特開2017-162698(P2017-162698A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-162698(P2017-162698A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】コンタクトの接触構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/03 20060101AFI20170818BHJP
   H01R 13/66 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   H01R13/03 Z
   H01R13/66
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-46489(P2016-46489)
(22)【出願日】2016年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】江尻 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 梨恵
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB21
5E021FC13
5E021FC19
5E021MA02
5E021MA40
5E021MB03
(57)【要約】
【課題】全体を大形化せず、簡単な構成で、確実にアーク放電を抑制するコンタクトの接触構造を提供する。
【解決手段】第1コンタクトは、プラグコンタクトが接離位置と活線接続位置の間で進退移動する間に、第1接点が第2コンタクトに接触する第1分岐片と、第2接点が活線接続位置で第2コンタクトに接触する第2分岐片とを備え、接離位置で接触する第1コンタクトの第1接点と第2コンタクトの接触部の少なくともいずれかの接触面が酸化皮膜で覆われる。プラグコンタクトとソケットコンタクトが接離する接離位置で、その間に絶縁物である酸化皮膜が介在するので、アーク放電が抑制される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コンタクトと第2コンタクトの一方のプラグコンタクトが他方のソケットコンタクトに対して進退移動経路に沿って前後方向に進退移動し、プラグコンタクトが、ソケットコンタクトに接離する接離位置とその前方のソケットコンタクトと活線接続する活線接続位置との間で、ソケットコンタクトに接触しながら進退移動するコンタクトの接触構造であって、
第1コンタクトは、基端部と、基端部に一体に連設され、前記プラグコンタクトが接離位置と活線接続位置の間で進退移動する間に、第1接点が第2コンタクトに接触する第1分岐片と、基端部に一体に連設され、第2接点が活線接続位置で第2コンタクトに接触する第2分岐片とを備え、
接離位置で対向する第1コンタクトの第1接点と第2コンタクトの接触部の少なくともいずれかの接触面が、酸化皮膜で覆われることを特徴とするコンタクトの接触構造。
【請求項2】
前記第1コンタクトの第1接点と前記第2コンタクトの接触部の少なくともいずれかの接触面に弁金属からなる金属薄板が固着され、前記接触面が弁金属の表面に形成される不動態被膜で覆われることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトの接触構造。
【請求項3】
第1分岐片と第2分岐片は、基端部から後方に片持ち支持された同一断面形状の板バネ片で形成され、第2コンタクトの接触部に接触して撓む第1接点の撓み量は、活線接続位置で第2コンタクトに接触して撓む第2接点の撓み量より短いことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のコンタクトの接触構造。
【請求項4】
第1接点は、前記進退移動経路に沿って第2接点の後方に形成されることを特徴とする請求項3に記載のコンタクトの接触構造。
【請求項5】
第1接点と第2接点は、前後方向の同一位置で前記進退移動経路に臨み、前記第2コンタクトの接触部は、周囲から前方に突設して形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコンタクトの接触構造。
【請求項6】
第1分岐片と第2分岐片は、それぞれ基端部に前後方向と交差する方向に片持ち支持された板バネ片で形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のコンタクトの接触構造。
