【課題】自鳴式盗難防止タグが窃盗行為事象の発生時に警報を発する異常状態に至ると、この異常状態を電磁波ノイズに阻害されることなく、離れた位置において確実に検出することができ、かつ隣合う店舗において同じ自鳴式盗難防止タグを使用できる音認識盗難防止システムを提供する。
【解決手段】複数の盗難警戒領域A、B、Cのそれぞれに、盗難警戒対象物に装着されてアラーム音を発報する複数の自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cと、自鳴式盗難防止タグが発報するアラーム音を識別する警報音識別部301、302を配置し、自鳴式盗難防止タグは、各盗難警戒領域ごとに異なる音特徴を有する特定アラーム音を発報する警報音発報部110を有し、各警報音識別部は、対応する盗難警戒領域に配置した自鳴式盗難防止タグが発報する特定アラーム音のみを認識し、この特定アラーム音を認識したときに対応する盗難警戒領域において窃盗行為事象が発生したことを検知する。
複数の盗難警戒領域のそれぞれに、盗難警戒対象物に装着されてアラーム音を発報する複数の自鳴式盗難防止タグと、自鳴式盗難防止タグが発報するアラーム音を識別する警報音識別部を配置し、
自鳴式盗難防止タグは、各盗難警戒領域ごとに異なる音特徴の特定アラーム音を発報する警報音発報部を有し、
各警報音識別部は、対応する盗難警戒領域に配置した自鳴式盗難防止タグが発報する特定アラーム音のみを認識し、この特定アラーム音を認識したときに対応する盗難警戒領域において窃盗行為事象が発生したことを検知することを特徴とする音認識盗難防止システム。
各自鳴式盗難防止タグは、各盗難警戒領域ごとに異なるタグ識別コードを有し、警報音発報部が発報する特定アラーム音がタグ識別コードごとに異なる音特徴を有することを特徴とする請求項1に記載の音認識盗難防止システム。
各自鳴式盗難防止タグは、タグ識別コードを変更可能に格納するタグ識別コード格納部を有し、警報音発報部がタグ識別コード格納部に格納したタグ識別コードに応じて当該タグ識別コード毎に固有のアラーム音を発報することを特徴とする請求項2に記載の音認識盗難防止システム。
各盗難警戒領域のそれぞれに各警報音識別部に連動する監視カメラ装置を有し、監視カメラ装置は警報音識別部が窃盗行為事象の発生を検知したときに、対応する盗難警戒領域を撮影することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の音認識盗難防止システム。
各自鳴式盗難防止タグは、窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部を有し、警報音発報部が特定アラーム音として第一アラーム音と第二アラーム音を発報し、タグ制御部は、異常事態検知スイッチ部が作動した時に警報音発報部に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部がトリガー信号を検知した時に警報音発報部に第二アラーム音を発報させ、
警報音識別部は、自鳴式盗難防止タグが発報する第一アラーム音を識別する第一警報音識別装置と、自鳴式盗難防止タグが発報する第二アラーム音を識別する第二警報音識別装置を備え、自鳴式盗難防止タグが発報する第一アラーム音を認識して盗難警戒領域内で窃盗行為事象が発生したことを検知し、自鳴式盗難防止タグが発報する第二アラーム音を認識して盗難警戒領域の出入口付近で窃盗行為事象が発生したことを検知することを特徴とする請求項5に記載の音認識盗難防止システム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例1)
図5に示すように、本実施例の音認識盗難防止システムは、通路Sに沿って複数の店舗を隣合わせ、もしくは近接して配置する商業施設等において実施されるものであり、複数の店舗のそれぞれを独立した盗難警戒領域A、B、Cとしている。
【0026】
複数の盗難警戒領域A、B、Cのそれぞれには、盗難警戒対象物に装着して配置する複数の自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cと、各盗難警戒領域A、B、Cのそれぞれの出入口付近においてトリガー信号を送信するトリガー信号送信部200A、200B、200Cと、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cを識別する第一警報音識別装置301A、301B、301Cと、盗難警戒領域の出入口付近に配置し、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cを識別する第二警報音識別装置302A、302B、302Cと、各第二警報音識別部302A、302B、302Cに連動する監視カメラ装置400A、400B、400Cを設けている。
【0027】
トリガー信号送信部200A、200B、200Cは、
図3に示すように、電源部201、アンテナ送信信号発生部202、アンテナ同調・パワーアンプ部203、送信アンテナ(アンテナ巻線)204を有している。
図2に示すように、トリガー信号送信部200A、200B、200Cと第二警報音識別装置302A、302B、302Cは一体に組み合わせた装置としても良い。トリガー信号送信部200A、200B、200Cが送信するトリガー信号は、全ての盗難警戒領域A、B、Cに共通の信号であっても良く、それぞれの盗難警戒領域A、B、Cに固有の信号であっても良く、後述するタグ識別信号を含むものであっても良い。
【0028】
第一警報音識別装置301A、301B、301Cは、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cを認識して盗難警戒領域A、B、Cの内方域で窃盗行為事象が発生したことを検知し、第二警報音識別装置302A、302B、302Cは、自鳴式盗難防止タグ100A、B、Cが発報する第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cを認識して盗難警戒領域A、B、Cの出入口付近で窃盗行為事象が発生したことを検知する。
【0029】
