【解決手段】筐体10の内部に、ガスを検知するガス電極20として被検知ガスを電気化学反応させる反応極21と、参照極22と、対極23と、をこの順に収容し、これらガス電極20は、それぞれ電解液31を吸水して保持する保水部材40を介して積層してある電気化学式センサX。
筐体の内部に、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる反応極と、参照極と、対極と、をこの順に収容し、これらガス電極は、それぞれ電解液を吸水して保持する保水部材を介して積層してある電気化学式センサ。
前記筐体を封止する蓋部材を備え、当該蓋部材に前記反応極を熱融着し、前記筐体の内部に設けた内部部材に前記対極を熱融着してある請求項1または2に記載の電気化学式センサ。
【背景技術】
【0002】
電気化学式ガスセンサは、化学反応(酸化還元反応)によって発生するエネルギーを電気エネルギーとして取り出すことによって、ガスを検知するものである。電気化学式ガスセンサは、低消費電力、出力特性がリニア、ガス選択性に比較的優れるなどの特徴を持っていることから、工業用のガス濃度測定機器や、近年では一酸化炭素や硫化水素、酸素などの検知警報器などに広く使用されている。
【0003】
一酸化炭素の場合、反応極で一酸化炭素の酸化反応がおき、それによって生成する水素イオンと等量の水素イオンが、対極で空気中の酸素と反応して水を生成する。この一連の反応によって発生する電流は、反応極側のガス濃度に対応するため、この電流を測定することでガス濃度を検知することができる。
【0004】
電気化学式ガスセンサは、開口部を設けた筐体と、小孔が形成された蓋部と、を備え、当該筐体の内部に、反応極、参照極、対極、電極を押圧固定するOリング、電解液、ガス透過膜などがそれぞれ収容されている。
【0005】
上述した電気化学式ガスセンサにおいて、筐体を外側筐体および内側筐体で構成した二重構造とし、電解液を、外側筐体に内包した内側筐体に収容することがあった。この場合、外側筐体および内側筐体の隙間に、反応極、参照極および対極のそれぞれと各別に接続する導線を挿通させていた。
【0006】
外側筐体は、底側に設けた孔部および前記底側の反対側に設けた開口部を有し、内側筐体は、当該孔部を挿通して電解液を内側筐体に注入可能な筒状部を有する。
【0007】
反応極、参照極および対極は、それぞれを撥水性を有する多孔質のガス透過膜に積層し、それぞれをグラスウール膜などで絶縁した状態でOリングによって押圧固定されていた。当該Oリングは、外側筐体の開口部を封止する蓋部によって押圧されていた。
【0008】
尚、このような電気化学式ガスセンサは一般的な技術であるため、従来技術は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した電気化学式ガスセンサは、筐体を外側筐体および内側筐体で構成した二重構造とし、電解液を外側筐体に内包した内側筐体に収容する構造のため、複雑な構造となり、製造や電解液の注入が煩雑であった。
【0010】
従って、本発明の目的は、簡便な構造で小型化できる電気化学式ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学式センサの第一特徴構成は、筐体の内部に、ガスを検知するガス電極として被検知ガスを電気化学反応させる反応極と、参照極と、対極と、をこの順に収容し、これらガス電極は、それぞれ電解液を吸水して保持する保水部材を介して積層した点にある。
【0012】
本構成によれば、反応極および参照極の間に保水部材を配設し、参照極および対極の間に保水部材を配設することができる。よって、各ガス電極を、保水部材が保持する電解液に接触させることができるため、電解液を収容した電解液収容空間を設ける必要がなくなる。従って、電気化学式ガスセンサを簡便な構造とすることができ、かつ小型化することができる。
【0013】
本発明に係る電気化学式センサの第二特徴構成は、前記反応極および前記対極の間にイオン交換膜を配設した点にある。
【0014】
本構成によれば、電解液を吸水して保持する保水部材が押圧力などによって破損した場合であっても、反応極および対極がショートするのを防止することができる。
【0015】
本発明に係る電気化学式センサの第三特徴構成は、前記筐体を封止する蓋部材を備え、当該蓋部材に前記反応極を熱融着し、前記筐体の内部に設けた内部部材に前記対極を熱融着した点にある。
