(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-160992(P2017-160992A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20170818BHJP
【FI】
F16K31/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-45776(P2016-45776)
(22)【出願日】2016年3月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB30
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF05
3H062GG01
3H062GG06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガイド部と従動スライダと下端ストッパ部を有するストッパ機構を備えた電動弁において、ストッパ機構を堅牢にする。
【解決手段】支持部材2のホルダ部21の外周にストッパガイド部材5を配設し、このストッパガイド部材5のガイド部51に従動スライダ6を螺合する。止め金具7の円筒部71を支持部材2の基部22に嵌合させる。ストッパガイド部材5の下端部の係止部54の縦軸54aを止め金具7のカバー部72で覆う。係止部54の横軸54bをカバー部72の係止孔72a内に係止させる。カバー部72の孔72a止め金具7のフランジ部73を支持部材2の固定部材24に対して溶接等により固着する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを構成するマグネットロータの回転運動をネジ送り機構により弁体の直線運動に変換し、該弁体を弁ポートに対して進退させて該弁ポートを通る流体の流量を制御する電動弁において、
前記マグネットロータの少なくとも下端位置を規制するストッパ機構と、
前記マグネットロータのロータ軸を前記弁ポートの軸線上に支持する支持部材と、を備え、
前記ストッパ機構は、前記支持部材の外周に螺旋状の軌道を構成するガイド部と、該ガイド部の下端から延在されたに下端ストッパ部と、該下端ストッパ部から延在された係止部と、前記ガイド部に螺合された従動スライダとで構成され、
前記支持部材の外周にて、前記係止部の前記軸線回りの回動を阻止するように該係止部を固定するとともに、該係止部の少なくとも一部を外側から覆う被覆固定部材を備えたことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記支持部材は、円柱状のホルダ部と、該ホルダ部より径の大きな円柱状の基部とを備え、
前記ガイド部は前記ホルダ部の外周に設けられるとともに、前記係止部は、前記支持部材の前記基部の外周に前記軸線と平行な縦軸を有し、
前記被覆固定部材は、前記基部の外周に配設され、前記係止部の前記縦軸と前記基部とを覆う円筒状の止め金具で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットロータの回転をネジ送り機構により弁体の直線運動に変換するとともに、ガイド部に螺合された従動スライダを回転して下端ストッパ部に当接させてマグネットロータの少なくとも下端位置を規制するストッパ機構を備えた電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動弁として、例えば特表2012−533718号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この電動弁は、電動モータの磁気ローター(マグネットロータ)のネジシャフト(ロータ軸)をナット(支持部材)に螺合し、磁気ローターの回転に伴うネジ送り機構によりニードル弁を移動するものである。また、バネレール(ガイド部)にスライドリング(従動スライダ)を螺合し、磁気ローターの回転に伴ってスライドリングを移動させ、このスライドリングを下ストッパー部(下端ストッパ部)に当接させることで、磁気ローターの下端位置を規制している。すなわち、バネレール(ガイド部)、スライドリング(従動スライダ)及び下ストッパー部(下端ストッパ部)はストッパ機構を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012−533718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものでは、下ストッパー部(33c)から延びる周方向リミット部(33d)をプラスチックナット(32)の外周に形成された凹溝(32e)に嵌合することで、バネレール(33)の下端部を固定するようにしている。しかし、スライドリング(34)が下ストッパー部(33c)に対して強い衝撃で当接すると、このストッパ機構が破損(外れる)虞がある。
