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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-163033(P2017-163033A)
(43)【公開日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/10 20060101AFI20170818BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20170818BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20170818BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   H01L35/10
   H01L35/32 Z
   H01L35/34
   H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-47300(P2016-47300)
(22)【出願日】2016年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】内山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】久保 和哉
(57)【要約】
【課題】使用条件に依存することなく電極等の剥離を防止し、信頼性に優れた熱電変換モジュールを提供すること。
【解決手段】並設された複数の熱電変換素子と、前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続する第1電極と、前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続する第2電極と、を有し、前記複数の熱電変換素子、前記第1電極、及び前記第2電極は、少なくとも1つの直列接続体を形成し、前記直列接続体の端部には可撓性を備える第3電極が配設されていること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の熱電変換素子と、
前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続する第1電極と、
前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続する第2電極と、を有し、
前記複数の熱電変換素子、前記第1電極、及び前記第2電極は、少なくとも1つの直列接続体を形成し、
前記直列接続体の端部には可撓性を備える第3電極が配設されている熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記直列接続体を複数有し、
前記直列接続体同士を前記第3電極によって接続する請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記第3電極は、メッシュ状金属を含む請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記第3電極は、前記メッシュ状金属の両端に金属板が固着された構造を備える請求項3に記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極は、可撓性を備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼーベック効果による熱電発電を行う熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換モジュールは、ゼーベック効果によって熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能である熱電変換素子から構成されるモジュールである。このようなエネルギーの変換性質を利用することで、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、環境問題に配慮した省エネルギー技術として当該熱電変換モジュール及びこれを構成する熱電変換素子が注目されている。
【0003】
このような熱電変換モジュールは、一般的に、複数個の熱電変換素子(p型半導体及びn型半導体)を電極で接合して構成される。このような熱電変換モジュールは、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている熱電変換モジュールは、一対の基板と、一方の端部が当該基板の一方に配置される第1電極と電気的に接続され、他方の端部が当該基板の他方に配置される第2電極と電気的に接続される複数の熱電変換素子と、当該熱電変換素子に電気的に接続される第1電極を、隣接する熱電変換素子に電気的に接続される第2電極に、電気的に接続する接続部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−115359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような熱電変換モジュールの構造においては、当該熱変換モジュールをエンジンの排気部等の熱源に搭載して使用する場合、エンジンの排気量の増加に伴って熱量が上昇すると、当該熱源に接触する基板が熱膨張によって歪み或いは湾曲することがある。このような基板の歪み又は湾曲が生じると、熱電変換モジュールの引出用の端子、又は当該端子の近傍(すなわち、熱電変換モジュールの始端及び終端)に位置する電極又は接続部に応力が集中し、当該端子が熱電変換素子から剥離したり、或いは当該端子の近傍に位置する電極が接続部から剥離する問題が生じていた。このような剥離は、熱電変換モジュールにおける内部抵抗及び電圧の変動につながり、信頼性の低下をもたらすことになる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用条件に依存することなく電極等の剥離を防止し、信頼性に優れた熱電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明の熱電変換モジュールは、並設された複数の熱電変換素子と、前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続する第1電極と、前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続する第2電極と、を有し、前記複数の熱電変換素子、前記第1電極、及び前記第2電極は、少なくとも1つの直列接続体を形成し、前記直列接続体の端部には可撓性を備える第3電極が配設されている。
【0008】
