特開2017-161008(P2017-161008A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-161008(P2017-161008A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20170818BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   F16F9/32 A
   B62K25/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-46849(P2016-46849)
(22)【出願日】2016年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健
【テーマコード(参考)】
3D014
3J069
【Fターム(参考)】
3D014DE02
3J069AA46
3J069CC01
3J069EE02
(57)【要約】
【課題】懸架装置の軽量化を図る。
【解決手段】フロントフォーク1は、車軸の軸方向の一方に設けられ、第1スプリング40を有し、荷重により伸縮する第1フロントフォーク1Rと、車軸の軸方向の他方に設けられるとともに、第2スプリング70を有し、荷重により第1フロントフォーク1Rと一体的に伸縮する第2フロントフォーク1Lと、を備える。そして、第2スプリング70の反力は、第1スプリング40の反力と比較して小さく設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸の軸方向の一方に設けられ、第1スプリングを有し、荷重により伸縮する第1伸縮部と、
前記車軸の軸方向の他方に設けられるとともに、第2スプリングを有し、荷重により前記第1伸縮部と一体的に伸縮する第2伸縮部と、を備え、
前記第2スプリングの反力は、前記第1スプリングの反力と比較して小さく設定されている懸架装置。
【請求項2】
前記第2スプリングのばね定数は、前記第1スプリングのばね定数よりも小さい請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記第2スプリングの線径は、前記第1スプリングの線径よりも小さい請求項1に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記第2スプリングの巻数は、前記第1スプリングの巻数よりも小さい請求項1に記載の懸架装置。
【請求項5】
前記第1伸縮部の伸縮に伴って減衰力を発生させる第1減衰力発生部と、
前記第2伸縮部の伸縮に伴って減衰力を発生させる第2減衰力発生部と、を備え、
前記第2減衰力発生部の減衰力は、前記第1減衰力発生部の減衰力と異なる請求項1に記載の懸架装置。
【請求項6】
車輪を制動する制動部を保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記第2伸縮部に設けられる請求項1に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インナチューブと、インナチューブに同軸に挿通されるアウタチューブと、インナチューブ内で立ち上がるスプリングとを備えた懸架装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−98454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、懸架装置の重さを軽くすることができれば、例えば燃費の向上や操舵性の向上などにつながる。
本発明は、懸架装置を軽量化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、車軸の軸方向の一方に設けられ、第1スプリングを有し、荷重により伸縮する第1伸縮部と、前記車軸の軸方向の他方に設けられるとともに、第2スプリングを有し、荷重により前記第1伸縮部と一体的に伸縮する第2伸縮部と、を備え、前記第2スプリングの反力は、前記第1スプリングの反力と比較して小さく設定されている懸架装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、懸架装置を軽量化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態のフロントフォークの全体構成図である。
図2】本実施形態の第1スプリングの説明図である。
図3】本実施形態の第2スプリングの説明図である。
