【解決手段】水とポリウレタン樹脂(U)を含有するポリウレタン樹脂水分散体であって、上記(U)が、ジオール(a)、ポリイソシアネート(b)、並びに酸基(α)又はアミノ基(β)と(α)でもなく(β)でもない活性水素原子を有する基(γ)を有する化合物(c)を必須構成単量体とするポリウレタン樹脂の(α)又は(β)を中和又は4級化されたポリウレタン樹脂であり、(α)、中和された酸基(α1)、(β)、中和されたアミノ基(β1)及び4級化されたアミノ基(β2)の合計含有量が(U)の重量に対して0.1〜0.8mmol/gであり、かつ下記式(1)又は(2)で表される中和率が30〜90%であり、かつ上記ポリウレタン樹脂水分散体中のポリウレタン樹脂粒子の体積平均粒子径が50〜600nmであるポリウレタン樹脂水分散体。
ポリウレタン樹脂(U)がさらに鎖伸長剤(e)を必須構成単量体とし、鎖伸長剤(e)が1級アミノ基及び2級アミノ基を合計2個以上有する化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂水分散体。
ポリウレタン樹脂(U)がさらに、水酸基を3個以上有するポリオール(k)を必須構成単量体とし、ポリオール(a)の重量に対してポリオール(k)の重量が0.1〜4.0重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂水分散体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリウレタン樹脂水分散体が含有するポリウレタン樹脂(U)は、以下の(1)〜(3)の条件をすべて満足する。
(1)(U)が、(U)の有する酸基(α)、中和された酸基(α1)、アミノ基(β)、中和されたアミノ基(β1)及び4級化されたアミノ基(β2)の合計含有量(以下、含有量xと記載することがある。)を、(U)の重量に対して0.1〜0.8mmol/g、好ましくは0.12〜0.75mmol/g、さらに好ましくは0.14〜0.7mmol/gである。含有量xが0.1mmol/g未満の場合、ウレタン粒子の水中安定性が低下して粒子の凝集が起こる懸念があり、0.8mmol/gを超えると耐水性が悪化する可能性がある。
【0011】
ここで、ポリウレタン樹脂(U)は、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、及び酸基(α)もしくはアミノ基(β)と酸基(α)でもなくアミノ基(β)でもない活性水素原子を有する基(γ)を有する化合物(c)を必須構成単量体とするポリウレタン樹脂であり、(U)が有する酸基(α)又はアミノ基(β)は、中和もしくは4級化するための化合物(d)でその一部が中和もしくは4級化されている。
酸基(α)としてはカルボキシル基、スルホン酸基、スルファミン酸基が挙げられる。
アミノ基(β)としては、3級アミノ基が挙げられる。
基(γ)としては、水酸基等が挙げられる。
【0012】
酸基(α)及び中和された酸基(α1)の合計の含有量は、以下の方法でポリウレタン樹脂の酸価を求めて、次式により酸基含量(mmol/g)を算出することができる。
酸基含量(mmol/g)=(酸価)/56.1
<酸価>
100mlのフラスコ中でジメチルホルムアミド(以下DMFとする)50mlにポリウレタン樹脂を所定量溶解後、フェノールフタレイン指示薬を用いて、0.1mol/l水酸化カリウム・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行い(終点は、指示薬の色が透明から微紅色になった点)滴定ml数を読み取り、次式により酸価を算出する。
酸価=5.61×a×f/S
a:0.1mol/l水酸化カリウム・メチルアルコール滴定用溶液の滴定ml数。
f:0.1mol/l水酸化カリウム・メチルアルコール滴定用溶液の力価。
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
以下の方法で中和剤(d1)由来のアミン価、及びエマルション中のポリウレタン樹脂(U)の含有量(%)を求めて、次式により中和された酸基(α1)の含有量を算出することができる。
中和された酸基(α1)含量(mmol/g)=(中和剤(d1)由来のアミン価)x100/{56.1x(ウレタンエマルションの固形分含量(%))}
【0013】
(2)上記式(1)で表される中和率が30〜90%であるか、又は上記式(2)で表される中和及び4級化率が30〜90%であり(以下、上記中和率、又は中和及び4級化率を、中和率等yと記載することがある。)が30〜90%であり、好ましくは40〜85%、さらに好ましくは45〜80%である。中和率等yが30%未満の場合、ウレタンエマルションの分散安定性が悪化し、中和率等yが90%を超えるとウレタンエマルションを乾燥して得られるウレタン樹脂皮膜の耐水性が悪化する。
【0014】
(3)本発明において、ポリウレタン樹脂水分散体中のポリウレタン樹脂(U)のポリウレタン樹脂粒子の体積平均粒子径(Dv)は、50〜600nmであり、ポリウレタン樹脂水分散体の分散安定性及び配合安定性の観点から、好ましくは60〜500nm、更に好ましくは70〜400nmである。(Dv)が50nm未満であるとポリウレタン樹脂(U)の配合安定性が悪化し、600nmを超えるとウレタンエマルションの分散安定性が低下する。
【0015】
上記ポリウレタン樹脂(U)は、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、及び酸基(α)もしくはアミノ基(β)と酸基(α)でもなくアミノ基(β)でもない活性水素原子を有する基を有する化合物(c)を必須構成単量体とするポリウレタン樹脂を酸基又はアミノ基を中和もしくは4級化するための化合物(d)で中和もしくは4級化することにより得られ、更に必要により、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)を反応させることにより得られる。
【0016】
ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、化合物(c)、酸基又はアミノ基の中和もしくは4級化剤(d)、及び必要により使用する鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)の量を適宜調整することにより、ポリウレタン樹脂(U)の中和もしくは4級化されていない親水基と中和もしくは4級化された親水基の含有量を所望の範囲とすることができる。
【0017】
(U)の体積平均粒子径(Dv)は、(U)中の親水性基量、中和もしくは4級化された親水基量、及び分散剤量によって決まる。従って、(U)の体積平均粒子径(Dv)を所望の範囲とするためには、(U)中に導入される親水性基の含有量と、その中和率もしくは4級化率、及び必要により添加する分散剤(h)の量を適宜調整すればよい。
体積平均粒子径(Dv)は光散乱粒度分布測定装置で測定される。
以下各成分について説明する。
【0018】
ポリオール(a)としては、数平均分子量(以下、Mnと略記)300以上の高分子ポリオール(a1)及びMn300未満の低分子ポリオール(a2)が挙げられる。
尚、本発明におけるポリオールのMnはポリエチレングリコールを標準としてゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるものである。但し、低分子ポリオールのMnは化学式からの計算値である。
【0019】
ポリオール(a)は以下に記載のものの内、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
Mn300以上の高分子ポリオール(a1)としては、ポリエーテルポリオール(a11)及びポリエステルポリオール(a12)等が挙げられる。
【0021】
