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特開2017-162370カーシェアリングサービスの運用システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-162370(P2017-162370A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】カーシェアリングサービスの運用システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20170818BHJP
   G06F 11/30 20060101ALI20170818BHJP
   G06Q 30/04 20120101ALI20170818BHJP
【FI】
   G06Q50/10
   G06F11/30 162
   G06F11/30 140A
   G06Q30/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-48436(P2016-48436)
(22)【出願日】2016年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓治
(72)【発明者】
【氏名】原 尚之
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 栄規
(72)【発明者】
【氏名】泉 祐介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晃基
【テーマコード(参考)】
5B042
5L049
【Fターム(参考)】
5B042GB08
5B042JJ01
5B042MA08
5B042MA14
5L049BB11
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】カーシェアリングサービスの運用システムであって、それぞれのステーションにおいて蓄えられている電力量のばらつきや、停車している電気自動車の数のばらつきを抑制することのできる運用システムを提供する。
【解決手段】運用システム100は、ステーション20の蓄電設備240に蓄えられている電力量と、当該ステーション20に停車している全ての電気自動車30に蓄えられている電力量と、の合計であるステーション電力量を取得する電力量取得部130を備える。
利用者からの利用申し込みが利用入力部110に入力された際、料金提示部120は、開始ステーションについて取得されたステーション電力量に基づいて利用料金の算出及び提示を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のサービスエリア内に設けられた複数のステーション(20)から、利用者の求めに応じて電気自動車(30)の一時的な貸し出しを行うカーシェアリングサービス、を提供するための運用システム(100)であって、
それぞれの前記ステーションは、太陽光発電によって生じた電力を蓄えておく蓄電設備(240)と、前記電気自動車に電力を供給して充電を行う充電設備(210)と、を備えたものであり、
利用者からの利用申し込みが入力される利用入力部(110)と、
前記ステーションの前記蓄電設備に蓄えられている電力量と、当該ステーションに停車している全ての前記電気自動車に蓄えられている電力量と、の合計であるステーション電力量を取得する電力量取得部(130)と、
カーシェアリングサービスを利用するために利用者が支払うべき利用料金を算出し、これを利用者に提示する料金提示部(120)と、を備え、
複数の前記ステーションのうち、利用者が前記電気自動車の利用を開始するステーションのことを開始ステーションとしたときに、
利用者からの利用申し込みが前記利用入力部に入力された際、前記料金提示部は、前記開始ステーションについて取得された前記ステーション電力量に基づいて前記利用料金の算出及び提示を行う運用システム。
【請求項2】
前記料金提示部は、
前記開始ステーションについて取得された前記ステーション電力量が大きくなるほど、前記利用料金を安く算出するように構成されている、請求項1に記載の運用システム。
【請求項3】
前記料金提示部は、
前記開始ステーションについて取得された前記ステーション電力量と、所定の基準電力量との差である偏差電力量に比例する比例項と、
前記偏差電力量の積分値に比例する積分項と、を合算することにより、前記開始ステーションから外部に出て行くべき電力の大きさを示す流出電力値を算出し、
前記流出電力値が大きくなるほど、前記利用料金を安く算出するように構成されている、請求項2に記載の運用システム。
【請求項4】
複数の前記ステーションのうち、利用者が前記電気自動車の利用を終了して返却を行うステーションのことを終了ステーションとしたときに、
前記料金提示部は、
前記終了ステーションについて取得された前記ステーション電力量に基づいて、前記料金提示部で算出される前記利用料金を補正する、請求項1に記載の運用システム。
【請求項5】
前記料金提示部は、