【0016】
本構成によれば、反応極、対極および参照極をOリングなどによって押圧固定する必要が無くなり、センサを組み立てる際の部品数を減じることができる。これにより、より簡便な構造のセンサとすることができる。
【0017】
本発明に係る電気化学式センサの第四特徴構成は、当該蓋部材および前記筐体の底面のそれぞれにピンホールを形成した筒部材を配設した点にある。
【0018】
本構成によれば、例えば蓋部材に形成した筒部材をガスの導入部とし、筐体の底面に形成した筒部材をガスの排出部とすることができ、ガスの導入部および排出部をピンホールを形成した筒部材とすることができる。当該ピンホールの孔径は検知対象とするガス種に応じて適宜決定することでガスの選択性を持たせることができる。このようにガスの導入部および排出部を小径とすることでセンサの内部に干渉ガス等が混入し難くなり、干渉ガスによる影響や、外部の温湿度等による環境変化の影響を受け難くなる。
【0019】
本発明に係る電気化学式センサの第五特徴構成は、前記蓋部材におけるガス導入部および前記反応極の間に結露・圧力緩和膜を配設した点にある。
【0020】
本構成によれば、結露・圧力緩和膜を備えることで、微細なピンホールを有するガス導入部において結露が発生し難くなり、被検知ガスをセンサの内部に導入できなくなるのを未然に防止でき、かつ圧力依存を緩和するためセンサ周囲及びセンサ内部の圧力上昇や低下(特に突発的な圧力変動)を緩和することができ、指示値も安定する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜5に示したように、本発明の電気化学式センサXは、筐体10の内部に、ガスを検知するガス電極20として被検知ガスを電気化学反応させる反応極21と、参照極22と、対極23と、をこの順に収容し、これらガス電極21〜23は、それぞれ電解液31を吸水して保持する保水部材40を介して積層してある。
【0023】
ガス電極20は筐体10の内部に形成された電極収容部10aに収容される。電極収容部10aは、筐体10と、当該筐体10に形成された開口部10bを封止する蓋部材11とで囲まれた空間となる。筐体10および蓋部材11は、例えばプラスティックなどの樹脂製とすることができ、この場合、これらを公知の接着剤や超音波融着などによって固定することができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
反応極21、参照極22および対極23は、触媒および疎水性樹脂を含むガス拡散電極からなり、触媒としては、白金(Pt)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、酸化ルテニウム(RuO
2)、パラジウム(Pd)、カーボン(C)、白金担時カーボン(Pt/C)、金担時カーボン(Au/C)などが好適に用いられ、疎水性樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などが好適に用いられる。
【0025】
反応極21、参照極22および対極23は、それぞれ撥水性を有する多孔質(PTFE製)のガス透過膜51〜53に積層してある。
【0026】
ガス透過膜51〜53は、電解液31の浸入を防止し、かつ被検知ガスを透過する材質であればよく、例えばポリテトラフルオロエチレン等、従来公知のものが適用可能である。
【0027】
電解液31は、吸水性の保水部材40に保持され、その周囲にも存在する。保水部材40は、電解液31を吸水して保持する態様であるため、その内部に電解液31を保持できる空間を有する。保水部材40は、例えば濾紙状のガラス繊維や、セルロース繊維、セラミックス繊維、吸水性の高分子、グラスウール等で構成することができ、電解液31を保持できる吸水性の部材であれば、特に限定されるものではない。この保水部材40には、電解質として、硫酸(H
2SO
4)やリン酸(H
3PO
4)などの酸性水溶液、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ性水溶液、常温溶融塩が充分に含浸されている。
【0028】
