【解決手段】発振回路1は、粗調整信号生成回路20、微調整信号生成回路40、メインPLL50を有し、微調整信号生成回路40は、比較信号生成部41により生成された信号に対して所定の周波数の信号に基づいてアップコンバートを行うミキサ45を備え、メインPLL50は、入力電圧に応じた周波数の信号を出力するVCO53と、VCO53の出力信号と粗調整信号生成回路20の出力信号とを混合するミキサ54と、ミキサ54の出力信号と微調整信号生成回路40の出力信号とを比較して位相誤差信号を出力するPFD51と、PFD51の出力信号を所定のループ帯域幅で通過させてVCO53に出力するLF52と、を備える。
前記信号生成回路は、前記信号生成手段の出力信号に対して前記アップコンバートを行わないで出力する出力手段(46a、46b)をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の発振回路。
前記第2の混合手段は、前記第2の入力信号として、複数の周波数の中から選択された1つの周波数の信号を入力するものであることを特徴とする請求項2に記載の発振回路。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、信号発生装置や信号解析装置等の測定装置には位相同期ループ(Phase Locked Loop:PLL)回路が使用されている。この種のPLL回路としては、例えば、特許文献1に示されているような、メインループ及びサブループの2つの制御ループを有するマルチループ構成のPLL周波数シンセサイザが知られている。
【0003】
特許文献1に示されたPLL回路は、例えばスペクトラムアナライザのような測定装置において、広範なローカル信号を発生する発振回路に適用することができる。この場合の発振回路は、具体的には
図7に示すような構成となる。
図7に示した発振回路100は、出力可能な発振周波数を2250MHz〜5400MHzとした場合の構成例である。
【0004】
図7に示すように、発振回路100は、基準信号生成部110、サブループ120、メインループ140、比較信号生成部101及び102を備えている。比較信号生成部101及び102は、それぞれ、150MHz及び50MHzの各信号を出力するものである。基準信号生成部110は、2400MHz〜5200MHzの各信号を400MHzステップで生成する発振器111〜118と、これらの発振器111〜118のいずれか1つを選択するスイッチ(SW)119と、を備えている。
【0005】
サブループ120は、PFD(位相周波数比較器)121、LF(ループフィルタ)122、ミキサ123、VCO(電圧制御発振器)回路130を備えている。
【0006】
PFD121は、比較信号生成部101とミキサ123とに接続され、両者の出力信号を比較して位相誤差信号を出力するようになっている。
【0007】
VCO回路130は、VCO131〜138と、これらを切り替えるSW139a及び139bと、を備えている。SW139a及び139bは、基準信号生成部110の発振器111〜118の選択に合わせてVCO131〜138を選択するようになっている。例えば、基準信号生成部110の発振器111がSW119により選択された場合には、SW139a及び139bは、VCO131を選択する。
【0008】
メインループ140は、PFD141、LF142、VCO143、ミキサ144を備えている。
【0009】
PFD141は、比較信号生成部102とミキサ144とに接続され、両者の出力信号を比較して位相誤差信号を出力するようになっている。
【0010】
前述の構成により、サブループ120は、比較信号生成部101及び基準信号生成部110の各信号から2400MHz±150MHz〜5200MHz±150MHzの信号を生成してメインループ140に出力する。その結果、発振回路100は、メインループ140により、比較信号生成部102及びサブループ120の各信号から2250MHz〜5400MHzの信号を生成して出力することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の発振回路では、
図7に示したように、広範な発振周波数を得ようとすると回路規模が大きくなり、発振回路を適用する装置の小型化が図れないという課題があった。
【0013】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、広範な発振周波数が得られ、しかも回路規模の縮小化を図ることができる発振回路及び発振方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係る発振回路は、信号生成回路(40)と、位相同期ループ回路(50)と、を有し、前記信号生成回路は、予め定められた周波数の信号を生成する信号生成手段(41)と、前記信号生成手段により生成された信号に対して所定の周波数の信号に基づいてアップコンバートを行うアップコンバート手段(45)と、を備え、前記位相同期ループ回路は、入力電圧に応じた周波数の信号を出力する電圧制御発振器(53)と、前記電圧制御発振器の出力信号と所定の入力信号とを混合する混合手段(54)と、前記混合手段の出力信号と前記アップコンバート手段の出力信号とを比較して位相誤差信号を出力する位相周波数比較器(51)と、前記位相周波数比較器の出力信号を所定のループ帯域幅で通過させて前記電圧制御発振器に出力するフィルタ手段(52)と、を備えた構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項1に係る発振回路は、所定の入力信号とアップコンバート手段の出力信号とに基づいて信号を生成する位相同期ループ回路を備えるので、従来よりも広範な発振周波数を発生することができる。
