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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-161051(P2017-161051A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20170818BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   F16K31/04 A
   F25B41/06 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-48441(P2016-48441)
(22)【出願日】2016年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】田邊 珠実
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】石黒 元康
(72)【発明者】
【氏名】北見 雄希
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB28
3H062BB31
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF40
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】閉弁状態における流体の漏洩を確実に防止することができる弁体を備えた電動弁を提供する。
【解決手段】ロータ4の回転運動を、雄ネジ部材41aと雌ネジ部材6dとのネジ結合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体30内に収容された弁体17を軸方向に移動させる電動弁2であって、前記弁体の軸方向への移動を案内する弁体案内部材72と、前記弁体案内部材と前記弁体との間に介装されたシール部材48とを備え、前記シール部材によって、少なくとも閉弁状態で前記弁体と前記弁体案内部材が直接接触することが妨げられる構造を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ結合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁体の軸方向への移動を案内する弁体案内部材と、
前記弁体案内部材と前記弁体との間に介装されたシール部材と
を備え、
前記シール部材によって、少なくとも閉弁状態で前記弁体と前記弁体案内部材が直接接触することが妨げられる構造を有することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁体案内部材の下端部には、下方に向かって少なくとも内壁面が外側に傾斜するテーパー部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記弁体には、下方に向かって外壁面が外側に傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記シール部材は、該電動弁を組み立てる前において、前記弁体または前記弁体案内部材のいずれか一方に装着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルなどに使用される電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型のパッケージエアコンや冷凍機に用いられる電動弁が知られている(例えば、特許文献1)。この電動弁においては、図10に示すように、ステッピングモータが駆動してロータ303が回転すると、雌ねじ331aと雄ねじ321aのねじ送り作業により、動軸302を介して弁体314が円筒状のガイド313に沿って軸L方向に移動する。これにより、弁体314を開閉する制御がなされ、管継手311から流入して管継手312から流出する冷媒の流量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−43949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の電動弁においては、図11に示すように、弁体314の構造を、その外壁面が円筒状のガイド313の内壁面に案内されて開閉される構造にしたことにより、仮に弁体314の軸芯が軸Lの軸心とずれた状態で電動弁が完成すると、弁体314を閉弁状態にした際に弁体314の下端部が傾斜したまま片当たりの状態で弁座部材315に当接し、弁体314の下端部と弁座部材315との間に隙間が生じるおそれがある。この場合、弁体314を閉弁状態にした際に、たとえば冷媒などの流体の漏洩が生じ易くなる場合も想定され得る。