【請求項7】
外力を受けない自由状態で、第1接点は、前記進退移動経路に沿って第2接点の後方に形成されることを特徴とする請求項6に記載のコンタクトの接触構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活線接続する一対のコンタクト間のコンタクトの接触構造に関し、更に詳しくは、接離する一対のコンタクト間に高い電気エネルギーが発生するコンタクトの接触構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧、高電流の電力を送電する電力線などを活線接続する電気コネクタは、接続されている相手側コネクタを挿抜する際に、近接する一対のコンタクト間に高い電気エネルギーが蓄積され、その間でアーク放電が発生する。このようなアーク放電は、誘導性負荷に接続する一方のコネクタを、電力線に接続する他方のコネクタから引き抜く際に生じる誘導起電力によっても発生する。
【0003】
アーク放電は、電気コネクタのコンタクトが溶損する等、劣化を早める原因となるので、一対のコンタクト間に蓄積される電気エネルギー自体を低下させてアーク放電を発生させないようにしている。一対のコンタクト間に蓄えられる電気エネルギーは、一対のコンタクト間の電圧及び電流に比例するので、特開昭63−86281号公報(特許文献1)や実公平6−41370号公報(特許文献2)では、一対のコンタクトが接離する瞬間のコンタクト間の電圧を低下させてアーク放電の発生を防止している。
【0004】
このうち、特許文献1に記載のコンタクトの接触構造は、一方のコンタクトに電気抵抗率ρが高い抵抗体を、相手側コンタクトが移動する進退移動経路に沿って連設し、相手側コンタクトが進退移動経路から引き出されて分離する際に、抵抗値が高い抵抗体の先端で相手側コンタクトを分離し、両者間の電圧をアーク放電に至らない電圧としてアーク放電の発生を防止している。
【0005】
また、特許文献2に記載のコンタクトの接触構造100は、図9に示すように、直線状に進退移動する一方のコンタクト101に活線接続する他方のコンタクト102が細長帯状の2本の接触片102A、102Bで構成されている。接触片102Aは接触片102Bより高い電気抵抗率の導電金属材料で形成され、2本の接触片102A、102Bは、相手側のコンタクト101の進退移動経路を挟んで上下に平行に配置され、接触片102Aの前端を接触片102Bに加締めて一体のコンタクト102を形成している。
【0006】
相手側のコンタクト101に上方から接触する接触片102Aの第1接点103は、下方から接触する接触片102Bの第2接点104より進退移動経路に沿った後方(図中右上方)に位置している。
【0007】
これにより、相手側のコンタクト101がコンタクト102に接離する接離位置の付近では、電気抵抗率が高い導電金属材料で形成され、抵抗値が高い接触片102Aの第1接点103が相手側のコンタクト101に近接するので、両者間の電圧がアーク放電に至らない電圧となってアーク放電が発生しにくい。
【0008】
コンタクト101が接離位置とその前方の活線接続位置の間で進退移動する間は、接触片102Aが常にコンタクト101に接触しているので、瞬断によるアーク放電は発生せず、活線接続位置では、接触片102Bの第2接点104が接触するので、コンタクト101に、接触片102Aに加えて抵抗値が低い接触片102Bが並列接続し、低抵抗値のコンタクト102とコンタクト101が活線接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−86281号公報
【特許文献2】実公平6−41350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示されるコンタクトの接触構造は、一方のコンタクトに電気抵抗率ρが高い抵抗体を、相手側コンタクトが移動する進退移動経路に沿って連設するが、抵抗体の長さが短いと、その先端で十分に電位を降下させることができず、アーク放電の発生を確実に防止するには、抵抗体の進退移動経路に沿った長さを伸ばす必要があり、コンタクトの接触構造の全体が大型化する。
【0011】
また、特許文献2に記載のコンタクトの接触構造100は、異なる導電金属材料からなる2本の接触片102A、102Bを個別に製造し、各前端を加締めて一体化する工程を要する。
【0012】
また、接触片102Aは、前端が接触片102Bに加締められるだけで、全体が片持ち支持されるので、自由端側の第1接点103を確実に位置決めすることができず、相手側のコンタクト101が進退する進退移動経路との間隔が一定とならず、コンタクト101との接離や接離するタイミングが不安定となっていた。