図4】(A)および(B)は、第1スプリングと第2スプリングのばね定数の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態のフロントフォーク1の全体構成図である。
図1に示すように、フロントフォーク1は、車軸方向(不図示)の一方に設けられる第1フロントフォーク1Rと、車軸方向の他方に設けられる第2フロントフォーク1Lとを備える。そして、第1フロントフォーク1Rと第2フロントフォーク1Lとは、図示しないブラケットによって一体的に固定される。
なお、以下の説明では、図1に示す第1フロントフォーク1Rの軸方向における図中下側を「一方側」と称し、図中上側を「他方側」と称する。また、第1フロントフォーク1Rの半径方向の中心側は、「半径方向内側」と称する。第1フロントフォーク1Rの半径方向の外側は、「半径方向外側」と称する。なお、これらの定義は、第2フロントフォーク1Lについても同様である。
【0009】
そして、本実施形態に係るフロントフォーク1の概略構成を説明する。
図1に示すように、フロントフォーク1(懸架装置の一例)は、車軸の軸方向の一方に設けられ、第1スプリング40(第1スプリングの一例)を有し、荷重により伸縮する第1フロントフォーク1R(第1伸縮部)と、車軸の軸方向の他方に設けられるとともに、第2スプリング70(第2スプリングの一例)を有し、荷重により第1フロントフォーク1Rと一体的に伸縮する第2フロントフォーク1L(第2伸縮部の一例)と、を備え、第2スプリング70の反力は、第1スプリング40の反力と比較して小さく設定されている。
以下、これらの構成について詳述する。
【0010】
〔第1フロントフォーク1R〕
第1フロントフォーク1Rは、アウタ部20と、アウタ部20の半径方向内側に設けられるインナ部30と、インナ部30の半径方向内側に設けられる第1スプリング40とを有している。そして、フロントフォーク1は、伸縮可能に構成され、例えば二輪車や三輪車等のハンドル(不図示)と車輪との間を接続する。そして、第1フロントフォーク1Rは、衝撃を緩衝するとともにハンドルの操舵を車輪に伝達する。本実施形態において、アウタ部20は、例えば二輪車などのハンドル側の部材に連結される。また、インナ部30は、例えば二輪車などの車輪側の部材に連結される。
【0011】
(アウタ部20の構成・機能)
アウタ部20は、アウタチューブ21と、アウタチューブ21の一方側に設けられるブッシュ22と、アウタチューブ21の一方側に設けられるシール部材23とを有する。また、アウタ部20は、軸方向に延びて設けられるピストンロッド24と、ピストンロッド24の一方側に設けられる第1ピストン25とを有している。さらに、アウタ部20は、アウタチューブ21の他方側に設けられるキャップ26を有している。
【0012】
アウタチューブ21は、管状に形成された部材である。アウタチューブ21は、オイルを収容する。また、アウタチューブ21は、インナ部30の他方側の一部が進入可能になっている。
【0013】
ブッシュ22は、環状の部材であってアウタチューブ21の一方側の端部に設けられる。そして、ブッシュ22は、インナ部30を軸方向においてスライド可能に支持する。
シール部材23は、リング状の部材であって、アウタチューブ21の一方側の端部に設けられる。そして、シール部材23は、アウタ部20とインナ部30との間を気密する。
【0014】
ピストンロッド24は、他方側にてキャップ26に固定される。また、ピストンロッド24は、一方側に、第1ピストン25を保持する。
第1ピストン25は、第1フロントフォーク1Rの伸縮に伴ってオイルが流れる流路251を有している。また、本実施形態では、第1ピストン25は、一方側に第1油室Y1を形成し、他方側に第2油室Y2を形成する。そして、第1ピストン25は、第1油室Y1と第2油室Y2との間にてオイルが流れる際に、減衰力を発生させる。
キャップ26は、アウタチューブ21の他方側の端部を塞いで気密する。
【0015】
(インナ部30の構成・機能)
インナ部30は、インナチューブ31と、インナチューブ31の一方側に設けられる第1車軸ホルダ32とを有している。
【0016】
インナチューブ31は、管状に形成された部材である。インナチューブ31は、オイルを収容する。インナチューブ31の外径は、アウタチューブ21の内径よりも小さく形成される。そして、インナチューブ31は、アウタチューブ21の内側に挿入される。また、インナチューブ31は、アウタチューブ21に対して軸方向に相対的に移動する。
【0017】
