特開 2017-165329 操舵装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】特開2017-165329(P2017-165329A)

(43)【公開日】2017年9月21日

(54)【発明の名称】操舵装置

(51)【国際特許分類】

   B62D 5/04 20060101AFI20170825BHJP

   F16H 37/06 20060101ALI20170825BHJP

   F16H 13/08 20060101ALI20170825BHJP

【ＦＩ】

   B62D5/04

   F16H37/06 D

   F16H13/08 D

【審査請求】未請求

【請求項の数】6

【出願形態】ＯＬ

【全頁数】13

(21)【出願番号】特願2016-54207(P2016-54207)

(22)【出願日】2016年3月17日

(71)【出願人】

【識別番号】000146010

【氏名又は名称】株式会社ショーワ

(74)【代理人】

【識別番号】110000338

【氏名又は名称】特許業務法人ＨＡＲＡＫＥＮＺＯ ＷＯＲＬＤ ＰＡＴＥＮＴ ＆ ＴＲＡＤＥＭＡＲＫ

(72)【発明者】

【氏名】小塩 崇史

(72)【発明者】

【氏名】内堀 洋俊

【テーマコード（参考）】

3D333

3J051

3J062

【Ｆターム（参考）】

3D333CB02

3D333CB13

3D333CC16

3D333CC18

3D333CD05

3D333CD14

3D333CD16

3D333CD21

3D333CD23

3D333CE04

3D333CE05

3D333CE06

3J051AA01

3J051BA03

3J051BB08

3J051BC02

3J051BD02

3J051BE03

3J051BE06

3J051CA03

3J051EC01

3J051EC10

3J051FA02

3J062AA07

3J062AB06

3J062AB12

3J062AB16

3J062AC01

3J062BA12

3J062CA06

3J062CA12

3J062CA35

3J062CG03

3J062CG83

3J062CG84

(57)【要約】

【課題】減速機によって生じる荷重を受けるための新たなスペースが不要な操舵装置を実現する。
【解決手段】操舵装置（１）は、モータ（１３）と、運転者が操舵操作する操舵部材に対してトルク伝達可能に接続された中部ステアリングシャフト（１０２）と、中部ステアリングシャフト（１０２）の外周に配置され、モータ（１３）によってトルクが印加される第２軸（１２２）と、第２軸（１２２）のトルクを中部ステアリングシャフト（１０２）に伝達する第１の減速機（１５）と、第２軸（１２２）及び第１の減速機（１５）を収容するハウジング（１１）と、第２軸（１２）を支持する支持用ラジアル軸受（４２）と、支持用ラジアル軸受（４２）をハウジング（１１）に固定するボルト（６５）を備えている。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

モータと、
運転者が操舵操作する操舵部材に対してトルク伝達可能に接続された第１軸と、
前記第１軸の外周に配置され、前記モータによってトルクが印加される第２軸と、
前記第２軸のトルクを前記第１軸に伝達する伝達部と、
前記第２軸及び前記伝達部を収容するハウジングと、
前記第２軸を支持するラジアル軸受と、
前記ラジアル軸受を前記ハウジングに固定する固定用部材と
を備えていることを特徴とする操舵装置。

【請求項2】

前記ラジアル軸受の外輪には鍔部が形成されており、
前記固定用部材は、前記鍔部を固定することにより前記ラジアル軸受を前記ハウジングに固定する請求項１に記載の操舵装置。

【請求項3】

前記鍔部は、前記ハウジングに形成された凹部に嵌合する請求項２に記載の操舵装置。

【請求項4】

前記鍔部には、固定用貫通孔が形成されており、
前記固定用部材は、前記固定用貫通孔に貫入することによって前記ラジアル軸受を前記ハウジングに固定する請求項２又は３に記載の操舵装置。

【請求項5】

前記第２軸の外周には、前記モータからのトルクを当該第２軸に伝達するための伝達用部材が固定されており、
前記伝達用部材には、前記固定用部材に接触しないよう肉抜き部が形成されている請求項１から４の何れか１項に記載の操舵装置。

【請求項6】

前記固定用部材はボルトであり、
前記伝達用部材には、前記ボルトを締結するための工具が貫通する貫通孔が形成されている請求項１から５の何れか１項に記載の操舵装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、操舵装置に関する。

