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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-160421(P2017-160421A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】湿気供給材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/22 20060101AFI20170818BHJP
   E04B 1/92 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   C09K3/22 E
   E04B1/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-27158(P2017-27158)
(22)【出願日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-39548(P2016-39548)
(32)【優先日】2016年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB00
2E001DH23
2E001FA03
2E001FA11
2E001FA14
2E001GA11
2E001HB01
2E001HC01
2E001HD11
2E001KA01
(57)【要約】
【課題】 微粒子の飛散を防止できるような十分な湿気を供給し得る湿気供給材を提供する。
【解決手段】 水溶性ビニルモノマー及び/又は加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマーを必須構成単量体とする架橋重合体からなる吸収性樹脂と、透湿性外装とを有してなる湿気供給材;該透湿性外装は、織布、不織布、メッシュ、フィルムおよび紙からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、湿気供給材は、気温25℃、湿度40%の条件下で、表面積1m2当たりの湿気供給量が0.5〜50g/hrであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマー(a2)を必須構成単量体とする架橋重合体(A)からなる吸収性樹脂(X)と、透湿性外装(G)とを有してなる湿気供給材(Z)。
【請求項2】
さらに、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維およびスラッグ繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維(F)を、有してなる湿気供給材。
【請求項3】
前記(G)が織布、不織布、メッシュ、フィルムおよび紙からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の湿気供給材。
【請求項4】
さらに水を含有してなり、水と(X)との重量比[水/(X)]が、1/1〜500/1である請求項1〜3のいずれか記載の湿気供給材。
【請求項5】
気温25℃、湿度40%の条件下で、1m2当たりの湿気供給量が0.5〜60g/hrである請求項1〜4のいずれか記載の湿気供給材。
【請求項6】
微粒子飛散防止用である請求項1〜5のいずれか記載の湿気供給材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の湿気供給材(Z)を用いて、湿度を調整する微粒子の飛散防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気供給材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家屋にでは、壁材として湿気を調整できるような材料が使用されている。また、微粉体を取り扱う場所では、湿気を一定以上にするために、湿気を供給することが望まれている。
【0003】
また、原子力発電所での重大事故の後では、建屋内からの放射性微粒子の飛散が問題であり、その解決が求められている。
このような調湿材料としては、吸水性樹脂とポリウレタン材料を組み合わせた技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−062028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、ある程度の調湿は可能であるものの、微粒子の飛散を防止できるような十分な湿気を供給するには不十分であった。本発明の目的は、微粒子の飛散を防止できるような十分な湿気を供給し得る湿気供給材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性となる加水分解性ビニルモノマー(a2)を必須構成単量体とする架橋重合体(A)からなる吸収性樹脂(X)と、透湿性外装(G)とを有してなる湿気供給材(Z)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の湿気供給材(Z)は以下の効果を奏する。
(1)湿気供給量が大きい。
(2)該湿気供給材を用いることで、微粒子飛散防止に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<架橋重合体(A)>
本発明における架橋重合体(A)の必須構成単量体[以下、構成単位と略記することがある]である水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマーとなる加水分解性ビニルモノマー(a2)としては特に限定がないが、例えば、特開2005−075982号公報に記載の水溶性ラジカル重合単量体等が挙げられる。
【0009】
