【解決手段】 ラジカル重合性基を有する親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、酸化チタン(D)を必須成分とし、さらに酸化チタン(D)が一次粒子径が10nm以上100nm以下の酸化チタン(D1)と一次粒子径が100nm以上500nm以下の酸化チタン(D2)を含有することを特徴とするアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物を用いる。
ラジカル重合性有機基を有する親水性樹脂(A)と、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、酸化チタン(D)とを必須成分として含有する感光性樹脂組成物であって、酸化チタン(D)として一次粒子の体積平均粒子径が10nm以上100nm未満の酸化チタン(D1)と一次粒子径が100nm以上500nm以下の酸化チタン(D2)を併用することを特徴とするアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物は、ラジカル重合性有機基を有する親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、および酸化チタン(D)を必須成分として含有する。その際に、一次粒子の体積平均径が10nm以上100nm未満の酸化チタン(D1)と、一次粒子の体積平均径が100nm以上500nm以下の酸化チタン(D2)の粒径が異なる少なくとも2種以上の酸化チタン(D)を併用することを特徴とする。
【0010】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートまたはメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸またはメタクリル酸」を、「(メタ)アクリル樹脂」とは「アクリル樹脂またはメタクリル樹脂」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基またはメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリロイロキシ基」とは「アクリロイロキシ基またはメタクリロイロキシ基」を意味する。
【0011】
また、アルカリ現像可能とは、現像液を用いて未硬化部を除去する工程で、現像液のアルカリ性水溶液で未硬化部分が除去できることを意味する。
【0012】
以下において、本発明の感光性樹脂組成物の必須構成成分である(A)〜(D)について順に説明する。
【0013】
本発明における第1の必須成分であるラジカル重合性基を有する親水性樹脂(A)における親水性の指標はHLBにより規定され、一般にこの数値が大きいほど親水性が高いことを示す。
本発明の親水性樹脂(A)のHLB値は、好ましくは4〜19、さらに好ましくは5〜19、特に好ましくは6〜19である。4以上であればフォトスペーサーの現像を行う際に、現像性がさらに良好であり、19以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好である。
【0014】
ここでの「HLB」とは、親水性と親油性のバランスを示す指標であって、例えば「界面活性剤入門」〔2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著〕212頁に記載されている小田法による計算値として知られているものであり、グリフィン法による計算値ではない。
HLB値は有機化合物の有機性の値と無機性の値との比率から計算することができる。
HLB=10×無機性/有機性
HLBを導き出すための有機性の値及び無機性の値については前記「界面活性剤入門」213頁に記載の表の値を用いて算出できる。
【0015】
また、親水性樹脂(A)の溶解度パラメーター(以下、SP値という。)[(単位は(cal/cm
3)
1/2]は、好ましくは7〜14、さらに好ましくは8〜13、特に好ましくは9〜13である。7以上であるとさらに現像性が良好に発揮でき、14以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好である。
【0016】
なお、本発明におけるSP値は、Fedorsらが提案した下記の文献に記載の方法によって計算されるものである。
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,February,1974,Vol.14,No.2,Robert F. Fedors(147〜154頁)」
【0017】
本発明の親水性樹脂(A)は、分子内にラジカル重合性基を有するが、そのラジカル重合性基としては、光硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびアリル基が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0018】
また、本発明のラジカル重合性基を有する親水性樹脂(A)が分子内に含有する親水性に寄与する官能基は、アルカリ現像性の観点から、カルボキシル基、エポキシ基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、より好ましくはカルボキシル基である。
【0019】
本発明のラジカル重合性基を有する親水性樹脂(A)としては、例えば親水性エポキシ樹脂(A1)、親水性アクリル樹脂(A2)などが挙げられる。
親水性エポキシ樹脂(A1)としては、市販品のエポキシ樹脂にラジカル重合性基を有する化合物を反応させ、さらにカルボキシル基などの親水性の官能基を有する化合物を反応することによって合成することができる。
