特開2017-166236(P2017-166236A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-166236(P2017-166236A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】車両用ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/20 20140101AFI20170825BHJP
   E05B 83/40 20140101ALI20170825BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20170825BHJP
   E05B 81/66 20140101ALI20170825BHJP
   E05B 79/20 20140101ALI20170825BHJP
【FI】
   E05B81/20 B
   E05B83/40
   E05B79/22 A
   E05B81/66
   E05B79/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-53167(P2016-53167)
(22)【出願日】2016年3月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】平本 茂憲
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250HH01
2E250JJ39
2E250JJ52
2E250KK02
2E250LL01
2E250MM01
(57)【要約】
【課題】車両用ドア開閉装置の駆動ギアを機械的可動範囲を規定する不動部材に当接させずに中立位置に復帰させる。
【解決手段】車両用ドア開閉装置は、ドア11をハーフラッチ状態またはフルラッチ状態に保持するラッチユニット29と、ドア11をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に変位させるパワークローズ機構43と、フルラッチ状態を解除してドア11を開扉可能状態にするパワーリリース機構46と、モータ59により駆動される駆動ギア60とを備える。前記パワーリリース機構46は前記駆動ギア60の駆動力により作動する構成とし、前記駆動ギア60の近傍には前記パワーリリース機構46の作動を完了させるに足る所定の駆動範囲を駆動すると切り替わるリターンスイッチ71を配置し、前記モータ59は前記リターンスイッチ71から信号により前記駆動ギア60を復帰させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体10に設けられたストライカ19と係合することで車両ドア11をハーフラッチ状態またはフルラッチ状態に保持するラッチユニット29と、前記ラッチユニット29のラッチ33を回転させて前記車両ドア11を前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態に変位させるパワークローズ機構43と、前記フルラッチ状態を解除して前記車両ドア11を開扉可能状態にするパワーリリース機構46と、モータ59により駆動される駆動ギア60とを備えた車両用ドア開閉装置において、前記パワーリリース機構46は前記駆動ギア60の駆動力により作動する構成とし、前記駆動ギア60の近傍には前記パワーリリース機構46の作動を完了させるに足る所定の駆動範囲を駆動すると切り替わるリターンスイッチ71を配置し、前記モータ59は前記リターンスイッチ71から信号により前記駆動ギア60を復帰させる車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、前記駆動ギア60は前記駆動ギア60の機械的可動範囲を規定する不動部材に当接する前に前記リターンスイッチ71を切り替える構成とした車両用ドア開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ラッチユニット29は前記車両ドア11の後部側に配置し、前記車両ドア11の前部側には前記車両ドア11のオープンハンドルに操作的に連結される中継機構25を配置し、前記中継機構25は前記ラッチユニット29に第1のワイヤーケーブルを有する伝達手段28を介して連結して前記オープンハンドルの操作により前記フルラッチ状態を解除可能に構成し、前記伝達手段28の第1のワイヤーケーブルは前記車両ドア11のインナーパネル27のケーブル孔85を介して前記インナーパネル27を貫通させ、前記伝達手段28の第1のワイヤーケーブルは前記ケーブル孔85に嵌入される防水用環状グロメット86を備えた車両用ドア開閉装置。
【請求項4】
請求項3において、前記伝達手段28の第1のワイヤーケーブルの両側のケーブルエンドは異なる形状とした車両用ドア開閉装置。
【請求項5】