これらのうち、湿気供給性能の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、さらに好ましいのはアニオン性ビニルモノマー{アニオン性基(カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基及び水酸基等)を有するビニルモノマー}(a11)、特に好ましいのは炭素数3〜30のビニル基含有カルボン酸(塩){不飽和モノカルボン酸(塩){(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びこれらの塩等};不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びこれらの塩等);及び前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル等}、次に好ましいのは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましいのはアクリル酸(塩)である。
【0010】
なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「・・・酸(塩)」とは「・・・酸」及び/又は「・・・酸塩」を意味する。塩としては、カリウム、ナトリウム及びリチウム等のアルカリ金属塩並びにカルシウム等のアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0011】
また、湿気供給性能の観点から、アニオン性ビニルモノマー(a11)と後述のノニオン性ビニルモノマー(a12)とを組み合わせることが好ましい。(a11)と(a12)とのモル比[(a11)/(a12)]は、好ましくは1/99〜80/20、さらに好ましくは、5/95〜40/60、とくに好ましくは10/90〜30/70である。
該モル比[(a11)/(a12)]が80/20以下であることで、湿気供給性能が良好となる。
【0012】
前記ノニオン性ビニルモノマー(a12)としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノプロミルアクリレート、ジエチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等が挙げられる。該(a12)は1種又は2種以上を用いることができる。
上記(a12)のうち、好ましいのは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、さらに好ましいのはアクリルアミドである。
【0013】
架橋重合体(A)に含まれる水溶性ビニルモノマー(a1)単位がアニオン性ビニルモノマーの場合、これは未中和体であっても、中和体(水溶性ビニルモノマー塩単位)であっても構わないが、架橋重合体(A)を製造する上での作業性の改良等の目的で水溶性ビニルモノマー(a1)単位の一部又は全てを中和して水溶性ビニルモノマー塩単位としてもよい。
【0014】
(a1)としてアニオン性ビニルモノマーを使用した場合に、(A)に含まれるアニオン性ビニルモノマー由来のアニオン部分を中和体としたい場合は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属又はこれらの水溶液を、重合前のモノマー段階、あるいは重合後の含水ゲルに添加すれば良い。
【0015】
架橋重合体(A)の水溶性ビニルモノマー(a1)として、アニオン性ビニルモノマー{最も好ましくはアクリル酸(塩)}を使用する場合、アニオン性ビニルモノマーの最終的な中和度{アニオン性ビニルモノマーのアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づく、アニオン塩基の含有量(モル%)}は、湿気供給性能の観点から、30〜100が好ましく、さらに好ましくは40〜95、特に好ましくは50〜90である。
【0016】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)は、それぞれ、単独で構成単量体としてもよく、2種以上を構成単量体としてもよい。
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)のうち、湿気供給性能の観点から、(a1)が好ましく、さらに好ましくは(a1)を単独で構成単量体とすることである。
【0017】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)の両方を構成単位とする場合、これらのビニルモノマー単位のモル比{(a1)/(a2)}は、75/25〜99/1が好ましく、さらに好ましくは85/15〜95/5、特に好ましくは90/10〜93/7、最も好ましくは91/9〜92/8である。この範囲であると、湿気供給性能がさらに良好となる。
【0018】
架橋重合体(A)は、さらに、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)と共重合できるその他のビニルモノマーを構成単位とすることができるが、その他のビニルモノマー(a3)を構成単位として含まないことが好ましい。
【0019】
その他のビニルモノマー(a3)としてはたとえば、特開2003−225565号公報に記載のビニルモノマー等が挙げられる。
その他のビニルモノマー(a3)を構成単位とする場合、その他のビニルモノマー単位の含有量(モル%)は、湿気供給性能の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位の合計のモル数に基づいて、0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.05〜20、特に好ましくは0.1〜15である。
【0020】