各第二警報音識別部302A、302B、302Cは、対応する盗難警戒領域A、B、Cに配置した自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する特定アラーム音のみを認識し、監視カメラ装置400A、400B、400Cは警報音識別部A、B、Cが窃盗行為事象の発生を通知する第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cを検知したときに、対応する盗難警戒領域A、B、Cの出入口付近を撮影する。
【0030】
図5において、第一警報音識別装置301A、301B、301Cは、それぞれASD1A、ASD1B、ASD1Cの符号を付して表示する。第二警報音識別装置302A、302B、302Cは、トリガー信号送信部200A、200B、200Cと一体の装置として出入口付近に配置する構成を、それぞれASD21A、ASD21B、ASD21Cの符号を付して表示する。また、第二警報音識別装置302A、302B、302Cは、トリガー信号送信部200A、200B、200Cとは別体の装置として出入口付近に配置する構成を、それぞれASD22A、ASD22B、ASD22Cの符号を付して表示する。実際においては、第二警報音識別装置302A、302B、302Cは、ASD21A、ASD21B、ASD21CもしくはASD22A、ASD22B、ASD22Cの一方を配置するが、ここでは便宜的に二つの構成を併記している。
【0031】
第一警報音識別装置301A、301B、301Cおよび第二警報音識別装置302A、302B、302Cは、同じ構成を有し、
図4に示すように、マイク310、音特徴解析部320、音特徴記憶部330、音特徴比較部340、アラーム部350、アラームブザー360、有線アラーム信号送信部370、無線アラーム信号送信部371(無線アンテナ372)を備えている。有線アラーム信号送信部370、無線アラーム信号送信部371は何れか一方でよい。
【0032】
マイク310は、盗難防止タグ100等から発報される警報音を取り込むものであり、ここでは微弱なマイクロホン信号を増幅する機能を含むとともに、警報音の周波数成分を主として通過させるフィルタ機能を含んでいる。
【0033】
音特徴解析部320は、マイク310から取り込んだ音、すなわち取得音の音特徴を解析するものである。この音特徴解析部320の解析手法は以下のものである。すなわち、マイク310から取り込んだ音を周波数分析し、第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cもしくは第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cが含む特定の周波数の周波数成分、例えば振幅成分を警報音周波数成分W(t)として求める。この警報音周波数成分の時間変化波形において、特定周期における時間変化波形を時間変化パターンとして求める。
【0034】
盗難警戒領域Aでは、第一警報音識別装置301Aの音特徴記憶部330が第一アラーム音Am1Aの音特徴である第一アラーム音時間変化パターンを記憶しており、第二警報音識別装置302Aの音特徴記憶部330が第二アラーム音Am2Aの音特徴である第二アラーム音時間変化パターンを記憶している。
【0035】
盗難警戒領域Bでは、第一警報音識別装置301Bの音特徴記憶部330が第一アラーム音Am1Bの音特徴である第一アラーム音時間変化パターンを記憶しており、第二警報音識別装置302Bの音特徴記憶部330が第二アラーム音Am2Bの音特徴である第二アラーム音時間変化パターンを記憶している。
【0036】
盗難警戒領域Cでは、第一警報音識別装置301Cの音特徴記憶部330が第一アラーム音Am1Cの音特徴である第一アラーム音時間変化パターンを記憶しており、第二警報音識別装置302Cの音特徴記憶部330が第二アラーム音Am2Cの音特徴である第二アラーム音時間変化パターンを記憶している。
【0037】
第一警報音識別装置301A、301B、301Cは、それぞれの音特徴解析部320で解析した音の音特徴、すなわちマイク310で取り込んだ取得音の音特徴である時間変化パターンと、それぞれの音特徴記憶部330に記憶した第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cの音特徴である第一アラーム音時間変化パターンとを比較し、音特徴が一致する場合に取得音が登録(記憶)された警報音であると判断し、アラーム部350に通知する。
【0038】
第二警報音識別装置302A(302B、301C)は、それぞれの音特徴解析部320で解析した音の音特徴、すなわちマイク310で取り込んだ取得音の音特徴である時間変化パターンと、音特徴記憶部330に記憶した第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)の音特徴である第二アラーム音時間変化パターンと比較し、音特徴が一致する場合に取得音が登録(記憶)された警報音であると判断し、アラーム部350に通知する。第二警報音識別装置302A(302B、301C)は、アラーム部350に通知するとともに、監視カメラ装置400A(400B、400C)を操作して盗難警戒領域A(B、C)の出入口部を撮影する。
【0039】
音特徴解析部320および音特徴記憶部330は
図7に示す構成とすることも可能である。音特徴解析部320は、警報音周波数分析処理部320Aと類似性検知処理部320Bを備えている。警報音周波数分析処理部320Aは、マイク310から取り込んだ音を解析対象音を周波数分析する。そして、解析対象音に含まれた特定の周波数の周波数成分、つまり第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cもしくは第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cが有する特定の周波数の周波数成分、例えば振幅成分を警報音周波数成分W(t)として求める。
【0040】
類似性検知処理部320Bは、警報音周波数分析処理部320Aの出力波形に表れる警報音周波数成分W(t)の時間変化波形を捉え、その時間変化波形の特定周期における警報音周波数成分W(t)の時間変化波形を時間変化パターンとして求める。そして、この特定周期における時間変化パターンと特定周期以前の周期における時間変化パターンとの自己相関性を計算し、解析対象音の類似性評価指数である検出係数Erを算出する。