前記終了ステーションについて取得された前記ステーション電力量と、所定の基準電力量との差が大きいときには、前記利用料金が高くなるように補正を行う、請求項4に記載の運用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーシェアリングサービスの運用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーシェアリングサービスとは、利用者の求めに応じて車両の一時的な貸し出しを行うサービスである。近年では、貸出対象の車両として電気自動車を用いたカーシェアリングサービスも行われている。
【0003】
カーシェアリングサービスの提供対象となるサービスエリアには、電気自動車の借り受け及び返却の窓口となるステーションが複数設けられている。それぞれのステーションには、例えば複数台の電気自動車が停車している。電気自動車への充電は、電気自動車がステーションに停車しているときに行われる。
【0004】
カーシェアリングサービスの一態様においては、カーシェアリングサービスの利用者は、特定のステーションを訪れて電気自動車を借り受ける。その後、電気自動車を運転して他のステーションまで移動して、当該ステーションで電気自動車の返却を行う。利用者は、例えば電気自動車の利用時間に比例した電気料金を支払う。
【0005】
下記特許文献1には、カーシェアリングサービスの運用管理システムについて記載されている。当該システムでは、収益率やサービス率を示す指標である評価指標が適切な範囲となるようにサービスの運用計画を作成し、当該運用計画に沿ってカーシェアリングサービスの提供を行うこととしている。運用計画には、適切な利用料金を設定することも含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−41475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、それぞれのステーションに太陽光発電設備と蓄電設備とを設置した上で、ステーションに停車している電気自動車への充電を、太陽光発電電力や蓄電設備から供給される電力によって行う態様のシステム構成を検討してきた。このような態様においては系統電力の使用が抑制されるので、カーシェアリングサービスの運用に伴う電気料金を低減することができる。
【0008】
カーシェアリングサービスが提供されている期間においては、蓄電設備に蓄えられている電力量が時間の経過とともに変化する。また、一つのステーションに停車している電気自動車の台数も、時間の経過とともに変化する。その結果、特定のステーションにおいて蓄えられている電力量のみが著しく低下してしまったり、特定のステーションに停車している電気自動車の数が0になってしまったりするようなことが起こり得る。その場合、利用者の希望に沿ったサービスの提供ができなくなってしまう可能性がある。
【0009】
このような事態を防止するためには、カーシェアリングサービス全体の運用を一括管理するようなサーバー(スーパーバイザ)を設けた上で、各ステーションに蓄えられている電力量や、停車している電気自動車の台数のバランスを保つような運用を行うことも考えられる。しかしながら、全ての電気自動車の走行時間や、走行中における電力消費等を考慮しながら上記バランスを保つような運用は極めて困難であり、サーバーの処理負荷が著しく増大してしまうことが懸念される。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カーシェアリングサービスの運用システムであって、それぞれのステーションにおいて蓄えられている電力量のばらつきや、停車している電気自動車の数のばらつきを抑制することのできる運用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る運用システムは、特定のサービスエリア内に設けられた複数のステーション(20)から、利用者の求めに応じて電気自動車(30)の一時的な貸し出しを行うカーシェアリングサービス、を提供するための運用システム(100)である。それぞれのステーションは、太陽光発電によって生じた電力を蓄えておく蓄電設備(240)と、電気自動車に電力を供給して充電を行う充電設備(210)と、を備えたものである。この運用システムは、利用者からの利用申し込みが入力される利用入力部(110)と、ステーションの蓄電設備に蓄えられている電力量と、当該ステーションに停車している全ての電気自動車に蓄えられている電力量と、の合計であるステーション電力量を取得する電力量取得部(130)と、カーシェアリングサービスを利用するために利用者が支払うべき利用料金を算出し、これを利用者に提示する料金提示部(120)と、を備える。複数のステーションのうち、利用者が電気自動車の利用を開始するステーションのことを開始ステーションとしたときに、利用者からの利用申し込みが利用入力部に入力された際、料金提示部は、開始ステーションについて取得されたステーション電力量に基づいて利用料金の算出及び提示を行う。
【0012】
