【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、独立請求項の特徴を備えた、繊維機械のクリーニング方法および繊維機械により実現される。
【0006】
本発明は、複数の同一のワークステーションからなる繊維機械のクリーニング方法に関する。
たとえば、この繊維機械は、一連の同一のワークステーションを備えて、移動式のクリーニング装置によりクリーニングされるロータ精紡機、空気精紡機、リング精紡機、巻取器、またはその他の繊維機械である。
精紡機の場合、ワークステーションは、ケンスから取り出されたスライバを糸に紡ぎ、その糸をボビンに巻き付けるユニットを意味するものと理解される。
【0007】
この方法では、ワークステーションのクリーニング要求が発行される。
これは、ワークステーション自体または繊維機械の制御装置により達成することができる。
クリーニング要求が発行された場合、ワークステーションに移動式クリーニング装置が接近して、当該ワークステーションをクリーニングする。
【0008】
本発明によると、クリーニング要求は、各ワークステーションで前回のクリーニングプロセス以降に発生したイベントに依存して発行される。
そのようなイベントは、前回のクリーニングプロセス以降のワークステーションの汚れを示す。
よって、この方法は、個別のワークステーションの汚れの程度の違いを考慮する。
【0009】
イベントは、予め定められた障害、好ましくは、品質の測定値の形式である測定値の予め定められた組み合わせ、糸継ぎプロセス、ボビンの変更、および/またはケンスの変更を含むと良い。
たとえば、障害は、糸切れやクリヤラカットを含む。
そうすることで、すべて、または、少数の予め定められた障害をイベントと見なすことができる。
たとえば、品質の測定値である測定値は、糸の太さや色を含む。
ここでは、そのような測定値の特定の組み合わせは、ワークステーションにおけるクリーニング要求を示し、結果として、イベントと見なすことができる。
ここでは、糸継ぎプロセスは、糸切れまたはクリヤラカット後に2つの糸端を結び合わせることと、空のボビンまたは部分的に巻取りが行われたボビンに糸を設定することとを意味すると理解される。
この段階でのボビンおよびケンスの変更は、どの程度の撚糸または織物が処理されたかを直接示す。
一定量の撚糸または織物が処理されるごとに、ある程度の汚れが蓄積するため、ボビンおよびケンスの変更は、汚れが蓄積したことの良好な指標である。
さらに、糸継ぎプロセスごとに、埃が堆積し、または、埃が巻き上がる。
よって、これも、また、ワークステーションの汚れの良好な指標である。
しかし、これらのイベントは、排他的なものではない。
すなわち、繊維機械によっては、メンテナンス装置を利用した特定のメンテナンスプロセスや、摩耗部品の交換など、他のイベントを考慮することもできる。
【0010】
ワークステーションにより要求されたクリーニングを実行する場合、クリーニング装置の経路に沿って位置するワークステーションも、各ワークステーションで前回のクリーニングプロセス以降に発生したイベントに依存してクリーニングされると良い。
この場合、そうした依存は、クリーニング装置の経路に沿って位置するワークステーション自体が、クリーニング要求をまだ発行していなくても、既に発生したイベントに基づいて、それらのワークステーションが、クリーニング要求を間もなく発行することが予想される場合に、それらのワークステーションがクリーニングされる態様で選択される。
これにより、クリーニング装置を必要以上に頻繁または長時間にわたり実行することが回避され、クリーニング装置の効率が向上する。
【0011】
依存は、(好ましくは、重み付けされた)イベント数の超過であると良い。
たとえば、ケンスの変更は、比較的大量の撚糸が処理され、よって、高程度の汚れが生じたことを示す。
よって、ケンスの変更の重み付け係数は、比較的大きい。
一方、1回の糸継ぎプロセスでは、比較的低程度の汚れしか生じないため、糸継ぎプロセスの重み付け係数は、比較的小さくなるように選択される。
重み付けされたイベントの特定のしきい値を超えた場合、特定の程度の汚れに達したことを示す。
よって、クリーニング要求が、発行される。
【0012】
上述したように、クリーニング装置の経路に沿って位置するワークステーションについては、それらのワークステーションをクリーニング実行時にクリーニングするか否かを判断するために、ある程度小さいしきい値が選択される。
よって、それらのワークステーションは、実際には、クリーニング要求につながるしきい値に到達していない場合でも、クリーニングされる可能性がある。
【0013】
また、イベントは、それらのイベントから各ワークステーションまでの距離に応じて重み付けされると良い。
よって、汚れの大半は、典型的には、各ワークステーション自体での精紡作業に起因する。
しかし、隣接するワークステーションでの精紡作業も、一定の汚れをワークステーションにもたらす(ただし、距離が大きくなるほど、汚れは減少する)。
よって、イベントが発生したワークステーションから観察対象のワークステーションまでの距離が大きくなるにつれ、小さい重み付け係数が選択される。
典型的には、数台の隣接するワークステーションのイベントを考慮すれば、十分である。
【0014】
また、依存が、予め判断されたイベントシーケンスであると良い。
たとえば、ボビンを2回変更する間に糸継ぎプロセスが特定の回数を超えた場合、欠陥が存在することが仮定される。
