特開2017-164033(P2017-164033A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタ医科器械の特許一覧

<>
  • 特開2017164033-自動体外式除細動器 図000003
  • 特開2017164033-自動体外式除細動器 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-164033(P2017-164033A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】自動体外式除細動器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20170825BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20170825BHJP
   A61B 5/0402 20060101ALI20170825BHJP
【FI】
   A61N1/39
   A61B5/02 310B
   A61B5/02 B
   A61B5/04 310M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-49591(P2016-49591)
(22)【出願日】2016年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】390012737
【氏名又は名称】株式会社フジタ医科器械
(74)【代理人】
【識別番号】100161322
【弁理士】
【氏名又は名称】白坂 一
(74)【代理人】
【識別番号】100151677
【弁理士】
【氏名又は名称】播磨 里江子
(72)【発明者】
【氏名】前多 宏信
(72)【発明者】
【氏名】山村 晴雄
【テーマコード(参考)】
4C017
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA12
4C017AA19
4C017AB06
4C017AC16
4C017AC28
4C017BC11
4C017BC17
4C017BC23
4C017CC01
4C017CC06
4C017DD07
4C017DD17
4C017EE01
4C017EE15
4C017FF05
4C053JJ18
4C053JJ23
4C053KK02
4C053KK03
4C053KK07
4C127AA02
4C127DD03
4C127HH06
4C127HH18
4C127HH21
4C127KK01
4C127LL04
(57)【要約】
【課題】血液の脈動する情報をセンサで測定分析して脈波として捉えることにより、胸骨圧迫によって本当に血液が循環しているのか否かを知ることができる自動体外式除細動器を提供すること。
【解決手段】被救助者の胸部に貼り付けて電気ショックを付与する一対の除細動パッドを有するAED本体と、AED本体に設けられて被救助者の頭部における脈波を検出する脈波センサユニットと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被救助者の胸部に貼り付けて電気ショックを付与する一対の除細動パッドを有するAED本体と、
前記AED本体に設けられて被救助者の頭部における脈波を検出する脈波センサユニットと、
を備える、自動体外式除細動器。
【請求項2】
前記脈波センサユニットは、
人体頭部に向けて近赤外領域の近赤外光を照射する発光部と、
人体頭部に接触して前記発光部から照射した近赤外光の人体頭部からの反射光を受光する受光部と
を備える、請求項1に記載の自動体外式除細動器。
【請求項3】
前記脈波センサユニットは、
被救助者の胸骨圧迫時における脳内血液の酸素飽和度を測定する測定部を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動体外式除細動器。
【請求項4】
前記脈波センサユニットは、
被救助者の胸骨圧迫時における脳内血液のヘモグロビンインデックスを測定することによって得られる血液の脈動を測定分析する測定部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1の請求項に記載の自動体外式除細動器。
【請求項5】
前記AED本体は、
前記測定部によって脈動を測定分析して得られた信号波形から、当該波形の山又は谷のタイミングで胸骨圧迫動作を救助者に報知する報知部を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の自動体外式除細動器。
【請求項6】
前記脈波センサユニットは、
被救助者の胸骨圧迫時における脳内血液の酸素飽和度及びヘモグロビンインデックスを測定することによって得られる血液の脈動を測定分析する測定部と、
