(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-163960(P2017-163960A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】釣竿の竿尻保持器具
(51)【国際特許分類】
A01K 97/10 20060101AFI20170825BHJP
【FI】
A01K97/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-75446(P2016-75446)
(22)【出願日】2016年3月17日
(71)【出願人】
【識別番号】595159932
【氏名又は名称】吉田 均
(72)【発明者】
【氏名】吉田 均
【テーマコード(参考)】
2B109
【Fターム(参考)】
2B109CA02
2B109CA51
(57)【要約】
【課題】 待機中は常に上を向くような「釣人前腕支え板」を備え、掛り魚を取り込む時は、釣人の前腕を確実に支えるために、該釣人前腕支え板の回転を拘束できるようなストッパー機構を有することを特徴とする釣竿の竿尻保持器具を提供する。
【解決手段】 待機中は、支え板7のストッパー歯7aが歯付ストッパー2cの溝2caに入っていないので、支え板7は回転自由だから常に上向きとなっている。掛り魚を取り込む時は、支え板7が釣人前腕を押し付けるから下方にスライドし、ストッパー歯7aが歯付ストッパー2cの溝2caに進入するので支え板7の回転を拘束する。かくして釣人前腕を確実に支えることができるので釣果向上につながる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿の竿尻(竿の根本)付近にずれることなく着脱可能に嵌合できて、重力利用の回転機構を有することで、釣竿の外周面の方向を気にせずに竿を持ち、魚が掛るのを待っている時は、常に上を向くような釣人前腕支え板を具備し、掛り魚を取り込む時は、釣人の前腕を安定かつ確実に支えられるように該釣人前腕支え板の回転を拘束できるようなストッパー機構を有することを特徴とする釣竿の竿尻保持器具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮎釣り等における長尺釣竿を使用して掛った魚(以下、掛り魚という)を取り込む時に、その長尺竿の竿尻を釣人の前腕下面に安定かつ正確に保持して掛り魚を確実に確保するための釣竿の竿尻保持器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鮎釣り用の釣竿の場合、その長さは短いもので8m、長いものでは10mもある。一方、掛り魚を取り込む方法としては、引寄せ法と引抜き法があるが取り込みに要する時間が短いのと、その取り込みスタイルがかっこいいこともあって、近年ではもっぱら引抜き法が用いられている。引抜き法における取り込みは、魚が掛ったときに掛り魚を釣人まで引寄せることなく、掛ったその場所でそのまま空中に引抜き、釣竿先端を支持点とするブランコ方式で釣人の持つタモ(玉網)まで空中移動させて取り込む方法である。このとき、右手に釣竿、左手にタモを持たなければならないので(右利きの場合)、右手の手首にはかなりのモーメント(回転力)がかかる。鮎釣りではおとり鮎を使った友釣りが普通であり、掛り鮎を取り込むときは釣人の手首には2尾分の鮎の重さとともに掛り鮎が下流に逃げようとする力によるモーメントがかかることになる。該モーメントは竿の長さ×竿先にかかる竿軸と直角の方向の力で定義される値であるが、基本的には竿が長い程、竿先にかかる力が大きい程大きくなるので、手首が疲れた人や弱い人、すなわち、長時間の釣り実行者、年配者や女性にはかなりの負担となる。
以上のような状況に鑑み、長尺釣竿を使った釣りにおいて、釣人の手首の負担をできるだけ軽減し、併せて掛り魚を確実に取り込むことが可能な装置や器具が必要である。
関連公知技術としての「鮎竿保持器(特開2000−270746)」は長尺竿を用いる鮎釣りにおいて、おとり鮎を交換する時に、肩においた竿が動かないようにするための鮎竿保持器に関するものである。また、「釣り竿(特開2008−011817)」は「人為的に鮎竿を保持することなく、自由に両手を使っておとりや仕掛けの取換えを行い得る釣り竿を提供する」となっており、具体的には鮎竿の竿尻に環状金具を取付けてこれに紐を通して一方の端を釣人のベスト(上着衣)に結び付ける方法である。
しかるに、本件発明品は長尺竿の竿尻付近に嵌合された器具であり、その上面には常に上向きで釣人の前腕下面を支えるように回転自由に配設された支え板を有し、該支え板は掛り魚を取り込む時には回転停止して釣竿の竿尻を確実に保持して掛り魚をしっかりと取り込むためのものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
長時間の釣り実行者、年配者や女性における手首負担の軽減を図るために、併せて掛り魚を確実に取り込むことが可能な装置や器具が必要である
前項の関連公知技術は、いずれもおとり交換やその他の作業を行う際に邪魔になる長尺竿を肩に安定的に置いたり、ベストに結び付けたりして両手が竿から離れた場合でも竿が流されたりしないような方法に関する発明であるのに対して、本件発明品は長尺竿の竿尻付近に嵌合された器具であり、その上面には常に上向きで釣人の前腕下面を支えるように回転自由に配設された支え板を有し、該支え板は釣魚を取り込む時には回転停止して釣竿の竿尻を確実に保持して掛り魚の取り込みを確実にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献】 特開2000−270746 特開2008−011817
【0006】
