(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-16246(P2017-16246A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】人口変動推測プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20161222BHJP
【FI】
G06Q50/10 180
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-129897(P2015-129897)
(22)【出願日】2015年6月29日
(11)【特許番号】特許第5914734号(P5914734)
(45)【特許公報発行日】2016年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】515085772
【氏名又は名称】株式会社楽しいチリビジ
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真野 栄一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】将来の人口変動に影響する要因であって過去の調査結果には表れないものを考慮することで将来の人口変動を比較的正確に推測する。
【解決手段】将来人口推測装置1は、記憶部10、マンション分譲情報取得部21及び分譲増加取得部22を有している。記憶部10は、分譲マンションの1戸当たりの広さと関連付けて1戸当たりの人口増加数を記憶している。マンション分譲情報取得部21は、マンション分譲情報として、各マンション分譲計画における1戸当たりの広さと分譲戸数を取得する。分譲増加取得部22は、マンション分譲情報における1戸当たりの広さに基づいて記憶部10から1戸当たりの人口増加数を取得すると共に、取得した人口増加数にマンション分譲情報における分譲戸数を乗算することで、マンション分譲計画における人口増加数の推計値を取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域の人口変動を推測するようにコンピュータを機能させる人口変動推測プログラムであって、
分譲マンションの1戸当たりの人口増加数を1戸当たりの広さに関する条件と関連付けて記憶する増加数記憶手段、
前記地域内で予定されているマンションの分譲計画における1戸当たりの広さ及び分譲戸数を取得する分譲情報取得手段、
前記分譲情報取得手段が取得した前記1戸当たりの広さに対応する情報と前記増加数記憶手段による記憶内容とに基づいて前記マンションの分譲計画における1戸当たりの人口増加数を取得する戸別増加取得手段、並びに、
前記戸別増加取得手段が取得した前記1戸当たりの人口増加数と、前記分譲情報取得手段が取得した分譲戸数とに基づいて、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口の増加数を推測する増加人口推測手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする人口変動推測プログラム。
【請求項2】
前記増加数記憶手段が、前記人口増加数を年齢別に取得可能な値として記憶しており、
前記増加人口推測手段が、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口の増加数を年齢別に推測することを特徴とする請求項1に記載の人口変動推測プログラム。
【請求項3】
さらに、区画整理事業における期間及び計画人口を取得する区画整理事業情報取得手段としてコンピュータを機能させると共に、
前記増加人口推測手段が、
前記区画整理事業情報取得手段が取得した情報と、前記増加数記憶手段による記憶内容と、人口変動の推測の基準となる所定の時点における年齢別の人口とに基づいて、前記所定の時点から前記区画整理事業の完了時までの、前記区画整理事業による前記地域内の年齢別の人口増加数を推測することを特徴とする請求項2に記載の人口変動推測プログラム。
【請求項4】
前記増加数記憶手段が、前記1戸当たりの広さに関する互いに重複しない複数の条件のそれぞれと関連付けて前記1戸当たりの人口増加の年齢別割合を記憶しており、
前記増加人口推測手段が、前記区画整理事業の対象地域における前記所定の時点から前記区画整理事業の完了時までの前記区画整理事業による年齢別の人口増加数を推測するために、前記複数の条件のうちのいずれかの条件と関連付けて前記増加数記憶手段が年齢別に記憶している前記年齢別割合に基づくことを特徴とする請求項3に記載の人口変動推測プログラム。
【請求項5】
前記増加人口推測手段が、前記区画整理事業の対象地域内に前記マンションの分譲計画の実施地点が含まれる場合であって、当該マンションの分譲計画による人口の増加数を前記所定の時点における前記区画整理事業の対象地域の人口に加えた和を前記区画整理事業の計画人口が上回っている場合に、前記区画整理事業の計画人口から前記和を引いた差に基づいて、前記区画整理事業による前記地域内の年齢別の人口増加数を推測することを特徴とする請求項3又は4に記載の人口変動推測プログラム。
【請求項6】
人口が増加すると推測した地点の周辺の領域において、前記周辺の領域を構成する小領域ごとの人口の減少を、前記小領域と前記地点の距離が大きくなるほど小さく、前記小領域における人口が大きいほど大きく、且つ、前記周辺の領域における人口の減少数の合計が前記地点における人口の増加数と一致するように推測する減少人口推測手段としてコンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の人口変動推測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人口変動推測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
過去の人口統計の調査結果に基づいて将来の人口変動を推測する技術の一例として特許文献1がある。特許文献1では、人口統計の調査結果から、複数の地区における各地区の住みやすさを示す居住選好度が算出される。そして、複数の地区全体で予測される人口増加から、当該居住選好度に基づき、地区ごとの人口増加が計算される。ある地区の住居選好度が高い場合、その地区の人口増加は比較的大きく算出される。一方、ある地区の住居選好度が低い場合、その地区の人口増加は比較的小さく算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−160143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過去の人口統計の調査結果のみに基づくと人口変動を正確に予測できない場合がある。将来の人口変動に影響する要因であって、過去の調査結果には表れないものがあり得るからである。
【0005】
