【課題】専門家以外の一般ユーザであっても航空機着陸の判断に有用な情報を容易かつ的確に読み取ることが可能な着陸判断支援システム、着陸判断支援方法、及び着陸判断支援プログラムを提供すること。
【解決手段】航空機着陸の判断を支援する情報を提供する着陸判断支援システム1であって、画面生成部220は、グラフ画面P13を生成するグラフ画面生成部233と、表形式画面P12を生成する表形式画面生成部234とを含み、グラフ画面P13に含まれるグラフおよび表形式画面P12に含まれる表は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データを基に生成されたものであり、表示制御部260は、グラフ画面P13と表形式画面P12とを、表示部に並べて表示させる着陸判断支援システム1。
前記グラフ画面に含まれるグラフは、指定高度以下における、最新の前記正対風成分の変化、および、過去の前記正対風成分の変化の両方を同一グラフ内に表したものであり、
前記表形式画面に含まれる表は、指定高度以下における、最新の前記正対風成分、および、過去の前記正対風成分を示すものであることを特徴とする請求項1に記載の着陸判断支援システム。
前記表示制御部は、航空機の着陸難易度を示す着陸難易度情報を含む警報画面と前記グラフ画面と前記表形式画面とを前記表示部に並べて表示させ、着陸難易度が高いと判断された場合に、前記グラフ画面および前記表形式画面内の、前記着陸難易度に関連する風変化および風変化が発生している高度帯に対応する箇所を、他の箇所とは異なる表示で示すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の着陸判断支援システム。
前記着陸難易度情報は、最新の航空機の着陸難易度、および、着陸難易度の変化傾向を示すトレンド情報を含むことを特徴とする請求項6に記載の着陸判断支援システム。
前記警報画面には、所定高度帯かつ着陸経路上における滑走路方向に沿った風速の正対風成分の増減を示す情報、風擾乱の発生および発生した高度帯を示す擾乱発生情報、および、擾乱が航空機の飛行状態に与える影響を示す飛行状態情報が含まれることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の着陸判断支援システム。
前記画面生成部は、過去の前記警報画面に含まれた情報を含む警報履歴画面を生成する警報履歴画面生成部を更に有することを請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の着陸判断支援システム。
ユーザからの指示に従って、または、自動的に、複数の気象センサのうちいずれの気象センサを前記各種画面の情報提供源とするかを切り替えるセンサ切替部を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の着陸判断支援システム。
前記画面生成部で生成された画面に含まれる情報を、航空機内に設置される機器に送信可能なテキストフォーマットに変換するテキスト変換部を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の着陸判断支援システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、これらの従来のグラフィック表示装置は、様々なユーザを対象としているものの、香港では香港天文台職員が日本では気象庁職員等の専門家が主に使用しているのが現状であり、専門家以外の運航管理者やパイロット等の一般ユーザが必要情報を的確に読み取ることは難しいという問題がある。
【0005】
例えば、低層風擾乱情報が提供されたとしても、発生している低層風擾乱に対して実際の航空機や操縦への影響(揺れや経路逸脱、実際の着陸の難しさ)は機種やパイロットの主観によっても異なり、その警報情報を直接的に運航に役立たせることが難しい。
【0006】
また、これらのシステムから警報情報が提供されたとしても何ら問題なく航空機が着陸できたり、一方で、風擾乱情報が出ていないにも関わらず実際には着陸間際に風擾乱に遭遇して着陸復行が起こったり等の事象が実運航でしばしば起こっている。これは低層風擾乱が空間・時間的に小さいスケールの大気現象であるため、着陸の数分前に警報が出されたとしても実際に着陸する際には擾乱自体が消失している場合、または、その逆も考えられることに因る。実際にウインドシア警報が出されても、ウインドシアに当たる確率は数%程度であるとの調査結果もある(非特許文献6を参照)。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、専門家以外の一般ユーザであっても航空機着陸の判断に有用な情報を容易かつ的確に読み取ることが可能な着陸判断支援システム、着陸判断支援方法、及び着陸判断支援プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、航空機着陸の判断を支援する情報を提供する着陸判断支援システムであって、表示部に表示する各種画面を生成する画面生成部と、前記画面生成部により生成された各種画面を前記表示部に表示させる表示制御部とを有し、前記画面生成部は、着陸経路上における、滑走路方向に沿った風速の正対風成分の高度に対する変化を示すグラフを含むグラフ画面を生成するグラフ画面生成部と、着陸経路上における、所定高度ごとの風速の正対風成分を示す表を含む表形式画面を生成する表形式画面生成部とを含み、前記グラフ画面に含まれるグラフおよび前記表形式画面に含まれる表は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データを基に生成されたものであり、前記表示制御部は、前記グラフ画面と前記表形式画面とを、前記表示部に並べて表示させることにより、前記課題を解決するものである。
本発明の他の態様は、航空機着陸の判断を支援する情報を提供する着陸判断支援方法であって、着陸経路上における、滑走路方向に沿った風速の正対風成分の高度に対する変化を示すグラフを含むグラフ画面をグラフ画面生成部によって生成し、着陸経路上における、所定高度ごとの風速の正対風成分を示す表を含む表形式画面を表形式画面生成部によって生成し、前記グラフ画面に含まれるグラフおよび前記表形式画面に含まれる表は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データを基に生成されたものであり、前記グラフ画面と前記表形式画面とを、表示制御部によって表示部に並べて表示させることにより、前記課題を解決するものである。
本発明の更に他の態様は、航空機着陸の判断を支援する情報を提供する着陸判断支援プログラムであって、着陸経路上における、滑走路方向に沿った風速の正対風成分の高度に対する変化を示すグラフを含むグラフ画面をグラフ画面生成部によって生成する手順と、着陸経路上における、所定高度ごとの風速の正対風成分を示す表を含む表形式画面を表形式画面生成部によって生成する手順と、前記グラフ画面と前記表形式画面とを、表示制御部によって表示部に並べて表示させる手順と、をコンピュータに実行させるものであり、前記グラフ画面に含まれるグラフおよび前記表形式画面に含まれる表は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データを基に生成されたものであることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1、19、20に係る発明によれば、画面生成部は、着陸経路上における、滑走路方向に沿った風速の正対風成分の高度に対する変化を示すグラフを含むグラフ画面を生成するグラフ画面生成部と、着陸経路上における、所定高度ごとの風速の正対風成分を示す表を含む表形式画面を生成する表形式画面生成部とを含み、グラフ画面に含まれるグラフおよび表形式画面に含まれる表は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データを基に生成されたものであり、表示制御部は、グラフ画面と表形式画面とを、表示部に並べて表示させることにより、グラフ表示によって各高度における風速の増加・減少を直感的にイメージした後、表形式の表示によって各高度における風速を具体的に把握する等、一つの画面において一連の認識作業を行うことが可能になるため、風状況の分析を迅速かつ容易に行うことができる。
【0010】
本請求項2に係る発明によれば、グラフ画面に含まれるグラフは、指定高度以下における、最新の正対風成分の変化、および、過去の正対風成分の変化の両方を同一グラフ内に表したものであり、表形式画面に含まれる表は、指定高度以下における、最新の正対風成分、および、過去の正対風成分を示すものであることにより、ユーザは過去の風情報から低層風擾乱の変化傾向を把握し、今後の低層風擾乱の状況を予測することができ、また、擾乱発生が航空機の着陸に強く影響を与える指定高度以下の範囲に限定して風情報を提供することで、ユーザが低風層擾乱を直感的に把握し易くなる。