前記酸素飽和度の測定値が所定の基準値を超えたことを契機として前記一対の除細動パッドから被救助者の胸部に電気ショックを付与してもよい旨を報知する報知部と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動体外式除細動器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動体外式除細動器に関し、特に、適切な胸骨圧迫が行われているかを検出する自動体外式除細動器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パッドを胸部に貼ることによって心電図を測定し、その波形解析によって除細動を自動的に行う自動体外式除細動器(以下、「AED」と称する)が知られている。
【0003】
また、このようなAEDを利用する際の前段階として人口的に行われる心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)のうち、所謂心臓マッサージとも称される胸骨圧迫に際しては、その深さとテンポが重要な要素となっている。通常、成人の場合、胸骨圧迫の深さは2インチ(5cm)以上が推奨され、圧迫回数のテンポは100〜120回/分で行うべきであるとされている(心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2015年改訂版)。
【0004】
一方、近年のAEDにあっては、上述した人口的に行う心肺蘇生が適切に行われているのかを加速度センサを用いてフィードバックするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このAEDは、胸骨圧迫の速度や深度を測定し、適切な胸骨圧迫が実施されているかどうかを音声により施術者にアドバイスする機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−046609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、除細動装置でショック電圧をかけるタイミングの適正を判断する手法として、脳内酸素飽和度が40〜50%以上にならないとROSC(心拍再開)し難いという指摘もでてきている。したがって、脳内酸素飽和度が40〜50%以上に達するまでは胸骨圧迫(胸骨圧迫)を継続するのが、蘇生後の患者の予後をも改善するとも言われている。
【0007】
しかしながら、上述した加速度センサを用いたAEDにあっては、臨床現場では胸骨圧迫の深さやテンポは理想的であったとしても、その効果を得られているかを実際に知ることができるものではなかった、すなわち、加速度センサは、深さとテンポとを知ることはできても、本当にその胸骨圧迫によって血液が循環している証拠になるという情報を得ることはできないのが実情であった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するために、血液の脈動する情報をセンサで測定分析して脈波として捉えることにより、胸骨圧迫によって本当に血液が循環しているのか否かを知ることができる自動体外式除細動器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る自動体外式除細動器は、上記目的を達成のため、被救助者の胸部に貼り付けて電気ショックを付与する一対の除細動パッドを有するAED本体と、AED本体に設けられて被救助者の頭部における脈波を検出する脈波センサユニットと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、血液の脈動する情報をセンサで測定分析して脈波として捉えることにより、胸骨圧迫によって本当に血液が循環しているのか否かを知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る自動体外式除細動器の使用状態の模式図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る他の自動体外式除細動器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、自動体外式除細動器(以下、「AED」と称する)10は、図示しない収納ケース等に収納したAED本体11と、AED本体11に設けた電源スイッチ12と、表示部13と、音声部14と、ショックスイッチ15と、一対の除細動パッド16と、脈波センサユニット20と、を備える。
【0014】
AED本体11は、硬質樹脂等の成型品であり、内部に後述する制御ユニットを収納している。AED本体11は、携帯可能となるように、把手17を一体に備えている。
【0015】
電源スイッチ12は、AED本体11の制御ユニットを駆動するためのメインスイッチとしての機能を有している。なお、電源スイッチ12は、例えば、AED本体11を図示しない収納ケースから取り出したときに自動的にONするように構成し、人為的に操作するスイッチを配置しない場合もある。
【0016】
表示部13は、例えば、被救助者Pの状態確認後の結果や、救助者(図示せず)に操作手順等の表示ガイダンスを出力する。
