特開2017-163873(P2017-163873A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-163873(P2017-163873A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】吊り鉢のインナー
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20060101AFI20170825BHJP
【FI】
   A01G9/02 101U
   A01G9/02 101S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-50427(P2016-50427)
(22)【出願日】2016年3月15日
(71)【出願人】
【識別番号】592089755
【氏名又は名称】株式会社タカショー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】高岡 伸夫
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NC02
2B327NC21
2B327NC24
2B327NC36
2B327NC37
2B327NC39
2B327NC44
2B327NC51
2B327ND01
2B327NE07
2B327QA02
2B327QB03
2B327QB22
(57)【要約】
【課題】天然繊維の利点を損なうことなく、水遣りの頻度を少なくできるとともに、根腐れも防止できる吊り鉢のインナーを提供することを目的としている。
【解決手段】透水性を有し、少なくとも天然繊維からなる上部開口の容器形状をした外層2と、透水性を有し、少なくとも天然繊維からなる上部開口の容器形状をした内層1と、非透水性材料からなり、少なくとも内層1の底から内層1の上縁またはその近傍まで達する上部開口の容器形状をして、底部に水抜き孔31が穿設された中間層3を備えることを特徴としている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性を有し、少なくとも天然繊維からなる上部開口の容器形状をした外層と、
透水性を有し、少なくとも天然繊維からなる上部開口の容器形状をした内層と、
非透水性材料からなり、前記外層と内層と間に設けられ、底部に水抜き孔が穿設された上部開口の容器形状をした中間層を備えることを特徴とする吊り鉢のインナー。
【請求項2】
底から20mm以内の高さ位置に水抜き孔が穿設されている請求項1に記載の吊り鉢のインナー。
【請求項3】
中間層の上端縁が、外層及び内層の上端縁より低く、かつ、予め設定されたインナー内への用土充填高さと同じ高さになっている請求項1または請求項2に記載の吊り鉢のインナー。
【請求項4】
天然繊維が、ココヤシ繊維である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の吊り鉢のインナー。
【請求項5】
中間層を介して内層と外層とが接合されている請求項1〜請求項4のいずれかに記載の吊り鉢のインナー。
【請求項6】
内層と外層が水抜き孔部分で接している請求項1〜請求項5のいずれかに記載の吊り鉢のインナー
【請求項7】
水抜き孔は、上記インナー内に直接500mlの水を入れたとき、インナーからの排水が、1分以上10分以内で完了するように、その数、径が設定されている請求項1〜請求項6のいずれかに記載の吊り鉢のインナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り鉢にインナーに関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、籠部110と、吊り下げ部120を備えた吊り下げ具100と、籠部110の内側に内層されるココヤシ繊維の不織布マットで形成されたインナー200を備えた吊り鉢(ハンギングバスケット)300が上市されている(非特許文献1)。
すなわち、この吊り鉢300は、インナー200がココヤシ繊維の不織布マットを器形状に形成しただけであるので、通気性に優れるとともに、インナー200内の用土に給水された余剰水がインナー200の壁面を通り容易に抜け出るため、インナー200内に植栽された植物が、根腐れを起こしにくいという利点がある。
また、インナー200は、天然繊維であるココヤシ繊維で形成されているので、植栽された植物とのマッチングがよく、庭や室内の装飾性にも優れたものとすることができるとともに、環境にやさしい。
透水性に優れたココヤシ繊維で形成されているため、水遣り時に用土に給水された余剰の水は、ココヤシ繊維の隙間を通り、外部に排水されるため、植栽された草花が根腐れを起こすという問題はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】インターネット アイリスオーヤマ通販サイトアイリスプラザ 商品名パームハンギングバスケット 平成27年11月26日検索(URL http://www.irisplaza.co.jp/Index.asp?KB=SHOSAI&SID=G516926F&SHOP=2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記インナーは、透水性だけでなく、通気性にも優れているため、天候や吊り鉢の設置場所のよっては、用土がすぐに乾いてしまい、頻繁に水遣りしなければならないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、天然繊維の上記利点を損なうことなく、水遣りの頻度を少なくできるとともに、根腐れも防止できる吊り鉢のインナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる吊り鉢のインナー(以下、「本発明のインナー」と記す)は、透水性を有し、少なくとも天然繊維からなる上部開口の容器形状をした外層と、透水性を有し、少なくとも天然繊維からなる上部開口の容器形状をした内層と、非透水性材料からなり、前記外層と内層と間に設けられ、底部に水抜き孔が穿設された上部開口の容器形状をした中間層を備えることを特徴としている。