本請求項3に係る発明によれば、表示制御部は、着陸難易度情報を含む警報画面とグラフ画面と表形式画面とを表示部に並べて表示させ、着陸難易度が高いと判断された場合に、グラフ画面および表形式画面内の前記着陸難易度に関連する風変化および風変化が発生している高度帯に対応する箇所を、他の箇所とは異なる表示で示すことにより、問題となっている風擾乱の風速や高度帯を一目で直感的に把握することができる。
本請求項4に係る発明によれば、エコー強度画面には、最新のエコー強度情報、および、今後のエコーの予測情報とが並べて表されることにより、現在のレーダエコーの状況、実際に着陸すると予測される時刻のレーダエコーの状況を容易に比較可能となり、一覧性が高まり、着陸タイミングを良好に図ることが可能となる。
本請求項5に係る発明によれば、エコー強度画面は、空港、着陸経路、および、他の航空機の位置を示した空港周辺の地図に、指定高度以下のエコー強度情報を重ねて表示したものであることにより、エコーが航空機の飛行へ与える影響を直感的に把握することができ、また、エコー強度画面を1分〜2分間隔で更新することにより、変わり易い気象状況に対応することができるとともに、PIREPと呼ばれるパイロットレポートの更新間隔に近くなり、親和性が高くなる。
本請求項6に係る発明によれば、画面生成部は、航空機の着陸難易度を示す着陸難易度情報を含む警報画面を生成する警報画面生成部を含み、着陸難易度情報は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと、滑走路の方位データと、航空機の機種情報とを基に生成されたものであることにより、気象学等の専門的なスキルを有さない運航管理者やパイロット等の一般ユーザであっても、航空機着陸の判断に関連性の深い情報を容易かつ的確に読み取ることができる。また、従来、運航管理者が航空機に伝えるべき情報が整理されておらず、様々な表示情報から彼らの経験と知識で判断して航空機に情報を提供する方法がとられてきたが、警報画面を設けることで、警報内容及び航空機に伝達すべき内容が一目で理解可能となり、ユーザの状況認識向上及びメンタルワークロード軽減に寄与する。
本請求項7に係る発明によれば、着陸難易度情報は、最新の航空機の着陸難易度、および、着陸難易度の変化傾向を示すトレンド情報を含むことにより、着陸難易度の変化傾向を一目で把握することが可能であるため、着陸タイミングの判断が容易になる。
本請求項8に係る発明によれば、警報画面に、所定高度帯かつ着陸経路上における滑走路方向に沿った風速の正対風成分の増減を示す情報、風擾乱の発生および発生した高度帯を示す擾乱発生情報、および、擾乱が航空機の飛行状態に与える影響を示す飛行状態情報が含まれることにより、気象学等の専門的知識を必要とすることなく、注意すべき風擾乱や飛行状態への影響を把握することが可能であるため、今後の操縦の方針を容易かつ適切に計画することができる。
本請求項9に係る発明によれば、画面生成部は、過去の警報画面に含まれた情報を含む警報履歴画面を生成する警報履歴画面生成部を更に有することにより、過去の情報から警報内容の傾向を把握することが可能であるため、着陸タイミングの判断が容易になるとともに、過去の情報から警報内容の周期性を経験的に把握することができる。
本請求項10に係る発明によれば、着陸難易度情報は、航空機の機種ごとに生成されることにより、航空機の機種の特性を反映した精度の高い着陸難易度情報を提供すること可能であり、また、ユーザからの要求に従って、表示部に表示させる着陸難易度情報の対象機種を切り替える機種切替部を更に有することにより、機種毎の比較が容易となり、空港にどのような機種を運航させるかの参考情報とすることができる。
本請求項11に係る発明によれば、ユーザからの指示に従って、または、自動的に、複数の気象センサのうちいずれの気象センサを各種画面の情報提供源とするかを切り替えるセンサ切替部を更に有することにより、現在提示されている情報がどの観測装置から提供されたものかを把握することが可能であるため、気象やセンサメーカ等の専門家が本表示をモニターする際に有効な情報となり、また、例えば、表示される風擾乱情報に違和感があった場合において、どの気象センサに問題があるか等のトラブルシュートに利用可能となる。
本請求項12に係る発明によれば、画面生成部で生成された画面に含まれる情報を、航空機内に設置される機器に送信可能なテキストフォーマットに変換するテキスト変換部を更に有することにより、航空機に必要十分な情報を伝達し、航空機内においても十分な情報を基に着陸のプランニングや離陸前のブリーフィングを良好に行うことが可能であるとともに、航空機内に居るユーザとの間で情報の共有を図ることができ、また、運航管理者が機上に送る情報を整理する負荷が軽減される。
本請求項13に係る発明によれば、気象センサによって取得した観測対象のエコー強度データを含む観測情報から、各種情報を生成する情報生成部を有し、情報生成部は、気象センサの観測領域内に、水平面内の所定の2次元領域および鉛直方向の所定範囲で規定される3次元領域を複数設定し、エコー強度データの中から各3次元領域内に含まれる複数の値を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出された複数の値を母集団として、各3次元領域におけるエコー強度データの要約統計量を算出するエコー要約統計量算出部と、を有することにより、局所現象を検出し損なうことを防止しつつ、要約統計量を利用した2次元表示を実現して、表示における良好な視認性を確保することができる。
本請求項14に係る発明によれば、情報生成部は、過去の複数のタイミングにおける、エコー要約統計量算出部によって取得した各3次元領域における要約統計量の情報を基に、観測対象の移動ベクトルを算出するベクトル算出部と、ベクトル算出部によって取得した複数の移動ベクトルを母集団として、移動ベクトルの要約統計量を算出するベクトル要約統計量算出部と、ベクトル要約統計量算出部によって取得した移動ベクトルの要約統計量と、エコー要約統計量算出部によって取得したエコー強度データの要約統計量とを基に、エコー強度データの要約統計量の予測値を算出する予測情報算出部と、を更に有することにより、多大な計算コストを必要とすることなく、精度の高い短期予測情報を生成することができる。
本請求項15に係る発明によれば、気象センサによって取得した観測情報から各種情報を生成する情報生成部を有し、情報生成部は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと、滑走路の方位データとに前処理を施すデータ処理部と、航空機の機種情報とデータ処理部によって出力された複数の所定高度における航空機の飛行状態の変動幅とを入力情報として、第1の推定モデルによって、着陸難易度を推定する着陸難易度推定部とを有し、第1の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データと、着陸難易度をパイロットが主観的に評価した評価データとを学習データとして、非線形多変量解析手法によって構築されたものであることにより、特定の着陸経路およびパイロットが主観的に評価した評価データを反映した、運航障害や事故の発生と相関性が高く、有用性の高い着陸難易度を推定することができる。
本請求項16に係る発明によれば、気象センサによって取得した観測情報から各種情報を生成する情報生成部を有し、情報生成部は、風擾乱推定部を有し、風擾乱推定部は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと滑走路の方位データとに前処理を施すことで取得したデータを入力情報として、第2の推定モデルによって、複数の所定高度における風速の正対風成分の変動幅と横風成分の変動幅と上下風成分の変動幅とを推定するものであり、第2の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データを学習データとして、非線形多変量解析手法によって構築されたものであることにより、航空機の飛行状態を変動させる要因となる、風速の正対風成分の変動幅と横風成分の変動幅と上下風成分の変動幅とを、特定の着陸経路の情報を反映させて高精度に推定することができる。