【0013】
更に、このコンタクトの接触構造100でも、接触片102Aを形成する導電金属材料によっては、第1接点103とコンタクト101間の電位を十分に低下させることができず、接触片102Aの抵抗値を大きくするために進退移動経路に沿った長さを伸ばすこととなるので、コンタクトの接触構造100の全体が大型化するという問題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、従来、全体を大形化せず、簡単な構成で、確実にアーク放電を抑制するコンタクトの接触構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載のコンタクトの接触構造は、第1コンタクトと第2コンタクトの一方のプラグコンタクトが他方のソケットコンタクトに対して進退移動経路に沿って前後方向に進退移動し、プラグコンタクトが、ソケットコンタクトに接離する接離位置とその前方のソケットコンタクトと活線接続する活線接続位置との間で、ソケットコンタクトに接触しながら進退移動するコンタクトの接触構造であって、
第1コンタクトは、基端部と、基端部に一体に連設され、プラグコンタクトが接離位置と活線接続位置の間で進退移動する間に、第1接点が第2コンタクトに接触する第1分岐片と、基端部に一体に連設され、第2接点が活線接続位置で第2コンタクトに接触する第2分岐片とを備え、接離位置で対向する第1コンタクトの第1接点と第2コンタクトの接触部の少なくともいずれかの接触面が、酸化皮膜で覆われることを特徴とする。
【0016】
プラグコンタクトがソケットコンタクトに接離する接離位置で対向する第1コンタクトの第1接点と第2コンタクトの接触部の間に高い接触抵抗の酸化皮膜が介在し、アーク放電が発生する程度の電気エネルギーが蓄積されにくい。
【0017】
プラグコンタクトが接離位置とその前方の活線接続位置の間で進退移動する間は、第1分岐片の第1接点が第2コンタクトに接触し、第1コンタクトと第2コンタクトは連続して電気接続する。
【0018】
活線接続位置では、酸化皮膜で覆われていない第2分岐片の第2接点が第2コンタクトに接触するので、低接触抵抗で第1コンタクトと第2コンタクト間が活線接続する。
【0019】
酸化被膜を介した第1コンタクトと第2コンタクト間の高い接触抵抗は、第1分岐片の大きさや長さに依存しないので、第1分岐片を短小化でき、また、第1分岐片の第1接点と第2分岐片の第2接点は、独立して第2コンタクトに接触するので、平行に配置して第1コンタクトの全体を小型化できる。
【0020】
請求項2に記載のコンタクトの接触構造は、第1コンタクトの第1接点と第2コンタクトの接触部の少なくともいずれかの接触面に弁金属からなる金属薄板が固着され、接触面が弁金属の表面に形成される不動態被膜で覆われることを特徴とする。
【0021】
第1コンタクトと第2コンタクトが接離する接離位置で、その接触面に高い接触抵抗の不動態皮膜が介在し、アーク放電が発生する程度の電気エネルギーが蓄積されにくい。
【0022】
弁金属からなる金属薄板は、空気に触れて自然にその表面に不動態被膜を形成するので、第1接点若しくは第2コンタクトの接触部の少なくとも一方に金属薄板を固着するだけで、接触面に酸化皮膜である不動態被膜が形成され、また、不動態被膜に発生する熱エネルギーは、固着された第1分岐片若しくは第2コンタクトに熱伝導して放出される。
【0023】
請求項3に記載のコンタクトの接触構造は、第1分岐片と第2分岐片は、基端部から後方に片持ち支持された同一断面形状の板バネ片で形成され、第2コンタクトの接触部に接触して撓む第1接点の撓み量は、活線接続位置で第2コンタクトに接触して撓む第2接点の撓み量より短いことを特徴とする。
【0024】
第1分岐片と第2分岐片は、同一材料で同一断面形状で形成されるので、両者の曲げ強さEIは等しく、第1接点と第2接点のそれぞれ第2コンタクトと接触して撓む際の接触圧Pは、撓み量δに比例し、基端部からの距離lの3乗に反比例する。第1接点の撓み量は第2接点の撓み量より短いので、第1接点と第2接点の基端部からの距離を考慮しなければ、第1接点と第2コンタクトの接触部は、比較的低い接触圧で弾性接触し、第2接点と第2コンタクトは、高い接触圧で弾性接触する。
【0025】
請求項4に記載のコンタクトの接触構造は、第1接点が、進退移動経路に沿って第2接点の後方に形成されることを特徴とする。
【0026】