例えば、分子中にエポキシ基を有するノボラック型のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにフタル酸や無水フタル酸などの多価カルボン酸や多価カルボン酸無水物を反応させて製造する方法が挙げられる。
【0020】
また、親水性アクリル樹脂(A2)は既存の方法により(メタ)アクリル酸誘導体を重合させ、さらにラジカル重合性基を有する化合物を反応することで得ることができる。
【0021】
親水性(メタ)アクリル樹脂(A2)の製造方法としてはラジカル重合が好ましく、溶液重合法が分子量を調節しやすいため好ましい。
【0022】
親水性(メタ)アクリル樹脂(A2)を製造するために使用するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸(a21)、(メタ)アクリル酸エステル(a22)があげられる。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル(a22)としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸メチルである。
【0024】
親水性(メタ)アクリル樹脂(A2)を構成するモノマーとしては、感光性樹脂組成物の弾性回復特性の観点から、芳香環含有ビニル化合物(a23)を、(a21)、(a22)と併用してもよい。このような(a23)としてはスチレンが挙げられる。
【0025】
親水性(メタ)アクリル樹脂(A2)は、さらにフォトスペーサーの弾性回復特性を向上させる目的で必要により(メタ)アクリロイル基を側鎖または末端に導入させることが好ましい。
【0026】
側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、例えば下記の(1)及び(2)の方法が挙げられる。
【0027】
(1)(a21)または(a22)のうちの少なくとも一部にイソシアネート基と反応しうる基(水酸基または1級もしくは2級アミノ基など)を有するモノマーを使用して重合体を製造し、その後(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物[(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネート等]を反応させる方法。
【0028】
(2)(a21)または(a22)のうちの少なくとも一部にエポキシ基と反応しうる官能基(水酸基、カルボキシル基又は1級もしくは2級アミノ基など)を有するモノマーを使用して重合体を製造し、その後(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物(グリシジル(メタ)アクリレート等)を反応させる方法。
【0029】
本発明の親水性樹脂(A)の数平均分子量は、1,000〜100,000であり、好ましくは2,000〜50,000である。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物中の親水性樹脂(A)の含有量は、解像性の観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて、5〜62重量%、好ましくは15〜60重量%である。
【0031】
本発明の第2の必須成分である多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであれば、特に限定されずに用いられる。
このような多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、2官能(メタ)アクリレート(B1)、3官能(メタ)アクリレート(B2)、4〜6官能(メタ)アクリレート(B3)及び7〜10官能(メタ)アクリレート(B4)が挙げられる。
一方、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)を含有しない場合や、(B)ではなく単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いると、解像度が悪化する。
【0032】
2官能(メタ)アクリレート(B1)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えば、グリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1,5−ペンタンジオールのジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−2−エチル−1,3−プロパンジオールのジ(メタ)アクリレート];多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート];OH基含有両末端エポキシアクリレート;多価アルコールと(メタ)アクリル酸とヒドロキシカルボン酸のエステル化物[例えばヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
なお、多価アルコールの水酸基のすべてを(メタ)アクリル酸、アルキレンオキサイド付加物などと反応させる必要はなく、未反応の水酸基が残っていてもよい。
【0033】
3官能(メタ)アクリレート(B2)としては、グリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート;及びトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
4〜6官能(メタ)アクリレート(B3)としては、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
