【解決手段】操舵装置(1)は、モータ(13)と、運転者が操舵操作する操舵部材に対してトルク伝達可能に接続された中部ステアリングシャフト(102)と、中部ステアリングシャフト(102)の外周に配置され、モータ(13)によってトルクが印加される第2軸(122)と、第2軸(122)のトルクを中部ステアリングシャフト(102)に伝達する第1の減速機(15)と、第2軸(122)の操舵部材側に配置され、中部ステアリングシャフト(102)と第2軸(122)とを相対回転可能に接続し、かつ、中部ステアリングシャフト(102)と第2軸(77)とのの軸方向に沿った相対移動を規制するスラスト軸受(40)とを備える。
内輪が前記第2軸に緊嵌し、外輪が前記ハウジングに形成された凸部に前記操舵部材側から当接する第2のラジアル軸受を更に備えている請求項1又は2に記載の操舵装置。
前記スラスト軸受は、前記第2軸と前記キャリアとの間に配置され、前記第2軸及び前記筒部材の少なくとも何れか、並びに、前記キャリアに当接する請求項5に記載の操舵装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態に係る操舵装置について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る操舵装置の要部構成の一例を模式的に示す模式図である。
図1に示すように、操舵装置1は、運転者による操舵操作を受け付ける操舵部10、操舵部10が受け付けた操舵操作に応じて車輪400を転舵する転舵部20および制御部(不図示)を備えている。なお、以下に説明する操舵装置1では、モータ(
図1では図示せず)でアシスト力を発揮させる電動パワーステアリングシステム(以下、EPSという)を採用しているが、これは本実施形態を限定するものではなく、(1)操舵部10と転舵部20との間のトルク伝達経路を機械的に接続又は遮断することが可能であり、(2)前記トルク伝達経路が遮断された状態において、操舵部10が受け付けた操舵操作に応じて車輪400の転舵角を電気的に制御するステアバイワイヤ方式を採用してもよい。
【0011】
(操舵部10)
図1に示すように、操舵部10は、操舵部材50、上部ステアリングシャフト101、中部ステアリングシャフト(第1軸)102、ハウジング11、下部ステアリングシャフト103、第1の自在継手106、及び中間シャフト108を備えている。操舵部材50、上部ステアリングシャフト101、中部ステアリングシャフト102、及び下部ステアリングシャフト103は、互いにトルク伝達可能に接続されている。
【0012】
なお、上部ステアリングシャフト101と中部ステアリングシャフト102とは一体的に形成されていてもよいし、トーションバー等を介して互いに連結されていてもよい。本明細書では、上部ステアリングシャフト及び中部ステアリングシャフトを纏めて中部ステアリングシャフトと呼ぶこともある。
【0013】
また、本明細書において「トルク伝達可能に接続」とは、一方の部材の回転に伴い他方の部材の回転が生じるように接続されていることを指し、例えば、一方の部材と他方の部材とが直接的に接続されている場合、及び一方の部材と他方の部材とが第3の部材(例えば継手部材等)を介して間接的に接続されている場合の双方を含む(以下同様)。
【0014】
本実施形態においては、上部ステアリングシャフト101の上端は、操舵部材50に固定され、操舵部材50と一体的に回転する。また、下部ステアリングシャフト103の下端と、中間シャフト108の上端とは、第1の自在継手106を介して互いに連動するように接続されている。
【0015】
なお、本明細書において「上端」とは、運転者の操舵操作に応じた操舵力の伝達経路において上流側の端部(すなわち、入力側の端部)のことを指し、「下端」とは、操舵力の伝達経路において下流側の端部(すなわち、出力側の端部)のことを指す(以下同様)。
【0016】
また、以下の記載における「上流側」及び「下流側」とは、操舵力の伝達経路における上流側及び下流側のことを指すものとする。
【0017】
また、操舵部材50の例として、
図1に示すように、円環状のステアリングホイールを例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、運転者による操舵操作を受け付けることができるものであれば他の形状や機構を有するものであってもよい。
【0018】
(転舵部20)
転舵部20は、操舵部10が受け付けた運転者の操舵操作に応じて、車輪400を転舵させるための構成である。
【0019】
図1に示すように、転舵部20は、第2の自在継手202、ピニオンシャフト204、ピニオンギヤ206、ラックバー(転舵軸)208、タイロッド210、及びナックルアーム212を備えている。中間シャフト108、ピニオンシャフト204、及びピニオンギヤ206は、互いにトルク伝達可能に接続されている。
【0020】
本実施形態では、ピニオンギヤ206は、ピニオンシャフト204の下端に固定され、ピニオンシャフト204と一体的に回転する。また、中間シャフト108の下端とピニオンシャフト204の上端とは、第2の自在継手202を介して互いに連動するように接続されている。