本請求項17に係る発明によれば、気象センサによって取得した観測情報から各種情報を生成する情報生成部を有し、情報生成部は、風擾乱推定部を有し、風擾乱推定部は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと、滑走路の方位データとを入力情報として、座標変換を施すことにより、複数の所定高度における風速の正対風成分と風速の横風成分とを算出し、正対風成分および横風成分のそれぞれについて、高度方向に数値微分することにより、複数の所定高度における正対風成分の高度変化率および横風成分の高度変化率を算出し、正対風成分と横風成分と正対風成分の高度変化率と横風成分の高度変化率と高度とを入力情報として、第2の推定モデルによって、風速の正対風成分の変動幅と横風成分の変動幅と上下風成分の変動幅とを推定するものであり、第2の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データを学習データとして、非線形多変量解析手法によって構築されたものであることにより、着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと滑走路の方位データとから、特定の着陸経路の情報を反映させた、高精度な風速の各成分の変動幅を推定することができる。
本請求項18に係る発明によれば、気象センサによって取得した観測情報から各種情報を生成する情報生成部を有し、情報生成部は、航空機応答推定部を有し、航空機応答推定部は、複数の所定高度における着陸経路上の正対風成分および横風成分と、複数の所定高度における正対風成分の変動幅および横風成分の変動幅および上下風成分の変動幅とを入力情報として、第3の推定モデルによって、複数の所定高度における航空機の飛行状態の変動幅を推定するものであり、第3の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データを学習データとして、非線形多変量解析手法によって構築されたものであることにより、着陸難易度の推定にあたり重要な要素となる航空機の飛行状態の変動幅を、特定の着陸経路の情報を反映させて高精度に推定することが可能であるため、有用性の高い着陸難易度を推定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、航空機着陸の判断を支援する情報を提供する着陸判断支援システムであって、表示部に表示する各種画面を生成する画面生成部と、画面生成部により生成された各種画面を表示部に表示させる表示制御部とを有し、画面生成部は、エコー強度画面を生成するエコー強度画面生成部を含み、エコー強度画面に含まれるエコー強度情報は、気象センサによって取得した観測対象のエコー強度データを基に生成され、所定高度帯における空港周辺のエコー強度の要約統計量によって、エコー強度の水平分布を表示するものであることを特徴とする着陸判断支援システム。専門家以外の一般ユーザであっても航空機着陸の判断に有用な情報を容易かつ的確に読み取ることが可能なものであれば、その具体的な構成は如何なるものでもよい。
【0013】
例えば、本発明における気象センサの具体的態様は、風情報を取得することができるものであれば、気象レーダや気象ライダ等、如何なるものでもよい。
【0014】
以下に、本発明の一実施形態である着陸判断支援システム1について、
図1〜8に基づいて説明する。
【0015】
着陸判断支援システム1は、運航管理者・管制官・パイロット等の各種ユーザに対して、航空機着陸の判断を支援する情報を提供するものであり、
図1に示すように、各種情報を生成する観測・予測計算機100と、管制機関等の地上・機上システム等の表示部に各種画面を表示させる運航支援計算機200とを備えている。
【0016】
まず、運航支援計算機200について、
図1〜6に基づいて説明する。
【0017】
運航支援計算機200は、管制機関や航空機運航会社や航空機等の地上・機上システム、通常のパソコンや携帯端末(スマートフォン等)等の表示部に、各種画面を表示させるものである。運航支援計算機200は、制御部210、送受信部、記憶部、入力部、出力部、補助記憶装置等を備え、制御部210を記憶部に展開されたソフトウェアに従って動作させることにより、後述する各部を実現する。制御部210は、CPU等で構成され、記憶部は、ROM、RAM等で構成されている。
【0018】
制御部210は、
図3に示すように、各種画面を生成する画面生成部220と、画面生成部220により生成された各種画面を表示部に表示させる表示制御部260と、テキスト変換部262と、機種切替部263と、音声警報生成部264と、センサ切替部265とを有している。
【0019】
画面生成部220は、
図4に示すような風情報画面を生成する風情報画面生成部230と、
図5に示すようなレーダエコー画面を生成するエコー強度画面生成部240とを有している。
【0020】
風情報画面生成部230は、
図3に示すように、警報画面P11を生成する警報画面生成部231と、警報履歴画面(図示しない)を生成する警報履歴画面生成部232と、グラフ画面P13を生成するグラフ画面生成部233と、表形式画面P12を生成する表形式画面生成部234とを有している。
【0021】
表示制御部260は、
図3に示すように、表示一般機能を担う表示一般機能生成部261を有している。
【0022】
以下に、運航支援計算機200の各部および各種画面を説明する。
【0023】
まず、警報画面生成部231によって生成される警報画面P11について、
図4に基いて以下に説明する。
【0024】
まず、警報画面生成部231は、低層風擾乱に関して警報すべき情報を生成し、警報内容を簡潔なテキストで表示する。使用する文言は、航空従事者が使用している標準的用語や略語に統一する。運航管理者が警報画面P11に表示されたテキストをパイロットに無線で伝達することを考慮して、着陸難易度・低層風擾乱の状況が伝達可能な簡潔なテキストにまとめる。警報画面P11のまとめ方を、以下に説明する。
【0025】
まず、警報画面P11では、現象が簡潔に理解可能な情報である着陸難易度情報を一番上に持ってくることにより、ユーザの注意を惹く。次に、優先度の高い正対風の増加・減少情報を記載する。次に、細かい情報であるタービュランスや航空機諸元情報を記載する。また、警報画面P11では、画面の背景色を、警報が出された際に気づき易いように黒とする。また、警報画面P11は、ユーザの気づき易さを考慮して、風情報画面の目立つ位置(例:上側)に配置する。
【0026】
次に、警報画面P11の内容について、具体的に説明する。
【0027】
まず、警報画面P11の上から1行目には、「L/D COND RED TREND UNCHANGE(着陸難易度が復行が予測される程に高い、傾向としてその後も変化しない)」、「L/D COND AMBER TREND UNCHANGE(風擾乱により特別の注意・操作が必要、傾向としてその後も変化しない)」等、「着陸難易度」を複数段階(本実施形態では三段階)で表すとともに、「着陸難易度の変化傾向」を複数段階(本実施形態では三段階)で表す。
【0028】
まず、警報画面P11の「着陸難易度」については、以下の通りである。
【0029】
すなわち、警報画面P11の1行目には、風擾乱による着陸復行及び機体のウインドシア(持続した顕著な風向・風速の変化であり、結果として航空機の経路角や高度変化に影響を与える変化)警報が作動する確率を予測した結果を、着陸難易度として三段階(例:RED:着陸復行が予測される、AMBER:風擾乱により特別の注意・操作が必要、GREEN:問題なし)に分けて表示する。これにより、風擾乱の飛行への影響が分かりやすくなる。また、「RED」、「AMBER」、「GREEN」とテキストで表示する際にはユーザが状況を直感的に理解しやすいように、テキストが意味する色と合わせる(例:「RED」と書かれていたら文字色を赤色とする)。また、警報画面P11では、低層風擾乱による航空機への影響(揺れや経路逸脱)は機種によって異なるため、着陸難易度を機種ごとに表示する。
【0030】
次に、警報画面P11の「着陸難易度の変化傾向(トレンド)」については、以下の通りである。
【0031】
すなわち、警報画面P11の1行目には、着陸難易度の情報提供時と実際の着陸時との間には時間遅れがあることから、着陸難易度が今後どのように変化するかのトレンド情報を三段階(例:BETTER:回復傾向、WORTH:悪化傾向、UNCHANGE:変化なし)で表示する。
【0032】
着陸難易度と、着陸難易度のトレンドとは、一文形式で表される。これにより、現在の着陸難易度の状況及び今後の着陸難易度の状況を一覧性を持って直感的に認識可能である。
【0033】
次に、警報画面P11の上から2行目以下には、「11:25 LOSS −9KT : BTN 290FT(+24KT)−200FT(+15KT)(11:25に290FTから200FTの間で、−9KTの正対風の減少あり)」、「11:25 GUST ±10KT : BELOW 140FT(11:25に140FT以下に、タービュランスが±10KTあり)」、「11:24 SEVERE ROLL : BELOW 150FT(11:24に150FT以下に、ロール角の諸元変動が予想される)」等、所定高度帯かつ着陸経路上(滑走路上を含む)における滑走路方向に沿った「風速の正対風成分の増減」を示す情報、風擾乱の発生および発生した高度帯を示す「擾乱発生情報(タービュランス)」、または、擾乱が航空機の飛行状態に与える影響を示す「飛行状態情報(航空機諸元情報)」を表す。