7〜10官能の(メタ)アクリレート化合物(B4)としては例えばジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応により得られる化合物など、ジイソシアネート化合物と水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物との反応により得ることができる。
【0036】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)のうち、硬化性の観点から好ましくは3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーであり、さらに好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトール骨格を有する3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーである。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物中の多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量は、硬化性の観点から(A)〜(D)の合計重量に基づいて5〜62重量%、好ましくは20〜60重量%である。
【0038】
本発明の第3の必須成分である光重合開始剤(C)として、可視光線、紫外線、遠赤外線、荷電粒子線及びX線等の放射線の露光により、重合性不飽和化合物の重合を開始しうるラジカルを発生する成分であればどのようなものでもよい。
【0039】
光重合開始剤(C)としては、α−ヒドロキシアルキルフェノン型(C−1)(例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等);α−アミノアルキルフェノン型(C−2)(例えば、(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等);チオキサントン化合物型(C−3)(例えば、(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等);リン酸エステル型(C−4)(例えば、(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等);アシルオキシム系型(C−5)(例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等);ベンジルジメチルケタール型(C−6)等;ベンゾフェノン型(C−7)(例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルスルフィド等)が挙げられる。
【0040】
光重合開始剤(C)は、硬化性の観点から、そのうち少なくとも1種が400nm以上の波長で吸光度を有するものであることが好ましい。例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン〔イルガキュア369(BASF社製、405nmでの吸光係数:280)〕、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド〔イルガキュア819(BASF社製、405nmでの吸光係数:899)〕、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド〔ルシリンTPO(BASF社製、405nmでの吸光係数:165)〕、1,2−オクタンジオン 1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]〔イルガキュアOXE01(BASF社製、405nmでの吸光係数:102)〕等が挙げられる。
【0041】
これらのうち硬化物の硬化性の観点から好ましいのはリン酸エステル型開始剤であり、さらに好ましいのは2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである。
【0042】
光重合開始剤(C)の使用量は、(A)〜(D)の合計に基づいて硬化性および硬化物の着色の観点から3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物における第4の必須成分である酸化チタン(D)は、反射率を高めるための白色度の観点から必須成分である。
【0044】
酸化チタンはその製法により白色度が異なるので、反射率向上のため白色度の高い酸化チタンの選定が好ましい。酸化チタンの精製途中で混入する重金属、金属酸化物の不純物が白色度に悪影響を及ぼし、なかでもFe,Cr,Cu,Mn,V,Nb等による着色は有害である。そのため、不純物として重金属、金属酸化物の不純物を0.1重量%以下に規制することが好ましい。
【0045】
不純物が0.1重量%以下の酸化チタンは、好ましくは塩素法で作られたルチル型酸化チタンをアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、有機物等で表面処理することにより用意できる。
【0046】
本発明において、酸化チタン(D)は一次粒子の体積平均径が10nm以上100nm未満の酸化チタン(D1)と、一次粒子径が100nm以上500nm以下の酸化チタン(D2)を併用する。酸化チタン(D1)の一次粒子径はさらに30nm以上100nm未満が好ましく、一方、酸化チタン(D2)の一次粒子径はさらに100nm以上400nm以下の併用が好ましい。
【0047】
一次粒子径が10nm以上100nm未満の酸化チタン(D1)だけでは隠蔽性が不足するため白色度が未達であり、一次粒子径が100nm以上500nm以下の酸化チタン(D2)だけで白色度を達成させると黄色度が未達となる。