【0021】
ラックバー208は、ピニオンギヤ206の回転に応じて車輪400を転舵させるための構成である。ラックバー208には、ピニオンギヤ206と噛み合うラック歯(不図示)が形成されている。
【0022】
上記のように構成された操舵装置1では、運転者が操舵部材50を介した操舵操作を行うと、ピニオンギヤ206が回転し、ラックバー208は、ラックバー208の軸方向に沿って変位する。これにより、ラックバー208の両端に設けられたタイロッド210、及び、タイロッド210に連結されたナックルアーム212を介して、車輪400が転舵される。
【0023】
なお、
図1に示す例では、ピニオンシャフト204とラックバー208との間の操舵力の伝達をピニオンギヤ206及びラック歯によって行う構成を例に挙げたが、この構成は本実施形態を限定するものではなく、ピニオンシャフト204とラックバー208との間の操舵力を伝達できる構成であれば、他の構成であってもよい。
【0024】
続いて、上述したハウジング11の内部構成について、
図2を参照して説明する。
【0025】
(ハウジング11の内部構成)
図2は、
図1に示したハウジング11の内部構成の一例を概略的に示す断面図である。
【0026】
図2に示すように、ハウジング11には、中部ステアリングシャフト(第1軸)102の一部が収容されている。ハウジング11は、第1のハウジング151及び第2のハウジング152を備えた構成である。第1のハウジング151側には、第1の減速機(伝達部)15が収容されている。一方、第2のハウジング152側には、第2の減速機16が収容されている。また、第2のハウジング152の下流側には、エンドカバー153が取り付けられている。さらに、ハウジング11の外側には、モータ13が設けられている。以下では、第1のハウジング151側の内部構成と、第2のハウジング152側の内部構成とに分けて具体的に説明する。
【0027】
(第1のハウジング151側の内部構成)
第1のハウジング151側には、中部ステアリングシャフト102の一部、第2軸122、第1の減速機15、スラスト軸受40、及び第1のラジアル軸受41が収容されている。
【0028】
中部ステアリングシャフト102は、運転者が操舵操作する操舵部材50(
図1参照)に対してトルク伝達可能に接続に接続されている。第1の減速機15は、第2軸122の回転を減速したうえで、中部ステアリングシャフト102にトルクを伝達する構成である。第2軸122は筒状の部材であり、当該第2軸122内を中部ステアリングシャフト102が貫通している。すなわち、第2軸122は中部ステアリングシャフト102の外周に配置されている。
【0029】
第1の減速機15は、太陽ローラ(筒部材)71、複数の遊星ローラ(遊星部材)73、第1のリング部材74、第2のリング部材75、及びキャリア77を備えている。
【0030】
太陽ローラ71は、第2軸122の外周に配置されている。なお、本実施形態では、太陽ローラ71は、第2軸122に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、太陽ローラ71は他の方法によって第2軸122に固定されていてもよい。
【0031】
複数の遊星ローラ73は、太陽ローラ71の外周に配置されており、太陽ローラ71の外周面に対して加圧接触されている。
【0032】
キャリア77は、中部ステアリングシャフト102の外周に配置されている。キャリア77は、複数の遊星ローラ73のそれぞれを、キャリア77に接続された軸(不図示)を介して回転自在に支持している。なお、本実施形態では、キャリア77は、中部ステアリングシャフト102に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、キャリア77は他の方法によって中部ステアリングシャフト102に固定されていてもよい。このような構成によって、各々の遊星ローラ73は、キャリア77に接続する軸を中心とした回転(自転)及び太陽ローラ71の外周に沿った移動(公転)の2種類の運動が可能になっている。
【0033】
遊星ローラ73よりも外方側には、遊星ローラ73に対して上流及び下流方向に、第1のリング部材74及び第2のリング部材75が備えられている。第1のリング部材74及び第2のリング部材75はそれぞれ第1のハウジング151に対して固定されている。第1のリング部材74は、遊星ローラ73対し、上流側から当接している。第2のリング部材75は、遊星ローラ73に対し、下流側から当接している。なお、第1のリング部材74又は第2のリング部材75と、遊星ローラ73との間の接触は点接触であることが好ましいが、線接触又は面接触であってもよい。
【0034】