第1接点の基端部からの距離は、第2接点の基端部からの距離より長いので、第1接点は第2接点に比べて低い接触圧で第2コンタクトに弾性接触する。
【0027】
請求項5に記載のコンタクトの接触構造は、第1接点と第2接点は、前後方向の同一位置で進退移動経路に臨み、第2コンタクトの接触部は、周囲から前方に突設して形成することを特徴とする。
【0028】
第1接点と第2接点が進退移動経路に沿って前後方向の同一位置にあっても、接離位置で第1接点と第2コンタクトの接触部が接離する。
【0029】
請求項6に記載のコンタクトの接触構造は、第1分岐片と第2分岐片は、それぞれ基端部に前後方向と交差する方向に片持ち支持された板バネ片で形成されることを特徴とする。
【0030】
第1コンタクトの長手方向に対して公差する方向で第2コンタクトが前後方向に相対移動する。
【0031】
請求項7に記載のコンタクトの接触構造は、外力を受けない自由状態で、第1接点は、進退移動経路に沿って第2接点の後方に形成されることを特徴とする。
【0032】
第1接点は、第2コンタクトが相対移動する進退移動経路に沿って第2接点の後方に形成されるので、後方接触位置で第2コンタクトに接離する瞬間の第1接点の撓み量は極めて小さく、第1接点と第2コンタクトの接触部は、低い接触圧で弾性接触する。
【発明の効果】
【0033】
請求項1の発明によれば、第1コンタクトと第2コンタクトが接離する接離位置で、第1分岐片の電気抵抗率に依存しない高い接触抵抗の酸化被膜が介在するので、第1コンタクトを大形化せずに、第2コンタクトと第1分岐片間の電圧を低下させ、アーク放電の発生を抑制できる。
【0034】
また、接離位置で対向する第1接点と第2コンタクトの接触部の少なくとも一方の接触面を酸化皮膜で覆うだけの簡単な構成で、第1コンタクトと第2コンタクトが接離する瞬間に高い接触抵抗を介在させることができる。
【0035】
請求項2の発明によれば、弁金属からなる金属薄板は、空気に触れて自然にその表面に不動態被膜を形成するので、第1接点若しくは第2コンタクトの接触部の少なくとも一方の接触面に金属薄板を固着するだけの簡単な加工で不動態被膜を形成できる。
【0036】
不動態被膜で覆われた第1接点若しくは第2コンタクトの接触部は、耐食性を有する。
【0037】
請求項3の発明によれば、第2コンタクトと接触して撓む第1接点の撓み量と第2接点の撓み量を調整するだけで、プラグコンタクトが接離位置と活線接続位置の間で進退移動する間の第1コンタクトと第2コンタクトの接触抵抗を高抵抗値に、安定して活線接続する活線接続位置で接触抵抗を低抵抗値とすることができる。
【0038】
請求項4の発明によれば、第1接点の位置を第2接点の後方の位置とするだけで、プラグコンタクトが接離位置と活線接続位置の間で進退移動する間の第1コンタクトと第2コンタクトの接触抵抗を高抵抗値に、安定して活線接続する活線接続位置で接触抵抗を低抵抗値とすることができる。
【0039】
請求項5の発明によれば、第1分岐片と第2分岐片を同一長さとして、第1コンタクトの前後方向の長さを短縮させても、第1コンタクトと第2コンタクトが接離する接離位置で、少なくとも一方が酸化皮膜で覆われた第1接点と第2コンタクトの接触部を対向させることができる。
【0040】
請求項6の発明によれば、第2コンタクトの相対移動方向に対して、第1分岐片と第2分岐片を交差する方向に配置するので、第1コンタクトを相対移動方向に対して薄型化できる。
【0041】
請求項7の発明によれば、第1分岐片の第1接点を第2分岐片の第2接点より後方に配置するだけで、第1コンタクトと第2コンタクトが接離する接離位置で高い接触抵抗値とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施の形態に係るコンタクトの接触構造1のプラグコンタクト2を有するプラグ20とソケットコンタクト3を有するソケット30とを絶縁ケース21、32の上蓋を省略して示す斜視図である。
図2】プラグコンタクト2が、ソケットコンタクト3に対して前後方向に進退移動する状態を示す要部平面図である。
図3】プラグコンタクト2の接離位置で、ソケットコンタクト3の第1分岐片5がプラグコンタクト2の接触部8に接離する状態を示す要部断面図である。
図4】プラグコンタクト2の活線接続位置で、ソケットコンタクト3の第2分岐片6とプラグコンタクト2が活線接続する状態を示す要部断面図である。
図5】第2の実施の形態に係るコンタクトの接触構造40を、(a)は、図2に示す第1の実施の形態と対比して示す要部平面図、(b)は、同要部断面図である。