【背景技術】

【0002】

電動パワーステアリングシステムやステアバイワイヤ方式を採用した操舵装置において、モータの出力を操舵軸に伝達するための減速機構を用いた車両の操舵装置が知られている（特許文献１）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２００７−１１２３９７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

減速機構を用いた操舵装置では、減速機構によって操舵装置の軸方向に荷重が発生することがある。そのため、当該荷重を受ける構造が必要である。

【0005】

ところで、上述のような減速機構を用いた操舵装置であっても小型であることが好ましい。

【0006】

本発明は、減速機構を用いた操舵装置において、小型化を図ることのできる操舵装置を実現することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

かかる目的のもと、本発明は、モータと、運転者が操舵操作する操舵部材に対してトルク伝達可能に接続された第１軸と、前記第１軸の外周に配置され、前記モータによってトルクが印加される第２軸と、前記第２軸のトルクを前記第１軸に伝達する伝達部と、前記第２軸及び前記伝達部を収容するハウジングと、前記第２軸を支持するラジアル軸受と、前記ラジアル軸受を前記ハウジングに固定する固定用部材とを備えている操舵装置である。

【発明の効果】

【0008】

本発明によれば、操舵装置の小型化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】本発明の実施形態１に係る操舵装置の要部構成の一例を模式的に示す模式図である。

【図2】図１に示したハウジングの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。

【図3】図２に示した支持用ラジアル軸受の周辺の拡大図である。

【図4】本発明の実施形態２に係るハウジングの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。

【図5】図４に示した支持用ラジアル軸受の周辺の拡大図である。

【図6】本発明の実施形態３に係る、ボルトで固定された支持用ラジアル軸受の周辺の構成を模式的に示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

〔実施形態１〕
本発明の実施形態に係る操舵装置について、図１を参照して説明する。図１は、本発明の実施形態に係る操舵装置の要部構成の一例を模式的に示す模式図である。図１に示すように、操舵装置１は、運転者による操舵操作を受け付ける操舵部１０、操舵部１０が受け付けた操舵操作に応じて車輪４００を転舵する転舵部２０、及び制御部（不図示）を備えている。なお、以下に説明する操舵装置１では、モータ（図１では不図示）でアシスト力を発揮させる電動パワーステアリングシステム（以下、ＥＰＳという）を採用しているが、これは本実施形態を限定するものではなく、（１）操舵部１０と転舵部２０との間のトルク伝達経路を機械的に接続又は遮断することが可能であり、（２）前記トルク伝達経路が遮断された状態において、操舵部１０が受け付けた操舵操作に応じて車輪４００の転舵角を電気的に制御するステアバイワイヤ方式を採用してもよい。

【0011】

（操舵部１０）
図１に示すように、操舵部１０は、操舵部材５０、上部ステアリングシャフト１０１、中部ステアリングシャフト（第１軸）１０２、ハウジング１１、下部ステアリングシャフト１０３、第１の自在継手１０６、及び中間シャフト１０８を備えている。操舵部材５０、上部ステアリングシャフト１０１、中部ステアリングシャフト１０２、及び下部ステアリングシャフト１０３は、互いにトルク伝達可能に接続されている。

【0012】

なお、上部ステアリングシャフト１０１と中部ステアリングシャフト１０２とは一体的に形成されていてもよいし、トーションバー等を介して互いに連結されていてもよい。本明細書では、上部ステアリングシャフト及び中部ステアリングシャフトを纏めて中部ステアリングシャフトと呼ぶこともある。

【0013】

また、本明細書において「トルク伝達可能に接続」とは、一方の部材の回転に伴い他方の部材の回転が生じるように接続されていることを指し、例えば、一方の部材と他方の部材とが直接的に接続されている場合、及び一方の部材と他方の部材とが第３の部材（例えば継手部材等）を介して間接的に接続されている場合の双方を含む（以下同様）。

【0014】

本実施形態においては、上部ステアリングシャフト１０１の上端は、操舵部材５０に固定され、操舵部材５０と一体的に回転する。また、下部ステアリングシャフト１０３の下端と、中間シャフト１０８の上端とは、第１の自在継手１０６を介して互いに連動するように接続されている。

【0015】

なお、本明細書において「上端」とは、運転者の操舵操作に応じた操舵力の伝達経路において上流側の端部（すなわち、入力側の端部）のことを指し、「下端」とは、操舵力の伝達経路において下流側の端部（すなわち、出力側の端部）のことを指す（以下同様）。