【0034】
まず、警報画面P11の「正対風成分の増減」については、以下の通りである。
【0035】
この正対風成分の増減は、着陸難易度が高い場合において、正対風の増加・減少の情報を表示する。また、当該情報を観測された時刻と存在する高度帯と一緒に表示する。また、高度帯の表示方法としては、航空機の着陸過程を考慮して高度の高い順番から表示する。ここで、通常、文章を記述する際には、5W1H(「いつ(when)」、「どこで(where)」、「だれが(who)」、「何を(what)」、「何故(why)」、「どのように(how)」を基本とするが、本実施形態のテキストの並びは、人間の認知過程のモデルの一つとされている「認知」、「判断」、「行動」を考慮して生成する。すなわち、「いつ(when)」の情報の後に、ユーザ(特にパイロット)の一番注意を惹きたい情報である正対風の状態(増加(GAIN)か減少(LOSS)か)を文頭に、次に現象の細かい数値(正対風の増減値(例:−9KT、+8KTなどの値)が何KTで、「どこで(where)」発生しているかの情報)のテキストの並びとする。「どこで(where)」発生しているかの情報については、発生している位置ではなく高度帯(例:BTN 290FT(+24KT) - 200FT(+15KT))で記述する。
これにより、パイロットの注意をまず惹いて状況を「認知させる」、次に、その状況に対してどのように操縦するか(例:どの高度でどれぐらいの推力操作を増減させるか)を「判断させる」といったパイロットの一連の認知過程に適合した情報提供が可能となり、状況認識向上に寄与すると考えられる。
【0036】
次に、警報画面P11の「擾乱発生情報(タービュランス)」については、以下の通りである。
【0037】
すなわち、この擾乱発生情報は、タービュランス(急速で不規則な空気の動きによって生起され、航空機には急激な揺れとして影響を与える現象である。通常、航空機の経路角が変化する程の顕著な影響はない)が発生した場合に表示される。当該情報は、発生時刻と存在する高度と一緒に表示される。
【0038】
次に、警報画面P11の「飛行状態情報(航空機諸元情報)」については、以下の通りである。
【0039】
すなわち、着陸難易度が高い場合において、着陸難易度が関与する航空機諸元(例:姿勢、昇降率)情報が表示される。
【0040】
次に、グラフ画面生成部233によって生成されるグラフ画面P13について、
図4に基いて以下に説明する。
【0041】
まず、グラフ画面生成部233では、高度を縦軸、正対風を横軸のグラフ表現の正対風を生成する。また、正対風の増減が一目で分かりやすいように縦軸を0KTとする。また、グラフ画面生成部233で表す高度は、後述する手法によって抽出した高度帯(例:500ft以下、10ft刻み)とする。また、正対風のトレンドが理解可能なように、観測時刻と並行して過去数分間の情報を表示する。また、グラフ画面生成部233では、過去情報をグラフで表示する際には、観測時刻の情報と過去時刻の情報を明確に区別できるよう考慮する。具体例として以下の表示方法とする。すなわち、観測時刻の情報と過去時刻の情報を色を変えて区別する。また、観測時刻と過去時刻の正対風情報の色は同じとするが、過去になればなる程、線の色を薄くする。また、観測時刻の情報と過去時刻の情報を線の種類(例:実線、破線)を変えて区別する。また、着陸難易度が高い場合(例:着陸難易度が「RED」、「AMBER」になった時)は、当該着陸難易度に関与する顕著な風変化が発生している高度帯を、難易度で設定した色(例:「RED」なら赤色)で強調する。これにより、問題となっている風擾乱の高度帯を直感的に把握可能となる。また、着陸難易度が高い場合(例:着陸難易度が「RED」、「AMBER」になった時)は、問題となっている高度と正対風の数値をグラフの横に提示する。これにより、正対風の値を直感的に把握可能となり、風擾乱の飛行への影響が分かり易くなる。また、上記数値は、難易度で設定した文字色(例:「RED」なら赤色)とする。このような表示方法を採用することで、問題となっている高度帯及び実際の数値を同時に理解可能である。また、複数の風観測センサ(レーダ、ライダ、等)がある場合は、風が算出可能な範囲が広いセンサを自動選択して表示する。
【0042】
次に、表形式画面生成部234によって生成される表形式画面P12について、
図4に基いて以下に説明する。
【0043】
まず、表形式画面P12では、行に高度、列に観測時刻から過去数分間の飛行経路上(滑走路上の風含む)の風向・風速及び正対風情報を表形式で表示する。また、表形式の表示に関しては、風向・風速と正対風の表を二つ表示するのはレイアウトの場所を取るため、同じ表のセルに風向・風速と正対風の数値を入れる。具体的には、風向/風速(正対風)(例:350/05(+10):風向・風速が350度方向から5KTの風速、正対風がプラス10KT)とする。これにより、両者の関係を容易に読み取ることが可能となる。また、風向・風速、正対風成分を数値で表示する際には風向は10度単位で丸め、航空機の運航で通常使われる磁方位で表示する。また、正対風の数値には増加・減少が一目で分かるように、増加の場合は+、減少の場合は−を数値につける。また、着陸難易度が高い場合(例:着陸難易度が「RED」、「AMBER」になった時)は、当該着陸難易度に関与する顕著な風変化が発生している高度帯と時刻のセルを、難易度で設定した色(例:「RED」なら赤色)で強調する。これにより、問題となっている風擾乱の高度帯を直感的に把握可能となる。また、複数の風観測センサ(レーダ、ライダ、等)がある場合は、風が算出可能な範囲が広いセンサを自動選択して表示する。また、飛行経路上の風向・風速、正対風成分の表示に対して観測源(例:ライダ、レーダ)を提示する。
【0044】
次に、警報履歴画面生成部232について、
図4に基いて以下に説明する。
【0045】
本実施形態では、一日の着陸難易度や風向・風速の傾向が把握可能なように、着陸難易度や風向・風速の傾向を表示させる機能(Warning History機能)を設ける。ユーザが、
図4のP9を選択することで、「Warning History」機能を選択すれば、警報履歴画面を別画面で表示させるようにする。これによりユーザが警報や風向・風速の周期性を経験的に持つことが可能になる。警報履歴画面では、一日の着陸難易度が把握可能なように、過去数時間の着陸難易度を表示する。また、一日の風向・風速の傾向が把握可能なように、過去数時間の風向・風速を表示する。また、表示方法として、着陸難易度、風向、風速をそれぞれ、上段、中段、下段に位置させる。また、過去何時間の情報を表示させるかについては、ユーザが選択可能なようにする(例:1時間、3時間、6時間)。
【0046】
次に、エコー強度画面生成部240によって生成されるエコー強度画面P19について、
図5に基いて以下に説明する。
【0047】
まず、エコー強度画面P19は、大きく、観測時刻時のレーダエコー(
図5のP19−1)、および、指定時間後のレーダエコー予測(
図5のP19−2)を表示する。ここで、レーダエコーの指定高度およびレンジは、後述する手法によって抽出する。このように、観測時刻時のレーダエコー、指定時間後のレーダエコー予測を表示することで、航空機へのエコーかかり具合が現在時刻と着陸時刻で容易に認識可能となる。
【0048】
エコー強度画面P19では、指定高度面以下のレーダエコーを、エコー情報生成部170によって取得した、指定高度面以下のエコー強度の最大値、平均値等の一つの要約統計量で代表させてレーダエコーの水平分布を表示する。また、着陸タイミング判断に使用可能なように、レーダエコー水平分布について指定時間後の予測を表示する。指定時間後の予測情報を表示する理由は、実際に空港直上に航空機が到達してからアプローチを開始して着陸するまで時間を要するためである。現在表示と指定時間後の予測表示を提供することで、着陸のタイミングを図ることが可能となる。また、レーダエコーの水平分布の表示において、観測、あるいは予測の有効範囲を表示する。
【0049】
エコー強度画面P19では、レーダエコーの強度は、色で表現する。また、レーダエコーの現在表示に加えてレーダエコーの指定時間後の予測を一画面で表示する。一画面に表示することで、現在のレーダエコーの状況、実際に着陸すると予測される時刻のレーダエコーの状況を容易に比較可能となる。また、着陸経路上のどの位置にエコーが存在する(どの位置に降雨・降雪が存在するか)かが直感的に理解可能なように、空港や離着陸経路を掲示した地図にレーダエコーを重なる表示方法とする。また、エコー強度画面P19では、空港周辺にいる機体位置を重畳させて表示する。重畳することでエコーが飛行に及ぼす影響がより直感的に把握可能となる。なお、空港、離着陸経路、航空機等、エコー強度画面P19に表示させる対象は、任意に決定すればよい。
