(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-161429(P2017-161429A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】測量機に設けられた超音波モータの制御方法及びそのための測量機
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20170818BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-47766(P2016-47766)
(22)【出願日】2016年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
(72)【発明者】
【氏名】弥延 聡
(72)【発明者】
【氏名】糀 徹太郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回転軸に超音波モータを採用した測量機において、低速回転時に異音を発生させないための超音波モータの制御方法及びそのための測量機を提供することを目的とする。
【解決手段】測量機の回転軸に設けられた超音波モータと、超音波モータを駆動するための駆動信号を発生する駆動回路と、制御部とを備える測量機において、超音波モータの低速回転域において、駆動信号の振幅を一定に設定し、駆動信号の周波数が増加する上がり勾配と周波数が減少する下がり勾配を繰り返し設定して行うように制御する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量機の回転軸に設けられた超音波モータと、前記超音波モータを駆動するための駆動信号を発生する駆動回路と、制御部とを備える測量機において、
前記超音波モータの低速回転域において、前記駆動信号の振幅を一定に設定し、前記駆動信号の周波数が増加する上がり勾配と周波数が減少する下がり勾配を繰り返し設定することを特徴とする測量機に設けられた超音波モータの制御方法。
【請求項2】
前記低速回転域において、前記駆動信号に、駆動開始時に前記駆動信号の振幅が増加する上がり勾配と駆動終了時に前記駆動信号の振幅が減少する下がり勾配が設定されることを特徴とする請求項1に記載の測量機に設けられた超音波モータの制御方法。
【請求項3】
前記駆動信号の振幅、前記勾配、及び前記駆動信号の制御周期を一定とし、前記超音波モータの回転速度を上げたい時は前記制御周期中の加速期の割合を増やし、回転速度を下げたい時は前記制御周期中の減速期の割合を増やすことを特徴とする請求項1に記載の測量機に設けられた超音波モータの制御方法。
【請求項4】
前記制御部がターゲットを望遠鏡中心に捕捉したことを検知した時、前記駆動信号の振幅は前記下がり勾配に切り替わることを特徴とする請求項2に記載の測量機に設けられた超音波モータの制御方法。
【請求項5】
前記制御部がターゲットを望遠鏡中心に捕捉したことを検知した時、前記駆動信号の周波数は前記上がり勾配に切り替わることを特徴とする請求項1に記載の測量機に設けられた超音波モータの制御方法。
【請求項6】
測量機の回転軸に設けられた超音波モータと、
前記超音波モータを駆動するための駆動信号を発生する駆動回路と、
前記回転軸の回転速度を検出するエンコーダと、
前記エンコーダから前記回転速度を把握し、前記超音波モータが低速回転域である場合、前記駆動信号の振幅を一定に設定し、前記駆動信号の周波数が増加する上がり勾配と周波数が減少する下がり勾配を繰り返し設定する制御部と、
を有することを特徴とする測量機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量機の回転軸に設けられた超音波モータの制御方法及びそのための測量機に関する。
【背景技術】
【0002】
測量機、例えばトータルステーションは、測定点を視準する望遠鏡と、上記望遠鏡を鉛直方向に回転可能に支持する托架部と、上記托架部を水平方向に回転可能に支持する基盤部とを備えている。上記望遠鏡は鉛直回転モータによって、上記托架部は水平回転モータによって駆動される。