この欠陥は、汚れがひどいワークステーションに起因する可能性があるが、他の原因も、考えられる。
よって、特定回数の糸継ぎプロセスが連続して実行された後のクリーニング要求の発行は、欠陥の原因として考えられる汚れを改善する役割を果たす。
クリーニングプロセスが実行された後に、糸継ぎプロセスが何度も連続して実行される場合、欠陥の原因は、おそらく、別にある。
この場合、メンテナンス装置がワークステーションを修理するか、または、操作担当者が多発する糸継ぎプロセスの原因を調査する必要がある。
【0015】
ワークステーションの前回のクリーニングから長時間が経過している場合、そのワークステーションは、具体的には、環境空気に含まれる埃または繊維で汚れている可能性がある。
よって、ワークステーションの前回のクリーニングから予め定められた時間が経過した場合、そのワークステーションのクリーニング要求を発行して、対応するワークステーションが常に過剰に汚れないようにすると良い。
【0016】
クリーニング要求は、稼働中のワークステーションについてのみ発行されると良い。
ワークステーションが長時間にわたって稼働していない場合でも、隣接するワークステーションでのイベントを通じて、クリーニング要求が発行される可能性がある。
しかし、クリーニング要求を発行することに意味があるのは、ワークステーションが、間もなく稼働する場合のみである。
長時間にわたり稼働していないワークステーションの場合、これを予測することはできないため、稼働していないワークステーションがいかなるクリーニング要求も発行しないほうが効率的である。
【0017】
他方、稼働していないワークステーションがクリーニング装置の経路に沿って位置している場合、そのワークステーションの過剰な汚れを防ぐために、前回のクリーニングプロセス以降に発生したイベントに依存して、そのワークステーションもクリーニングすることが、好ましい。
【0018】
移動式クリーニング装置が、独立したクリーニングユニットとして動作すると良い。
その場合、クリーニング装置を、他のメンテナンス装置とほぼ無関係に、繊維機械に沿って個別のワークステーションに移動させることができ、クリーニング要求の処理を他のメンテナンス要求と調整する必要がなくなる。
【0019】
ただし、クリーニング装置を、より大きな移動式メンテナンス装置の一部として動作させることが有利な場合もある。
その場合、クリーニング装置に独立した駆動部を設ける必要がなくなり、クリーニング装置とより大きなメンテナンス装置との衝突に注意する必要もなくなる(メンテナンス装置は、たとえば、上述した糸継ぎプロセスを実行する修理ロボットとして形成される)。
【0020】
多数のワークステーションを備える繊維機械の場合、すべてのクリーニング要求に応えるために、複数のクリーニング装置が必要である。
よって、少なくとも2つのクリーニング装置によりクリーニングすることが可能な重複領域を設けると良い。
重複領域で生じるクリーニング要求をうまく分散させることで、クリーニング装置の効率を向上させることができる。
最大で1つのクリーニング装置が重複領域内に常に留まることが好ましい。
これは、クリーニング装置間の衝突を避けるための、単純だが、効果的な方法である。
【0021】
ワークステーションのクリーニング要求が重複領域で発行された場合、作業負荷が小さいほうのクリーニング装置によりクリーニングプロセスを実行すると良い。
これにより、作業負荷の調整が実現され、クリーニング装置の効率が向上する。
【0022】
ただし、ワークステーションのクリーニング要求が重複領域で発行された場合、クリーニング要求が発行されたワークステーションに近いほうのクリーニング装置によりクリーニングプロセスを実行すると良い。
この方法では、クリーニング装置が必要以上に長い距離を移動することが回避され、クリーニングをより迅速に実行することができる。
【0023】
さらに、複数の同一のワークステーションを備える繊維機械が提案される。
この繊維機械は、移動式のクリーニング装置と、制御装置とをさらに備える。
ここで、制御装置は、ワークステーションのクリーニング要求を発行するように形成され、クリーニング装置は、クリーニング要求が発行されたワークステーションに接近して当該ワークステーションをクリーニングするように形成される。
【0024】
本発明によると、制御装置は、既に説明した事項に応じて繊維機械をクリーニングするように形成される。
よって、制御装置は、各ワークステーションで前回のクリーニングプロセス以降に発生したイベントに依存して、クリーニング要求を発行する。
そのようなイベントは、ワークステーションが前回のクリーニング以降に汚れたことを示す。
よって、制御装置は、クリーニング要求を発行するときに、ワークステーションのさまざまな程度の汚れを考慮するように形成される。
【0025】
ここで、移動式クリーニング装置を独立したクリーニングユニットとして形成すると良い。
その場合、クリーニング装置を、他のメンテナンス装置とほぼ無関係に、繊維機械に沿って個別のワークステーションに移動させることができ、クリーニング要求の処理を他のメンテナンス要求と調整する必要がなくなる。
【0026】
ただし、クリーニング装置を、より大きな移動式メンテナンス装置の一部として形成すると良い場合もある。
その場合、クリーニング装置の独立した駆動部が省略され、クリーニング装置とより大きなメンテナンス装置との衝突に注意する必要がなくなる。
【0027】
本発明は、以下の実施形態で説明される。