【0016】
また、この構成により、本発明の請求項1に係る発振回路は、従来のもののように、複数の発振器やVCO、これらのいずれか1つを選択するスイッチ等を含む複雑な構成を大幅に簡略化できるので、回路規模の縮小化を図ることもできる。
【0017】
したがって、本発明の請求項1に係る発振回路は、広範な発振周波数が得られ、しかも回路規模の縮小化を図ることができる。
【0018】
本発明の請求項2に係る発振回路は、信号生成回路(40)と、第1及び第2の位相同期ループ回路(50、30)と、を有し、前記信号生成回路は、予め定められた周波数の信号を生成する信号生成手段(41)と、前記信号生成手段により生成された信号に対して所定の周波数の信号に基づいてアップコンバートを行うアップコンバート手段(45)と、を備え、前記第1の位相同期ループ回路は、入力電圧に応じた周波数の信号を出力する第1の電圧制御発振器(53)と、前記第1の電圧制御発振器の出力信号と第1の入力信号とを混合する第1の混合手段(54)と、前記第1の混合手段の出力信号と前記アップコンバート手段の出力信号とを比較して位相誤差信号を出力する第1の位相周波数比較器(51)と、前記第1の位相周波数比較器の出力信号を所定のループ帯域幅で通過させて前記電圧制御発振器に出力する第1のフィルタ手段(52)と、を備え、前記第2の位相同期ループ回路は、入力電圧に応じた周波数の信号を前記第1の入力信号として前記第1の混合手段に出力する第2の電圧制御発振器(33)と、前記第2の電圧制御発振器の出力信号と第2の入力信号とを混合する第2の混合手段(34)と、前記第2の混合手段の出力信号と第3の入力信号とを比較して位相誤差信号を出力する第2の位相周波数比較器(31)と、前記第2の位相周波数比較器の出力信号を所定のループ帯域幅で通過させて前記電圧制御発振器に出力する第2のフィルタ手段(32)と、を備えた構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項2に係る発振回路は、第2の位相同期ループ回路からの入力信号とアップコンバート手段の出力信号とに基づいて信号を生成する第1の位相同期ループ回路を備えるので、従来よりも広範な発振周波数を発生することができる。
【0020】
また、この構成により、本発明の請求項2に係る発振回路は、従来のもののように、複数の発振器やVCO、これらのいずれか1つを選択するスイッチ等を含む複雑な構成を大幅に簡略化できるので、回路規模の縮小化を図ることもできる。
【0021】
したがって、本発明の請求項2に係る発振回路は、広範な発振周波数が得られ、しかも回路規模の縮小化を図ることができる。
【0022】
本発明の請求項3に係る発振回路は、前記信号生成回路は、互いに異なる周波数の信号を生成する複数の信号生成手段(42、43)と、前記複数の信号生成手段の出力信号のうちの1つを選択する出力信号選択手段(44)と、をさらに備え、前記アップコンバート手段は、前記出力信号選択手段により選択された出力信号に基づいて前記アップコンバートを行うものである構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明の請求項3に係る発振回路は、互いに異なる周波数の信号に基づいてアップコンバートを行うことにより、広範な発振周波数が得られ、しかも回路規模の縮小化を図ることができる。
【0024】
本発明の請求項4に係る発振回路は、前記信号生成回路は、前記信号生成手段の出力信号に対して前記アップコンバートを行わないで出力する出力手段(46a、46b)をさらに備えた構成を有している。
【0025】
この構成により、本発明の請求項4に係る発振回路は、アップコンバートを行わないで信号生成手段の出力信号に基づいて信号を生成することにより、発振周波数の広範化を図ることができる。
【0026】
本発明の請求項5に係る発振回路は、前記混合手段は、前記所定の入力信号として、複数の周波数の中から選択された1つの周波数の信号を入力するものである構成を有している。
【0027】
この構成により、本発明の請求項5に係る発振回路は、複数の周波数の中から選択された1つの周波数の信号とアップコンバート手段の出力信号とに基づいて信号を生成することができる。
【0028】
本発明の請求項6に係る発振回路は、前記第2の混合手段は、前記第2の入力信号として、複数の周波数の中から選択された1つの周波数の信号を入力するものである構成を有している。
【0029】