第1車軸ホルダ32は、インナチューブ31の一方側を塞いで気密する。さらに、第1車軸ホルダ32は、車軸孔321を有する。車軸孔321は、例えば二輪車などの車軸が挿入される部分を形成する。
【0018】
(第1スプリング40の構成・機能)
図2は、本実施形態の第1スプリング40の説明図である。
図2に示すように、第1スプリング40は、一方側にて第1車軸ホルダ32に接触し、他方側にて第1ピストン25に接触する。そして、第1スプリング40は、アウタ部20とインナ部30との軸方向における相対的な移動に伴って伸縮する。
【0019】
第1スプリング40のコイル径は、コイル径D1に設定されている。また、第1スプリング40の軸方向長さ(取付け長さ)は、長さL1に設定されている。さらに、第1スプリング40の線径は、線径d1に設定されている。
【0020】
そして、第1スプリング40の最大荷重は、第2スプリング70の最大荷重よりも大きく設定される。つまり、本実施形態のフロントフォーク1にて、第1フロントフォーク1Rの第1スプリング40と第2フロントフォーク1Lの第2スプリング70とは、最大荷重の設定値が異なっている。
【0021】
また、第1スプリング40は、一方側に形成される第1下側ピッチ部41と、他方側に形成される第1上側ピッチ部42とを有している。第1下側ピッチ部41のピッチP11は、第1上側ピッチ部42のピッチP12よりも小さい。
なお、本実施形態の第1スプリング40の線径d1は、第1スプリング40の全長にわたって同じである。従って、本実施形態において、第1下側ピッチ部41の線径は、第1上側ピッチ部42の線径と同じである。
【0022】
さらに、第1スプリング40の巻数は、巻数N1に設定されている。なお、本実施形態の第1スプリング40において、第1下側ピッチ部41の巻数は、第1上側ピッチ部42の巻数と同じである。
【0023】
第1スプリング40において、上記のとおり、ピッチが異なる領域が設けられることで、第1スプリング40は、以下のように動作する。
第1スプリング40が圧縮される際、第1下側ピッチ部41における線材同士に隙間が設けられる程度の変位量の範囲では、第1下側ピッチ部41および第1上側ピッチ部42を含め、第1スプリング40は全体的に縮む(以下、他のスプリングにおいても、この状態のことを便宜的に「一段階目の状態」と呼ぶ)。
【0024】
また、第1スプリング40がさらに圧縮されると、第1下側ピッチ部41における線材同士は、接触する。そして、第1下側ピッチ部41は、それ以上縮まなくなる。この状態では、第1上側ピッチ部42だけが縮み、第1スプリング40は、部分的に縮む(以下、他のスプリングにおいても、この状態のことを便宜的に「二段階目の状態」と呼ぶ)。
そして、第1スプリング40は、上記のとおり状態が変化することで、ばね定数が段階的に変化する。すなわち、第1スプリング40は、一段階目の状態でのばね定数が低く、二段階目の状態でのばね定数が高くなる。
【0025】
〔第2フロントフォーク1L〕
図1に示すように、第2フロントフォーク1Lは、アウタ部50と、アウタ部50の半径方向内側に設けられるインナ部60と、インナ部60の半径方向内側に設けられる第2スプリング70とを有している。
【0026】
アウタ部50は、アウタチューブ51、ブッシュ52、シール部材53、ピストンロッド54、第2ピストン55およびキャップ56を有する。また、インナ部60は、インナチューブ61、第2車軸ホルダ62およびカラー部材63を有する。
ここで、第2フロントフォーク1Lの基本構成は、第1フロントフォーク1Rと比較して、寸法や構成が同様である。ただし、第2フロントフォーク1Lは、第2ピストン55、第2車軸ホルダ62、カラー部材63および第2スプリング70の構成が、第1フロントフォーク1Rとは異なる。そこで、以下の第2フロントフォーク1Lの説明では、第1フロントフォーク1Rと異なる構成について詳細に説明し、他の構成についての詳細な説明を省略する。
【0027】
第2ピストン55は、第2フロントフォーク1Lの伸縮に伴ってオイルが流れる流路551を有している。また、本実施形態では、第2ピストン55は、一方側に第1油室W1を形成し、他方側に第2油室W2を形成する。そして、第2ピストン55は、第1油室W1と第2油室W2との間にてオイルが流れる際に、減衰力を発生させる。また、本実施形態では、第2ピストン55が発生させる減衰力は、第1フロントフォーク1Rの第1ピストン25よりも大きくしたり、第1ピストン25と異ならせたりすることで、左右でバランスさせる設定になっている。
【0028】