【0041】
音特徴記憶部330は、目標音の警報音基本周波数と、目標音の警報音特定周期と、目標音の基準検出係数ERを記憶している。目標音の警報音基本周波数は、第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)もしくは第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)の周波数であり、この警報音基本周波数を警報音周波数分析処理部320Aの分析処理における特定の周波数として使用する。
【0042】
目標音の警報音特定周期は、第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)もしくは第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)の周期であり、この警報音特定周期を類似性検知処理部320Bの類似性検知処理における特定周期として使用する。
【0043】
目標音の警報音基準検出係数ERは、警報音周波数分析処理部320Aにおける手法に準じて、第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)もしくは第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)の警報音周波数成分W(t)を求め、さらに類似性検知処理部320Bにおける手法に準じて求めた自己相関性を示す類似性評価指数である。
【0044】
音特徴比較部340では、音特徴解析部320で求めた解析対象音の類似性評価指数である検出係数Erと、音特徴記憶部330に記憶した目標音の警報音基準検出係数ERとを比較し、その一致度からマイク310から取り込んだ音に警報音が含まれるか、否かを検知する。
【0045】
アラーム部350は、音特徴比較部340からの通知を受けてアラームブザー360を駆動して第一アラーム音や第二アラーム音とは異なる音特徴で大きな音量の別途の警報音を発報し、さらに有線アラーム信号送信部370や無線アラーム信号送信部371(無線アンテナ372)を通して警備室等に配置したセキュリティシステム管理装置に情報を有線もしくは無線で配信する。
【0046】
以下に、アラーム音について説明する。自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cは、各盗難警戒領域A、B、Cごとに異なるタグ識別コードIDA、IDB、IDCを有し、タグ識別コードIDA、IDB、IDCごとに関連付けられた異なる音特徴の特定アラーム音が設定されている。
【0047】
すなわち、自鳴式盗難防止100Aは、タグ識別コードIDAに関連付けられた第一アラーム音Am1Aと第二アラーム音Am2Aの何れか発報し、自鳴式盗難防止100Bはタグ識別コードIDBに関連付けられた第一アラーム音Am1Bと第二アラーム音Am2Bの何れかを発報し、自鳴式盗難防止100Cはタグ識別コードIDCに関連付けられた第一アラーム音Am1Cと第二アラーム音Am2Cの何れかを発報する。
【0048】
本実施例は、複数の店舗のそれぞれを独立した盗難警戒領域A、B、Cとして説明するが、本発明は一つの店舗において個々に仕切られた複数の売場、例えばおもちゃ売り場、パソコン関連売場等を設ける場合に、売場毎に異なるタグ識別コードを設定することでも適用可能である。また、タグ識別コードIDA、IDB、IDCは、後述するリセット信号の店舗毎あるいは売場毎の識別情報として使用することも可能である。
【0049】
本実施例において、アラーム音は、数kHzの音が1秒に数回、間欠的に発報するタイプである。また、アラーム音は間欠的に発砲するだけでなく、例えば2kHzから4kHzまでスイープする音であっても良い。
【0050】
このアラーム音は、後述する警報音発報部がタグ識別コード格納部に格納したタグ識別コードに応じて当該タグ識別コードに固有の特定アラーム音として発報する。
具体的には、
図6に示すように、第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cおよび第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cは、キャリア周波数F、鳴動期間T1、鳴動間隔T2、タグ識別コードIDA、IDB、IDCとして次式で定義される。ここでは3つのタグ識別コードIDA、IDB、IDCに対してそれぞれ0、1、2の値を割り当て、キャリア周波数Fの周波数増幅割合50Hz、鳴動時間T1の増幅時間5msとする。タグ識別コードの数に制限はないが、実際には店舗の間口の大きさとアラーム音の到達距離から定まり、8個程度で十分に識別機能を発揮できる。
【0051】
第一アラーム音Am1A
F=F(IDA)=3.1kHz+50Hz×0=3.1kHz
T1=T1(IDA)=70ms+5ms×0=70ms
T2=T2(IDA)=180ms+5ms×0=180ms
すなわち、周波数3.1kHzの音が70msの期間継続し、その後110msの期間鳴り止み、180msの間隔で間欠的に発報する音特徴を有している。
【0052】
第一アラーム音Am1B
F=F(IDB)=3.1kHz+50Hz×1=3.15kHz
T1=T1(IDB)=70ms+5ms×1=75ms
T2=T2(IDB)=180ms+5ms×1=185ms
すなわち、周波数3.15kHzの音が75msの期間継続し、その後110msの期間鳴り止み、185msの間隔で間欠的に発報する音特徴を有している。
【0053】
第一アラーム音Am1C
F=F(IDC)=3.1kHz+50Hz×2=3.2kHz
T1=T1(IDC)=70ms+5ms×2=80ms
T2=T2(IDC)=180ms+5ms×2=190ms
すなわち、周波数3.2kHzの音が80msの期間継続し、その後110msの期間鳴り止み、190msの間隔で間欠的に発報する音特徴を有している。
【0054】
第二アラーム音Am2A
F=F(IDA)=3.6kHz+50Hz×0=3.6kHz
T1=T1(IDA)=50ms+5ms×0=50ms