この構成により、本発明の請求項6に係る発振回路は、複数の周波数の中から選択された1つの周波数の信号とアップコンバート手段の出力信号とに基づいて信号を生成することができる。
【0030】
本発明の請求項7に係る発振方法は、請求項1に記載の発振回路(1)を用いた発振方法であって、前記信号生成回路は、前記信号生成手段により生成された信号に対して所定の周波数の信号に基づいてアップコンバートを行うステップ(S15〜S19)を実行し、前記位相同期ループ回路は、前記電圧制御発振器の出力信号と所定の入力信号とを混合するステップ(S21)と、前記混合手段の出力信号と前記アップコンバート手段の出力信号とを比較して位相誤差信号を出力するステップ(S22)と、前記位相周波数比較器の出力信号を所定のループ帯域幅で通過させて前記電圧制御発振器に出力するステップ(S23)と、入力電圧に応じた周波数の信号を出力するステップ(S24)と、を実行する構成を有している。
【0031】
この構成により、本発明の請求項7に係る発振方法は、所定の入力信号とアップコンバート手段の出力信号とに基づいて信号を生成する位相同期ループ回路を備えるので、従来よりも広範な発振周波数を発生することができる。
【0032】
また、この構成により、本発明の請求項7に係る発振方法は、従来のもののように、複数の発振器やVCO、これらのいずれか1つを選択するスイッチ等を含む複雑な構成を大幅に簡略化できるので、回路規模の縮小化を図ることもできる。
【0033】
したがって、本発明の請求項7に係る発振方法は、広範な発振周波数が得られ、しかも回路規模の縮小化を図ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、広範な発振周波数が得られ、しかも回路規模の縮小化を図ることができるという効果を有する発振回路及び発振方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0037】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る発振回路の第1実施形態における構成について説明する。
【0038】
図1に示すように、本実施形態における発振回路1は、操作部11、制御部12、粗調整信号生成回路20、微調整信号生成回路40、メインPLL50を備えている。
【0039】
操作部11は、例えば、発振回路1の発振周波数を設定するために利用者が操作するものである。この操作部11は、例えば、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、所定の情報を表示するディスプレイ、これらを制御する制御回路やソフトウェア等で構成されている。
【0040】
制御部12は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。例えば、制御部12は、ROMに予め格納された制御プログラムを実行させることにより、操作部11によって設定された発振周波数に基づいて、粗調整信号生成回路20、微調整信号生成回路40、メインPLL50を制御するようになっている。
【0041】
粗調整信号生成回路20は、比較信号生成部21、基準信号生成部22、サブPLL30を備えている。
【0042】
比較信号生成部21は、所定周波数の比較信号を生成し、サブPLL30に出力するようになっている。本実施形態では、比較信号生成部21は、50MHz〜150MHzの比較信号を生成するものとする。
【0043】
基準信号生成部22は、所定周波数の基準信号を生成し、サブPLL30に出力するようになっている。本実施形態では、基準信号生成部22は、3200MHzの基準信号を生成するものとする。
【0044】
サブPLL30は、第2の位相同期ループ回路の一例であって、位相周波数比較器(Phase Frequency Detector:PFD)31、LF(ループフィルタ)32、電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCO)33、ミキサ34、極性切替部35を備えている。このサブPLL30の出力信号、すなわち、粗調整信号生成回路20の出力信号をS1、その周波数をf1で表す。
【0045】
PFD31は、比較信号生成部21が出力する比較信号とミキサ34の出力信号とを比較して位相誤差信号をLF32に出力するようになっている。このPFD31は、第2の位相周波数比較器の一例である。
【0046】
LF32は、所定のループ帯域幅を有し、PFD31の出力信号をループ帯域幅で通過させてVCO33に出力するようになっている。このLF32は、第2のフィルタ手段の一例である。
【0047】
VCO33は、LF32からの入力電圧に応じた周波数の信号をミキサ34及びミキサ54(後述)に出力するようになっている。このVCO33は、第2の電圧制御発振器の一例である。
【0048】
ミキサ34は、基準信号生成部22の出力信号とVCO33の出力信号とを混合してPFD31に出力するようになっている。このミキサ34は、第2の混合手段の一例である。
【0049】