【0005】
本発明の目的は、閉弁状態における流体の漏洩を確実に防止することができる弁体を備えた電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の電動弁は、
ロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ結合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁体の軸方向への移動を案内する弁体案内部材と、
前記弁体案内部材と前記弁体との間に介装されたシール部材と
を備え、
前記シール部材によって、少なくとも閉弁状態で前記弁体と前記弁体案内部材が直接接触することが妨げられる構造を有することを特徴とする。
【0007】
これにより、仮に弁体の軸芯が電動弁の軸心とずれた状態で電動弁が完成した場合であっても、弁体と弁体案内部材の間に生じたクリアランスの中で弁体が搖動したり径方向に移動することが可能となるため、弁体の軸芯を電動弁の軸心に合わせることができる。さらに、閉弁状態において弁体の下端部と弁座部材との間に隙間が生じないように弁体の位置合わせをすることにより、閉弁状態で冷媒などの媒体が漏洩することを確実に防止することができる。
【0008】
また本発明の電動弁は、
前記弁体案内部材の下端部には、下方に向かって少なくとも内壁面が外側に傾斜するテーパー部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
これにより、弁体が閉弁状態から開弁状態に移行する過程において、弁体の上昇が弁体案内部材に阻害され難くなり、弁体が弁体案内部材に収容され易くなる。また、電動弁を組み立てる際において、治具等の器具を用いることなく容易にシール部材を弁体案内部材の小径部に挿入させることができるため、電動弁を組み立てる際の作業性が向上し、作業に係る工数を低減することができる。
【0010】
また本発明の電動弁は、
前記弁体には、下方に向かって外壁面が外側に傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように、弁体に傾斜部を形成することにより、弁体が閉弁状態から開弁状態に移行する過程において、弁体の上昇が弁体案内部材に阻害され難くなり、弁体が弁体案内部材に収容され易くなる。
【0012】
また本発明の電動弁は、
前記シール部材が、該電動弁を組み立てる前において、前記弁体または前記弁体案内部材のいずれか一方に装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発明によれば、閉弁状態における流体の漏洩を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態に係る電動弁の断面図である。
図2図1に示した電動弁の要部拡大断面図である。
図3】第1の実施の形態に係る電動弁において、シール部材にOリングを用いた場合の要部拡大断面図である。
図4】第1の実施の形態に係る電動弁において、シール部材に複合シール材を用いた場合の要部拡大断面図である。
図5】第2の実施の形態に係る電動弁の要部拡大断面図である。
図6】第2の実施の形態に係る電動弁を組み立てる過程を説明する概要図である。
図7】第3の実施の形態に係る電動弁の断面図である。
図8】第3の実施の形態に係る電動弁の要部拡大断面図である。
図9】第3の実施の形態に係る電動弁を組み立てる過程を説明する概要図である。
図10】特開2014−43949号公報に開示されている従来の電動弁の断面図である。
図11】特開2014−43949号公報に開示されている従来の電動弁の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、第1の実施の形態に係る電動弁について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る電動弁2を示した断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁部材17より上方に位置している。
【0016】
この電動弁2では、非磁性体製で筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
ここで、弁本体30は、ステンレス鋼板のプレス加工により製作されたプレス成型品であり、内部に弁室11を有している。また、弁本体30には、弁室11に直接連通するステンレス製や銅製の第1の管継手12が固定装着されている。さらに、弁本体30の下方内側には、弁ポート16が形成された弁座部材30Aが組み込まれている。弁座部材30Aには、弁ポート16を介して弁室11に連通するステンレス製や銅製の第2の管継手15が固定装着されている。
