【解決手段】ケース2の内部には、ペルチェ素子31及び送風機30が収容されている。ペルチェ素子31の高温部の熱を送風機30によってケース2の外部に放出する。ケース2の内部には、送風機30によって送られる空気をケース2の空気排出孔21cに導くダクト40が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2のような処置装置では、ペルチェ素子の冷却部が皮膚側に位置する場合には、ペルチェ素子の発熱部がケース内に配置されることになる。ペルチェ素子の冷却部の温度を低くするためには発熱部の熱をケースの外部に逃がす必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2のような処置装置は、医療現場で看護師等が容易に持ち運ぶことができて素早く患者に使用できるようにするために、小型、かつ、軽量にすることが求められるので、ケースを大きくすることはできず、ケース内に熱気が滞り易く、冷却効率を高めることは困難である。しかも、ペルチェ素子は冷却能力を有する反面、冷却した以上の熱が発生してしまい、その熱を放熱することができなければ冷却効率の更なる低下を招いてしまう。
【0008】
このペルチェ素子の発熱部の放熱の問題に対して、ケースに大きな通気孔を設けたり、多数の通気孔を設けて対応する方法があるが、上述したようにケースの大きさは限られているので有効な対策となり得ない。また、ケースのデザイン上の制約から通気孔の位置や大きさが限定されてしまうことがあるとともに、例えば各種情報を表示するためのディスプレイを大型化したい場合やディスプレイの見やすさを優先した配置にしたい場合には、ディスプレイによって通気孔の位置や大きさが限定されてしまうことがあり、このことによってもペルチェ素子の発熱部の放熱に悪影響を与える懸念がある。また、ケースの強度上の問題等から通気孔の位置や大きさが限定されてしまうこともある。
【0009】
さらに、ペルチェ素子を用いているので電流を流す方向を変えることで皮膚等を加温することも可能になるが、加温処置に用いる場合には、ケース内に冷熱が滞ってしまう恐れがあることから、冷却の場合と同様な問題が生じ得る。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ケースに空気取込孔及び空気排出口を形成してケース内部の熱(冷熱を含む)を放出する場合に、熱の放出効率を高めることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、ケースの内部に取り込んだ空気をケースの空気排出孔にスムーズに導くことでケース内の熱を効率よく放出できるようにした。
【0012】
第1の発明は、
電流を流すことによって温度変化する第1温度変化部及び該第1温度変化部とは反対に温度変化する第2温度変化部を有する熱電素子と、
少なくとも上記熱電素子の上記第2温度変化部を収容するとともに、空気取込孔及び空気排出孔が形成されたケースと、
上記ケースに収容され、該ケースの上記空気取込孔から空気を取り込んで上記空気排出孔から排出することによって上記熱電素子の上記第2温度変化部の熱を上記ケースの外部に放出する送風機とを備え、
上記熱電素子の上記第1温度変化部によって生体の一部を冷却または加温するように構成された処置装置において、
上記ケースの内部には、上記送風機によって送られる空気を上記空気排出孔に導くダクトが設けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、熱電素子に対して第1温度変化部が常温よりも低温となるように電流を流した場合には、例えば皮膚の穿刺予定箇所を冷却して穿刺痛を緩和することが可能になる。このとき、熱電素子の第2温度変化部の温度がケースの内部で上昇する。ケースの内部には、送風機によって空気取入孔から空気が取り入れられ、この空気が熱気となってダクトにより空気排出孔に導かれるので、ケース内部の熱気が空気排出孔からスムーズに排出される。
【0014】
また、熱電素子に対して第1温度変化部が常温よりも高温となるように電流を流した場合には、例えば皮膚を加温することが可能になる。この場合、熱電素子の第2温度変化部の温度がケースの内部で低下する。送風機によって空気取入孔からケースの内部に取り入れられた空気は冷気となってダクトにより空気排出孔に導かれるので、ケース内部の冷気が空気排出孔からスムーズに排出される。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
