特開2017-164664(P2017-164664A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-164664(P2017-164664A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】エアナイフ装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/04 20060101AFI20170825BHJP
   F26B 5/00 20060101ALI20170825BHJP
   F26B 13/24 20060101ALI20170825BHJP
【FI】
   B05B1/04
   F26B5/00
   F26B13/24
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-49643(P2016-49643)
(22)【出願日】2016年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 晃一
【テーマコード(参考)】
3L113
4F033
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB10
3L113AC48
3L113BA35
3L113DA10
4F033BA02
4F033CA05
4F033DA01
4F033EA01
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】鋼帯に付着した液体の除去能力を向上させたエアナイフ装置を提供する。
【解決手段】第1部材1と、エア噴射通路3を介して第1部材1と対向する第2部材2と、を備えるエアナイフ装置10であって、エア噴射通路3に対向する第1部材1の内面及び第2部材2の内面は、それぞれ、エア噴射通路3の中心線Cに平行な平面となっており、第1部材1の外面及び第2部材2の外面には、それぞれ、エア噴射口4を形成する先端部11、21の先端から基端部14、24に向けて、中心線Cに対して対称となるテーパ面112、212が形成されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、エア噴射通路を介して前記第1部材と対向する第2部材と、を備えるエアナイフ装置であって、
前記エア噴射通路に対向する前記第1部材の内面及び前記第2部材の内面は、それぞれ、前記エア噴射通路の中心線に平行な平面となっており、
前記第1部材の外面及び前記第2部材の外面には、それぞれ、エア噴射口を形成する先端部の先端から基端部に向けて、前記中心線に対して対称となるテーパ面が形成されていることを特徴とする、エアナイフ装置。
【請求項2】
前記第1部材の先端部及び前記第2部材の先端部は、それぞれ、前記中心線に対して直交する第1先端面及び第2先端面を有しており、
前記第1先端面と前記第2先端面とは、同一平面上に位置している、請求項1記載のエアナイフ装置。
【請求項3】
前記テーパ面は、前記中心線に対して20〜40度傾斜しており、
前記第1部材と前記第2部材との間の距離は、1.5〜2.5mmとなっている、請求項1又は2に記載のエアナイフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯にエアを吹き付けるエアナイフ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1〜3に示されるように、熱処理によって鋼帯に付着した水等の液体は、水切りロールとスリット状のノズルを有するエアワイパー(エアナイフ装置)との組み合わせによって除去されるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−114536号公報
【特許文献2】特開平11−12772号公報
【特許文献3】特開平7−8883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水切りロールは、鋼帯を両面から挟んで水切りを行うため、ロールが鋼帯に接触し、鋼帯の表面に傷を付ける恐れがある。一方、エアナイフ装置は、鋼帯と非接触であるが、鋼帯に付着した液体の除去能力が十分ではなく、エアナイフ装置のみで鋼帯に付着した液体の除去を行うことは難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、鋼帯に付着した液体の除去能力を向上させたエアナイフ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1部材と、エア噴射通路を介して前記第1部材と対向する第2部材と、を備えるエアナイフ装置であって、