T2=T2(IDA)=150ms+5ms×0=150ms
すなわち、周波数3.6kHzの音が50msの期間継続し、その後100msの期間鳴り止み、150msの間隔で間欠的に発報する音特徴を有している。
【0055】
第二アラーム音Am2B
F=F(IDB)=3.6kHz+50Hz×1=3.65kHz
T1=T1(IDB)=50ms+5ms×1=55ms
T2=T2(IDB)=150ms+5ms×1=155ms
すなわち、周波数3.65kHzの音が55msの期間継続し、その後100msの期間鳴り止み、155msの間隔で間欠的に発報する音特徴を有している。
【0056】
第二アラーム音Am2C
F=F(IDC)=3.6kHz+50Hz×2=3.7kHz
T1=T1(IDC)=50ms+5ms×2=60ms
T2=T2(IDC)=150ms+5ms×2=160ms
すなわち、周波数3.7kHzの音が60msの期間継続し、その後100msの期間鳴り止み、160msの間隔で間欠的に発報する音特徴を有している。
【0057】
本実施例では、自鳴式盗難防止タグ100が特定アラーム音として音特徴の異なる二つの音を発報するが、音特徴が異なる2つ以上の音であってもよい。
このように、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する特定アラーム音である第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cおよび第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cが各盗難警戒領域A、B、Cごとに異なる音であり、各警報音識別部301A、301B、301C、302A、302B、302Cは、対応する盗難警戒領域A、B、Cに配置した自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する特定アラーム音のみを認識するので、他の盗難警戒領域A、B、Cにある自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cの発報に因って誤作動することを確実に防止できる。
【0058】
各自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cは、警報音発報部が発報する特定アラーム音がタグ識別コードごとに異なる音特徴を有するので、複数の店舗が隣合わせに並んでいる商業施設において、少なくとも隣合う店舗にはタグ識別コードが異なり、異なる音特徴をもつ自鳴式盗難防止タグを配置することで、隣合う店舗で同じ盗難防止システムを使用しても誤作動することを防止できる。
【0059】
さらに、一般的なタグでは発報させないと特定アラーム音の音特徴を確認できないが、タグ識別コードIDA、IDB、IDCと第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cおよび第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cとの関係を一意的に定めることで、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cを発報させずともタグ識別コードIDA、IDB、IDCを確認するだけで特定アラーム音の違いを識別することができる。
【0060】
また、後述する警報音発報部110がタグ識別コード格納部151に格納したタグ識別コードIDA、IDB、IDCに応じて当該タグ識別コードIDA、IDB、IDCに固有のアラーム音を発報するので、特定アラーム音の変更は、タグ識別コードIDA、IDB、IDCの変更によって容易に行える。
【0061】
図1に示すように、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cは、警報発報部110と窃盗行為事象検知部120と感度調整部130とタグ制御部140およびバッテリVBを備えている。警報発報部110は、警報音として第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cおよび第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cを発報可能なブザー111と、ブザー111を駆動するためのブザー駆動回路112を有している。窃盗行為事象検知部120は、窃盗行為に起因して電気回路が開閉する異常事態検知スイッチ部121を有している。
【0062】
図1においては異常事態検知スイッチ部121を例示する構成として便宜的に二つのものを同時に開示しているが、本来は何れか一方である。その一つは自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cと対象物との間に掛け渡されたワイヤスイッチ122であり、窃盗行為によってワイヤスイッチ122の切断や引抜が生じると、正常状態において閉じられていた回路が開いて異常を示す信号が送信される。他の一つは、押圧スイッチ123であり、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが対象物に装着された正常状態で回路が閉じた状態となり、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが対象物から取り外された異常状態で回路が開いた状態となって異常を示す信号が送信される。
【0063】
窃盗行為事象検知部120は、トリガー信号送信部200A、200B、200Cから送信されたトリガー信号を検知するトリガー信号受信部124を有しており、トリガー信号受信部124は管理者が操作するリモコン125から送信するリモコン制御信号もしくはトリガー信号送信部200A、200B、200Cから送信するトリガー信号を受信するタグ受信アンテナ(共振回路)126と、タグ受信アンテナ126がトリガー信号を受信したことを示す信号を送信するコンパレータ127を備えている。
【0064】