【0017】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、ブッシュ部材33を介して弁軸41が配置されている。ブッシュ部材33で結合されたこの弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施例では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。
【0018】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
ケース60の天井面にはガイド支持体52が固定されている。ガイド支持体52は、円筒部53と、円筒部53の上端側に形成された傘状部54とを有し、全体をプレス加工により一体成型されている。傘状部54はケース60の頂部内側と略同形状に成型されている。
【0019】
ガイド支持体52の円筒部53内には、弁軸41のガイドを兼ねる筒部材65が嵌合されている。筒部材65は、金属あるいは合成樹脂による潤滑材入り素材あるいは表面処理を施された部品により構成され、弁軸41を回転可能に保持している。
【0020】
弁軸41のブッシュ部材33より下方には、後述するように弁軸41との間でネジ結合Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0021】
弁軸ホルダ6は、上部側の筒状小径部6aと下部側の筒状大径部6bと弁本体30の内周部側に収容される嵌合部6cとリング状のフランジ部6fとからなる。そして、弁軸ホルダ6のフランジ部6fは、弁体案内部材72のフランジ部72cの上面とケース60との間に溶接などで固定されている。また、弁軸ホルダ6の内部には、貫通孔6hが形成されている。
【0022】
また、この弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。
そして、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、ネジ結合Aが構成されている。
【0023】
さらに、弁軸ホルダ6の筒状大径部6bの側面には、均圧孔51が穿設され、この均圧孔51により、筒状大径部6b内の弁軸ホルダ室83と、ロータ収容室67(第2の背圧室)との間が連通している。このように均圧孔51を設けることにより、ケース60のロータ4を収容する空間と、弁軸ホルダ6内の空間とを連通することにより、弁軸ホルダ6の移動動作をスムーズに行うことができる。
【0024】
また、弁軸41の下方には、筒状の弁ガイド18が弁軸ホルダ6の貫通孔6hに対して摺動可能に配置されている。この弁ガイド18は天井部21側がプレス成型により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。また、弁軸41の下方には、さらに鍔部41bが形成されている。
【0025】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面41cが、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0026】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁部材17との同芯性が得られる。
【0027】
また、弁軸41の下端部には、鍔部41bの下方に突出し、後述するバネ受け35と点接触する突出部41cが形成されている(図2参照)。この突出部41cは、弁部材17が閉弁状態から開弁状態に移行する過程において搖動する場合の支点としての機能を有している。なお、突出部41cはバネ受け35に拘束されず、バネ受け35と点接触しているにすぎないため、弁部材17は弁軸41に対して径方向に移動することも可能である。
【0028】
弁ガイド18の天井部21と弁軸41の鍔部41bとの間にはワッシャ70が設置されている。ワッシャ70は、高滑性表面の金属製ワッシャ、フッ素樹脂等の高滑性樹脂ワッシャあるいは高滑性樹脂コーティングの金属製ワッシャなどであることが好ましい。ワッシャ70の中央部には貫通孔が形成されている。
【0029】
さらに、弁ガイド18内には、圧縮された弁バネ27とバネ受け35とが収容されている。バネ受け35の上端部は、上述したように弁軸41の突出部41cと点接触している。
【0030】
次に、本発明における電動弁2の要部について説明する。図2は、第1の実施の形態に係る電動弁2の要部を拡大した断面図である。図2に示すように、弁本体30の内側には、弁部材17、弁部材17の軸方向への移動を案内する弁体案内部材72が配置され、弁部材17と弁体案内部材72との間には、シール部材48が介装されている。