ポリエーテルポリオール(a11)としては、脂肪族ポリエーテルポリオール及び芳香族環含有ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0022】
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオール[ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)等]、ポリオキシプロピレンポリオール[ポリプロピレングリコール等]、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリエーテルポリオールの市販品としては、PTMG1000[Mn=1,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]、PTMG2000[Mn=2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]、PTMG3000[Mn=3,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、三菱化学(株)製]、PTGL3000[Mn=3,000の変性PTMG、保土谷化学工業(株)製]、及びサンニックスジオールGP−3000[Mn=3,000のポリプロピレンエーテルトリオール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0024】
芳香族ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略記)付加物[ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物及びビスフェノールAのEO20モル付加物等]及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略記)付加物[ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物、ビスフェノールAのPO5モル付加物等]等のビスフェノール骨格を有するポリオール並びにレゾルシンのEO又はPO付加物等が挙げられる。
【0025】
(a11)のMnは、ポリウレタン樹脂(U)の機械物性の観点から、通常300以上、好ましくは300〜10,000、更に好ましくは300〜6,000である。
【0026】
ポリエステルポリオール(a12)としては、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール及びヒマシ油系ポリオールが挙げられる。
【0027】
縮合型ポリエステルポリオールは、低分子量(Mn300未満)多価アルコールと炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とのポリエステルポリオールである。
低分子量多価アルコールとしては、Mn300未満の2価〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール及びMn300未満の2価〜8価又はそれ以上のフェノールのアルキレンオキサイド(EO、PO、1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレンオキサイド等を表し、以下AOと略記)低モル付加物が使用できる。
縮合型ポリエステルポリオールに使用できる低分子量多価アルコールの内好ましいのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、ビスフェノールAのEO又はPO低モル付加物及びこれらの併用である。
【0028】
縮合型ポリエステルポリオールに使用できる炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの併用が挙げられる。
【0029】
縮合型ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3−メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0030】
縮合型ポリエステルポリオールの市販品としては、サンエスター2610[Mn=1,000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]、サンエスター4620[Mn=2,000のポリテトラメチレンアジペートジオール]、及びサンエスター2620[Mn=2,000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0031】
ポリラクトンポリオールは、上記低分子量多価アルコールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4〜12のラクトン(例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン)等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0032】
ポリカーボネートポリオールとしては、上記低分子量多価アルコールと、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネート)とを、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。低分子量多価アルコール及びアルキレンカーボネートはそれぞれ2種以上併用してもよい。
【0033】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(例えば1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールをジアルキルカーボネートと脱アルコール反応させながら縮合させて得られるジオール)等が挙げられる。
【0034】
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、ニッポラン980R[Mn=2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール、日本ポリウレタン工業(株)製]、クラレポリオールC−3090[Mn=3,000のポリ(3−メチル−5−ペンタンジオール/ヘキサメチレン)カーボネートジオール]、及びT4672[Mn=2,000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]等が挙げられる。
【0035】
ヒマシ油系ポリオールには、ヒマシ油、及びポリオール又はAOで変性された変性ヒマシ油が含まれる。変性ヒマシ油はヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はAO付加により製造できる。ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油、ヒマシ油のEO(4〜30モル)付加物等が挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオール(a12)の内好ましいのは、縮合型ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールである。
【0037】
Mn300未満の低分子ポリオール(a2)としては、脂肪族2価アルコール、脂肪族3価アルコール及び4価以上の脂肪族アルコールが挙げられる。(a2)の内、耐水性、耐熱黄変性の観点から好ましいのは、2〜3価の脂肪族アルコールであり、脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールが特に好ましく、脂肪族3価アルコールとしては、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