なお、リモコン125は自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cを警戒状態にするセット信号および発報した警報音を停止させるリセット信号を自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cに送信する。このリセット信号にタグ識別コードを含ませることで、セキュリティーの向上を図ることも可能である。
【0065】
感度調整部130は、コンパレータ127へ入力する比較しきい値電圧(スレショルド電圧)を変更して窃盗行為事象検知部120の感度を設定するものであり、感度設定部131と後述する感度記憶部144と感度出力部145で構成される。感度設定部131は、抵抗値の異なる複数の抵抗R4、R3、R2を有しており、タグ制御部140を構成するCPUの複数の出力ポートP0、P1、P2の出力を組み合わせることでコンパレータ127の比較しきい値電圧(スレショルド電圧)を設定する。
【0066】
例示1 高感度
出力ポートP0をロジック出力Loとし、P1、P2をロジック出力Hiとすると、抵抗R3(2M)、R2(4M)を通ってコンパレータ127へ最も低い値の比較しきい値電圧(スレショルド電圧)が入力されてコンパレータ127の感度が上がり、窃盗行為事象検知部120が高感度となる。
【0067】
例示2 中感度
出力ポートP0をロジック出力Hiとし、P1、P2をロジック出力Loとすると、抵抗R4(33k)を通ってコンパレータ127へ中間値の比較しきい値電圧(スレショルド電圧)が入力されてコンパレータ127の感度が中程度となり、窃盗行為事象検知部120が中感度となる。
【0068】
例示3 低感度
出力ポートP0、P1、P2をロジック出力Hiとすると、抵抗R4(33k)、抵抗R3(2M)、R2(4M)を通ってコンパレータ127へ最も高い値の比較しきい値電圧(スレショルド電圧)が入力されてコンパレータ127の感度が低下して、窃盗行為事象検知部120が低感度となる。
【0069】
タグ制御部140は、警報発報部110を制御して、異常事態検知スイッチ部121が作動した時に第一アラーム音を発報させ、トリガー信号受信部127がトリガー信号を検知した時に第二アラーム音を発報させるものであり、信号処理部141、アラーム制御部142、コンパレータ電源制御部143、感度記憶部144、感度出力部145を有している。
【0070】
信号処理部141は、窃盗行為事象検知部120の異常事態検知スイッチ部121とトリガー信号受信部124の何れから入力信号を受けたかを認識し、第一アラーム音の発報か第二アラーム音の発報かを判断する。
【0071】
アラーム制御部142は、信号処理部141の指示を受けてタグ識別コード格納部151に格納した上述のタグ識別コードに応じて当該タグ識別コードに固有のアラーム音を発報する特定アラーム音駆動信号をブザー駆動回路112へ出力するものであり、ここでは第一アラーム音を発するための第一アラーム駆動信号か第二アラーム音を発するための第二アラーム駆動信号の何れかをブザー駆動回路112へ出力する。自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cは、タグ識別コード格納部151に各盗難警戒領域A、BCごとに異なるタグ識別コードを変更可能に格納しており、タグ識別コード格納部151に格納したタグ識別コードに応じて当該タグ識別コードに固有のアラーム音を発報するので、特定アラーム音の変更は、タグ識別コードの変更によって容易に行える。また、この特定アラーム音は、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cを発報させずともタグ識別コードを確認することで特定アラーム音の違いを識別することができる。
【0072】
コンパレータ電源制御部143はコンパレータ127に電源を入力するとともに、バイアス回路128を介してコンパレータ127へバイアス電圧を印加するものであり、コンパレータ127への供給電源をオン/オフ制御して自鳴式盗難防止タグ100の消費電流の抑制を実現する。
【0073】
感度記憶部144は、信号処理部141から指示された感度の状態を記憶し、出力ポートP0、P1、P2の組み合わせを感度出力部145に指示する。感度出力部145は出力ポートP0、P1、P2のロジック出力Hi/Loを制御し、出力ポートP0、P1、P2の組み合わせを制御する。
【0074】
以下、上記構成の作用を説明する。ここでは盗難警戒領域Aを例に説明するが、他の盗難警戒領域B、Cにおいても同様である。
窃盗行為により商品から盗難防止タグ100A(100B、100C)が取り外される事象が発生すると、窃盗行為事象検知部120の異常事態検知スイッチ部121が作動し、異常を示す信号が信号処理部141に送信される。
【0075】
あるいは、窃盗行為により商品が盗難防止タグ100A(100B、100C)を装着したままの状態で室外へ運び出される事象が発生すると、窃盗行為事象検知部120は、出入口付近に配置したトリガー信号送信部200A(200B、200C)の送信アンテナ204から送信されるトリガー信号をトリガー信号受信部124のタグ受信アンテナ(共振回路)126で受信し、タグ受信アンテナ126がトリガー信号を受信したことをコンパレータ127が信号処理部141に送信する。
【0076】
信号処理部141は、窃盗行為事象検知部120の異常事態検知スイッチ部121とトリガー信号受信部124の何れから入力信号を受けたかを認識し、第一アラーム音の発報か第二アラーム音の発報かを判断する。
【0077】
アラーム制御部142は、信号処理部141の指示を受けて警報音発報部へ第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)を発するための第一アラーム駆動信号か、第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)を発するための第二アラーム駆動信号の何れかをブザー駆動回路112へ出力する。ブザー111が第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)もしくは第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)を発報し、窃盗行為事象が発生したことを周囲の人に通知する。
【0078】