上記送風機の空気流れ方向上流側に上記熱電素子の上記第2温度変化部が配置され、
上記ダクトは、上記ケースの上記空気排出孔まで延びていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、送風機の作動によって空気が送風機の空気吹出部からケースの空気排出孔まで確実に導かれるので、熱気や冷気がケースの内部に充満してしまうのを抑制することが可能になる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、
上記ケースの上記空気排出孔は、上記送風機の空気吹出部に対向するように配置され、
上記ケースの外部から上記空気排出孔を空気流れ方向に見たとき、上記空気排出孔の中心部と、上記空気吹出部の中心部とが互いにずれていることを特徴とする。
【0018】
すなわち、ケースの大きさや形状、デザイン上の理由からケースの空気排出孔の形成位置や大きさが制限されることがあるとともに、送風機の配設位置も制限されることがある。このような制限がある場合、ケースの空気排出孔の中心部が、送風機の空気吹出部の中心部からずれてしまうことがある。こうなった場合には、送風機の空気吹出部から吹き出す空気の主流がケースの空気排出孔の中心部からずれて空気の排出効率が低下する恐れがあるが、本発明では、送風機の空気吹出部からケースの空気排出孔まで延びるダクトを設けていることで、空気の排出効率が高く保たれる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明において、
上記ケースの上壁部には、上記空気排出孔が形成されるとともに、上記処置装置に関する情報を表示する表示部が上記空気排出孔と並ぶように設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、表示部をケースの上壁部に設けることで、処置装置の使用時に、使用者が処置装置の動作に関する情報を把握し易くなる。また、空気排出孔をケースの上壁部に形成することで、空気の排出の邪魔になるものが空気排出孔の周りに無くなり、空気がよりスムーズに排出される。
【0021】
このように表示部及び空気排出孔を共にケースの上壁部に設けた場合、表示部は視認性の観点から大きくしたいという要求があり、また、空気排出孔は空気の排出効率を高める観点から大きくしたいという要求があるので、上記第3の発明のように空気排出孔の中心部と、空気吹出部の中心部とが互いにずれてしまうことがある。つまり、本発明によれば、送風機の空気吹出部からケースの空気排出孔まで延びるダクトを設けていることで、表示部の視認性を良好にしながら、空気の排出効率が高く保たれるレイアウトが実現される。
【0022】
第5の発明は、第4の発明において、
上記ケースの上壁部には、上記処置装置を操作する操作部が上記表示部と並ぶように設けられていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、操作部をケースの上壁部に設けることで、操作部の操作性が向上する。その一方で、操作部をケースの上壁部に設けると、空気排出孔の中心部と、空気吹出部の中心部とが更にずれるように空気排出孔をレイアウトしなければならないことが考えられる。この場合に、送風機の空気吹出部からケースの空気排出孔まで延びるダクトを設けていることで、操作部の操作性を良好にしながら、空気の排出効率が高く保たれるレイアウトが実現される。
【0024】
第6の発明は、第4または5の発明において、
上記ケースは、上記送風機を収容する送風機収容部と、使用者が把持する把持部とを備え、
上記ケースの上壁部は、上記送風機収容部から上記把持部まで延び、
上記空気排出孔は、上記上壁部における上記送風機収容部側に形成され、
上記表示部は、上記空気排出孔と上記把持部との間に設けられていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、使用時に使用者が把持部を持ったとき、空気排出孔と把持部との間に表示部が位置することになるので、空気排出孔を把持部から離すことが可能になる。これにより、空気排出孔から排出される熱気や冷気が使用者に直接的に当たりにくくなるので、使用感が向上する。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、送風機によって送られる空気をケースの空気排出孔に導くダクトを設けたので、熱の放出効率を高めることができる。
【0027】
第2の発明によれば、ダクトがケースの空気排出孔まで延びているので、熱気や冷気がケースの内部に充満してしまうのを抑制することができ、熱の放出効率をより一層高めることができる。