本発明の目的は、将来の人口変動に影響する要因であって過去の調査結果には表れないものを考慮することで将来の人口変動を比較的正確に推測する人口変動推測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
将来の人口変動に影響する要因にはさまざまなものが考えられる。しかしながら、プログラムの開発や計算の効率上、すべての要因を厳密に考慮することはできない。そこで、本発明者は、多くの要因のうち、人口変動の推測に比較的大きく影響するものに限定して人口変動の推測に考慮することとした。
【0007】
すなわち、本発明の人口変動推測プログラムは、地域の人口変動を推測するようにコンピュータを機能させる人口変動推測プログラムであって、分譲マンションの1戸当たりの人口増加数を1戸当たりの広さに関する条件と関連付けて記憶する増加数記憶手段、前記地域内で予定されているマンションの分譲計画における1戸当たりの広さ及び分譲戸数を取得する分譲情報取得手段、前記分譲情報取得手段が取得した前記1戸当たりの広さに対応する情報と前記増加数記憶手段による記憶内容とに基づいて前記マンションの分譲計画における1戸当たりの人口増加数を取得する戸別増加取得手段、並びに、前記戸別増加取得手段が取得した前記1戸当たりの人口増加数と、前記分譲情報取得手段が取得した分譲戸数とに基づいて、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口の増加数を推測する増加人口推測手段としてコンピュータを機能させる。
【0008】
地域の人口変動に比較的大きく影響する要因として、マンションの分譲計画が考えられる。マンションの分譲計画は大規模になることが多く、これによって当該地域の人口が大きく増加すると予測される。そこで、本発明は、地域の人口変動の推測に当たり、マンションの分譲計画による地域内の人口の増加数を推測するものとした。一方、本発明者は、マンションの分譲計画に着目するとともに、分譲されるマンションの1戸当たりの広さに着目した。マンションの1戸当たりの広さと1戸当たりの人口増加数とは相関が強いと考えられる。したがって、マンションの1戸当たりの人口増加数を1戸当たりの広さに関する条件と関連付けることにより、分譲計画上の1戸当たりの広さに特有の値として1戸当たりの人口増加数を取得できる。
【0009】
このように、本発明では、人口変動の推測に影響すると考えられる多くの要因のうち、マンション分譲計画における1戸当たりの人口増加数と分譲戸数に基づくこととした。これにより、本発明は、地域内の人口変動を適切に推測することができるものとなった。
【0010】
また、本発明においては、前記増加数記憶手段が、前記人口増加数を年齢別に取得可能な値として記憶しており、前記増加人口推測手段が、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口の増加数を年齢別に推測することが好ましい。マンションの1戸当たりの広さは、1戸当たりの年齢別の人口増加数とも相関が強いと考えられる。このため、マンションの1戸当たりの広さと関連付けて人口増加数を推測する本発明において1戸当たりの広さと1戸当たりの年齢別の人口増加数とをさらに関連付けることにより、年齢別の人口増加数を適切に推測できる。
【0011】
また、本発明においては、さらに、区画整理事業における期間及び計画人口を取得する区画整理事業情報取得手段としてコンピュータを機能させると共に、前記増加人口推測手段が、前記区画整理事業情報取得手段が取得した情報と、前記増加数記憶手段による記憶内容と、人口変動の推測の基準となる所定の時点における年齢別の人口とに基づいて、前記所定の時点から前記区画整理事業の完了時までの、前記区画整理事業による前記地域内の年齢別の人口増加数を推測することが好ましい。これによると、マンションの分譲計画のみならず、区画整理事業の計画人口にさらに基づくことで、地域の人口変動をより正確に推測できる。また、増加数記憶手段の記憶内容(マンションの1戸当たりの広さに関連付けられた1戸当たりの人口増加数)に基づいて区画整理事業による年齢別の人口増加を推測できる。
【0012】
また、本発明においては、前記増加数記憶手段が、前記1戸当たりの広さに関する互いに重複しない複数の条件のそれぞれと関連付けて前記1戸当たりの人口増加の年齢別割合を年齢別に記憶しており、前記増加人口推測手段が、前記区画整理事業の対象地域における前記所定の時点から前記区画整理事業の完了時までの前記区画整理事業による年齢別の人口増加数を推測するために、前記複数の条件のうちのいずれかの条件と関連付けて前記増加数記憶手段が年齢別に記憶している前記1戸当たりの人口増加年齢別割合に基づくことが好ましい。これによると、マンションの1戸当たりの広さに関連付けられた1戸当たりの人口増加数の情報に基づいて区画整理事業による年齢別の人口増加を推測する際に、1戸当たりの広さに関する複数の条件のいずれかに関連付けられた人口増加数に基づくので、区画整理事業による人口増加を簡易に推測できる。
【0013】
また、本発明においては、前記増加人口推測手段が、前記区画整理事業の対象地域内に前記マンションの分譲計画の実施地点が含まれる場合であって、当該マンションの分譲計画による人口の増加数を前記所定の時点における前記区画整理事業の対象地域の人口に加えた和を前記区画整理事業の計画人口が上回っている場合に、前記区画整理事業の計画人口から前記和を引いた差に基づいて、前記区画整理事業による前記地域内の年齢別の人口増加数を推測することが好ましい。これによると、区画整理事業の対象地域内にマンションの分譲計画が含まれている場合には、両方の影響が重複しないように地域内の人口変動を正確に推測できる。
【0014】
また、本発明においては、人口が増加すると推測した地点の周辺の領域において、前記周辺の領域を構成する小領域ごとの人口の減少を、前記小領域と前記地点の距離が大きくなるほど小さく、前記小領域における人口が大きいほど大きく、且つ、前記周辺の領域における人口の減少数の合計が前記地点における人口の増加数と一致するように推測する減少人口推測手段としてコンピュータをさらに機能させることが好ましい。これによると、人口が増加すると推測される地点の周辺の領域においては、人口増加分に対応して人口が減少すると推測する。このため、人口が増加する地点のみならず、地域全体で適切に人口の変動を推測可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る将来人口推測装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1の将来人口推測装置による人口の推測対象となる地域と当該地域を構成する小領域とマンション分譲計画の計画地点と区画整理事業の事業対象領域との地理的関係を示す図である。
【
図3】周辺地域の人口減少を誘引するマンション分譲計画の計画地点を含む人口増加領域とその周辺領域に設定される人口減少領域との地理的関係を示す図である。
【