このような運用システムでは、利用者からの利用申し込みが行われる際に、料金提示部によって利用料金が算出され、当該利用料金が利用者に提示される。利用者は、提示された利用料金を見て検討した上で、カーシェアリングサービスを利用するか否かを判断する。
【0013】
その際、料金提示部は、開始ステーションについてのステーション電力量に基づいて利用料金を算出する。例えば、開始ステーションの蓄電設備の充電量が低下しており、ステーション電力量が小さくなっているときには、比較的高額な利用料金が算出され提示されることとすればよい。これにより、その開始ステーションから出発するようなカーシェアリングサービスの利用が抑制される。開始ステーションにおいてはステーション電力量の減少が抑制される上、太陽光発電によって蓄電設備の充電量が次第に増加する。これにより、電気自動車への充電ができなくなってサービスが一時的に中断されてしまうような事態が回避される。
【0014】
また、特定のステーションに電気自動車が多数停車しているようなときには、当該ステーションについてのステーション電力量は大きな値として算出される。この場合、上記とは逆に比較的低廉な利用料金が算出され提示されることとすれば、当該ステーションから出発するようなカーシェアリングサービスの利用が促進されることとなる。その結果、当該ステーションに停車している電気自動車の台数が減少する。
【0015】
以上に例示したように、本発明に係る運用システムによれば、それぞれのステーションにおいて利用者に提示される利用料金が適切に調整されることにより、一部のステーションにおいてステーション電力量が増加し過ぎてしまったり、減少し過ぎてしまったりするような現象が抑制される。
【0016】
また、利用料金の算出は、基本的には開始ステーションのステーション電力量のみに基づいて行われる。従って、カーシェアリングサービス全体の運用を一括管理するようなサーバーを設けるような場合に比べると、運用システムへの処理負荷を著しく軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カーシェアリングサービスの運用システムであって、それぞれのステーションにおいて蓄えられている電力量のばらつきや、停車している電気自動車の数のばらつきを抑制することのできる運用システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る運用システムと、これによって運用されるカーシェアリングサービスの提供に必要な構成と、を模式的に示す図である。
図2図1の運用システムにおける内部構成を示すブロック図である。
図3】ステーション電力量の変化について説明するための図である。
図4】流出電力値と、算出される利用料金との関係を示す図である。
図5図1の運用システムによって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6】ステーション電力量の変化の一例を示す図である。
図7図5に示される一連の処理をブロック線図として表した図である。
図8】変形例に係る運用システムによって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る運用システム100、及び運用システム100の機能によって提供されるカーシェアリングサービスの概要について説明する。カーシェアリングサービス(以下では、単に「サービス」とも表記することがある)は、利用者の希望に応じて電気自動車30を一時的に貸し出すサービスである。サービスの提供に必要な構成物としては、ステーション20と、電気自動車30と、運用システム100とが挙げられる。図1では、これら構成物の全体がカーシェアリングシステム10として模式的に示されている。
【0021】
ステーション20は、サービスの利用者が訪れる窓口となる設備である。ステーション20は、サービスの提供が行われる特定の領域、すなわちサービスエリア内に複数建設されている。利用者は、いずれかのステーション20を訪れて電気自動車30を借り受ける。また、その後、電気自動車30を運転して他のステーションまで移動して、当該ステーション20において電気自動車30を返却する。
【0022】
本実施形態では、利用者はサービスの提供を受けるのに先立ち、出発地となるステーション20(開始ステーション)を訪れて電気自動車30の利用申し込みを行うものとする。当該利用申し込みの際には、返却先(つまり目的地)のステーション20が利用者によって指定されるものとする。利用申し込みにあたっては、運用システム100によって算出された利用料金が利用者に提示される。利用料金は、例えば単位時間あたりの利用について支払われるべき料金である。利用者は、提示された利用料金を見て検討した上で、カーシェアリングサービスを利用するか否かを判断する。
【0023】
ステーション20には建物220が設置されており、その周囲に電気自動車30を駐車しておくための駐車スペースが設けられている。建物220は、訪れた利用者からの予約申し込み等を受け付けるサービス窓口としての機能や、サービスを提供するために必要な事務が行われる事務所としての機能等を有するものである。図1では3つのステーション20が描かれているが、サービスエリア内に設けられたステーション20の数は例えば4つ以上であってもよく、2つのみであってもよい。