【0017】
音声部14は、AED本体11の内部に配置され、例えば、被救助者Pの状態確認後の結果や、救助者(図示せず)に操作手順や注意喚起等の音声ガイダンスを出力する。
【0018】
ショックスイッチ15は、制御ユニットにより被救助者Pの状態がショック必要と判定した場合に、電気ショックを与えるためのトリガースイッチとしての機能を有している。ショックスイッチ15は、救助者が誤って起動させないよう、電気的なロック機能を有している。
【0019】
一対の除細動パッド16は、被救助者Pの胸部(人体頭部)に貼り付けることにより、心電位等の被救助者Pの生体情報を取得するととともに、非救助者Pに電気ショックを付与する。
【0020】
なお、これら電源スイッチ12、表示部13、音声部14、ショックスイッチ15、一対の除細動パッド16は、公知のAED10に搭載したものと同一の機能であり、その配置等は任意である。
【0021】
脈波センサユニット20は、AED本体11に着脱可能に取り付けるコネクタ21と、コネクタ21に一端を接続した配線22と、配線22の他端に設けた脈波センサパッド23と、脈波センサパッド23に設けた一対の発光部24及び受光部25と、を備える。なお、コネクタ21には、例えば、USBコネクタやRS232Cインターフェイスコネクタを用いることができる。なお、AED本体11との接続には、医療規格の絶縁構造を備えたUSBコネクタ又はRS232Cインターフェイスコネクタとすれば、AED本体11と簡便に接続することができるうえ、組み込み装置として機能させることが可能となる。すなわち、既存のAED10に脈波センサユニット20を適用可能とするためには、AED10が発生するショック電圧に十分耐えうるモジュールとする必要がある。したがって、医療機器の安全企画に準じたCF型装着部をもったものとすればよい。
【0022】
ここで、先に上述した制御ユニットの構成を図2に基づいて説明する。図2において、本実施の形態における制御ユニット30は、本実施の形態に係るプログラムを格納した記憶部31と、記憶部31に格納したプログラムに従って各種処理を実行する制御部32と、でコンピュータ構成している。
【0023】
例えば、制御部32は、電源スイッチ12がONされると、記憶部31に格納したプログラムに従って、表示部13及び音声部14を制御してガイダンスを実行させる。
【0024】
制御部32は、脈波センサユニット20をAED本体11に装着させる旨、並びに、脈波センサパッド23を被救助者Pの額(頭部)に貼り付ける旨、等の各ガイダンスを表示部13及び音声部14の少なくともいずれか一方から行わせる。そのうえで、制御部32は、光源制御部26を制御して発光部24から近赤外光を照射させる。また、制御部32は、受光部25で受光した反射光に基づいて測定部27で測定した脈波に関する生体情報を取得する。これにより、制御部32は、脈波センサユニット20からの脈波に関する生体情報に応じて表示部13及び音声部14の少なくともいずれか一方を制御する。
【0025】
一方、制御部32は、切替部33を制御して被救助者Pの胸部に貼り付けた除細動パッド16から心電位等の被救助者Pの生体情報に基づくショックの要否に関する判断結果を判断部34から取得する。
【0026】
ここで、制御部32は、判断部34からショック要の判断結果を取得した場合、電源部35を制御して図示しないバッテリからの電力を発生部36にチャージさせる。制御部32は、チャージが完了したら、ショックスイッチ15の操作の受け付けを許可するとともに切替部33を制御し、除細動パッド16の状態を生体情報の取得状態から被救助者Pに電気ショックを与えるショック状態に切り替える。そして、制御部32は、救助者のショックスイッチ15の操作によって発生部36にチャージした電力により被救助者Pに電気ショックを与える。
【0027】
発光部24には発光ダイオード(LED)を用いており、受光部25にはフォトダイオード(PD)を用いている。発光部24は、光源制御部26から出力された発光信号に応じて測定時に発光し、生体内(脳内)に近赤外光(例えば、パルス光)を照射する。受光部25は、生体内に向けて照射した近赤外光と同期したタイミングで生体内からの反射光を受光する。なお、発光部24の発光素子はLEDでなくてもよく、近赤外領域の複数波長の光を順次出力できるものであれば、例えば、レーザダイオードでもよい。
【0028】
光源制御部26は、発光部24の駆動を指示するための指示信号を発光部24に出力する。指示信号には、発光部24が照射する近赤外光の強度や波長(例えば、770nm,800nm,870nmのうちいずれかの波長)などの情報が含まれている。光源制御部26は、制御部32から受けた駆動信号に基づいて発光部24の発光を制御する。
【0029】