前述の課題を解決するための本件発明品は、長尺竿の竿尻付近に嵌合された器具であり、その上面には常に上向きで釣人の前腕下面を支えるように回転自由に配設された支え板を有し、該支え板は掛り魚を取り込む時には回転停止して釣竿の竿尻を釣人の前腕下面に確実に保持して掛り魚の確保を安定的かつ正確に行える器具を提供することである。
【0007】
本件発明によって、長時間の釣り実行者、年配者や女性における手首負担の軽減を図ることが可能となり、掛り魚を確実に取り込むことが可能となるとともに釣果の向上が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】 本発明を実施するための最良の形態のうち、スプリング方式の例である。(a)は通常状態、つまり魚が掛るのを待っている状態である。(b)は取り込み状態、つまり魚が掛り、これを取り込もうとするときの状態である。
【
図2】 本発明を実施するための最良の形態のうち、マグネット方式の例である。(a)は通常状態、つまり魚が掛るのを待っている状態である。(b)は取り込み状態、つまり魚が掛り、これを取り込もうとするときの状態である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本件発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【実施例】
【0010】
本件発明はスプリング方式とマグネット方式の2つの実施例がある。
図1はスプリング方式である。(a)は通常時(支え板の回転が自由)の図面である。左側は側面図、右側は正面図である。1は釣竿の竿尻部分であり図面左側の竿先方向は細くなっている。1aは竿尻部1の外周面であり、この面で該発明品の構成部品である固定リング2の内周面2aと回転ずれがなく、かつ、着脱可能なように嵌合される。固定リング2のフランジ部は2b、2cであり、右側の2cは歯付ストッパーも兼ねている。該固定リング2はその外周面に回転リング3を回転自由に挟抱する。該回転リング3の内径は固定リング2の左右のフランジ部2b、2cの外径より小さくなっているので竿軸方法には外れない。該回転リング3にはスプリング保持用ボルト4が螺合され、その外周にスプリング5が挿入される。該ボルト4と該スプリング5はともにスライドリング6に、糸トラブルを防ぐ目的で、内包されるように配設される。該スライドリング6は該回転リング3を挟持するが自身は竿軸と直角方向にスライド自由に構成される。該スライドリング6の先端部6aには支え板7が接合または螺合される。該支え板7は釣人前腕下面にフィットするようにその上面が僅かに湾曲しているが、その湾曲軸は竿軸方向とは一定角度でずれるように作製される。なぜなら釣人前腕軸と竿軸は一定角度のずれがあるからである。
鮎釣り実行中の竿角度は0°(竿が水平)〜45°であり、かつ、該スプリング保持用ボルト4は錘としても作用するから、該発明品全体の重心は、竿軸中心1bの下になり、該支え板7は常に上を向くことになる。したがって釣人が竿を持つとき、その方向角をいちいち気にする必要がない。この状態で掛り魚が掛るのを待つことになる。
【0011】
(b)取り込み時(支え板の回転を拘束)は掛り魚が掛った時の図である。掛り魚を引抜き法で取り込む場合は、掛ったその場で竿先を上げて掛り魚とおとり魚を空中に引き揚げるのであるが、この時、前述のような大きなモーメントが竿を持つ手を前方に回転させるように手首にかかるので、モーメントの支点である手首より後方(竿尻側)にある該支え板7は釣人の前腕下面を押し付ける。それによって、該支え板7と一体化されたスライドリング6を介して該スプリング5を圧縮するので支え板自身は下方にスライドする。このとき支え板7の下側に設けられたストッパー歯7aが歯付ストッパー2cの溝2caに進入するので、該支え板7は回転が拘束される。かくして該支え板7は釣人の前腕下面を安定かつ確実に保持できるから掛り魚を確実に取り込むことが可能となり、釣果の向上つながる。
【0012】
図2はマグネット方式である。(a)は通常時(支え板の回転が自由)の図面である。左側は側面図、右側は正面図である。また、(b)取り込み時(支え板の回転を拘束)は掛り魚が掛った時の図である。
図1のスプリング方式との違いはスプリングの代わりに一対のマグネットを用いるだけである。すなわち、回転リング3の下側とスライドリング6の上側に互いに吸着するように一対のマグネット4a、4bが配設される。すると、その吸着力によってスライドリング6と一体化された支え板7は上方に引き付けられるので、(a)通常時(支え板の回転が自由)においては、ストッパー歯7aが歯付ストッパー2cの溝2caに進入していない状態となって該支え板7は回転自由となる。なお、スライドリング6に内包されるように配設されたボルト5は竿軸まわりの回転力を増すための錘として活用される。
一方、(b)取り込み時(支え板の回転を拘束)においては、前述のような大きなモーメントが竿を持つ手を前方に回転させるように手首にかかるので、モーメントの支点である手首より後方(竿尻側)にある該支え板7は釣人の前腕下面を押し付ける。それによって、該支え板7と一体化されたスライドリング6を介して該4bを押し下げるので支え板自身は下方にスライドする。このとき支え板7の下側に設けられたストッパー歯7aが歯付ストッパー2cの溝2caに進入するので、該支え板7は回転が拘束される。かくして該支え板7は釣人の前腕下面を安定かつ確実に保持できるから掛り魚を確実に取り込むことが可能となり、釣果の向上つながる。
【符号の説明】
【0016】
1 釣竿の竿尻周り
2 固定リング
2a 固定リングの内周面
2b 固定リングのフランジ部(左側)
2c 固定リングのフランジ部兼歯付ストッパー
2ca 歯付ストッパーの溝
3 回転リング
4 スプリング保持用ボルト兼錘
5 スプリング
6 スライドリング
6a スライドリングの上端部
7 支え板
7a ストッパー歯