図4】本実施形態による人口推計結果と住民基本台帳における人口との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る人口変動推測プログラムが適用された将来人口推測装置1について、
図1を参照しつつ説明する。将来人口推測装置1は、CPU、メモリ、ハードディスク等を備えたコンピュータと、当該コンピュータに接続されたキーボード、マウス等の入力装置と、当該コンピュータに接続されたディスプレイ等の出力装置とを備えている。コンピュータには、光磁気ディスクやフレキシブルディスクなどの外部記憶媒体に記録された情報を読み取る外部記憶装置が接続されてもよい。また、コンピュータは、他のコンピュータ等との情報通信を実施するためのインターネットなどの情報通信網と接続されてもよい。将来人口推測装置1のコンピュータが備えるハードディスク内には、本実施形態に係る人口変動推測プログラムが格納されている。CPUは、メモリ等の他のハードウェアと協働しつつ、人口変動推測プログラムに基づいて各種情報処理を実行する。かかるソフトウェアとハードウェアの協働により、
図1に示す記憶部10やマンション分譲情報取得部21等の、将来人口推測装置1を構成する各種機能部としてコンピュータが機能する。将来人口推測装置1は、これらの機能部が実行する処理により、将来人口の推測対象となる地域(以下、推測対象地域とする。)の将来人口を1年ごとに推測する。推測対象地域は、
図2に示すように、町丁目等の所定の地理的区分に従って複数の小領域Bに分けられている。将来人口推測装置1は小領域Bごとに将来人口を推測する。
【0017】
将来人口推測装置1による将来人口の推測に当たっては、推測を行う時点(現時点)において最新の人口統計調査結果が基礎とされる。以下、当該人口統計調査結果を基礎人口統計とする。基礎人口統計は、小領域Bを分ける所定の地理的区分ごとに、各歳別(1歳刻み)且つ男女別の人口を含んでいる。2015年現在において想定される基礎人口統計は2010年国勢調査結果に基づいて取得されたものである。また、基礎人口統計の調査時点を基礎統計時点とする。基礎統計時点の翌年以降の人口が将来人口推測装置1による推測対象である。基礎人口統計が2010年国勢調査結果に基づく場合、2010年が基礎統計時点である。
【0018】
以下、将来人口推測装置1を構成する各機能部について説明する。記憶部10(本発明における増加数記憶手段に対応する。)は、将来人口を推測するための条件等の情報を記憶する。これらの情報は、人口変動推測プログラム内に、これらの情報を示すデータとして含まれている。人口変動推測プログラムがハードディスクに記憶されたり、人口変動推測プログラム中のデータがメモリにロードされたりすることにより、これらの情報を示すデータ及び当該データを記憶するメモリ等によって記憶部10の機能が実現する。
【0019】
記憶部10が記憶する情報には、推測対象地域の位置及び範囲を示す情報、小領域Bの位置、範囲及び面積を示す情報、基礎人口統計を示す情報、マンション1戸当たりの人口増加数の推計値を示す情報(以下、戸別増加数情報とする。)、人口増加数の年齢別且つ男女別の割合を示す情報(以下、年齢別割合情報とする。)、小領域Bごとの各歳別且つ男女別の人口変化率が含まれる。小領域Bごとの各歳別且つ男女別の変化率は、基礎人口統計(2010年国勢調査結果)及びその5年前の人口統計(2005年国勢調査結果)を用いてコーホート法に基づいて算出された値である。一般的なコーホート法では5年間の変化率が算出されるが、本実施形態では1年当たりの変化率として5年間の変化率の5乗根が用いられる。その他、各情報の詳細については後述する。以下において、特に断りのない限り、各機能部はこれらの情報を記憶部10から取得するものとし、これらの情報が記憶部10から取得したものである旨の都度の説明を省略する。
【0020】
マンション分譲情報取得部21(本発明における分譲情報取得手段に対応する。)は、マンションの分譲計画に関する情報(以下、マンション分譲情報とする。)を取得する。マンション分譲情報は、計画地点の位置情報、分譲戸数、マンションの竣工時期、及び、1戸当たりの平均面積を含んでいる。マンション分譲情報取得部21は、かかる情報を、キーボード等の入力装置を介して入力された情報に基づいて取得してもよいし、外部記憶媒体や情報通信網から入力された情報に基づいて取得してもよい。情報取得の対象となるマンション分譲計画は、将来人口の推測に関わる時期に行われるもの、つまり、基礎統計時点以降に行われるものに限られる。マンション分譲情報取得部21に入力される情報が入力時点ですでに基礎統計時点以降に行われるものに限られていてもよいし、入力後にマンション分譲情報取得部21が基礎統計時点以降に行われるもののみを入力情報から抽出してもよい。さらに、情報取得の対象となるマンション分譲計画は、将来人口の推測に関わる地点で行われるもの、つまり、計画地点が推測対象地域内のものに限られる。上記同様、入力時点でこれらに限られていてもよいし、入力後にマンション分譲情報取得部21が入力情報からこれらを抽出してもよい。抽出の場合、マンション分譲情報取得部21は、推測対象地域又は小領域Bの位置及び範囲を示す情報に基づいて入力情報から該当情報を抽出する。以下において、特に断りのない限り、各機能部はマンション分譲情報取得部21が取得したマンション分譲情報を利用するものとし、マンション分譲情報がマンション分譲情報取得部21によって取得されたものである旨の都度の説明を省略する。
【0021】
区画整理事業情報取得部23(本発明における区画整理事業情報取得手段に対応する。)は、区画整理事業に関する情報(以下、区画整理事業情報とする。)を取得する。区画整理事業情報は、事業対象領域の位置及び範囲を示す情報、仮換地指定時点、事業終了時点(換地処分完了時点)、及び、事業対象領域内の計画人口(事業終了時点の人口)を含んでいる。区画整理事業情報取得部23は、かかる情報を、キーボード等の入力装置を介してオペレータが入力した内容から取得してもよいし、外部記憶媒体や情報通信網から取得してもよい。情報取得の対象となる区画整理事業は、将来人口の推測に関わる時期に行われるもの、具体的には、事業完了(換地処分完了)時点が基礎統計時点以降のものに限られる。区画整理事業情報取得部23に入力される情報が入力時点ですでに上記のものに限られていてもよいし、入力後に区画整理事業情報取得部23が上記のものを入力情報から抽出してもよい。さらに、情報取得の対象となる区画整理事業は、将来人口の推測に関わる地点で行われるもの、具体的には、区画整理の事業対象領域の少なくとも一部が推測対象地域に含まれるもの(
図3参照)に限られる。上記同様、入力時点でこれらに限られていてもよいし、入力後に区画整理事業情報取得部23が入力情報からこれらを抽出してもよい。抽出の場合、区画整理事業情報取得部23は、記憶部10に記憶された推測対象地域又は小領域Bの位置及び範囲を示す情報に基づいて入力情報から該当情報を抽出する。以下において、特に断りのない限り、各機能部は区画整理事業情報取得部23が取得した区画整理事業情報を利用するものとし、区画整理事業情報が区画整理事業情報取得部23によって取得されたものである旨の都度の説明を省略する。