なお、この一次粒子径は、電子顕微鏡(VE−9800、キーエンス社製)を用いて観察した時の単一粒子径を測定し、画像解析ソフトでその体積平均粒子径を算出する。
【0048】
塩素法酸化チタンとしては、タイピュアーR900及びR920(デュポン製)並びにタイペークCR50、CR58、CR67、PFC−105及びPFC−107(石原産業製)等が挙げられる。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物中の(A)〜(D)の合計重量に基づいて酸化チタン(D1)と(D2)の合計の(D)の含有量は、30〜87重量%、好ましくは35〜85重量%である。
30重量%以上であれば反射率が良好であり、90重量%以下であれば塗工時のハンドリング性が更に良好に発揮できる。
【0050】
また、酸化チタン(D)のうちの(D1)と(D2)の含有比率は、白色度および黄色度の観点から、重量比(D1)/(D2)は1/99〜50/50、好ましくは2/98〜45/55である。
重量比(D1)/(D2)が1/99未満なら黄色度が悪化し、50/50を超えると白色度が悪化する。
【0051】
本発明にかかる感光性樹脂組成物は、必要によりさらにその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、(A)と(B)以外の単官能(メタ)アクリレート(E)、レベリング剤(F)、酸化防止剤(G)、体質顔料(硫酸バリウム及びタイク)、増感剤、重合禁止剤、溶剤、顔料分散剤、増粘剤及びその他の添加剤(例えば、蛍光増白剤、黄変防止剤)が挙げられる。
【0052】
本発明における単官能(メタ)アクリレート(E)としては、密着性の観点から、リン酸基、カルボキシル基、又は水酸基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、更に好ましくはリン酸基を有する(メタ)アクリレートである。
水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、リン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物中の(A)〜(D)の合計重量に基づいて単官能(メタ)アクリレート(E)の含有量は、0〜20重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
【0054】
レベリング剤(F)としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤等が挙げられる。これらのうちで塗布性の観点から、フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤が好ましく、相溶性の観点からオキシアルキル鎖を有する界面活性剤が好ましい。
【0055】
酸化防止剤(G)としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらのうち、光硬化性と酸化防止能の観点から、好ましくはフェノール系酸化防止剤であり、特に好ましくは2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4、6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(イルガノックス1076)、チオジエチエレンビス[3−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(イルガノックス1035)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](イルガノックス245)、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(イルガノックス259)、ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス1010)である。
【0056】
溶剤としては、ケトン溶剤(シクロヘキサノン等)、エーテル溶剤(エーテルエステル溶剤及びエーテルアルコール溶剤を含む)(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びメトキシブチルアセテート等)、エステル溶剤(酢酸ブチル等)、エーテル溶剤(エーテルエステル溶剤及びエーテルアルコール溶剤等)、アルコール溶剤(ケトンアルコール溶剤を含む)(1.3−ブチレングリコール及びジアセトンアルコール等)、エステル溶剤(乳酸エチル等)、ケトン溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0058】
製造例1 [ラジカル重合性有機基を有する親水性エポキシ樹脂(A−1)の製造]
加熱冷却・攪拌装置、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EOCN―102S」(日本化薬(株)製 エポキシ当量200)200部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート245部を仕込み、110℃まで加熱して均一に溶解させた。続いて、アクリル酸76部(1.07モル部)、トリフェニルホスフィン2部及びp−メトキシフェノール0.2部を仕込み、110℃にて10時間反応させた。