【0038】
上記ポリオール(a)の内、PEGを必須成分として使用することで、ポリウレタン樹脂(U)にオキシエチレン基を導入することができる。ポリウレタン樹脂(U)に導入されるオキシエチレン基含量としては、ポリウレタン樹脂(U)の耐水性及び配合安定性の観点から0.8mmol/g〜10.0mmol/gが好ましく、更に好ましくは、1.0〜9.0mmol/g、特に好ましくは、1.5〜8.0mmol/gである。ポリオキシエチレン基含量が0.8mmol/g未満の場合は配合安定性が悪化する可能性があり、10.0mmol.gより多くなると耐水性が悪化する。
【0039】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)がさらに、水酸基を3個以上有するポリオール(k)を必須構成単量体とし、ポリオール(a)の重量に対してポリオール(k)の重量を0.1〜4.0重量%とすることが出来る。
ポリオール(k)はポリウレタン樹脂粒子中に架橋構造を形成させることが出来、ウレタン皮膜の耐水性、及び耐薬品性向上という効果を得ることが出来るので好ましい。
【0040】
ポリウレタン樹脂(U)の必須構成成分であるポリイソシアネート(b)としては、従来ポリウレタン樹脂製造に使用されているものが使用できる。ポリイソシアネート(b)としては、2〜3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数6〜20(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様)の芳香族ポリイソシアネート(b1)、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート(b2)、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート(b3)、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)及び(b1)〜(b4)の誘導体(例えばイソシアヌレート化物)が挙げられる。
【0041】
炭素数6〜20の芳香族ポリイソシアネート(b1)としては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、クルードMDI等が挙げられる。
【0042】
炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート(b2)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0043】
炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート(b3)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)としては、例えばm−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0045】
ポリイソシアネート(b)の内、得られる皮膜の機械的物性、耐候性の観点から好ましいのは(b2)及び(b3)、更に好ましいのは(b3)、特に好ましいのはIPDI、水添MDI及びHDIである。
【0046】
酸基(α)及び/もしくはアミノ基(β)と酸基(α)でもなくアミノ基(β)でもない活性水素原子を有する基(γ)を有する化合物(c)としては、酸基と基(γ)を含有する化合物(c1)及びアミノ基と基(γ)を含有する化合物(c2)が挙げられる。
(c1)としては、例えば酸基としてカルボキシル基を含有し、炭素数が2〜10の化合物[ジアルキロールアルカン酸(例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸)、酒石酸及びアミノ酸(例えばグリシン、アラニン及びバリン)等]、酸基としてスルホン酸基を含有し、炭素数が2〜16の化合物[3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸及びスルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル等]、酸基としてスルファミン酸基を含有し、炭素数が2〜10の化合物[N,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)スルファミン酸等]等が挙げられる。
【0047】
(c1)の内、得られる皮膜の樹脂物性及びポリウレタン樹脂水分散体の分散安定性の観点から好ましいのは、2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸である。
【0048】
アミノ基と活性水素原子を含有する化合物(c2)としては、例えば炭素数1〜20の3級アミノ基含有ジオール[N−アルキルジアルカノールアミン(例えばN−メチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン及びN−メチルジプロパノールアミン)及びN,N−ジアルキルモノアルカノールアミン(例えばN,N−ジメチルエタノールアミン)等]等が挙げられる。
【0049】
化合物(c)を中和もしくは4級化する化合物(d)としては、化合物(c1)の中和剤(d1)及びアミノ基と活性水素原子を含有する化合物(c2)の中和もしくは4級化剤(d2)が挙げられる。
【0050】
(d1)としては、例えばアンモニア、炭素数1〜20のアミン化合物又はアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等)が挙げられる。
炭素数1〜20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0051】
(d1)としては、生成するポリウレタン樹脂水分散体の乾燥性及び得られる皮膜の耐水性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から、(d1)としては、アンモニア又は炭素数1〜20のアミン化合物が好ましく、特にアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びジメチルエチルアミンが好ましい。
【0052】
(d2)としては、例えば炭素数1〜10のモノカルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロパン酸等)、炭酸、炭酸ジメチル、硫酸ジメチル、メチルクロライド及びベンジルクロライド等が挙げられる。
【0053】
(d1)及び(d2)は、ウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加しても良いが、ウレタン樹脂の安定性及び水分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
【0054】
(c)の使用量は、(U)中の親水基の含有量が、(U)の重量に基づいて、通常0.1〜0.8mmol/g、好ましくは0.12〜0.75mmol/g、更に好ましくは0.15〜0.7mmol/gとなるよう調節する。
【0055】
(d)の使用量は、上記式(1)又は(2)で表される中和率又は4級化率が30〜90%となるよう調節する。
【0056】
鎖伸長剤(e)としては、水、炭素数2〜10のジアミン類(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン及びピペラジン)、炭素数2〜10のポリアルキレンポリアミン類(例えばジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)、炭素数2〜30のポリエポキシ化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等)及び炭素数2〜10のアミノアルコール類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。