【0022】
分譲増加取得部22(本発明における戸別増加取得手段に対応する。)は、マンション分譲情報と、戸別増加数情報及び年齢別割合情報とに基づいて、人口統計時点の翌年以降に該当する所定の1年に関して、各分譲計画における人口増加数の推計値Ki並びに、その1戸当たりの推計値Li及びその年齢別且つ男女別の推計値M(i,y)をそれぞれ取得する。iは、計画時点が上記所定の1年に該当するマンション分譲計画のインデックスであり、1,2,…n(n:マンション分譲計画数)のいずれかを取るものとする。yは年齢構成のインデックスであり、1,2,…16のいずれかを取るものとする(詳細は後述)。分譲増加取得部22は、推計値Ki、Li及びM(i,y)を、人口統計時点の翌年以降、1年ごとに取得する。なお、本実施形態においては、マンション分譲計画による人口増加は、その計画時点が属する年内に生じ、年を跨いだ人口増加が生じないものとする。
【0023】
戸別増加数情報は下記表1を示す情報である。この情報はマンション1戸当たりの面積に関する階級別に1戸当たりの増加数の推計値を示している。階級は、(a)S1平方メートル未満、(b)S1平方メートル以上であってS2(>S1)平方メートル未満、及び、(c)S2平方メートル以上の3つを含む。以下、3つの階級を階級a、b及びcと表す。表1のNx(x:アルファベットa〜cのいずれか)は、1戸当たりの広さが階級xに該当する分譲マンションによる1戸当たりの人口増加数の推計値を示す。
【0025】
年齢別割合情報は下記表2を示す情報である。この情報は、階級xにおける年齢別の人口増加数の割合R(x,y)を男女別に示している。このうち、表2は男性に関する。女性に関する表は表2と同様であるため、その記載を省略する。以下、男女別に推計値を取得する場合等において、その方法は男女に関して互いに同様である。このため、男女それぞれについて同様の方法である旨の都度の説明を省略する。また、特に断りのない限り、「年齢別且つ男女別」とは記載せず、単に「年齢別」と記載する。年齢構成は、0歳から74歳までを5歳刻みで互いに重複しない15の範囲に分けたときの各範囲と75歳以上の範囲とを含んでいる。以下、当該年齢構成に含まれる合計16の範囲を範囲1〜16とする。また、「年齢別」とは当該年齢構成別を意味するものとする。R(a,y)は、階級aに関して、範囲yにおける増加分の推計値のNaに対する割合を示す。つまり、階級aにおける範囲yの人口増加の推計値は(R(a,y)*Na)人となる。同様に、R(b,y)又はR(c,y)は、階級b又はcに関して、範囲yにおける増加分の推計値のNb又はNcに対する割合を示す。R(a,y)を男女及びy=1,2,…16の全てについて足し合わせると1になる。階級b、cについても同様である。表1及び表2の導出方法については後述する。
【0027】
分譲増加取得部22は、各マンション分譲計画iに関し、そのマンション分譲情報に含まれる1戸当たりの平均面積に対応する人口増加数の推計値Liを、表1に示す戸別増加数情報に基づいて取得する。また、分譲増加取得部22は、マンション分譲情報に含まれる分譲戸数と推計値Liとに基づいて当該マンション分譲計画全体における人口増加数の推計値Kiを取得する。さらに、分譲増加取得部22は、表2に示す年齢別割合情報と推計値Kiとに基づいて年齢別の推計値を取得する。例えば、1戸当たりの平均面積が階級bに該当する場合、分譲増加取得部22は推計値Li=Nbとする。また、分譲増加取得部22は、推計値Ki=Nb*(分譲戸数)とする。さらに、分譲増加取得部22は、M(i,1)=R(b,1)*Nb*(分譲戸数)、M(i,2)=R(b,2)*Nb*(分譲戸数)、…M(i,16)=R(b,16)*Na*(分譲戸数)により年齢別の推計値を取得する。
【0028】
なお、分譲増加取得部22が推計値Liを取得する機能が本発明における戸別増加取得手段の機能に対応し、分譲増加取得部22が推計値Ki及びM(i,y)を取得する機能が本発明における増加人口推測手段の機能に対応する。
【0029】
区画整理増加取得部24は、基礎統計時点の翌年以降の1年ごとに、各区画整理事業における事業対象領域に含まれる各小領域Bの1年当たりの人口増加数の推計値を年齢別に取得する。このとき、区画整理増加取得部24は、以下の通り、マンション分譲計画による人口増加数の推計値を区画整理事業による人口増加数の推計値から控除する。区画整理増加取得部24は、当該推計値の取得に当たり、マンション分譲情報、分譲増加取得部22が取得した推計値Ki、区画整理事業情報、並びに、小領域Bに係る情報、基礎人口統計、戸別増加数情報及び年齢別割合情報を利用する。
【0030】
まず、区画整理増加取得部24は、区画整理事業情報及び基礎人口統計に基づき、各区画整理事業に関し、区画整理事業の事業対象領域における基礎統計時点の人口を導出する。具体的には、区画整理増加取得部24は、推測対象地域における複数の小領域Bから事業対象領域と重複する部分を含む小領域Bを抽出する。例えば、
図2に示すように事業対象領域が設定されているとすると、当該領域と重複する部分を含む小領域Bとして、小領域B1〜B3が抽出される。そして、区画整理増加取得部24は、基礎人口統計に基づいて、抽出した小領域Bの人口を取得し、取得した人口を重み付きで加算することにより事業対象領域の人口を導出する。ここで、事業対象領域に完全に含まれる小領域B(例えば、
図2の小領域B2)の場合、区画整理増加取得部24は、その小領域Bの人口全体を事業対象領域の人口として加算する。一方、事業対象領域と一部のみ重複する小領域B(例えば、
図2の小領域B1及びB3)の場合、区画整理増加取得部24は、その小領域Bの面積(例えば、
図2のハッチング領域)と事業対象領域の面積との比に応じて小領域Bの人口に重みを付け、事業対象領域の人口として加算する。
【0031】
次に、区画整理増加取得部24は、マンション分譲情報、区画整理事業情報及び戸別増加数情報に基づき、区画整理事業の事業対象領域内におけるマンション分譲計画による人口増加の推計値Qを導出する。具体的には、区画整理増加取得部24は、マンション分譲情報に含まれる計画地点の位置情報及びマンションの竣工時期と、区画整理事業情報に含まれる事業対象領域の位置情報、仮換地指定時点及び事業終了時点とから、事業対象領域内に含まれ、且つ、区画整理事業の事業期間内に行われるマンション分譲計画(以下、重複分譲計画とする。)を全て抽出する。そして、区画整理増加取得部24は、全ての重複分譲計画についてKiを足し合わせることで、重複分譲計画による人口増加数の合計の推計値Qを算出する。つまり、Q=ΣKi(iは重複分譲計画に属するもの)と表される。ここでのΣは全てのiに関する足しあわせを意味する。
【0032】