【0028】
第3の発明によれば、各種の制約によって空気排出孔の中心部と空気吹出部の中心部とが互いにずれている場合に空気の排出効率を高く保つことができる。つまり、ケースの空気排出孔まで延びるダクトを設けるという、上記第2の発明の効果が顕著なものになる。
【0029】
第4の発明によれば、ケースの上壁部に空気排出孔及び表示部を並ぶように設けたので、表示部の視認性を良好にしながら、空気の排出効率を高く保つことができる。
【0030】
第5の発明によれば、ケースの上壁部に操作部を設けたので、操作部の操作性を良好にしながら、空気の排出効率を高く保つことができる。
【0031】
第6の発明によれば、ケースの上壁部において表示部を空気排出孔と把持部との間に設けたので、使用時に使用者が把持部を持ったときに空気排出孔を把持部から離すことができる。これにより、空気排出孔から排出される熱気や冷気が使用者に直接的に当たりにくくなるので、使用感を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る処置装置1を上方から見た斜視図である。処置装置1は、例えば、医療現場において人工透析や予防接種、血液検査等を行う際のように針を皮膚に刺す場合に、皮膚の穿刺予定箇所を穿刺前に冷却することによって穿刺時の痛みを緩和する穿刺痛緩和装置である。処置装置1の使用目的は、穿刺時の痛みを緩和すること以外にも、例えば皮膚の一部を局所的に冷却したい場合にも使用することができ、また、詳細は後述するが、電流を流す方向を反対にすることで、冷却以外にも皮膚の一部を加温する目的で使用することも可能である。
【0035】
図1〜
図3に示すように、処置装置1は樹脂製のケース2を備えている。このケース2は所定方向に長い形状とされており、ケース2の長手方向一側(処置装置1の長手方向一側)を基端側とし、ケース2の長手方向他側(処置装置1の長手方向他側)を先端側と定義する。また、ケース2の左右方向を各図に示すように定義する。ケース2の長手方向の寸法は、例えば200mm以下にするのが好ましい。
【0036】
図3や
図4に示すように、処置装置1は、ケース2の他に、送風機30を備えたメインユニット3と、充電池4と、メイン回路基板5と、電源中継基板6と、ダクト形成部材7とを備えている。また、ケース2には、表示パネル(表示部)8と、操作ボタン(操作部)9とが設けられており、これら表示パネル8及び操作ボタン9も処置装置1の構成要素である。
【0037】
(ケースの構成)
ケース2の先端側には、上記メインユニット3の大部分を収容するメインユニット収容部2aが形成され、基端側には、処置装置1を使用する使用者が把持する把持部2bが形成されており、メインユニット収容部2a及び把持部2bは連続して形成されている。メインユニット収容部2aは、メインユニット3の送風機30を収容しているので、本発明の送風機収容部である。
【0038】
ケース2の幅(左右方向の寸法)はメインユニット収容部2aから把持部2bまで略同一幅とされている一方、ケース2の上下方向の寸法はメインユニット収容部2aの方が把持部2bに比べて長くなっている。具体的には、ケース2のメインユニット収容部2aには、下方及び左右両方向に膨出する膨出部2cが形成されており、この膨出部2cの形成によりメインユニット収容部2aの上下方向の寸法が長くなっている。
【0039】
ケース2は、上下に2分割されており、上側ケース構成部材21と下側ケース構成部材22とが組み合わされて構成されている。下側ケース構成部材22は、長手方向の全体に亘って上方に開放している。下側ケース構成部材22は、その長手方向に延びる底壁部22aと、底壁部22aの周縁部から上方へ延びる下側周壁部22bとを有しており、これら底壁部22a及び下側周壁部22bは一体成形されている。底壁部22aにおける先端側に、上記膨出部2cが形成されている。従って、底壁部22aにおける把持部2bを構成している部分は、底壁部22aにおけるメインユニット収容部2aを構成している部分よりも上に位置することになるので、把持部2bを握るようにして把持した状態で使用者の指100(
図2に仮想線で示す)がメインユニット収容部2aの下面(膨出部2cの下面)よりも上方に位置するようになる。
【0040】
図3や
図4に示すように、下側ケース構成部材22の底壁部22aにおける先端側、即ち、メインユニット収容部2aを構成している部分には、略円形の貫通孔22cが形成されている。また、
図1や