常温溶融塩としては、常温において液体状態となる、主に窒素含有芳香族カチオンもしくは脂肪族オニウムカチオンとフッ素含有アニオンとから構成される溶融塩が用いられる。当該窒素含有芳香族カチオンとしては、例えばアルキルイミダゾリウムイオンまたはアルキルピリジニウムイオンが用いられる。また上記フッ素含有アニオンは、例えばホウフッ化物イオン、リンフッ化物イオンまたはトリフルオロメタンスルホン酸イオンが用いられる。
【0029】
電解液31は、予め保水部材40に保持させた状態とし、この保水部材40を筐体10の内部に配設してセンサを組み立ててもよいし、センサを組み立てた後に、筐体10に開口させた注入孔(図外)から電解液31を保水部材40に保持させるようにしてもよい。この場合、電解液31を注入した後、熱溶着により注入孔を封止するように構成すればよい。
【0030】
電気化学式センサXは、反応極21、参照極22および対極23のそれぞれと各別に接続する複数の導線60を備える。導線60は、白金、金およびニッケル等で形成すればよい。また、導線60は、各ガス電極20と導通するものであれば特にその形状などは限定されないが、各ガス電極20との接触面積をより広くし、より確実な導通を実現するという点から、例えばリボン状、帯状等の幅広形状とするのがよい。筐体10における端子設置穴12に、各ガス電極20と各別に接続する導線60に接続する電極端子13を複数備える。
【0031】
本実施形態では、蓋部材11の側から順に反応極21、参照極22および対極23を配設し、反応極21および参照極22の間に保水部材40を配設し、参照極22および対極23の間に保水部材40を配設している。
【0032】
これにより、各ガス電極20を、保水部材40が保持する電解液31に接触させることができるため、電解液を収容した電解液収容空間を設ける必要がなくなる。従って、電気化学式ガスセンサを簡便な構造とすることができ、かつ小型化することができる。
【0033】
また、反応極21および対極23の間にイオン交換膜70を配設することができる。本実施形態では、イオン交換膜70を、参照極22および対極23の間に、保水部材40に挟まれた態様について説明する。この場合、当該イオン交換膜70は、その両面を二枚の保水部材40に挟まれた態様で配設することができる。
【0034】
電解液31が塩基性水溶液の場合はアニオン交換膜を使用することができ、酸性水溶液の場合はカチオン交換膜を使用すればよい。イオン交換膜70は、具体的にはナフィオン(登録商標:デュポン社製)、アシプレックス(登録商標:旭化成社製)、フレミオン(登録商標:旭硝子社製)、ユアサグラフト膜(ユアサメンブレンシステム社製)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本構成であれば、反応極21および対極23の間にイオン交換膜70を配設することができるため、電解液31を吸水して保持する保水部材40が押圧力などによって破損した場合であっても、反応極21および対極23がショートするのを防止することができる。尚、当該押圧力としては、例えば反応極21、参照極22および対極23を、それぞれ電解液を吸水して保持する保水部材を介して積層した状態において蓋部材11によって筐体10を封止した場合に生じる圧力などが考えられる。
【0036】
本実施形態では、三枚の保水部材40、即ち、反応極21および参照極22の間に配設した第一保水部材41、参照極22および対極23の間に配設した保水部材40のうち、上方にある第二保水部材42、および、下方にある第三保水部材43、を使用しているが、これらの厚さや嵩密度等は同じとしてもよいし、異ならせてもよい。例えば厚さについては、本実施形態では第一保水部材41および第三保水部材43を厚く(1mm程度のガラス繊維濾紙:ワットマンGW(ワットマンジャパン株式会社))、第二保水部材42を薄く(0.5mm程度のガラス繊維濾紙(アドバンテック東洋株式会社製))する場合を例示するが、これに限定されるものではない。
【0037】
本実施形態では、筐体10を封止する蓋部材11において、反応極21を熱融着してある場合について説明する。
【0038】
上述したように、筐体10および蓋部材11を樹脂製とした場合、反応極21を300〜400℃程度の温度で蓋部材11に熱融着することができる。当該熱融着は、蓋部材11を樹脂の種類や、反応極21使用するガス透過膜51〜53の種類により設定される温度によって適宜決定されるので、この温度範囲に限定されるものではない。
【0039】
