【実施例1】
【0021】
切断装置により車両の進行方向に対して横断方向となる舗装面を、所定の深さ及び小幅をもって掘削切除する。舗装面上に雨水や清掃水等が溜まりやすいことが想定される箇所やその近接箇所を横断方向に連続的に切除して排水溝1を形成する。
図1に示すように、舗装面を横断方向に切断することにより道路の中央部が高く端縁部が低い舗装面の傾斜に沿った排水溝1を形成することができ、雨水や清掃水等が舗装面上で溜まることを防止することが可能となる。該排水溝1の端部を道路の端縁部側の既設或いは新設の排水路2と連結することで雨水や清掃水等を集水して排水することが可能となる。
【0022】
排水溝1の深さや幅等の大きさは、舗装面の広さや雨水や清掃水等の溜まりやすさ等によって排水量を想定し、それによって決定することになるが、例えば、深さ5〜15cm、幅5〜30cmの断面U字形状の連続溝として形成することができる。
【0023】
舗装面の一部を断面U字形状に連続掘削切除した排水溝1内をガスバーナー等の加熱手段により温める。温めることにより次の工程の塗布作業において露出した面が塗布材料となじみ一体化させることが可能となる。
【0024】
次に、
図2に示すように、上記工程で形成した排水溝1内の周側壁面3及び底部4を防水性プライマーで塗布する。刷毛での塗布手段が簡便で舗装材料となじませることができる。
【0025】
プライマー処理した排水溝1の周側壁面3及び底部4に粘度の大きな溶融したフィラー入りアスファルト5をゴム状へら等の塗着具を使用して塗布する。使用量は2〜2.5kg/m
2として全体を万遍なく塗着することで防水性を確固たるものとすることができる。フィラー入りアスファルト5は、後述する工程で製造した材料である。
【0026】
別途工程において、鍋状のもの或いは小型コンクリートミキサー等を使用し、ガスバーナー等の加熱手段により骨材となる砕石6号(5〜13mm)を170〜190℃に加熱する。上記砕石6号を予め10mmのふるいにかけて13〜10mmの統一した単粒度のサイズとすることで均一状態に近い状態の空隙を持つ埋め込み材料を得ることができる。
【0027】
上記工程で得た加熱砕石内へ170〜190℃で動粘度の大きな溶融したフィラー入りアスファルトを加え、加熱撹拌混合してフィラー入りアスファルト加熱混合物6を製造する。上記溶融フィラー入りアスファルトは、骨材の重量に対して8〜12重量%として加熱撹拌混合する。
【0028】
図3(a)、(b)に示すように、上記フィラー入りアスファルト加熱混合物6を排水溝1内の空間に埋め込み、タンパーや転圧プレートを使用して転圧し、締め固め、周辺部の舗装面と面一に形成する。
【0029】
上記フィラー入りアスファルト加熱混合物6は、開粒度の高い混合物となり、10〜40%の空隙率を有することになる。
【0030】
溶融フィラー入りアスファルトAは、
図4の実験結果(一般社団法人日本道路建設業協会道路試験所)で示すように、通常のストレートアスファルトBに比較して動粘度が大きなものである。例えば、160℃で約180,000mm
2/Sであり、180℃では約2,600mm
2/Sであり、195℃では約1,000mm
2/Sである。動粘度が大きいということは、動粘度(mm
2/S)=粘度mPa・S/密度(g/cm
2)であるから密度が同じ条件であれば粘度が大きいということになる。
【0031】
上記のように、溶融フィラー入りアスファルトは粘度が大きいので、相互の接着力、周側壁面3や表面側の既存の舗装面との接着力も強力なものとなり、ひび割れ、はがれ、欠損等が生じることはなく、且つ、排水性の良好な耐久性の有る排水溝を形成することができる。
【0032】
排水溝1にフィラー入りアスファルト加熱混合物6を埋め込んで締め固めた後、該フィラー入りアスファルト加熱混合物6が冷めてから水をかけ流して効果を確認し、交通を開放することになる。手で触れることのできる温度となる約60℃以下が目安となる。
【0033】
以下にフィラー入りアスファルトの製造方法をその工程に沿って説明する。
