特開2017-164665(P2017-164665A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-164665(P2017-164665A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】線材清掃具
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/02 20060101AFI20170825BHJP
【FI】
   B08B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-49660(P2016-49660)
(22)【出願日】2016年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 一則
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA07
3B116AB52
3B116BA03
3B116BA08
3B116BA23
3B116BA32
3B116BB03
(57)【要約】
【課題】 簡素構成で線材の表面を拭取可能な線材清掃具を提供する。
【解決手段】 弾性変形可能な弾性材にて構成され、線材1Aが挿入可能な環状のリング材3であって、線材1Aが挿入されたときに内周面が当該線材1Aの外周面に滑り接触するリング材3と、リング材3を保持する保持部材5であって、リング材3が嵌め込まれた凹部5Cを有する第1保持部材5A、及び第1保持部材5Aに組み付けられ、凹部5Cに嵌め込まれたリング材3を当該第1保持部材5Aに押圧するための凸部5Fを有する第2保持部材5Bを備える保持部材5とを設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材の表面を拭き取り清掃するための線材清掃具において、
弾性変形可能な弾性材にて構成され、線材が挿入可能な環状のリング材であって、線材が挿入されたときに内周面が当該線材の外周面に滑り接触するリング材と、
前記リング材を保持する保持部材であって、前記リング材が嵌め込まれた凹部を有する第1保持部材、及び前記第1保持部材に組み付けられ、前記凹部に嵌め込まれた前記リング材を当該第1保持部材に押圧するための凸部を有する第2保持部材を備える保持部材と
を具備することを特徴とする線材清掃具。
【請求項2】
前記凸部による押圧力を調整するための調整部を備えることを特徴とする請求項1に記載の線材清掃具。
【請求項3】
前記保持部材の前面側には、線材が通過可能な貫通穴が設けられたスクレーパ部が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の線材清掃具。
【請求項4】
前記スクレーパ部の前面側には、線材の外周面にオイルを注油する注油器が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の線材清掃具。
【請求項5】
前記リング材は、ニトリルゴム製のOリングであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の線材清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の表面を拭き取り清掃するための線材清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の線材清掃具は、弾性変形可能な円環状体に流体圧を封入して、線材の表面と円環状体の内周面とを確実に接触させて線材の表面を拭き取る線材清掃具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−66180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の線材清掃具は、弾性変形可能な円環状体に流体圧を封入する構成であるので、円環状体に流体圧を維持できる程度の気密性又は液密性を確保可能な構造を必要とする。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、特許文献1に記載の線材清掃具より簡素構成で線材の表面を拭取可能な線材清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願では、弾性変形可能な弾性材にて構成され、線材(1A)が挿入可能な環状のリング材(3)であって、線材(1A)が挿入されたときに内周面が当該線材(1A)の外周面に滑り接触するリング材(3)と、リング材(3)を保持する保持部材(5)であって、リング材(3)が嵌め込まれた凹部(5C)を有する第1保持部材(5A)、及び第1保持部材(5A)に組み付けられ、凹部(5C)に嵌め込まれたリング材(3)を当該第1保持部材(5A)に押圧するための凸部(5F)を有する第2保持部材(5B)を備える保持部材(5)とを具備する。
【0007】
これにより、本願では、凹部(5C)に嵌め込まれたリング材(3)は、第2保持部材(5B)の凸部(5F)により第1保持部材(5A)に押圧され、その押圧力により潰れるように弾性変形する。したがって、リング材(3)と線材(1A)との接触面圧を高めることができるので、簡素構成で線材(1A)の表面を拭き取ることが可能となる。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る線材清掃具1の断面図である。
図2】本発明の第1保持部材5Aの正面図である。
図3】Aは本発明の第2保持部材5Bの正面図である。Bは本発明の第2保持部材5Bの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0012】
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「複数」や「2つ以上」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
(第1実施形態)
1.線材清掃具の構造
本実施形態は、ばね用線材の表面を拭き取り清掃するための線材清掃具1に本発明を適用したものである。線材清掃具1は、図1に示すように、リング材3及び保持部材5等を少なくとも備える。
【0013】
リング材3は、弾性変形可能な弾性材にて構成され部材であって、線材1Aが挿入可能な環状の部材である。そして、線材1Aがリング材3に挿入されたときに、当該リング材3の内周面は当該線材1Aの外周面に滑り接触する。
【0014】
本実施形態に係るリング材3は、ニトリルゴム等のゴム材で構成された「Oリング(JIS B 2401等参照)」である。なお、リング材3は、内周面に線材1Aが滑り接触するので、「固定用のOリング」よりも「運動用のOリング」を用いることが望ましい。
【0015】
