晶性物質の結晶形状の制御の点から、好ましくは3,000〜600,000であり、更に好ましくは5,000〜300,000である。
【0054】
(C)のうち、好ましいのは、任意の結晶化開始温度に調整し易いという観点から、ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤(C1)である。
【0055】
本発明における酸化防止剤(D)としては、フェノール系化合物(D1)[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−フェノール(DTBP)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)等のモノフェノール系;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール系;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等の高分子型フェノール系等];硫黄系化合物(D2)[ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、ジラウリスサルファイド等];リン系化合物(DC3)[トリフェニルホスファイト(TPP)、トリイソデシルホスファイト(TDP)、ジフェニルイソデシルホスファイト(DPDP)、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(TNP)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト];アミン系化合物(D4)[p−(p−トルエン・スルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’−(α、α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4−モノオクチルジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの高温反応物、ジフェニルアミンとアセトンの低温反応物、ジフェニルアミンとアニリンとアセトンの低温反応物、ジフェニルアミンとジイソブチレンの反応生成物及びオクチル化ジフェニルアミンの混合物、オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフリルアミン、フェノチアジン等]等が挙げられる。
(A)及び(B)に対する溶解性の観点と酸化安定性の観点から、(D)のうち好ましいのは、フェノール系化合物(D1)であり、特に好ましいのは、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−フェノール(DTBP)である。
【0056】
本発明における炭化水素系溶剤(E)としては、芳香族炭化水素系溶剤(E1);トルエン、キシレン、エチルベンゼン、C9を主成分とする芳香族炭化水素(トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、出光興産株式会社製「イプゾール100」、丸善石油化学株式会社製「スワゾール1000」等)、C10を主成分とする芳香族炭化水素(ジエチルベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、出光興産株式会社製「イプゾール150」、丸善石油化学株式会社製「スワゾール1500」等)、テトラリン等、脂肪族炭化水素系溶剤(E2):n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン等、又は脂環式炭化水素系溶剤(E3);シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等が挙げられる。
(A)及び(B)の溶解性及び潤滑性向上剤の引火点の観点から、好ましいのは芳香族炭化水素系溶剤(E1)であり、特に好ましいのは、C9を主成分とする芳香族炭化水素及びC10を主成分とする芳香族炭化水素である。
【0057】
(A)と(B)との合計重量に基づいて(A)の割合は、低硫黄軽油への潤滑性向上剤の添加効率の観点から好ましくは60〜99重量%であり、より好ましくは70〜98.5重量%、更に好ましくは75〜98重量%である。
(A)と(B)との合計重量に基づいて(B)の割合は、潤滑性能と常温での通油性の観点から好ましくは1〜40重量%であり、より好ましくは1.5〜30重量%、更に好ましくは2〜25重量%である。
【0058】
(C)を含有する場合には、燃料油用潤滑性向上剤の重量に基づいて(C)の割合は、潤滑性向上剤の曇点の観点から好ましくは0.01〜4重量%であり、より好ましくは0.1〜3重量%、更に好ましくは0.2〜2重量%である。
【0059】
燃料油用潤滑性向上剤の重量に基づいて(D)の割合は、潤滑性向上剤の曇点の観点から0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.05〜8重量%、更に好ましくは0.1〜5重量%である。
【0060】
燃料油用潤滑性向上剤の重量に基づいて(E)の割合は、潤滑性向上剤の曇点の観点から、好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは10〜25重量%である。
【0061】