前記エア噴射通路に対向する前記第1部材の内面及び前記第2部材の内面は、それぞれ、前記エア噴射通路の中心線に平行な平面となっており、
前記第1部材の外面及び前記第2部材の外面には、それぞれ、エア噴射口を形成する先端部の先端から基端部に向けて、前記中心線に対して対称となるテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、第1部材の内面及び前記第2部材の内面は、それぞれ、エア噴射通路の中心線に平行な平面となっており、第1部材の外面及び第2部材の外面には、それぞれ、エア噴射通路の中心線に対して対称となるテーパ面が形成されているので、エア噴射通路から噴射されたエア速度の減衰を低減させることができ、エアナイフ装置の水切り性能を向上させることができる。その結果、エアナイフ装置のみで鋼帯の水切りを行うことで、水切りロールを不要とすることができ、水切りロールによって鋼帯の表面に傷を付けることを防止できる。
【0008】
本発明は、更に、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前記第1部材の先端部及び前記第2部材の先端部は、それぞれ、前記中心線に対して直交する第1先端面及び第2先端面を有しており、
前記第1先端面と前記第2先端面とは、同一平面上に位置している。
(2)前記テーパ面は、前記中心線に対して20〜40度傾斜しており、
前記第1部材と前記第2部材との間の距離は、1.5〜2.5mmとなっている。
【0009】
前記構成(1)によれば、第1先端面と第2先端面とが同一平面上に位置しているので、エア噴射口近傍の乱流の発生が抑制され、エア噴射口から噴射されたエア速度の減衰を低減させることができ、エアナイフ装置の水切り性能を向上させることができる。
【0010】
前記構成(2)によれば、テーパ面がエア噴射通路の中心線に対して所定の角度だけ傾斜しているので、エア噴射口から噴射されたエア速度の減衰をより低減させることができ、エアナイフ装置の水切り性能を向上させることができる。また、第1部材と第2部材との間の距離を所定の範囲内とすることで、エア供給設備を増強させることなく、エアの噴射性を維持しながら、エア噴射圧力を所定以上とすることができ、その結果、エア噴射通路から噴射されるエア速度を増加させることができる。そして、エア速度を増加させることで、エアナイフ装置の水切り性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
要するに、本発明によると、鋼帯に付着した液体の除去能力を向上させたエアナイフ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るエアナイフ装置の概略斜視図である。
図2】エアナイフ装置の断面拡大図である。
図3】テーパ面の有無に対する、エアナイフ装置の先端部から鋼板までの距離とエア速度との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るエアナイフ装置10の概略斜視図であり、図2は、エアナイフ装置10の断面拡大図である。図1及び図2に示されるように、エアナイフ装置10は、第1部材1と、エア噴射通路3を介して第1部材1と対向する第2部材2と、を備えている。
【0014】
第1部材1は、鋼板Sにエアを噴射するエア噴射口4を形成する先端部11と、エア噴射通路3と対向する直線部12と、直線部12から折り曲げられて延びる折り曲げ部13と、折り曲げ部13から延び、エア供給管(図示せず)と接続され、エアチャンバ5を形成する基端部14と、を備えている。
【0015】
先端部11は、エア噴射通路3の中心線Cと直交する先端面111と、第1部材1の外面であって、先端部11の先端である先端面111から基端部14に向けて、中心線Cに対して傾斜するテーパ面112と、第1部材1の内面であって、先端面111から基端部14に向けて、中心線Cに平行に延びる先端部内面113と、を備えている。
【0016】
直線部12は、第1部材1の外面であって、テーパ面112から基端部14に向けて、中心線Cに平行に延びる直線部外面121と、先端部内面113から基端部14に向けて、中心線Cに平行に延びる直線部内面122と、を備えている。なお、先端部内面113と直線部内面122とは、同一平面上で連続した平面となっている。
【0017】