上述した熱電変換モジュールにおいて、前記直列接続体を複数有し、前記直列接続体同士を前記第3電極によって接続してもよい。これにより、より多くの熱電変換素子を熱電変化モジュール内に配置し、より優れた熱電変換効率を備える熱電変換モジュールを実現することができる。
【0009】
上述したいずれかの熱電変換モジュールにおいて、第3電極がメッシュ状金属を含んでもよく、当該メッシュ状電極の両端に金属板が固着された構造を備えていてもよい。これにより、直列接続体の端部に応力集中が生じたとしても、歪による第3電極への影響をより一層低減することができ、第3電極の剥離を確実に防止することができる。
【0010】
上述した熱電変換モジュールのいずれかにおいて、前記第1電極及び前記第2電極は、可撓性を備えていてもよい。これにより、熱電変換モジュールの端部のみならず全ての電極部分における応力に伴う歪みの影響を低減することができ、より信頼性の高い熱電変換モジュールを実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る熱電変換モジュールによれば、使用条件に依存することなく電極等の剥離を防止し、優れた信頼性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例に係る熱電変換モジュールの斜視図である。
図2】実施例に係る熱電変換モジュールの上面図である。
図3図2における線III-IIIに沿った切断部端面図である。
図4】実施例に係る熱電変換モジュールに使用される電極の側面図である。
図5】所定試験中の熱電変換モジュールに関する電圧変動を示すグラフである。
図6】所定試験中の比較例に関する電圧変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明による熱電変換モジュールの実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による熱電変換モジュール又はその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略等を行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0014】
<実施例>
(熱電変換モジュールの構造)
以下において、図1乃至図3を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換モジュール1の構造について説明する。ここで、図1は本実施例に係る熱電変換モジュール1の斜視図である。また、図2は本実施例に係る熱電変換モジュール1の上面図である。更に、図3図2における線III-IIIに沿った切断部端面図である。そして、図1における一方向をX方向と定義し、X方向に直交する方向をY方向、及びZ方向と定義するとともに、特に熱電変換モジュール1の高さ方向をZ方向と定義する。
【0015】
図1乃至図3から分かるように、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、並設された複数の第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bと、当該第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの端部に設けられた第1電極3a及び第2電極3bと、を有している。また、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、熱電変換モジュール1のX方向の端部に位置する第1電極3a同士を接続する接続電極3cと、熱電変換モジュール1の外部接続電極として機能する引出電極3dと、を有している。更に、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、第1電極3aを被覆するように設けられた第1被覆部材4と、当該第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、及び接続電極3cを被覆するように設けられた第2被覆部材5と、第2電極3bを支持するように設けられた支持基板6と、を有している。
【0016】
なお、接続電極3cのいずれかを選択して説明する場合には、接続電極3c1、接続電極3c2、接続電極3c3、又は接続電極3c4として説明し、引出電極3dのいずれかを選択して説明する場合には、引出電極3d1、又は引出電極3d2として説明する。
【0017】
本実施例において、第1熱電変換素子2aはN型半導体材料から構成され、第2熱電変換素子2bはP型半導体材料から構成されている。また、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、交互且つマトリックス状(X方向に8個、Y方向に5個、合計40個)に配置されている。更に、隣接する第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、第1電極3a及び第2電極3bを介して電気的に接続されている。そして、図3に示すように、本実施例において、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、直径が互いに異なる円柱体が連結した形状を有している。より具体的には図3に示すように、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、直径が大きい第1円柱部11(例えば、直径5mm)が第1電極3a側に位置し、直径が小さい第2円柱部12(例えば、直径3mm)が第2電極3b側に位置している。なお、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの形状はこのような形状に限定されることなく、例えば、円柱状又は角柱状であってもよい。
【0018】
第1電極3a及び第2電極3bは、同一の形状(平板状)を有し、例えば、銅板から形成されている。また、第1電極3aは、X方向に5個、Y方向に5個(合計25個)並設されている。更に、X方向の両端に位置する第1電極3aの一端には、第1熱電変換素子2a又は第2熱電変換素子2bのいずれか一方のみが接続され、他端には接続電極3c又は引出電極3dが接続されている。一方、第2電極3b、X方向に4個、Y方向に5個(合計20個)並設されている。また、第2電極3bの一端には第1熱電変換素子2aが接続され、他端には第2熱電変換素子2bが接続されている。そして、図1及び図3から分かるように、第1電極3a及び第2電極3bは、Z方向において、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bを挟むように配置されている。
【0019】