【0003】
特許文献1には、上記鉛直回転モータ及び水平回転モータに超音波モータを採用した測量機が開示されている。
図1に超音波モータを採用した測量機の概略縦断面図、
図2に
図1の超音波モータを含む部分の断面斜視図を示す。
図1,2において、符号1が測量機、符号9が望遠鏡、符号7が托架部、符号4が基盤部、符号11が鉛直回転軸、符号12が鉛直用超音波モータ、符号6が水平回転軸、符号5が水平用超音波モータ、符号23が制御部である。鉛直回転軸11には鉛直角検出エンコーダ22が、水平回転軸6には水平角検出エンコーダ21が設けられている。鉛直方向と水平方向の構成は同等であるので、水平方向の構成を用いて詳細を説明する。
【0004】
水平用超音波モータ5は、ベース部39から順に、振動を発生する圧電セラミック42、振動を増幅させるステータ金属43、ステータ金属43と干渉するロータ46、ロータ46をステータ金属43側へ押圧するウェーブワッシャ48を、リング状に備える。駆動信号により圧電セラミック42が超音波振動すると、ステータ金属43に波状の進行波が形成され、ウェーブワッシャ48の押圧による摩擦によってステータ金属43とロータ46が相対回転する。
図2の形態では、モータケース25が基盤部4に固定され、ロータ46はモータケース25に固定されているので、ステータ金属43が回転し、ベース部39を介して水平回転軸6がステータ金属43と一体に回転する。
【0005】
測量機1の回転軸に超音波モータを採用すると、電動モータと比べ旋回性能が高く、静粛性に優れ、無通電時の軸保持力が高まるという利点がある。一方で、超音波モータは、低速回転域の制御が困難であることが知られている。
図3は、超音波モータの駆動周波数と回転速度の関係を示す図である。
図3にある数値は一例である。超音波モータは、周波数を上げて低速回転させると、ステータ金属43の波形が小さくなりロータ46との干渉が小さくなるため、唐突に動かなくなるという問題がある。
【0006】
低速回転域の駆動を補う手法の一つとして、超音波モータに掛ける駆動信号の電圧等をPWM回路により間欠駆動させる方法がある。
図4は、超音波モータの駆動信号の駆動周波数を間欠駆動させる制御イメージ図である。このように、駆動信号をON/OFFし矩形波を作ることで、唐突に動かなくなる域の駆動を補うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−137299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、
図4のように矩形波状に間欠駆動を行うと、信号のON/OFFの切り替え時に、異音が発生するという不具合が生じる。一般的に、測量機1は自動視準機能と自動追尾機能を備えているが、特に自動追尾では、作業者が持ち運ぶターゲットを追尾するため、ターゲットまでの距離が長い場合は低速回転域を使用する場面が多く、異音の鳴る頻度が高いことが想定される。
【0009】
本発明は、前記問題を解決するため、回転軸に超音波モータを採用した測量機において、低速回転時に異音を発生させないための超音波モータの制御方法及びそのための測量機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測量機に設けられた超音波モータの制御方法は、測量機の回転軸に設けられた超音波モータと、前記超音波モータを駆動するための駆動信号を発生する駆動回路と、制御部とを備える測量機において、前記超音波モータの低速回転域において、前記駆動信号の振幅を一定に設定し、前記駆動信号の周波数が増加する上がり勾配と周波数が減少する下がり勾配を繰り返し設定することを特徴とする。
【0011】
上記態様において、前記低速回転域において、前記駆動信号に、駆動開始時に前記駆動信号の振幅が増加する上がり勾配と駆動終了時に前記駆動信号の振幅が減少する下がり勾配が設定されるのも好ましい。
【0012】
上記態様において、前記駆動信号の振幅、前記勾配、及び前記駆動信号の制御周期を一定とし、前記超音波モータの回転速度を上げたい時は前記制御周期中の加速期の割合を増やし、回転速度を下げたい時は前記制御周期中の減速期の割合を増やすのも好ましい。