本発明において、ポリウレタン樹脂粒子の水分散体にイソシアネート基と反応可能な官能基を3個以上有する化合物を使用することにより、ポリウレタン樹脂粒子中に架橋構造を形成させることが出来、ウレタン皮膜の耐水性、及び耐薬品性向上という効果を得ることが出来る。
上記の内好ましいものは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンである。
【0057】
反応停止剤(f)としては、炭素数1〜8のモノアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、セロソルブ類及びカルビトール類等)、炭素数1〜10のモノアミン類(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。
【0058】
(e)及び(f)は、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0059】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)は、必要により酸化防止剤、着色防止剤、耐候安定剤、可塑剤及び離型剤等の添加剤を含有することができる。これらの添加剤の使用量は(U)の重量に基づいて通常10重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0060】
<ポリウレタン樹脂水分散体、その製造方法>
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)の水分散体は、酸基(α)又はアミノ基(β)を0.1〜0.8mmol/g有するポリウレタン樹脂(U)を、上記式(1)又は(2)で表される中和率又は4級化率が30〜90%となるように中和又は4級化して得られた中和又は4級化ポリウレタン樹脂(U1)を水中に分散させ、ポリウレタン樹脂水分散体中の粒子の体積平均粒子径が50〜600nmであるポリウレタン樹脂水分散体を得ることを特徴とする。
【0061】
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)の水分散体は、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、化合物(c)、及び酸基又はアミノ基を中和もしくは4級化するための化合物(d)を必須成分とし、更に必要により、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)を以下に記載の工程を経て反応させることにより得ることができる。
(1)ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)並びに酸基(α)及び/もしくはアミノ基(β)と酸基(α)及びアミノ基(β)以外の活性水素原子を含有する化合物(c)を、必要により有機溶剤の存在下反応させイソシアネート基を分子末端に有するプレポリマーを合成する工程。
(2)工程(1)で得られたプレポリマーに化合物(d)を添加し、中和もしくは4級化を行う工程。
(3)工程(2)で得られた化合物を水に分散させると共に、必要により鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)を添加する工程。
(4)工程(3)で得られた水分散体から必要により有機溶剤を留去する工程。
【0062】
また、(U)は分子中に架橋構造を有してもよく、(U)へ架橋構造を導入するためには、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)及び/又は鎖伸長剤(e)に3官能以上の多官能モノマーを使用することにより、(U)中に架橋構造を導入することが可能である。
また、(U)は水への分散安定性の観点から、ノニオン性の親水性基を有してもよく、(U)へノニオン性の親水基を導入するためには、ポリオール(a)の内ポリオキシエチレン基を有する化合物を少なくとも1種以上使用することにより、(U)中にノニオン性の親水性基を導入することが可能である。
本発明におけるポリウレタン樹脂水分散体は、(U)の分散性及び水分散体の安定性の観点から、必要により(U)を分散剤(g)の存在下で水に分散させることができる。
【0063】
分散剤(g)としては、ノニオン性界面活性剤(g1)、アニオン性界面活性剤(g2)、カチオン性界面活性剤(g3)、両性界面活性剤(g4)及びその他の乳化分散剤(g5)が挙げられる。(g)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0064】
(g1)としては、例えばAO付加型ノニオン性界面活性剤及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤が挙げられる。AO付加型としては、炭素数10〜20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO付加物、炭素数8〜22のアルキルアミンのEO付加物及びポリプロピレングリコールのEO付加物等が挙げられ、多価アルコール型としては、多価(3〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレエート等)及びアルキル(炭素数4〜24)ポリ(重合度1〜10)グリコシド等が挙げられる。
【0065】
(g2)としては、例えば炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩;炭素数8〜24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有する脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等];並びに炭素数8〜24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられる。
【0066】
(g3)としては、例えば第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]並びにアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]が挙げられる。
【0067】
(g4)としては、例えばベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]並びにアミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0068】
(g5)としては、例えばポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤[例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの]等が挙げられる。
【0069】
分散剤(g)は、ウレタン樹脂(U)のウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、(U)の水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加しても良いが、(U)の分散性及び水分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
【0070】
(g)の含有量はポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて通常0.01〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.1〜5重量%である。