【0005】
本発明は、マグネットロータの回転をネジ送り機構により弁体の直線運動に変換するとともに、ガイド部に螺合された従動スライダを回転して下端ストッパ部に当接させてマグネットロータの少なくとも下端位置を規制するストッパ機構を備えた電動弁において、ストッパ機構を堅牢にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の電動弁は、電動モータを構成するマグネットロータの回転運動をネジ送り機構により弁体の直線運動に変換し、該弁体を弁ポートに対して進退させて該弁ポートを通る流体の流量を制御する電動弁において、前記マグネットロータの少なくとも下端位置を規制するストッパ機構と、前記マグネットロータのロータ軸を前記弁ポートの軸線上に支持する支持部材と、を備え、前記ストッパ機構は、前記支持部材の外周に螺旋状の軌道を構成するガイド部と、該ガイド部の下端から延在されたに下端ストッパ部と、該下端ストッパ部から延在された係止部と、前記ガイド部に螺合された従動スライダとで構成され、前記支持部材の外周にて、前記係止部の前記軸線回りの回動を阻止するように該係止部を固定するとともに、該係止部の少なくとも一部を外側から覆う被覆固定部材を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の電動弁は、請求項1に記載の電動弁であって、前記支持部材は、円柱状のホルダ部と、該ホルダ部より径の大きな円柱状の基部とを備え、前記ガイド部は前記ホルダ部の外周に設けられるとともに、前記係止部は、前記支持部材の前記基部の外周に前記軸線と平行な縦軸を有し、前記被覆固定部材は、前記基部の外周に配設され、前記係止部の前記縦軸と前記基部とを覆う円筒状の止め金具で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の電動弁によれば、被覆固定部材により、この下端ストッパ部から延在された係止部が支持部材に対して固定されているので、ストッパ機構において、マグネットロータとともに従動スライダが回転して、この従動スライダが下端ストッパ部に当接しても、係止部が支持部材から外れることがなく、ストッパ機構が堅牢になる。
【0009】
請求項2の電動弁によれば、請求項1の効果に加えて、被覆固定部材が、係止部の縦軸と基部とを覆う円筒状の止め金具で構成されているので、支持部材の基部に対して係止部を確実に固定することができ、ストッパ機構がさらに堅牢になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動弁の縦断面図である。
【
図2】実施形態に係る電動弁のケースとマグネットロータを取り外した状態の側面図である。
【
図3】
図2におけるA−A断面図及び一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の電動弁の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係る電動弁の縦断面図、
図2は同電動弁のケースとマグネットロータを取り外した状態の側面図、
図3は
図2におけるA−A断面図及び一部拡大図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。また、「右回り(時計回り)」及び「左回り(反時計回り)」の表現は、電動弁を上から見た状態での回転方向を示す。
【0012】
この電動弁は、ステンレスや真鍮等の金属部材のプレス加工や切削加工により形成された弁ハウジング1を有しており、弁ハウジング1はその内側に弁室1Aを有している。弁ハウジング1の外周片側には弁室1Aに導通される第1継手管11が接続されている。また、弁ハウジング1の下端には第2継手管12が接続されるとともに、弁ハウジング1の内底面には弁ポート13が形成されており、第2継手管12は弁ポート13を介して弁室1Aに導通される。なお、第1継手管11及び第2継手管12は、弁ハウジング1に対してろう付け等により固着されている。
【0013】