【0007】
本発明において、水抜き孔は、インナー内に給水された水を根腐れを起こさない程度まで排水できれば特に限定されず、インナーの大きさによって適宜決定されるが、インナーの底から20mm以内の高さに設けることが好ましく、15mm以内の高さに設けることがより好ましい。
【0008】
本発明のインナーは、特に限定されないが、中間層の上端縁が、外層及び内層の上端縁より低く、かつ、予め設定されたインナー内への用土充填高さと同じ高さになっていることが好ましい。
すなわち、用土を中間層の上端縁より上方までいれると、中間層の上端縁より上側の用土が外層および内層を通気した空気に触れやすくなるため、乾燥が進みやすい。
【0009】
一方、中間層の上端縁を外層および内層の上端縁とほぼ一致させるようにしても構わないが、一般的に用土は、インナーの底から外層および内層の上端縁までの高さの70%〜90%の高さ、好ましくは70%〜80%の高さまで充填されることが好ましい。
したがって、用土の充填高さは、インナーの底から外層および内層の上端縁までの高さの70%〜90%の高さ、好ましくは70%〜80%の高さに設定される。
【0010】
本発明において、外層および内層に使用される天然繊維の材料としては、例えば、ココヤシ、シュロ、ジュート、竹、ケナフなどが挙げられ、ココナッツミルクの製造時等に発生する廃材を使用できるココヤシ繊維が安価で自然にやさしいため好ましい。
また、外層および内層としては、例えば、上記天然繊維の不織布が用いられる。
不織布としては、ニードルパンチのみで繊維同士を交絡させたものでも構わないし、透水性を損なわない程度でバインダーを介して交絡部を接着しても構わない。
【0011】
本発明において、中間層を構成する非透水性材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。
【0012】
また、中間層は、内層と外層の間に保持されていれば、外層および内層に接着されている必要はないが、バインダーを介して、あるいは、熱融着などによって外層および内層を、中間層を介して接合しておくことが好ましい。
すなわち、中間層によって、外層および内層を構成する天然繊維がばらけることを防止できるとともに、インナーを受けるバスケット等の大きさに合わせて自由に切断したり、インナーの所望位置に切れ込みを入れて植物をこの切れ込みを介して生育させて、より意匠性の高い寄せ植えなどを行うことができる。
【0013】
本発明において、インナーの形状としては、特に限定されないが、略ボウル、略円錐形状、略角錐形状、半円筒形状等が挙げられ、底が扁平になっている箱状をしていても構わない。
【0014】
本発明において、水抜き孔は、底、すなわち、中間層の最低部に設けられていれば、1つでも2つ以上でも構わない。また、底が扁平なインナーにおいては、底中央に設けることが好ましい。
中間層の厚みは、水抜き孔以外で水が透過しなければ、特に限定されないが、必要な強度さえあれば、インナーの可撓性や切断などの加工性を考慮すると、薄い方が好ましい。
【0015】
本発明において、内層と外層は、上記水抜き孔の部分で接していても構わない。
水抜き孔の孔径、孔の数は、特に限定されないが、例えば、上記インナー内に直接(用土を充填しない、インナー内が空の状態)500mlの水を入れたとき、インナーからの排水が、1分以上10分以内で完了するように設定することが好ましく、1分30秒以上3分以下で完了することが好ましい。
すなわち、1分未満であると、水の透過速度が速すぎて、インナー内の用土が十分に湿るまで給水する際に余分な水を使いすぎるおそれがある。
また、排水時間が長すぎると、根腐れを起こすおそれがある。
なお、上記排水が完了するとは、水滴が1分以上落下しなくなッた状態を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインナーは、上記のように、透水性を有し、少なくとも天然繊維からなる上部開口の容器形状をした外層と、透水性を有し、少なくとも天然繊維からなる上部開口の容器形状をした内層と、非透水性材料からなり、前記外層と内層と間に設けられ、底部に水抜き孔が穿設された上部開口の容器形状をした中間層を備えるので、以下のような優れた性能を有する。
【0017】
すなわち、中間層が底部に水抜き孔を備えているので、インナー内の用土に過剰に水遣りをして、一旦インナー内に水が溜まっても、余剰の水は、その後、水抜き孔を介してインナー外に排出される。
したがって、根腐れを防止できる。
【0018】
また、中間層が非透水性材料で形成されているので、インナー内の用土は、植栽された植物の隙間および水抜き孔部分を除き、外部から隔離した状態になる。
したがって、用土を適度な湿り気を持った状態に長時間維持できるので、水遣りの頻度を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のインナーの第1の実施の形態をあらわす一部切欠斜視図である。
図3図1のインナーの断面図である。
図3図2のインナー底部の拡大断面図である。
図4】本発明のインナーの第2の実施の形態をあらわす一部切欠斜視図である。
図5】本発明のインナーの第3の実施の形態をあらわす一部切欠斜視図である。
図6図5のインナーの中間層を底面側から見た斜視図である。
図7】本発明のインナーの第4の実施の形態をあらわす一部切欠斜視図である。
図8】実施例のインナーの概略平面図である。
図9図8のインナーの概略断面図である。
図10】従来の吊り鉢の1例をあらわす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を、その実施の形態を参照して詳しく説明する。