(U)は親水性基を有したポリウレタン樹脂である場合は、(U)の重量に基づく(c)の含有量と(g)の含有量の合計量は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、更に好ましくは0.6〜10重量%である。
【0071】
本発明におけるポリウレタン樹脂水分散体は、有機溶剤[ケトン系溶剤(例えばアセトン及びメチルエチルケトン)、エステル系溶剤(例えば酢酸エチル)、エーテル系溶剤(例えばテトラヒドロフラン)、アミド系溶剤(例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン)、アルコール系溶剤(例えばイソプロピルアルコール)及び芳香族炭化水素系溶剤(例えばトルエン)等]を含有してもよい。
【0072】
ウレタン化反応速度をコントロールするために、公知の反応触媒(オクチル酸錫及びビスマスオクチル酸塩等)及び反応遅延剤(リン酸等)等を使用することができる。これらの触媒又は反応遅延剤の添加量は、(U)の重量に基づき、好ましくは0.001〜3重量%、更に好ましくは0.005〜2重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%である。
【0073】
ポリウレタン樹脂(U)の水への分散を行う際は、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、酸化防止剤、着色防止剤、可塑剤及び離型剤等から選ばれる添加剤を1種以上を添加することができる。また、必要に応じて、分散後に脱溶剤、濃縮、希釈等を行ってもよい。
【0074】
本発明で得られるポリウレタン樹脂水分散体の固形分濃度(揮発性成分以外の成分の含有量)は、水分散体の取り扱い易さの観点から、好ましくは20〜65重量%、更に好ましくは25〜55重量%である。固形分濃度は、水分散体約1gをペトリ皿上にうすく伸ばし、精秤した後、循環式定温乾燥機を用いて130℃で、45分間加熱した後の重量を精秤し、加熱前の重量に対する加熱後の残存重量の割合(百分率)を計算することにより得ることができる。
【0075】
本発明の製造方法で得られるポリウレタン樹脂水分散体の粘度は、好ましくは1〜100,000mPa・s、更に好ましくは5〜5,000mPa・sである。粘度はBL型粘度計を用いて、25℃の定温下で測定することができる。
本発明の製造方法で得られるポリウレタン樹脂水分散体のpHは、好ましくは2〜12、更に好ましくは4〜10である。pHは、pH Meter M−12[堀場製作所(株)製]で25℃で測定することができる。
【0076】
本発明のポリウレタン樹脂水分散体は、水性塗料組成物、水性接着剤組成物、水性繊維加工処理剤組成物(顔料捺染用バインダー組成物、不織布用バインダー組成物、補強繊維用集束剤組成物、抗菌剤用バインダー組成物及び人工皮革・合成皮革用原料組成物等)、水性コーティング組成物(防水コーティング組成物、撥水コーティング組成物及び防汚コーティング組成物等)、水性紙処理剤組成物や水性インキ組成物等に使用することができるが、その優れた造膜性及び耐水性から、特に水性塗料組成物、水性接着剤組成物及び水性繊維加工処理剤組成物として好適に使用することができる。
【0077】
これらの用途に用いる場合には、必要によりその他の添加剤、例えば塗膜形成補助樹脂、架橋剤、触媒、顔料、顔料分散剤、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤等を1種又は2種以上添加することができる。
【0078】
以下において本発明のポリウレタン樹脂水分散体を用いた、水性塗料の調製について説明する。
水性塗料には、塗膜形成補助やバインダー機能の向上等を目的として、必要により本発明のポリウレタン樹脂水分散体におけるウレタン樹脂(U)以外に、他の水分散性樹脂又は水溶性樹脂を併用していてもよい。
【0079】
水性塗料に併用される他の水分散性樹脂又は水溶性樹脂としては、例えば本発明におけるポリウレタン樹脂以外の水分散性又は水溶性のポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂及びポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの他の樹脂は、水性塗料の用途毎に、各用途で常用されるもの等から適宜選択することができる。
【0080】
水性塗料における本発明のポリウレタン樹脂水分散体の固形分の含有量は、水性塗料の重量に基づいて通常0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%である。
また、水性塗料における他の樹脂の含有量は、水性塗料の重量に基づいて通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0081】
水性塗料は、更に架橋剤、顔料、顔料分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤、凍結防止剤及び水等を1種又は2種以上含有することができる。
【0082】
架橋剤としては水溶性又は水分散性のアミノ樹脂、水溶性又は水分散性のポリエポキシド、水溶性又は水分散性のブロックドポリイソシアネート化合物及びポリエチレン尿素等が挙げられる。
架橋剤の添加量はポリウレタン樹脂水分散体の固形分重量を基準として、通常30重量%以下、好ましくは0.1〜20重量%である。
【0083】
顔料としては、水への溶解度が1以下の無機顔料(例えば白色顔料、黒色顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料及びメタリック顔料)並びに有機顔料(例えば天然有機顔料合成系有機顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、顔料色素型アゾ顔料、水溶性染料からつくるアゾレーキ、難溶性染料からつくるアゾレーキ、塩基性染料からつくるレーキ、酸性染料からつくるレーキ、キサンタンレーキ、アントラキノンレーキ、バット染料からの顔料及びフタロシアニン顔料)等が挙げられる。顔料の含有量は、水性塗料の重量に基づいて通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0084】
顔料分散剤としては、上述の分散剤(h)が挙げられ、顔料分散剤の含有量は、顔料の重量に基づいて通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。
【0085】
粘度調整剤としては増粘剤、例えば無機系粘度調整剤(ケイ酸ソーダやベントナイト等)、セルロース系粘度調整剤(Mnが20,000以上のメチルセルロール、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等)、タンパク質系粘度調整剤(カゼイン、カゼインソーダ及びカゼインアンモニウム等)、アクリル系(Mnが20,000以上のポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸アンモニウム等)及びビニル系粘度調整剤(Mnが20,000以上のポリビニルアルコール等)が挙げられる。
消泡剤としては、長鎖アルコール(オクチルアルコール等)、ソルビタン誘導体(ソルビタンモノオレート等)、シリコーンオイル(ポリメチルシロキサン及びポリエーテル変性シリコーン等)等が挙げられる。
【0086】
防腐剤としては、有機窒素硫黄化合物系防腐剤及び有機硫黄ハロゲン化物系防腐剤等が挙げられる。
劣化防止剤及び安定化剤(紫外線吸収剤及び酸化防止剤等)としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系劣化防止剤及び安定化剤等が挙げられる。