【0024】
建物220の天井部分には太陽光パネル230が設けられている。太陽光パネル230は、周知の通り太陽光のエネルギーを電力に変換するものである。発電された電力は蓄電設備240に蓄えられる。
【0025】
蓄電設備240は、電力を蓄えるための複数の蓄電池を備えた装置であって、それぞれのステーション20に1台ずつ備えられている。蓄電設備240には、上記のように太陽光パネル230で発電された電力が蓄えられる。蓄えられた電力は、電気自動車30の充電に用いられる。尚、蓄電設備240には、太陽光パネル230で発電された電力に加えて、電力系統からの電力が供給される構成としてもよい。
【0026】
建物220の周囲に設けられた駐車スペースには、白線等で区切られた駐車領域(不図示)が複数設けられている。また、それぞれの駐車領域には充電設備210が1つずつ設けられている。電気自動車30が駐車領域に停車しているとき、すなわち、当該電気自動車30がサービスに利用されていないときには、充電設備210と電気自動車30との間がケーブルで接続される。当該ケーブルを介して電気自動車30に電力が供給され、電気自動車30の充電が行われる。充電設備210から電気自動車30に供給される電力は、蓄電設備240に蓄えられていた電力である。また、太陽光パネル230で発電された電力を、蓄電設備240を経由することなく、充電設備210から電気自動車30に供給することも可能である。
【0027】
尚、図1においては、それぞれのステーション20に充電設備210(及び駐車領域)が2台分ずつ設けられているように描かれているのであるが、充電設備210等の数はこれに限定されない。例えば、充電設備210等が1台分しか設けられていないステーション20が存在してもよく、3台分以上の充電設備210等が設けられたステーション20が存在してもよい。また、充電設備210等の数はステーション20毎に異なっていてもよい。
【0028】
電気自動車30は、内部に蓄電池(不図示)を備えており、当該蓄電池に蓄えられた電力によって走行するように構成された車両である。電気自動車30は、上記蓄電池に加えて電力変換器(不図示)も備えている。電力変換器は、充電設備210から供給された電力を電力変換して蓄電池へと充電する。このとき、電力変換器は、充電設備210から電気自動車30に供給される電力の大きさを、所定範囲内で適宜調整する。尚、電気自動車30は、蓄電池と内燃機関とを備えた所謂ハイブリッド車両であってもよい。
【0029】
更に、本実施形態では、同じステーション20に停車している複数の電気自動車30が、互いの蓄電池に蓄えられている電力を融通しあうことも可能となっている。例えば、隣り合う2つの充電設備210のそれぞれに電気自動車30が接続されている状態で、一方の電気自動車30の蓄電池から放電された電力を、充電設備210を介して他方の電気自動車30の蓄電池に供給し充電を行うようなことが可能となっている。
【0030】
本実施形態では、利用者による電気自動車30の借り受け及び返却が、必ずどこかのステーション20において行われるものとする。つまり、ステーション20以外の場所で電気自動車30が乗り捨てられることは無いものとする。このため、カーシェアリングサービスが行われている時間帯においては、電気自動車30は、いずれかのステーション20に停車している状態か、利用者に貸し出されておりステーション20以外の場所を走行している状態か、のいずれかのみをとり得ることになる。
【0031】
運用システム100は、カーシェアリングサービスの運用を行うに当たり必要となる処理、例えば利用者に対する利用料金の提示等を行うための処理装置として構成されている。運用システム100は、それぞれのステーション20に1つずつ設けられている。本実施形態では、それぞれの運用システム100が互いに独立に処理を行う構成となっている。すなわち、カーシェアリングシステム10の全体を統括制御するようなスーパバイザに該当するものは存在しない。それぞれの運用システム100は、CPU、ROM等を備えたコンピュータシステムとして構成されている。
【0032】
図2を参照しながら、運用システム100の構成について説明する。運用システム100は、機能的な制御ブロックとして、利用入力部110と、料金提示部120と、電力量取得部130と、を有している。
【0033】
尚、図2において符号250が付されているのは、ステーション20の窓口に設置されたパソコンである。以下、「パソコン250」と表記する。パソコン250は、サービスを利用しようとする利用者が、利用申し込みの手続きを行う際のインターフェイスとなる装置である。このような装置としては、パソコン250に替えて、例えば利用者が所有するスマートフォン等の携帯通信端末が用いられてもよい。また、パソコン250の操作を利用者自身が行うのではなく、オペレータが利用者と対話しながら操作を行うような態様であってもよい。
【0034】