本実施形態のフロントフォーク1では、後述するように、第2スプリング70のばね定数は、第1スプリング40のばね定数と比較して小さく設定されている。そのため、フロントフォーク1が伸縮した際に、第2スプリング70は、第1スプリング40に対して比較的動きやすいと考えられる。そこで、本実施形態のフロントフォーク1では、第2フロントフォーク1Lにて発生させる減衰力を大きくし、第1フロントフォーク1Rと第2フロントフォーク1Lとの動きのバランスを図っている。
【0029】
第2車軸ホルダ62は、インナチューブ61の一方側を塞いで気密する。そして、第2車軸ホルダ62は、車軸孔621とキャリパ保持部622とを有する。
車軸孔621は、例えば二輪車などの車軸が挿入される部分を形成する。また、キャリパ保持部622は、ブレーキキャリパ(不図示)が取り付けられる箇所を形成する。つまり、本実施形態のフロントフォーク1において、例えばブレーキに関わる部品であるブレーキキャリパ(不図示、制動部の一例)は、第2フロントフォーク1L側に設けられる。
【0030】
本実施形態のフロントフォーク1では、後述するとおり、第2フロントフォーク1Lの重さは、第1フロントフォーク1Rの重さと比較して小さい。そこで、本実施形態では、ブレーキ(制動)に関わる部品を第2フロントフォーク1L側に設けて、フロントフォーク1の一方側と他方側との重さの差を小さくしている。
【0031】
カラー部材63は、円筒状に形成された部材である。そして、カラー部材63は、第2スプリング70の一方側に設けられる。そして、カラー部材63は、軸方向に予め定められた長さを有する。すなわち、カラー部材63の軸方向の長さは、取付け長さでの第1スプリング40の軸方向の長さと、取付け長さでの第2スプリング70の軸方向の長さとの差に対応している。
【0032】
(第2スプリング70の構成・機能)
図3は、本実施形態の第2スプリング70の説明図である。
図3に示すように、第2スプリング70は、一方側にてカラー部材63に接触し、他方側にて第2ピストン55に接触する。そして、第2スプリング70は、アウタ部50とインナ部60との軸方向における相対的な移動に伴って伸縮する。
【0033】
第2スプリング70のコイル径は、コイル径D2に設定されている。そして、コイル径D2は、第1スプリング40のコイル径D1と同じである(D2=D1)。
また、第2スプリング70の軸方向長さ(取付け長さ)は、長さL2に設定されている。そして、長さL2は、第1スプリング40の長さL1よりも短くなっている(L2<L1)。
さらに、第2スプリング70の線径は、線径d2に設定されている。そして、線径d2は、第1スプリング40の線径d1よりも小さくなっている(d2<d1)。
【0034】
そして、第2スプリング70の最大荷重は、第1スプリング40の最大荷重よりも小さく設定される。すなわち、第2スプリング70の反力は、第1スプリング40の反力よりも小さくなっている。
【0035】
また、第2スプリング70は、一方側に形成される第2下側ピッチ部71と、他方側に形成される第2上側ピッチ部72とを有している。第2下側ピッチ部71のピッチP21は、第2上側ピッチ部72のピッチP22よりも小さい。
なお、本実施形態の第2スプリング70の線径d2は、第2スプリング70の全長にわたって同じである。従って、第2下側ピッチ部71の線径は、第2上側ピッチ部72の線径と同じである。
【0036】
また、第2スプリング70の巻数は、巻数N2に設定されている。そして、巻数N2は、第1スプリング40の巻数N1よりも少なくなっている(N2<N1)。なお、本実施形態の第2スプリング70において、第2下側ピッチ部71の巻数と第2上側ピッチ部72の巻数とは、同じである。
【0037】
そして、第2スプリング70は、一段階目の状態と二段階目の状態とに変化することで、ばね定数が段階的に変化する。すなわち、第2スプリング70は、一段階目の状態でのばね定数が低く、二段階目の状態でのばね定数が高くなる。
【0038】
〔第1スプリング40と第2スプリング70との関係〕
図4は、第1スプリング40と第2スプリング70のばね定数の説明図である。
上述したように構成される第1スプリング40および第2スプリング70は、以下の観点に基づいて設定されている。
【0039】
ここで、本実施形態の第1スプリング40および第2スプリング70の説明をするに先立って、比較例のフロントフォークについて説明する。
図4(A)に示すように、比較例のフロントフォークは、比較例第1スプリング91と、比較例第2スプリング92とを有している。そして、比較例のフロントフォークでは、比較例第1スプリング91と比較例第2スプリング92とに対して、荷重が均等に掛かるように設定している。