【0016】

また、以下の記載における「上流側」及び「下流側」とは、操舵力の伝達経路における上流側及び下流側のことを指すものとする。

【0017】

また、操舵部材５０の例として、図１に示すように、円環状のステアリングホイールを例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、運転者による操舵操作を受け付けることができるものであれば他の形状や機構を有するものであってもよい。

【0018】

（転舵部２０）
転舵部２０は、操舵部１０が受け付けた運転者の操舵操作に応じて、車輪４００を転舵させるための構成である。

【0019】

図１に示すように、転舵部２０は、第２の自在継手２０２、ピニオンシャフト２０４、ピニオンギヤ２０６、ラックバー（転舵軸）２０８、タイロッド２１０、及びナックルアーム２１２を備えている。中間シャフト１０８、ピニオンシャフト２０４、及びピニオンギヤ２０６は、互いにトルク伝達可能に接続されている。

【0020】

本実施形態では、ピニオンギヤ２０６は、ピニオンシャフト２０４の下端に固定され、ピニオンシャフト２０４と一体的に回転する。また、中間シャフト１０８の下端とピニオンシャフト２０４の上端とは、第２の自在継手２０２を介して互いに連動するように接続されている。

【0021】

ラックバー２０８は、ピニオンギヤ２０６の回転に応じて車輪４００を転舵させるための構成である。ラックバー２０８には、ピニオンギヤ２０６と噛み合うラック歯（不図示）が形成されている。

【0022】

上記のように構成された操舵装置１では、運転者が操舵部材５０を介した操舵操作を行うと、ピニオンギヤ２０６が回転し、ラックバー２０８は、ラックバー２０８の軸方向に沿って変位する。これにより、ラックバー２０８の両端に設けられたタイロッド２１０、及び、タイロッド２１０に連結されたナックルアーム２１２を介して、車輪４００が転舵される。

【0023】

なお、図１に示す例では、ピニオンシャフト２０４とラックバー２０８との間の操舵力の伝達をピニオンギヤ２０６及びラック歯によって行う構成を例に挙げたが、この構成は本実施形態を限定するものではなく、ピニオンシャフト２０４とラックバー２０８との間の操舵力を伝達できる構成であれば、他の構成であってもよい。

【0024】

続いて、上述したハウジング１１の内部構成について、図２を参照して説明する。

【0025】

（ハウジング１１の内部構成）
図２は、図１に示したハウジング１１の内部構成の一例を概略的に示す断面図である。

【0026】

図２に示すように、ハウジング１１には、中部ステアリングシャフト（第１軸）１０２の一部が収容されている。ハウジング１１は、第１のハウジング１５１及び第２のハウジング１５２を備えた構成である。第１のハウジング１５１側には、第１の減速機（伝達部）１５が収容されている。一方、第２のハウジング１５２側には、第２の減速機１６が収容されている。また、第２のハウジング１５２の下流側には、エンドカバー１５３が取り付けられている。さらに、ハウジング１１の外側には、モータ１３が設けられている。以下では、第１のハウジング１５１側の内部構成と、第２のハウジング１５２側の内部構成とに分けて具体的に説明する。

【0027】

（第１のハウジング１５１側の内部構成）
第１のハウジング１５１側には、中部ステアリングシャフト１０２の一部、第２軸１２２の一部、第１のラジアル軸受４１、及び第１の減速機１５が収容されている。

【0028】

中部ステアリングシャフト１０２は、運転者が操舵操作する操舵部材５０（図１参照）に対してトルク伝達可能に接続に接続されている。第１の減速機１５は、第２軸１２２の回転を減速したうえで、中部ステアリングシャフト１０２にトルクを伝達する構成である。第２軸１２２は筒状の部材であり、当該第２軸１２２内を中部ステアリングシャフト１０２が貫通している。すなわち、第２軸１２２は中部ステアリングシャフト１０２の外周に配置されている。

【0029】

第１の減速機１５は、太陽ローラ（筒部材）７１、複数の遊星ローラ（遊星部材）７３、第１のリング部材７４、第２のリング部材７５、及びキャリア７７を備えている。

【0030】

太陽ローラ７１は、第２軸１２２の外周に配置されている。なお、本実施形態では、太陽ローラ７１は、第２軸１２２に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、太陽ローラ７１は他の方法によって第２軸１２２に固定されていてもよい。