請求項3において、前記伝達手段28は前記パワーリリース機構46の駆動力を前記中継機構25に伝達する第2のワイヤーケーブルを備え、第1のワイヤーケーブルおよび第2のワイヤーケーブルの各ケーブルエンドは互いに異なる形状とした車両用ドア開閉装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記パワーリリース機構46と前記ラッチユニット29との間には、前記パワーリリース機構46と前記ラッチユニット29との間の操作的連結を解除するラチェット動力経路開放レバー77を設け、前記ラチェット動力経路開放レバー77には手動キャンセル用ワイヤーケーブル76の一方側を連結し、前記手動キャンセル用ワイヤーケーブル76の他方側は、ケーブル端部を折り返して輪状に形成した手動非常操作部87を形成した車両用ドア開閉装置。
【請求項7】
山型の第1カム面72を有しモータ59によりパワーリリース方向と反対のパワークローズ方向に移動するギア連動カム体61と、前記第1カム面72との当接により切り替わる中立スイッチ69とを備え、前記中立スイッチ69は前記ギア連動カム体61が前記パワーリリース方向又は前記パワークローズ方向に移動すると前記第1カム面72から離間して切り替わり中立位置からの離脱が検知されると共に、前記ギア連動カム体61が前記パワーリリース方向又は前記パワークローズ方向への移動後反転して前記中立スイッチ69が山型の前記第1カム面72の左傾斜カム面73又は右傾斜カム面74に当接したら中立位置への復帰完了として前記モータ59を停止させる車両用ドア開閉装置において、前記中立スイッチ69の近傍には前記ギア連動カム体61がパワーリリース方向に移動すると前記第1カム面72に当接して切り替わるリターンスイッチ71を設け、前記リターンスイッチ71の切り替わりにより前記モータ59を反転させて前記ギア連動カム体61をパワークローズ方向に移動させる車両用ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開閉装置に関するものであり、特に、車両用ドア開閉装置の動力ユニットの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来周知の動力ユニットは、ラッチユニットのラッチを回転させて車両ドアをハーフラッチ状態からフルラッチ状態に変位させるパワークローズ機構と、前記フルラッチ状態を解除して前記車両ドアを開扉可能状態にするパワーリリース機構とを備えている。
【0003】
前記動力ユニットの制御には、複数のスイッチからの信号が利用されており、ラッチユニットのラッチおよびラチェットの状態(位置)を検出する被駆動側スイッチ群と、ラッチおよびラチェットをモータ動力で回転させる駆動機構の状態(位置)を検知する駆動側スイッチ群とに大別されるが、これらのスイッチからの信号以外に、モータの負荷電流の検知も制御に利用されている。モータの負荷電流とは、モータにより駆動される駆動部材が、機械的に不動部材に当接して駆動停止したときに生じる過剰な電流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−017361号公報
【特許文献2】特開2014−009477号公報
【特許文献3】特開2016−017347号公報
【特許文献4】特開2014−152496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記モータの負荷電流の検知は、動力ユニットの作動後に駆動ギアを中立位置に復帰させる際の信号として利用されているが、自動車においては、使用電圧が低いため、検出される過電流値は非常に高くなり、これに合わせて回路を設計すると、非常に容量の大きなヒューズやタフな基盤が必要になり、コスト的にとても不利であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、本発明は、車体10に設けられたストライカ19と係合することで車両ドア11をハーフラッチ状態またはフルラッチ状態に保持するラッチユニット29と、前記ラッチユニット29のラッチ33を回転させて前記車両ドア11を前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態に変位させるパワークローズ機構43と、前記フルラッチ状態を解除して前記車両ドア11を開扉可能状態にするパワーリリース機構46と、モータ59により駆動される駆動ギア60とを備えた車両用ドア開閉装置において、前記パワーリリース機構46は前記駆動ギア60の駆動力により作動する構成とし、前記駆動ギア60の近傍には前記パワーリリース機構46の作動を完了させるに足る所定の駆動範囲を駆動すると切り替わるリターンスイッチ71を配置し、前記モータ59は前記リターンスイッチ71から信号により前記駆動ギア60を復帰させる車両用ドア開閉装置としたものである。