凍結防止剤としては、エチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤の含有量は、水性塗料の重量に基づいてそれぞれ通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
【0087】
水性塗料には、乾燥後の塗膜外観を向上させる目的で更に溶剤を添加してもよい。添加する溶剤としては例えば炭素数1〜20の1価アルコール(メタノール、エタノール及びプロパノール等)、炭素数1〜20のグリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール及びジエチレングリコール等)、炭素数1〜20の3価以上のアルコール(グリセリン等)及び炭素数1〜20のセロソルブ類(メチル及びエチルセロソルブ等)等が使用できる。添加する溶剤の含有量は、水性塗料の重量基づいて、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。
【0088】
本発明のポリウレタン樹脂水分散体を用いた水性塗料は、本発明のポリウレタン樹脂水分散体と上記記載の各成分を混合、撹拌することで製造される。混合の際は全ての成分を同時に混合しても、各成分を段階的に投入して混合してもよい。
水性塗料の固形分濃度は、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは15〜60重量%である。
【0089】
以下において本発明のポリウレタン樹脂水分散体を用いた水性接着剤について説明する。
水性接着剤に使用する樹脂として、本発明のポリウレタン樹脂水性分散体におけるウレタン樹脂(U)を単独で用いても構わないが、SBRラテックス樹脂やアクリル樹脂に代表されるウレタン樹脂以外の水分散性又は水溶性樹脂を併用することができる。併用する場合、樹脂全重量におけるポリウレタン樹脂(U)の割合は、好ましくは1重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。
【0090】
更に、本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を含有する接着剤の凝集性を阻害しない範囲で通常の接着剤に使用される副資材及び添加剤、例えば、架橋剤、可塑剤、粘着付与剤、充填剤、顔料、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤及び難燃剤等を使用することも可能である。
【0091】
以下本発明のポリウレタン樹脂水分散体を用いた水性繊維加工処理剤の調製について説明する。本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を含有する繊維加工処理剤には、必要により公知の消泡剤、湿潤剤、各種樹脂水分散体(本発明以外のポリウレタン水分散体、アクリル水分散体、SBRラテックス等)及び柔軟剤等を配合することができる。これらの配合量は樹脂水分散体の場合は固形分換算でポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて30重量%以下、特に20重量%以下であることが好ましく、その他の添加剤の場合はそれぞれ1重量%以下、特に0.1〜0.5重量%であることが好ましい。また、必要により、pH調整剤を添加することもできる。pH調整剤としては、アルカリ性物質、例えば強塩基(アルカリ金属等)と弱酸(pKaが2.0を越える酸、例えば炭酸及び燐酸)の塩(重炭酸ナトリウム等)、又は酸性物質(酢酸等)が挙げられる。pH調整剤の量は通常ポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて0.01〜0.3重量%である。
【0092】
本発明の水性繊維加工処理剤の固形分(不揮発分)濃度は特に限定されないが、通常10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%である。また、粘度(25℃)は通常10〜100000mPa・sである。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を以て本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を意味する。
【0094】
<実施例1>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液(P−1)を製造した。ウレタンプレポリマーのアセトン溶液の固形分あたりのイソシアネート含量は0.77mmol/gであった。攪拌機及び加熱反応装置を備えた簡易加圧反応装置に得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液460.69部を入れ、40℃で撹拌しながらトリエチルアミン(中和剤)2.45部を加え、60rpmで30分間均一化した後、温度を30℃に保ち、100rpmで攪拌下、水346.98部を徐々に添加することで乳化した後、鎖伸長剤であるジエチレントリアミン4.55部を加え、減圧下に65℃で12時間かけてアセトンを留去し、ポリウレタン樹脂水分散体(Q−1)を得た。
【0095】
<実施例2〜8>
ポリウレタン樹脂水分散体の各原料を、表1実施例1記載の各原料の代わりに、表1実施例2〜8記載の各原料を使用する以外は実施例1記載の方法と同様にして、ポリウレタン樹脂水分散体(Q−2)〜(Q−8)を得た。
【0096】
<実施例9>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液(P−9)を製造した。ウレタンプレポリマーのアセトン溶液の固形分あたりのイソシアネート含量は0.77mmol/gであった。攪拌機及び加熱反応装置を備えた簡易加圧反応装置に得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液460.22部を入れ、40℃で撹拌しながら硫酸ジメチル(4級化剤)2.21部を加え、40℃3時間4級化反応を行った。その後、温度を30℃に保ち、100rpmで攪拌下、水234.02部を徐々に添加することで乳化した後、鎖伸長剤であるジエチレントリアミン4.55部を加え、減圧下に65℃で12時間かけてアセトンを留去し、ポリウレタン樹脂水分散体(Q−9)を得た。
【0097】
<実施例10〜12>
ポリウレタン樹脂水分散体の各原料を、表1実施例9に記載の各原料の代わりに、表1実施例10〜12に記載の各原料を使用する以外は実施例9記載の方法と同様にして、ポリウレタン樹脂水分散体(Q−10)〜(Q−12)を得た。
【0098】
<実施例13>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液(P−1)を製造した。ウレタンプレポリマーのアセトン溶液の固形分あたりのイソシアネート含量は0.45mmol/gであった。攪拌機及び加熱反応装置を備えた簡易加圧反応装置に得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液460.25部を入れ、40℃で撹拌しながらギ酸(中和剤)1.31部を加え、60rpmで30分間均一化した後、温度を30℃に保ち、100rpmで攪拌下、水346.98部を徐々に添加することで乳化した後、減圧下に65℃で12時間かけてアセトンを留去し、ポリウレタン樹脂水分散体(Q−13)を得た。