第1のリング部材74及び第2のリング部材75のそれぞれが遊星ローラ73に対して当接することで、遊星ローラ73は太陽ローラ71側に押し付けられる。上記の例では、太陽ローラ71と各々の遊星ローラ73との間で生じる摩擦によって動力を伝達する構成である。ここで、本明細書において「摩擦によって動力を伝達する」とは、フリクションドライブ方式またはトラクションドライブ方式によって動力を伝達することをいう。また、「フリクションドライブ方式」とは、2つの、圧接され、直接接触しているローラ間の摩擦力によって、駆動ローラから従動ローラへと動力を伝達する方法である。また、「トラクションドライブ方式」とは、2つの圧接されたローラ間に介在する潤滑油膜を介した摩擦力によって動力を伝達する方法である。
【0035】
ただし、本実施形態は上記の例に限定されるものではなく、太陽ローラ71、複数の遊星ローラ73、並びに、第1のリング部材74及び第2のリング部材75に代えて、第1の減速機15が、太陽ギヤ、太陽ギヤに噛み合う複数の遊星ギヤ、並びに、遊星ギヤに噛み合う内歯ギヤを備える構成としてもよい。
【0036】
スラスト軸受40は、第2軸122の上流側に配置されている。スラスト軸受40は、ハウジング11内において軸方向に働くスラスト力を受ける軸受であり、第1の軌道板401と、第2の軌道板402と、第1の軌道板401と第2の軌道板402との間に配置された複数の転動体403とを備えている。なお、本実施形態では、転動体は、ボール、ころ等を指すものとする(以下同様)。
【0037】
図2に示す例では、第1の軌道板401はキャリア77に下流側から当接し、第2の軌道板402は、第2軸122及び太陽ローラ71に上流側から当接している。なお、第2の軌道板402は、第2軸122及び太陽ローラ71の何れか一方に当接する構成としてもよい。また、第1の軌道板401をキャリア77に固定又は嵌合する構成としてもよいし、第2の軌道板402を第2軸122及び太陽ローラ71の何れか又は双方に固定又は嵌合する構成としてもよい。
【0038】
本実施形態において、スラスト軸受40は、中部ステアリングシャフト102と第2軸122とを相対回転可能に接続している。また、スラスト軸受40は、中部ステアリングシャフト102と第2軸122との軸方向に沿った相対移動を規制している。より具体的には、スラスト軸受40によって、中部ステアリングシャフト102の、第2軸122に対する下流側への相対移動、換言すれば、第2軸122の、中部ステアリングシャフト102に対する上流側への相対移動が規制される。
【0039】
第1のラジアル軸受41は、第1のハウジング151の操舵部材50(
図1参照)側において、中部ステアリングシャフト102の外周に配置されている。第1のラジアル軸受41は、内輪411と、外輪412と、内輪411と外輪412との間に配置された複数の転動体413とを備えている。なお、本実施形態では、第1のラジアル軸受41の内輪411は、中部ステアリングシャフト102に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、第1のラジアル軸受41は、他の方法によって中部ステアリングシャフト102に固定されていてもよい。一方で、外輪412は、第1のハウジング151に形成された凸部181に下流側から当接している。
【0040】
続いて、第2のハウジング152側の内部構成について説明する。
【0041】
(第2のハウジング152側の内部構成)
第2のハウジング152側には、中部ステアリングシャフト102の一部、第2軸122の一部、第2のラジアル軸受42、動力伝達シャフト14、及び第2の減速機16が収容されている。
【0042】
第2のラジアル軸受42は、内輪421と、外輪422と、内輪421と外輪422との間に配置された転動体423とを備えている。なお、本実施形態では、第2のラジアル軸受42は、内輪421が第2軸122に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、第2のラジアル軸受42は他の方法によって第2軸122に固定されていてもよい。一方で、外輪422は、第2のハウジング152に形成された凸部182に上流側から当接している。
【0043】
第2の減速機16は、第2軸122の外周に配置されている。本実施形態において、第2の減速機16は、ベルト81、駆動プーリ85、及び従動プーリ86を備えたベルト減速機として構成されている。駆動プーリ85は、モータ13によって回転駆動される動力伝達シャフト14に固定され、動力伝達シャフト14と一体回転する。モータ13が発生させたトルクは、動力伝達シャフト14、ベルト81及び従動プーリ86を介して第2軸122に伝達される。ただし、本実施形態に係る第2の減速機16はこれに限定されるものではない。第2の減速機16は、例えば、ウォームホイールを用いたウォームギヤ機構として構成され、モータによって発生されたトルクがウォームギヤ及びウォームホイールを介して第2軸122に伝達される構成としてもよい。
【0044】
第2のハウジング152の下端側には、エンドカバー153が取り付けられている。エンドカバー153側には、第3のラジアル軸受43が備えられている。第3のラジアル軸受43は、内輪431と、外輪432と、内輪431と外輪432との間に配置された複数の転動体434とを備えている。本実施形態では、第3のラジアル軸受43は、エンドカバー153の内側に圧入されることによって緊嵌されている。また、第3のラジアル軸受43の外輪432は、エンドカバー153の凸部183に上流側から当接している。なお、第3のラジアル軸受43は、他の方法によってエンドカバー153に固定されていてもよい。