【0050】
ここで、運航支援計算機200によって提供される画面は、大きく分けて、
図4に示す風情報画面、および、
図5に示すレーダエコー画面であるが、ユーザは風情報画面およびレーダエコー画面の2つの画面を切り替えて利用することも、どちらか必要な画面のみ利用することも可能である。
【0051】
次に、表示一般機能生成部261について、
図4および
図5に基いて以下に説明する。
【0052】
まず、表示一般機能生成部261は、
図4のP4および
図5のP16を選択することで、
図4のP3および
図5のP15に表示される、日本時間または世界標準時の観測時間の切り替え機能を有している。これにより、世界標準時で提供されることの多い他の航空気象データと対応させることが可能となる。また、表示一般機能生成部261は、観測時刻から指定された時間以上経過した場合(後述する時刻切り替え機能が機能していないか、止まっている場合)は、観測時刻の表示色を変更するか、背景色を変更する機能を有している。これにより、自動更新機能が機能していないか、止まっていることの注意喚起をユーザに与えることが可能となり、また、自動更新機能が機能していない場合に、風観測センサの異常を発見できる可能性がある。また、表示一般機能生成部261は、
図4のP6または
図5のP18を操作することで、風やレーダエコーのトレンド情報が把握可能なように、過去情報をアニメーション表示できる機能を有している。これにより、風やレーダエコーのトレンド情報が把握可能となり、また、レーダエコー画面で機体位置もアニメーション可能なようにすることで、エコーと機体位置の関係がより直感的に把握可能となる。また、表示一般機能生成部261は、エコー強度画面P19において、機体位置もアニメーションできるようにし、エコーと機体位置の関係がより把握可能なようにする機能を有している。また、表示一般機能生成部261は、風やレーダエコーのトレンド情報が把握可能なように、時刻を切り替えて表示する機能を有している。また、表示一般機能生成部261は、
図4のP5または
図5のP17を操作することで、表示の自動更新機能を有している。また、表示一般機能生成部261は、アニメーションや時刻切り替え機能を使用する際には自動更新機能を使用せず、また、現在時刻の表示に戻したいときはこの機能を使用できるようなユーザが選択できる機能を有している。また、表示一般機能生成部261は、表示の説明を記述したヘルプ機能を有している。また、表示一般機能生成部261は、
図4のP1または
図5のP14を操作することで、ライダまたはレーダ画面を切り替える機能を有している。
【0053】
次に、テキスト変換部262について、
図4および
図6に基いて以下に説明する。
【0054】
テキスト変換部262は、正対風のグラフ情報・テキスト情報、着陸難易度、高度毎の風向・風速情報等を航空機にデータリンクを用いて伝達するために、風情報画面に表示されているグラフや文字を航空機に送信可能な
図6に示すようなACARS(Aircraft Communication Addressing and Reporting System)テキストフォーマットに変換するものである。ACARSテキスト変換は、
図4のP10を選択することにより行われる。
【0055】
次に、機種切替部263について、
図4に基いて以下に説明する。
【0056】
機種切替部263は、各種画面(警報画面P11、グラフ画面P13、表形式画面P12、警報履歴画面等)に表示される着陸難易度は機種によって変わることから、着陸難易度情報の対象機種を切り替えるものである。機種の切替は、
図4のP2を選択することで行われる。
【0057】
次に、音声警報生成部264について、
図4に基いて以下に説明する。
【0058】
音声警報生成部264は、着陸難易度が高い場合(
図4のP7を選択することで設定した「RED」または「AMBER」に着陸難易度が達した時)に音声で警報するものである。また、音声警報生成部264は、着陸難易度毎に音声の内容を変更して提示する。音声内容を変更するのは着陸難易度毎の違いを気付かせるためである。また、音声警報生成部264は、着陸難易度毎に音声の質(例:男性の声、女性の声)を変更して提示する。また、音声警報生成部264は、ユーザの注意を惹くため、まずは着陸難易度(例:RED、AMBER)を第一声とする(例、REDの場合:RED、 RED、 Landing Condition RED、AMBERの場合:AMBER、AMBER、Landing Condition AMBER)。また、警報音を出すか出さないかをユーザが選べるように画面上に選択機能を設ける(例:REDのみON、ANBERはOFF)。
【0059】
次に、センサ切替部265について、
図4に基いて以下に説明する。
【0060】
センサ切替部265は、ユーザからの指示に従って、または、自動的(自動切り替え)に、複数の気象センサ(ライダ、レーダ)のうちいずれの気象センサを各種画面の情報提供源とするかを切り替えるものである。センサ切替部265の切替は、
図4のP8を選択することで行われる。
【0061】
次に、各種画面に表示させる情報等の決定手法について、以下に説明する。
【0062】
ここで、空港毎に問題となっている高度帯や距離レンジは異なるため、当該空港で問題となっている高度帯及びレンジを風観測データ、航空機の諸元データ及びパイロット・運航管理者のアンケートから抽出する。具体的には、以下の通りである。
【0063】
まず、該当する空港で低層風擾乱の厳しい時期を選定する。また、当該時期に風観測装置(例:レーダ、ライダ)を用いて、風観測データを取得する。また、同データを取得する時期の航空機の諸元データを取得する。また、同データを取得する時期において同空港に就航するパイロットに対してアンケートを実施する。すなわち、顕著な風変化があった高度帯、その際に感じた主観的な風速、着陸難易度の主観評価を記入させる。また、何[ft]付近の高度帯の風情報を取得したいかを記入させる。また、レーダエコーに関して、カバーして欲しい距離レンジ・高度を記入させる。また、積乱雲があった場所と雲頂高度を記入させる。また、機上で取得したい情報・情報取得のタイミング・望ましい伝達手段を記入させる。また、同データを取得する時期において同空港の運航管理者に対してアンケートを実施する。すなわち、地上で取得したい情報を記入させる。そして、パイロットおよび運行管理者によるアンケート結果から、顕著な風変化があった高度帯を抽出する。また、同高度帯及び「何[ft]付近の風情報を取得したいか。」の結果、風観測データ、飛行データから、当該装置で提供する低層風擾乱の高度帯を決定する。また、「カバーする距離レンジ・高度」、「積乱雲があった場所と雲頂高度」の記入結果から、当該装置で提供するレーダエコーの距離レンジを決定する。また、パイロットアンケートの「機上で取得したい情報」及び運航管理者アンケートの「地上で取得したい情報」の結果から、情報提供内容を選定する。また、パイロットアンケートの「望ましい伝達手段」の結果から、無線で伝達すべき情報とACARSで伝達すべき情報を整理し、無線で伝達すべき情報は警報画面P11に、ACARSで伝達すべき情報はテキスト変換部262に反映する。
【0064】
次に、各種情報の更新間隔について、以下に説明する。
【0065】
すなわち、本実施形態では、変わりやすい気象に対して情報を提供するため更新間隔を1分〜2分間隔とする。ウインドシアの情報を提供するシステムとして1分間隔の更新間隔を持つシステムは存在するが、レーダエコー情報の更新間隔が1分〜2分というシステムは存在しない。本更新間隔にすることによりPIREPと呼ばれているパイロットレポートの更新間隔に近く親和性が高くなると考えられる。
【0066】
次に、各種情報を生成する観測・予測計算機100について、
図2、
図7、
図8に基づいて説明する。
【0067】
観測・予測計算機100は、気象センサによって取得した観測情報をデータ処理し、各種情報を生成するものである。観測・予測計算機100は、制御部110、送受信部、記憶部、入力部、出力部、補助記憶装置等を備え、制御部110を記憶部に展開されたソフトウェアに従って動作させることにより、後述する各部を実現する。制御部110は、CPU等で構成され、記憶部は、ROM、RAM等で構成されている。
【0068】
制御部110は、各種情報を生成する情報生成部120を有し、情報生成部120は、風情報を生成する風情報生成部130と、エコー情報を生成するエコー情報生成部170とを有している。
【0069】
風情報生成部130は、