このような第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、及び第2電極3bの配置関係により、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bが直列に接続されることになる。特に、本実施例においては、X方向に並設された、4個の第1熱電変換素子2a、4個の第2熱電変換素子2b、5個の第1電極3a、及び4個の第2電極3bから1つの直列接続体13が形成されている。すなわち、熱電変換モジュール1には合計5個の直列接続体13が形成されている。また、Y方向において隣接する直列接続体13同士は、それぞれの一端同士が接続電極3cを介して接続されている。なお、直列接続体13のいずれかを選択して説明する場合には、直列接続体13a、直列接続体13b、直列接続体13c、直列接続体13d、又は直列接続体13eとして説明する。
【0020】
ここで、第1電極3a及び第2電極3bは、銅板に限定されることなく、他の導電性材料(例えば、アルミニウム等の金属材料)によって形成されてもよい。また、第1電極3a及び第2電極3bの数量、形状は上述した内容に限定されることなく、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2b(すなわち、起電力の大きさ)に応じて適宜変更することができる。更には、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bを並列に接続するように第1電極3a及び第2電極3bを配設してもよい。
【0021】
接続電極3c及び引出電極3dは、同一の構造を有している。具体的には、図4に示すように、両電極はメッシュ状金属21と、当該メッシュ状金属21の両端に固着された2つの金属板22から構成されている。接続電極3c及び引出電極3dは良好な可撓性を備えるメッシュ状金属21を含むため、接続電極3c及び引出電極3d自体としても可撓性を備えることになる。ここで、メッシュ状金属21の開口率及び開口寸法は、接続電極3c及び引出電極3dに優れた可撓性を備えさせることができる範囲内において、適宜設定することができる。
【0022】
また、本実施例において、メッシュ状金属21及び金属板22は銅から形成されているが、これらの材料は銅に限定されることなく、他の金属を用いることができる。特に、接続電極3c及び引出電極3dの良好な可撓性を保持しつつ、優れた電気伝導率も保持できる材料が好ましい。更に、接続電極3c及び引出電極3dは、電極自体が良好な可撓性を保持することができれば、メッシュ状金属21を用いることなく、メッシュ状とは異なる構造の金属材料を使用してもよい。
【0023】
図2に示すように、−Y側に位置する引出電極3d1に接続された直列接続体13aの他端(+X側)に接続電極3c1が接続されており、当該接続電極3c1を介して1つY側に位置する直列接続体13bが接続されることになる。また、直列接続体13bは、直列接続体13aと接続した端部とは反対側(−X側)においても接続電極3c2が接続されており、当該他の接続電極3c2を介して1つY側に位置する直列接続体13cに接続されることになる。更に、同様の接続構成により、直列接続体13cと直列接続体13dが+X側において接続電極3c3を介して接続され、直列接続体13dと直列接続体13eが−X側において接続電極3c4を介して接続されている。そして、直列接続体13eの+X側には、引出電極3d2が接続されている。
【0024】
このような、直列接続体13と接続電極3cとの接続関係により、熱電変換モジュール1には、ジグザク状の1つの直列接続回路が形成されることになる。そして、当該直列接続回路の両端には、外部接続用の引出電極3dが配置されているため、熱電変換モジュール1にて生じた電力を外部に取り出すことが可能になる。なお、このようなジグザグ状の1つの直列接続回路を形成するため、直列接続体13a、13c、13eと、直列接続体13b、13dとにおける第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの配置関係は逆になっている。
【0025】
図1及び図3から分かるように、第1被覆部材4は、第1電極3aが埋設されるように、第1電極3aの表面を被覆している。また、第1被覆部材4は絶縁性を備える樹脂から形成され、且つ当該樹脂には熱伝導性材料として機能するアルミニウム、銅、又は窒化アルミニウム等の金属材料が混合されている。このような構造により、第1被覆部材4は、比較的に高い熱伝導性を備えるとともに、第1電極3aの周囲の電気的絶縁状態を良好に維持する。
【0026】
また、図1及び図3から分かるように、第2被覆部材5は、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cが埋設されるように、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cを被覆している。また、第2被覆部材5は絶縁性を備える樹脂から形成され、且つ当該樹脂には断熱材料が混合されている。例えば、第2被覆部材5を形成する断熱材料としては、グラスウール等の繊維系断熱材やポリスチレンフォーム等の発泡系断熱材を用いることができる。
【0027】
このような構造により、第2被覆部材5は、第1被覆部材4よりも低い熱伝導性を備え、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cにおける放熱を抑制する機能を備える。そして、第2被覆部材5は、第1電極3a及び第2電極3b間の温度差を大きくし且つその温度差を一定に保ち、より大きな起電力を生じさせることができる。また、第2被覆部材5は、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cの周囲の電気的絶縁状態を良好に維持する。
【0028】
更に、第2被覆部材5によって第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cが比較的に強固に保持されているため、熱電変換モジュール1自体の強度を向上させることがきる。更に、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bが完全に被覆されているため、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの破損及び汚れ等を防止することができ、熱電変換モジュール1自体の熱電変換効率及び信頼性の低下を抑制することができる。そして、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bと、第1電極3a及び第2電極3bとの接合界面の縁部が露出しないため、熱電変換素子と電極との接合強度を向上させるとともに、経年変化にともなう接合強度の低下を抑制することができ、接合界面におけるクラックの発生を防止できる。
【0029】