【0013】
上記態様において、前記制御部がターゲットを望遠鏡中心に捕捉したことを検知した時、前記駆動信号の振幅は前記下がり勾配に切り替わるのも好ましい。
【0014】
上記態様において、前記制御部がターゲットを望遠鏡中心に捕捉したことを検知した時、前記駆動信号の周波数は前記上がり勾配に切り替わるのも好ましい。
【0015】
また、本発明のある態様の測量機は、測量機の回転軸に設けられた超音波モータと、前記超音波モータを駆動するための駆動信号を発生する駆動回路と、前記回転軸の回転速度を検出するエンコーダと、前記エンコーダから前記回転速度を把握し、前記超音波モータが低速回転域である場合、前記駆動信号の振幅を一定に設定し、前記駆動信号の周波数が増加する上がり勾配と周波数が減少する下がり勾配を繰り返し設定する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転軸に超音波モータを採用した測量機において、低速回転時に異音が生じないように制御することができる。また、低速回転時においても静粛性に優れた測量機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】超音波モータを採用した測量機の概略縦断面図である。
【
図2】
図1の超音波モータを含む部分の断面斜視図である。
【
図3】超音波モータの駆動周波数と回転速度の関係を示す図である。
【
図4】超音波モータの駆動信号を間欠駆動させる制御イメージ図である。
【
図6】本形態の第1の制御方法に係る駆動信号の波形図である。
【
図7】本形態の第2の制御方法に係る駆動信号の波形図である。
【
図8】本形態の第2の制御方法の変形例に係る駆動信号の波形図である。
【
図9】本形態の制御方法において回転速度を上げる時の駆動信号の波形図である。
【
図10】本形態の制御方法において回転速度を下げる時の駆動信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
測量機1の構成については、
図1,
図2を用いて前述されているので、既に記載した要素については同一の符号を用いて説明を省略する。なお、各要素の機械的な接続に関しては、特開2014−137299号公報に記載されている。
【0020】
図5は本形態に係る測量機1のブロック図である。鉛直用と水平用の構成は同等であるので、水平用超音波モータ5に関するブロック構成で示し、鉛直用超音波モータ12に関しては説明を省略する。測量機1は、制御部23と、水平角検出エンコーダ21と、測距部61と、追尾部62と、クロック信号発振部63と、駆動回路73と、水平用超音波モータ5とを有する。測量機1は、自動視準機能、自動追尾機能を備えている。望遠鏡9には、図示しない測距光学系、追尾光学系が収容されている。測距光学系、追尾光学系の構成は従来技術の構成と同等で良いため記載を省略する。測量機1では、托架部7の水平回転と望遠鏡9の鉛直回転の協働により測距光及び追尾光がターゲットに照射される。
【0021】
測距部61は、制御部23に制御されて、上記測距光学系を用いて測距光をターゲットに照射してその反射光を受光して測距を行う。追尾部62は、制御部23に制御されて、上記追尾光学系を用いて追尾光をターゲットに照射してその反射光を受光し、ターゲットが移動した場合は追尾を行う。
【0022】
水平角検出エンコーダ21は、回転円盤、スリット、発光ダイオード、イメージセンサを有するアブソリュートエンコーダである。この他、インクリメンタルエンコーダが用いられてもよい。
【0023】
制御部23は、CPU,ROM,RAM等を集積回路に実装したマイクロコントローラによって構成されている。制御部23は、図示を略する外部からソフトウェアを変更可能である。
【0024】
制御部23は、水平角検出エンコーダ21の上記発光ダイオードを発光させる駆動信号を出力し、上記イメージセンサから得られた角度信号を受け取って、水平回転軸6の回転速度を演算する。
【0025】