図6】第3の実施の形態に係るコンタクトの接触構造50を、(a)は、図2に示す第1実施の形態と対比して示す要部平面図、(b)は、同要部断面図である。
図7】第4の実施の形態に係るコンタクトの接触構造60を、(a)は、図2に示す第1実施の形態と対比して示す要部平面図、(b)は、同要部側面図である。
図8】コンタクトの接触構造60のプラグコンタクト61の接離位置で、プラグコンタクト61とソケットコンタクト62が接離する状態を示す要部側面図である。
図9】従来のコンタクトの接触構造100を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施の形態に係るコンタクトの接触構造1を、図1乃至図4を用いて説明する。コンタクトの接触構造1は、第1コンタクトであるソケットコンタクト3に第2コンタクトでるプラグコンタクト2が接触して活線接続する構造であり、本明細書では、プラグコンタクト2をソケットコンタクト3へ接触させる移動方向を前方と、ソケットコンタクト3との接触位置から離反させる移動方向を後方と、図1に図示する上下方向を上下方向として各部を説明する。
【0044】
プラグコンタクト2は、直流電源電力線10の高圧側電力線10+の端末に接続し、接地側電力線10−の端末に接続する接地側プラグコンタクト2−と互いに絶縁して平行にプラグ20に取り付けられている。また、ソケットコンタクト3は、直流電源電力線10による電力の供給を受けて動作する負荷の高圧側に接続し、負荷の接地側に接続する接地側ソケットコンタクト3−と互いに絶縁して平行に雌ソケット30に取り付けられている。ソケット30の絶縁ケース32には、一対のプラグコンタクト2と接地側プラグコンタクト2−をそれぞれ前後方向に進退自在に案内するプラグ挿入孔31、31が後面に開口して形成され、一対のプラグコンタクト2と接地側プラグコンタクト2−とを、それぞれプラグ挿入孔31+、31−に臨むソケットコンタクト3と接地側ソケットコンタクト3−に接触させることにより、例えば48V、2Aの96Wの電力が直流電源電力線10から負荷へ供給される。一対のプラグコンタクト2と接地側プラグコンタクト2−間には直流電源が印加され、接地側プラグコンタクト2−とソケットコンタクト3に高圧側の電圧が印加されるので、ここでは、活線接続するプラグコンタクト2とソケットコンタクト3の接触構造1について説明する。
【0045】
ソケット30の絶縁ケース32には、燐青銅、黄銅等の銅合金の金属板をプレス加工して形成される接地側ソケットコンタクト3−とソケットコンタクト3とが互いに絶縁して後前方向に沿って取り付けられている。ソケットコンタクト3は、図2に示すように、前方の基端部4に、それぞれ細長帯状の板バネ片となった第1分岐片5と第2分岐片6とが後方に向かって一体に連設されている。
【0046】
第1分岐片5は、プラグ挿入孔31の開口の近傍の後端で斜め上方に向かってU字状に折り返され、折り返された自由端側の端部を、プラグ挿入孔31内に臨ませた第1接点5aとしている。また、第2分岐片6は、プラグ挿入孔31に沿って第1分岐片5の側方に平行に配置され、第1接点5aの近傍の後端で斜め上方に向かってU字状に折り返して形成され、折り返された自由端側の端部を、プラグ挿入孔31に臨ませた第2接点6aとしている。従って、第2分岐片6の第2接点6aは、第1分岐片5の第1接点5aの前方でプラグ挿入孔31内に臨んでいる。
【0047】
第1接点5aの上面には、弁金属であるステンレス鋼で形成された金属薄板7が半田付けして固着されている。ステンレスは、空気に触れるとステンレスに含有されるクロムが酸化し、その表面に3酸化クロム(Cr)からなる酸化皮膜の一種である不動態被膜が形成されるので、ステンレス鋼から形成される金属薄板7からなる第1接点5aの表面に数nmの厚みの不動態被膜7aが形成される。3酸化クロム(Cr)は絶縁物であるので、1mmの接触面積あたりで厚み方向に数百MΩの電気抵抗となる。その結果、摺動接触する第1接点5aとプラグコンタクト2との間に数nmの厚みの不動態被膜7aが形成されるだけで、その間に数Ω乃至数十Ωの接触抵抗が発生する。
【0048】
プラグ20の絶縁ケース21に取り付けられるプラグコンタクト2は、燐青銅、黄銅等の銅合金の金属板をプレス加工して、図2に示すように、第1分岐片5の第1接点5aと第2分岐片6の第2接点6aのいずれにも摺動接触するように、前後方向に直交する横幅が幅広となった平刃型に形成されている。このプラグコンタクト2をプラグ挿入孔31内で前後方向に移動させると、図3に示す接離位置において、プラグコンタクト2と表面が不動態被膜7aで覆われた第1接点5aが接離する。