【0031】
弁部材17は、弁体保持部17Aと弁体部17Bとから構成されている。弁体保持部17Aは、内部に縦方向の孔部17bが均圧路として形成された連結部17A1と、内部に横方向の導通孔17cが均圧路として形成された頭部17A2を備えている。ここで、弁ポート16(第2の管継手15内)の圧力は、均圧路である孔部17b、導通孔17cを介して背圧室28に導かれる。また、弁体部17Bには、連結部17A1を縦方向に受け入れる受入空間17aが形成されている。
【0032】
また、弁部材17の縦方向において、弁体保持部17Aの頭部17A2の下端面17gと弁体部17Bの上端面17hとの間には、断面L字状の環状パッキン48aの間に環状の補強板48bを挟んで形成された環状のシール部材48が配置されている。このシール部材48は、上述したように、横方向において弁部材17と弁体案内部材72との間に介装されているため、少なくとも電動弁2を閉弁状態にした場合において、図2に示すように、弁部材17と弁体案内部材72が直接接触することが妨げられる。このため、仮に弁部材17の軸芯が電動弁2の軸心とずれた状態で電動弁2が完成した場合であっても、弁部材17と弁体案内部材72の間に生じたクリアランスの中で弁部材17が弁軸41の突出部41cを支点として搖動し、または径方向に水平移動することが可能となるため、弁部材17の軸芯を容易に電動弁2の軸心に合わせることができる。これにより、閉弁状態において弁部材17の下端部と弁座部材30Aとの間に隙間が生じないように弁部材17の位置合わせをすることができる。
【0033】
弁体案内部材72は、内部が貫通した筒体であり、最上位に位置するフランジ部72cと、その下方の大径部72aと、その下方の小径部72bとを有したもので、プレス成形によって形成されている。また、弁体案内部材72の大径部72aの外周面側の直径は、弁本体30の内周面側の直径より若干大きく形成されている。すなわち、このように寸法を設定することにより、弁体案内部材72を弁本体30に組み合わせた場合に、シール部材48を弁体案内部材72の内周面に密に係止させることができる。
【0034】
以上、本発明に係る電動弁2の構成について説明したが、以下に、電動弁2の動作について説明する。電動弁2は、ステッピングモータに駆動パルス信号が与えられることにより、パルス数に応じてロータ4が回転し、これに伴い弁軸41が回転し、弁軸41の雄ネジ41aと、固定配置の弁軸ホルダ6の雌ネジ6dからなるネジ結合Aにより、弁軸41が回転しつつ軸方向に移動する。
【0035】
弁軸41の降下移動(弁閉方向移動)は、バネ受け35、鍔部41b、ワッシャ70、天井部21、弁バネ27の当接によって弁ガイド18に伝達され、弁ガイド18および弁部材17が降下移動することにより行われる。
【0036】
弁軸41の上昇移動(弁開方向移動)もまた、バネ受け35、鍔部41b、ワッシャ70、天井部21の当接によって弁ガイド18に伝達され、弁ガイド18および弁部材17が上昇移動することにより行われる。なお、弁閉状態から開弁状態に移行する際における弁部材17は、第1の管継手12から流入する流体などによる圧力の影響を受けるため比較的搖動し易い状態にあるが、弁部材17が上昇移動して弁体案内部72に収容された後は、弁体案内部72によって弁部材17が案内されるため、流体などによる圧力の影響を受けにくくなり、弁部材17は搖動し難くなる。このように、弁体案内部72によって弁部材17を案内することにより、弁部材17の作動性が向上する。
【0037】
この第1の実施の形態に係る電動弁2によれば、弁部材17と弁体案内部材72との間にシール部材48が介装し、弁部材17と弁体案内部材72が直接接触することを妨げることにより、閉弁状態で冷媒などの流体が漏洩することを確実に防止することができる。
【0038】
なお、上述の第1の実施の形態においては、弁ガイド18を介して弁軸41と弁部材17が接続されている場合を例に説明しているが、電動弁2が弁ガイド18を備えず、弁部材17が弁軸41と一体的に形成されていてもよい。この場合においても、雄ネジ41aと雌ネジ6dとの間に形成されたクリアランスにより、弁部材17が搖動し、または径方向に水平移動することが可能となる。
【0039】
また、上述の第1の実施の形態に係るシール部材48においては、上方に配置された環状パッキン48aの上側、および下方に配置された環状パッキン48aの下側に、それぞれL字が鋭角になりすぎないように外側に環状パッキンを付勢する板バネが配置されるのが好ましい。また、シール部材48には、図3に示すように、断面略円形状を有する環状パッキン(いわゆるOリング)のみから成るものを採用してもよいし、図4に示すように、シール部材48としてOリング48dとPTFE等の高潤滑性樹脂材料からなる断面C字状を有する環状パッキン48fを組み合わせた複合シール材を採用してもよい。