図2に示すように、風擾乱推定部140および航空機応答推定部150を含むデータ処理部と、航空機の着陸難易度を算出する着陸難易度推定部160とを有している。
【0070】
風擾乱推定部140は、
図2に示すように、風成分算出部141と、変化率算出部142と、変動幅推定部143とを有している。風擾乱推定部140の各部による処理内容については、以下の通りである。
【0071】
まず、風成分算出部141は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと、滑走路の方位データとを入力情報として、座標変換を施すことにより、複数の所定高度における滑走路方向に沿った風速の正対風成分と滑走路方向に直交する横方向に沿った風速の横風成分とを算出する。
【0072】
次に、変化率算出部142は、風成分算出部141によって取得した正対風成分および横風成分のそれぞれについて、高度方向に数値微分することにより、正対風成分の高度変化率および横風成分の高度変化率を算出する。
【0073】
次に、変動幅推定部143は、正対風成分と横風成分と正対風成分の高度変化率と横風成分の高度変化率と高度とを入力情報として、第2の推定モデルによって、入力と同高度における着陸経路上の、正対風成分の変動幅と、横風成分の変動幅と、上下風成分の変動幅とを推定する。変動幅推定部143では、変化スケールが10〜100mオーダの比較的小規模な風速変動の主要な生成要因の一つが、風速の高度変化(シア)であるため、入力情報として正対風成分、横風成分の高度変化率を利用している。
【0074】
上述した第2の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データを基に、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシーン等の非線形多変量解析手法によって生成されたものである。第2の推定モデルの具体的内容は、以下の通りである。
【0075】
まず、第2の推定モデルの出力である風速成分の変動幅は、航空機応答推定部150の入力として使用するため、飛行姿勢を変動させる変化スケールが10〜100mオーダの風擾乱の情報を含む必要がある。しかし、一般的な100mオーダの空間分解能の風観測センサでは、この情報を直接観測できない。このため、第2の推定モデルの構築に用いる学習データは、以下の方法で生成する。
【0076】
学習データは、推定対象となる着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データを基に生成する。飛行データは、100例以上等、できるだけ多数を用意することが望ましい。飛行データとしては、例えば、一般的な旅客機が搭載しているフライトデータレコーダ(FDR)のデータが使用できる。一般的な航空機運航会社は、FDRのデータを過去1年分程度保管しており、データ数の確保は容易である。航空機が受けた正対風・横風・上下風の3成分の風の時歴情報(以下、飛行データ算出風)は、飛行データから算出が可能である(非特許文献3を参照)。航空機の飛行データは通常1〜10Hz程度のレートで記録されており、通常の着陸時の対地飛行速度は60m/s程度であることを考慮すれば、例えば2Hzのレートで記録された飛行データに基づく風情報の空間分解能は30m程度となり、飛行データから算出した3成分の風データには、飛行姿勢を変動させる小規模な風擾乱(変化スケールが10〜100mオーダ)の情報が十分含まれている。学習データにおいて、レーダ、ライダ等の既存の風観測センサの出力に相当する推定モデルの入力は、飛行データ算出風を風観測センサの空間分解能(100mオーダ)に合うような区間幅(例:100〜200mの空間分解能に合わせる場合、2〜3秒程度)で移動平均して生成する。学習データにおいて、推定モデルの出力となる正対風・横風・上下風の3成分の風の変動幅は、飛行データ算出風の移動平均値周りの標準偏差として算出する。標準偏差算出のための移動平均は、飛行姿勢を変動させる風擾乱(変化スケールが10〜100mオーダ)による風速変動を主に表す区間幅(例:通常の大型旅客機の場合、2〜5秒程度)で行う。
【0077】
次に、航空機応答推定部150の処理内容について以下に説明する。航空機応答推定部150は、風成分算出部141によって取得した複数高度における着陸経路上の正対風成分および横風成分と、変動幅推定部143によって取得した複数高度における着陸経路上の正対風成分の変動幅および横風成分の変動幅および上下風成分の変動幅と、航空機の機種情報とを入力情報として、着陸経路および航空機の機種ごとに設定された第3の推定モデルによって、入力と同高度における航空機の飛行状態(飛行諸元)の変動幅を推定する。
【0078】
上述した第3の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した推定対象機種の航空機の飛行データを基に、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシーン等の非線形多変量解析手法によって生成されたものである。第3の推定モデルの具体的内容は、以下の通りである。
【0079】
まず、第3の推定モデルの推定対象とする飛行諸元は、操縦の難易度と相関の高い対気速度、姿勢(ロール、ピッチ)、上下・左右加速度、昇降率、操舵量等が適当であるが、これに限定されるものではない。機種毎に異なる飛行特性を考慮するため、推定モデルは機種毎に構築する。第3の推定モデルの出力である飛行諸元の変動幅は、着陸難易度推定部160の入力として使用するため、操縦の難易度と相関が高い周波数帯の飛行諸元の変動情報を含むように推定する。このため、第3の推定モデルの構築に用いる学習データは、以下の方法で生成する。
【0080】
学習データは、推定対象となる着陸経路上を飛行して着陸した推定対象の機種の航空機の飛行データを基に生成する。ここで、飛行データは、100例以上等、できるだけ多数を用意することが望ましく、特に、パイロットの操縦特性を平均的に反映するために、多数のパイロットが操縦した飛行データを用意することが望ましい。学習データにおいて、推定モデルの入力となる風データは、風擾乱推定部140の出力生成と同様の手法で飛行データから生成する。学習データにおいて、推定モデルの出力となる飛行諸元の変動幅は、推定対象の飛行諸元に対応する飛行データの移動平均値周りの標準偏差として算出する(通常、飛行データには、推定対象の飛行諸元の記録が含まれている)。標準偏差算出のための移動平均は、操縦の難易度と相関が高い飛行諸元の変動を主に表す区間幅(例:通常の大型旅客機の場合、2〜4秒程度)で行う。
【0081】
次に、着陸難易度推定部160の処理内容について以下に説明する。着陸難易度推定部160は、航空機の機種情報と航空機応答推定部150によって取得した複数の所定高度における航空機の飛行状態の変動幅とを入力情報として、着陸経路および航空機の機種ごとに設定された第1の推定モデルによって、複数の区分(例:難易度が低、中、高の3段階)に分けられた着陸難易度を算出する。
【0082】
第1の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した推定対象機種の航空機の飛行データと着陸難易度をパイロットが主観的に評価した評価データとを基に、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシーン等の非線形多変量解析手法によって生成されたものである。第1の推定モデルの具体的内容は、以下の通りである。
【0083】
まず、第1の推定モデルの学習データは、推定対象となる着陸経路上を飛行して着陸した推定対象の機種の航空機の飛行データ、および着陸の難易度をパイロットが主観的に評価した評価データを基に生成する。ここで、飛行データは、100例以上等、できるだけ多数を用意することが望ましく、特に、パイロットの操縦特性を平均的に反映するために、多数のパイロットが操縦した飛行データを用意することが望ましい。また、評価データについても、100例以上等、できるだけ多数を用意することが望ましい。なお、パイロットの主観評価は、推定モデルの出力と同じ区分分けで行うものとする。学習データにおいて、推定モデルの入力となる航空機の飛行諸元の変動幅は、航空機応答推定部150の出力生成と同様の手法で飛行データから生成する。学習データにおいて、推定モデルの出力となる着陸の難易度は、パイロットの主観評価データを用いる。この主観評価データは、例えば、パイロットへのアンケート調査を一定期間行うことで収集可能である。
【0084】
次に、エコー情報生成部170について、以下に説明する。エコー情報生成部170は、
図2に示すように、気象センサによる観測情報に含まれたエコー強度データの要約統計量を算出する鉛直要約統計処理部180と、10分〜20分後のエコー強度データの要約統計量の予測値を算出する短期予測処理部190とを有している。