本実施の形態において、測定部27は、脳内血液の酸素飽和度rSO2とヘモグロビンインデックスHbIとを測定する。ヘモグロビンインデックスHbIは血管内のヘモグロビンの量の変化を反映している。被救助者Pが救助者によって胸骨圧迫されると心臓が胸骨上から押され、心臓内にある血液が押し出される。また、胸骨圧迫が解除されると心臓内の弁が閉じて血液が逆流することなく肺動脈から新たな血液が心臓に送り込まれる。そして、この胸骨の圧迫と圧迫解除とを繰り返すことによって脳や臓器に血液が循環され被救助者Pの蘇生に寄与することができる。
【0030】
したがって、測定部27は、ヘモグロビンインデックスHbIの測定時に得られる血液の脈動する情報を測定分析し、脈波として捉えることによって、脈波における波形の山又は谷を識別することができる。
【0031】
この脈波における波形の山又は谷になったタイミングで、表示部13又は音声部14によりガイダンスを出力することによって、救助者にその胸骨圧迫テンポと明らかに血液が流動している旨を知らせることができる。
【0032】
この際、胸骨圧迫テンポとは、本当に心臓から脳内に送り出された血液による結果の証拠となるため、単純に加速度センサにより胸骨が移動したテンポによるものとは異なり、信頼性を向上することができる。
【0033】
このように、脈波センサユニット20を用いることにより、ヘモグロビンインデックスHbIから得られた脈波に関する情報によるテンポが100〜120回/分となるように救助者が行う周期を合わせることが可能になると同時に、脈波が出る=心臓が的確に押されている、ことが確認できるので、効果のある胸骨圧迫が可能となる。
【0034】
さらに、胸骨圧迫時に脳内血液の酸素飽和度rSO2を測定しているので、心肺蘇生による自己心拍再開(ROSC)が可能となる値になるまで集中的に胸骨圧迫を繰り返す動作を促すことができる。これにより、救助者による頸動脈の触れや呼吸の確認のための動作を省くことにも貢献することができ、早期にROSC可能な状態にし易くすることができる。
【0035】
このような基本構成において、本実施の形態に係る自動体外式除細動器10は、被救助者Pの胸部に貼り付けて電気ショックを付与する一対の除細動パッド16を有するAED本体11と、AED本体11に設けられて被救助者Pの頭部における脈波を検出する脈波センサユニット20と、を備えることにより、血液の脈動する情報をセンサで測定分析して脈波として捉え、胸骨圧迫によって本当に血液が循環しているのか否かを知ることにある。
【0036】
次に、本実施の形態に係るAED10を用いた使用例を説明する。なお、本実施の形態に係る脈波センサユニット20を搭載していない場合のAED10を用いた蘇生では、以下のアルファベット順で行うものとされる。
【0037】
(A)被救助者Pの反応を確認
(B)助けを呼ぶ
(C)被救助者Pの気道を確保
(D)被救助者Pの呼吸の確認
(E)被救助者Pに人工呼吸を行う
(F)被救助者Pの心臓マッサージを行う
(G)AED10の電源スイッチ12を投入する
(H)被救助者Pの胸部に除細動パッド16を貼る
(I)被救助者Pの心電図を解析する
(J)被救助者Pに電気ショックを与える
【0038】
これに対し、脈波センサユニット20を搭載した場合のAED10を用いた蘇生では、以下の数字順で行う。なお、以下の手順は、あくまでも救助者がAED10を用いた救命措置の場合であって、医師等の適切な胸骨圧迫を行うことができる救命処置の際には、同じAED10を用いたとしても、脈波センサユニット20は用いなくてもよい。
【0039】
(1)被救助者Pの反応を確認
(2)助けを呼ぶ
(3)被救助者Pの気道を確保
(4)被救助者Pの呼吸の確認
(5)被救助者Pの頭部に脈波センサパッド23を貼る
(6)AED10の電源スイッチ12を投入する
(7)被救助者Pに人工呼吸を行う
(8)被救助者Pの心臓マッサージを行う
(9)被救助者Pの胸部に除細動パッド16を貼る
(10)被救助者Pの心電図を解析する
(11)被救助者Pに電気ショックを与える
【0040】
なお、上記の手順のうち、例えば、(5)〜(7)はこの順でなくてもよい。また、上記手順(5)を用いることにより、(6)の電源投入手順の順序が(8)の心臓マッサージ手順よりも先になった以外、救助者が行う救命動作そのものは公知の救命動作と同一である。したがって、以下の説明では、上記(8)被救助者Pの心臓マッサージを行う、の場合に特化して説明する。
【0041】
近赤外線酸素飽和度モニターとしての脈波センサユニット20の脈波センサパッド23を被救助者Pの頭部に貼ると、発光部24から毎秒10回、異なった3波長の近赤外線による近赤外光が照射される。
【0042】
この近赤外光は、発光部24と受光部25との離間距離(例えば、30〜40mm)の70〜80%の深度の脳内において反射し、その反射光を受光部25が受光する。
【0043】
受光部25で受光した反射光は、測定部27によってヘモグロビンによる吸光度の変化情報を時分割で測定する。
【0044】
脳内の血液の情報は、例えば、800nmの近赤外光で直接増減を測定することができるが、近赤外光の照射間隔を毎秒10回程度としたのでは、波形の山及び谷を明確に判別することが困難とされている。そこで、本実施の形態では、この800nmを含む3つの異なる波長を用い、その全ての波形で上昇又は下降していれば、脈波として上昇又は下降したとの判定を測定部27によって行うことができる。