弁ハウジング1の上端開口部には支持部材2が取り付けられている。支持部材2は、合成樹脂製の略円柱状のホルダ部21と、ホルダ部21より径の大きな略円柱状の基部22と、弁ハウジング1の内径と同径の蓋部23と、この蓋部23の基部22寄りにインサート成形により一体に設けられたステンレス製の固定部材24とを有している。そして、支持部材2は、蓋部23が弁ハウジング1に嵌合されて、固定部材24が弁ハウジング1の端部に溶接等により固着されることで、弁ハウジング1に固定されている。
【0014】
ホルダ部21の中心には、弁ポート13の軸線Lと同軸の雌ネジ部21aとそのネジ孔が形成され、基部22と蓋部23には雌ネジ部21aのネジ孔の外周よりも径の大きな円筒状のスライド孔25が形成されている。そして、雌ネジ部21aのネジ孔とスライド孔25の中に円柱棒状のロータ軸3が配設されている。
【0015】
ロータ軸3の外周には雄ネジ部3aが形成されており、この雄ネジ部3aはホルダ部21の雌ネジ部21aに螺合されている。なお、雌ネジ部21aと雄ネジ部3aは右ネジである。
【0016】
スライド孔25には弁体部4が配設されている。弁体部4は、スライド孔25に嵌合する円筒状の弁ホルダ41を有しており、これにより弁体部4は軸線L方向に摺動可能に支持されている。弁ホルダ41は弁室1Aと同軸に取り付けられ、この弁ホルダ41の弁ポート13側の下端部には端部がニードル状の弁体42が固着されている。
【0017】
弁ホルダ41はロータ軸3に係合している。すなわち、ロータ軸3の下端部にはフランジ部3bが一体形成され、このフランジ部3bが弁ホルダ41の上端部と共にワッシャ43を挟み込み、ロータ軸3の下端部は弁ホルダ41の上端部で回転可能に係合している。この係合により、弁体部4がロータ軸3によって回転可能に吊り下げた状態で支持されている。また、弁ホルダ41内には、バネ受け44が軸線L方向に移動可能に設けられている。バネ受け44と弁体42との間には圧縮コイルバネ45が所定の荷重を与えられた状態で取り付けられている。これにより、バネ受け44はロータ軸3の下端部に当接している。
【0018】
支持部材2のホルダ部21の外周には、「ストッパ機構」を構成するストッパガイド部材5が配設されている。ストッパガイド部材5は、金属線材の曲げ加工により形成され、軸線L回りに螺旋状の軌道を構成するガイド部51と、ガイド部51の上端にて軸線Lと平行に曲げられた上端ストッパ部52と、ガイド部51の下端にて軸線Lと平行に曲げられた下端ストッパ部53と、下端ストッパ部53から基部22に倣って軸線Lと垂直向きの半径方向外側に延在された係止部54とを有している。ストッパガイド部材5の係止部54は、支持部材2の基部22の外周に軸線Lと平行な縦軸54aとこの縦軸54aから直角に外側に突出する横軸54bとを有している。
【0019】
また、ホルダ部21の外周には、ストッパガイド部材5のガイド部51の軌道に嵌合するように「ストッパ機構」を構成するコイル状の従動スライダ6が螺合されている。従動スライダ6は、ばね性を有する金属線材の曲げ加工により形成されており、半径方向外向きに突出する爪部61を有している。なお、ガイド部51と従動スライダ6は右ネジであり、このガイド部51のピッチは雌ネジ部21aのピッチよりも大きく設定されている。
【0020】
支持部材2の基部22の外周には、ストッパガイド部材5の係止部54と基部22とを覆うように、略円筒状の「被覆固定部材」としての後述の止め金具7が配設されている。
【0021】
弁ハウジング1の上端には、ステッピングモータ8のケース81が溶接等によって気密に固定されている。このステッピングモータ8は「電動モータ」の一例である。ケース81内には外周部を多極に着磁されたマグネットロータ82が回転可能に設けられている。また、ケース81の外周には、ステータコイル83が配設されており、このステッピングモータ8は、ステータコイル83にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ82を回転させる。
【0022】
マグネットロータ82は磁性粉を混入した母材を型成形したものであり、その中央に固定金具821がインサート成形により一体に設けられている。マグネットロータ82は、この固定金具821によりロータ軸3に溶接等により固着されている。また、マグネットロータ82は略円筒状の形状をしており、その内周面の一部には軸線Lと平行な突条82aが形成されている。
【0023】