次に、区画整理増加取得部24は、各区画整理事業に関する計画人口がQを上回っている場合に、計画人口からQを引いた差を当該区画整理事業による正味の人口増加数(以下、有効人口増加数Eとする。)とする。つまり、E=(計画人口)−Qと表される。なお、区画整理増加取得部24は、各区画整理事業に関する計画人口がその事業対象領域における重複分譲計画による人口増加数の合計の推計値以下である場合、E=0(ゼロ)とする。
【0033】
次に、区画整理増加取得部24は、各区画整理事業の事業対象領域に含まれる小領域Bごとの1年当たりの人口増加数の推計値を年齢別に取得する。具体的には、区画整理増加取得部24は、有効人口増加数Eを区画整理事業の事業期間の長さTで除算した値E/Tを、事業対象領域と重複する小領域Bごとに、事業対象領域と重複部分の面積比に応じた値に案分する。例えば、
図2の小領域B1及びB3には、事業対象領域の面積とハッチング領域の面積との比に応じた値が割り振られる。また、
図2の小領域B2には、事業対象領域の面積と小領域B2の全体の面積との比に応じた値が割り振られる。なお、区画整理事業の事業期間は仮換地指定時点から事業終了時点までの期間であるが、仮換地指定時点が不明である場合、仮換地指定時点の代わりに基礎統計時点の翌年度を事業期間の開始時点としてもよい。
【0034】
さらに、区画整理増加取得部24は、小領域Bごとに、年齢別割合情報のうち、階級cの年齢別割合に対応するR(c,1)〜R(c,16)を、上記のように案分された値にそれぞれ乗算する。これにより、区画整理増加取得部24は、各区画整理事業における事業対象領域に含まれる各小領域Bの1年当たりの人口増加数の年齢別推計値Ry(y=1,2,…16)を、基礎統計時点の翌年以降の1年ごとに取得する。つまり、Ry=(E/Tの案分値)*R(c,y)と表される。ここで、分譲マンションにおける1戸当たりの人口増加数の年齢別割合であるR(c,1)〜R(c,16)を区画整理事業における推計値取得に使用する理由は、以下のとおりである。区画整理事業によって新築されるのは分譲マンションを除くと主に1戸建てであると考えられる。一方、1戸建てによる人口増加数の年齢別割合は、最も面積が広い階級に対応する階級cにおけるR(c,1)〜R(c,16)と近似すると考えられるためである。なお、1戸建ての新築に関する人口増加数の年齢別割合を示す値を記憶部10に別途記憶させ、当該値をR(c,1)〜R(c,16)等の代わりに用いてもよい。
【0035】
なお、区画整理増加取得部24が推計値R(a,y)、R(b,y)又はR(c,y)を取得する機能が本発明における増加人口推測手段の機能に対応する。
【0036】
減少人口推測部25は、マンション分譲計画及び区画整理事業によって人口が増加する小領域Bの周辺地域において減少する人口数を、基礎統計時点の翌年以降の1年ごとに推測する。マンション分譲計画及び区画整理事業によって特定の小領域B(以下、人口増加領域とする。)の人口が急激に増加する際、当該人口増加領域へと周辺地域の小領域(以下、人口減少領域とする。)から人口が流入すると推測される。これによる人口減少領域における人口減少数を減少人口推測部25が下記の通りに推測する。
【0037】
まず、減少人口推測部25は、マンション分譲情報、区画整理事業情報、分譲増加取得部22が取得した推計値Ki及び区画整理増加取得部24が取得した推計値Ryに基づき、人口増加領域tにおける人口増加数の年齢別の推計値Y(t,y)(tは人口増加領域に属する小領域Bのインデックスを表す)を算出する。人口増加領域tにマンション分譲計画のみが存在するときはY(t,y)=ΣM(i,y)(iは、計画地点が人口増加領域tに含まれるマンション分譲計画のインデックス)であり、区画整理事業のみが存在するときはY(t,y)=Ry(ただし、Ryは、人口増加領域tに関する推計値)であり、両方が存在するときはY(t,y)=ΣM(i,y)+Ryである。なお、ここでのΣは全てのiに関する足し合わせを意味する。
【0038】
次に、減少人口推測部25は、人口増加領域tにおける人口増加数の推計値Y(t,y)が大きいほど広い範囲にわたって人口減少領域を設定する。具体的には、下表3に基づいて人口減少領域の設定範囲を決定する。なお、n1、n2、…n_fは、n1<n2<…<n_fを満たす自然数である。D1、D2、…Dfは、D1<D2<…<Dfを満たす正の実数であって、人口増加領域を中心とした円の半径を示す。例えば、n1≦Y(t,y)<n2を満たす場合、減少人口推測部25は、
図3に示すように、各人口増加領域を中心とした半径D2の円内の範囲及び円に掛かる範囲に該当する小領域Bを人口減少領域に設定する。
【0040】
ある人口増加領域tに関して、s個の人口減少領域が設定されたとする。推測対象となる年の前年における人口減少領域j(j:1〜sのいずれか)の年齢別(つまり、y=1,2,…16のそれぞれ)の人口をP(j,y)とするとき、人口減少数、つまり、P(j,y)と推測対象となる年における人口減少領域jの年齢別の人口との差の推計値ΔP(j,y)(>0)を、j=1,2,…sのそれぞれについて下記のように算出する。
ΔP(j,y)=Fj*P(j,y)*Y(t,y)
Fj=f(ρj)/Σ[f(ρj)*P(j,y)]
f(ρ)=1 (ρ≦d)
f(ρ)=1/ρ (ρ>d)
【0041】
上記において、推測対象となる年の前年における人口減少領域jの年齢別人口P(j,y)には、基礎人口統計、又は、後述の将来人口推測部30による推計値が用いられる。推測対象となる年の前年が基礎統計時点である場合には基礎人口統計が用いられ、推測対象となる年の前年が基礎統計時点の翌年以降である場合には将来人口推測部30による推計値が用いられる。ρjは、人口減少領域jと人口増加領域tとの距離である。小領域B同士の距離は、例えば、小領域Bの重心位置同士の距離である。ここでのΣ[…]は、j=1〜sについて[…]を全て足し合わせたものを意味する。dは、D1未満の定数である。f(ρ)は、ρ>dの範囲においてはρが大きくなるほど小さくなる関数である。f(ρ)としてこのような関数であれば、他の関数が用いられてもよい。これにより、ΔP(j,y)は、人口減少領域jと人口増加領域tとの距離がdより大きい範囲で大きくなるほど小さく、人口減少領域jの人口P(j,y)が大きいほど大きく、j=1,2,…sに関して合計を取ると人口増加領域tにおける人口増加数の推計値Y(t,y)と一致する値となる。
【0042】
将来人口推測部30は、マンション分譲情報取得部21が取得した推計値M(i,y)、区画整理増加取得部24が取得した推計値Ry、減少人口推測部25が取得した推計値ΔP(j,y)、及び、記憶部10の記憶内容に基づいて、基礎統計時点の翌年以降に関する1年ごとの各小領域Bの人口を推測する。
【0043】
将来人口推測部30は、基礎統計時点の翌年から1年ごとに各小領域Bの人口の推計値を取得する。まず、将来人口推測部30は、小領域Bごとに、基礎統計時点の翌年の推計値を取得する基礎となる基礎推計値p0(z)を、コーホート法に従って基礎人口統計から男女別に取得する。zは0,1,2,…75のいずれかであり、74以下の数値は各歳を、75は75歳以上を示す。具体的には、p0(1)〜p0(75)(1〜74歳の各歳別人口及び75歳以上の人口)は、基礎統計時点の人口を示す基礎人口統計の各歳別且つ男女別の人口に各歳別且つ男女別の人口変化率を乗算することにより男女別に算出される。また、p0(0)(0歳人口)は、基礎人口統計における15歳〜49歳の女性人口と0〜4歳人口の比、及び、0歳の男女人口比に基づいて男女別に算出される。