駆動回路73は、FPGA(Field Programmable Gate Array)731とアナログ回路732によって構成されている。FPGA731は制御部23もしくは図示を略する外部機器によって内部論理回路を定義変更可能である。FPGA731は、可変の駆動周波数(駆動信号の周波数)及び可変の振幅で制御信号を発生させることができ、駆動周波数または振幅を動的に変化させることができる。また、水平用超音波モータ5に対して、二種類の位相の異なる信号を発生させる。アナログ回路732は、トランス等で構成されており、上記制御信号を水平用超音波モータ5に必要な振幅まで増幅させ、上記駆動周波数の交流駆動電圧を生成し、水平用超音波モータ5の圧電セラミック42に付されているSin電極とCos電極に出力する。なお、駆動回路73は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの他のPLD(Programmable Logic Device)が用いられてもよい。
【0026】
以上のように、制御部23は水平用超音波モータ5に対し駆動回路73を介して駆動信号を出力する。制御部23は、水平用超音波モータ5の駆動を制御して、水平回転軸6の回転速度を制御する。この制御方法については後述する。
【0027】
クロック信号発振部63は、クロック信号を駆動回路73に出力する。FPGA731は、クロック信号に基づき駆動周波数,駆動信号の振幅,制御周期を制御する。
【0028】
以上の構成を用いて、超音波モータ5,12を駆動させた時の駆動周波数と回転速度の関係は、
図3で一例を示している。
図3は、横軸が駆動周波数[kHz]、縦軸がロータ46の回転速度[°/s]である。
図3の超音波モータでは、駆動周波数を上げていくと、40kHzで共振点に達し最高速度を得る。その後43kHzまでは連続駆動し、駆動周波数の増加に伴い回転速度は減少する。43kHz,5〜6°/sを境に、周波数を上げても回転が起こらない域となる。本形態では、このように、超音波モータが連続駆動で回転できない速度域(
図3の超音波モータであれば5〜6°/s以下)である低速回転域において、以下に述べる制御を行う。この低速回転域は、超音波モータの製造状態により個々に異なるため、採用する超音波モータの特性を調べることで予め制御部23に定義しておく。
【0029】
図6は本形態の第1の制御方法に係る駆動信号の波形図である。横軸が時間t、縦軸がそれぞれ駆動信号の振幅V、駆動周波数fである。制御部23は、水平角検出エンコーダ21または鉛直角検出エンコーダ22から低速回転域であることを検知すると、駆動信号の振幅Vは一定にした上で、駆動周波数fは制御周期TFの三角波状に変化させて出力する。
【0030】
駆動周波数fは、二分の一周期で最大周波数fmaxから最小周波数fminに一次関数的に減少する下がり勾配kfFが形成され、次の二分の一周期で最小周波数fminから最大周波数fmaxに一次関数的に増加する上がり勾配kfRが形成される。最大周波数fmax及び最小周波数fminは、低速回転域を形成するために必要な周波数を制御部23に予め設定する。一例として、
図3の超音波モータであれば、最小周波数fminは超音波モータが十分に駆動するであろう周波数、例えば40°/sを出すのに必要と考えられる周波数42kHzを設定し、最大周波数fmaxは超音波モータが全く動かないであろう周波数45kHzを設定することが考えられる。制御周期TFの値は、制御性を考慮して制御部23に予め設定されている。
図3の超音波モータであれば、制御周期TFは数[ms]に設定することが考えられる。この駆動周波数は、例えばクロック信号を基準にして時間と共に連続的に変化させて三角波状の出力を得る。このように、超音波モータ5,12に掛ける駆動周波数fに勾配kfF,kfRを付けることにより、周波数の切り替え時(
図6に示すC点)で異音が生じにくくなる。
【0031】
図7は本形態の第2の制御方法に係る駆動信号の波形図である。横軸が時間t、縦軸がそれぞれ駆動信号の振幅V、駆動周波数fである。制御部23は、水平角検出エンコーダ21または鉛直角検出エンコーダ22が低速回転域であることを検知すると、