本構成であれば、反応極21をOリングなどによって押圧固定する必要が無くなり、センサを組み立てる際の部品数を減じることができる。これにより、より簡便な構造のセンサとすることができる。
【0040】
尚、本実施形態では、反応極21を蓋部材11に熱融着した後、ナフィオン溶液を反応極21に塗布する態様とする。塗布するナフィオン溶液の濃度は5〜20wt%とすることができるが、これに限定されるものではない。参照極22および対極23に対してはナフィオン溶液を塗布するのが好ましい。
【0041】
また、本実施形態では、当該蓋部材11に形成した貫通孔であるガス導入部11aに、ピンホール14aを形成した筒部材14を配設してある場合について説明する。尚、
図2の電気化学式センサXの上面視概略図は、ピンホール14aを形成した筒部材14の態様を認識できるように結露・圧力緩和膜80、活性炭繊維91および防塵フィルター92(後述)は示していない。
【0042】
筒部材14は、例えばアルミナ、ジルコニア等のセラミックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。筒部材14の長寸は1.5mm以上であり、好ましくは1.5〜5.6mmとするのがよい。また、ピンホール14aの孔径は検知対象とするガス種に応じて適宜決定できるが、0.05〜0.10mm程度とするのがよい。
【0043】
ガス導入部11aに筒部材14を配設した後、ピンホール14a以外の気密性を確保するため公知の接着剤あるいはパッキンなどの封止手段15で封止するとよい。
【0044】
このようにガスの導入部をピンホール14aのように小径とすることでセンサの内部に干渉ガス等が混入し難くなり、干渉ガスによる影響や、外部の温湿度等による環境変化の影響を受け難くなる。
【0045】
また、筐体10における蓋部材11とは反対側の底面10cに形成した貫通孔である底面貫通孔11bにおいても、ピンホール16aを形成した筒部材16を配設してある。尚、
図4の電気化学式センサXの下面視概略図は、ピンホール16aを形成した筒部材16の態様を認識できるように防塵フィルター92(後述)は示していない。
【0046】
これら筒部材16およびピンホール16aは、筒部材14およびピンホール14aと同様の構成とすることができるが、筒部材16の長寸は2.0mm以上であり、好ましくは2.5〜3.5mmとするのがよい。底面貫通孔11bからは、検知対象となるガス種により、センサ内部の酸素等のガスを排出する場合や、外気からの酸素を供給することができる。また、ピンホール16aの径もピンホール14aと同様に小径にすることで、センサの内部に干渉ガス等が混入し難くなり、干渉ガスによる影響や、外部の温湿度等による環境変化の影響を受け難くなる。
尚、底面貫通孔11bは、検知ガス種に応じてガス排出部、あるいはガス導入部になり得る。
【0047】
この場合も、底面貫通孔11bに筒部材16を配設した後、ピンホール16a以外の気密性を確保するため公知の接着剤90で封止するとよい。
【0048】
対極23およびガス透過膜53の固定については、筐体10の内部に設けた内部部材19を配設して固定してある。この場合、当該内部部材19に対して対極23およびガス透過膜53を熱融着により固定することができる。内部部材19は、接着剤90によって筐体10の底面10cに接着すればよい。本実施形態では内部部材19は例えば樹脂製のドーナツ型の態様とし、内部部材19の中心の開口部19aには筒部材16を挿通させる場合について説明する。
【0049】
蓋部材11におけるガス導入部11aおよび反応極21の間には、結露・圧力緩和膜80を配設してもよい。結露・圧力緩和膜80は、結露を防ぐ膜であり、ガスを透過して液体を透過しない性質を有するものであればどのような膜でもよく、多孔質PTFE膜などを使用することができる。
【0050】
本実施形態の結露・圧力緩和膜80は厚さ0.2mm程度で、その特性は、例えば透気度がガーレー値で200〜700程度、空孔率が35〜45%、WEP(水の侵入圧力)が196kPa以上、好ましくは500kPaとするのがよい。
【0051】
結露・圧力緩和膜80はガス導入部11aおよび反応極21の間に配設だけでなく、さらにガス導入部11aの雰囲気側(反応極21の反対側)にも配設することができる。
また、結露・圧力緩和膜80は、ガス導入部11aに限らず、底面貫通孔11bおよび対極23の間に配設することができる。この場合においては、底面貫通孔11bにおける結露の発生を未然に防止することができる。
