(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-164440(P2017-164440A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】多機能段ボールカッター
(51)【国際特許分類】
B26B 1/08 20060101AFI20170825BHJP
【FI】
B26B1/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-75445(P2016-75445)
(22)【出願日】2016年3月17日
(11)【特許番号】特許第6006450号(P6006450)
(45)【特許公報発行日】2016年10月12日
(71)【出願人】
【識別番号】316002604
【氏名又は名称】片山 玲大
(72)【発明者】
【氏名】片山 玲大
【テーマコード(参考)】
3C061
【Fターム(参考)】
3C061AA10
3C061AA27
3C061AA31
3C061BA07
3C061EE04
(57)【要約】
【課題】箱の面を直線で切断する際、定規やペンで印をつけずに切断することと;面と面が直行する箱の角部を切断する際、角に沿った形状に変形し切断し易くる機構を備え、且つ安全に切断することと;を同時に可能とする。
【解決手段】二枚のガード板からなり且つ0度から180度に展開可能な蝶番型のガード板を備え、ガード板の間にカッター刃を備え、片方のガード板には伸縮可能な入れ子式のアームを有し、アームの先端に設けられたガイドを切断面の縁に沿わせて本体を操作することで、面を定規やペンなどの他の道具を使わずに切断する。また二枚のガード板のなす角を箱の面と面がなす角部に合わせて本体を操作することで、箱の角部を容易且つ安全に切断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁を有する対象物を切断する切断具であって、
二枚の板と前記二枚の板を0度から180度に展開可能に連結する連結部を有する蝶番型のガード部と、
前記連結部の一側に設けられた柄と、
前記連結部の他側に設けられた刃と、
前記二枚の板の一方の板に前記連結部と反対側に延び出るように設けられ、且つ目盛りが付されたアームと、
前記アームの先端に設けられ、前記対象物の縁にガイドされるガイド部とを備える切断具。
【請求項2】
さらに、前記刃を収納するカッターホルダーを有し、前記カッターホルダーが前記柄に対してスライド移動可能に設けられている請求項1に記載の切断具。
【請求項3】
前記アームが入れ子式のアームである請求項1に記載の切断具。
【請求項4】
前記一方の板が透視可能な板である請求項1または3に記載の切断具。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記アームの先端に回転またはスライド可能に取り付けられている請求項1、3または4に記載の切断具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定規や印付けのペンを使用せずに段ボールを所望の大きさに切断することができる多機能段ボールカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のようなL型鋼の先端に刃を備えた切断カッターや特許文献2のような蝶番の間にカッター刃を備えた切開器具は存在したが、その構造上ガイド部は90度を超えて開くことができず、角を切断することのみを意図しているにすぎない。
【0003】
特許文献3のような切り落とし幅を決定する機構は存在するが切断工具の固定機構は複雑で操作が容易ではない。またその構造上、取付板や案内板が嵩張るため使用時に要するスペースの小型化が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3173920号
【特許文献2】実開平5−60473
【特許文献3】特開平9−28948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一旦配達に使われた段ボール箱を再利用することで、別の物の配送にかかるコストを節約できるし、また、資源活用の点からも望ましい。宅配便の配送料は段ボール箱の大きさ(3辺の合計長さ)で定められている。このために、利用者としては、極力小さなサイズになるよう段ボールを切断したいと考える。段ボール箱をサイズダウンするには箱の稜、即ち、面と面とが直交する角をも切断しなければならないが、角に沿って真っ直ぐ切断するのは容易ではない。稜のみならず面についても所定のサイズにするために辺(縁)に平行に切断する必要もある。再利用しようとする段ボール箱を所定の寸法にするとともに切り口を真っ直ぐにするために、定規で目標とする寸法を測ってペン等で印をつけてから定規に沿ってカッター入れるのが普通で、ナイフのみならず比較的長い定規やペンが必要であり、それらを用いた測定・印付けという操作は手間がかかる。さらに、加工の対象が大きければ大きいほど大型の定規を必要とし、またカッター刃の操作が困難であり安全性と操作性について問題がある。そこで、この発明は、段ボール箱の面や角を、定規を使わずに真っ直ぐに、容易且つ安全に切断することのできるカッターを開発する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に従えば、縁を有する対象物を切断する切断具であって、
二枚の板と前記二枚の板を0度から180度に展開可能に連結する連結部を有する蝶番型のガード部と、前記連結部の一側に設けられた柄と、前記連結部の他側に設けられた刃と、前記二枚の板の一方の板に前記連結部と反対側に延び出るように設けられ、且つ目盛りが付されたアームと、前記アームの先端に設けられ、前記対象物の縁にガイドされるガイド部とを備える切断具であることを主特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、ガード部を閉じた状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、ガード部を閉じた状態の平面図である。
【
図3】
図3は、ガード部を90度に開いた状態で箱のコーナー部を切断する際の平面図である。
【
図4】