a.常温の潤滑油廃液と針入度20〜30で温度180℃前後の溶融ブロンアスファルトとを混合し、必要に応じて添加量を調整し、同時に添加材を徐々に添加する。
空の加熱式撹拌混合タンクヘ、常温の潤滑油廃液と針入度20〜30、温度180℃前後となる溶融ブロンアスファルトとを、予め吐出量を設定した各々のギヤポンプにより移送し、加熱撹拌混合をする。温度は160〜190℃の範囲内とし、最適には180℃前後を保ちながら1〜2時間、加熱撹拌混合を続ける。
潤滑油廃液と溶融ブロンアスファルトの混合割合は、溶融ブロンアスファルトの重量に対して潤滑油廃液を10〜25重量%添加する。
又は
常温の潤滑油廃液と常温で固形(固体)の針入度20〜30の固形ブロンアスファルトとを加熱式撹拌混合タンク内ヘ注入して混合し、加熱しながら徐々に撹拌し、温度を160〜190℃まで上昇させ、1〜2時間、加熱撹拌混合し、潤滑油廃液中の固形ブロンアスファルトを軟化させる。
上記により混合物を得る。
上記各材料の個別状態及び混合割合や温度設定であれば、従来の製造方法によって得られた潤滑油廃液とブロンアスファルトとの混合物とは異なり、固形ブロンアスファルトにあっても徐々に、且つ均一に軟化させることができ、いずれの場合も良好な混合物が得られる。
上記製造工程の特徴は、単独ではアスファルト系材料としては不可能なブロンアスファルトを、潤滑油廃液及び加熱撹拌により軟化し、所要の粘度にして良好な材料を得ることを可能とした工程である。
b.上記工程の間、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーを潤滑油廃液とブロンアスファルトとの混合中に少しずつ添加し、加熱撹拌融解混合して所要の性状にする。各原材料の添加は1〜2時間かけてほぼ同時に終了する。
c.その後、1時間前後、加熱撹拌融解混合し、上記工程での撹拌融解混合時間と合わせて各原材料の撹拌融解混合時間は3時間を目安にして性状変化を観察・確認する。
上記温度は160〜190℃の範囲とし、最適には180℃前後を保ち続ける。
スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーの混合割合は、ブロンアスファルトの量に対して5〜10重量%添加する。この添加により、混合物に一層の粘弾性・可撓性・耐衝撃性・塑性変形等の低温特性が加わり、補修材料の性能を大幅に向上させることができる。
d.その後、温度を160〜190℃、最適には180℃前後を保ちながら消石灰を徐々に少量ずつ添加して加熱撹拌混練する。添加後、加熱撹拌混練時間は3時間を目安として混合物の仕上がりを判断する。
消石灰の混合割合は、潤滑油廃液とブロンアスファルトの量に対して20〜40重量%とし、徐々に添加して加熱撹拌混練する。消石灰の添加により粘弾性を高め、感温性を小さくすることができる。それにより自然温度下において流動しようと働く力に対して流れまいとする力が強く働く。このような性状は舗装及び防水層の補修材料にとっては欠かせない重要な性能であり、補修施工後の耐用年数の長期化に大きく影響する。それによりライフサイクルコストの低減をはかり、経済効果を引き出すという重要な役割を達成することができる。
なお、アルカリ性であるので、既存の路面や骨材への付着性を一層向上させることができる。
e.上記混合物の仕上がり後、剥離材を施した容器内に該混合物の一定量を流し込み、自然冷却する。
f.上記工程の翌日等の冷却後、容器内から混合物を分離して取り出し、細かく切断又は砕く。切断は常温で行い、砕く場合には冷蔵庫で0〜−5℃まで温度を下げて行う。
g.細かく切断又は破砕した混合物を別装置となる撹拌混合タンク内に挿入し、トルエンを混合物の40〜60重量%の割合で添加する。
h.次に、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーを混合物の0.5〜10重量%の割合で添加し、3〜5時間、常温にて撹拌混合融解する。
i.その後、一定量容器に流し込み、流動性の良好な液状の状態で常温下で保管する。