反応物にさらにテトラヒドロ無水フタル酸91部(0.60モル部)を仕込み、90℃にて5時間反応させ、その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで親水性樹脂含有量が50重量%となるように希釈して、本発明のアクリロイル基とカルボキシル基を有する親水性樹脂として、カルボキシル基含有クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(A−1)の50%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。SP値は11.3、HLB値は6.4であった。
【0059】
製造例2 [ラジカル重合性有機基を有する親水性アクリル樹脂(A−2)の製造]
加熱冷却・攪拌装置、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート172部を仕込み、90℃まで加熱した。ここにメタクリル酸177部、メタクリル酸メチル13部、スチレン395部、さらにプロピレングリコーツモノメチルエーテルアセテート207部を均一混合した溶液と、ジメチル−2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12部を均一混合した溶液をそれぞれ滴下し、ガラス製コルベン中でラジカル重合を行い、アクリル樹脂を得た。
このアクリル樹脂にさらにグリシジルメタクリレート19部を仕込み、90℃にて5時間反応させ、その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで親水性樹脂含有量が30重量%となるように希釈して、本発明のメタクロイル基を有するアクリル樹脂(A−2)の30%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
この樹脂のSP値は10.5、HLB値は5.8であった。
【0060】
比較製造例1 [ラジカル重合性有機基を有さない親水性アクリル樹脂(A’−1)の製造]
加熱冷却・攪拌装置、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート172部を仕込み、90℃まで加熱した。ここにメタクリル酸177部、メタクリル酸メチル13部、スチレン395部、さらにプロピレングリコーツモノメチルエーテルアセテート207部を均一混合した溶液と、ジメチル−2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5部とプロピレングリコーツモノメチルエーテルアセテート12部を均一混合した溶液をそれぞれ滴下し、ガラス製コルベン中でラジカル重合を行った。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで親水性樹脂含有量が30重量%となるように希釈して、比較例に用いるラジカル重合性基を有さないアクリル樹脂(A’−1)の30%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
この樹脂のSP値は11.0、HLB値は6.1であった。
【0061】
製造例3 [体積平均粒子径が40nmの酸化チタン(D1−1)の分散液の製造]
攪拌装置を備えたSUS製フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500部、分散剤としてリン酸ポリエステル(商品名:DISPERBYK−111、ビックケミージャパン(株)製)80部を仕込み均一化した。ここに、一次粒子径が40nmの酸化チタン(商品名:TTO−55、カタログ記載値による一次粒子の体積平均粒子径40nm、石原産業(株)製)420部を仕込み攪拌し、分散させた。
この分散させた液を250mLのポリ容器に移し、さらにここに粒径0.5mmのジルコニアビーズを仕込み、ペイントシェーカーで1時間分散させた。
分散終了後、300メッシュでのろ過にてジルコニアビーズを除去し、酸化チタン(D−1)の50%分散液を得た。
【0062】
製造例4 [体積平均粒子径が250nmの酸化チタン(D2−1)の分散液の製造]
製造例4の酸化チタンを一次粒子径250nmの酸化チタン(商品名:CR−57、一次粒子の体積平均粒子径250nmm、石原産業(株)製)に、分散剤としてリン酸ポリエステル(商品名:ソルスパーズ36000、ルーブリゾール社製)に、変更した以外は製造例3と同様の方法で、酸化チタン(D−2)の50%分散液を得た。
【0063】
製造例5[体積平均粒子径が280nmの酸化チタン(D2−2)の分散液の製造]
製造例4の酸化チタンを一次粒子径が280nmの酸化チタン(商品名:PFC−105、一次粒子径280nmm、石原産業(株)製)に、変更した以外は製造例3と同様の方法で、酸化チタン(D−3)の50%分散液を得た。
【0064】
実施例1
表1の配合部数(重量部)に従い、ガラス製の容器に製造例1で製造した親水性エポキシ樹脂(A−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50%溶液、(B−1)、イルガキュア819(C−1)、製造例3で製造した酸化チタン(D1−1)分散液、製造例4で製造した酸化チタン(D2−2)分散液、ライトアクリレートP−1A(E−1)、レベリング剤としてのポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン「KF−352A」(F−1)、酸化防止剤としてのイルガノックス1010(G−1)を仕込み、25℃で2時間攪拌し、さらに追加の溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を添加して、30分攪拌し、実施例1の感光性樹脂組成物を得た。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例2〜6および比較例1〜6
実施例1と同様の操作で、表1の配合部数で、実施例2〜6、および比較例1〜6の感光性樹脂組成物を得た。