このように、自鳴式盗難防止タグ100A(100B、100C)が警報音として異なる音特徴の第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)と第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)を発報することで、第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)が発報したときには窃盗行為事象の発生場所が盗難警戒領域A(B、C)の内方域であると判断でき、第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)が発報したときには窃盗行為事象の発生場所が盗難警戒領域A(B、C)の出入口付近であると判断でき、発報後の警備担当者の速やかな行動を促進することができる。
【0079】
第一警報音識別装置301A(301B、301C)は、自鳴式盗難防止タグ100A(100B、100C)が第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)を発報すると、この第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)を認識する。
【0080】
すなわち、第一警報音識別装置301A(301B、301C)は、マイク310から取り込んだ取得音の特徴を音特徴解析部320で解析し、音特徴記憶部330に記憶した第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)の音特徴と取得音の音特徴とを音特徴比較部340で比較し、音特徴が一致する場合に取得音が第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)であると判断する。
【0081】
そして、アラーム部350のアラームブザー360が、第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)や第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)および第二警報音識別装置302A(302B、302C)のアラーム音とは異なる別途のアラーム音を発報する。あるいは有線アラーム信号送信部370が有線で他の警報装置を作動させ、あるいは無線アラーム信号送信部371(無線アンテナ372)が無線信号により他の警報装置を作動させ、盗難警戒領域A(B、C)の内方域で窃盗行為事象が発生したことを管理者に通知する。
【0082】
第二警報音識別装置302A(302B、302C)は、自鳴式盗難防止タグ100(100B、100C)が第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)を発報すると、この第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)を認識する。
【0083】
すなわち、第二警報音識別装置302A(302B、302C)は、マイク310から取り込んだ取得音の特徴を音特徴解析部320で解析し、音特徴記憶部330に記憶した第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)の音特徴と取得音の音特徴とを音特徴比較部340で比較し、音特徴が一致する場合に取得音が第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)であると判断する。
【0084】
そして、アラーム部350のアラームブザー360が、第一アラーム音Am1A(Am1B、Am1C)や第二アラーム音Am2A(Am2B、Am2C)および第一警報音識別装置301A(301B、301C)のアラーム音とは異なる別途のアラーム音を発報し、監視カメラ装置400A(400B、400C)を操作して盗難警戒領域A(B、C)の出入口部を撮影する。あるいは有線アラーム信号送信部370が有線で他の警報装置を作動させ、あるいは無線アラーム信号送信部371(無線アンテナ372)が無線信号により他の警報装置を作動させ、盗難警戒領域Aの出入口付近で窃盗行為事象が発生したことを管理者に通知する。
【0085】
このように、本実施例においては、警報音の第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cと第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cとでその音特徴が異なることで、自鳴式盗難防止タグ100が発報する警報音で窃盗行為事象の発生場所を特定でき、警報音発報後の警備担当者の速やかな行動を促進することができる。
【0086】
また、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cおよび第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cが各盗難警戒領域A、B、Cごとに異なる音であり、第一警報音識別装置301A、301B、301Cおよび第二警報音識別装置302A、302B、301Cは、対応する盗難警戒領域A、B、Cに配置した自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cまたは第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cのみを認識するので、他の盗難警戒領域A、B、Cにある自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cの発報に因って誤作動することを確実に防止できる。
【0087】
よって、複数の店舗が隣合わせに並んでいる商業施設において、少なくとも隣合う店舗には、タグ識別コードが異なり、音特徴が異なる自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cを配置することで、隣合う店舗で同じ盗難防止システムを使用しても誤作動することを防止できる。
【0088】