図1図3は、本発明のインナーの第1の実施の形態をあらわしている。
【0021】
図1に示すように、このインナーAは、上端開口の外径が250〜400mm、内径が238〜396mmのボウル状に成形されていて、内層1と,外層2と、中間層3を備えている。
外層2は、ココヤシ繊維をニードルパンチして得られた不織布で形成されていて、厚さが2〜6mmである。
【0022】
内層1は、ココヤシ繊維をニードルパンチして得られた不織布で形成されていて、厚さが2〜6mmである。
中間層3は、厚さ30μm〜100μmのポリエチレン樹脂フィルムでボウル状に形成されていて、ボウルの底に水抜き孔31を1つ備えている。
水抜き孔31の径は、特に限定されないが、インナーA内に一度に500mlの水まで水を入れ、インナーAの底から1分以上水滴の落下がない状態になるまでの時間が1分以上3分以内となる径となっている。
【0023】
内層1および外層2は、それぞれ中間層3の界面で中間層3に熱融着されているとともに、その上縁部および水抜き孔31の部分で直接接している。
なお、上記各部の寸法は、目標値であって、不織布部分は、測定場所によっては少し上記寸法から上下する場合がある。
【0024】
このインナーAは、上記のように、底に水抜き孔31が穿設された非透水性樹脂からなる中間層3が内層1と外層2との間に設けられているので、インナーA内に、用土の保水量を上回る余剰の水が供給されたとしても、余剰の水が水抜き孔31および外層2を介してインナーA外に排水される。また、水抜き孔31を介して内層1および用土の通気性を確保することができる。
すなわち、インナーAの底に水がたまり、植栽された植物が溜まった水によって根腐れを起こすようなことがない。
【0025】
また、内層1および外層2がココヤシ繊維で形成され、中間層3がポリエチレン樹脂フィルムで形成されて、全体が可撓性を有しているので、コンパクトに折り畳むことができ、保管コストや輸送コストを低減できる。
さらに、鋏やカッター等を用いて容易に切断できるので、いろいろな使用途に適応できる。
【0026】
図4は、本発明にかかるインナーの第2の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、このインナーBは、紡錘状をしている以外は、上記インナーAと同様になっている。
【0027】
図5は、本発明にかかるインナーの第3の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、このインナーCは、有底半円筒形状箱状をしている。
そして、図6に示すように、中間層3は、扁平な底32に2つの水抜き孔33を備えている以外は、上記インナーAと同様になっている。
【0028】
図7は、本発明にかかるインナーの第4の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、このインナーDは、4半球状の容器形状をしている以外は、上記インナーAと同様になっている。
【0029】
(実施例1)
図8および図9は、本発明にかかるインナーの具体的な実施例をあらわしている。
図8および図9に示すように、このインナーEは、半球状をした厚み約2.5mmのココヤシ繊維マットからなる外層1と、半球状をした厚み約2.5mmのココヤシ繊維マットからなる内層1と、厚さ50μmのポリエチレンフィルムからなる中間層3を備え、約2Lの用土が充填(中間層3の上端にほぼ一致する高さまで充填)されるようになっている。
中間層3は、図9に示すように、底部に4つの水抜き孔31を備えている。
そして、各部の寸法が以下のようになっている。
R1: 約250mm
R2: 約248mm
R3: 約245mm
H1: 約130mm
H2: 約91mm
H3: 約2.5mm
r(孔径): 7mm
孔間距離: 20mm
上記インナーEを図10に示すような吊り下げ具100の籠部110にセットして吊り下げた状態で、ペットボトルに入れた500mlの水を一気にインナーE内に注ぎ入れたところ、1分30秒で、底からの水の排出が、1分以上止まった。
【0030】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、水抜き孔が1つであったが、複数設けるようにしても構わない。
また、上記の実施の形態では、中間層となるポリエチレンシートに予め孔を設けていたが、孔が穿設されていない樹脂シートを内層と外層との間に挟み込んだ状態でボウル状に成形し、その後、例えば、針状の穿孔具を内層側あるいは外層側から中間層を貫通するように差し込むことによって水抜き孔を穿孔するようにしても構わない。
【0031】
上記の実施の形態では、内層および外層と、中間層がその界面で熱融着されていたが、中間層は、内層と外層の間でずれ動かないように保持できれば界面で固着されていなくても構わない。また、部分的に固着されていても構わない。
【符号の説明】
【0032】
A,B,C,D、E インナー
1 内層
2 外層
3 中間層
31、33 水抜き孔
32 底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2016年3月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
図1】本発明のインナーの第1の実施の形態をあらわす一部切欠斜視図である。
図2図1のインナーの断面図である。
図3図2のインナー底部の拡大断面図である。
図4】本発明のインナーの第2の実施の形態をあらわす一部切欠斜視図である。
図5】本発明のインナーの第3の実施の形態をあらわす一部切欠斜視図である。
図6図5のインナーの中間層を底面側から見た斜視図である。
図7】本発明のインナーの第4の実施の形態をあらわす一部切欠斜視図である。
図8】実施例のインナーの概略平面図である。
図9図8のインナーの概略断面図である。
図10】従来の吊り鉢の1例をあらわす斜視図である。