【解決手段】加熱源に設置される熱電変換モジュールであって、並設された複数の熱電変換素子と、前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続し、且つ前記加熱源から離間して配設される第1電極と、前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続し、且つ前記加熱源側に配設される第2電極と、を有し、前記熱電変換素子は、前記第1電極に接続した第1構造部、前記第2電極に接続し且つ前記第1構造部よりも体積が小なる第2構造部を備えること。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような熱電変換モジュールの構造においては、当該熱変換モジュールをエンジンの排気部等の加熱源に搭載して使用する場合、エンジンの近傍に搭載する場合や、エンジンの排気量の増加等に伴って熱量が上昇すると、熱電変換素子自体の温度が上昇しすぎてしまい、熱電変換素子の発電性能が低下する問題が生じていた。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的に高温の熱源に設置しても優れた発電性能を維持することができる熱電変換モジュール、及び比較的に高温の環境下においても発電性能が劣化しない熱電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明の熱電変換モジュールは、加熱源に設置される熱電変換モジュールであって、並設された複数の熱電変換素子と、前記熱電変換素子の一端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の一端同士を電気的に接続し、且つ前記加熱源から離間して配設される第1電極と、前記熱電変換素子の他端に接合され、隣接する前記熱電変換素子の他端同士を電気的に接続し、且つ前記加熱源側に配設される第2電極と、を有し、前記熱電変換素子は、前記第1電極に接続した第1構造部、前記第2電極に接続し且つ前記第1構造部よりも体積が小なる第2構造部を備える。
【0008】
上述した熱電変換モジュールにおいて、前記第1構造部と前記第2構造部との体積差に応じて、前記加熱源からの熱伝導を制御してもよい。これにより、各熱電変換素子の発電温度の最適化をより高精度に行うことができる。
【0009】
上述したいずれかの熱電変換モジュールにおいて、前記第2構造部は前記第1構造部よりも小なる外形寸法を備えていてもよい。この場合において、前記第1構造部及び前記第2構造部の形状は円柱状であり、前記第2構造部の直径は第1構造部の直径よりも小なることであってもよい。これにより、第1構造部と第2構造部との体積差を確実に設定することができ、各熱電変換素子の発電温度の最適化をより一層高精度に行うことができる。
【0010】
上述した熱電変換モジュールにおいて、前記第2構造部に空洞が形成されていてもよい。この場合において、前記第1構造部に前記第2構造部に形成された空洞よりも小なる空洞が形成されていてもよい。これにより、第1構造部と第2構造部との体積差を確実に設定することができ、各熱電変換素子の発電温度の最適化をより一層高精度に行うことができる。
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明の熱電変換素子は、第1構造部と、前記第1構造部よりも体積が小なる第2構造部と、有し、前記第1構造部に比して第2構造部が高温に曝される。
【0012】
上述した熱電変換素子において、前記第1構造部と前記第2構造部との体積差に応じて、加熱源からの熱伝導を制御してもよい。これにより、各熱電変換素子の発電温度の最適化をより高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る熱電変換モジュールによれば、比較的に高温の熱源に設置しても優れた発電性能を維持することができる。また、本発明に係る熱電変換素子によれば、比較的に高温の環境下においても発電性能の劣化が生じない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明による熱電変換モジュールの実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による熱電変換モジュール又はその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略等を行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0016】
<実施例>
(熱電変換モジュールの構造)
以下において、
図1乃至
図4を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換モジュール1の構造について説明する。ここで、
図1は本実施例に係る熱電変換モジュール1の斜視図である。また、
図2は本実施例に係る熱電変換モジュール1の上面図である。更に、
図3は
図2における線III-IIIに沿った切断部端面図である。そして、