【0040】
次に、図面を参照して第2の実施の形態に係る電動弁について説明する。この第2の実施の形態に係る電動弁は、第1の実施の形態の弁体案内部材72の小径部72bの下端部にテーパー部を形成したものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成についての説明は省略し、異なる部分のみについて説明する。
【0041】
図5は、第2の実施の形態に係る電動弁の要部を拡大した断面図である。図5に示すように、弁体案内部材72の小径部72bの下端部には、下方に向かって外側に傾斜するテーパー部72fが形成されている。なお、図5では、小径部72bの肉厚を変化させずにテーパー部72fを形成した場合を示しているが、小径部72bの内壁面の肉厚のみを下方に向かって徐々に薄くし、内壁面のみを下方に向かって外側に傾斜させるようにしてもよい。また、図5に示すように、弁体部17Bは、上側部分171が下側部分172よりも径の小さい円筒状の部材であり、上側部分171と下側部分172の間には、下方に向かって外側に傾斜する傾斜部分173が形成されている。
【0042】
この第2の実施の形態に係る発明によれば、弁体案内部材72の小径部72bの下端部にテーパー部72fを形成することにより、弁部材17の作動性を確保することができる。具体的には、弁部材17が閉弁状態から開弁状態に移行する過程において、弁部材17の上昇が弁体案内部材72によって阻害される事態を防止することができ、弁部材17が弁体案内部材72に収容され易くなる。
【0043】
また、弁体部17Bに傾斜部分173を形成することにより、弁部材17が閉弁状態から開弁状態に移行する過程において、弁部材17の上昇が弁体案内部材72によって阻害される可能性をさらに低減させることができ、小径部72bに弁部材17が収容され易くなる。
【0044】
また、弁体案内部材72の小径部72bの下端部にテーパー部72fを形成することにより、容易に電動弁を組み立てることができる。この効果については、以下に図6を用いて説明する。
【0045】
図6(a)は、電動弁を組み立てる前の弁体案内部材72と弁部材17およびシール部材48との関係を示した図である。図6(a)に示すように、組み立てられる前の第2の実施の形態に係る電動弁は、弁体案内部材72の小径部72bの内径Diよりもシール部材48の外形Dpの方が大きく、さらにシール部材48の外形Dpよりも弁体案内部材72のテーパー部72fの下端の内径Dtの方が大きくなるように形成されている。
【0046】
すなわち、径の大きさは、弁体案内部材72の小径部72bの内径Di<シール部材48の外形Dp<弁体案内部材72のテーパー部72fの下端の内径Dtの順に大きくなる。
【0047】
ところで、第1の実施の形態に係る電動弁2のように、弁体案内部材72の下端部にテーパー部72fが形成されていない場合(図2参照)、電動弁2を組み立てるには、シール部材48の外形Dpが弁体案内部材72の小径部72bの内径Diよりも小さくなるように、治具等を用いてシール部材48を縮めながら弁体案内部材72に挿入する必要がある。しかし、図6(a)に示すように、弁体案内部材72の下端部にテーパー部72fを形成した場合、電動弁2を組み立てる際にテーパー部72fに下側からシール部材48を押し当てると、シール部材48の外形はテーパー部72fに案内されて上昇するにしたがって外形Dpを縮め、図6(b)に示すように、弁体案内部材72の小径部72bに挿入される。
【0048】
このように、弁体案内部材72の下端部にテーパー部72fを形成することにより、弁部材17の上昇が弁体案内部材72によって阻害される事態を防止することができ、弁部材17が弁体案内部材72に収容され易くなる。また、治具等の器具を用いることなく、容易にシール部材48を弁体案内部材72の小径部72bに挿入させることができることから、電動弁を組み立てる際の作業性が向上し、作業に係る工数を低減することができる。また、治具等の器具を使用しないため、電動弁を組み立てる際にシール部材48を器具で傷付ける心配もない。
【0049】
次に、図面を参照して第3の実施の形態に係る電動弁について説明する。この第3の実施の形態に係る電動弁は、第1の実施の形態において弁部材17側に配置されているシール部材48を弁体案内部材72側に配置したものである。また、弁部材17の外周面に傾斜部分を形成したものである。従って、第1の実施の形態と同様の構成についての説明は省略し、異なる部分のみについて説明する。
【0050】