図6と同様に、駆動周波数fは最大周波数fmax,最小周波数fmin,制御周期TFの三角波状に変化させて出力する。加えて、制御部23は、駆動信号の振幅Vに、駆動開始時はゼロでその後一次関数的に振幅を増加させる上がり勾配kVRを形成し、その後駆動信号の振幅Vを一定とする。そして、駆動終了時には、駆動信号の振幅Vを一次関数的にゼロまで減少させる下がり勾配kVFを形成する。この上がり勾配kVR及び下がり勾配kVFは、例えばクロック信号を基準にして時間とともに連続的に変化させることにより生成できる。上がり勾配kVR及び下がり勾配kVFの値は、制御性及び異音の大きさを考慮して制御部23に予め設定されている。
【0032】
なお、
図7では駆動信号の振幅Vの上がり勾配kVRと下がり勾配kVFの傾斜は一致しているが、一致させなくてもよい。超音波モータは、高周波数から低周波数への切り替え時(
図7のC1点)よりも、低周波数から高周波数へ切り替える時(
図7のC2点)のほうが異音が生じやすい。よって、音の鳴りにくい上がり勾配kVRの傾斜は音の鳴りやすい下がり勾配kVFよりも急勾配としてよい。
【0033】
測量機1は自動視準機能と自動追尾機能を備えていると前述したが、自動視準の場合は、静止しているターゲットを視準するため、回転軸を高速で制御することができる場合が多く、また、あらかじめ決められた加減速で駆動しているので、自動視準開始時と終了時しか音鳴りが生じない。一方、自動追尾の場合は、作業者が持ち運ぶターゲットを追尾するため、ターゲットまでの距離が長い場合は、低速回転域を使用する場面が多い。これを考慮し、超音波モータ5,12に掛ける駆動周波数fに勾配kfF,勾配kfRを付けた上で、駆動信号の振幅Vの立上がり及び立下りにも勾配kVR,勾配kVFを付けることにより、周波数の切り替えが頻繁に生じる場合であっても、異音が生じにくくなる。
【0034】
なお、「駆動終了時」の判断は、「ターゲットを望遠鏡中心に捕捉したことを検知した時」と一致させるのが好ましい。一例として、「ターゲットを望遠鏡中心に捕捉したことを検知した時」は、図示しない画像撮像部で点灯画像と消灯画像を取得し、制御部23がその差分からターゲット位置を検出し、望遠鏡中心からの隔たりが一定以内に納まった時と設定できる。
【0035】
図8は第2の制御方法の変形例に係る駆動信号の波形図である。横軸が時間t、縦軸がそれぞれ駆動信号の振幅V、駆動周波数fである。この変形例では、駆動信号の振幅Vは第2の制御方法と同様で、駆動終了時の駆動周波数fの制御が変更されている。制御部23は、ターゲットを望遠鏡中心に捕捉したことを検知すると、駆動周波数fが下がり勾配kfFであった場合は上がり勾配kfRに切り替え、駆動信号の駆動終了と合わせて周波数の発振を停止する。ターゲットを望遠鏡中心に捕捉したことを検知した時に駆動周波数fが上がり勾配kfRであった場合は、最大周波数fmaxまで周波数を上げ、駆動信号の駆動終了と合わせて周波数の発振を停止する。これにより、駆動終了時に周波数の切り替え(C点)が生じないので、駆動終了時に異音が生じにくくなる。
【0036】
図9は本形態の制御方法において回転速度を上げる時の駆動周波数の波形図である。超音波モータ5,12の回転速度を上げたい時は、駆動周波数fを以下のように制御する。この制御のために、駆動信号の制御周期TFは一定とする。駆動信号の振幅、すなわち最大周波数fmax及び最小周波数fminは一定とする。駆動周波数fの上がり勾配kfR及び下がり勾配kfFも一定とする。
【0037】
その上で、制御部23は、水平角検出エンコーダ21及び鉛直角検出エンコーダ22から水平回転軸6及び鉛直回転軸11の回転速度を常に把握する。制御部23は、水平用超音波モータ5または鉛直用超音波モータ12の回転速度を上げたい時は、対象とする超音波モータの制御周期TF内の加速期Taの割合を増やす。超音波モータでは周波数を下げると速度が増すため、駆動周波数fが減少に転じた時から再び増加に転じるまでの領域が加速期Taに該当する。逆に、超音波モータでは周波数を上げると速度が落ちるため、駆動周波数fが増加に転じた時から再び減少に転じるまでの領域が減速期Trに該当する。
【0038】
具体的に、