【0085】
鉛直要約統計処理部180は、
図3に示すように、気象センサの観測領域内に複数設定された3次元領域R内にそれぞれ含まれた複数の値を抽出する抽出部181と、抽出部181によって抽出された複数の値を母集団として各3次元領域Rにおけるエコー強度データの要約統計量を算出するエコー要約統計量算出部182とを有している。鉛直要約統計処理部180による処理の具体的内容については、以下の通りである。
【0086】
まず、抽出部181は、
図8に示すように、気象センサの観測領域内に複数設定された各3次元領域R内に含まれる複数の値を抽出する。前記3次元領域Rは、任意に設定された水平面内の2次元領域、および、任意に設定された鉛直方向における範囲で規定される。
【0087】
ここで、本実施形態における、前記観測領域および前記3次元領域Rの具体的な設定については、以下の通りである。まず、気象センサの観測領域は、航空機の着陸タイミングの判断にとって有効な情報を提供する観点から、水平方向において空港を中心とした半径10海里の範囲で設定されている。また、前記3次元領域Rを規定する前記2次元領域は、局所的な降水エコーを検出し損なうことを防止しつつ、鉛直要約統計処理部180で取得した情報を基にした表示の良好な視認性を確保する観点から、各辺の長さが数m〜数十m等の100m以下で設定された矩形領域で設定されている。また、前記鉛直方向における範囲は、着陸タイミングの判断によって有効な情報を提供する観点から、高度2km以下の範囲で設定されている。なお、前記観測領域および前記3次元領域Rの具体的な設定については、上記に限定されず、実施態様に応じて任意に設定すればよい。
【0088】
また、本実施形態における気象センサとしては、
図7に示すように、空港気象観測に有効な半径数十kmの範囲を、短時間(1〜2分)かつ高解像(数〜数十mオーダ)で体積スキャンすることが可能な高分解能レーダが用いられる。このような高分解能レーダによれば、要約統計量の母集団となり得る十分なサンプル数の値を、上述したように設定された3次元領域Rから抽出することができる。
【0089】
次に、エコー要約統計量算出部182は、抽出部181によって抽出された各3次元領域Rごとの複数の値を母集団として、各3次元領域Rにおけるエコー強度データの要約統計量を算出する。ここで、本実施形態では、航空機の運航に強く影響を与え得るエコー情報を提供する観点から、エコー要約統計量算出部182によってエコー強度データの最大値を算出するが、エコー要約統計量算出部182によって算出する要約統計量は最大値に限定されず、実施態様に応じて任意に決定すればよい。
【0090】
次に、短期予測処理部190について説明する。短期予測処理部190は、10分〜20分後のエコー強度データの要約統計量の予測値を算出するものである。短期予測処理部190は、
図2に示すように、ベクトル算出部191とベクトル要約統計量算出部192と予測情報算出部193とを有している。短期予測処理部190による処理の具体的内容については、以下の通りである。
【0091】
まず、ベクトル算出部191は、過去の複数のタイミングにおける、エコー要約統計量算出部182によって取得した各3次元領域Rにおける要約統計量の情報を基に、観測対象の移動ベクトルを算出する。
【0092】
次に、ベクトル要約統計量算出部192は、ベクトル算出部191によって取得した複数の移動ベクトルを母集団として、移動ベクトルの要約統計量を算出する。ここで、本実施形態では、ベクトル要約統計量算出部192によって算出する要約統計量として中央値または平均値を採用するが、ベクトル要約統計量算出部192によって算出する要約統計量は平均値または中央値に限定されず、実施態様に応じて決定すればよい。
【0093】
次に、予測情報算出部193は、ベクトル要約統計量算出部192によって取得した移動ベクトルの要約統計量と、エコー要約統計量算出部182によって取得したエコー強度データの要約統計量とを基に、エコー強度データの要約統計量の10分〜20分後の予測値を算出する。ここで、本実施形態では、上記のように、10分〜20分後の予測値を算出するが、予測値の具体的な内容はこれに限定されない。
【0094】
このようにして得られた本実施形態の着陸判断支援システム1では、画面生成部220は、エコー強度画面P19を生成するエコー強度画面生成部240を含み、エコー強度画面P19に含まれるエコー強度情報は、気象センサによって取得した観測対象のエコー強度データを基に生成され、所定高度帯における空港周辺のエコー強度の要約統計量によって、エコー強度の水平分布を表示するものであることにより、エコー強度情報の提供によって視程障害を避けることが可能な着陸タイミングを図ることができ、また、要約統計量を用いてエコー強度の表示を行うことで、局所現象を検出し損なうことを防止しつつ、表示における良好な視認性を確保し、気象学等の専門性を要求することなしにユーザが直感的にエコー強度を把握することができ、また、エコーの表示を空港周辺に限定することで、発生したての小さなエコー等の細かいエコーを表示することができる。
【0095】
また、エコー強度画面P19には、最新のエコー強度情報、および、今後のエコーの予測情報とが並べて表されることにより、現在のレーダエコーの状況、実際に着陸すると予測される時刻のレーダエコーの状況を容易に比較可能となり、一覧性が高まり、着陸タイミングを良好に図ることが可能となる。
【0096】
また、エコー強度画面P19は、空港、着陸経路、および、他の航空機の位置を示した空港周辺の地図に、高度2km以下のエコー強度情報を重ねて表示したものであることにより、エコーが航空機の飛行へ与える影響を直感的に把握することができ、また、エコー強度画面P19を1分〜2分間隔で更新することにより、変わり易い気象状況に対応することができるとともに、PIREPと呼ばれるパイロットレポートの更新間隔に近くなり、親和性が高くなる。
【0097】
また、レーダエコー画面を機上で表示する場合(例:インターネットを使用してタブレットに表示、データリンクを使用してEFB(Electronic Flight Bag)に表示)、機上でパイロット自身が着陸のタイミング判断を図ることが可能となり、就航率向上や安全性の向上へ寄与が期待される。
【0098】
また、画面生成部220は、航空機の着陸難易度を示す着陸難易度情報を含む警報画面P11を生成する警報画面生成部231を含み、着陸難易度情報は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと、滑走路の方位データと、航空機の機種情報とを基に生成されたものであることにより、気象学等の専門的なスキルを有さない運航管理者やパイロット等の一般ユーザであっても、航空機着陸の判断に関連性の深い情報を容易かつ的確に読み取ることができる。また、従来、運航管理者が航空機に伝えるべき情報が整理されておらず、様々な表示情報から彼らの経験と知識で判断して航空機に情報を提供する方法がとられてきたが、警報画面P11を設けることで、警報内容及び航空機に伝達すべき内容が一目で理解可能となり、ユーザの状況認識向上及びメンタルワークロード軽減に寄与する。
【0099】
また、着陸難易度情報は、最新の航空機の着陸難易度、および、着陸難易度の変化傾向を示すトレンド情報を含むことにより、実際にアプローチを開始して着陸する時刻の情報を取得でき、着陸難易度の変化傾向を一目で把握することが可能であるため、着陸タイミングの判断が容易になる。
【0100】
また、警報画面P11に、所定高度帯かつ着陸経路上における滑走路方向に沿った風速の正対風成分の増減を示す情報、風擾乱の発生および発生した高度帯を示す擾乱発生情報、および、擾乱が航空機の飛行状態に与える影響を示す飛行状態情報が含まれることにより、気象学等の専門的知識を必要とすることなく、注意すべき風擾乱や飛行状態への影響を把握することが可能であるため、今後の操縦の方針を容易かつ適切に計画することができる。
【0101】
また、画面生成部220は、過去の警報画面P11に含まれた情報を含む警報履歴画面を生成する警報履歴画面生成部232を更に有することにより、過去の情報から警報内容の傾向を把握することが可能であるため、着陸タイミングの判断が容易になるとともに、過去の情報から警報内容の周期性を経験的に把握することができる。
【0102】
また、着陸難易度情報は、航空機の機種ごとに生成されることにより、航空機の機種の特性を反映した精度の高い着陸難易度情報を提供すること可能であり、また、ユーザからの要求に従って、表示部に表示させる着陸難易度情報の対象機種を切り替える機種切替部263を更に有することにより、機種毎の比較が容易となり、空港にどのような機種を運航させるかの参考情報とすることができる。
【0103】