図7は、第3の実施の形態に係る電動弁を示す断面図であり、図8はその要部を拡大した断面図である。図8に示すように、弁体案内部材72の小径部72bの下端部には、弁体案内部材72の内側に折り曲げられた折曲部72kが形成され、折曲部72k上にシール部材48が配置されている。また、弁部材17の外周面には、下方に向かって外側に傾斜する傾斜部分173が形成されている。なお、図7、8においては、シール部材48としてOリング48dと断面C字状を有する環状パッキン48fを組み合わせた複合シール材を用いた場合を例に示しているが、シール部材48は複合シール材に何ら限定されない。たとえば、Oリングのみから成るシール材を採用してもよく、断面L字状の環状パッキン48aの間に環状の補強板48bを挟んだもの(図2参照)を採用してもよい。
【0051】
この第3の実施の形態に係る発明によれば、シール部材48を弁部材17側に配置せず、弁体案内部材72の内側に折り曲げられた折曲部72kに配置することにより、容易に電動弁内にシール部材48を取り付けることができる。
【0052】
また、弁部材17の外周面に傾斜部分173を形成することにより、容易に電動弁を組み立てることができる。この効果については、以下に図9を用いて説明する。
図9(a)は、電動弁を組み立てる前の弁体案内部材72と弁部材17およびシール部材48との関係を示した図である。図9(a)に示すように、組み立てられる前の第3の実施の形態に係る電動弁は、弁部材17の上部の径Dtよりもシール部材48の内径Dpの方が大きく、さらにシール部材48の内径Dpよりも弁部材17の下部の径Drの方が大きくなるように形成されている。
【0053】
すなわち、径の大きさは、弁部材17の上部の径Dt<シール部材48の内径Dp<弁部材17の下部の径Drの順に大きくなる。
このため、電磁弁を組み立てる場合には、まず弁軸41を弁軸ホルダ6内に挿入させて筒状小径部6aに貫通させた後、弁軸41を回転させて、弁軸41の雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周に形成された雌ネジ6dとを螺合させ、弁部材17の上部をシール部材48内に位置させる。この状態で弁部材17の位置を上方に移動させると、弁部材17の傾斜部分173がシール部材48と当接する。さらに弁部材17の位置を上方に移動させると、傾斜部分173の傾きに案内されて徐々にシール部材48が広げられ、図9(b)に示すように、弁部材17が弁体案内部材72の小径部72bに挿入される。
【0054】
このように、弁部材17の外周面に傾斜部分173を形成することにより、治具等の器具を用いることなく、容易に弁部材17を弁体案内部材72に挿入させることができることから、電動弁を組み立てる際の作業性が向上し、作業に係る工数を低減することができる。また、治具等の器具を使用しないため、電動弁を組み立てる際にシール部材48を器具で傷付ける心配もない。
【0055】
また、第3の実施の形態に係る発明においても、第1の実施の形態において説明したのと同様に、弁部材17と弁体案内部材72との間にシール部材48を介装することにより、少なくとも閉弁状態において弁部材17と弁体案内部材72が直接接触することが妨げられる。このため、弁部材17が搖動し、または径方向に水平移動することが可能となり、弁部材17の下端部と弁座部材30Aとの間に隙間が生じないように弁部材17の位置合わせをすることが容易になる。よって、冷媒などの流体が漏洩することを確実に防止することができる。
【0056】
なお、第2、3の実施の形態においても、電動弁2が弁ガイド18を備えず、弁部材17が弁軸41と一体的に形成されていてもよい。この場合においても、雄ネジ41aと雌ネジ6dとの間に形成されたクリアランスにより弁部材17は搖動し、または径方向に水平移動することが可能である。
【0057】
また、上述の実施の形態においては、均圧路として孔部17b、導通孔17cを弁部材17内に設けた場合を例に説明しているが、必ずしも弁部材17内に均圧路を設けなくてもよい。たとえば、弁部材17内に均圧路を設けることに代えて、別途、弁ポート16の圧力を背圧室28に導く配管部材を配置してもよい。
【符号の説明】
【0058】
2 電動弁
4 ロータ
6 弁軸ホルダ
6d 雌ネジ
11 弁室
13 ガイド
14 弁体
16 弁ポート
17 弁部材
17A 弁体保持部
17A1 連結部
17A2 頭部
17B 弁体部
17a 受入空間
17b 孔部
17c 導通孔
17g 下端面
17h 上端面
18 弁ガイド
21 天井部
27 弁バネ
28 背圧室
30 弁本体
30A 弁座部材
41 弁軸
41a 雄ネジ
48 シール部材
48a 環状パッキン
48b 補強板
48d リング
48f 環状パッキン
52 ガイド支持体