本発明において、架橋重合体(A)は、必須構成単位である(a1)及び/又は(a2)が、反応性基を有する場合(カルボキシル基を有するものとアミノ基を有するものの併用等)は、自己架橋させても良いが、必要により内部架橋剤(c)を使用してもよい。
内部架橋剤(c)としては、公知の内部架橋剤、例えば、特開2003−225565号公報に記載の内部架橋剤が使用できる。
これらの内部架橋剤のうち、湿気供給性能等の観点から、エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤が好ましく、さらに好ましいのはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及び炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテル、特に好ましいのはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラアリルオキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテル、最も好ましいのはペンタエリスリトールトリアリルエーテルである。
【0021】
内部架橋剤(c)の含有量(モル%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位の合計モル数に基づいて、0.001〜5が好ましく、さらに好ましくは0.005〜3、特に好ましくは0.01〜1である。この範囲であると、湿気供給性能がさらに良好となる。
【0022】
架橋重合体(A)は、公知の方法{特開2003−225565号公報及び特開2005−075982号公報等}と同様にして、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに内部架橋剤(c)を重合して、含水ゲルを調製し、必要により含水ゲルを細断した後、乾燥して架橋重合体(A)としてもよい。
【0023】
また、架橋重合体(A)は、乾燥後に粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定はなく、通常の粉砕装置{たとえば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機}等が使用できる。粉砕された吸収性樹脂粒子は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。
【0024】
架橋重合体(A)が粉砕された粒子状である場合、(A)の重量平均粒子径(μm)は湿気供給性能、取り扱いの観点から、好ましくは100〜2000、さらに好ましくは200〜1000、特に好ましくは300〜850である。
【0025】
架橋重合体(A)は、必要により表面架橋剤を反応させて、表面を架橋処理してもよい。
表面架橋剤としては、公知の表面架橋剤、例えば、特開2003−225565号公報に記載の表面架橋剤が使用できる。
これらの表面架橋剤のうち、湿気供給性能等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位の水溶性置換基{カルボキシ基、水酸基等}及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)単位の加水分解によって生成する水溶性置換基{カルボキシ基、水酸基等}と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤が好ましく、さらに好ましくは多価グリシジル、特に好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテル、最も好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0026】
表面架橋剤の含有量(モル%)は、湿気供給性能等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位のモル数に基づいて、0.005〜0.300が好ましく、さらに好ましくは0.010〜0.200、特に好ましくは0.015〜0.15である。
【0027】
表面架橋反応の方法は、公知{たとえば、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、特開2005−95759号公報}の方法が適用できる。
【0028】
<透湿性外装(G)>
本発明における透湿性外装(G)は、公知のものでよいが、湿気供給性能等の観点から、好ましいのは、織布、不織布、メッシュ、フィルムおよび紙からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
該(G)のうち、後述の湿気供給材(Z)の湿気供給性能、取り扱いのし易さの観点から、好ましいのは織布、不織布、メッシュ、さらに好ましいのは織布、不織布である。
【0029】
透湿性外装(G)のうち、織布としては公知のものを使用することができる。例えば、素材も限定されることはなく、天然繊維(例えば、木綿、絹、麻など)、再生繊維(アセテート、レーヨン、キュプラなど)、合成繊維(例えば、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステルなど)が挙げられる。織り方も限定されることはなく、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。
【0030】
透湿性外装(G)のうち、不織布としては、公知のものを使用することができる。例えば、フェルトが挙げられるが、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維でできた不織布などでもよい。製法も限定されることはなく、乾式法、湿式法、スパンポンド法、メルトブロー法などが挙げられる。