第2部材2は、鋼板Sにエアを噴射するエア噴射口4を形成する先端部21と、エア噴射通路3と対向する直線部22と、直線部22から折り曲げられて延びる折り曲げ部23と、折り曲げ部23から延び、エア供給管(図示せず)と接続され、エアチャンバ5を形成する基端部24と、を備えている。なお、折り曲げ部13と折り曲げ部23とは、中心線Cに対して対称となるように、直線部12又は直線部22に対して折り曲げられている。具体的には、折り曲げ部13及び折り曲げ部23は、折り曲げ部13と折り曲げ部23とで形成される空間が基端部14、24に向かって拡がるよう、折り曲げられている。また、基端部14と基端部24とは、中心線Cに対して対称となるように、折り曲げ部13又は折り曲げ部23から、中心線Cに平行に延びている。
【0018】
先端部21は、エア噴射通路3の中心線Cと直交する先端面211と、第2部材2の外面であって、先端部21の先端である先端面211から基端部24に向けて、中心線Cに対して傾斜するテーパ面212と、第2部材2の内面であって、先端面211から基端部24に向けて、中心線Cに平行に延びる先端部内面213と、を備えている。
【0019】
直線部22は、第2部材2の外面であって、テーパ面212から基端部24に向けて、中心線Cに平行に延びる直線部外面221と、先端部内面213から基端部24に向けて、中心線Cに平行に延びる直線部内面222と、を備えている。なお、先端部内面213と直線部内面222とは、同一平面上で連続した平面となっている。
【0020】
先端面111と先端面211とは、同一平面上に位置しており、鋼板Sから等距離の位置に位置するようになっている。また、テーパ面112とテーパ面212とは、中心線Cに対して対称となるよう傾斜している。具体的には、テーパ面112及びテーパ面212は、先端面111及び先端面211から基端部14及び基端部24に向けて、中心線Cとの距離が長くなるように傾斜している。テーパ面112及びテーパ面212の、中心線Cに対する傾斜角度Dは、20〜40度となっている。テーパ面112及びテーパ面212の大きさは、中心線Cに平行な方向に3mm程度、中心線Cに垂直な方向に1.5mm程度である。
【0021】
直線部内面122と直線部内面222との距離は、1.5〜2.5mmであり、直線部内面122と先端部内面113とは同一平面上に位置し、直線部内面222と先端部内面213とは同一平面上に位置するので、先端部内面113と先端部内面213との距離も同様に、1.5〜2.5mmである。すなわち、エア噴射通路3の幅は、1.5〜2.5mmである。なお、直線部12及び直線部22の厚さは、それぞれエア噴射通路3の幅より小さくなっている。
【0022】
前記構成のエアナイフ装置10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0023】
(1)第1部材1の内面である、先端部内面113及び直線部内面122は、エア噴射通路3の中心線Cに平行な平面となっており、第2部材2の内面である、先端部内面213及び直線部内面222は、エア噴射通路3の中心線Cに平行な平面となっている。さらに、第1部材1の外面及び第2部材2の外面には、それぞれ、エア噴射通路3の中心線に対して対称となるテーパ面112及びテーパ面212が形成されているので、エア噴射通路3から噴射されたエア速度の減衰を低減させることができ、エアナイフ装置10の水切り性能を向上させることができる。その結果、エアナイフ装置10のみで鋼帯Sの水切りを行うことで、水切りロールを不要とすることができ、水切りロールによって鋼帯Sの表面に傷を付けることを防止できる。
【0024】
(2)先端面111と先端面211とが同一平面上に位置しているので、エア噴射口4近傍の乱流の発生が抑制され、エア噴射口4から噴射されたエア速度の減衰を低減させることができ、エアナイフ装置10の水切り性能を向上させることができる。
【0025】
(3)テーパ面112及びテーパ面212は、エア噴射通路3の中心線Cに対して20〜40度傾斜するようになっているので、エア噴射口4から噴射されたエア速度の減衰をより低減させることができ、エアナイフ装置10の水切り性能を向上させることができる。
【0026】
なお、テーパ面112、212が設けられず、直線部外面121、221と先端面111、121とで構成される角度が直角である場合、噴射されたエアは、周囲の空気を円滑に巻き込むことができず、乱流が発生しエア速度が減衰してしまう。また、テーパ面112、212の傾斜角度Dが20度以下の場合には、テーパ面112、212と先端面111、121とで構成される角度が直角に近くなり、同様に乱流が発生しエア速度が減衰してしまう。そして、テーパ面112、212の傾斜角度Dが40度を超える場合は、直線部外面121、221とテーパ面112、212とで構成される角度が直角に近づくこととなり、同様に乱流が発生しエア速度が減衰してしまう。