保持部材5はリング材3を保持する部材である。当該保持部材5は、第1保持部材5A及び第2保持部材5B等を少なくとも備える。第1保持部材5Aは、図2に示すように、リング材3が嵌め込まれる凹部5Cを有する。
【0016】
凹部5Cは、図1に示すように、第1保持部材5Aのうち第2保持部材5Bと対向する面から反対側に窪んだ窪み部であって、リング材3の外周直径と略同一の穴径を有する円柱状の窪み部である。
【0017】
凹部5Cの底部には、リング材3を係止するための円盤状のフランジ部5Dが設けられている。フランジ部5Dには、線材1Aが貫通可能な貫通穴5E(図2参照)が設けられている。
【0018】
第2保持部材5Bは、図1に示すように、第1保持部材5Aに着脱自在に組み付けられた部材である。当該第2保持部材5Bには、凹部5Cに嵌め込まれたリング材3をフランジ部5Dに押圧するための凸部5Fが設けられている。
【0019】
凸部5Fは、図3Aに示すように、線材1Aが貫通可能な貫通穴5Gを有する円筒状の突起部である。凸部5Fの外周直径は、凹部5Cの穴径と略同一である。第2保持部材5Bのうち凸部5Fと反対側の面には、図3Bに示すように、貫通穴5Gに連なる円錐状のテーパ面5Hが設けられている。
【0020】
第2保持部材5Bは、図1に示すように、六角穴付きボルト5J(以下、ボルト5Jという。)等の機械的締結具により第1保持部材5Aに組み付けられている。本実施形態では、少なくとも2本のボルト5Jにて第1保持部材5Aと第2保持部材5Bとが組み付けられている。
【0021】
2本のボルト5Jの一方は凸部5Fを挟んで一方側に配設され、他方のボルト5Jは凸部5Fを挟んで他方側に配設されている。そして、2本のボルト5Jが締め込まれると、凸部5Fがリング材3を押圧する押圧力が大きくなる。つまり、2本のボルト5Jは、凸部5Fによる押圧力を調整するための調整部として機能する。
【0022】
保持部材5の前面側には、図1に示すように、線材1Aが通過可能な貫通穴7Aが設けられたスクレーパ部7が設けられている。前面側とは、移動する線材1Aの移動方向後退側(図1の紙面右側)をいう。
【0023】
スクレーパ部7のうち、少なくとも貫通穴7Aの内周面を構成する部位は、リング材3と同一又はリング材3より硬質な材料(本実施形態では、ウレタンシート又はフッ素ゴムシート)製である。貫通穴7Aの穴径は、線材1Aの外周面直径と略同一であって、線材1Aの外周面と滑り接触可能な寸法である。
【0024】
なお、本実施形態では、スクレーパ部7のうち保持部材5側には、当該スクレーパ部7を支えるワッシャ7Bが配設されている。ワッシャ7Bは、一対のボルト5J又は第2保持部材5Bに係止されることにより、スクレーパ部7が線材1Aと共に第1保持部材5A側(図1の紙面左側)に移動することを規制する。
【0025】
スクレーパ部7の前面側には、注油器9が設けられている。注油器9は、線材1Aの外周面にオイルを注油する。なお、注油するオイルは、洗油等の粘度の小さいオイルが望ましい。
【0026】
2.線材清掃具の使用方法及びその特徴
図1に示すように、線材清掃具1及びスクレーパ部7に対して線材1Aが移動すると、リング材3の内周面が線材1Aの外周面に滑り接触することにより、線材1Aの表面がリング材3により拭き取られる。
【0027】
このとき、凹部5Cに嵌め込まれたリング材3は、第2保持部材5Bの凸部5Fにより第1保持部材5A(フランジ部5D)に押圧され、その押圧力により潰れるように弾性変形する。したがって、リング材3と線材1Aとの接触面圧を高めることができるので、簡素構成で線材1Aの表面を拭き取ることが可能となる。
【0028】
一対のボルト5Jが締め込まれると、リング材3を押圧する押圧力が大きくなり、リング材3が大きく潰れる。したがって、本実施形態では、リング材3の摩耗が進行してリング材3と線材1Aとの接触面圧が低下した場合であっても、一対のボルト5Jを締め込んで当該接触面圧を復帰させることができる。
【0029】
本実施形態では、保持部3Bの前面側にスクレーパ部7が設けられているので、線材1Aの表面に付着した金属粉等の粉体状の異物をスクレーパ部7にて除去することができる。
【0030】
したがって、リング材3には、粉体状の異物が除去された線材1Aが供給されるので、リング材3の摩耗及び損傷が早期に進行してしまうことを抑制できる。延いては、リング材3の耐久性を向上させることができる。
【0031】
スクレーパ部7の前面側には、オイルを注油する注油器9が設けられているので、線材1Aに固着するように付着している異物の付着状態を緩和することができ得る。したがって、線材1Aに付着した異物を確実にスクレーパ部7にて除去することができ得るので、リング材3の耐久性を向上させることができる。
【0032】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、一対のボルト5Jが第2保持部材5B側から第1保持部材5Aに挿入されていた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一対のボルト5Jが第1保持部材5A側から第2保持部材5Bに挿入された構成であってもよい。
【0033】
上述の実施形態では、スクレーパ部7及び注油器9が設けられていた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、スクレーパ部7及び注油器9のうち少なくとも一方を廃止してもよい。
【0034】
上述の実施形態に係るリング材3は、ニトリルゴム製のOリングであった。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の材質の環状部材であってもよい。
上述の実施形態に係る線材1Aは、円形断面形状であったので、リング材3は円環状に構成されていた。しかし、線材1Aの断面形状が、例えば楕円状である場合には、リング材3も楕円環状とすることが望ましい。
【0035】
上述の実施形態では、一対のボルト5Jにより「凸部5Fによる押圧力を調整するための調整部」が構成されていた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第1保持部材5Aと第2保持部材5Bとを挟み込むクランプにより、当該調整部が構成されていてもよい。
【0036】
上述の実施形態に係る線材1Aは、ばね用線材であった。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の線材にも適用可能である。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1… 線材清掃具 1A… 線材 3… リング材 3B… 保持部
5… 保持部材 5A… 第1保持部材 5C… 凹部
5B… 第2保持部材 5D… フランジ部 5E… 貫通穴
5F… 凸部 5G… 貫通穴 5H… テーパ面 5J… ボルト
7A… 貫通穴 7… スクレーパ部 7B… ワッシャ 9… 注油器
図1
図2
図3