図4は、ガード部を180度に開いた状態で箱の側面を切断する際の平面図である。
【
図5】
図5は、ガード板及び伸長アームの固定機構の平面図である。
【
図6】
図6は、ガード部を閉じた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の切断具、すなわち、多機能段ボールカッターを、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1に、使用していないとき(収納状態)の多機能段ボールカッターの外観を示す。
図1に示すように、多機能段ボールカッター10は、2枚のガード板b1、b2からなる蝶番型のガード部bと、ガード部bを展開可能に支持する柄部aと、柄部aに組み込まれたカッターホルダーgと、ガード板b1に設けられたガイドcとを有する。
【0010】
図2に示すように、二枚のガード板b1、b2は、柄aの先端(ガード板b1、b2の連結部)に、それぞれ、回転軸x1、x2を介して取りつけられており、それらの回転軸x1、x2を中心として、ガード板b1、b2が蝶番のように展開することができる。
図3にガード板b1、b2が90度に展開した様子を示し、
図4にはガード板b1、b2が180度に展開した様子を示す。二枚のガード板b1、b2の先端と柄aの先端は、
図1に示すように互いにかみ合う歯車のような凹凸を設けて、回転動作が所定の角度、例えば10°毎に行われ、その角度でガード板b1、b2の展開角を保持できるように規制している。
【0011】
図4に示すように、一方のガード板b1の内部には、伸長アームeと伸長アームfが入れ子式に挿入されており、必要に応じてガード板b1から引き出すことができる。ガード板b1、伸長アームe及び伸長アームfのいずれにも長さ方向に渡って目盛りが設けられている。伸長アームfの先端にはガイドcが回転軸x3を中心として回転可能に取りつけられている。伸長アームe及び伸長アームfのいずれもがガード板b1内に収容されている状態では、
図1〜3に示すようにガイドcはガード板b1の先端に位置している。ガード部bを構成する部材はいずれも透明アクリル板のような透明部材から形成されている。
図5のようにアームeはガード板b1内に設置された薄板バネs1とアームeの側面に一定間隔で刻まれた凹部vとの接触によりガード板b1に対して一定間隔毎に固定することができる。またアームfも同様にアームe内の薄板バネs2との接触でアームeひいてはガード板b1に対して一定間隔毎に固定できる。
【0012】
カッターホルダーgについて、
図6、
図7を参照して説明する。カッターホルダーgには、カッター刃dがガード部b側に突出するように取りつけられている。カッターホルダーgは、柄aに設けられたガイド溝iに沿ってスライド移動可能に取りつけられており、このカッターホルダーgのスライド移動によってカッター刃dの突出量を調節することができる。使用者の指でのスライド移動を容易にするために、カッターホルダーgには凹凸(複数の溝)hが形成されている。
【0013】
上記のような構造の段ボールカッター10を使って段ボール箱の角部1と面2を切断する方法を
図3及び4を参照しながら説明する。
【0014】
段ボール箱の角部1を切断する際には、
図3に示すように、段ボールカッター10のガード板b1とガード板b2の開き角が90度になるように展開する。また、ガード板b1の先端のガイドcもガード板b1に対して90度に折り曲げる。安全のため、カッター刃dはこの操作の後にスライドし突出させるのが望ましい。次いで、箱の角部1をなす直交する側面2にガード板b1、b2をぴったり合わせ、角部の上方から下方に向かって箱の角部1と側面2に沿ったまま刃で切り込む。すなわち、ガード板b1、b2と箱の側面2が接触したまま段ボールカッター10を滑らせることで箱の角部1を直線で切断することができる。ガード部bは透明であるので切断中の切り口を視認できる。また、カッター刃は、操作側(柄部側)に露出していないので安全に切断作業を行える。
【0015】
箱の側面を切断する際は、
図4に示すように、ガード板b1、b2の展開角を180度に開き、ガード板b1のガイドcをガード板b1に対して直交するように回転し、切断したい側面2の縁3に引っ掛ける。次いで、側面の切断したい長さをガード板b1の目盛りで測りながら、ガード板b1からアームe及びアームfを適宜伸長させる。この際、カッター刃dはホルダーgを操作してガード部bから後退させておくのが望ましい。
【0016】
切断位置が決まったならば、カッター刃dをガード部bから突出させ、柄部aを箱の側面に押し付けてカッター刃dで切り込みを入れる。次いで、ガイドcを側面2の縁3に沿わせながら柄aを箱の側面上を手前に滑らせる。ガイドcが側面2の縁2に常にガイド(支持)されているので、側面2の縁3に平行に且つガイドcから予定した切断幅で側面2を切断することができる。また、目盛りを見ながら、刃を入れる位置を決定できるので、定規は不要であるし、ペンなどを使って印をつける必要もなくなる。さらに、切断操作中は、カッター刃が露出していないので安全に切断することができる。
【0017】
本発明の切断具を具体例により説明したが、本発明の切断具はそれらの具体例に限定されない。上の具体例ではアームが入れ子式であったが、それに限らず、アームがガイド板に重なるように設けられ、ガイド板に沿ってスライド移動するようなアームであってもよい。また、アームは、面を持たなくとも、スライド移動するための可動部分の骨組みのみ、例えば棒状のものでもよい。また、目盛りは、定規のような目盛りでなくても、所定間隔ごとに取りつけられた突起や切込みなど任意のマークで構わない。また、二枚のガード板の連結部として柄の先端に回転軸を設けて二枚のガード板を展開可能としたが、それに限らず、蝶番を二枚のガード板を接続するように取りつけてもよい。この場合、蝶番は刃と干渉しない位置に取りつけることができる。更に、ガイドは、アームに回転軸を設けたものでなくても、アームに対し垂直方向にスライドして移動するものでもよい。
【符号の説明】
【0018】
a:柄部
b:ガード部
b1、b2:ガード板
c:ガイド
d:刃
e:伸長アーム
f:伸長アーム
g:カッターホルダー
h:凹凸
i:ガイド溝
m:目盛
s:薄板バネ
v:凹部
1:箱の角部
2:箱の側面
3:箱の側面の縁
10:段ボールカッター