極性切替部35は、ミキサ34の極性を正又は負のいずれか一方に切り替えることにより、出力信号S1の周波数f1を変更することができるようになっている。例えば、PFD31が比較信号生成部21から周波数50MHzの信号を入力し、ミキサ34が3200MHzの信号を入力する状態において、極性切替部35によりミキサ34の極性が正に設定された場合には、周波数3200MHzに50MHzを加算した周波数f1=3250MHzの信号S1をサブPLL30は出力する。一方、極性切替部35によりミキサ34の極性が負に設定された場合には、周波数3200MHzから50MHzを減算した周波数f1=3150MHzの信号S1をサブPLL30は出力する。
【0050】
微調整信号生成回路40は、比較信号生成部41、発振部42及び43、スイッチ(SW)44、ミキサ45、SW46a及び46b、極性切替部47を備えている。この微調整信号生成回路40の出力信号をS0、その周波数をf0で表す。この微調整信号生成回路40は、信号生成回路の一例である。
【0051】
比較信号生成部41は、所定周波数の信号を生成する信号生成手段の一例であって、例えばDDS(Direct Digital Synthesizer)で構成され、生成した信号をSW46aに出力するようになっている。本実施形態では、比較信号生成部41は、50MHzの信号を生成するものとする。なお、比較信号生成部41は、信号生成手段の一例である。
【0052】
発振部42及び43は、それぞれ、所定周波数の信号を生成し、SW44に出力するようになっている。本実施形態では、発振部42及び43は、それぞれ、400MHz及び800MHzの信号を生成するものとする。なお、発振部42及び43は、信号生成手段の一例である。
【0053】
SW44は、発振部42及び43のいずれか一方の出力信号を選択してミキサ45に出力するようになっている。このSW44は、出力信号選択手段の一例である。なお、SW44が出力する信号の周波数をf
LCで表す。
【0054】
ミキサ45は、比較信号生成部41が生成した信号に対して複数の周波数の中から選択された1つの周波数の信号に基づいてアップコンバートを行うアップコンバート手段の一例であって、比較信号生成部41が生成した信号に対してSW44によって選択された1つの周波数の信号に基づいてアップコンバートを行って、SW46bに出力するようになっている。なお、本実施形態では、ミキサ45は、400MHz又は800MHzの信号に基づいてアップコンバートすることとしているが、本発明はこれに限定されず、例えば、1つの周波数の信号や、3つ以上の周波数から選択された1つの周波数の信号に基づいてアップコンバートする構成でもよい。
【0055】
SW46a及び46bは、アップコンバートを行うための、ミキサ45を経由する経路48と、アップコンバートを行わないための経路49とを切り替えるようになっている。このSW46a及び46bは、出力手段の一例である。
【0056】
極性切替部47は、ミキサ45の極性を正又は負のいずれか一方に切り替えるようになっている。例えば、ミキサ45が比較信号生成部41から周波数50MHz、SW44から周波数f
LC=400MHzの信号を入力する状態において、極性切替部47によりミキサ45の極性が正に設定された場合には、ミキサ45は周波数450MHzの信号を出力する。一方、極性切替部47によりミキサ45の極性が負に設定された場合には、ミキサ45は周波数350MHzの信号を出力する。
【0057】
メインPLL50は、位相同期ループ回路及び第1の位相同期ループ回路の一例であって、PFD51、LF52、VCO53、ミキサ54、極性切替部55を備えている。このメインPLL50の出力信号をS2、その周波数をf2で表す。
【0058】
PFD51は、微調整信号生成回路40の出力信号とミキサ54の出力信号とを比較して位相誤差信号をLF52に出力するようになっている。このPFD51は、位相周波数比較器、第1の位相周波数比較器の一例である。
【0059】
LF52は、所定のループ帯域幅を有し、PFD51の出力信号をループ帯域幅で通過させてVCO53に出力するようになっている。このLF52は、フィルタ手段、第1のフィルタ手段の一例である。
【0060】
VCO53は、LF52からの入力電圧に応じた周波数の信号をミキサ54に出力するとともに、発振回路1の出力信号S2として出力するようになっている。このVCO53は、電圧制御発振器、第1の電圧制御発振器の一例である。
【0061】
ミキサ54は、粗調整信号生成回路20の出力信号S1とVCO53の出力信号S2とを混合してPFD51に出力するようになっている。このミキサ54は、混合手段、第1の混合手段の一例である。
【0062】
極性切替部55は、ミキサ54の極性を正又は負のいずれか一方に切り替えることにより、出力信号S2の周波数f2を変更することができるようになっている。例えば、PFD51が微調整信号生成回路40から周波数f0=50MHzの信号S0を入力する状態において、極性切替部55によりミキサ54の極性が正に設定された場合には、信号S1の周波数f1に50MHzを加算した周波数の信号S2をメインPLL50は出力する。一方、極性切替部55によりミキサ54の極性が負に設定された場合には、信号S1の周波数f1から50MHzを減算した周波数の信号S2をメインPLL50は出力する。