利用入力部110は、利用者からの利用申し込みがパソコン250を介して入力される部分である。入力される利用申し込みには、返却先(目的地)のステーション20を特定する情報が含まれる。このとき、パソコン250の画面には利用料金が表示される。利用者は、表示された利用料金を見て検討した上で、利用申し込みを行うかどうかを判断することができる。
【0035】
料金提示部120は、現時点における利用料金を算出し、パソコン250の画面を介して利用者に提示する部分である。本実施形態では、利用料金は常に一定なのではなく、そのときの状況に応じて異なる料金が設定される。
【0036】
電力量取得部130は、ステーション20の蓄電設備240に蓄えられている電力量と、ステーション20に駐車されている全ての電気自動車30(の蓄電池)に蓄えられている電力量と、の合計であるステーション電力量を取得する部分である。電力量取得部130で取得されるステーション電力量は、当該電力量取得部130が設けられているステーション20についてのステーション電力量である。
【0037】
ステーション電力量のうち、ステーション20の蓄電設備240に蓄えられている電力量は、蓄電設備240の制御部(不図示)との間で行われる通信によって取得される。また、電気自動車30の蓄電池に蓄えられている電力量は、電気自動車30と充電設備210との間でケーブルを介して行われる通信によって取得される。
【0038】
料金提示部120による利用料金の算出は、電力量取得部130で取得されたステーション電力量の値に基づいて行われる。つまり、利用者が電気自動車30の利用を開始するステーション20(利用申し込みを行うステーション20ともいえる)について取得されたステーション電力量に基づいて、料金提示部120による利用料金の算出が行われる。その具体的な算出方法については後に説明する。
【0039】
ところで、カーシェアリングサービスが提供されている期間においては、それぞれの蓄電設備240に蓄えられている電力量が時間の経過とともに変化する。また、一つのステーション20に停車している電気自動車30の台数も、時間の経過とともに変化する。その結果、特定のステーション20に蓄えられている電力量のみが著しく低下してしまったり、特定のステーション20に停車している電気自動車30の数が0になってしまったりするようなことが起こり得る。その場合、利用者の希望に沿ったサービスの提供ができなくなってしまう可能性がある。
【0040】
上記のような事態が生じているときには、各ステーション20についてのステーション電力量が均等となっておらず、ステーション20ごとにばらついた状態となっている。換言すれば、ステーション電力量のばらつきを何らかの方法で抑制することができれば、上記のような事態の発生を防止することができるはずである。そこで、本実施形態では、利用者に提示される利用料金を適切に変化させることにより、ステーション電力量の均等化を図る構成となっている。
【0041】
カーシェアリングサービスが提供されている期間におけるステーション電力量の変化について、図3を参照しながら説明する。図3において符号21が付されている容器は、ステーション20のうちの一つ(以下、「第1ステーション21」とも表記する)を示すものである。図3においては、第1ステーション21についてのステーション電力量(以下、「ステーション電力量X1」とも表記する)が、符号21が付された容器に蓄えられた水の量に対応するものとして描かれている。
【0042】
図3における「P1」は、第1ステーション21の太陽光パネル230で発電された電力である。以下、「発電電力P1」とも表記する。「xB1」は、第1ステーション21のステーション電力量X1について予め設定された基準値である。以下、「基準値xB1」とも表記する。基準値xB1は、カーシェアリングサービスが提供されている期間において変動するステーション電力量X1の目標値、として設定されるものである。
【0043】
「x1(t)」は、時刻tにおけるステーション電力量X1から、上記の基準値xB1を差し引いた値である。すなわち、ステーション電力量X1の目標値からの偏差、に該当する値である。従って、以下では第1ステーション21についての「偏差電力量x1(t)」とも表記する。
【0044】
図3において符号22が付されている容器は、ステーション20のうちの一つであって第1ステーション21以外のもの(以下、「第2ステーション22」とも表記する)を示すものである。図3においては、第2ステーション22についてのステーション電力量(以下、「ステーション電力量X2」とも表記する)が、符号22が付された容器に蓄えられた水の量に対応するものとして描かれている。
【0045】
図3における「P2」は、第2ステーション22の太陽光パネル230で発電された電力である。以下、「発電電力P2」とも表記する。「xB2」は、第2ステーション22のステーション電力量X2について予め設定された基準値である。以下、「基準値xB2」とも表記する。基準値xB2は、カーシェアリングサービスが提供されている期間において変動するステーション電力量X2の目標値、として設定されるものである。
【0046】