【0045】
上記の構成によれば、第2の減速機16によって生じた荷重は、スラスト軸受40によって受けることができる。そのため本実施形態によれば、第2の減速機16によって生じた荷重を、新たなスペースを要することなく受けることができる。そのため、ハウジング11の軸方向の全長を短縮化することで、操舵装置1(
図1参照)全体の小型化を実現することができる。
なお、上記の説明では、第2軸122に第2の減速機16が固定され、モータ13のトルクが第2の減速機16を介して第2軸122に伝達される構成を例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、第2軸122は、モータ13の出力軸自体であってもよい。
【0046】
〔実施形態2〕
本実施形態における操舵装置が備えるハウジングについて、
図3を参照して説明する。なお、本明細書において既に説明した部材には同じ参照符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0047】
図3は、本実施形態に係るハウジングの内部構成例を模式的に示す断面図である。本実施形態に係るハウジングは、上述した実施形態1に係るハウジング11(
図2参照)に代えて、ハウジング31を備える構成である。以下では本実施形態に係るハウジング31について、実施形態1に係るハウジング11と異なる点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態に係るハウジング31は、第1のハウジング161のみを備える構成である。第1のハウジング161には、中部ステアリングシャフト132の一部、第1のラジアル軸受51、第2のラジアル軸受52、第2軸122、第1の減速機15、スラスト軸受40、第2の減速機16、ベアリング支持体301、及びサークリップ302が収容されている。なお、中部ステアリングシャフト132はその形状が
図2で示した中部ステアリングシャフト102(
図2参照)と異なっているので、中部ステアリングシャフト102とは異なる番号を付している。しかしながら、中部ステアリングシャフト132の基本的構造は、中部ステアリングシャフト102と共通する。
【0049】
なお、本実施形態に係るスラスト軸受40の備える第1の軌道板401は、キャリア77に当接する構成としてもよいし、キャリア77を介さずに中部ステアリングシャフト132に直接当接する構成としてもよい。
【0050】
また、スラスト軸受40の備える第2の軌道板402は、実施形態1と同様に第2軸122及び太陽ローラ71の何れか一方に当接する構成としてもよいし、双方に当接する構成としてもよい。
【0051】
第1のラジアル軸受51は、第1のハウジング161の操舵部材(不図示)側において、中部ステアリングシャフト132の外周に配置されている。なお、本実施形態では、第1のラジアル軸受51の内輪511は、中部ステアリングシャフト132に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、第1のラジアル軸受51は、他の方法によって中部ステアリングシャフト132に固定されていてもよい。一方で、外輪512は、第1のハウジング161に形成された凸部191に下流側から当接している。
【0052】
ベアリング支持体301は、第2軸122の外周に配置されている。なお、本実施形態では、ベアリング支持体301は、第2軸122に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、ベアリング支持体301は他の方法によって第2軸122に固定されていてもよい。
【0053】
第2のラジアル軸受52は、ベアリング支持体301の外周に配置されている。なお、本実施形態では、第2のラジアル軸受52の内輪521は、ベアリング支持体301に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、第2のラジアル軸受52は他の方法によってベアリング支持体301に固定されていてもよい。
【0054】
サークリップ302は、ハウジング31に固定されており、サークリップ302には、上流側から第2のラジアル軸受52の外輪522が当接している。サークリップ302が備えられていることによって、第2のラジアル軸受52及び第2の減速機16が下流側に移動することを規制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1の減速機15と第2の減速機16とは同一のハウジング161内に収納されている。そのため、第1の減速機15と第2の減速機16とが異なるハウジングに収容される構成と比較して、減速機同士の軸のズレを軽減することができる。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。