【0063】
次に、本実施形態における発振回路1が出力可能な発振周波数について
図2を用いて説明する。
【0064】
まず、比較信号生成部21が生成する信号の周波数範囲は50MHz〜150MHzであり、基準信号生成部22が生成する信号の周波数は3200MHzであるから、サブPLL30が出力可能な周波数f1は、
図2に示すように、周波数f1=3050MHz〜3150MHzの周波数帯域60(ミキサ34が負極性)と、周波数f1=3250MHz〜3350MHzの周波数帯域61(ミキサ34が正極性)とになる。
【0065】
次に、微調整信号生成回路40において、SW46a及び46bにより経路49が選択された場合、すなわち、アップコンバートしない場合(f
LC=0Hzと記す)について説明する。この場合には、比較信号生成部41の出力信号がメインPLL50に直接入力され、PFD51に入力される信号S0の周波数f0=50MHzである。
【0066】
ミキサ54の極性が正に設定された場合において、周波数f1=3050MHz〜3150MHzの周波数帯域60に50MHzを加算すると、周波数f2=3100MHz〜3200MHzの周波数帯域601が得られる。一方、ミキサ54の極性が負に設定された場合において、周波数f1=3050MHz〜3150MHzの周波数帯域60から50MHzを減算すると、周波数f2=3000MHz〜3100MHzの周波数帯域602が得られる。
【0067】
同様に、ミキサ54の極性が正に設定された場合において、周波数f1=3250MHz〜3350MHzの周波数帯域61に50MHzを加算すると、周波数f2=3300MHz〜3400MHzの周波数帯域611が得られる。一方、ミキサ54の極性が負に設定された場合において、周波数f1=3250MHz〜3350MHzの周波数帯域61から50MHzを減算すると、周波数f2=3200MHz〜3300MHzの周波数帯域612が得られる。
【0068】
以上より、発振回路1は、f
LC=0Hzの場合においては、周波数f2=3000MHz〜3400MHzの信号を出力可能である。
【0069】
次に、微調整信号生成回路40において、SW46a及び46bにより経路48が選択され、f
LC=400MHzでアップコンバートする場合について説明する。この場合は、ミキサ54の極性が正に設定される場合(f
LC=400MHz(+)と記す)と、負に設定される場合(f
LC=400MHz(−)と記す)とがある。
【0070】
まず、f
LC=400MHz(+)の場合においては、周波数f1=3050MHz〜3150MHzの周波数帯域60は、3450MHz〜3550MHzの周波数帯域62になり、周波数f1=3250MHz〜3350MHzの周波数帯域61は、3650MHz〜3750MHzの周波数帯域63になる。
【0071】
ここで、ミキサ54の極性が正に設定された場合において、3450MHz〜3550MHzの周波数帯域62に50MHzを加算すると、周波数f2=3500MHz〜3600MHzの周波数帯域621が得られる。一方、ミキサ54の極性が負に設定された場合において、3450MHz〜3550MHzの周波数帯域62から50MHzを減算すると、周波数f2=3400MHz〜3500MHzの周波数帯域622が得られる。
【0072】
同様に、ミキサ54の極性が正に設定された場合において、3650MHz〜3750MHzの周波数帯域63に50MHzを加算すると、周波数f2=3700MHz〜3800MHzの周波数帯域631が得られる。一方、ミキサ54の極性が負に設定された場合において、3650MHz〜3750MHzの周波数帯域63から50MHzを減算すると、周波数f2=3600MHz〜3700MHzの周波数帯域632が得られる。
【0073】
以上より、発振回路1は、f
LC=400MHz(+)の場合においては、周波数f2=3400MHz〜3800MHzの信号を出力可能である。
【0074】
次に、f
LC=400MHz(−)の場合においては、周波数f1=3050MHz〜3150MHzの周波数帯域60は、2650MHz〜2750MHzの周波数帯域64になり、周波数f1=3250MHz〜3350MHzの周波数帯域61は、2850MHz〜2950MHzの周波数帯域65になる。
【0075】
ここで、ミキサ54の極性が正に設定された場合において、2650MHz〜2750MHzの周波数帯域64に50MHzを加算すると、周波数f2=2700MHz〜2800MHzの周波数帯域641が得られる。一方、ミキサ54の極性が負に設定された場合において、2650MHz〜2750MHzの周波数帯域64から50MHzを減算すると、周波数f2=2600MHz〜2700MHzの周波数帯域642が得られる。
【0076】
同様に、ミキサ54の極性が正に設定された場合において、2850MHz〜2950MHzの周波数帯域65に50MHzを加算すると、周波数f2=2900MHz〜3000MHzの周波数帯域651が得られる。一方、ミキサ54の極性が負に設定された場合において、2850MHz〜2950MHzの周波数帯域65から50MHzを減算すると、周波数f2=2800MHz〜2900MHzの周波数帯域652が得られる。