「x2(t)」は、時刻tにおけるステーション電力量X2から、上記の基準値xB2を差し引いた値である。すなわち、ステーション電力量X2の目標値からの偏差、に該当する値である。従って、以下では第2ステーション22についての「偏差電力量x2(t)」とも表記する。
【0047】
説明を簡単にするために、以下では、第1ステーション21と第2ステーション22との間でのみ電気自動車30が行き来するものと仮定して説明を行う。すなわち、カーシェアリングシステム10に含まれるステーション20が2つのみであると仮定して説明を行う。
【0048】
図3における「u1(t)」は、電気自動車30の移動に伴い、時刻tにおいて第1ステーション21から単位時間あたりに出て行く電力量である。当該電力量は、時刻tにおいてステーション電力量X1から減算される。また、当該電力量は、時刻tから期間τが経過した後に、第2ステーション22のステーション電力量X2に加算されることとなる。ただし、時刻tにおいてステーション電力量X2に対し加算される電力量は、u1(t−τ)とはならない。電気自動車30に蓄えられている電力は走行中に消費されて減少するので、時刻tにおいてステーション電力量X2に加算される電力量はγu1(t−τ)で表されることとなる。γは、走行に伴う電力の減少を考慮した割合であり、0から1未満までの範囲をとり得るものである。
【0049】
図3における「u2(t)」は、電気自動車30の移動に伴い、時刻tにおいて第2ステーション22から単位時間あたりに出て行く電力量である。当該電力量は、時刻tにおいてステーション電力量X2から減算される。また、当該電力量は、時刻tから期間τが経過した後に、第1ステーション21のステーション電力量X1に加算されることとなる。上記と同様の理由により、時刻tにおいてステーション電力量X1に加算される電力はγu2(t−τ)で表されることとなる。
【0050】
以上より、偏差電力量x1(t)は以下の式(1)で表される。尚、偏差電力量x2(t)を表す式は、式(1)の添え字のうち「1」を「2」に置き換えて、「2」を「1」に置き換えたものに等しい。
【数1】
【0051】
例えば偏差電力量x1(t)が大きくなり過ぎたときには、第1ステーション21から出て行く電力を大きくし、ステーション電力量X1を基準値xB1に近づけるような調整が行われるとよい。本実施形態では、第1ステーション21から出て行くべき電力の大きさを示す流出電力値U1を、以下の式(2)により定義する。
【数2】
【0052】
式(2)の右辺第1項は、偏差電力量x1(t)を積分したものに定数kIを掛けた値となっている。式(2)の右辺第2項は、偏差電力量x1(t)に定数kPを掛けた値となっている。これらを合算したものとして算出される流出電力値U1は、偏差電力量x1(t)が大きくなるほど大きな値として算出される。
【0053】
尚、流出電力値U1は「第1ステーション21から出て行くべき電力の大きさ」を示すものであるから、流出電力値U1が0未満となったり、所定の上限wを超えてしまったりすることは適切ではない。このため、式(2)に基づいて算出された流出電力値U1が負値となったときには、流出電力値U1の値は0とされる。同様に、算出された流出電力値U1が上限wを越えたときには、流出電力値U1の値は上限wとされる。
【0054】
本実施形態では、流出電力値U1が大きく算出されるほど、第1ステーション21の料金提示部120では利用料金が安く算出される。つまり、第1ステーション21において利用申し込みが行われるときには、そのときの流出電力値U1(第1ステーション21から出て行くべき電力)が大きく算出されるほど、安い利用料金が算出されて利用者に提示される。これにより、第1ステーション21における電気自動車30の貸し出しが促進されることとなるので、ステーション電力量X1が減少して基準値xB1に近づくこととなる。
【0055】
ステーション電力量X1が基準値xB1よりも小さく、偏差電力量x1(t)が負値となっているときには、流出電力値U1が小さな値として算出される。その結果、比較的高い利用料金が算出されて利用者に提示される。これにより、第1ステーション21における電気自動車30の貸し出しが抑制されることとなるので、(発電電力により)ステーション電力量X1が増加して基準値xB1に近づくこととなる。
【0056】
図4には、流出電力値U1と、これに基づいて算出される利用料金との関係の一例が示されている。図4の例では、流出電力値U1を、電気自動車30に蓄電される最大の電力量Bで除して得られる商の増加に伴い、利用料金が段階的に安くなって行くように設定されている。例えば、上記の商がn1未満のときには利用料金C1が算出され、上記の商がn1以上になると利用料金C2(<C1)が算出されるように設定されている。このような態様に替えて、流出電力値U1に反比例するように利用料金が算出されるような態様であってもよい。
【0057】