【0031】

複数の遊星ローラ７３は、太陽ローラ７１の外周に配置されており、太陽ローラ７１の外周面に対して加圧接触されている。

【0032】

キャリア７７は、中部ステアリングシャフト１０２の外周に配置されている。キャリア７７は、複数の遊星ローラ７３のそれぞれを、キャリア７７に接続された軸（不図示）を介して回転自在に支持している。なお、本実施形態では、キャリア７７は、中部ステアリングシャフト１０２に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、キャリア７７は他の方法によって中部ステアリングシャフト１０２に固定されていてもよい。このような構成によって、各々の遊星ローラ７３は、キャリア７７に接続する軸を中心とした回転（自転）及び太陽ローラ７１の外周に沿った移動（公転）の２種類の運動が可能になっている。

【0033】

遊星ローラ７３よりも外方側には、遊星ローラ７３に対して上流及び下流方向に、第１のリング部材７４及び第２のリング部材７５が備えられている。第１のリング部材７４及び第２のリング部材７５はそれぞれ第１のハウジング１５１に対して固定されている。第１のリング部材７４は、遊星ローラ７３対し、上流側から当接している。第２のリング部材７５は、遊星ローラ７３に対し、下流側から当接している。なお、第１のリング部材７４又は第２のリング部材と、遊星ローラ７３との間の接触は点接触であることが好ましいが、線接触又は面接触であってもよい。

【0034】

第１のリング部材７４及び第２のリング部材７５のそれぞれが遊星ローラ７３に対して当接することで、遊星ローラ７３は太陽ローラ７１側に押し付けられる。上記の例では、太陽ローラ７１と各々の遊星ローラ７３との間で生じる摩擦によって動力を伝達する構成となっている。ここで、本明細書において「摩擦によって動力を伝達する」とは、フリクションドライブ方式またはトラクションドライブ方式によって動力を伝達することをいう。また、「フリクションドライブ方式」とは、２つの、圧接され、直接接触しているローラ間の摩擦力によって、駆動ローラから従動ローラへと動力を伝達する方法である。また、「トラクションドライブ方式」とは、２つの圧接されたローラ間に介在する潤滑油膜を介した摩擦力によって動力を伝達する方法である。

【0035】

ただし、本実施形態は上記の例に限定されるものではなく、太陽ローラ７１、複数の遊星ローラ７３、並びに、第１のリング部材７４及び第２のリング部材７５に代えて、第１の減速機１５が、太陽ギヤ、太陽ギヤに噛み合う複数の遊星ギヤ、並びに、遊星ギヤに噛み合う内歯ギヤを備える構成としてもよい。

【0036】

第１のラジアル軸受４１は、第１のハウジング１５１の上流側において、中部ステアリングシャフト１０２の外周に配置されている。第１のラジアル軸受４１は、内輪４１１と、外輪４１２と、内輪４１１と外輪４１２との間に配置された複数の転動体４１３とを備えている。なお、本実施形態において、転動体とは、例えばボール、ころ等を指すものとする（以下同様）。なお、本実施形態では、第１のラジアル軸受４１は、内輪４１１が中部ステアリングシャフト１０２に圧入されることによって緊嵌されている。一方で、外輪４１２は、第１のハウジング１５１に形成された凸部１７０に対して下流側から当接している。しかしながらこの構成は本実施形態を限定するものではなく、第１のラジアル軸受４１は、他の方法によって中部ステアリングシャフト１０２に固定されていてもよい。

【0037】

続いて、第２のハウジング１５２側の内部構成について、さらに図３を加えて説明する。

【0038】

（第２のハウジング１５２側の内部構成）
図２に示すように、第２のハウジング１５２側には、中部ステアリングシャフト１０２の一部、第２軸１２２の一部、支持用ラジアル軸受（ラジアル軸受）４２、動力伝達シャフト、及び第２の減速機１６が収容されている。図３は、図２に示した支持用ラジアル軸受４２の周辺の拡大図である。