図4は熱電変換モジュール1を構成する熱電変換素子の概略構成図である。なお、
図1における一方向をX方向と定義し、X方向に直交する方向をY方向、及びZ方向と定義するとともに、特に熱電変換モジュール1の高さ方向をZ方向と定義する。
【0017】
図1乃至
図3から分かるように、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、並設された複数の第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bと、当該第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの端部に設けられた第1電極3a及び第2電極3bと、を有している。また、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、熱電変換モジュール1のX方向の端部に位置する第1電極3a同士を接続する接続電極3cと、熱電変換モジュール1の外部接続電極として機能する引出電極3dと、を有している。更に、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、第1電極3aを被覆するように設けられた第1被覆部材4と、当該第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、及び接続電極3cを被覆するように設けられた第2被覆部材5と、第2電極3bを支持するように設けられた支持基板6と、を有している。そして、支持基板6側が車両用のエンジン等の加熱源に接触するように、熱電変換モジュール1が当該加熱源に設置されることになる。
【0018】
なお、接続電極3cのいずれかを選択して説明する場合には、接続電極3c
1、接続電極3c
2、接続電極3c
3、又は接続電極3c
4として説明し、引出電極3dのいずれかを選択して説明する場合には、引出電極3d
1、又は引出電極3d
2として説明する。
【0019】
本実施例において、第1熱電変換素子2aはN型半導体材料から構成され、第2熱電変換素子2bはP型半導体材料から構成されている。また、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、交互且つマトリックス状(X方向に8個、Y方向に5個、合計40個)に配置されている。更に、隣接する第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、第1電極3a及び第2電極3bを介して電気的に接続されている。
【0020】
図3及び
図4に示すように、本実施例において、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、直径が互いに異なる円柱体が連結した形状を有している。より具体的には
図4に示すように、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bは、外形寸法である直径が大きい第1円柱部(第1構造部)11(例えば、直径5mm)が第1電極3a側に位置し、直径が小さい第2円柱部(第2構造部)12(例えば、直径3mm)が第2電極3b側に位置している。すなわち、各熱電変換素子は、第1電極3aに接続した第1円柱部11、第2電極3bに接続し且つ第1円柱部11よりも体積が小なる第2円柱部12から構成され、外形として段差が形成されている。このような各熱電変換素子における体積差を設けることにより、加熱源からの熱伝導を制御することができることになる。なお、当該熱伝導の制御については、後述する試験結果の説明の際に詳細に説明する。
【0021】
第1電極3a及び第2電極3bは、同一の形状(平板状)を有し、例えば、銅板から形成されている。また、第1電極3aは、X方向に5個、Y方向に5個(合計25個)並設されている。更に、X方向の両端に位置する第1電極3aの一端には、第1熱電変換素子2a又は第2熱電変換素子2bのいずれか一方のみが接続され、他端には接続電極3c又は引出電極3dが接続されている。一方、第2電極3b、X方向に4個、Y方向に5個(合計20個)並設されている。また、第2電極3bの一端には第1熱電変換素子2aが接続され、他端には第2熱電変換素子2bが接続されている。そして、
図1及び
図3から分かるように、第1電極3a及び第2電極3bは、Z方向において、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bを挟むように配置されている。
【0022】
このような第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、及び第2電極3bの配置関係により、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bが直列に接続されることになる。特に、本実施例においては、X方向に並設された、4個の第1熱電変換素子2a、4個の第2熱電変換素子2b、5個の第1電極3a、及び4個の第2電極3bから1つの直列接続体13が形成されている。すなわち、熱電変換モジュール1には合計5個の直列接続体13が形成されている。また、Y方向において隣接する直列接続体13同士は、それぞれの一端同士が接続電極3cを介して接続されている。なお、直列接続体13のいずれかを選択して説明する場合には、直列接続体13a、直列接続体13b、直列接続体13c、直列接続体13d、又は直列接続体13eとして説明する。
