(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-162857(P2017-162857A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】ヒートシンクシート及び携帯用情報機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20170818BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
H05K7/20 D
H01L23/36 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-43154(P2016-43154)
(22)【出願日】2016年3月7日
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】大山 敦史
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 肇
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA04
5E322AB06
5E322FA04
5E322FA06
5F136BC04
5F136BC07
5F136EA23
5F136FA23
5F136FA51
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で薄型化及び軽量化を図ることができるヒートシンクシート及びこれを用いた携帯用情報機器を提供すること。
【解決手段】熱伝導シート21と、熱伝導シート21の発熱部品18側で発熱部品18と熱伝導シート21とを密着接続して熱接続を行う熱接続ラバー22と、熱接続ラバー22の発熱部品18側に発熱部品18が密着するための開口穴を形成するとともに熱接続ラバー22の発熱部品18側の表面周囲及び熱伝導シート21の全面を覆う接着層23、25と、を備える。熱伝導シート21は、グラファイトシートであることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導シートと、
前記熱伝導シートの発熱部品側で前記発熱部品と前記熱伝導シートとを密着接続して熱接続を行う熱接続ラバーと、
前記熱接続ラバーの前記発熱部品側に前記発熱部品が密着するための開口穴を形成するとともに前記熱接続ラバーの前記発熱部品側の表面周囲及び前記熱伝導シートの全面を覆う接着層と、
を備えたことを特徴とするヒートシンクシート。
【請求項2】
前記熱伝導シートを覆う、前記発熱部品とは反対側の接着層の表面に保護層を接着したことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンクシート。
【請求項3】
前記熱伝導シートは、グラファイトシートであることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシンクシート。
【請求項4】
前記熱接続ラバーは、カーボン系またはシリコン系の部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のヒートシンクシート。
【請求項5】
前記接着層は、両面接着シートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のヒートシンクシート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のヒートシンクシートを基板上の発熱源に密着させたことを特徴とする携帯用情報機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成で薄型化及び軽量化を図ることができるヒートシンクシート及びこれを用いた携帯用情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット型パーソナルコンピュータ(タブレット型PC)やスマートフォン等の携帯用情報機器では、筐体の内部に配設された電子部品から発せられる熱を筐体の外部へと円滑に放熱させるため、筐体の内部にヒートパイプやヒートスプレッダ等の放熱器を設けた構成が広く採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、対向配置したシート状の上蓋及び下蓋の周囲を接合し、その内部空間にウイック構造体及び冷却流体を収容した構成のシート状ヒートパイプが開示されている。特許文献1では、このヒートパイプをスマートフォンに搭載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−174376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような携帯用情報機器では薄型化の要望が強く、その内部に搭載するヒートシンクも可能な限り薄型化されることが望ましい。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような従来構成の携帯用情報機器では、接合した上蓋と下蓋の内部にウイック構造体及び冷却流体を収容した一般的な構造の放熱器を搭載している。すなわち、上蓋及び下蓋の2枚のシート状部材を接合した放熱器では、2枚のシート状部材の分の厚み寸法が必須となっており、その薄型化及び軽量化には限界がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で薄型化及び軽量化を図ることができるヒートシンクシート及びこれを用いた携帯用情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるヒートシンクシートは、熱伝導シートと、前記熱伝導シートの発熱部品側で前記発熱部品と前記熱伝導シートとを密着接続して熱接続を行う熱接続ラバーと、前記熱接続ラバーの前記発熱部品側に前記発熱部品が密着するための開口穴を形成するとともに前記熱接続ラバーの前記発熱部品側の表面周囲及び前記熱伝導シートの全面を覆う接着層と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかるヒートシンクシートは、上記の発明において、前記熱伝導シートを覆う、前記発熱部品とは反対側の接着層の表面に保護層を接着したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるヒートシンクシートは、上記の発明において、前記熱伝導シートは、グラファイトシートであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるヒートシンクシートは、上記の発明において、前記熱接続ラバーは、カーボン系またはシリコン系の部材であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるヒートシンクシートは、上記の発明において、前記接着層は、両面接着シートであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる携帯