自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する警報音である第一アラーム音Am1A、Am1B、Am1Cもしくは第二アラーム音Am2A、Am2B、Am2Cを第一警報音識別装置301A、301B、301Cもしくは第二警報音識別装置302A、302B、302Cで検知して窃盗行為事象の発生を検知するので、従来の電波を検知する場合のように照明装置、電気機器、電源ライン等から発せられる電磁波ノイズに阻害されることはなく、盗難警戒領域A(B、C)での窃盗行為事象の発生を確実に検知することができる。
【0089】
特許文献1に記載の一般的な盗難防止用途のアンテナには、タグから発するアラーム時の小さな電磁エネルギの電磁波ノイズを受信しなければならないことから、大きな受信アンテナが必要であり、一般的に30cm*150cmくらいの大きさの受信アンテナとなっている。
【0090】
一方、本実施例においては、自鳴式盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する警報音の音特徴を識別するので、従来の電磁波ノイズを受信する大型の受信アンテナは不要であり、盗難防止用途のアンテナとしてはトリガー信号送信部200A、200B、200Cの送信アンテナ204として小型のアンテナを用いるだけで良い。そして、第二警報音識別部302A、302B、302Cとトリガー信号送信部200A、200B、200Cとを一体にする場合にあっても、受信アンテナが不要である第二警報音識別装置302A、302B、302Cは小さくできるので、送信アンテナ204は30cm*50cm程度の大きさに小型化できる特徴をもっている。
【0091】
本実施例では、トリガー信号送信部200A、200B、200Cに含まれた送信アンテナ204が、従来の盗難防止用途の送受信アンテナに対して1/2以下の大きさになり、さらに店舗入口付近に設置するトリガー信号送信部200および警報音識別装置302の設置台数を低減できるので、システムのコストを大幅に削減することが可能となるとともに、高級品販売店舗などにおける出入口付近の美観を損なう要因を抑制できる。
【0092】
図8は、トリガー信号送信部200A、200B、200Cに含まれた送信アンテナ204を店舗の出入り口に置いて、盗難防止タグ100A、100B、100Cの感度設定を高感度設定、中感度設定、低感度設定とした場合のそれぞれの盗難防止タグ100A、100B、100Cのタグ/アンテナナ間距離(発報距離)を示している。
【0093】
L1は、中感度の盗難防止タグ(中感度タグ)100A、100B、100Cがこの領域に入ると、盗難防止タグ100Aが送信アンテナ204からのトリガ信号を受けて発報する領域を示している。
【0094】
L2は、高感度の盗難防止タグ(高感度タグ)100A、100B、100Cがこの領域に入ると、盗難防止タグ100Aが送信アンテナ204からのトリガ信号を受けて発報する領域を示している。
【0095】
L3は、低感度の盗難防止タグ(低感度タグ)100A、100B、100Cがこの領域に入ると、盗難防止タグ100Aが送信アンテナ204からのトリガ信号を受けて発報する領域を示している。
【0096】
例1 通常、盗難防止タグ100A、100B、100Cの感度設定を中感度設定とした場合、店舗の出入り口の間口幅b−bをカバーするようにトリガー信号送信部200A、200B、200Cのアンテナ同調、パワーアンプ部を調整して送信アンテナ204の出力が調整される。すなわち、中感度の盗難防止タグ(中感度タグ)100A、100B、100Cが持ち出し警戒領域L1に入ったとき、盗難防止タグ100A、100B、100Cは第2アラームを発報することとなる。
【0097】
例2 店舗の出入り口の間口幅が例1の間口幅b−bより広い間口幅a−aである場合、盗難防止タグ100A、100B、100Cの感度設定を高感度設定とすることにより、より広い間口幅A−Aに対しても盗難防止タグ100A、100B、100Cを使用することができる。このため、広い間口幅の出入り口に対してもアンテナの設置数を少なくすることが可能となり、より経済的なシステムとすることができる。
【0098】
例3 店舗の奥行きや面積が狭い店舗の場合に、店舗の出入り口の近くで、領域L1の内側に商品展示台800を置くことが多くあるが、この場合に商品展示台800に展示した商品に中感度の盗難防止タグ100をつけると盗難防止タグ100A、100B、100Cが第2アラームを発報するので、盗難防止タグ100A、100B、100Cを商品に取り付けることができない。このような場合、店舗の出入り口から離れた場所で展示する商品には中感度の盗難防止タグ(中感度タグ)100A、100B、100Cをつけて広い間口幅b−bの全幅において盗難防止タグ100A、100B、100Cが発報する
ようにし、店舗の出入り口近くの商品展示台800に展示する商品には、間口c−c(最小警戒領域L3)をカバーする低感度の盗難防止タグ(低感度タグ)100A、100B、100Cをつけることにより、セキュリティ性を向上させることができる。
【0099】
次に、盗難防止タグ100A、100B、100Cの動作を説明する。トリガ信号送信部200A、200B、200Cの送信アンテナ204がAMアンテナ(音響磁気方式のアンテナ)である場合、そのバーストトリガ信号の繰り返し出力周波数は一般的に45Hz、50Hz、60Hzのいずれかである。それぞれの場合に応じて
図9に示すように、トリガー信号(バーストキャリア周波数58kHz、バースト幅1.6ms)が、バースト繰り返し周期16.6ms(45Hz)、20ms(50Hz)、22ms(60Hz)で送信される。
【0100】
盗難防止タグ100A、100B、100Cに使用するコンパレータ127としては、集積回路で作ったコンパレータ、例えばON Semiconductor社のNCX2200や、NCV2200などを使用することができる。また、コンパレータ127として、マイクロプロセッサに組み込まれたコンパレータ、例えばTexas Instrumemts社のMSP430F1111Aなどに組み込まれたコンパレータを使用しても良い。
【0101】
タグ受信アンテナ126がコンパレータ127のアクティブ状態のときに、送信アンテナ204から送信するバースト波を受信するためには、コンパレータ127のアクティブ状態となる時間が、バースト波のバースト繰り返し周期以上であることが必要である。