【0023】
ここで、第1電極3a及び第2電極3bは、銅板に限定されることなく、他の導電性材料(例えば、アルミニウム等の金属材料)によって形成されてもよい。また、第1電極3a及び第2電極3bの数量、形状は上述した内容に限定されることなく、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2b(すなわち、起電力の大きさ)に応じて適宜変更することができる。更には、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bを並列に接続するように第1電極3a及び第2電極3bを配設してもよい。
【0024】
接続電極3c及び引出電極3dは、同一の構造を有している。具体的には、
図5に示すように、両電極はメッシュ状金属21と、当該メッシュ状金属21の両端に固着された2つの金属板22から構成されている。接続電極3c及び引出電極3dは良好な可撓性を備えるメッシュ状金属21を含むため、接続電極3c及び引出電極3d自体としても可撓性を備えることになる。ここで、メッシュ状金属21の開口率及び開口寸法は、接続電極3c及び引出電極3dに優れた可撓性を備えさせることができる範囲内において、適宜設定することができる。
【0025】
また、本実施例において、メッシュ状金属21及び金属板22は銅から形成されているが、これらの材料は銅に限定されることなく、他の金属を用いることができる。特に、接続電極3c及び引出電極3dの良好な可撓性を保持しつつ、優れた電気伝導率も保持できる材料が好ましい。更に、接続電極3c及び引出電極3dは、電極自体が良好な可撓性を保持することができれば、メッシュ状金属21を用いることなく、メッシュ状とは異なる構造の金属材料を使用してもよい。
【0026】
図2に示すように、−Y側に位置する引出電極3d
1に接続された直列接続体13aの他端(+X側)に接続電極3c
1が接続されており、当該接続電極3c
1を介して1つY側に位置する直列接続体13bが接続されることになる。また、直列接続体13bは、直列接続体13aと接続した端部とは反対側(−X側)においても接続電極3c
2が接続されており、当該他の接続電極3c
2を介して1つY側に位置する直列接続体13cに接続されることになる。更に、同様の接続構成により、直列接続体13cと直列接続体13dが+X側において接続電極3c
3を介して接続され、直列接続体13dと直列接続体13eが−X側において接続電極3c
4を介して接続されている。そして、直列接続体13eの+X側には、引出電極3d
2が接続されている。
【0027】
このような、直列接続体13と接続電極3cとの接続関係により、熱電変換モジュール1には、ジグザク状の1つの直列接続回路が形成されることになる。そして、当該直列接続回路の両端には、外部接続用の引出電極3dが配置されているため、熱電変換モジュール1にて生じた電力を外部に取り出すことが可能になる。なお、このようなジグザグ状の1つの直列接続回路を形成するため、直列接続体13a、13c、13eと、直列接続体13b、13dとにおける第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの配置関係は逆になっている。
【0028】
また、本実施例においては、直列接続体13の端部に可撓性を備える接続電極3c及び引出電極3dが配設されているため、熱電変換モジュール1の温度上昇に伴う応力集中が生じたとしても、接続電極3c及び引出電極3dが第1電極3aから剥離することがなくなる。更に、上述した構造により、熱電変換モジュール1を車両に搭載した場合に、エンジンの振動による電極剥離も防止することができる。
【0029】
図1及び
図3から分かるように、第1被覆部材4は、第1電極3aが埋設されるように、第1電極3aの表面を被覆している。また、第1被覆部材4は絶縁性を備える樹脂から形成され、且つ当該樹脂には熱伝導性材料として機能するアルミニウム、銅、又は窒化アルミニウム等の金属材料が混合されている。このような構造により、第1被覆部材4は、比較的に高い熱伝導性を備えるとともに、第1電極3aの周囲の電気的絶縁状態を良好に維持する。
【0030】
また、
図1及び
図3から分かるように、第2被覆部材5は、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cが埋設されるように、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cを被覆している。また、第2被覆部材5は絶縁性を備える樹脂から形成され、且つ当該樹脂には断熱材料が混合されている。例えば、第2被覆部材5を形成する断熱材料としては、グラスウール等の繊維系断熱材やポリスチレンフォーム等の発泡系断熱材を用いることができる。