【0031】
透湿性外装(G)のうち、メッシュ(金属網、樹脂網)としては、特に限定されることはなく公知のものを使用することができる。例えば、織り方も限定されることはなく、平織、綾織、焼結網などが挙げられる。
【0032】
透湿性外装(G)のうち、フィルムとしては、公知のものを使用することができる。例えば、素材も限定されることはなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0033】
透湿性外装(G)のうち、紙としては、特に限定されることはなく公知のものを使用することができる。例えば、ケナフ、サトウキビ、タケなどの非木材植物からなる紙でもよく、木材を使用した紙でもよい。
【0034】
本発明において、透湿性外装(G)は2種類以上してもよい。2種類以上使用する場合には、別の種類の(G)(例えば、メッシュと紙など)をそれぞれ1種類以上使用してもよいし、同一種の(G)(例えば、フェルトとアラミド繊維製不織布など)を2種類以上使用してもよい。
【0035】
<繊維(F)>
本発明における繊維(F)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維およびスラッグ繊維等の公知の無機繊維(WO2003/47830号パンフレットに記載のもの等)が挙げられる。
上記のうち、後述の湿気供給材(Z)の湿気供給速度の観点から、好ましいのは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維、スラッグ繊維、さらに好ましいのはガラス繊維、鉱物繊維である。
【0036】
<湿気供給材(Z)>
本発明の湿気供給材(Z)は、前記架橋重合体(A)からなる吸収性樹脂(X)と前記透湿性外装(G)とを有してなる。
【0037】
上記(Z)の形態としては、例えば、次のものが挙げられる。
(1)透湿性外装(G)の袋に、吸収性樹脂(X)、必要により前記(F)、を入れたもの。
(2)透湿性外装(G)の間に、吸収性樹脂(X)、必要により前記(F)、を入れたもの。
(3)透湿性外装(G)を表面に、その下部に吸水性樹脂(X)、必要により前記(F)、を載置したもの。
上記(1)〜(3)のうち、工業上および取り扱いの観点から、好ましいのは(1)、(2)、さらに好ましいのは(1)である。
【0038】
また、該(Z)は、湿気供給速度の観点から、好ましくはさらに前記繊維(F)を有してなるものであり、さらに好ましいのは前記(F)と(X)とを混合したものである。
上記(X)と(F)との重量比[(X)/(F)]は、好ましくは1/10〜10/1、さらに好ましくは2/1〜1/2である。
【0039】
また、湿気供給材(Z)の形状、大きさは、用途、目的により、適宜、調整できるが、工業上および取り扱いの観点から、好ましい形状は上記(1)のうち、袋状のものである。
【0040】
本発明の湿気供給材(Z)は、さらに水を含有することで、湿気供給可能となる。
その場合、水と吸収性樹脂(X)との重量比[水/(X)]は、湿気供給性能の観点から、好ましくは1/1〜500/1、さらに好ましくは2/1〜300/1である。
上記(Z)に、水を含有させる場合、(Z)に水を噴霧したり、水を噴射したりする方法等が挙げられる。また、前記(A)の製造過程の含水ゲルを、該(G)に入れて、上記(Z)としてもよい。すなわち、水を含有しない場合、(Z)は湿気供給用材料とも言える。
【0041】
また、(Z)が袋状の場合、湿気供給性能、取り扱いの観点から、大きさ、つまりタテ×ヨコ×厚さは、タテ、ヨコは好ましくは10cm〜2m、さらに好ましくは20cm〜1m、厚さは好ましくは0.1〜30cm、さらに好ましくは1〜10cmである。
【0042】
また、上記(Z)は、気温25℃、湿度40%の条件下で、表面積1m2当たりの湿気供給量(水換算)が、好ましくは0.5〜60g/hr、さらに好ましくは2〜50g/hr、とくに好ましくは5〜40g/hrである。
【0043】
本願発明の湿気供給材(Z)は、湿気供給量が大であり、湿気供給性能に優れる。このため、微粒子飛散防止用、とりわけ原子力発電所の建屋内等の放射性微粒子飛散防止用に好適である。
また、湿気供給性能により、気温25℃では湿度60〜85%に調整でき得るため、微粒子飛散防止および過剰な湿度下の作業における安全面(滑り防止、転倒防止等)の観点からも有用である。
【0044】
本発明の微粒子の飛散防止方法は、前記湿気供給材(Z)を用いるものである。すなわち、微粒子が飛散し得る場所の壁面、天井、床面、空間のいずれか1ケ所または2ケ所以上に該(Z)を設置して、湿度を調整(湿気を十分に供給)することにより、微粒子、とりわけ放射性微粒子の飛散を防止することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%を示す。
【0046】
製造例1
<吸収性樹脂(X−1)>
アクリル酸250部、ペンタエリスリトール(PE)トリアリルエーテル0.25部、トリメチロールプロパン(TMP)トリアクリレート0.75部及びイオン交換水750部を撹拌混合してアクリル酸水溶液を調製し、4℃に温度調整した。
該アクリル酸水溶液を断熱重合槽に仕込み、水溶液に窒素を通じてアクリル酸水溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下とした。この断熱重合層に、10%2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド[商品名「V−50」、和光純薬工業(株)製]水溶液1.25部を添加し、0.1%過酸化水素水5部、0.1%L−アスコルビン酸水溶液5部を添加し、重合が開始するまで水溶液中への窒素通気を継続した。重合が始まり、アクリル酸水溶液の粘度が上昇し始めたのを確認後、窒素通気を停止してその後6時間重合させて重合体(A’−1)からなる含水ゲルを得た。反応系の最高到達温度は75℃であった。