72 弁体案内部材
72a 大径部
72b 小径部
72c フランジ部
72f テーパー部
83 弁軸ホルダ室
171 上側部分
172 下側部分
173 傾斜部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2017年1月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
しかしながら、上述の電動弁においては、図11に示すように、弁体314の構造を、その外壁面が円筒状のガイド313の内壁面に案内されて開閉される構造にしたことにより、仮に弁体314の軸芯が軸Lの軸とずれた状態で電動弁が完成すると、弁体314を閉弁状態にした際に弁体314の下端部が傾斜したまま片当たりの状態で弁座部材315に当接し、弁体314の下端部と弁座部材315との間に隙間が生じるおそれがある。この場合、弁体314を閉弁状態にした際に、たとえば冷媒などの流体の漏洩が生じ易くなる場合も想定され得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
これにより、仮に弁体の軸芯が電動弁の軸とずれた状態で電動弁が完成した場合であっても、弁体と弁体案内部材の間に生じたクリアランスの中で弁体が搖動したり径方向に移動することが可能となるため、弁体の軸芯を電動弁の軸に合わせることができる。さらに、閉弁状態において弁体の下端部と弁座部材との間に隙間が生じないように弁体の位置合わせをすることにより、閉弁状態で冷媒などの媒体が漏洩することを確実に防止することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また本発明の電動弁は、
前記弁体案内部材の下端部に、下方に向かって少なくとも内壁面が外側に傾斜するテーパー部が形成されていることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また本発明の電動弁は、
前記弁体に、下方に向かって外壁面が外側に傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面が、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
また、弁部材17の縦方向において、弁体保持部17Aの頭部17A2の下端面17gと弁体部17Bの上端面17hとの間には、断面L字状の環状パッキン48aの間に環状の補強板48bを挟んで形成された環状のシール部材48が配置されている。このシール部材48は、上述したように、横方向において弁部材17と弁体案内部材72との間に介装されているため、少なくとも電動弁2を閉弁状態にした場合において、図2に示すように、弁部材17と弁体案内部材72が直接接触することが妨げられる。このため、仮に弁部材17の軸芯が電動弁2の軸とずれた状態で電動弁2が完成した場合であっても、弁部材17と弁体案内部材72の間に生じたクリアランスの中で弁部材17が弁軸41の突出部41cを支点として搖動し、または径方向に水平移動することが可能となるため、弁部材17の軸芯を容易に電動弁2の軸に合わせることができる。これにより、閉弁状態において弁部材17の下端部と弁座部材30Aとの間に隙間が生じないように弁部材17の位置合わせをすることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
弁軸41の降下移動(弁閉方向移動)は、バネ受け35、鍔部41b、ワッシャ70、天井部21の当接によって弁ガイド18に伝達され、弁ガイド18および弁部材17が降下移動することにより行われる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
すなわち、径の大きさは、弁部材17の上部の径Dt<シール部材48の内径Dp<弁部材17の下部の径Drの順に大きくなる。
このため、電弁を組み立てる場合には、まず弁軸41を弁軸ホルダ6内に挿入させて筒状小径部6aに貫通させた後、弁軸41を回転させて、弁軸41の雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周に形成された雌ネジ6dとを螺合させ、弁部材17の上部をシール部材48内に位置させる。この状態で弁部材17の位置を上方に移動させると、弁部材17の傾斜部分173がシール部材48と当接する。さらに弁部材17の位置を上方に移動させると、傾斜部分173の傾きに案内されて徐々にシール部材48が広げられ、図9(b)に示すように、弁部材17が弁体案内部材72の小径部72bに挿入される。
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正の内容】
図8