また、本発明は、山型の第1カム面72を有しモータ59によりパワーリリース方向と反対のパワークローズ方向に移動するギア連動カム体61と、前記第1カム面72との当接により切り替わる中立スイッチ69とを備え、前記中立スイッチ69は前記ギア連動カム体61が前記パワーリリース方向又は前記パワークローズ方向に移動すると前記第1カム面72から離間して切り替わり中立位置からの離脱が検知されると共に、前記ギア連動カム体61が前記パワーリリース方向又は前記パワークローズ方向への移動後反転して前記中立スイッチ69が山型の前記第1カム面72の左傾斜カム面73又は右傾斜カム面74に当接したら中立位置への復帰完了として前記モータ59を停止させる車両用ドア開閉装置において、前記中立スイッチ69の近傍には前記ギア連動カム体61がパワーリリース方向に移動すると前記第1カム面72に当接して切り替わるリターンスイッチ71を設け、前記リターンスイッチ71の切り替わりにより前記モータ59を反転させて前記ギア連動カム体61をパワークローズ方向に移動させる車両用ドア開閉装置としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1、2に係る発明にあっては、リターンスイッチ71からの信号に基づいて駆動ギア60を中立復帰させることが出来るので、駆動ギア60が機械的可動範囲を規定する不動部材に当接することはなく、機械的当接時に発生する可能性がある過大な負荷電流がモータ59の制御回路に流れて、制御回路を損傷させる事態を回避できるとともに、制御回路のコストを削減できる。
本発明の請求項3に係る発明にあっては、ワイヤーケーブルを伝わって雨水がインナーパネル27の室内側に浸入するのを良好に防止できる。
本発明の請求項4、5に係る発明にあっては、ケーブルエンドの形状が異なるため、ケーブルエンドとレバー状部材の連結部は互いに専用連結される専用形状になり、連結ミスが防止される。
本発明の請求項6に係る発明にあっては、パワーリリース機構46の駆動系が固着等により作動不良になっても、手動キャンセル用ワイヤーケーブル76を引っ張れば、閉扉不能状態を免れることができ、また、手動非常操作部87はケーブル端部を折り返して輪状に形成してあるから、確実容易に操作できる。
本発明の請求項7に係る発明にあっては、リターンスイッチ71による駆動ギア60を中立復帰させる構成を確実に容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による車両用ドア開閉装置を備えた車体および車両ドアの概略を示した側面図。
図2】前記車両ドアの金属製インナーパネルの室外側を示した側面図。
図3】前記インナーパネルの室内側を示した側面図。
図4】前記車両用ドア開閉装置の後側ラッチ装置の室外側を示した側面図。
図5】前記後側ラッチ装置のラッチユニットの背面図。
図6】前記後側ラッチ装置のラッチユニットの正面図。
図7】前記ラッチユニットのラッチボディにスイッチアッセンブリーを取り付けた状態の正面図。
図8】前記ラッチユニットの正面側から見た分解図。
図9】閉扉時中立状態における前記後側ラッチ装置のラッチ用動力ユニットの駆動リングギアとギア連動カム体とスイッチアッセンブリーの拡大側面図。
図10】開扉時中立状態における前記ギア連動カム体と前記スイッチアッセンブリーの拡大側面図。
図11】パワークローズ作動の動作チャート図。
図12】閉扉時のパワーリリース作動の動作チャート図。
図13】開扉時における全開ロック開放用のパワーリリース作動の動作チャート図。
図14】前記後側ラッチ装置の防水カバーの斜視図。
図15】前記車両用ドア開閉装置の伝達手段の一方側の斜視図。
図16】前記伝達手段の環状グロメットと前記インナーパネルの拡大断面図。
図17】前記車両用ドア開閉装置の中継装置の室内側を示した側面図。
図18】前記伝達手段のパワーリリースキャンセル用のワイヤーケーブルのケーブルエンドを示す一部切り欠き説明図。
図19】前記伝達手段のパワーリリース機構用のワイヤーケーブルのケーブルエンドを示す一部切り欠き説明図。
図20】前記伝達手段のパワークローズキャンセル用のワイヤーケーブルのケーブルエンドを示す一部切り欠き説明図。
図21】前記伝達手段のラチェットリリース用のワイヤーケーブルのケーブルエンドを示す一部切り欠き説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る車両用ドア開閉装置の好適な実施形態を図面により説明する。本発明の車両用ドア開閉装置とは、広義においては、車両ドアを閉扉状態に維持するラッチ機能や、車両ドアを動力により開閉移動させる動力機能や、車両ドアを不正開扉を防止するロック機能、および、これらの機能を互いに操作的に連結する中継機能等を備えた装置を意味する。
【0010】
図1は、前記車両用ドア開閉装置を備えた車両の側面を示しており、車両は、車体10と、車両ドア11と、車体10のドア開口部12とを備えている。車体10には前後方向の複数のガイドレール13が固定され、車両ドア11には各ガイドレール13にスライド自在に係合するブラケット14が設けられ、車両ドア11は車体10に対して前後方向にスライド自在に取り付けられる。