本発明の燃料油用潤滑性向上剤は、更に他の添加剤を燃料油用潤滑性向上剤の重量に基づいてそれぞれ5%重量以下の割合で添加してもよい。他の添加剤としては、腐食防止剤(例えばアルケニルコハク酸系防錆剤、アルケニルコハク酸のエステル系防錆剤等)、清浄剤(例えば、ジブチルアミンの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物、ブタノールの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物、モノエタノールアミンの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物等)、防錆剤(例えば、炭素数1〜30の脂肪族アミン、炭素数1〜30の脂肪族アミンの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物等)等が挙げられる。
【0062】
本発明の燃料油用組成物は上記の燃料油用潤滑性向上剤と燃料油からなる。
対象となる燃料油は、特に限定されないが、本発明の潤滑性向上剤の潤滑性向上効果が有利に発揮しやすいという観点から、好ましくは低硫黄燃料油であり、更に好ましくは硫黄含量が0.001重量%以下の低硫黄燃料油である。
硫黄含量が0.001重量%以下の低硫黄燃料油としては、低硫黄原油(たとえば、ミナス原油等南方系の原油)の通常の蒸留で得られる、沸点範囲が160℃から380℃までのJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油;通常の原油から水素化脱硫処理工程を経て製造される脱硫軽油;この脱硫軽油と直留軽油(水素化脱硫工程前の軽油)をブレンドして得られる軽油留分から製造されるJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油;動植物油(廃食用油を含む)を脱炭酸した後に水素化処理されて得られる炭化水素油;フィッシャートロプッシュ法により一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて得られる合成軽油が挙げられる。
これらのうち特に好ましいのは、水素化脱硫処理工程を経て製造される脱硫軽油を50重量%以上使用して製造されるJIS1号軽油、JIS2号軽油、JIS3号軽油、JIS特3号軽油である。
【0063】
本発明の低硫黄燃料油組成物は、硫黄含量が0.001重量%以下の低硫黄燃料油と上記の潤滑性向上剤とを含有する低硫黄燃料油組成物である。
低硫黄燃料油組成物は、低硫黄燃料油組成物の重量に基づき、該燃料油用潤滑性向上剤の含有量は好ましくは10〜1000ppm、更に好ましくは20〜800ppm、特に好ましくは50〜500ppmである。
10ppm以上であれば潤滑性が発揮し易く、1000ppm以下であれば添加効率がよいので経済性が優れる。
【0064】
本発明の低硫黄燃料油組成物は、ディーゼルエンジンやボイラー等に使用される硫黄含量が0.001重量%以下の燃料油(軽油)や、航空機等のジェットエンジン用の燃料油等に好適である。
特に、本発明の燃料油用潤滑性向上剤は曇点が低いので、冬期のような低温期であっても固化したり、結晶の析出が生じたりすることが少なく、製油所等で軽油等に潤滑性向上剤を添加する際に不具合が生じることが少ない。
更に、本発明の燃料油用潤滑性向上剤は、燃料油への溶解性に優れており、本発明の潤滑性向上剤を含有する低硫黄燃料油組成物はフィルター通油性に優れる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
<製造例1>
温度調節装置、バキューム撹拌翼、窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、片末端不飽和基含有ポリブテン(商品名;「日油ポリブテン30N」、日油(株)製]280重量部、テトラヒドロフラン−ボロン・テトラヒドロフラン1mol/L溶液[和光純薬(株)製]400重量部、テトラヒドロフラン400重量部を投入し、25℃で4時間ヒドロホウ素化を行った。次いで水50重量部、3N−NaOH水溶液50容量部、30重量%過酸化水素50容量部を投入して酸化した。分液ロートにて上澄み液を回収し、50℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027〜0.040MPa)テトラヒドロフランを2時間かけて除去し、水酸基含有化合物(B1)を得た。
【0067】
<製造例2>
温度調節装置、バキューム撹拌翼、窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、片末端不飽和基含有ポリブテン(商品名;「日油ポリブテン200N」、日油(株)製]140重量部、テトラヒドロフラン−ボロン・テトラヒドロフラン1mol/L溶液[和光純薬(株)製]400重量部、テトラヒドロフラン400重量部を投入し、25℃で4時間ヒドロホウ素化を行った。次いで水50重量部、3N−NaOH水溶液50容量部、30重量%過酸化水素50容量部を投入して酸化した。分液ロートにて上澄み液を回収し、50℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027〜0.040MPa)テトラヒドロフランを2時間かけて除去し、水酸基含有化合物(B2)を得た。
【0068】
<製造例3>
温度調節装置及び撹拌機を備えたSUS製耐圧反応容器に、片末端不飽和基含有ポリブテン(商品名;「日油ポリブテン200N」、日油(株)製]530重量部及び無水マレイン酸[和光純薬(株)製]25重量部を投入し、窒素雰囲気下、撹拌しながら220℃に昇温後、同温度で8時間エン反応を行い、その後、150℃で減圧下(0.027〜0.040MPa)未反応の無水マレイン酸を除去した。次いで、25℃まで冷却し、2−アミノエタノール20重量部を投入して、撹拌下130℃に昇温後、同温度で4時間イミド化反応を行った。120〜130℃で減圧下(0.027〜0.040MPa)未反応の2−アミノエタノールを2時間かけて除去し、水酸基含有化合物(B3)を得た。
【0069】