【0077】
以上より、発振回路1は、f
LC=400MHz(−)の場合においては、周波数f2=2600MHz〜3000MHzの信号を出力可能である。
【0078】
次に、微調整信号生成回路40において、SW46a及び46bにより経路48が選択され、f
LC=800MHzでアップコンバートする場合について説明する。この場合、ミキサ54の極性が正に設定される場合(f
LC=800MHz(+)と記す)と、負に設定される場合(f
LC=800MHz(−)と記す)とがあり、前述のf
LC=400MHz(+)及びf
LC=400MHz(−)の場合と同様な計算により周波数f2が得られる。
【0079】
すなわち、発振回路1は、f
LC=800MHz(+)の場合においては、周波数f2=3800MHz〜4200MHzの信号を出力可能である。また、発振回路1は、f
LC=800MHz(−)の場合においては、周波数f2=2200MHz〜2600MHzの信号を出力可能である。
【0080】
以上まとめると、本実施形態における発振回路1は、周波数f2=2200MHz〜4200MHzという広範な発振周波数の信号を出力可能である。
【0081】
一方、従来の発振回路では、アップコンバートを行う手段を微調整信号生成回路に備えていないので、3000MHz〜3400MHzの周波数幅程度しか発振周波数が得られなかった。これに対して、本実施形態における発振回路1では、400MHzのみでのアップコンバートを行った場合でも帯域A〜Cという広範な発振周波数が得られ、これに800MHzのアップコンバートを加えると、さらに広範な帯域A〜Eという広範な発振周波数が得られる。
【0082】
次に、本実施形態における発振回路1の動作について
図3を用いて説明する。なお、
図2に示した周波数帯域において、3000MHz以上3400MHz未満を帯域A、3400MHz以上3800MHz未満を帯域B、2600MHz以上3000MHz未満を帯域C、3800MHz以上4200MHz以下を帯域D、2200MHz以上2600MHz未満を帯域Eと呼ぶ。
【0083】
制御部12は、操作部11によって設定された発振周波数(以下「設定発振周波数」という)が帯域Aに含まれる周波数であるか否かを判断する(ステップS11)。
【0084】
ステップS11において、制御部12は、設定発振周波数が帯域Aに含まれる周波数であると判断しなかった場合には、設定発振周波数が帯域Bに含まれる周波数であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0085】
ステップS12において、制御部12は、設定発振周波数が帯域Bに含まれる周波数であると判断しなかった場合には、設定発振周波数が帯域Cに含まれる周波数であるか否かを判断する(ステップS13)。
【0086】
ステップS13において、制御部12は、設定発振周波数が帯域Cに含まれる周波数であると判断しなかった場合には、設定発振周波数が帯域Dに含まれる周波数であるか否かを判断する(ステップS14)。
【0087】
ステップS11において、制御部12は、設定発振周波数が帯域Aに含まれる周波数であると判断した場合には、SW46a及び46bに制御信号を出力して経路49を選択させる。すなわち、制御部12は、微調整信号生成回路40においてアップコンバートしない状態(f
LC=0Hz)に設定する(ステップS15)。
【0088】
また、制御部12は、設定発振周波数に応じて極性切替部35及び55に制御信号を出力し、ミキサ34及び54の極性を設定させる。例えば、制御部12は、設定発振周波数が3210MHz(周波数帯域612)である場合には、極性切替部35にミキサ34を正極性に、極性切替部55にミキサ54を負極性に設定させる。
【0089】
ステップS12において、制御部12は、設定発振周波数が帯域Bに含まれる周波数であると判断した場合には、SW44、SW46a及び46b、極性切替部47に制御信号を出力し、SW44には発振部42を選択させ、SW46a及び46bには経路48を選択させ、極性切替部47にミキサ45を正極性に設定させる。すなわち、制御部12は、微調整信号生成回路40においてf
LC=400MHz(+)でアップコンバートを行う状態に設定する(ステップS16)。
【0090】
また、制御部12は、設定発振周波数に応じて極性切替部35及び55に制御信号を出力し、ミキサ34及び54の極性を設定させる。例えば、制御部12は、設定発振周波数が3510MHz(周波数帯域621)である場合には、極性切替部35にミキサ34を負極性に、極性切替部55にミキサ54を正極性に設定させる。
【0091】
ステップS13において、制御部12は、設定発振周波数が帯域Cに含まれる周波数であると判断した場合には、SW44、SW46a及び46b、極性切替部47に制御信号を出力し、SW44には発振部42を選択させ、SW46a及び46bには経路48を選択させ、極性切替部47にミキサ45を負極性に設定させる。すなわち、制御部12は、微調整信号生成回路40においてf