例えば、フロントフォークの2本のスプリングに対しては、荷重2Bの最大荷重が掛かるとする。そうすると、比較例第1スプリング91の最大荷重は、荷重Bに設定される。また、比較例第2スプリング92の最大荷重は、荷重Bに設定される。
【0040】
そして、最大荷重の設定に応じて、ばね定数が定まる。上述のとおり、比較例第1スプリング91の最大荷重と比較例第2スプリング92の最大荷重とは、同じである。従って、比較例第1スプリング91のばね定数と、比較例第2スプリング92のばね定数とは、同じになる。
なお、比較例第1スプリング91と比較例第2スプリング92とには、ピッチの異なる領域がそれぞれ2カ所に設けられている。そして、図4(A)に示すように、比較例第1スプリング91と比較例第2スプリング92とは、それぞれ、一段階目の状態でのばね定数kが低く、二段階目の状態でのばね定数kが高い。そして、比較例第1スプリング91と比較例第2スプリング92とにおいて、一段階目の状態での合計のばね定数は、定数2・kになっている。また、比較例第1スプリング91と比較例第2スプリング92とにおいて、二段階目の状態での合計のばね定数は、定数2・kとなっている。
【0041】
また、比較例第1スプリング91の重さは、重さAとする。さらに、比較例第2スプリング92の重さは、重さAとする。そうすると、比較例のフロントフォークにおいて、比較例第1スプリング91と比較例第2スプリング92との合計の重さは、重さ2Aとなる。
【0042】
続いて、本実施形態のフロントフォーク1について説明する。
本実施形態のフロントフォーク1において、第1スプリング40および第2スプリング70に掛かる合計の最大荷重は、荷重Bである。そして、本実施形態では、第1スプリング40と第2スプリング70とにそれぞれ掛かる荷重が、例えば、荷重Bの80%と、荷重Bの20%となるように振り分ける。すなわち、第1スプリング40の最大荷重は、(8/5)・Bに設定する。一方、第2スプリング70の最大荷重は、(2/5)・Bに設定する。この最大荷重の設定に基づいて、本実施形態のフロントフォーク1では、第2スプリング70の反力は、第1スプリング40の反力と比較して小さく設定される。
【0043】
本実施形態のフロントフォーク1において、第1フロントフォーク1Rと第2フロントフォーク1Lとは、一方側にて車軸(不図示)に接続し、他方側にてブラケット(不図示)に固定される。従って、第1フロントフォーク1Rと第2フロントフォーク1Lとの伸縮量は、同じになる。すなわち、第1スプリング40と第2スプリング70との伸縮量は、同じになる。
【0044】
また、ばね定数は、(G・d)/(8・N・D)で表される。
ここで、G:ばね材料の弾性係数、d:線径、N:巻数、D:コイル径。
【0045】
上記のとおり、第1スプリング40と第2スプリング70との伸縮量は、同じである。そのため、最大荷重が決まると、第1スプリング40と第2スプリング70とのばね定数が定まる。
具体的に、図4(B)に示すように、第1スプリング40は、一段階目の状態でのばね定数が、(8/5)・kになる。また、第1スプリング40は、二段階目の状態でのばね定数が(8/5)・kになる。
一方、第2スプリング70は、一段階目の状態でのばね定数が(2/5)・kになる。また、第2スプリング70は、二段階目の状態でのばね定数が(2/5)・kになる。
つまり、本実施形態のフロントフォーク1において、第2スプリング70のばね定数は、第1スプリング40のばね定数よりも小さくなっている。
【0046】
なお、第1スプリング40と第2スプリング70とのばね定数を比較すると、以下の通りになる。すなわち、第1スプリング40の一段階目の状態でのばね定数(8/5)・kと、第2スプリング70の一段階目の状態でのばね定数(2/5)・kとの和は、ばね定数2・kとなる。これは、2本の比較例スプリングの一段階目の状態でのばね定数の合計のばね定数2・kと同じなる。
また、第1スプリング40の二段階目の状態でのばね定数(8/5)・kと、第2スプリング70の二段階目の状態でのばね定数(2/5)・kとの和は、ばね定数2・kとなる。これは、2本の比較例スプリングの二段階目の状態でのばね定数の合計であるばね定数2・kと同じなる。
【0047】
そして、第1スプリング40および第2スプリング70において、上記のばね定数を満たすように、本実施形態では、第2スプリング70の線径d2は、第1スプリング40の線径d1よりも小さくした。また、第2スプリング70の巻数N2は、第1スプリング40の巻数N1よりも少なくした。