【0031】
このような構造により、第2被覆部材5は、第1被覆部材4よりも低い熱伝導性を備え、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cにおける放熱を抑制する機能を備える。そして、第2被覆部材5は、第1電極3a及び第2電極3b間の温度差を大きくし且つその温度差を一定に保ち、より大きな起電力を生じさせることができる。また、第2被覆部材5は、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cの周囲の電気的絶縁状態を良好に維持する。
【0032】
更に、第2被覆部材5によって第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第2電極3b、及び接続電極3cが比較的に強固に保持されているため、熱電変換モジュール1自体の強度を向上させることがきる。更に、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bが完全に被覆されているため、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの破損及び汚れ等を防止することができ、熱電変換モジュール1自体の熱電変換効率及び信頼性の低下を抑制することができる。そして、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bと、第1電極3a及び第2電極3bとの接合界面の縁部が露出しないため、熱電変換素子と電極との接合強度を向上させるとともに、経年変化にともなう接合強度の低下を抑制することができ、接合界面におけるクラックの発生を防止できる。
【0033】
なお、第2被覆部材5は、第1熱電変換素子2a、及び第2熱電変換素子2bを完全に被覆している必要はなく、その一部分を被覆していてもよい。このような場合であっもて、第1電極3aと第2電極3bとの間に温度差を生じさせつつ当該温度差を一定に保つことができ、熱電変換モジュール1自体の強度を向上させることができるからである。また、第2被覆部材5は、第1被覆部材4と同様に、熱伝導性材料として機能する材料が混合されていてもよい。このような場合であっても、第2被覆部材5は、第1被覆部材4よりも低い熱伝導性を備える必要がある。更に、本実施例においては、第1被覆部材4及び第2被覆部材5の主材料が樹脂であったが、セラミックス等の材料を用いてもよい。このような場合であっても、第2電極3bを被覆する材料が、第1電極3aを被覆する材料よりも低い熱伝導率を備える必要がある。
【0034】
そして、
図1及び
図3に示すように、支持基板6は、第2電極3bを支持するように、第2電極3bと接合している。支持基板6は、絶縁材料から構成されており、例えば、ガラスエポキシ基板等の一般的な絶縁基板を用いることができる。
【0035】
(熱電変換モジュールの製造方法)
本実施例に係る熱電変換モジュール1の製造方法としては、製造装置を構成する通電加圧部材として機能する2つのパンチの間に、準備した第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dを配置する。その後、2つのパンチを第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dに向かって加圧しつつ電流を供給する。これにより、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bと、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dとが拡散接合(プラズマ接合)され、複数の第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bが直列に接続され、5つの直列接続体13及びこれらの直列接続体からなる直列接続回路が形成される。このような通電加圧は、真空、窒素ガス、又は不活性ガス雰囲気のチャンバ内で行われる。
【0036】
次に、接合した状態の第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dを支持基板6上に実装する。より具体的には、支持基板6上に形成された金属パターン上に第2電極3bを半田等の接合部材を介して接合し、第1熱電変換素子2a、第2熱電変換素子2b、第1電極3a、第2電極3b、接続電極3c、及び引出電極3dの支持をなす。
【0037】
次に、一般的なインサート形成によって第2被覆部材5を形成し、その後に同様のインサート形成によって第1被覆部材4を形成する。以上の工程を経て、熱電変換モジュール1が完成することになる。
【0038】
(本実施例品と比較例品との比較)