なお、第2被覆部材5は、第1熱電変換素子2a、及び第2熱電変換素子2bを完全に被覆している必要はなく、その一部分を被覆していてもよい。このような場合であっもて、第1電極3aと第2電極3bとの間に温度差を生じさせつつ当該温度差を一定に保つことができ、熱電変換モジュール1自体の強度を向上させることができるからである。また、第2被覆部材5は、第1被覆部材4と同様に、熱伝導性材料として機能する材料が混合されていてもよい。このような場合であっても、第2被覆部材5は、第1被覆部材4よりも低い熱伝導性を備える必要がある。更に、本実施例においては、第1被覆部材4及び第2被覆部材5の主材料が樹脂であったが、セラミックス等の材料を用いてもよい。このような場合であっても、第2電極3bを被覆する材料が、第1電極3aを被覆する材料よりも低い熱伝導率を備える必要がある。
【0030】
そして、図1及び図3に示すように、支持基板6は、第2電極3bを支持するように、第2電極3bと接合している。支持基板6は、絶縁材料から構成されており、例えば、ガラスエポキシ基板等の一般的な絶縁基板を用いることができる。
【0031】
(熱電変換モジュールの製造方法)
本実施例に係る熱電変換モジュール1の製造方法としては、製造装置を構成する通電加圧部材として機能する2つのパンチの間に、準備した第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dを配置する。その後、2つのパンチを第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dに向かって加圧しつつ電流を供給する。これにより、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bと、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dとが拡散接合(プラズマ接合)され、複数の第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bが直列に接続され、5つの直列接続体13及びこれらの直列接続体からなる直列接続回路が形成される。このような通電加圧は、真空、窒素ガス、又は不活性ガス雰囲気のチャンバ内で行われる。
【0032】
次に、接合した状態の第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dを支持基板6上に実装する。より具体的には、支持基板6上に形成された金属パターン上に第2電極3bを半田等の接合部材を介して接合し、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dの支持をなす。
【0033】
次に、一般的なインサート形成によって第2被覆部材5を形成し、その後に同様のインサート形成によって第1被覆部材4を形成する。以上の工程を経て、熱電変換モジュール1が完成することになる。
【0034】
(本実施例と比較例との比較)
次に、図5及び図6を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換モジュール1と、比較品である比較例に係る熱電変換モジュール(以下、比較例と称する)とについて実施した試験及びその結果について説明する。ここで、本実施例に係る熱電変換モジュール1と比較例との相違点は、比較例には接続電極3c及び引出電極3dに相当する部材として、非可撓性の板状の金属電極が使用されていることである。
【0035】
図5は所定試験中の熱電変換モジュール1に関する電圧変動を示すグラフであり、図6は所定試験中の比較例に関する電圧変動を示すグラフである。なお、図5及び図6において、縦軸が電圧(任意単位)であり、横軸が経過時間(秒)である。また、所定試験とは、熱電変換モジュール1及び比較例を熱源である汎用エンジン(400cc・3700rpm)に設置して耐久性を確認する試験のことである。また、当該所定試験においては、水冷チラー(20℃設定、流量:4.5L/min)を使用して冷却を行っている。
【0036】
図5及び図6を比較するとわかるように、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、役900秒までは電圧が上昇するものの、900秒以降は電圧の変動が無く、安定した電圧を出力していることが分かる。一方、比較例は、電圧が徐々に上昇するものの、電圧の変動が落ち着くことなく、約2000秒まで大きな変動を繰り返している。このような差が出る理由としては、本実施例に係る熱電変換モジュール1においては、直列接続体13の端部に可撓性を備える接続電極3c及び引出電極3dが配置されているため、熱電変換モジュール1の温度上昇に伴う応力集中が生じたとしても、接続電極3c及び引出電極3dが第1電極3aから剥離することが無いためである。一方、比較例においては、直列接続体13の端部に非可撓性の板状の電極が代わりに配置されているため、比較例の温度上昇にともない当該非可撓性の電極が第1電極3aから剥離してしまい、電圧が安定せず、その変動が大きいままとなる。
【0037】
以上のように、本実施例においては、直列接続体13の端部に可撓性を備える接続電極3c及び引出電極3dが配設されているため、熱電変換モジュール1の温度上昇に伴う応力集中が生じたとしても、接続電極3c及び引出電極3dが第1電極3aから剥離することがなくなる。また、上述した構造により、熱電変換モジュール1を車両に搭載した場合に、エンジンの振動による電極剥離も防止することができる。すなわち、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、使用条件に依存することなく電極等の剥離を防止し、優れた信頼性を実現することができる。
【0038】
なお、本実施例においては、複数の直列接続体13を形成していたが、1つの直列接続体13のみを形成し、その両端に引出電極3dが配置されている構造であってもよい。この場合においても、熱電変換モジュール1の両端に生じる応力にともなう歪みの影響を低減し、使用条件に依存することなく引出電極3dの剥離を防止し、優れた信頼性を実現することができる。
【0039】
また、本実施例においては、第1電極3a及び第2電極3bに板状の金属板を使用していたが、接続電極3c及び引出電極3dのような可撓性の電極を使用してもよい。このようにすることにより、熱電変換モジュールの端部のみならず、全ての電極部分における応力に伴う歪みの影響を低減することができ、より信頼性の高い熱電変換モジュールを提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0040】
1 熱電変換モジュール
2a 第1熱電変換素子
2b 第2熱電変換素子
3a 第1電極
3b 第2電極
3c 接続電極(第3電極)
3d 引出電極(第3電極)
4 第1被覆部材
5 第2被覆部材
6 支持基板
11 第1円柱部
12 第2円柱部
13 直列接続体
図1
図2
図3
図4
図5
図6