(A’−1)からなるブロック状の架橋含水ゲルを断熱重合槽から取り出し、小型ミートチョッパー[型番「VR−400K」、ローヤル(株)製]を用いてゲルを3〜10mmの太さのヌードル状になるように細分化した後、水酸化ナトリウム(試薬特級)100部(アクリル酸の中和度72モル%相当)を加えミンチ機に通して含水ゲルを中和し、含水ゲル状の重合体(A’’−1)を得た。
重合体(A’’−1)を、目開き850μmのSUS製のスクリ−ンの上に、厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機[型番「HAP2031F」、(株)HAKKO製]を用いて120℃の熱風を1時間含水ゲルに通気させて、含水ゲルを乾燥した。
乾燥物をクッキングミキサーを用いて粉砕し、架橋重合体(A−1)からなる吸収性樹脂(X−1)を得た。なお、(X−1)の重量平均粒径は380μmであった。
【0047】
製造例2
<吸収性樹脂(X−2)>
製造例1において、PEトリアリルエーテル0.25部を0.13部としたこと、TMPトリアクリレート0.75部を用いなかったこと、乾燥物を衝撃粉砕機[型番「Retch ZM200」、(株)日本精機製作所製]を用いて粉砕したこと以外は製造例11と同様にして、架橋重合体(A−2)からなる吸収性樹脂(X−2)を得た。なお、(X−2)の重量平均粒径は510μmであった。
【0048】
製造例3
<吸収性樹脂(X−3)>
アクリル酸145.4部に水9.4部を加え、20〜30℃に冷却しつつ、25%の水酸化ナトリウム水溶液242.3部(アクリル酸の中和度75モル%相当)を加えて中和した。該水溶液にエチレングリコール(EG)ジグリシジルエーテル[商品名「デナコールEX−810」、ナガセ化成工業(株)製]0.09部、次亜リン酸ソーダ1水和物0.0146部、過硫酸カリウム0.29部を加えて均一溶解させ、モノマー水溶液を得た。次いで、反応容器にシクロヘキサン624部を仕込み、さらにソルビタンモノステアレート2部を加えて溶解させた後、撹拌しつつ反応容器内を窒素置換した。次に、反応容器内を70℃に温度調整した後、該モノマー水溶液397部を6.6部/分の速度で1時間かけて滴下し、その後、75℃で30分間反応、熟成させて、架橋重合体(A−3)の懸濁液を得た。
得られた(A−3)の懸濁液から、水及びシクロヘキサンを共沸除去し、含水率約20重量%[赤外水分計「FD−100型」、Kett(株)製、加熱温度180℃、20分で測定]の水溶液とした。30℃に冷却し撹拌を停止して樹脂粒子を沈降させ、デカンテーションにより樹脂粒子を分離し、150℃に設定した循風乾燥機にて2時間乾燥させて架橋重合体(A−3)からなる吸収性樹脂(X−3)を得た。なお、(X−3)の重量平均粒子径は210μmであった。
【0049】
比較製造例1
<吸収性樹脂(比X−1)>
製造例1において、アクリル酸200部をスチレン360部に変更した以外は製造例1と同様にして、架橋重合体(比A−1)からなる吸収性樹脂(比X−1)を得た。なお、(比X−1)の重量平均粒子径は、400μmであった。
【0050】
製造例6
<透湿性外装(G−1)>
バイリーンJK−200[日本バイリーン(株)製、不織布]を裁断したタテ50cm×ヨコ50cmを2枚、三辺を足踏み式シーラーFi200(富士インパルス(株)製)にて130℃、10秒加熱融着して、袋状の透湿性外装(G−1)を得た。
【0051】
製造例7
<透湿性外装(G−2)>
N−No255HD[ナイロンメッシュ、安積濾紙(株)、樹脂メッシュ]を裁断したタテ50cm×ヨコ50cmを2枚、三辺を足踏み式シーラーFi200(富士インパルス(株)製)にて180℃、10秒加熱融着して、袋状の透湿性外装(G−2)を得た。
【0052】
製造例8
<透湿性外装(G−3)>
吉田晒天竺さらし(綿100%)[吉田織物製、織布]を裁断したタテ50cm×ヨコ50cmを2枚、三辺を縫って、袋状の透湿性外装(G−3)を得た。
【0053】
<実施例1〜8、比較例1>
表1にしたがって、上記吸収性樹脂(X)20gを、上記透湿性外装(G)に封入して、開口部を閉じて、湿気供給材(Z−1)〜(Z−5)、(比Z−1)を得た。
また、表1にしたがって、上記吸収性樹脂(X)20gとグラスウール(F−1)[繊維径5μm、繊維長50mm]4gとをクッキングミキサーで混合して、これを上記透湿性外装(G)に封入して、開口部を閉じて、湿気供給材(Z−6)〜(Z−8)を得た。
結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
<実施例11〜20、比較例11>
上記得られた湿気供給材(Z)を目開き1mmの金網の上に置いて、表2にしたがって、水(イオン交換水)を1時間かけて、均一に上面から噴霧して、さらに水を含有してなる各湿気供給材(Z)を得た。
得られた各湿気供給材(Z)を以下の評価方法により評価した。結果を表2に示す。
【0056】
<評価方法>
気温25℃、湿度40%の条件下、湿気供給材<タテ50cm×ヨコ50cm>をポリプロピレン樹脂製の台上に載置し、0.3時間静置した。初期重量(W1)と0.3時間後の重量(W2)とから、以下の式により、湿度供給材(Z)の表面積(上面)1m2当たりの湿気供給量(水換算)(単位:g/hr)を算出した。

湿気供給量(g/hr)=[(W1)−(W2)]/[0.5×0.5×0.3]
【0057】
【表2】
【0058】
表1〜2の結果から、本発明の湿気供給材は、比較のものと比べて、湿気供給量が大であり、優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の湿気供給材は、湿気供給量が大きく、種々の用途において湿気供給材として有用である。また、この湿気供給材を用いることで、微粒子飛散防止、とりわけ原子力施設等での放射性微粒子の飛散防止に好適に使用できる。