図2に示すように、下側ケース構成部材22の下側周壁部22bにおけるメインユニット収容部2aを構成している部分には、左右両側にそれぞれ多数の先端側空気取込孔22d、22d、…がケース2の内部及び外部に連通するように形成されている。先端側空気取込孔22dは、外部の空気をケース2の内部に取り込むための孔である。先端側空気取込孔22dは小さな孔で構成されており、外部のゴミ等がケース2の内部に入りにくくなっている。先端側空気取込孔22dの形成範囲は、膨出部2cの側面においてその先端側から基端側に亘る広い範囲とされている。図示しないが、先端側空気取込孔をケース2の先端部に形成してもよい。
【0041】
また、下側ケース構成部材22の下側周壁部22bにおける膨出部2cよりも基端側には、左右両側にそれぞれ複数の中間空気取込孔22eが形成されている。さらに、下側ケース構成部材22の下側周壁部22bにおける中間空気取込孔22eよりも基端側には、左右両側にそれぞれ複数の基端側空気取込孔22fが形成されている。中間空気取込孔22e及び基端側空気取込孔22fは上下方向に延びるスリット状に形成されており、外部の空気をケース2の内部に取り込むための孔である。中間空気取込孔22e及び基端側空気取込孔22fは省略することも可能である。また、
図4に示すように、下側ケース構成部材22における基端側には、基端側空気取込孔22gがスリット状に形成されている。
【0042】
上側ケース構成部材21は、底壁部22aと同様にケース2の長手方向に延びる上壁部21aと、上壁部21aの周縁部から下方へ延びる上側周壁部21bとを有している。上壁部21aは、メインユニット収容部2aから把持部2bまで連続して延びている。
【0043】
上側周壁部21bの下端部が上記下側ケース構成部材22の下側周壁部22bの上端部に嵌合するようになっており、この嵌合状態で下側ケース構成部材22の上方への開放部分が上側ケース構成部材21によって閉塞されるとともに、上側ケース構成部材21と下側ケース構成部材22とが図示しない締結部材等によって結合される。
【0044】
上側ケース構成部材21の上壁部21aにおける先端側、即ち、メインユニット収容部2aを構成している部分には、空気排出孔21cが形成されている。空気排出孔21cの中心部A(
図4に示す)は、上壁部21aの左右方向中央部に位置している。空気排出孔21cの形状は特に限定されないが、この実施形態では、上記中心部Aを中心とした円を描くように延びる多数のスリットを同心状に配置してなる形状としている。このスリットは細く形成されている。これにより、ケース2の外部から内部構造の視認が困難になっている。尚、空気排出孔21cは直線状に延びるスリットで構成してもよいし、多数の小孔で構成してもよい。上記中心部Aは、上壁部21aにおける空気排出孔21cが形成された領域の中心部のことである。
【0045】
図3に示すように、上側ケース構成部材21の上壁部21aの上面には、空気排出孔21cよりも基端側に、表示パネル配設用凹部21dが形成されている。表示パネル配設用凹部21dは、空気排出孔21cと並ぶように配置されていて、平面視で略四角形をなしている。表示パネル配設用凹部21dの左右方向の寸法は、空気排出孔21cが形成されている領域の左右方向の寸法と略同等か、それよりも長く設定されている。また、表示パネル配設用凹部21dが形成されている部分の面積は十分に広く設定されており、具体的には、空気排出孔21cが形成されている領域の面積と略同等か、それよりも広く設定されている。
【0046】
表示パネル配設用凹部21dの内部には、表示パネル用のカバー8が配設されている。図示されていない表示パネルは、発光ダイオードで構成されており、処置装置1に関する情報を表示することができるようになっている。表示パネルは、発光ダイオードに代えて液晶ディスプレイ等で構成されていてもよい。表示パネル8に表示する情報としては、例えば、処置装置1が作動状態であるか否か、処置装置1が準備中であるか否か、皮膚を冷却または加温する部分の温度表示、皮膚の冷却または加温の進行状況等を挙げることができ、これらのうち任意の1つのみを表示させるようにしてもよいし、任意の複数を表示させるようにしてもよい。表示パネル8は、表示パネル配設用凹部21dの形状と略一致するように形成されており、十分に広い表示面積が確保されている。
【0047】
上側ケース構成部材21の上壁部21aには、表示パネル配設用凹部21dよりも基端側に、操作ボタン配設用孔部21eが形成されている。操作ボタン配設用孔部21eは、表示パネル配設用凹部21dと並ぶように配置されていて、平面視で略四角形をなしている。操作ボタン配設用孔部21eの左右方向の寸法は、表示パネル配設用凹部21dの左右方向の寸法よりも長く設定されている。また、操作ボタン配設用孔部21eは左右方向に長い形状となっている。