【0045】
したがって、これら使用している3つの近赤外光を用いた波長全ての測定部27での受光結果を合計すれば毎秒30回になので、周期毎分120回=毎秒2回の波形の山又は谷を十分に検出することができる。
【0046】
これにより、制御部32は、この波形の山又は谷を用いて胸部圧迫による血液が脳内に達しているか否かを含み、胸部圧迫リズムを表示部13及び音声部14と用いて救助者に報知することにより、適切な胸部圧迫を行えているかを認識することができる。
【0047】
この際、例えば、肥満体系の人のように胸部圧迫の強さが足りない場合や、胸部圧迫位置がずれている場合のように、単に加圧センサを用いただけでは十分な胸部圧迫が行えていない可能性があるような場合であっても、適切な胸部圧迫を行えているかを認識することができる。
【0048】
そして、制御部32は、発光部24と受光部25とが同期するように光源制御部26と測定部27とを制御している。測定部27は、受光部25で受光した複数波長の信号を時分割して収集記録し、各波長の吸光度合の比率R/IRを求めて血液の酸素飽和度とヘモグロビンの量の相対値とを計算し、記憶部31に記憶するとともに表示部13に表示する。なお、測定原理は近赤外線の生体内での吸光度合は組織に含まれるヘモグロビンの濃度に比例するという、ベアーランバートの法則で計算する。
【0049】
したがって、制御部32は、測定部27の判定結果により脳内に十分に血流が流れたとの判定結果が出力されたとき、若しくは、測定部27の測定結果に基づいて脳内に十分に血流が流れたと判定したときに、チャージを開始するとともに表示部13及び音声部14を用いて被救助者Pにショックを与える旨を報知する。また、制御部32は、例えば、ショックスイッチ15が動作可能な状態になっていることや、被救助者Pから離れることなどの報知を行う。なお、制御部32は、例えば、測定部27が、被救助者Pの酸素飽和度に対する測定値が所定の基準値(例えば、40%)を超えたと判定したときに、それを契機として表示部13及び音声部14を報知部として用いて被救助者Pにショックを与える旨を報知する。
【0050】
これにより、救助者は、ショックスイッチ15を操作して救助者にショックを与えることが可能となる。
【0051】
このように、本実施の形態に係る自動体外式除細動器10は、被救助者Pの胸部に貼り付けて電気ショックを付与する一対の除細動パッド16を有するAED本体11と、AED本体11に設けられて被救助者Pの頭部における脈波を検出する脈波センサユニット20と、を備えることにより、血液の脈動する情報をセンサで測定分析して脈波として捉え、胸骨圧迫によって本当に血液が循環しているのか否かを知ることができる。
【0052】
ところで、本発明の自動体外式除細動器10は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載した技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
【0053】
例えば、発光部24と受光部25との離間距離は、その離間距離によって測定できる生体組織の深さを変更することができる。発光部24と受光部25とは、中心間距離に対して70〜80%の深さを測定することができる。したがって、例えば、大人用と子供用とのように、異なった離間距離のものを複数用意し、必要に応じてAED本体11に着脱可能に取り付けることができる。
【0054】
また、自動体外式除細動器10は、一対の発光部24及び受光部25で被救助者Pの頭部の生体情報を測定するものとして説明したが、左右各1対配置すれば左右の脳の情報が確認できる。この場合、例えば、一方の発光部及び受光部による生体情報の測定位置と、他方の発光部及び受光部による生体情報の測定位置と、で生体内に対する深度を変えることもできる。
【0055】
以上説明したように、本発明に係る自動体外式除細動器は、血液の脈動する情報をセンサで測定分析して脈波として捉えることにより、胸骨圧迫によって本当に血液が循環しているのか否かを知ることができるという効果を有し、適切な胸骨圧迫が行われているかを検出する自動体外式除細動器全般に有用である。また、酸素飽和度の監視により、基準の値(例えば、50%以下)の場合には心肺蘇生による自己心拍再開(ROSC)しない場合が多いことが知られているので、基準の値以下の場合には、効果の少ないショックを与えないことにより、蘇生後の予後を悪化させないという効果も期待することができる。なお、ショックを与えてもROSCしない場合は、心筋が消耗して予後が悪くなると危惧されている。
【符号の説明】
【0056】
P 被救助者
10 自動体外式除細動器
11 AED本体
12 電源スイッチ
13 表示部(報知部)
14 音声部(報知部)
15 ショックスイッチ
16 除細動パッド
20 脈波センサユニット
24 発光部(LED)
25 受光部(PD)
26 測定部
図1
図2