【0039】

支持用ラジアル軸受４２は、第２軸１２２を支持するラジアル軸受である。本実施形態では、支持用ラジアル軸受４２は第２軸１２２の外周に配置されている。支持用ラジアル軸受４２は、内輪４２１と、外輪４２２と、内輪４２１と外輪４２２との間に配置された複数の転動体４２３とを備えている。また、外輪４２２には、外輪４２２の一部が外周側へと平面状に拡がることで鍔部４２４が形成されている。鍔部４２４には、ボルト６５（固定用部材）が貫通する貫通孔１７４（固定用貫通孔）が形成されている。鍔部４２４は、第２のハウジング１５２に形成された凹部１５５に対して、下流側から当接するように構成されている。支持用ラジアル軸受４２は、鍔部４２４が凹部１５５に嵌合した状態で、鍔部４２４の貫通孔１７４に貫入されたボルト６５によって、第２のハウジング１５２に対して固定されている。

【0040】

第２の減速機１６は、中部ステアリングシャフト１０２の外周に配置されている。本実施形態において、第２の減速機１６は、ベルト８１、駆動プーリ８５、及び従動プーリ８６を備えたベルト減速機として構成されている。駆動プーリ８５は、モータ１３によって回転駆動される動力伝達シャフト１４に固定され、動力伝達シャフト１４と一体回転する。モータ１３が発生させたトルクは、動力伝達シャフト１４、ベルト８１及び従動プーリ８６を介して第２軸１２２に伝達される。ただし、本実施形態に係る第２の減速機１６は、これに限定されるものではない。したがって、第２の減速機１６は、例えば、ウォームホイールを用いたウォームギア機構として構成され、モータ１３によって発生されたトルクがウォームギヤ及びウォームホイールを介して第２軸１２２に伝達される構成としてもよい。

【0041】

本実施形態では、従動プーリ８６の内方に対して肉抜き加工が施されることで、従動プーリ８６には肉抜き部８７が形成されている。肉抜き部８７は、従動プーリ８６に対してボルト６５が接触しないように形成されている。

【0042】

また、肉抜き部８７には、ボルト６５を締結するための工具６７（図中、仮想線で示す）が貫通するボルト貫通孔６９が形成されている。なお、本実施形態において、詳しくは後述するが、工具６７はボルト６５の締結のためだけに用いられ、締結後に工具６７がハウジング１５２の内部に残ることはない。

【0043】

なお、本実施形態では、第２の減速機１６をベルト減速機としているため、従動プーリ８６に肉抜き部８７が形成された構成としているが、これに限定されず、例えば第２の減速機１６がウォームギア機構の場合には、ウォームホイールに肉抜き部が形成されていてもよい。

【0044】

また、従動プーリ８６は、第２軸１２２に圧入されることによって緊嵌されているが、これは本実施形態を限定するものではなく、従動プーリ８６は他の方法によって第２軸１２２に固定されていてもよい。

【0045】

第２のハウジング１５２の下流側には、エンドカバー１５３が取り付けられている。エンドカバー１５３の下流側には、第２のラジアル軸受４３が備えられている。第２のラジアル軸受４３は、内輪４３１と、外輪４３２と、内輪４３１と外輪４３２との間に配置された複数の転動体４３４とを備えている。本実施形態では、第２のラジアル軸受４３は、外輪４３２がエンドカバー１５３の内側に圧入されることによって緊嵌されている。また、第２のラジアル軸受４３の外輪４３２は、エンドカバー１５３に形成された凸部１５６に対して上流側から当接している。しかし、この構成は本実施形態を限定するものではなく、第２のラジアル軸受４３は他の方法によって固定されていてもよい。

【0046】

上記の構成によれば、第２の減速機１６によって生じた荷重は、第２のハウジング１５２に固定された支持用ラジアル軸受４２によって受けることができる。そのため本実施形態によれば、第２の減速機１６によって生じた荷重を、新たなスペースを要することなく受けることができる。そのため、ハウジング１１の軸方向の全長を短縮化することで、操舵装置１（図１参照）全体の小型化を実現することができる。

【0047】

また、本実施形態によれば、第２の減速機１６は、支持用ラジアル軸受４２と第２のラジアル軸受４３との間に配置されているため、第２の減速機１６の軸方向の移動、すなわち第２の減速機１６の、上流側及び下流側への移動を規制することができる。

【0048】

〔実施形態２〕
本実施形態における操舵装置が備えるハウジングについて、図４及び図５を参照して説明する。なお、本明細書において既に説明した部材には同じ参照符号を付し、以下ではその説明を省略する。