<比較例1>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液(P’−1)を製造した。ウレタンプレポリマーのアセトン溶液の固形分あたりのイソシアネート含量は0.87mmol/gであった。攪拌機及び加熱反応装置を備えた簡易加圧反応装置に得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液458.36部を入れ、40℃で撹拌しながらトリエチルアミン(中和剤)0.35部を加え、60rpmで30分間均一化した後、温度を30℃に保ち、100rpmで攪拌下、水340.00部を徐々に添加することで乳化した後、鎖伸長剤であるジエチレントリアミン4.55部を加え、減圧下に65℃で12時間かけてアセトンを留去し、ポリウレタン樹脂水分散体(Q’−1)を得た。
【0099】
<比較例2>
ポリウレタン樹脂水分散体の各原料を、表1比較例1記載の各原料の代わりに、表1比較例2記載の各原料を使用する以外は比較例1記載の方法と同様にして、ポリウレタン樹脂水分散体(Q’−2)を得た。
【0100】
<比較例3>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーのアセトン溶液(P’−3)を製造した。ウレタンプレポリマーのアセトン溶液の固形分あたりのイソシアネート含量は0.26mmol/gであった。攪拌機及び加熱反応装置を備えた簡易加圧反応装置に得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液492.65部を入れ、40℃で撹拌しながら硫酸ジメチル(4級化剤)2.21部を加え、40℃3時間4級化反応を行った。その後、温度を30℃に保ち、100rpmで攪拌下、水497.15部を徐々に添加することで乳化した後、鎖伸長剤であるジエチレントリアミン1.68部を加え、減圧下に65℃で12時間かけてアセトンを留去し、ポリウレタン樹脂水分散体(Q’−3)を得た。
【0101】
<比較例4>
ポリウレタン樹脂水分散体の各原料を、表1比較例3に記載の各原料の代わりに、表1比較例4に記載の各原料を使用する以外は比較例3記載の方法と同様にして、ポリウレタン樹脂水分散体(Q’−4)を得た。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
実施例1〜13及び比較例1〜4で得られたポリウレタン樹脂水分散体(Q−1)〜(Q−13)及び(Q’−1)〜(Q’−4)の各種物性値及び評価結果を表4に示す。尚、本発明における各種物性値の測定方法及び評価方法は以下の通りである。
【0106】
各ポリウレタン樹脂の親水基含量は、中和又は4級化前の樹脂の酸価又はアミン価を測定することにより求めることができる。測定が困難な場合は、親水性基と活性水素原子を含有する化合物(c)の含有量から、以下の計算式により求めることができる。
・アニオンの場合
親水基含量(mmol/g)=((c)の含有量(g))x((c)の一分子中に有する酸基個数)x1000/{((c)の分子量)x(ポリウレタン樹脂の重量(g))}
・カチオンの場合
親水基含量(mmol/g)=((c)の含有量(g))x((c)の一分子中に有するアミノ基個数)x1000/{((c)の分子量)x(ポリウレタン樹脂の重量(g))}
【0107】
<酸基含量>
以下の方法でポリウレタン樹脂の酸価を求めて、次式により酸基含量(mmol/g)を算出する。
酸基含量(mmol/g)=(酸価)/56.1
<酸価>
100mlのフラスコ中でジメチルホルムアミド(以下DMFとする)50mlに未中和又は4級化前のポリウレタン樹脂を溶解後、フェノールフタレイン指示薬を用いて、0.1mol/l水酸化カリウム・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行い(終点は、指示薬の色が無色から微紅色になった点)滴定ml数を読み取り、次式により酸価を算出する。
酸価=0.561xa ×f/ S
a:0.1mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の滴定ml数。
f:0.1mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の力価。
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
【0108】
<アミノ基含量>
以下の方法でポリウレタン樹脂のアミン価を求めて、次式によりアミノ基含量(mmol/g)を算出する。
末端アミノ基含量(mmol/g)=アミン価/56.1
(1)アミン価
100mlのフラスコ中でトルエン50mlに未中和もしくは4級化前のポリウレタン樹脂を溶解後、キシレンシアノールFF・メチルオレンジ混合指示薬を用いて、0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行い(終点は、指示薬の色が緑色から赤褐色になった点)滴定ml数を読み取り、次式により全アミン価を算出する。
全アミン価=a ×f/ (S×28.05)
a:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の滴定ml数。
f:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の力価。
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
【0109】
<中和率または4級化率>
ポリウレタン樹脂(U)の水性分散体の原料として使用される、親水性基と活性水素原子を含有する化合物(c)と中和剤もしくは4級化剤(d)のモル比を計算することにより、ポリウレタン樹脂(U)の中和率もしくは4級化率を算出することができる。
・中和率又は4級化率(%)=((d)のモル数)/((c)のモル数)x100
また、ポリウレタン樹脂(U)が酸基を有し、中和剤(d)としてアミン類を使用した場合は、上記に記載の方法により得られるポリウレタン樹脂水分散体の酸価(A)、ポリウレタン樹脂水分散体のアミン価(B)の値から、以下の式により求めることができる。
・ポリウレタン樹脂(U)が酸基を有し、中和剤(d)としてアミン類を使用した場合の中和率(%)
=(B)/(A)x100
【0110】
<体積平均粒子径(Dv)>
ポリウレタン樹脂水分散体を、イオン交換水でポリウレタン樹脂の固形分が0.01重量%となるよう希釈した後、光散乱粒度分布測定装置[ELS−8000{大塚電子(株)製}]を用いて測定した。
【0111】
評価方法
【0112】
<ポリウレタン樹脂水分散体の分散安定性>
25℃に温調したポリウレタン樹脂水分散体を12時間静置しておき、沈降物の発生を目視にて評価した。沈降物が発生しない場合を○、沈降物が発生した場合を×とした。
【0113】
<乾燥皮膜の耐水性>
(1)外観
ポリウレタン樹脂水分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによって得られるフィルムを、60℃のイオン交換水に14日間浸漬した後、目視にて皮膜の表面状態を観察した。変化が無い場合を◎、白化した部分が全面積の50%未満の場合を○、全体的に白化した場合を×とした。
(2)破断伸びの維持率
取り出したフィルムを乾燥して、JIS K7311に記載の5.引張試験に基づいて測定を行ない、浸漬前の破断伸びに対する浸漬後の破断伸びの比、破断伸びの維持率を求めた。
【0114】
評価例1(水性塗料としての評価)
イオン交換水90部、増粘剤[「ビスライザーAP−2」、三洋化成工業(株)製]70部、顔料分散剤[「キャリボンL−400」、三洋化成工業(株)製]10部、酸化チタン[「CR−93」、石原産業(株)製]140部、カーボンブラック[「FW200P」、デグサ(株)製]及び炭酸カルシウム160部をペイントコンディショナーにより30分間混合分散した。ここに1−ノナノール20部、アクリル水分散体[「ポリトロンZ330」、旭化成(株)製]200部及び実施例1で得たポリウレタン樹脂水分散体(Q−1)200部を仕込み、10分間混合分散した。更にイオン交換水を用いて25℃での粘度が150mPa・sとなるよう調整し、水性塗料(W−1)を得た。尚、粘度はTOKIMEC(株)製回転式粘度計を用いて、回転数60rpmで測定した。