【0102】
本実施例では、AM方式アンテナのバースト周波数が45Hz(バースト繰り返し周期22ms)であると想定して、コンパレータ127のアクティブ状態となる期間を30msとしている。
【0103】
また、ここでは、コンパレータ電源制御部143は、コンパレータ127のコンパレータ電源端子cに間欠的に電源電力を供給し、例えばコンパレータ127を400msスリープ状態とし、30msアクティブ状態(動作状態)として間欠的に動作させる。
【0104】
このようにコンパレータ127をアクティブ状態にする時間に対して、コンパレータ127をスリープ状態にする時間を長く取ることによって平均消費電流を下げることができるので、通常において電流を大きく消耗するために採用することができなかったコンパレータ127を盗難防止タグ100に使用することが可能になる。
【0105】
その結果、コンパレータ127の使用により低信号レベルのトリガー信号も受信可能となり、タグ/アンテナナ間距離(タグ発報距離)、つまり盗難防止タグ100が送信アンテナ204からのトリガー信号を受信して発報に至ることができる送信アンテナ204から盗難防止タグ100までの距離を、従来に比べて1.5倍から2.0倍程度に飛躍的に向上させることができる。このため、送信アンテナ204の大きさが従来の例えば特許文献3に示したトリガー信号の受信部がトランジスタである自鳴式盗難防止タグに比べて半分以下にすることができる。
【0106】
トリガー信号送信部200A、200B、200Cの送信アンテナ204から送信するトリガー信号をタグ受信アンテナ126で受信すると、タグ受信アンテナ126のアンテナ出力がコンパレータ127のコンパレータ出力端子dに入力され、タグ受信アンテナ126がトリガー信号を受信したことをコンパレータ127がコンパレータ出力端子dで信号処理部141に入力する。
【0107】
また、リモコン125から送信するリモコン制御信号をタグ受信アンテナ126で受信すると、タグ受信アンテナ126のアンテナ出力がコンパレータ127に入力され、タグ受信アンテナ126がリモコン制御信号を受信したことをコンパレータ127がコンパレータ出力で信号処理部141に入力する。
【0108】
タグ制御部140は、スリープ状態で待機しているが、トリガー信号やリモコン制御信号などのコンパレータ出力を受けると割り込み制御がかかり、信号処理部141においてコンパレータ出力、すなわちタグ受信アンテナ126からコンパレータ127へ入力された入力信号(共振回路出力)の解析が開始され、以降は入力信号の解析が終了するまでタグ制御部140およびコンパレータ127が動作状態となる。
(実施例2)
以下に、実施例2として、実施例1において説明したトリガー信号送信部200A、200B、200Cの他の構成を説明するが、本発明の基本的な構成は実施例2においても実施例1と同様である。
【0109】
実施例2では、
図10に示すように、トリガー信号送信部200A、200B、200Cと第二警報音識別装置302A、302B、302Cを別体に分離する。
図11から
図13に示すように、トリガー信号送信部200A、200B、200Cは、送信アンテナ204のアンテナ線205を出入口付近の店舗の外側位置に配置している。そして、先に
図3で示した電源部201、アンテナ送信信号発生部202、アンテナ同調・パワーアンプ部203および第二警報音識別装置302A、302B、302Cは店舗の内側に配置する。
【0110】
高級ファッション販売店やデパート等の店舗における売場入口は通常大理石や人造大理石などでタイル施工されている。このため本発明では、送信アンテナ204のアンテナ線205を盗難警戒領域A、B、Cの出入口における店舗の外側位置のタイル貼りされた床面500に配置する。
【0111】
しかし、盗難警戒領域A、B、Cの出入口付近で店舗の内外の境界近辺においての盗難防止タグ100A、100B、100Cの発報が許容される場合には、アンテナ線205は店舗の内外の境界を含む位置や境界に隣接する店舗の内側位置に配置することも可能である。
【0112】
図12に示すように、床面500はモルタル下地501の上に、タイル502を貼ったものであり、タイル502とタイル502の間に形成された目地503の目地材をカットし、その内部に送信アンテナ204のアンテナ線205を布設する。
【0113】
図11は、アンテナ線205をO(オー)ループ状に1ターンで布設した状態を示している。
従来の盗難防止タグの感度に対応するにはアンテナ線の巻数が10ターン以上必要であり、通常4−5mm幅の目地503の内部に配置することは不可能である。しかし本発明では、盗難防止タグ100A、100B、100Cの感度を高めることができるので、1ターンでも盗難防止タグ100A、100B、100Cに十分にトリガー信号を送れることが特徴である。
【0114】
図13に示すように、本実施例2では、床面500が60cm角の大理石のタイル502を4mm幅の目地503でタイル施工し、この目地503に外径2.5mmのアンテナ線205を埋めている。この構成で、床面500から1.8mの高さにおいて盗難防止タグ100A、100B、100Cがトリガー信号に反応して発報し、実用上の十分な感度を確保できた。
【0115】
このように、アンテナ線205が基本的に見えないので、盗難防止領域である店舗の出入口付近の美観を損ねない。また、目地503の内部に布設することで、耐久性を確保できるとともに、従来のように歩行者がマット等につまづくなどの障害性を排除することができる。アンテナ設置205は店舗の完成後に後付けで設置することも可能で、施工が比較容易であり、アンテナ線204を1ターンで配置することでアンテナコスト、施工コストを抑制して安価に実現できる。
【0116】
また、
図13に示すように、盗難警戒領域の出入口付近の天井に配置したファサードサイン504に送信アンテナ204のアンテナ線505を内蔵させて配置することもできる。ここでファサードサインは建物正面のみならず、店舗内に設置したものも含むものである。ただし、上記ファサードサインに設置する送信アンテナでは、アンテナターン数は数ターンに増やし、アンテナ出力を増加することも可能である。