【0049】

図４は、本実施形態に係るハウジングの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。また、図５は、図４に示した支持用ラジアル軸受の周辺の拡大図である。本実施形態に係るハウジング３１は、上述した実施形態１に係るハウジング１１（図２参照）の構成に替えて、ハウジング３１を備える構成である。以下では本実施形態に係るハウジング３１について、実施形態１に係るハウジング１１とは異なる点を中心に説明する。

【0050】

本実施形態に係るハウジング３１は、第１のハウジング１７１及び第２のハウジング１７２を備えている。本実施形態では、実施形態１とは異なり、第１のハウジング１７１には、中部ステアリングシャフト１３２の一部のみが収容される構成である。なお、中部ステアリングシャフト１３２はその形状が実施形態１に係る中部ステアリングシャフト１０２（図２参照）と異なっているので、中部ステアリングシャフト１０２とは異なる番号を付している。しかしながら、中部ステアリングシャフト１３２の基本的機能は、中部ステアリングシャフト１０２と共通する。

【0051】

第２のハウジング１７２には、中部ステアリングシャフト１３２の一部、第２軸１２２、第１のラジアル軸受５１、支持用ラジアル軸受４２、第１の減速機２５、及び第２の減速機１６が収容されている。

【0052】

第１の減速機２５は、太陽ローラ（筒部材）７１、複数の遊星ローラ（遊星部材）７３、第１のリング部材７４、第２のリング部材７５、及びキャリア８８を備えている。

【0053】

第１の減速機２５は、キャリア８８の形状が実施形態１に係る第１の減速機１５のキャリア７７（図２参照）と異なる以外は第１の減速機１５と共通する。そこで、以下では第１の減速機２５について、第１の減速機１５と異なる点を中心に説明する。

【0054】

本実施形態では、図４に示すように、キャリア８８には凸部８９が形成されている。また、第１のハウジング１７１側には、凸部１７３が形成されている。本実施形態では、第１のラジアル軸受５１は、内輪５１１がキャリア８８に圧入されることによって緊嵌されている。また、第１のラジアル軸受５１の内輪５１１は、キャリア８８の凸部８９に対して上流側から当接している。さらに、第１のラジアル軸受５１の外輪５１２は、第１のハウジング１７１の凸部１７３に対して下流側から当接している。しかし、これらの構成は本実施形態を限定するものではなく、第１のラジアル軸受５１は他の方法によってキャリア８８に固定されていてもよい。

【0055】

また、本実施形態において、支持用ラジアル軸受４２の鍔部４２４は、第１のハウジング１７２に形成された凹部１７９に嵌合するように構成されている。また、支持用ラジアル軸受４２は、鍔部４２４が凹部１７９に嵌合した状態で、鍔部４２４の貫通孔１７８（固定用貫通孔）に貫入されたボルト６５によって、第２のハウジング１７２に対して固定されている。

【0056】

さらに、本実施形態において、第２のハウジング１７２の下流側にはエンドカバー１６３が取り付けられている。エンドカバー１６３には凸部１５６が形成されている。また、中部ステアリングシャフト１３２の下流側には、凸部１８２が形成されている。また、第２のラジアル軸受５３は、内輪５３１と、外輪５３２と、内輪５３１と外輪５３２との間に配置された複数の転動体５３３とを備えている。本実施形態では、第２のラジアル軸受５３は、外輪５３２がエンドカバー１６３の内側に圧入されることによって緊嵌されている。また、第２のラジアル軸受５３の内輪５３１は、中部ステアリングシャフト１３２の凸部１８２に対して下流側から当接している。さらに、第２のラジアル軸受５３の外輪５３２は、エンドカバー１６３の凸部１５６に対して上流側から当接している。しかし、これらの構成は本実施形態を限定するものではなく、第２のラジアル軸受５３は他の方法によって固定されていてもよい。

【0057】

このように中部ステアリングシャフト１３２の側に凸部１８２を設けることで、第２のラジアル軸受５３に対する中部ステアリングシャフト１３２及びエンドカバー１６３の嵌合部分の径を小さくすることができる。

【0058】

本実施形態によれば、第１のラジアル軸受４１及び支持用ラジアル軸受４２の両者とも、第２のハウジング１７２に固定される。そのため、軸方向のアライメントミスを低減させることができる。