なお、この実施形態の電動弁は概略以下のように組み立てる。ます、ロータ軸3と弁体部4とを組み付ける。ストッパガイド部材5の横軸54bを止め金具7に係合させた状態で、止め金具7とストッパガイド部材5を支持部材2に組み付け、従動スライダ6を組み付ける。この組み付けた支持部材2に対して、上記ロータ軸3及び弁体部4を組み付ける。そして、この組み付けられたものを、弁ハウジング1に取り付け、ロータ軸3の上端にマグネットロータ82を固着し、ケース81を取り付けてステッピングモータ8を組み付ける。
【0024】
以上の構成により、マグネットロータ82の回転によってロータ軸3が回転し、ロータ軸3の雄ネジ部3aと支持部材2の雌ネジ部21aのネジ送り作用により、ロータ軸3が軸L方向(上下)に移動して弁体42(ニードル部)が弁ポート13に対して進退する。これにより、弁ポート13の開度を変化させ、第1継手管11から第2継手管12へ流れる冷媒の流量、または第2継手管12から第1継手管11へ流れる冷媒の流量が制御される。なお、支持部材2の基部22には均圧孔22aが形成されており、ケース81内は弁室1Aと常時同圧にされる。また、弁ばね46は弁体42が弁ポート13の周囲(弁座)に当接するときに収縮して緩衝作用をする。
【0025】
また、マグネットロータ82の回転時に、突条82aは従動スライダ6の爪部61に当接し、このマグネットロータ82の回転に伴って従動スライダ6を同方向に連れ回すように回転させる。これにより、ストッパガイド部材5のガイド部51に倣って従動スライダ6が旋回しながらロータ軸3と同方向に上下動する。この上下動によって従動スライダ6が、ストッパガイド部材5の上端側の上端ストッパ部52、あるいはストッパガイド部材5の下端側の下端ストッパ部53に当接する。これによって、ロータ軸3及び弁体部4が上端位置あるいは下端位置で停止する。
【0026】
支持部材2の基部22の外周に配設された前記止め金具7は、
図2に示すように、円筒部71と、この円筒部71から外側に膨出したカバー部72と、円筒部71の下端外周に形成されたフランジ部73とを有しており、カバー部72には係止孔72aが形成されている。そして、円筒部71が基部22に嵌合され、ストッパガイド部材5の係止部54の縦軸54aがカバー部72で覆われ、係止部54の横軸54bがカバー部72の係止孔72a内に係止されている。また、止め金具7は、フランジ部73を支持部材2の固定部材24に対して溶接等により固着されている。
【0027】
このように、ストッパガイド部材5の係止部54が止め金具7によって、基部22に対して締結して固定されているため、従動スライダ6が下端ストッパ部53に衝突しても、その衝撃に耐えて、ストッパガイド部材5の係止部54が基部22から外れることがない。また、係止部54の横軸54bが54b係止孔72a内に係止されているので、ストッパガイド部材5が支持部材2に対して軸線L方向にずれることも防止できる。
【0028】
なお、
図3(A)、(B)に示すように、この実施形態における止め金具7は、ストッパガイド部材5の係止部54の縦軸54aに対して、カバー部72が軸線L回りの周方向で密着しているので、この係止部54(すなわちストッパガイド部5)の回動が阻止されている。この構成を有していれば、半径方向については、カバー部72と係止部54との間に多少の隙間があってもよい。また、実施形態では、カバー部72は係止部54の全てを覆う形状となっているが、このカバー部72は少なくとも係止部54の一部を覆う形状であってもよい。
【0029】
以上の実施形態では、「被覆固定部材」としての止め金具7は略円筒状の形状をしているが、この被覆固定部材は、ストッパガイド部材5の係止部54を基部22に対して固定できるような部材であれば、その形状は実施形態のものに限らない。例えばリング状の形状でもよい。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 弁ハウジング
1A 弁室
11 第1継手管
12 第2継手管
13 弁ポート
2 支持部材
21 ホルダ部
21a 雌ネジ部
22 基部
3 ロータ軸
3a 雄ネジ部
4 弁体部
41 弁ホルダ
42 弁体
5 ストッパガイド部材(ストッパ機構)
51 ガイド部
52 上端ストッパ部
53 下端ストッパ部
54 係止部
54a 縦軸
54b 横軸
6 従動スライダ(ストッパ機構)
61 爪部
7 止め金具(被覆固定部材)
71 円筒部
72 カバー部
73 フランジ部
72a 係止孔
8 ステッピングモータ(電動モータ)
82 マグネットロータ
82a 突条
L 軸線