【0052】
結露・圧力緩和膜80は、当該膜が設けられたガス導入部11a(ガス導入部11aおよび反応極21の間、ガス導入部11aの雰囲気側)における結露の発生を未然に防止することができる。周囲の環境変化に伴って、例えばガス導入部11aにおいて結露が発生した場合、被検知ガスをセンサの内部に導入できない虞がある。また、当該結露によってガス導入部11aを塞いだ場合、センサ内部の圧力が抜け難くなって指示値のゆらぎが大きくなる虞がある。また、これらが完全に塞がってしまった場合、指示値がゼロになる虞がある。しかし、結露・圧力緩和膜80を備えることで、微細なピンホール14aを有するガス導入部11aにおいて結露が発生し難くなり、被検知ガスをセンサの内部に導入できなくなるのを未然に防止でき、かつ圧力依存を緩和するためセンサ周囲及びセンサ内部の圧力上昇や低下(特に突発的な圧力変動)を緩和することができ、指示値も安定する。
【0053】
ガス導入部11aにおける結露・圧力緩和膜80の雰囲気側には活性炭繊維91を配設し、その外方にはセンサ内部に塵や埃などが侵入するのを防止する防塵フィルター92を配設してもよい。当該防塵フィルター92は、底面貫通孔11bの側にも配設してもよい。
【0054】
本実施形態では、小型化が実現できる電気化学式センサXの構成を説明した。具体的なセンサの部材のサイズは、例えば、反応極21は直径5mm程度、参照極22は直径7mm程度、対極23は直径7〜10mm程度、イオン交換膜70(ナフィオン膜)は直径7mm程度、厚さ50〜180μm程度、第一保水部材41および第三保水部材43は直径10mm程度、第二保水部材42は直径8〜10mm程度とすることができるが、これらのサイズに限定されるものではない。また、本発明の電気化学式センサXは、被検知ガスとして酸素ガスを検知するのに利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0055】
〔別実施の形態1〕
上述した実施形態では、イオン交換膜70を、参照極22および対極23の間に、保水部材40に挟まれた態様の場合について説明した。しかし、このような態様に限定されるものではなく、
図6に示したように、反応極21および参照極22の間に、保水部材40およびイオン交換膜70を配設し、当該イオン交換膜70が参照極22の側となるように配設してもよい。また、当該イオン交換膜70はそれに限定されるものではなく、PET、PEN、PI等のプラスチック製の膜であってもよい。
【0056】
本実施形態では、二枚の保水部材40、即ち、反応極21および参照極22の間に配設した第一保水部材41、参照極22および対極23の間に配設した第二保水部材42、を使用している。これにより、三枚の保水部材40を使用した上述の実施形態より電解液31の量を減少させることができるため、センサ内部の圧力上昇による電解液31の液漏れのリスクを減じることができる。
【0057】
本実施形態においては、参照極22は下向きの状態で配設したが、反応極21および参照極22の間に保水部材41およびイオン交換膜70を配設するときには、保水部材40を二枚にする事ができ、より簡略化された構造となる(
図6)。また、参照極22を上向きに配設してもよく、この場合はイオン交換膜70が保水部材40で挟み込まれる形状となる。この場合、反応極21と参照極22の間の保水部材41が破損した場合のショートを防止することが可能となる。
イオン交換膜70を参照極22の上下どちらかに設置する目的は、ショート防止以外には、参照極22とリード線60の接触を強固にすることが挙げられる。反応極21、対極23は片面が樹脂に融着されているので中間にある参照極22よりもコシがあるため、コシのあるイオン交換膜70を参照極22の上下どちらかに設置することにより圧縮時の接触力を改善することができる。
【0058】
また、電解液31を吸水して保持する保水部材40が押圧力などによって破損した場合であっても、参照極22が上向きの場合、反応極と参照極がショートすることを防止する事が可能となる。
【0059】
尚、本実施形態においては、対極23の直径を10mmとし、結露・圧力緩和膜80を底面貫通孔11bおよび対極23の間となるように構成した場合を示した。また、本実施形態においては、イオン交換膜70は、省略して構成してもよい。
【0060】