【0049】
本実施の形態では、接離位置で第1接点5aに対向するプラグコンタクト2の下面の接触部8にも、アルマイトの金属薄板9が半田付け、溶接などにより固着され、接触部8の接触面が酸化皮膜9aで覆われている。アルマイトは、アルミニウムに陽極酸化処理を行ってその表面に酸化アルミニウムの酸化皮膜を形成してなるもので、酸化アルミニウムの酸化皮膜自体は薄肉であるが絶縁物であるので、第1接点5aとの接触抵抗は数Ω乃至数十Ωとなる。
【0050】
プラグ20とソケット30の接続過程と引き抜き過程では、プラグコンタクト2の接離位置で、一定の電位差Vが生じているプラグコンタクト2の接触部8とソケットコンタクト3の第1接点5a間が接離する瞬間があり、離反する瞬間の両者の接触面間の電位差をV、両者に流れる電流をIとして、両者の間に蓄積される電気エネルギーE(E=∫V・Idt)が一定の境界値を超えると、その間にアーク放電が発生する。本実施の形態に係るプラグ20とソケット30の接続では、電位差Vが25V、電流Iが2Aを超える場合にアーク放電が発生するが、本実施の形態によれば、第1接点5aの表面に不動態被膜7aが、プラグコンタクト2の接触部8の表面に酸化皮膜9aがそれぞれ形成されているので、酸化皮膜7a、9aの数Ω乃至数十Ωの抵抗でプラグコンタクト2とソケットコンタクト3間の電位が低下する。その結果、接離する瞬間の両者の間の電位Vが低下し、アーク放電を効果的に抑制できる。
【0051】
プラグコンタクト2がプラグ挿入孔31内の接離位置と図4に示す活線接続位置の間で移動する間、第1接点5aはプラグコンタクト2の下面を摺動接触し、不動態被膜7aと酸化皮膜9aによる高い接触抵抗でプラグコンタクト2とソケットコンタクト3が瞬断することなく接続している。
【0052】
プラグコンタクト2を、プラグ挿入孔31内の図4に示す活線接続位置まで前方へ挿入すると、第2分岐片6の第2接点6aがプラグコンタクト2の下面に低接触抵抗で弾性接触し、プラグコンタクト2にソケットコンタクト3の第1分岐片5と第2分岐片6とが並列接続する。その結果、プラグコンタクト2の活線接続位置では、プラグコンタクト2とソケットコンタクト2間での電圧低下や電力損失が少なく、相互に活線接続する。
【0053】
プラグコンタクト2の接触部8とソケットコンタクト3の第1接点5aが接触している間には、不動態被膜7aと酸化皮膜9aの部分の高い抵抗値で接触部分が発熱するが、いずれも薄肉で微小な金属薄板7、9の表面に形成されるので、熱伝導によってプラグコンタクト2若しくはソケットコンタクト3の第1分岐片5側に放熱される。
【0054】
図5は、本発明の第2実施の形態に係るコンタクトの接触構造40を示すもので、上述の実施の形態に比べて、プラグコンタクト2が接離位置と活線接続位置の間で進退移動する間の両者の接触抵抗を活線接続位置の接触抵抗より高くしたものである。コンタクトの接触構造40は、ソケットコンタクト41の形状を除いて第1実施の形態に係るコンタクトの接触構造1と同一であるので、図5において、同一若しくは同様に作用する構成については同一の番号を付してその詳細な説明は省略する。
【0055】
ソケットコンタクト41は、同図に示すように、燐青銅板をプレス加工した形成された基端部42と基端部42から後方に向かって二股に分岐する横断面形状が同一の細長帯状の第1分岐片43と第2分岐片44とからなり、それぞれ、先端側の上面の第1接点43aと第2接点44aが下方からプラグ挿入孔31内に突出するように、基端部42から後方に向かって斜め上方に傾斜して片持ち支持されている。また、第1接点43aの上面には、第1実施の形態と同様に、3酸化クロム(Cr)からなる不動態被膜7aが形成されている。
【0056】
第1分岐片43は、第2分岐片43より長く、従って第1接点43aは、第2接点44aの後方でプラグ挿入孔31内に突出するので、プラグ挿入孔31に沿って前後方向に移動するプラグコンタクト2の接離位置で第1接点43aがプラグコンタクト2の接触部8に対向する。
【0057】
また、外力を受けない自由状態で、基端部42に片持ち支持される第1分岐片43の傾斜は第2分岐片44の傾斜より緩く、従ってプラグ挿入孔31内に突出している第1接点43aは、第2接点44aより下方の位置となっている。その結果、接離位置と活線接続位置の間で進退移動するプラグコンタクト2に第1接点43aが弾性接触して撓む撓み量δ1より、活線接続位置で第2接点44aがプラグコンタクト2に弾性接触して撓む撓み量δ2が大きくなっている。
【0058】