尚、以上においては、第1ステーション21において利用申し込み及び電気自動車30の貸し出しが行われる例について説明したが、第2ステーション22において利用申し込み等が行われる場合についても上記と同様である。この場合、式(2)の添え字のうち「1」を「2」に置き換えた式により、流出電力値U2が算出される。第2ステーション22では、この流出電力値U2に基づいて上記と同様に利用料金が算出され、利用者に提示される。これにより、第2ステーション22においても電気自動車30の貸し出しが促進又は抑制され、ステーション電力量X2が基準値xB2に近づいて行くこととなる。
【0058】
運用システム100が利用料金を算出するために行う処理の流れについて、図5を参照しながら説明する。以下では、第1ステーション21において利用申し込みが行われる場合の例について説明する。図5に示される一連の処理は、所定の周期が経過する毎に、第1ステーション21の運用システム100によって繰り返し行われている。
【0059】
最初のステップS01では、第1ステーション21についてのステーション電力量X1が、電力量取得部130によって取得される。ステップS01に続くステップS02では、偏差電力量x1(t)が算出される。当該算出は、ステップS01で取得された現在のステーション電力量X1から、基準値xB1を差し引くことによって行われる。ステップS02に続くステップS03では、偏差電力量x1(t)と式(2)に基づいて流出電力値U1が算出される。ステップS03に続くステップS04では、流出電力値U1に基づいて利用料金が算出される。当該算出は、図4に示される対応関係に基づいて行われる。
【0060】
以上に説明したステップS01からステップS04までの処理は、利用者による利用申し込みが行われたときのみならず、利用申し込みが行われていないときにおいてもバックグラウンドで常に繰り返し行われている。
【0061】
ステップS04に続くステップS05では、利用者による利用申し込みの手続きが開始されたか否かが判定される。「利用申し込みの手続きが開始された」とは、例えば、パソコン250に表示された「手続き開始」ボタンがクリックされたことを意味する。利用申し込みの手続きが開始されていなければ、図5に示される一連の処理を終了する。利用申し込みが開始されれば、ステップS06に移行する。
【0062】
ステップS6では、ステップS04で算出された利用料金がパソコン250の画面を介して利用者に提示される。既に述べたように、ステーション電力量X1が大きくなっているときには安い利用料金が提示され、ステーション電力量X1が小さくなっているときには高い利用料金が提示される。
【0063】
第2ステーション22の運用システム100によっても、図5に示されるものと同様の処理が繰り返し行われる。その結果、サービスが提供されている期間においては、ステーション電力量X1が基準値xB1に近づいていき、ステーション電力量X2が基準値xB2に近づいていくこととなる。
【0064】
図6には、ステーション電力量X1等の変化をシミュレーションにより求めた結果が示されている。線L1はステーション電力量X1の変化を示すグラフであり、線L2はステーション電力量X2の変化を示すグラフである。それぞれのグラフで示されるように、サービスが開始された直後においては、ステーション電力量X1及びステーション電力量X2はいずれも大きく変動している。しかしながら、時間の経過とともに変動の振幅は次第に小さくなって行き、最終的には概ね一定値(基準値xB1及び基準値xB2)に収束している。収束するまでの挙動は、式(2)における定数kIや定数kPの値によって調整することが可能である。
【0065】
図5に示される一連の処理は、偏差電力量x1(t)を目標値(=0)に近づけるためのフィードバック制御として表現することができる。図7は、このようなフィードバック制御をブロック線図として表したものである。
【0066】
図7のうち加算器401は、フィードバックされる偏差電力量x1(t)から目標値である0を差し引いて得られた値を、ゲイン402と積分器403のそれぞれに出力するものである。
【0067】
ゲイン402は、加算器401から出力された値に定数kPを掛けて得られた値を、加算器405に出力するものである。当該処理は、式(2)の右辺第2項を算出する処理に該当する。
【0068】
積分器403は、加算器401から出力された値を積分して得られた値を、ゲイン404に出力するものである。ゲイン404は、積分器403から出力された値に定数kIを掛けて得られた値を、加算器405に出力するものである。当該処理は、式(2)の右辺第1項を算出する処理に該当する。
【0069】
加算器405は、ゲイン402から出力された値と、ゲイン404から出力された値とを合算し、これを料金生成器406に出力するものである。加算器405から料金生成器406に出力される値は、式(2)で示される流出電力値U1に該当する。
【0070】
料金生成器406は、図4に示される対応関係に基づいて、流出電力値U1を利用料金に変換するブロックである。料金生成器406における変換で得られた利用料金は、ブロック407に出力される。
【0071】
ブロック407は、利用料金が提示された後における利用者の行動(つまり、サービスを利用するか否かの判断)と、それに伴うステーション電力量X1の変化とをモデル化し、これを単一のブロックとして表したものである。ブロック407からは、偏差電力量x1(t)の値が出力され、これが加算器401へとフィードバックされる。