【0048】
操作ボタン配設用孔部21eは上壁部21aを上下方向に貫通しており、その内部に操作ボタン9が配設されている。操作ボタン9は、下方に押動操作可能に構成されており、操作ボタン配設用孔部21eの開口形状に対応するように左右方向に長い形状とされている。操作ボタン9は、押動操作することによって処置装置1の電源のON、OFFを切り替えるためのボタンである。
【0049】
つまり、ケース2の上壁部21aには、先端側から基端側に向かって空気排出孔21c、表示パネル8及び操作ボタン9が順に並ぶように設けられている。尚、操作ボタン9は操作性を考慮すると把持部2bに近い部分に設けるのが好ましいが、空気排出孔21cと表示パネル8との間に設けてもよい。表示パネル8及び操作ボタン9は、左右方向に横並びに配置されていてもよい。
【0050】
(メインユニットの構成)
図5に示すように、メインユニット3は、上記送風機30の他、周知の熱電素子としてのペルチェ素子31と、カバー部材32と、放熱部材33と、固定板34とを備えている。そして、
図4に示すように、メインユニット3は、そのカバー部材32の下部を除いた部分がケース2のメインユニット収容部2aに収容される。
【0051】
図5に示すように、ペルチェ素子31は、略矩形の板状に形成されており、接続端子31a、31aと、電流を流すことによって温度変化する第1温度変化部31bと、該第1温度変化部31bとは反対に温度変化する第2温度変化部31cとを有している。ペルチェ素子31は、例えばセラミック板等によって電気的に絶縁されている。
【0052】
第1温度変化部31bは、ペルチェ素子31の厚み方向一側に設けられ、第2温度変化部31cは、ペルチェ素子31の厚み方向他側に設けられている。この実施形態では、ペルチェ素子31をケース2に対して略水平方向に延びるように配置し、ペルチェ素子31の下側が第1温度変化部31bとなり、ペルチェ素子31の上側が第2温度変化部31cとなっている。
【0053】
ペルチェ素子31に流す電流の方向は、第1温度変化部31bが常温よりも低温になり、第2温度変化部31cが常温よりも高温になる方向である。尚、ペルチェ素子31に流す電流の方向を切り替えることも可能であり、第1温度変化部31bが常温よりも高温になり、第2温度変化部31cが常温よりも低温になる方向に電流を流すこともできる。
【0054】
カバー部材32は、ペルチェ素子31の下側である第1温度変化部31bを下方から覆う底板部32aと、底板部32aの周縁部から上方へ突出して周方向に連続して延びる突条部32bとを有している。カバー部材32の材料は、熱伝導性の高い金属材料であり、例えばアルミニウム合金やステンレス鋼等を挙げることができる。カバー部材32は、ケース2の底壁部22aに形成されている貫通孔22cの内側に嵌まるようになっている。カバー部材32が貫通孔22cに嵌まった状態で、
図2に示すようにカバー部材32の底板部32aが、ケース2の底板部22aから下方へ突出した状態になる。この底板部32aは、皮膚に接触して皮膚を冷却または加温する部分である。
【0055】
ペルチェ素子31の第1温度変化部31bはカバー部材32の底板部32aに接触している。これにより、ペルチェ素子31の第1温度変化部31bの温度がカバー部材32の底板部32aに素早く、かつ、効率よく伝達される。ペルチェ素子31及びカバー部材32は、放熱部材33から外れないように固定されている。ペルチェ素子31と放熱部材33との間には熱伝達を促進させる部材等を配置することができる。
【0056】
放熱部材33は、ペルチェ素子31の第2温度変化部31cに沿って延びる基板部33aと、基板部33aの上面から上方へ突出する多数のフィン33b、33b、…とを有しており、例えばアルミニウム合金やステンレス鋼等の熱伝導性の高い金属材料で構成されている。基板部33aの下面にペルチェ素子31の第2温度変化部31cが接触しており、これにより、ペルチェ素子31の第2温度変化部31cの熱(冷熱を含む)は、放熱部材33に伝達される。
【0057】
図4に示すように、フィン33bと、ケース2の先端側空気取込孔22dの形成位置とは高さ方向について略一致している。すなわち、ケース2の内部においてフィン33bが収容されている部分の側方に先端側空気取込孔22dが位置しており、この先端側空気取込孔22dの形成範囲とフィン33bの配設範囲とは、側方から見たときに重複している。これにより、先端側空気取込孔22dからケース2の内部に取り込まれた空気がフィン33bに確実に当たることになるので、フィン33bの熱が空気に効率よく伝達される。