図9を見ると、第1周期目は、第1及び第2の制御方法と同等の制御が行われている。第2周期目で、回転速度を上げる制御が行われている。第2周期目は、四分の一周期までは、最大周波数fmaxから下がり勾配kfFが形成されている。四分の一周期から四分の三周期までは、最大周波数fmaxと最小周波数fminの中間周波数fmidで一定となっている。四分の三周期から四分の三周期までは、中間周波数fmidから最大周波数fmaxに上がり勾配kfRが形成され、次の第3周期目からまた下がり勾配kfFが形成されている。
【0039】
第2周期目において、周波数が最大周波数fmaxから減少に転じた四分の一周期までと、一定の中間周波数fmidが形成された四分の一周期から四分の三周期までが加速期Taとなり、中間周波数fmidから最大周波数fmaxまで増加に転じた四分の三周期から四分の四周期までが減速期Trとなる。
図9では、制御周期TF内の比が、加速期Ta:減速期Tr=3:1となるので、加速期Taの割合が多く設定されている。加速期Taの割合を増やすほど、超音波モータ5,12の回転速度を上げることができる。
【0040】
図10は本形態の制御方法において回転速度を下げる時の駆動周波数の波形図である。超音波モータ5,12の回転速度を下げたい時は、駆動周波数fを以下のように制御する。回転速度を上げる時と同様に、駆動信号の制御周期TF、駆動信号の振幅(最大周波数fmax及び最小周波数fmin)、駆動周波数fの上がり勾配kfR及び下がり勾配kfFは一定とする。
【0041】
その上で、制御部23は、超音波モータ5,12の回転速度を下げたい時は、対象とする超音波モータの制御周期TF内の減速期Trの割合を増やす。具体的に、
図10の第1周期目は、第1及び第2の制御方法と同等の制御が行われている。
図10の第2周期目で、回転速度を下げる制御が行われている。第2周期目は、四分の一周期までは、最大周波数fmaxから中間周波数fmidまで下がり勾配kfFが形成されている。四分の一周期から二分の一周期までは、中間周波数fmidから最大周波数fmaxに上がり勾配kfRが形成されている。二分の一周期からは最大周波数fmax一定とされ、次の第3周期目からまた下がり勾配kfFが形成されている。
【0042】
最大周波数fmaxから中間周波数fmidに減少する四分の一周期までが加速期Taとなり、中間周波数fmidから最大周波数fmaxまで増加に転じた四分の一周期から二分の一周期までと、一定の最大周波数fmaxが形成された二分の一周期から四分の四周期までが減速期Trとなる。
図10では、制御周期TF内の比が、加速期Ta:減速期Tr=1:3となるので、減速期Trの割合が多く設定されている。減速期Trの割合を増やすほど、超音波モータ5,12の回転速度を下げることができる。
【0043】
以上のように、第1及び第2の制御方法(
図6〜
図8)を行うことで、低速回転域においても超音波モータ5,12を静粛に駆動させることができ、第1及び第2の制御方法において制御周期TF中の加速期Taと減速期Trの比率を変える(
図9及び
図10)ことで、低速回転域においても速度調整が可能となる。
【0044】
なお、上記形態では、制御周期TF及び駆動周波数fの勾配kfF,kfRは一定としたが、例えば、超音波モータの音圧を測定し、測定値に応じて制御周期TFを変化させることも好ましい。この場合、その制御周期に合わせて、制御周期>勾配の時間となるように勾配kfF,kfRも再設定するのが好ましい。これにより、異音の大きさを考慮しつつ、より制御性(狙いの速度に早く到達させる)を上げることができる。
【0045】
また、上記形態では、駆動周波数fは一次関数的な三角波を形成したが、一次関数に限定する趣旨ではない。駆動周波数fは、例えば二次関数的に増加及び減少する三角波状に形成されてもよい。
【0046】
以上、好ましい実施の形態について述べたが、これら以外にも、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 測量機
5 水平用超音波モータ
6 水平回転軸
11 鉛直回転軸
12 鉛直用超音波モータ
21 水平角検出エンコーダ
22 鉛直角検出エンコーダ
23 制御部
73 駆動回路