【0072】
以上に説明したように、サービスの利用申し込みが行われると、料金提示部120は、出発地となるステーション20(開始ステーション)について取得されたステーション電力量に基づいて利用料金の算出及び提示を行う。具体的には、取得されたステーション電力量が大きくなるほど、利用料金を安く算出するように構成されている。これにより、ステーション電力量が所定の基準値(xB1、xB2)に近づくよう、利用者によるサービスの利用行動が調整される。その結果、一部のステーション20においてステーション電力量が増加し過ぎてしまったり、減少し過ぎてしまったりするような現象が抑制される。つまり、それぞれのステーション20についてのステーション電力量が均等化される。
【0073】
このような調整は、利用申し込みが行われるステーション20に設けられた運用システム100が、当該ステーション20で取得可能な情報のみに基づいて自律分散的に行う。このため、カーシェアリングシステム10を統括制御するサーバー(スーパバイザ)が、全体のバランスをまとめて調整するような場合に比べると、調整のための演算負荷は著しく小さくなっている。
【0074】
本発明の変形例について説明する。この変形例では、運用システム100によって行われる処理の一部についてのみ、上記実施形態と異なっている。以下では、上記実施形態と異なる部分についてのみ説明し、共通する部分については説明を省略する。
【0075】
図8に示されるのは、この変形例に係る運用システム100で行われる処理の流れである。図8に示される一連の処理は、図5に示される一連の処理に置き換えて実行される。図8のうちステップS01からステップS04までの処理は、図5におけるステップS01からステップS04までの処理と共通している。この変形例では、ステップS04に続いて行われる処理についてのみ、上記実施形態と異なっている。
【0076】
ステップS04に続くステップS11では、利用申し込みが開始されたか否かが判定される。ここでは、利用者が行う手続のうち、返却先のステーション20(以下、「終了ステーション」とも表記する)を指定する手続までが完了したか否かが判定される。当該手続きが完了している場合には、ステップS12に移行する。それ以外の場合には、図8に示される一連の処理を一旦終了する。
【0077】
ステップS12では、入力された終了ステーションについてのステーション電力量が取得される。この変形例では、運用システム100が、他のステーション20に設けられた運用システム100と通信を行うことにより、他のステーション20おいて算出されたステーション電力量(図3のX2に該当)と、基準値(図3のxB2に該当)とを取得することが可能となっている。ステップS12では、終了ステーションとして指定されたステーション20の運用システム100から、当該ステーション20についてのステーション電力量及び基準値が取得される。
【0078】
ステップS12に続くステップS13では、終了ステーションについての偏差電力量が算出される。当該算出は、終了ステーションから上記通信によって取得されたステーション電力量から、同じく上記通信によって取得された基準値を差し引くことによって行われる。
【0079】
ステップS13に続くステップS14では、ステップS13で算出された偏差電力量に基づいて、利用料金の補正が行われる。算出された偏差電力量が大きいときには、仮に終了ステーションに向けて電気自動車30が移動すると、ステーション電力量のばらつきが大きくなってしまうこととなる。そこで、このような場合には、利用料金が高くなるような補正が行われる。逆に、算出された偏差電力量が小さく負値となっているようなときには、利用料金が安くなるような補正が行われる。
【0080】
ステップS14に続くステップS15では、補正後の利用料金がパソコン250の画面に表示され、利用者に提示される。
【0081】
以上に説明した変形例では、出発地であるステーション20についてのステーション電力量のみに基づいて利用料金が決定されるのではなく、終了ステーションについてのステーション電力量にも基づいて利用料金が決定されることとなる。これにより、それぞれのステーション20についてのステーション電力量をより均等化することが可能となる。
【0082】
この変形例においては、出発地のステーション20についての情報のみならず、終了ステーションからの情報をも考慮した調整が行われる。しかしながら、利用料金を算出するために必要な要素が一つ増えただけであるから、運用システム100における計算負荷が著しく増加してしまうようなことは無い。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0084】
10:カーシェアリングシステム
20,21,22:ステーション
30:電気自動車
100:運用システム
110:利用入力部
120:料金提示部
130:電力量取得部
210:充電設備
240:蓄電設備
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8