また、画面生成部220は、着陸経路上における、滑走路方向に沿った風速の正対風成分の高度に対する変化を示すグラフを含むグラフ画面P13を生成するグラフ画面生成部233と、着陸経路上における、所定高度ごとの風速の正対風成分を示す表を含む表形式画面P12を生成する表形式画面生成部234とを含み、グラフ画面P13に含まれるグラフおよび表形式画面P12に含まれる表は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データを基に生成されたものであり、表示制御部260は、グラフ画面P13と表形式画面P12とを、表示部に並べて表示させることにより、グラフ表示によって各高度における風速の増加・減少を直感的にイメージした後、表形式の表示によって各高度における風速を具体的に把握する等、一つの画面において一連の認識作業を行うことが可能になるため、風状況の分析を迅速かつ容易に行うことができる。
【0104】
また、グラフ画面P13に含まれるグラフは、高度500ft以下における、最新の正対風成分の変化、および、過去の正対風成分の変化の両方を同一グラフ内に表したものであり、表形式画面P12に含まれる表は、高度500ft以下における、最新の正対風成分、および、過去の正対風成分を示すものであることにより、ユーザは過去の風情報から低層風擾乱の変化傾向を把握し、今後の低層風擾乱の状況を予測することができ、また、擾乱発生が航空機の着陸に強く影響を与える高度500ft以下の範囲に限定して風情報を提供することで、ユーザが低風層擾乱を直感的に把握し易くなる。
【0105】
また、表示制御部260は、着陸難易度情報を含む警報画面P11とグラフ画面P13と表形式画面P12とを表示部に並べて表示させ、着陸難易度が高いと判断された場合に、グラフ画面P13および表形式画面P12内の前記着陸難易度に関連する風変化および風変化が発生している高度帯に対応する箇所を、他の箇所とは異なる表示で示すことにより、問題となっている風擾乱の風速や高度帯を一目で直感的に把握することができる。
【0106】
また、ユーザからの指示に従って、または、自動的に、複数の気象センサのうちいずれの気象センサを各種画面の情報提供源とするかを切り替えるセンサ切替部265を更に有することにより、現在提示されている情報がどの観測装置から提供されたものかを把握することが可能であるため、気象やセンサメーカ等の専門家が本表示をモニターする際に有効な情報となり、また、例えば、表示される風擾乱情報に違和感があった場合において、どの気象センサに問題があるか等のトラブルシュートに利用可能となる。
【0107】
また、画面生成部220で生成された画面に含まれる情報を、航空機内に設置される機器に送信可能なテキストフォーマットに変換するテキスト変換部262を更に有することにより、航空機に必要十分な情報を伝達し、航空機内においても十分な情報を基に着陸のプランニングや離陸前のブリーフィングを良好に行うことが可能であるとともに、航空機内に居るユーザとの間で情報の共有を図ることができ、また、運航管理者が機上に送る情報を整理する負荷が軽減される。特に、正対風の空間的なグラフ情報は、正対風の増加・減少、顕著な風変化の高度帯の直感的理解につながる。
【0108】
また、気象センサによって取得した観測対象のエコー強度データを含む観測情報から、各種情報を生成する情報生成部120を有し、情報生成部120は、気象センサの観測領域内に、水平面内の所定の2次元領域および鉛直方向の所定範囲で規定される3次元領域Rを複数設定し、エコー強度データの中から各3次元領域R内に含まれる複数の値を抽出する抽出部181と、抽出部181によって抽出された複数の値を母集団として、各3次元領域におけるエコー強度データの要約統計量を算出するエコー要約統計量算出部182と、を有することにより、局所現象を検出し損なうことを防止しつつ、要約統計量を利用した2次元表示を実現して、表示における良好な視認性を確保することができる。
【0109】
また、情報生成部120は、過去の複数のタイミングにおける、エコー要約統計量算出部182によって取得した各3次元領域における要約統計量の情報を基に、観測対象の移動ベクトルを算出するベクトル算出部191と、ベクトル算出部191によって取得した複数の移動ベクトルを母集団として、移動ベクトルの要約統計量を算出するベクトル要約統計量算出部192と、ベクトル要約統計量算出部192によって取得した移動ベクトルの要約統計量と、エコー要約統計量算出部182によって取得したエコー強度データの要約統計量とを基に、エコー強度データの要約統計量の予測値を算出する予測情報算出部193と、を更に有することにより、多大な計算コストを必要とすることなく、精度の高い短期予測情報を生成することができる。
【0110】
また、情報生成部120は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと、滑走路の方位データとに前処理を施すデータ処理部と、航空機の機種情報とデータ処理部によって出力された複数の所定高度における航空機の飛行状態の変動幅とを入力情報として、第1の推定モデルによって、着陸難易度を推定する着陸難易度推定部160とを有し、第1の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データと、着陸難易度をパイロットが主観的に評価した評価データとを学習データとして、非線形多変量解析手法によって構築されたものであることにより、特定の着陸経路およびパイロットが主観的に評価した評価データを反映した、運航障害や事故の発生と相関性が高く、有用性の高い着陸難易度を推定することができる。
【0111】
また、風擾乱推定部140は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと滑走路の方位データとに前処理を施すことで取得したデータを入力情報として、第2の推定モデルによって、複数の所定高度における風速の正対風成分の変動幅と横風成分の変動幅と上下風成分の変動幅とを推定するものであり、第2の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データを学習データとして、非線形多変量解析手法によって構築されたものであることにより、航空機の飛行状態を変動させる要因となる、風速の正対風成分の変動幅と横風成分の変動幅と上下風成分の変動幅とを、特定の着陸経路の情報を反映させて高精度に推定することができる。
【0112】
また、風擾乱推定部140は、気象センサによって取得された着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと、滑走路の方位データとを入力情報として、座標変換を施すことにより、複数の所定高度における風速の正対風成分と風速の横風成分とを算出し、正対風成分および横風成分のそれぞれについて、高度方向に数値微分することにより、複数の所定高度における正対風成分の高度変化率および横風成分の高度変化率を算出し、正対風成分と横風成分と正対風成分の高度変化率と横風成分の高度変化率と高度とを入力情報として、第2の推定モデルによって、風速の正対風成分の変動幅と横風成分の変動幅と上下風成分の変動幅とを推定するものであり、第2の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データを学習データとして、非線形多変量解析手法によって構築されたものであることにより、着陸経路上の複数の所定高度における風向データおよび風速データと滑走路の方位データとから、特定の着陸経路の情報を反映させた、高精度な風速の各成分の変動幅を推定することができる。
【0113】
また、航空機応答推定部150は、複数の所定高度における着陸経路上の正対風成分および横風成分と、複数の所定高度における正対風成分の変動幅および横風成分の変動幅および上下風成分の変動幅とを入力情報として、第3の推定モデルによって、複数の所定高度における航空機の飛行状態の変動幅を推定するものであり、第3の推定モデルは、推定対象の着陸経路上を飛行して着陸した航空機の飛行データを学習データとして、非線形多変量解析手法によって構築されたものであることにより、着陸難易度の推定にあたり重要な要素となる航空機の飛行状態の変動幅を、特定の着陸経路の情報を反映させて高精度に推定することが可能であるため、有用性の高い着陸難易度を推定することができる。
【0114】
冬季、降雪の多い空港では航空機が離陸または着陸するために除雪作業が必要となる。しかし滑走路を除雪後の数分後に次の降雪がきて再度、除雪しなければならなくなり航空機が着陸できないなどの事象がしばしば起こっている。そこで観測時刻時のレーダエコー及び指定時間後のレーダエコー予測情報から、滑走路の除雪のタイミングを図り、航空機を効率的に離陸・着陸させることが可能となり就航率向上にも寄与できる。