【0058】
固定板34は、メインユニット3をケース2の下側ケース構成部材22の内面に固定するための枠状の部材であり、例えば締結部材等によって下側ケース構成部材22に締結固定される。固定板34は、送風機30及びフィン33bに固定することが可能となっている。固定板34は、送風機30の外周面よりも外方へ延出している。
【0059】
送風機30は、ケース2の空気取込孔22d、22e、22fから空気を取り込んで空気排出孔21cから排出することによってペルチェ素子31の第2温度変化部31cの熱をケース2の外部に放出するためのものである。具体的には、
図3及び
図5に示すように、送風機30は、固定板34と一体化される枠体30aと、枠体30aの内部に配設されるファン30bと、ファン30bを駆動するモーター30cとを有している。枠体30aは略矩形をなしており、上下に空気が流通可能に配置されている。枠体30の上端開口部30dは、送風機30の空気吹出部であり、下端開口部(図示せず)は、送風機30の空気吸込部である。枠体30の上端開口部30dは、放熱部材33のフィン33bの上端部の直上方に配置されており、上方から見たとき、フィン33bが枠体30の内部に配置されるようになっている。空気吸込部は、フィン33b、33b同士の間を通過した空気のみが吸い込まれるようになっているのが好ましい。
【0060】
ファン30bは、その回転中心線が上下方向に延びるように、上記枠体30aに回転可能にモーター30cを介して支持されている。ファン30bがモーター30cによって回転駆動されると、空気が枠体30の下端開口部から吸い込まれて上端開口部30dから吹き出すようになっている。したがって、送風機30の空気流れ方向上流側にペルチェ素子31の第2温度変化部31cが配置されることになる。
【0061】
図4に示すように、メインユニット3をケース2のメインユニット収容部2aに収容した状態で、ケース2の空気排出孔21cは、送風機30の上端開口部30dに対向するように配置される。そして、ケース2の外部から空気排出孔21cを空気流れ方向(上下方向)に見たとき、空気排出孔21cの中心部Aと、送風機30の上端開口部30dの中心部Bとが互いにケース2の長手方向にずれている。
【0062】
空気排出孔21cの中心部Aと、送風機30の上端開口部30dの中心部Bとが互いにケース2の長手方向にずれている理由は次のとおりである。この処置装置1では、表示パネル8の表示面積を大きくし、かつ、上壁部21aに設けることで表示パネル8の視認性を向上させ、また、操作ボタン9を大きくし、かつ、上壁部21aに設けることで操作ボタン9の操作性を向上させている。一方、処置装置1は、医療現場で看護師等が容易に持ち運ぶことができて素早く患者に使用できるようにするために、小型、かつ、軽量にすることが求められるので、
図2に仮想線100で示す使用者の指と比べても分かるようにケース2を小型化している。従って、小型のケース2の上壁部21aに大きな表示パネル8及び大きな操作ボタン9を設けなければならないので、空気排出孔21cの形成位置及び大きさに制約があり、このため、空気排出孔21cの中心部Aと、送風機30の上端開口部30dの中心部Bとを互いにケース2の長手方向にずらしている。このずれ量は例えば10mm以上となっており、大きなずれ量である。また、ケース2の強度上の問題や内部に配設されている部品等との関係から、空気排出孔21cの形成位置及び大きさに制約が出る場合もある。
【0063】
また、メインユニット3には、ペルチェ素子31の第1温度変化部31bの温度を検出するための温度センサ(図示せず)が設けられている。この温度センサは例えば熱電対等で構成されている。
【0064】
(ダクトの構成)
図4に示すように、ケース2のメインユニット収容部2aの内部には、送風機30によって送られる空気を空気排出孔21cに導くためのダクト40が設けられている。ダクト40は、メインユニット3の固定板34の上面から空気排出孔21cまで延びており、このダクト40の内方に、上下方向に延びる空気通路Rが形成される。
図6及び
図7にも示すように、ダクト40は、上側ケース構成部材21とは別部材からなるダクト形成部材7と、上側ケース構成部材21に一体成形された先端壁部41、右側壁部42及び左側壁部43とを組み合わせることによって構成されている。先端壁部41、右側壁部42及び左側壁部43は、上側ケース構成部材21の上壁部21aの下面から下方へ延びており、それらの下端部はメインユニット3の固定板34の上面に当接している。また、先端壁部41、右側壁部42及び左側壁部43により、ケース2の基端側に開放するコ字状に近い形状の壁が形成されることになる。