次に、以下の表1を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換モジュール1を構成する1つの直列接続体13(以下、実施例品と称する)と、本実施例に係る直列接続体13とは異なる構造を有する比較例としての直列接続体(以下、比較例品)とについて実施した試験及びその結果について説明する。ここで、本実施例品と比較例品との相違点は、比較例品には段付きの第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bに相当する部材として、円柱状の熱電変換素子が使用されていることである。また、本性能比較のための試験内容としては、実施例品と比較例品とをハンドホットプレスを用いて80℃に加熱し、デジタル抵抗計を使用して、抵抗、電圧、及び電力を測定した。なお、加熱は、実施例品における第2電極3b(すなわち、第2円柱体12)側から行っている。
【0040】
表1に示すように、実施例品は、抵抗、電圧、及び電力のいずれの値も比較例品より高くなっていた。当該抵抗値、電圧値、電力値の差に基づいて発電性能を評価すると、実施例品が比較例品と比較して、発電性能が約43%向上していることが分かった。これは、実施例品において、体積のより小さい第2円柱部12側が加熱され、体積のより大きい第1円柱部11側に向けて熱が伝導して放熱されるため、第1熱電変換素子2a及び第2熱電変換素子2bの温度上昇が抑制されているからである。すなわち、各熱電変換素子の材料構成を変えることなく、各熱電変換素子の第1円柱部11及び第2円柱部12の体積差のみにより、加熱源からの熱伝導が制御され、各熱電変換素子の発電温度の最適化が図られることになる。このような各熱電変換素子の発電温度の最適化により、各熱電変換素子及び熱電変換モジュール1自体の発電効率を向上することができる。
【0041】
以上のように、本実施例においては、熱電変換モジュール1を構成する各熱電変換素子が、互いに体積の異なる第1円柱部(第1構造部)11及び第2円柱部(第2構造部)12を備えている。そして、このような各熱電変換素子の構造から、体積が小なる第2円柱部12を加熱源である高温側に配置し(すなわち、高温側に曝され)、体積が大なる第1円柱部11を低温側に配置する(すなわち、加熱源である高温側から離間して配置する)ことができるため、各熱電変換素子の発電温度の最適化を図るように各熱電変化素子における熱伝導を制御することが可能になる。換言すると、本実施例に係る熱電変換モジュール1及び各熱電変換素子は、熱電変化素子の材料構成を変更することなく、形状の調整という簡単な手法のみにより、コストを抑えて各熱電変換素子の発電温度の最適化を図ることができる。従って、本実施例に係る熱電変換モジュール1は、比較的に高温の熱源に設置しても優れた発電性能を維持することができ、本実施例に係る各熱電変換素子は、比較的に高温の環境下においても発電性能の劣化が生じないことになる。
【0042】
(熱電変換素子の変形例)
上述した実施例において、各熱電変換素子が互いに体積の異なる第1円柱部11及び第2円柱部12から構成されていたが、熱電変換モジュール1を加熱源に設置した際に、高温側に体積が小なる構造部が位置し、低温側に体積が大なる構造部が位置することができれば、各熱電変換素子の構造は上述したものに限定されない。例えば、
図6及び
図7に示すように、熱電変換素子内に空洞を形成してもよい。ここで、
図6及び
図7は、変形例に係る熱電変換素子の概略構成図である。
【0043】
より具体的に、
図6において、熱電変換素子31(P型半導体材料及びN型半導体材料のいずれから構成されてもよい)の外形は円柱状である。また、熱電変換素子31は、その中心から上側に第1構造部31aが配置され、下側に第2構造部31bが配置されている。すなわち、第1構造部31aと第2構造部31bとは、外形寸法及び外形形状が同一になっている。更に、第2構造部31bのみに、円柱状の空洞32が形成されている。このような空洞32により、第1構造部31aと第2構造部31bとの外形寸法及び外形形状が同一であっても、第1構造部31aの体積は第2構造部31bの体積よりも大きくなっている。
【0044】
また、
図7においても、熱電変換素子41(P型半導体材料及びN型半導体材料のいずれから構成されてもよい)の外形は円柱状であるが、その内部には円錐台状の空洞42が形成されている。これにより、熱電変換素子41は、その中心から上側に体積が大なる第1構造部41aが配置され、下側に体積が小なる第2構造部41bが配置されることになる。
【0045】
図6及び
図7に示された熱電変換素子31、41であっても、体積が小なる第2構造部31b、41bを加熱源である高温側に配置し、体積が大なる第1構造部31a、41aを低温側に配置することができるため、各熱電変換素子の発電温度の最適化を図るように各熱電変化素子における熱伝導を制御することが可能になる。
【0046】
なお、熱電変換素子の外形は、円柱状に限定されることなく、例えば、四角柱であってもよい。このような場合であっても、高温側に配置される第2構造部側に空洞を少なくとも設けることにより、熱電変換素子の構成部の体積差を設けることが必要となる。また、熱電変換素子の外形を円錐台又は角錐台にすることにより、熱電変換素子の外形寸法によって構成部の体積差を実現してもよい。この場合であっても、当該熱電変換素子に空洞を適宜形成してもよい。