【0067】
なお、表1中の略称の化学品の詳細は以下の通りである。
(B−1):「ネオマーDA−600」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:三洋化成工業(株)社製;官能基数が6個)
(B−2):「ネオマーEA−300」(ペンタエリスリトールテトラアクリレート:三洋化成工業(株)社製;官能基数が4個)
(B‘−1):「ライトアクリレートPO−A」(フェノキシエチルアクリレート:共栄社化学(株)社製;官能基数が1個)
(C−1):「イルガキュア819」(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド:BASF(株)社製))
(C−2):「イルガキュア907」(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン:BASF(株)社製)
(C−3):「ルシリンTPO」((2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニルフォスフィンオキサイド:BASF(株)社製))
(E−1):「ライトアクリレートP−1A」(2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート:共栄社化学(株)社製)
(E−2):「KBM−5103」(アクリル変性アルコキシシラン:信越化学(株)社製)
(F−1):ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(「KF−352A」:信越化学(株)社製)
(F−2):ポリエーテル変性フッ素化合物(「メガファックTF−2066」:DIC(株)社製)
(G−1):ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ―t―ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「イルガノックス1010」:BASFジャパン(株)社製)
【0068】
以下に、硬化物の白色度、黄色度、密着性および解像性の性能評価の方法を説明する。
【0069】
<白色度と黄色度の評価>
[白色度および黄色度測定用の基板の作成]
10cm×10cm四方のガラス基板上にスピンコーターにより塗布し、乾燥膜厚20μmの塗膜を形成した。この塗膜を減圧下で完全に乾燥した後、ホットプレート上で80℃、3分間加熱した。
得られた塗膜に対し、超高圧水銀灯の光を100mJ/cm
2照射した(i線換算で照度22mW/cm
2)し、さらに230℃、30分間加熱して、白色度および黄色度測定用の基板を作成した。
【0070】
上記の硬化物をJIS Z 8722に準拠した物体色の測定に使用される分光測色計(コニカミノルタ社製「CM3700d」、光源Cを使用)を用い、白色度(L*)と黄色度(b*)を測定した。
タッチパネルのベゼル部分に使用するには、この評価条件における白色度は一般には90以上、黄色度は0以下が必要とされる。
【0071】
<密着性の評価>
白色度を測定した硬化物をJIS K 5600−5−6に準拠し、100個(10個×10個)のマスができるよう1mm幅にカッターナイフで切込みを入れ、樹脂密着性を測定する。
測定結果は「試験後に基材フィルム上に残ったマス目/100」で表す。
この評価条件では、一般に100/100が必要とされる。
【0072】
[解像性確認硬化パターンの作製]
10cm×10cm四方のガラス基板上にスピンコーターにより塗布し、乾燥し、乾燥膜厚5μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で80℃、3分間加熱して溶媒をは完全に揮散させた。
得られた乾燥塗膜に対し、長さが約2cmで幅が50μmの開口部を100μmおきに有する複数のライン形成用のマスクを通して超高圧水銀灯の光を100mJ/cm
2照射した(i線換算で照度22mW/cm
2)。
なお、マスクと基板の間隔(露光ギャップ)は100μmで露光した。
その後0.05%KOH水溶液を用いてアルカリ現像した。水洗したのち、230℃で30分間ポストベークを行い、ガラス基板上に2cm×50μmの長方形のパターンを100μmおきに100本形成した。
なお、マスク開口径を調整することにより所望の幅を有する長方形のパターンを形成することができる。
【0073】
<解像性の評価>
タッチパネルの狭額縁化が進んでいることから、高精細なパターンを形成することができる、すなわち解像度として、50μmあるいはそれ以下のサイズでのパターニングが要求されるようになってきた。
すなわち解像度が高いパターンほど、マスクの開口径が小さくなっても、マスクの開口径と同じ大きさのパターンを形成できる性能に優れる。
そこで解像度は、マスクの開口径を50μmに設定し、上記の方法によりパターンを形成したときのパターンの幅を測定することで評価した。
下底径が小さいほど解像度が高い。この評価方法と条件においては、一般には80μm以下が好ましいとされる。
【0074】
本発明の実施例1〜6の感光性樹脂組成物は、表1に示す通り、白色度、黄色度、密着性および解像度のすべての点で優れている。
その一方で、本発明のラジカル重合性基を有する親水性樹脂(A)を使用しない比較例1では密着性と解像性を満足しない。また、多官能アクリレート(B)を使用しない比較例2および多官能アクリレート(B)の代わりに単官能アクリレートを使用する比較例3では解像性を満足しない。さらに、一次粒子径が10nm以上100nm以下の酸化チタン(D1)を使用しない比較例4および5では白色度と黄色度が悪化し、一次粒子径が100nm以上500nm以下の酸化チタン(D2)を使用しない比較例6では白色度が悪化する