【0059】

〔実施形態３〕
本実施形態に係る操舵装置における、ハウジングに対する支持用ラジアル軸受の固定方法について、図６を参照して説明する。

【0060】

本実施形態では、実施形態１及び２に係る支持用ラジアル軸受の固定方法に代えて、ボルトのヘッド部を利用して支持用ラジアル軸受を固定する構成について、図６を参照して説明する。以下の説明では、上記実施形態とは異なる箇所について説明し、上記実施形態と同様の箇所については説明を省略する。

【0061】

図６は、ボルトで固定された支持用ラジアル軸受の周辺の構成を模式的に示す断面図であり、同図（ａ）は第１の構成例に、（ｂ）は第２の構成例に対応する。

【0062】

（第１の構成例）
第１の構成例では、図６（ａ）に示すように、支持用ラジアル軸受７６は、図示しない第２軸の外周に配置されている。支持用ラジアル軸受７６は、内輪７６１と、外輪７６２と、内輪７６１と外輪７６２との間に配置された複数の転動体７６３とを備えている。なお、支持用ラジアル軸受７６は、図６（ａ）に示すように鍔部がない構成である。

【0063】

支持用ラジアル軸受７６が固定されるハウジング２８３側には、支持用ラジアル軸受７６の外輪７６２が下流側から当接可能な凸部２８５が形成されている。なお、本実施形態に係るハウジング２８３は、上述した各実施形態におけるハウジング１５２（図２参照）又はハウジング１７２（図４参照）と同様である。

【0064】

第１の構成例では、ボルト６５のヘッド部７５によって、外輪７６２が凸部２８５に対して下流側から押し付けられることによって、支持用ラジアル軸受７６はハウジング２８３に対して固定される。このように、支持用ラジアル軸受７６に鍔部がない構成においては、ボルト６５のヘッド部７５を利用して固定してもよい。

【0065】

以上の構成であっても、第２の減速機によって生じた荷重を、新たなスペースを要することなく受けることができる。本実施形態に係る操舵装置全体の小型化を実現することができる。

【0066】

（第２の構成例）
第２の構成例では、図６（ｂ）に示すように、支持用ラジアル軸受９６は、図示しない第２軸の外周に配置されている。支持用ラジアル軸受９６は、内輪９６１と、外輪９６２と、内輪９６１と外輪９６２との間に配置された複数の転動体９６３とを備えている。また、外輪９６２には、支持用ラジアル軸受９６の外周側へと平面状に拡がる鍔部９６４が形成されている。しかし、鍔部９６４にはボルトが貫通する貫通孔は形成されていない。

【0067】

支持用ラジアル軸受９６が固定されるハウジング２８７側には、支持用ラジアル軸受９６の鍔部９６４が下流側から当接可能な凹部２８９が形成されている。なお、本実施形態に係るハウジング２８７は、上述した各実施形態におけるハウジング１５２（図２参照）又はハウジング１７２（図４参照）と同様である。

【0068】

第２の構成例では、ボルト６５のヘッド部７５によって、鍔部９６４が凹部２８９に対して下流側から押し付けられることによって、支持用ラジアル軸受９６はハウジング２８７に対して固定される。このように、支持用ラジアル軸受９６の鍔部９６４に貫通孔のない構成においては、ボルト６５のヘッド部７５を利用して支持用ラジアル軸受９６を固定してもよい。

【0069】

以上の構成であっても、第２の減速機によって生じた荷重を、新たなスペースを要することなく受けることができる。本実施形態に係る操舵装置全体の小型化を実現することができる。

【0070】

本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

【符号の説明】

【0071】

１ ・・・操舵装置
１３ ・・・モータ
１１，３１，２８３，２８７・・・ハウジング
１５ ・・・第１の減速機（伝達部）
１６ ・・・第２の減速機
４２，７６，９６ ・・・支持用ラジアル軸受（ラジアル軸受）
６５ ・・・ボルト（固定用部材）
６７ ・・・工具
６９ ・・・ボルト貫通孔（貫通孔）
８７ ・・・肉抜き部
１０２ ・・・中部ステアリングシャフト（第１軸）
１２２ ・・・第２軸
１７８ ・・・貫通孔（固定用貫通孔）
４２１ ・・・外輪
４２４，９６４ ・・・鍔部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】