化合物(B1)〜(B6)及び比較の共重合体(HB1)〜(HB2)の分析値等を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に記載の化合物(B1)〜(B6)及び比較の化合物(HB1)〜(HB2)の組成は、以下に記載した通りである。
(B1):製造例1の片末端不飽和基含有ポリブテンのヒドロキシル化物
(B2):製造例2の片末端不飽和基含有ポリブテンのヒドロキシル化物
(B3):製造例3の片末端不飽和基含有ポリブテンの無水マレイン酸−エン−アミノアルコール付加物
(B4):水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(商品名;Krasol HLBH−5000M、Cray Valley製、1,2−ブチレン比率;65モル%)
(B5):水素化ポリブタジエンの末端水酸基含有重合体(商品名;Krasol HLBH−P2000、Cray Valley製、1,2−ブチレン比率;65モル%、OH基数/鎖=1.9)
(B6):水素化ポリブタジエンの末端水酸基含有重合体(商品名;Krasol HLBH−P3000、Cray Valley製、1,2−ブチレン比率;65モル%、OH基数/鎖=1.9)
(HB1):片末端不飽和基含有ポリブテン(商品名;「日油ポリブテン30N」
(HB2):n−オクタデシルメタアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタアクリレート-共重合体(99/1重量%)
【0072】
<製造例7〜10>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器にイソプロピルアルコールを25重量部仕込み、系内を窒素雰囲気として83℃まで昇温した。反応器中のイソプロピルアルコールを撹拌しながら、別のガラス製ビーカーに、表2記載の単量体配合物100重量部と、イソプロピルアルコール18重量部に2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.4重量部及び表1記載の量のドデシルメルカプタンを溶解した溶液を、それぞれ別の滴下ロートから反応器に2時間かけて等速度で全量を仕込み、仕込み終了から83℃で3時間重合反応を行なった。反応終了後、83℃から120℃に昇温しながらイソプロピルアルコールを除去し、曇点降下剤(C1−1)〜(C1−4)を得た。
【0073】
上記で得られた曇点降下剤(C1−1)〜(C1−4)の分析値等を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に記載の(c1)、(c2)、(f1)及び(f2)の組成は、以下に記載した通りである。
(c1):ドデシルメタアクリレート/トリデシルメタアクリレート=60/40(重量%)(直鎖率=74%)
(c2):テトラデシルメタアクリレート/ペンタデシルメタアクリレート=50/50(重量%)(直鎖率=80%)
(f1):n−ヘキサデシルメタアクリレート
(f2):n−オクタデシルメタアクリレート
【0076】
<潤滑性向上剤の調製>
実施例1〜11及び比較例1〜5
表1の共重合体(B1)〜(B6)及び比較の共重合体(HB1)〜(HB2)、表2に示した曇点降下剤(C1−1)〜(C1−4)、表3に示した脂肪酸(A−1)〜(A−9)、酸化防止剤(D)としてBHT並びに炭化水素系溶剤(E)としてイプゾール100(出光興産株式会社製、C9主成分の芳香族溶剤)を、表4に示した配合組成で配合し、潤滑性向上剤(R1)〜(R11)及び比較の潤滑性向上剤(S1)〜(S5)を調製した。
それぞれの潤滑性向上剤の曇点および貯蔵安定性を以下の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
<潤滑性向上剤の曇点の測定方法>
JISK−2269に準じて、潤滑性向上剤の曇点を測定した。
【0080】
<潤滑性向上剤の貯蔵安定性の評価方法>
潤滑性向上剤50gを100mlのガラス製容器に入れ、1℃の恒温槽内で48時間保管し、外観が均一透明であれば○、結晶が析出すれば×と判定した。
【0081】
<実施例12〜22、比較例6〜10(燃料油組成物の評価)>
潤滑性向上剤(R1)〜(R11)及び比較の潤滑性向上剤(S1)〜(S5)を、硫黄含量0.001重量%のJIS2号軽油相当のディーゼル燃料油に、潤滑性向上剤を250ppmになるように添加し、燃料油組成物(V1)〜(V11)及び比較の燃料油組成物(W1)〜(W5)を得た。
燃料油組成物(V1)〜(V11)及び比較の燃料油組成物(W1)〜(W5)の潤滑性、フィルター通油性を以下の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0082】
【表5】
【0083】
<燃料油組成物の潤滑性の測定方法>
HFRR(High−Frequency Reciprocating Rig)(英国PCSインスツルメンツ社製)を使用し、JPI−5S−50−98に準じて、試験鋼球に生じた摩耗痕径を測定した。
なお、潤滑性向上剤未添加の該ディーゼル燃料油の摩耗痕径は580μmである。
【0084】
<燃料油組成物のフィルター通油性の測定方法>
IP387法に準拠し、20℃に温調した燃料油組成物300mLを流速20mL/分でフィルター(直径13mm、ポアサイズ=1.6μm)に通油し、通油開始から15分間におけるフィルター前の最大圧力を測定した。圧力が105kPaを越えた場合は試験を停止し、その時点での通油時間を記録した。
【0085】
表4の結果から明らかなように、本発明の潤滑性向上剤は(実施例1〜11)は、比較例1〜5の潤滑性向上剤と比較して、曇点が低い。また、表5の結果から明らかなように、本発明の潤滑性向上剤を含有してなる燃料油組成物(実施例12〜22)は、比較例6〜10の燃料油組成物と比較して、潤滑性に優れ、フィルター通油性が良好であることがわかる。