また、テーパ面112、212は、直線部12、22の内面に設けられるよりも外面に設けられる方が好ましい。図3は、テーパ面の有無に対する、エアナイフ装置10の先端部11から鋼板Sまでの距離とエア速度との関係を示したグラフである。図3に示されるように、エアの噴射条件が同じとき、テーパ面なしの場合、直線部12、22の内面にテーパ面を設ける場合(内側テーパ面)及び直線部12、22の外面にテーパ面を設ける場合(外側テーパ面)を比較すると、外側テーパ面が、最もエア速度が減速しにくいことがわかる。なお、先端部11から鋼板Sまでの距離が近いほどエア速度が速くなっているが、実際には高速で走行する鋼板Sのばたつきや、鋼板Sの継ぎ目によって鋼板Sの厚さが変動する場合があるので、先端部11から鋼板Sまでの距離は15〜20mmであることが好ましい。実際、図3に示されるように、先端部11から鋼板Sまでの距離が15〜20mmのところで、エア速度の減速に対するテーパ面なし、内側テーパ面、外側テーパ面の違いが特に顕著に現れている。
【0027】
(4)先端部内面113及び直線部内面122と先端部内面213及び直線部内面222との距離が、1.5〜2.5mmとなっている。すなわち、エア噴射通路3の幅を1.5〜2.5mmとすることによって、エア供給設備を増強させることなく、エアの噴射性を維持しながら、エア噴射圧力を所定以上とすることができ、その結果、エア噴射通路3から噴射されるエア速度を増加させることができる。そして、エア速度を増加させることで、エアナイフ装置10の水切り性能を向上させることができる。なお、ここで、エア噴射通路3から噴射されるエア速度は、160m/s以上あることが好ましい。
【0028】
上記実施形態では、直線部12の直線部外面121は、中心線Cに平行に延びているが、中心線Cに対して傾斜していても良い。ただし、テーパ面112の中心線Cに対する傾斜角度より小さい角度で傾斜していることが好ましい。直線部22の直線部外面221についても同様である。なお、直線部外面121及び直線部外面221が、中心線Cに対して傾斜する場合でも、直線部外面121と直線部外面221は、中心線Cに対して対称となるように傾斜することが好ましい。
【0029】
上記実施形態では、折り曲げ部13及び折り曲げ部23が設けられているが、折り曲げ部が設けられず、直線部が直接基端部に接続されても良い。
【0030】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上記実施形態に対して各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明では、鋼帯に付着した液体の除去能力を向上させたエアナイフ装置を提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0032】
1 第1部材
11 先端部
111 先端面 112 テーパ面 113 先端部内面
12 直線部
121 直線部外面 122 直線部内面
13 折り曲げ部 14 基端部
2 第2部材
21 先端部
211 先端面 212 テーパ面 213 先端部内面
22 直線部
221 直線部外面 222 直線部内面
23 折り曲げ部 24 基端部
3 エア噴射通路
4 エア噴射口
5 エアチャンバ
10 エアナイフ装置
C 中心線
S 鋼板
D 傾斜角度
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2017年7月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、エア噴射通路を介して前記第1部材と対向する第2部材と、を備えるエアナイフ装置であって、
前記エア噴射通路に対向する前記第1部材の内面及び前記第2部材の内面は、それぞれ、前記エア噴射通路の中心線に平行な平面となっており、
前記第1部材の外面及び前記第2部材の外面には、それぞれ、エア噴射口を形成する先端部の先端から基端部に向けて、前記中心線に対して対称となるテーパ面が形成され、
前記先端部は、前記エアナイフ装置によってエアが吹き付けられる鋼帯までの距離が15〜20mmの位置に配置されていることを特徴とする、エアナイフ装置。
【請求項2】
前記第1部材の先端部及び前記第2部材の先端部は、それぞれ、前記中心線に対して直交する第1先端面及び第2先端面を有しており、
前記第1先端面と前記第2先端面とは、同一平面上に位置している、請求項1記載のエアナイフ装置。
【請求項3】
前記テーパ面は、前記中心線に対して20〜40度傾斜しており、
前記第1部材と前記第2部材との間の距離は、1.5〜2.5mmとなっている、請求項1又は2に記載のエアナイフ装置。