LC=400MHz(−)でアップコンバートを行う状態に設定する(ステップS17)。
【0092】
また、制御部12は、設定発振周波数に応じて極性切替部35及び55に制御信号を出力し、ミキサ34及び54の極性を設定させる。
【0093】
ステップS14において、制御部12は、設定発振周波数が帯域Dに含まれる周波数であると判断した場合には、SW44、SW46a及び46b、極性切替部47に制御信号を出力し、SW44には発振部43を選択させ、SW46a及び46bには経路48を選択させ、極性切替部47にミキサ45を正極性に設定させる。すなわち、制御部12は、微調整信号生成回路40においてf
LC=800MHz(+)でアップコンバートを行う状態に設定する(ステップS18)。
【0094】
また、制御部12は、設定発振周波数に応じて極性切替部35及び55に制御信号を出力し、ミキサ34及び54の極性を設定させる。
【0095】
ステップS14において、制御部12は、設定発振周波数が帯域Dに含まれる周波数であると判断しなかった場合、すなわち、設定発振周波数が帯域Eに含まれる周波数であると判断した場合には、SW44、SW46a及び46b、極性切替部47に制御信号を出力し、SW44には発振部43を選択させ、SW46a及び46bには経路48を選択させ、極性切替部47にミキサ45を負極性に設定させる。すなわち、制御部12は、微調整信号生成回路40においてf
LC=800MHz(−)でアップコンバートを行う状態に設定する(ステップS19)。
【0096】
また、制御部12は、設定発振周波数に応じて極性切替部35及び55に制御信号を出力し、ミキサ34及び54の極性を設定させる。
【0097】
メインPLL50は、微調整信号生成回路40から出力信号S0を、粗調整信号生成回路20から出力信号S1を入力する(ステップS20)。
【0098】
ミキサ54は、粗調整信号生成回路20の出力信号S1とVCO53の出力信号S2とを混合してPFD51に出力する(ステップS21)。
【0099】
PFD51は、微調整信号生成回路40の出力信号S0とミキサ54の出力信号とを比較して位相誤差信号をLF52に出力する(ステップS22)。
【0100】
LF52は、PFD51の出力信号を所定のループ帯域幅で帯域制限して通過させ、VCO53に出力する(ステップS23)。
【0101】
VCO53は、LF52からの入力電圧に応じた周波数の信号をミキサ54に出力する。そして、メインPLL50がロックされた状態では、VCO53は、設定発振周波数に一致した周波数信号を出力することとなる(ステップS24)。
【0102】
以上のように、本実施形態における発振回路1は、粗調整信号生成回路20の出力信号S1と、微調整信号生成回路40によってアップコンバートされた出力信号S0とに基づいて信号を生成するメインPLL50を備える構成としたので、従来よりも広範な発振周波数を発生することができる。
【0103】
また、本実施形態における発振回路1は、
図7に示した従来のものとは異なり、複数の発振器やVCO、これらのいずれか1つを選択するスイッチ等を含む複雑な構成を大幅に簡略化できるので、回路規模の縮小化を図ることもできる。
【0104】
したがって、本実施形態における発振回路1は、広範な発振周波数が得られ、しかも回路規模の縮小化を図ることができる。
【0105】
また、
図7に示した従来のものでは、多数の発振器が存在するため周波数信号の漏れによるスプリアスが発生するのでその対策として発振器群の別体化やシールド追加の構成が取られ、装置が大型化していた。これに対し、本実施形態における発振回路1は、従来の複雑な構成を簡略化できるので装置の小型化が図れ、シールドも不要となるのでコスト低減化を図ることもできる。
【0106】
また、本実施形態における発振回路1は、所定周波数のアップコンバートが可能な微調整信号生成回路40を備えるので、粗調整信号生成回路20の基準信号生成部22の狭帯域化を図ることもできる。すなわち、本実施形態における発振回路1は、粗調整信号生成回路20のコスト低減化を図ることもできる。
【0107】
なお、前述の実施形態では、メインPLL50のミキサ54にサブPLL30の出力信号を入力する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、複数の周波数の中から選択された1つの周波数の信号をミキサ54に入力する構成としても、従来よりも広範な発振周波数が得られ、しかも回路規模の縮小化を図ることができる。
【0108】
以上説明した発振回路1は、信号発生装置や信号解析装置等の測定装置において、局部発振信号を発生する発振回路として用いることができる。この種の測定装置は、本実施形態における発振回路1を備えることにより、前述のように、発振周波数の広範化、回路規模の縮小化、装置の小型化、コスト低減化を図ることができる。
【0109】
(第2実施形態)
まず、本発明に係る発振回路の第2実施形態における構成について説明する。
【0110】
図4に示すように、本実施形態における発振回路2は、第1実施形態における発振回路1(