ここで、片持ちされた支持片の材料の縦弾性係数をE、支持片の中立軸についての断面二次モーメントをI、固定端から自由端までの距離をlとして、自由端が加重Pを受けたときの撓み量δは、δ=P・l/3・E・Iで表され、これを加重Pについて変形すれば、P=3・δ・E・I/lで表される。加重Pは、片持ち支持される分岐片の接点とプラグコンタクト2間の接触圧を表すので、上式は、分岐片の接点の接触圧が、弾性接触する撓み量δに比例し、接点の基端部42からの距離lの3乗に反比例することを示している。
【0059】
本実施の形態において、プラグコンタクト2に弾性接触する第1分岐片43の第1接点43aの接触圧P1と活線接続位置でプラグコンタクト2に弾性接触する第2分岐片44の第2接点44aの接触圧P2を比較すると、第1分岐片43と第2分岐片44は、同一材料で同一断面形状で形成されるので、両者の曲げ強さEIは等しく、第1接点43aの撓み量δ1より第2接点44aの撓み量δ2が大きく、基端部42からの第1接点43aまでの距離は、第2接点44aまでの距離より長いので、第1接点43aの接触圧P1は、第2接点44aの接触圧P2より低い。接触圧Pが低下すれば、接触抵抗値が増大することが知られているので、第1接点43aとプラグコンタクト2の接触部8との間の酸化皮膜7a、9aの有無にかかわらず、プラグコンタクト2が接離位置と活線接続位置の間を進退移動する間の第1接点43aとプラグコンタクト2の接触部8間の接触抵抗値は、活線接続位置で接触する第2接点44aとプラグコンタクト2間の接触抵抗値より高い。これにより、プラグコンタクト2が接離位置と活線接続位置の間を進退移動する間にソケットコンタクト3との間に瞬断があっても、その間にアーク放電を発生させる大きな電気エネルギーは発生せず、一方、活線接続位置では、プラグコンタクト2とソケットコンタクト3間の接触抵抗値が低下するので、接続による電力損失を低下させることができる。
【0060】
上述の第1実施の形態では、プラグコンタクト2の接離位置で、ソケットコンタクト3の第1分岐片5の第1接点5aを接離させるために、プラグコンタクト2の前後方向の移動方向に沿って第1接点5aを第2分岐片6の第2接点6aの後方に露出させているが、図6に示すコンタクトの接触構造50に示すように、プラグコンタクト51側の接触部55の形状を変えて、接離位置で第1接点5aが接離するようにしてもよい。図6においても、第1実施の形態と同一若しくは同様に作用する構成については同一の番号を付してその詳細な説明は省略する。
【0061】
図6に示すコンタクトの接触構造50では、ソケットコンタクト52の基端部53に片持ち支持される一対の分岐片のうち、不動態被膜7aで第1接点54aが覆われる第1分岐片54を、第2分岐片6の側方で第2分岐片6と同一長さに形成し、第1接点54aと第2接点6aをプラグ挿入孔31内の前後方向の同一位置に臨ませる。
【0062】
一方、プラグ挿入孔31内でプラグコンタクト51が前後方向に進退移動する際に、第1接点54aが摺動接触するプラグコンタクト51の一側は、第2接点6aが摺動接触する他側より前方に向かって突出し、その突出部の下面に酸化皮膜9aで覆われた接触部55が形成される。その結果、プラグコンタクト51の接離位置で第1接点54aが接触部55に対向し、プラグ挿入孔31内で接離位置と活線接続位置の間で進退移動する間は、第1接点54aが接触部55に摺動接触し、活線接続位置で第2接点6aがプラグコンタクト51の下面に弾性接触する。
【0063】
この第3実施の形態に係るコンタクトの接触構造50によれば、二股の分岐片6、54を有するソケットコンタクト52の前後方向に沿った長さを短縮し、ソケット30を小型化しても、プラグコンタクト51の接離位置で不動態被膜7aで覆われる第1接点54aを対向させることができる。
【0064】
上述の各実施の形態では、プラグコンタクト2、51の前後方向の進退移動方向に沿ってソケットコンタクト3、41、52の二股の第1分岐片5、43、54と第2分岐片6、44を片持ち支持しているが、図7図8に示すコンタクトの接触構造60のように、プラグコンタクト61の進退移動方向に対して交差する方向にソケットコンタクト62の第1分岐片63と第2分岐片64を片持ち支持しすることもできる。
【0065】
これらの図中、プラグコンタクト61の進退移動する前後方向は、上下方向であり、ソケットコンタクト62の第1分岐片63は、基端部65に斜め下方に、第2分岐片64は、基端部65に水平にそれぞれ片持ち支持されている。従って、不動態被膜7aで覆われた第1分岐片63の自由端側の下面に形成される第1接点63aは、第2分岐片64の自由端側の下面に形成される第2接点64aより、プラグコンタクト61の進退移動経路に沿った下方に突出している。