【0065】
先端壁部41は、その左右方向中央部が最もケース2の先端に近づくように全体として先端側へ向かって湾曲している。これにより、空気通路Rがケース2の先端側へ向けて拡大されることになる。先端壁部41の左右両側には、締結ボス41a、41aが一体成形されている。
【0066】
右側壁部42は、先端壁部41の右縁部に連なってケース2の基端側へ延びている。左側壁部43は、先端壁部41の左縁部に連なってケース2の基端側へ延びている。右側壁部42と左側壁部43とは略平行であり、右側壁部42及び左側壁部43は、空気排出孔21cよりもケース2の基端側まで延びている。これにより、空気通路Rがケース2の基端側へ向けて拡大されることになる。右側壁部42の端部には、締結ボス44が一体成形されている。左側壁部43の端部には、締結ボス45が一体成形されている。また、上側ケース構成部材21の上壁部21aの下面には、右側壁部42と左側壁部43との間に、ダクト形成部材7を締結固定するための締結ボス46が下方へ突出するように設けられている。
【0067】
図6に示すように、ダクト形成部材7は、右側壁部42及び左側壁部43の間に配設されて、右側壁部42及び左側壁部43の間をケース2の基端側から閉塞することによって
図4に示すように空気通路Rをケース2の内部に区画形成する。ダクト形成部材7は、メインユニット3の固定板34の上面から上方へ延びる下板部7aと、下板部7aの上端部からケース2の先端側へ向かって上向きに傾斜しながら延びる傾斜板部7bと、傾斜板部7bの上端部から上方へ延びる上板部7cとを有している。下板部7aは、送風機30の枠体30aの外面に沿って延びている。傾斜板部7bは、送風機30の上端開口部30dにおけるケース2の基端側の上方に位置している。この傾斜板部7bにより、送風機30の上端開口部30dから吹き出す空気がケース2の先端側へ導かれることになる。上板部7cの上端部は、空気排出孔21cよりもケース2の基端側に位置しており、上側ケース構成部材21の上壁部21aの内面に当接している。
【0068】
また、
図7に示すように、ダクト形成部材7の上板部7cの左右両側には、ケース2の先端側へ向けて膨出する固定部7d、7dが設けられている。固定部7dが上側ケース構成部材21の締結ボス46に締結固定される。
【0069】
(他の構成要素)
図4に示すように、充電池4はケース2の把持部2bの内部に収容されており、押さえ板4aによって下側ケース構成部材22に固定されている。尚、充電池4以外にも乾電池による電力供給や、コンセントからの電力供給が可能に構成されていてもよい。
【0070】
メイン回路基板5は、主にケース2の把持部2bの内部に収容されており、充電池4の上方に配置され、ケース2の長手方向に延びている。メイン回路基板5には制御部5aが設けられている。制御部5aには、充電池4から電力が供給されるとともに、表示パネル8と、操作ボタン9と、送風機30と、ペルチェ素子31と、メインユニット3の温度センサとが電気的に接続されている。制御部5aは、周知のマイクロコンピュータ等からなり、所定のプログラムに従って動作する。具体的には、操作ボタン9の操作によって電源がONにされると、ペルチェ素子31の第1温度変化部31bが温度低下するようにペルチェ素子31に電流を流すとともに送風機30にも電流を流す。このとき、温度センサによって検出されたペルチェ素子31の第1温度変化部31bの温度が制御部5aに入力されており、第1温度変化部31bが約10℃となるようにPWM方式で電流量を調整する。また、電源がONにされたら、電源がONであることを表示パネル8に表示させる。そして、第1温度変化部31bが約20℃になったら、冷却準備が完了したことを表示パネル8に表示させる。
【0071】
制御部5aは、冷却準備の完了後に、例えば温度センサによる検出温度が1℃上昇したことを検出した場合には、皮膚の冷却を開始したことによる温度上昇であると判定する。そして、皮膚の冷却を開始したと判定してから約60秒経過した時点で皮膚の冷却が完了したとして、電源を自動的にOFFにする。この冷却の進行状況を表示パネル8に表示させることもできる。尚、表示パネル8には温度センサで検出された温度を表示させることや、充電池4の残量を表示させることもできる。
【0072】
また、制御部5aは、冷却準備の完了後に、温度センサによる検出温度の上昇を検出しない場合には、皮膚の冷却がまだ開始されていないと判定し、冷却準備の完了後、約10分間程度は第1温度変化部31bが約10℃となるようにPWM方式で電流を供給する。その後、電源を自動的にOFFにする。