図1参照)の一部を変更したものである。したがって、発振回路1と同様な構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
発振回路2は、粗調整信号生成回路70を備えている。この粗調整信号生成回路70は、基準信号生成部71、SW72、サブPLL80を備えている。サブPLL80は、VCO81及び82、SW83を備え、出力信号S3をメインPLL50のミキサ54に出力するようになっている。なお、2つのVCO81及び82に代えて、例えば、VCOよりも広い掃引幅をもち信号純度の高い発振器であるYTO(YIG Tuned Oscillator)を1つ用いる構成としてもよい。
【0112】
メインPLL50は、微調整信号生成回路40の出力信号S0と、粗調整信号生成回路70の出力信号S3とを入力し、これらの信号に基づいて出力信号S4を出力するようになっている。
【0113】
基準信号生成部71は、本実施形態では4800MHzの基準信号を生成するものである。
【0114】
SW72には、基準信号生成部22及び72が接続されている。SW72は、基準信号生成部22及び72のいずれか一方の基準信号を選択してミキサ34に出力するようになっている。このSW72は、制御部12からの制御信号に基づいて選択動作を行うようになっている。
【0115】
VCO81は、SW72によって基準信号生成部22が選択された場合には、LF32からの入力電圧に応じた周波数の信号をSW83に出力するようになっている。
【0116】
VCO82は、SW72によって基準信号生成部71が選択された場合には、LF32からの入力電圧に応じた周波数の信号をSW83に出力するようになっている。
【0117】
SW83は、制御部12からの制御信号に基づいて、VCO81及び82のいずれか一方の出力信号を選択するようになっている。例えば、SW83は、VCO81の出力信号を選択した場合には、その出力信号をミキサ34及び54に出力するようになっている。また、SW83は、VCO82を選択した場合には、その出力信号をミキサ34及び54に出力するようになっている。
【0118】
次に、本実施形態における発振回路2が出力可能な発振周波数について
図5を用いて説明する。
【0119】
基準信号生成部22は、第1実施形態で述べたように3200MHzの基準信号を生成するものとしているので、SW72によって基準信号生成部22が選択された場合には、
図5に示すように、第1実施形態と同様に帯域A〜Eを含む発振周波数、すなわち、2200MHz〜4200MHzの発振周波数の信号S4を生成することができる。
【0120】
一方、基準信号生成部71は、4800MHzの基準信号を生成するので、SW72によって基準信号生成部71が選択された場合には、
図5に示すように、帯域F〜Jを含む発振周波数、すなわち、3800MHz〜5800MHzという広範な発振周波数の信号S4も生成することができる。なお、帯域F〜Jの発振周波数の生成は、第1実施形態で説明した帯域A〜Eの発振周波数と同じ考え方で生成することができるので、その説明を省略する。
【0121】
したがって、発振回路2は、2200MHz〜5800MHzという広範な発振周波数の信号S4を生成することができる。
【0122】
次に、本実施形態における発振回路2の動作について
図6を用いて説明する。
【0123】
制御部12は、操作部11によって設定された設定発振周波数が2200MHz以上、4200MHz以下であるか否かを判断する(ステップS31)。
【0124】
ステップS31において、制御部12は、設定発振周波数が2200MHz以上、4200MHz以下であると判断した場合、すなわち、設定発振周波数が帯域A〜Eのいずれかに含まれる場合には、
図3に示したフローチャートに示した各ステップの処理に基づいて設定発振周波数を生成する(ステップS32)。
【0125】
ステップS31において、制御部12は、設定発振周波数が2200MHz以上、4200MHz以下であると判断しなかった場合には、設定発振周波数が4200MHzを越え、5800MHz以下であるか否かを判断する(ステップS33)。
【0126】
ステップS33において、制御部12は、設定発振周波数が4200MHzを越え、5800以下であると判断した場合、すなわち、設定発振周波数が帯域F〜Iのいずれかに含まれる場合には、
図3に示したフローチャートに示した各ステップの処理に基づき、第1実施形態の基準信号生成部22に代えて、4800MHzの基準信号を生成する基準信号生成部71を用いて設定発振周波数を生成する(ステップS34)。
【0127】
以上のように、本実施形態における発振回路2は、第1実施形態の基準信号生成部22に加えて基準信号生成部71も選択可能な構成としたので、第1実施形態における発振回路1よりもさらに広範な発振周波数を生成することができる。
【0128】
なお、前述の実施形態では、2つの基準信号生成部22及び72を備える構成としたが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の基準信号生成部を備え、これらのうちの1つをSW72が選択する構成とすれば、簡易な構成でさらに広範な発振周波数を生成することができる。