【0115】
評価例2〜5(水性塗料としての評価)
ポリウレタン樹脂水分散体(Q−1)の代わりに、ポリウレタン樹脂水分散体(Q−2)〜(Q−5)を、評価例1で使用した(Q−1)と固形分含量が同等となるように添加する以外は、評価例1と同様にして、評価例2〜5用の水性塗料(W−2)〜(W−5)を得た。
水性塗料(W−1)〜(W−5)について、下記試験方法に基づいて塗膜の耐水性及び塗料の配合安定性を評価した結果を表4に示す。
【0116】
比較評価例1〜2
ポリウレタン樹脂水分散体(Q−1)の代わりにポリウレタン樹脂水分散体(Q’−1)及び(Q‘−2)を、評価例1で使用した(Q−1)と固形分含量が同等となるように添加する以外は、評価例1と同様にして比較用の水性塗料(W’−1)及び(W’−2)を得た。
水性塗料(W’−1)及び(W’−2)について、下記試験方法に基づいて塗膜の耐水性及び塗料の配合安定性を評価した結果を表4に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
<塗膜の耐水性評価方法>
得られた水性塗料を10cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、120℃で10分加熱して厚さ20μmの塗膜を作製した。この塗装した鋼板を80℃のイオン交換水中に14日間浸漬した後、取り出して表面を軽く拭き、塗膜表面を目視により以下の評価基準で評価した。
○:浸漬前後で塗膜表面の変化がない。
×:浸漬後、塗料が一部剥げ落ちている。
【0119】
<塗料の配合安定性評価方法>
(1)ゲル物発生の有無
得られた水性塗料を30℃に温調し、5日静置しておき、ゲル物の発生を粒ゲージを使用し目視にて評価すると共に、粘度をB型粘度計で測定し、静置前後での粘度変化を評価した。ゲル物が発生しない場合を○、ゲル物が発生した場合を×とした。
(2)粘度変化
得られた水性塗料を30℃に温調し、5日間静置しておき、静置前後での粘度変化をB型粘度計で測定した。以下の式により、粘度変化率を算出し、変化率が50%未満の場合を○、50〜150%未満の場合を△、150%以上の場合を×とした。
粘度変化率(%)={(静置後の粘度)−(静置前の粘度)}/(静置前の粘度)x100
【0120】
評価例6(水性接着剤としての評価)
実施例6で得たポリウレタン樹脂水分散体(Q−6)100部に対して、硬化剤として、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体を6部混合して、25℃での粘度が4,000〜5,000mPa・sになるように増粘剤(サンノプコ製「SNシックナーA−803」)で調整し、水性接着剤(X−1)を得た。
【0121】
評価例7〜8(水性接着剤としての評価)
ポリウレタン樹脂水分散体(Q−6)の代わりにポリウレタン樹脂水分散体(Q−7)〜(Q−8)を、評価例6で使用した(Q−6)と固形分含量が同等となるように添加する用いる以外は、評価例6と同様にして、評価例7〜8用の水性接着剤(X−2)〜(X−3)を得た。
水性接着剤(X−1)〜(X−3)について、下記試験方法に基づいての耐水性及び接着剤の配合安定性を評価した結果を表5に示す。
【0122】
比較評価例3〜4
ポリウレタン樹脂水分散体(Q−6)の代わりにポリウレタン樹脂水分散体(Q’−1)及び(Q’−2)を、評価例6で使用した(Q−6)と固形分含量が同等となるように添加するる以外は、評価例6と同様にして比較用の水性接着剤(X’−1)及び(X’−2)を得た。
水性接着剤(X’−1)及び(X’−2)について、下記試験方法に基づいて耐水性及び接着剤の配合安定性を評価した結果を表5に示す。
【0123】
<水性接着剤の耐水接着性評価方法>
上記接着強度の評価方法と同様に作製した試験片を、沸騰水に1時間浸漬後直ちに剥離強度を測定した。剥離強度が、25mm幅で100g以上を耐水接着性○、100g未満を耐水接着性×とした。
【0124】
<水性接着剤の配合安定性評価方法>
(1)ゲル物発生の有無
得られた水性接着剤を30℃に温調し、5日間静置しておき、ゲル物の発生を粒ゲージを使用し目視にて評価すると共に、粘度をB型粘度計で測定し、静置前後での粘度変化を評価した。ゲル物が発生しない場合を○、ゲル物が発生した場合を×とした。
(2)粘度変化
得られた水性接着剤を30℃に温調し、5日間静置しておき、静置前後での粘度変化をB型粘度計で測定した。以下の式により、粘度変化率を算出し、変化率が50%未満の場合を○、50〜150%未満の場合を△、150%以上の場合を×とした。
粘度変化率(%)={(静置後の粘度)−(静置前の粘度)}/(静置前の粘度)x100
【0125】
【表5】
【0126】
評価例9(水性繊維加工処理剤としての評価)
ポリウレタン樹脂水性分散体を用いて以下のように顔料捺染糊を作製した。
実施例9で得たポリウレタン樹脂水分散体(Q−9)100部に対して、粘弾性調整剤[「SNシックナー618」サンノプコ(株)製]8.9部、シリコン系消泡剤[「SNデフォーマー777」サンノプコ(株)製]0.9部、水35部、酸化チタン44.6部及び顔料[「NL レッド FR3R−D」山宋実業(株)社製]18.9部を混合して、顔料捺染糊(Y−1)を得た。顔料捺染糊(Y−1)について、下記試験方法に基づいて顔料捺染された繊維布の耐水性及び顔料捺染糊の造膜性を試験した結果を表6に示す。
【0127】
評価例10〜13(水性繊維加工処理剤としての評価)
ポリウレタン樹脂水分散体(Q−9)の代わりにポリウレタン樹脂水分散体(Q−10)〜(Q−13)を、評価例9で使用した(Q−9)と固形分含量が同等となるように添加する用いる以外は、評価例9と同様にして、評価例10〜13用の水性繊維加工処理剤(X−2)〜(X−5)を得た。
水性繊維加工処理剤(X−1)〜(X−5)について、下記試験方法に基づいての耐水性及び繊維加工処理剤の配合安定性を評価した結果を表6に示す。
【0128】
比較評価例5〜6
ポリウレタン樹脂水分散体(Q−9)の代わりにポリウレタン樹脂水分散体(Q’−3)及び(Q’−4)を、評価例9で使用した(Q−9)と固形分含量が同等となるように添加する以外は、評価例9と同様にして比較用の顔料捺染糊(Y’−1)及び(Y’−2)を得た。顔料捺染糊(Y’−1)及び(Y’−2)について、下記試験方法に基づいて顔料捺染された繊維布の耐水性及び顔料捺染糊の配合安定性を試験した結果を表6に示す。
【0129】
<顔料捺染された繊維布の耐水性評価方法>
顔料捺染糊を綿金巾の型の上に縦2cm×横10cmで膜厚が0.2mmとなるようにバーコーターを用いて塗布した。これを140℃に温調されたテンターで5分乾燥することにより顔料捺染された繊維布を得た。この顔料捺染された繊維布を、60℃のイオン交換水中に1日間浸漬した後、取り出して表面を捺染処理していない繊維布で軽く拭き、目視により以下の評価基準で評価した。
○:捺染処理していない繊維布に色移りしない。
×:捺染処理していない繊維布に色移りがみられる。
【0130】
<顔料捺染糊の配合安定性評価方法>
(1)ゲル物発生の有無
得られた顔料捺染糊を30℃に温調し、5日間静置しておき、ゲル物の発生を粒ゲージを使用し目視にて評価すると共に、粘度をB型粘度計で測定し、静置前後での粘度変化を評価した。ゲル物が発生しない場合を○、ゲル物が発生した場合を×とした。
(2)粘度変化
得られた顔料捺染糊を30℃に温調し、5日間静置しておき、静置前後での粘度変化をB型粘度計で測定した。以下の式により、粘度変化率を算出し、変化率が50%未満の場合を○、50〜150%未満の場合を△、150%以上の場合を×とした。
粘度変化率(%)={(静置後の粘度)−(静置前の粘度)}/(静置前の粘度)x100
【0131】
【表6】