【0044】
次に、将来人口推測部30は、計画時点が基礎統計時点の翌年に該当するマンション分譲計画iに関して分譲増加取得部22が取得したM(i,y)を、その分譲計画の計画時点に該当する小領域Bに関して各歳別に基礎推計値p0(z)に加算する。M(i,y)は5歳刻みの値であるため、5歳刻みの各数値を1/5にしたものをp0(z)に加算する。このようにp0(z)にM(i,y)が加算されたものをp1(z)とする。次に、将来人口推測部30は、基礎統計時点の翌年を事業期間に含む区画整理事業の事業対象領域に含まれる小領域Bに関して区画整理増加取得部24が取得したRyを、当該小領域Bに関して各歳別にp1(z)に加算する。Ryは5歳刻みの値であるため、5歳階級ごとの数値を1/5にしたものをp1(z)に加算する。p1(z)にこのようにRyが加算されたものをp2(z)とする。そして、将来人口推測部30は、M(i,y)及びRyの少なくともいずれかを加算した小領域Bである人口増加領域の周辺地域に設定された人口減少領域jに関して減少人口推測部25が取得したΔP(j,y)を、当該人口増加領域に関して設定された全ての人口減少領域jに関して各歳別にp2(z)から減算する。ΔP(j,y)は5歳刻みの値であるため、5歳階級ごとの数値を1/5にしたものをp2(z)から減算する。p2(z)からこのようにΔP(j,y)が減算されたものをp3(z)とする。これにより、将来人口推測部30は、基礎統計時点の翌年における小領域Bごとの各歳別の人口p3(z)を男女別に取得する。各歳別のp3(z)を5歳階級ごとに足し合わせることで得られるP(k,y)は、上記の通り、減少人口推測部25によって翌年における人口減少領域の人口減少数を推測する際に用いられる。
【0045】
基礎統計時点の2年後以降の1年ごとについては、将来人口推測部30は、各年の前年に関して男女別に取得した小領域Bごとの各歳別人口p3(z)に基づき、基礎統計時点の翌年に関する上記の方法と同様の方法で、各年における小領域Bごとの各歳別人口p3(z)を男女別に取得する。つまり、前年のp3(z)に人口変化率を各歳別且つ男女別に乗算することにより、各年の推計値を取得する基礎となる1歳以上の各歳別且つ男女別人口の基礎推計値が算出される。また、前年のp3(z)における15歳〜49歳の女性人口と0〜4歳人口の比、及び、0歳の男女人口比に基づいて男女別0歳人口の基礎推計値が算出される。これらの基礎推計値に各年のM(i,y)及びRyが上記同様に加算されると共に、そこからさらに各年のΔP(j,y)が上記同様に減算されることにより、各年のp3(z)が取得される。将来人口推測部30は、基礎統計時点の2年後以降、1年ごとにp3(z)を取得する処理を繰り返すことにより、基礎統計時点の翌年以降の任意の年における小領域Bごとの各歳別人口p3(z)を男女別に取得する。また、各歳別のp3(z)を5歳階級ごとに足し合わせることで得られるP(k,y)は、上記の通り、減少人口推測部25によって翌年における人口減少領域の人口減少数を推測する際に用いられる。
【0046】
以下、表1及び表2に示す戸別増加数情報及び年齢別割合情報の取得方法について説明する。この方法は、ある年の人口統計調査結果(例えば、2005年国勢調査結果)とその5年前の人口統計調査結果(例えば、2000年国勢調査結果)とを用いる。以下、前者を第1人口統計とし、後者を第2人口統計とする。第1人口統計及び第2人口統計は、互いに対照可能な所定の地理的区分ごとの年齢別且つ男女別の人口を含んでいるものとする。
【0047】
まず、第2人口統計の調査時点から第1人口統計の調査時点までの5年間のマンション分譲情報を収集する。収集したマンション分譲情報から、各分譲マンションにおける分譲戸数、竣工時期、1戸当たりの平均面積及び位置情報を抽出する。そして、抽出した情報を、所定の地理的区分ごと且つ1年ごとに集計すると共に、1戸当たりの平均面積に関する上記階級a〜cに分類する。所定の地理的区分は、第1人口統計及び第2人口統計において使用されていると共にこれらの統計同士で対照可能な地理的区分(例えば、町丁目単位の区分)であるものとする。そして、上記所定の地理的区分のうち、マンション分譲による分譲戸数の合計が所定数(例えば、100戸)以上の地理的区分をサンプルとして抽出する。これは、分譲による人口増加の影響が特に大きい地理的区分を抽出することで、分譲以外による人口変動の要素を相対的に排除するためである。
【0048】
次に、第1人口統計及び第2人口統計のそれぞれから、サンプルとして抽出した地理的区分における人口を取得する。これにより第1人口統計より取得した人口から第2人口統計より取得した人口を引いた差を、各サンプルにおけるマンション分譲によって増加した人口とする。そして、階級a〜cのそれぞれに関して、表4に示すように、(イ)分譲による増加戸数の階級内の合計、(ロ)分譲によって増加した人口の階級内の合計、及び、(ハ)1戸当たりの人口増加数=ロ/イを導出する。表4から一部の項目を取り出したものが表1に相当する。また、第1人口統計における年齢別の人口及び第2人口統計における年齢別且つ男女別の人口に基づいて、上記と同様の手順で1戸当たりの人口増加数を年齢別且つ男女別に取得し、さらに年齢別且つ男女別の人口増加数のハに対する割合を算出したものが表2に相当する。
【0050】
以上説明した本実施形態によると、コーホート法によって取得される人口変化率等から将来人口の基礎推計値を取得すると共に、当該基礎推計値に将来の人口変動要因を加味した上で最終的な将来人口の推計値を取得する。過去の統計結果のみを用いるコーホート法等の従来方法によると、地域の人口変動に大きく影響する将来的要因を考慮しないため、正確な人口予測は困難である。本実施形態では、地域の人口変動に比較的大きく影響する将来的要因として、マンションの分譲計画及び区画整理事業計画を想定する。マンションの分譲計画や区画整理事業計画は大規模になることが多く、これによって当該地域の人口が大きく増加すると予測される。そこで、本実施形態では、地域の人口変動の推測に当たり、マンションの分譲計画及び区画整理事業計画による地域内の人口の増加数を推測するものとした。
【0051】
一方、本実施形態では、マンションの分譲計画による人口増加数を推測する際に、分譲されるマンションの1戸当たりの広さ(平均面積)に着目した。マンションの1戸当たりの広さと1戸当たりの人口増加数とは相関が強いと考えられる。したがって、マンションの1戸当たりの人口増加数(Na〜Nc)を1戸当たりの広さに関する条件(階級a〜c)と関連付ける表1に基づくことにより、分譲計画上の1戸当たりの平均面積に応じて1戸当たりの人口増加数の推計値Liを取得できる。
【0052】