〔別実施の形態2〕
図7に示したように、上述した実施形態において内部部材19を設けず、底面貫通孔11bに筒部材16を配設した後、ピンホール16a以外の気密性を確保するため公知の接着剤あるいはパッキンなどの封止手段17で封止してもよい。尚、封止手段17の上面には、両面テープ等の公知の固着部材18を配して対極23を備えたガス透過膜53固定してもよい。
また、
図7では、ガス導入部11aの側における結露・圧力緩和膜80、活性炭繊維91および防塵フィルター92を省略し、底面貫通孔11bの側における防塵フィルター92を省略した態様について示してある。
【実施例】
【0061】
〔実施例1〕
本発明の実施例について説明する。
本発明の電気化学式センサXを
図1のようにして構成した。
即ち、本実施例の電気化学式センサXは、反応極21は直径5mm、参照極22は直径7mm、対極23は直径10mm、イオン交換膜70(ナフィオン膜)は直径7mm、厚さ50μm、第一保水部材41、第二保水部材42および第三保水部材43はそれぞれ直径10mmとした。
【0062】
筐体10および蓋部材11は、通常の手法による超音波融着によって固定した。ガス導入部11aに設けた筒部材14の長寸は2.5mmとし、ピンホール14aの孔径は0.07mmとした。筒部材14の表面にエポキシ系接着剤を塗布することによって、ガス導入部11aに接着した。
【0063】
反応極21は蓋部材11に320℃で熱融着した。その後、反応極21に対してナフィオン溶液を塗布し乾燥器で焼成した。参照極22に対してもナフィオン溶液を塗布し乾燥器で焼成した。
【0064】
対極23およびガス透過膜53の固定については、以下のようにして行った。即ち、ドーナツ型の土台となる樹脂製の内部部材19を配設し、当該内部部材19に対極23およびガス透過膜53を熱融着させた。当該熱融着は、320℃の温度で行った。その後、対極23に対してナフィオン溶液を塗布し乾燥器で焼成した。
【0065】
内部部材19の中心の開口部19aには筒部材16を挿通させた。底面貫通孔11bに設けた筒部材16の長寸は3.5mmとし、ピンホール14aの孔径は0.05mmとした。内部部材19は、エポキシ系接着剤である接着剤90によって筐体10の底面10cに接着した。また、接着剤90を筒部材16の表面に塗布して底面貫通孔11bおよび開口部19aと接着した。
【0066】
三枚の保水部材40には、0.12mLの硫酸(42重量%)の電解液31をそれぞれ保持させた。
【0067】
結露・圧力緩和膜80(多孔質PTFE膜)は、ガス導入部11aおよび反応極21の間、および、ガス導入部11aの雰囲気側(反応極21の反対側)に配設した。さらに結露・圧力緩和膜80はガス導入部11aに限らず、底面貫通孔11bおよび対極23の間に配設した。
【0068】
ガス導入部11aにおける結露・圧力緩和膜80の雰囲気側には活性炭繊維91(クラレケミカル社製)を配設し、その外方にはセンサ内部に塵や埃などが侵入するのを防止する防塵フィルター92(日本バルカー工業社製)を配設した。当該防塵フィルター92は、底面貫通孔11bの側にも配設した。
【0069】
〔実施例2〕
実施例1で作製した電気化学式センサXを使用して、酸素ガスを検知した場合の応答速度を調べた。酸素ガス0vol%の被検知ガスおよび酸素ガス15vol%の被検知ガスを検知した結果を
図8に示した。
【0070】
測定開始後、酸素ガス0vol%の被検知ガスを180秒間検知させ、酸素ガス15vol%の被検知ガスを320〜500秒まで180秒間検知させたところ、それぞれの被検知ガスについて適切な酸素濃度の指示値を示すものと認められた。
【0071】
〔実施例3〕
実施例1で作製した電気化学式センサXを使用して、酸素ガスを検知した場合の直線性を調べた。酸素ガス0,10,15,21,25vol%の被検知ガスをそれぞれ検知した結果を
図9に示した。
【0072】
その結果、酸素濃度を種々変更した場合であっても指示値の直線性は維持されるものと認められた。
〔実施例4〕
実施例1で作製した電気化学式センサXを使用して、酸素ガスを検知した場合の経時安定性を調べた。通電1日後からの指示値の変動を調べた結果を
図10に示した。
【0073】
その結果、通電後120日が経過した後であっても、通電当初からの指示値と同等の指示値を維持したため、経時安定性の優れた電気化学式センサであると認められた。