【0073】
(実施形態の作用効果)
次に、本実施形態の作用効果について説明する。操作ボタン9が操作されて電源がONにされると、ペルチェ素子31及び送風機30に電流が流れるとともに、電源がONであることが表示パネル8に表示される。表示パネル8は上述のように大きな表示面積を有しているので、使用者が電源の状態を容易に確認することができる。また、操作ボタン9は、表示パネル8や空気排出孔21cよりも把持部2bに近いところにあるので、把持部2bを把持した手で簡単に押動操作できる。
【0074】
ペルチェ素子31に電流が流れると、第1温度変化部31bの温度が低下していく一方、第2温度変化部31cの温度が反対に上昇していく。第2温度変化部31cの熱の大部分は、放熱部材33に伝達される。このとき、送風機30が作動しているので、ケース2の内部には、主に先端側空気取込孔22dから空気が取り入れられ、この取り入れられた空気は放熱部材33のフィン33bの間を流れながらフィン33bから熱を奪い、その後、固定板34の内方を流通して送風機30の枠体30aの下端開口部に流入し、上端開口部30dから流出する。上端開口部30dから流出した空気はダクト40の内部に流入し、ダクト40によってケース2の空気排出孔21cに導かれる。このとき、ダクト40には、傾斜板部7bが設けられているので、ダクト40の内部に流入した空気は傾斜板部7bによってケース2の先端側へスムーズに案内される。従って、空気排出孔21cの中心部Aが、送風機30の上端開口部30dの中心部Bよりもケース2の先端側に位置していても、送風機30の上端開口部30dから流出した空気を空気排出孔21cに導くことができ、ケース2の内部の熱気が空気排出孔21cからスムーズに排出される。これにより、熱気がケース2の内部に滞りにくくなるので、ペルチェ素子31の第1温度変化部31bの温度を十分に低下させることができる。
【0075】
また、先端側空気取込孔22dがケース2の左右両側に形成されているので、ケース2の内部に取り込まれる空気の主流の流れは左右方向で、かつ、上方に向かう流れとなる。この実施形態では、ダクト4の左右両側壁を構成している右側壁部42及び左側壁部43が上下方向に延びていて、空気通路Rが左右方向には絞られないようになっているので、先端側空気取込孔22dから取り入れられた空気の主流を空気排出孔21cまでスムーズに導くことができる。
【0076】
また、ダクト形成部材7に傾斜板部7bを設けているので、空気通路Rはその下流側に向かってケース2の長手方向に絞られることになる。ケース2の内部に熱気を空気排出孔21cからスムーズに排出させることができる。
【0077】
使用時に使用者が把持部2bを持ったとき、空気排出孔21cと把持部2bとの間に表示パネル8が位置することになるので、空気排出孔21cを把持部2bから離すことができる。これにより、空気排出孔21cから排出される熱気が使用者に直接的に当たりにくくなるので、使用感が向上する。
【0078】
一方、ペルチェ素子31の第1温度変化部31bの冷熱はカバー部材32に伝達するのでカバー部材32の温度が低下していく。第1温度変化部31bの温度が約20℃になると、冷却準備の完了が表示パネル8に表示される。使用者は、冷却準備が完了したことを確認した後、カバー部材32の下面を、皮膚の穿刺予定箇所に接触させる。これにより、皮膚の穿刺予定箇所を冷却することができるので、その後の穿刺時に痛みを緩和できる。
【0079】
尚、ペルチェ素子31に流す電流の方向を変えることで、ペルチェ素子31の第1温度変化部31bの温度を上昇させることができ、これにより、処置装置1を加温器として使用することができる。この場合、ペルチェ素子31の第2温度変化部31cの温度が低下し、送風機30の動作によって第2温度変化部31cの冷熱を空気排出孔21cからスムーズに排出することができる。
【0080】
(その他の実施形態)
上記実施形態では熱電素子として、ペルチェ素子31を使用しているが、これに限らず、熱電効果を生じる素子であれば使用可能である。
【0081】
また、ダクト40は、別部材からなるダクト形成部材7を有する構成としているが、これに限らず、全体を一体成形したダクトであってもよい。
【0082】
また、処置装置1は生体の皮膚以外の部分を冷却したり、加温する場合にも使用することができる。
【0083】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。