その結果、本実施形態の第1スプリング40の重さM1は、1本の比較例スプリングの重さAに対して約6%増加した。一方で、第2スプリング70の重さM2は、1本の比較例スプリングの重さAに対して約80%減少した。そして、本実施形態のフロントフォーク1では、第1スプリング40の増加量に対して、第2スプリング70の減少量が上回った。その結果、第1スプリング40および第2スプリング70の合計の重さ(M1+M2)は、2本の比較例スプリングの合計の重さ(2A)よりも小さくなった。
これは、第1スプリング40にて車両の重量の8割を支えるため、削減率が2割となり、第2スプリング70にて車両の重量の2割を支えるために、削減率が8割となるためであると考える。
【0048】
つまり、本実施形態のフロントフォーク1は、2本のスプリングに対する最大荷重を異ならせることで、最大荷重を同じに設定した場合と比較して、スプリングの合計の重さが軽くなった。
【0049】
特に、本実施形態の第2スプリング70は、第1スプリング40と比較して線径が小さい。そして、第2スプリング70の線径が小さく、かつ、第2スプリング70の取付け長さが短くなることで、第2スプリング70が大幅に軽量化された。同様に、第2スプリング70の線径が小さく、かつ、第2スプリング70の巻数が少なくなる(ピッチが大きくなる)ことで、第2スプリング70が大幅に軽量化された。
【0050】
以上説明したとおり、本実施形態のフロントフォーク1は、従来の構成と比較して、第1スプリング40が軽量化される。
【0051】
なお、上述した本実施形態においては、第1スプリング40と第2スプリング70とにおいて、各々の線径および巻数を異ならせる例を用いて説明しているが、これに限定されない。
例えば、第2スプリング70の線径が第1スプリング40の線径よりも小さくなるだけでも、軽量化が図られる。従って、第1スプリング40と第2スプリング70とは、線径が互いに異なり、巻数が同じに設定されていても良い。
また、例えば、第2スプリング70の巻数が第1スプリング40の巻数よりも少なくなるだけでも、軽量化が図られる。すなわち、第2スプリング70のピッチが第1スプリング40のピッチよりも大きくなるだけでも、軽量化が図られる。従って、第1スプリング40と第2スプリング70は、巻数(ピッチ)が互いに異なり、線径が同じに設定されていても良い。
【0052】
なお、本実施形態では、製造時における部品の共用化を図るという観点で、例えば、第1フロントフォーク1Rのアウタチューブ21やインナチューブ31を、第2フロントフォーク1Lのアウタチューブ51やインナチューブ61と同じ寸法にしている。これに伴い、第1スプリング40のコイル径D1と、第2スプリング70のコイル径D2とは、同じに設定している。ただし、上述したとおり、ばね定数を設定するにあたって、第1スプリング40のコイル径D1と第2スプリング70のコイル径D2とは、異なるように設定されても良い。
【0053】
また、上述した本実施形態では、例えば第1スプリング40において、第1下側ピッチ部41と第1上側ピッチ部42とのピッチが異なる2つの領域を有しているが、この態様に限定されない。つまり、第1スプリング40は、軸方向の全領域においてピッチが等しくても良い。逆に、第1スプリング40は、軸方向においてピッチが等しくない所謂不等ピッチであっても良い。このことは、第2スプリング70においても同様である。
さらに、第1スプリング40と第2スプリング70とで、ピッチが互いに異なっていても良い。
【0054】
なお、本実施形態では、いわゆる倒立型のフロントフォークを例に説明したが、倒立型のフロントフォークに限定するものではない。本実施形態の構成は、正立型のフロントフォークに適用されても良い。
さらに、本実施形態では、例えば二輪車の前輪側に設けられるフロントフォークを例に説明したが、本実施形態は、二輪車等の後輪側に設けられる懸架装置に適用しても構わない。また、本実施形態では、第1スプリング40および第2スプリング70は、それぞれインナチューブ31とインナチューブ61とに内蔵されているが、これに限定されない。第1スプリング40と第2スプリング70とは、懸架装置において外側に露出していても良い。
【符号の説明】
【0055】
1…フロントフォーク(懸架装置の一例)、1R…第1フロントフォーク(第1伸縮部の一例)、1L…第2フロントフォーク(第2伸縮部の一例)、25…ピストン(第1減衰力発生部の一例)、40…第1スプリング(第1スプリングの一例)、55…第2ピストン(第2減衰力発生部の一例)、70…第2スプリング(第2スプリングの一例)、622…キャリパ保持部(保持部の一例)
図1
図2
図3
図4