用情報機器は、上記の発明のいずれか一つに記載のヒートシンクシートを基板上の発熱源に密着させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱伝導シートと、前記熱伝導シートの発熱部品側で前記発熱部品と前記熱伝導シートとを密着接続して熱接続を行う熱接続ラバーと、前記熱接続ラバーの前記発熱部品側に前記発熱部品が密着するための開口穴を形成するとともに前記熱接続ラバーの前記発熱部品側の表面周囲及び前記熱伝導シートの全面を覆う接着層と、を備えたヒートシンクシートとして、発熱部品と熱伝導シートとの間に熱抵抗の高い接着層を介在させないようにしているので、簡易な構成で薄型化及び軽量化を図ることができるとともに熱拡散効果を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態であるヒートシンクシートを有した携帯用情報機器の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した携帯用情報機器の断面構造を模式的に示した図である。
【
図3】
図3は、基板上に配置された発熱部品と非発熱部品と発熱部品上部に配置されたヒートシンクシートとの配置状態を示す図である。
【
図4】
図4は、発熱部品と熱伝導シートとの間に接着層を介在させた場合と介在させない場合の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるヒートシンクシート20を有した携帯用情報機器10の外観構成を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した携帯用情報機器10の断面構造を模式的に示した図である。
【0017】
本実施の形態では、携帯用情報機器10としてタブレット型PCを例示する。本発明を適用可能な携帯用情報機器はタブレット型PC以外であってもよく、例えば、スマートフォン、携帯電話、又は電子手帳等の各種電子機器を例示できる。
【0018】
図1に示すように、タブレット型PCである携帯用情報機器10は、筐体12と、筐体12の前面に設けられたタッチパネル式の液晶ディスプレイ14とを備える。
【0019】
筐体12は、内部に収容空間を形成した扁平箱状に構成されている。筐体12は、携帯用情報機器10の背面から外周側面までを覆う外装カバー12aを有する。筐体12の前面は、液晶ディスプレイ14を構成するガラス板14aによって形成されている。外装カバー12aは、金属製の薄板であり、例えばアルミニウムによって形成されている。
【0020】
筐体12の内部には、基板16と、CPUなどの発熱源としての電子部品である発熱部品18と、メモリなどの電子部品である非発熱部品30と、ヒートシンクシート20とが配置される。
【0021】
基板16は、各種電子部品であるICチップ等が実装されている。発熱部品18は、例えば基板16に実装されたCPU等のICチップ、カメラ用のチップ及び部品、又はバッテリ等、携帯用情報機器10の動作中に発熱する発熱体である。なお、非発熱部品30は、発熱を許容するが、発熱部品18に比して発熱の度合いが小さいものである。ヒートシンクシート20は、発熱部品18の上部に配置され、発熱部品18の温度上昇を抑える。
【0022】
図2に示すように、ヒートシンクシート20は、発熱部品18から上部方向に向けて、順次、熱接続ラバー22、熱伝導シート21が密着配置される。熱伝導シート21は、例えば、グラファイトシートである。熱接続ラバー22は、熱伝導シート21の発熱部品18側で発熱部品18と熱伝導シート21とを密着接続して熱接続を行う。接着層25は、発熱部品18の上面が熱接続ラバー22に密着する領域に開口穴26を形成するとともに、熱接続ラバー22の発熱部品18側の表面周囲及び熱伝導シート21の下面全体を覆う。接着層23は、熱伝導シート21の上面全体を覆う。したがって、開口穴26を除き、熱伝導シート21は、接着層25、23によって覆われることになる。
【0023】
なお、接着層23の上面には、絶縁用の保護層24が設けられる。保護層24は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂である。熱接続ラバー22は、カーボン系あるいはシリコン系の接着性を有する熱伝導部材である。接着層25、23は、両面接着シートである。
【0024】
ヒートシンクシート20は、熱伝導シート21がグラファイトシートのように、グラファイトシートを構成する紛体が剥がれることによって周囲に散乱する部材であっても、接着層25、23によってラッピングされるため、紛体の散乱を防止できる。さらに、ヒートシンクシート20は、発熱部品18と熱伝導シート21との間には、熱抵抗となる接着層25が存在せず、熱伝導率の高い熱接続ラバー22のみが介在するため、発熱部品18の熱を熱伝導シート21側に熱抵抗を小さくした状態で熱接続される。
【0025】
また、ヒートシンクシート20は、熱伝導シート21が熱接続ラバー22を介して直接、発熱部品18に接着させるのみでよいため、特許文献1に記載された放熱器等に比して簡易な構成で、薄型化及び軽量化を図ることができる。
【0026】
さらに、ヒートシンクシート20は、個々の発熱部品18に接着すればよいので、設計変更等に容易に対応することができる。
図3では、基板16上に発熱部品18、非発熱部品30〜32が配置されており、発熱部品18上にヒートシンクシート20が設けられているが、例えば、非発熱部品31が発熱部品となった場合、この発熱部品の上部にヒートシンクシート20を接着配置すればよい。
【0027】
なお、上述した熱伝導シート21、接着層23、25、保護層24の厚さは、0.1mm程度であり、熱接続ラバー22の厚さは、0.5mm程度である。
【0028】
また、熱伝導シート21をグラファイトシートとした場合、グラファイトシートは、銅の熱伝導率の2〜4倍程度の高い熱伝導率を有する。
【0029】
図4は、熱伝導シート21と発熱部品38との間に接着層25を介在させた場合と介在させない場合の断面構造を示す図である。
図4(a)では、熱伝導シート21と発熱部品38との間に熱接続ラバー22と接着層25とを介在させている。
図4(b)では、熱伝導シート21と発熱部品38との間に熱接続ラバー22のみを介在させている。発熱部品38は、1Wの発熱体である。熱伝導シート21は厚さ0.1mmのグラファイトシートである。熱接続ラバー22に厚さは0.5mmである。また、接着層25の厚さは0.1mmである。
図4(a)及び
図4(b)に対する発熱部品38の温度の実験結果は、
図4(a)の発熱部品38の温度が87.8℃であったのに対し、
図4(b)の発熱部品38の温度は65.0℃であり、
図4(b)の構成の方が、熱伝導シート21による熱拡散効果が大きく、ヒートシンクシート20が実用に供するものであることがわかる。
【符号の説明】
【0030】
10 携帯用情報機器
12 筐体
12a 外装カバー
14 液晶ディスプレイ
14a ガラス板
16 基板
18、38 発熱部品
20 ヒートシンクシート
21 熱伝導シート
22 熱接続ラバー
23、25 接着層
24 保護層
26 開口穴
30〜32 非発熱部品