【0066】
また、プラグコンタクト61は、自由状態で第1接点63aと第2接点64aが突出する位置を、進退移動経路とし、第1接点63aを鉛直方向(上下方向)に投影させたプラグコンタクト61の上面の位置が、酸化皮膜9aで覆われた接触部66となっている。その結果、プラグコンタクト61の接離位置で第1接点63aが接触部66に接離し、第1接点63aと接触部66は酸化皮膜7a、9aを介して接離するので、その瞬間にアーク放電は発生しない。また、この瞬間に、第1接点63aの撓み量は0若しくは極めて微小であるので、第1接点63aと接触部66間の接触圧は極めて低く、より高い接触抵抗値で両者が接離する。
【0067】
プラグコンタクト61が接離位置と活線接続位置で進退移動する間は、第1接点63aが常に接触部66に弾性接触しているので、プラグコンタクト61とソケットコンタクト62間の瞬断がない。プラグコンタクト61の活線接続位置では、第2接点64aがプラグコンタクト61の上面に弾性接触し、プラグコンタクト61とソケットコンタクト62が低接続損失で活線接続する。
【0068】
上述の各実施の形態では、ソケットコンタクト側に二股に分岐する第1分岐片と第2分岐片を一体に備えた例で説明したが、プラグ挿入孔内を進退移動するプラグコンタクト側が基端部と基端部に片持ち支持される第1分岐片及び第2分岐片を一体に備えるものであってもよい。
【0069】
また、第1分岐片と第2分岐片は、基端部に一体に支持されるものであれば、必ずしも片持ち支持されるものである必要はなく、更に、基端部に3片以上の分岐片が一体に支持されていてもよい。
【0070】
また、接離位置で対向する第1接点と接触部のいずれの接触面も、酸化皮膜7a、9aで覆っているが、接離するプラグコンタクト2とソケットコンタクト3間の電圧を充分に低下させることができれば、いずれか一方の接触面のみに酸化皮膜7a、9aを形成してもよい。
【0071】
一方、酸化皮膜7a、9aによる接触抵抗値を更に増加させる必要がある場合には、パシベート処理を行って酸化皮膜7a、9aの膜厚を増加させることもできる。
【0072】
更に、不動態被膜7aは、弁金属のステンレス鋼で金属薄板7を形成して、その表面に不動態被膜7aを形成しているが、金属薄板7は、不動態被膜が形成されるNi、Co、Cr、Nb、Ta、Al、Moのいずれか若しくはその合金で形成してもよく、酸化皮膜は、上述の不動態被膜に限らず、希硫酸などを用いた電気分解の陽極酸化処理を施してアルミニウムの表面に形成する酸化アルミニウムの酸化被膜であってもよい。
【0073】
上述の実施の形態では、第1分岐片である金属薄板5を、ソケットコンタクト3が離反するプラグコンタクト2の先端位置のソケットコンタクト3が摺動接触する接触面側に接続したが、摺動方向に沿ってプラグコンタクト2の先端に接続してもよい。
【0074】
また、金属薄板7、9の板厚は、プラグコンタクトの進退移動を損なわなければ任意であり、例えば、金属箔で形成してもよく、金属薄板7、9の固着は、電気的及び機械的に第1分岐片やコンタクトの接触部の表面に接続できれば、半田接続の他、溶接など他の接続方法であってもよい。
【0075】
また、活線接続位置で接触する第2接点と相手側のコンタクトの表面には、腐食を防ぎ、より接触抵抗値を低下させる為の金メッキなどのメッキで覆ってもよい。
【0076】
また、上記実施の形態は、直流電力を活線接続するプラグ20のプラグコンタクト2とソケット30のソケットコンタクト3の接触構造であるが、活線接続する一組のコンタクトは、プラグとソケットからなる電気コネクタ以外に、リレー、スイッチに用いられるコンタクトの接触構造にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
アーク放電が発生する恐れのあるコンタクト間を活線接続するコンタクトの接触構造にに適している。
【符号の説明】
【0078】
1、50、60 コンタクトの接触構造
2、51、61 プラグコンタクト(第2コンタクト)
8、55、66 接触部
3、41、52、62 ソケットコンタクト(第1コンタクト)
5、43、54、63 第1分岐片
5a、43a、54a、63a 第1接点
6、44、64 第2分岐片
6a、44a、64a 第2接点
7a 不動態被膜
9a 酸化皮膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9