このように、本実施形態では、人口変動の推測に影響すると考えられる多くの要因のうち、マンション分譲計画における1戸当たりの人口増加数と分譲戸数に基づくこととした。これにより、本実施形態は、地域内の人口変動を適切に推測することができるものとなった。例えば、本実施形態の将来人口推測装置1を用い、2000年国勢調査及び2005年国勢調査に基づいて2010年のある地方自治体における人口を推計したところ、推計人口と2010年の住民基本台帳との関係は
図4に示す結果となった。
図4の横軸(x軸)は住民基本台帳における人口を示し、縦軸(y軸)は推計人口を示す。各点は、地方自治体内の町丁目単位の各小領域に対応する。各点の位置は、各点に対応する小領域の住民基本台帳における人口及び推計人口を示す。直線は、これらの点に関して線形近似を行った結果である。Rの二乗はその決定係数(線形近似からのばらつきの程度)を示す。
【0053】
また、本実施形態においては、階級a〜cと1戸当たりの年齢別割合R(a,y)〜R(c,y)とをさらに関連付けた。マンションの1戸当たりの広さは、1戸当たりの年齢別の人口増加数とも相関が強いと考えられる。したがって、年齢別の人口増加数を適切に推測できる。また、マンション分譲計画等による人口増加数を年齢別に取得できることは、年齢別の集団の人口変動を追うコーホート法となじみやすい。このため、コーホート法を基礎とした本実施形態において将来人口を適切に推測できる。
【0054】
また、本実施形態においては、階級cに関連付けられた1戸当たりの人口増加数Nc及びR(c,y)に基づいて区画整理事業による年齢別の人口増加を推測する。このため、区画整理事業による年齢別の人口増加を簡易に推測できる。
【0055】
また、本実施形態においては、人口増加領域の周辺の人口減少領域においては、人口増加分に対応して人口が減少すると推測する。このため、人口増加領域のみならず、その周辺の人口減少領域を含めた地域全体で適切に人口の変動を推測可能である。
【0056】
以下、上述の実施形態の変形例について説明する。上述の実施形態では、マンションの1戸当たりの広さを示す情報として、1戸当たりの平均面積(平方メートル)がマンション分譲情報に含まれる。しかし、マンション1戸当たりの広さを示す情報はその他の情報であってもよい。例えば、1戸当たりの平均坪数であってもよい。また、平均値でなく、1戸ごとの広さに関する情報であってもよい。この場合、表1や表2に基づき、1戸ごとに人口増加数の推計値を求め、その推計値を全戸について合計することで、各マンション分譲計画における人口増加数の推計値を取得してもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、マンション1戸当たりの面積を階級a〜cの3階級に分け、これらの階級と1戸当たりの人口増加数とを関連付けている。しかし、2階級又は4階級以上の階級と1戸当たりの人口増加数とを関連付けてもよい。また、1戸当たりの面積に関する関数を用いて1戸当たりの人口増加数を求めることとしてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、区画整理事業による人口増加数の年齢別の推計値を取得するために、マンション分譲における人口増加数の年齢別割合のうち、階級cと関連付けられた年齢別割合を用いている。つまり、複数の階級のうちのあらかじめ決定された1つの階級と関連付けられたマンション分譲による人口増加数の年齢別割合が用いられている。しかし、区画整理事業による人口増加数の年齢別の推計値を取得する際に、複数の階級のうちのいずれかが選択されると共に、選択された階級と関連付けられた年齢別割合が用いられてもよい。例えば、新築される1戸建ての広さを示す情報が区画整理事業情報に含まれており、当該情報に基づいて適切な階級が選択されてもよい。
【0059】
また、上述の実施形態では、将来人口推測装置1が、マンション分譲計画及び区画整理事業の両方を考慮することで各小領域Bにおける将来人口を推測するように構成されている。しかし、推測対象地域において区画整理事業が行われないことが前提となる場合には、マンション分譲計画のみを考慮して将来人口を推測する構成として本発明が実施されてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、将来人口推測装置1が推測対象地域内の将来人口を1年ごとに推測している。しかし、半年ごとや1月ごとなど、1年より短い期間ごとの将来人口を推測してもよい。この場合、半年ごとや1月ごとの人口変動が考慮される。例えば、マンション分譲計画による人口増加は半年ごとや1月ごとの変動が考慮される。また、表1や表2として、半年ごとや1月ごとの人口増加を示す内容が用いられる。なお、1年より長い期間ごとの将来人口が推測されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 将来人口推測装置
10 記憶部
21 マンション分譲情報取得部
22 分譲増加取得部
23 区画整理事業情報取得部
24 区画整理増加取得部
25 減少人口推測部
30 将来人口推測部
【手続補正書】
【提出日】2016年2月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域の人口変動を推測するようにコンピュータを機能させる人口変動推測プログラムであって、
分譲マンションの1戸当たりの人口増加数を、1戸当たりの広さに関する条件と関連付けて、年齢別の値として取得可能に記憶する増加数記憶手段、
前記地域内で予定されているマンションの分譲計画における1戸当たりの広さ及び分譲戸数を取得する分譲情報取得手段、
前記分譲情報取得手段が取得した前記1戸当たりの広さに対応する情報と前記増加数記憶手段による記憶内容とに基づいて前記マンションの分譲計画における1戸当たりの人口増加数を年齢別に取得する戸別増加取得手段、並びに、
前記戸別増加取得手段が年齢別に取得した前記1戸当たりの人口増加数と、前記分譲情報取得手段が取得した分譲戸数とに基づいて、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口の増加数を年齢別に推測する増加人口推測手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする人口変動推測プログラム。
【請求項2】
地域の人口変動を推測するようにコンピュータを機能させる人口変動推測プログラムであって、
分譲マンションの1戸当たりの人口増加の年齢別割合及び1戸当たりの人口増加数を、1戸当たりの広さに関する互いに重複しない複数の条件のそれぞれと関連付けて記憶する増加数記憶手段、
前記地域内で予定されているマンションの分譲計画における計画地点の位置情報、竣工時期、1戸当たりの広さ及び分譲戸数を取得する分譲情報取得手段、
前記分譲情報取得手段が取得した前記1戸当たりの広さに対応する情報と前記増加数記憶手段による記憶内容とに基づいて前記マンションの分譲計画における1戸当たりの人口増加数を年齢別に取得する戸別増加取得手段、
区画整理事業における事業対象領域の位置情報、期間及び計画人口を取得する区画整理事業情報取得手段、並びに、
前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口増加数、及び、前記区画整理事業による前記地域内の人口増加数のそれぞれを年齢別に推測する増加人口推測手段としてコンピュータを機能させると共に、
前記増加人口推測手段が、
(a)前記戸別増加取得手段が取得した前記1戸当たりの人口増加数と、前記分譲情報取得手段が取得した分譲戸数とに基づいて、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口の増加数を年齢別に推測し、
(b)前記マンションの分譲計画における前記計画地点の位置情報、前記区画整理事業の事業対象領域の位置情報、及び、前記マンションの分譲計画による人口増加数の推測結果に基づいて、前記区画整理事業の事業対象領域内における前記マンション分譲計画による人口増加数の推測値を前記区画整理事業による前記地域内の人口増加数の推測値から控除しつつ、前記区画整理事業における期間及び計画人口、並びに、前記複数の条件のうちのいずれかの条件と関連付けて前記増加数記憶手段が年齢別に記憶している前記年齢別割合に基づいて、所定の時点から前記区画整理事業の完了時までの、前記区画整理事業による前記地域内の年齢別の人口増加数を推測することを特徴とする人口変動推測プログラム。
【請求項3】
前記増加人口推測手段が、前記区画整理事業の対象地域内に前記マンションの分譲計画の実施地点が含まれる場合であって、当該マンションの分譲計画による人口の増加数を前記所定の時点における前記区画整理事業の対象地域の人口に加えた和を前記区画整理事業の計画人口が上回っている場合に、前記区画整理事業の計画人口から前記和を引いた差に基づいて、前記区画整理事業による前記地域内の年齢別の人口増加数を推測することを特徴とする請求項2に記載の人口変動推測プログラム。
【請求項4】
人口が増加すると推測した地点の周辺の領域において、前記周辺の領域を構成する小領域ごとの人口の減少を、前記小領域と前記地点の距離が大きくなるほど小さく、前記小領域における人口が大きいほど大きく、且つ、前記周辺の領域における人口の減少数の合計が前記地点における人口の増加数と一致するように推測する減少人口推測手段としてコンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の人口変動推測プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
すなわち、本発明の人口変動推測プログラムは、地域の人口変動を推測するようにコンピュータを機能させる人口変動推測プログラムであって、分譲マンションの1戸当たりの人口増加数を
、1戸当たりの広さに関する条件と関連付けて
、年齢別の値として取得可能に記憶する増加数記憶手段、前記地域内で予定されているマンションの分譲計画における1戸当たりの広さ及び分譲戸数を取得する分譲情報取得手段、前記分譲情報取得手段が取得した前記1戸当たりの広さに対応する情報と前記増加数記憶手段による記憶内容とに基づいて前記マンションの分譲計画における1戸当たりの人口増加数を
年齢別に取得する戸別増加取得手段、並びに、前記戸別増加取得手段が
年齢別に取得した前記1戸当たりの人口増加数と、前記分譲情報取得手段が取得した分譲戸数とに基づいて、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口の増加数を
年齢別に推測する増加人口推測手段としてコンピュータを機能させる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、マンションの1戸当たりの広さは、1戸当たりの年齢別の人口増加数とも相関が強いと考えられる。このため、マンションの1戸当たりの広さと関連付けて人口増加数を推測する本発明において1戸当たりの広さと1戸当たりの年齢別の人口増加数とをさらに関連付けることにより、年齢別の人口増加数を適切に推測できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、本発明
の別の観点によると、本発明は、地域の人口変動を推測するようにコンピュータを機能させる人口変動推測プログラムであって、分譲マンションの1戸当たりの人口増加の年齢別割合及び1戸当たりの人口増加数を、1戸当たりの広さに関する互いに重複しない複数の条件のそれぞれと関連付けて記憶する増加数記憶手段、前記地域内で予定されているマンションの分譲計画における計画地点の位置情報、竣工時期、1戸当たりの広さ及び分譲戸数を取得する分譲情報取得手段、前記分譲情報取得手段が取得した前記1戸当たりの広さに対応する情報と前記増加数記憶手段による記憶内容とに基づいて前記マンションの分譲計画における1戸当たりの人口増加数を年齢別に取得する戸別増加取得手段、区画整理事業における事業対象領域の位置情報、期間及び計画人口を取得する区画整理事業情報取得手段、並びに、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口増加数、及び、前記区画整理事業による前記地域内の人口増加数のそれぞれを年齢別に推測する増加人口推測手段としてコンピュータを機能させると共に、前記増加人口推測手段が、(a)前記戸別増加取得手段が取得した前記1戸当たりの人口増加数と、前記分譲情報取得手段が取得した分譲戸数とに基づいて、前記マンションの分譲計画による前記地域内の人口の増加数を年齢別に推測し、(b)前記マンションの分譲計画における前記計画地点の位置情報、前記区画整理事業の事業対象領域の位置情報、及び、前記マンションの分譲計画による人口増加数の推測結果に基づいて、前記区画整理事業の事業対象領域内における前記マンション分譲計画による人口増加数の推測値を前記区画整理事業による前記地域内の人口増加数の推測値から控除しつつ、前記区画整理事業における期間及び計画人口、並びに、前記複数の条件のうちのいずれかの条件と関連付けて前記増加数記憶手段が年齢別に記憶している前記年齢別割合に基づいて、所定の時点から前記区画整理事業の完了時までの、前記区画整理事業による前記地域内の年齢別の人口増加数を推測する。これによると、マンションの分譲計画のみならず、区画整理事業の計画人口にさらに基づくことで、地域の人口変動をより正確に推測できる。また、増加数記憶手段の記憶内容(マンションの1戸当たりの広さに関連付けられた1戸当たりの人口増加数)に基づいて区画整理事業による年齢別の人口増加を推測できる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、マンションの1戸当たりの広さに関連付けられた1戸当たりの人口増加数の情報に基づいて区画整理事業による年齢別の人口増加を推測する際に、1戸当たりの広さに関する複数の条件のいずれかに関連付けられた人口増加数に基づくので、区画整理事業による人口増加を簡易に推測できる。