【0011】
前記車体10の後部側面であるクオータパネル15の室内側空間には、モータ動力で車両ドア11を前後方向に開閉移動させる動力スライド装置16が設けられる。前記ドア開口部12の前縁部には前側ストライカ17が、また、前記車両ドア11の前端には前側ストライカ17と係合する前側ラッチ装置18が、それぞれ設けられ、同様に、ドア開口部12の後縁部には後側ストライカ19が、また、車両ドア11の後端には後側ストライカ19と係合する後側ラッチ装置20が、それぞれ設けられる。これらのラッチ装置18、20は周知のようにラッチ及びラチェットを備え、ストライカ17、19との係合により車両ドア11を閉扉状態に保持する。
【0012】
また、前記車両ドア11には、ラッチ及びラチェット機構を備えた全開ロック21が設けられ、全開ロック21は車両ドア11が開扉スライドにより所定の全開位置まで移動すると、車体10に固定したストライカ形状の全開ストライカ22と係合して、車両ドア11を全開位置に保持する。
【0013】
前記車両ドア11の室外面には外側オープンハンドル23が設けられ、車両ドア11の室内面には内側オープンハンドル24が設けられる。車両ドア11の内部空間には業界においてリモートコントロール部と称される手動操作力やモータ駆動力の中継装置25が配設される。外側オープンハンドル23および内側オープンハンドル24の操作力は中継装置25を介して前側ラッチ装置18、後側ラッチ装置20および全開ロック21に伝達される。閉扉時に各オープンハンドル23、24が操作されると、前側ラッチ装置18と前側ストライカ17との係合、および後側ラッチ装置20と後側ストライカ19との係合が解除され、車両ドア11は開扉可能になり、また、開扉時に各オープンハンドル23、24が操作されると、全開ロック21と全開ストライカ22との係合が解除され、車両ドア11は閉扉可能になる。
【0014】
前記車両ドア11は、周知のように、車外に面する金属製アウターパネル26と、室内に面するトリムパネル(図示なし)と、アウターパネル26とトリムパネルとの間の金属製インナーパネル27との3重構造になっており、図2にはインナーパネル27の室外側を、また、図3にはインナーパネル27の室内側を示している。前記後側ラッチ装置20はインナーパネル27の室外側面の後部に配置され、前記中継装置25はインナーパネル27の室内側面の前部に配置される。後側ラッチ装置20と中継装置25とは複数のワイヤーケーブルからなる伝達手段28により機能的に連結する。
【0015】
前記後側ラッチ装置20は、図4のように、前記後側ストライカ19と噛み合うラッチユニット29と、ラッチ用動力ユニット30とを備えている。ラッチ用動力ユニット30は、ラッチユニット29をハーフラッチ状態からフルラッチ状態にモータ動力で変位させるパワークローズ機構と、ラッチユニット29と後側ストライカ19との噛合状態をモータ動力で解除して車両ドア11を開扉可能状態にするパワーリリース機構とを有する。なお、パワーリリース機能の操作力は中継装置25を経由して前側ラッチ装置18のラッチユニットにも伝達される。
【0016】
前記ラッチユニット29は、図5のように、合成樹脂等で形成されるラッチボディ31を有し、ラッチボディ31にはラッチ軸32によりラッチ33が軸止されるとともに、ラチェット軸34によりラチェット35が軸止される。車両ドア11が閉扉移動すると、車体10に固定された後側ストライカ19が相対的にラッチボディ31の進入通路36内に進入し、ラッチ33の係合溝37と係合して、点線で示したアンラッチ位置のラッチ33をフルラッチ方向(反時計回転方向)に回転させる。ラチェット35はバネ弾力により反時計回転方向に付勢されていて、ラッチ33がハーフラッチ位置になると、ラチェット35は反時計回転してラッチ33のハーフラッチ係合部38に係合し、ラッチ33が更に回転してフルラッチ位置になると、ラッチ33のフルラッチ係合部39に係合し、車両ドア11は閉扉状態に維持される。
【0017】
図6は、前記ラッチボディ31の裏側(車両を基準にした前側)を示しており、前記ラッチ軸32の端部にはラッチスイッチレバー40およびパワークローズレバー41が取り付けられる。ラッチスイッチレバー40およびパワークローズレバー41は、前記ラッチ33と一体的に連動回転する構成で、実施例においては、ラッチボディ31を貫通する連結ピン42により互いに連結されていて、ラッチ軸32を中心に連動回転する。
【0018】
前記パワークローズレバー41には、前記ラッチ用動力ユニット30のパワークローズ機構43(図4参照)が関連的に連結され、パワークローズ機構43の回転力によりパワークローズレバー41が回転すると、ハーフラッチ位置のラッチ33がフルラッチ位置に回転する(ドアをフルラッチ状態に向かって閉めることを「CINCH(締め込み)」と表現することもある)。なお、図6はフルラッチ状態を示しており、パワークローズレバー41はフルラッチ位置にある。
【0019】
前記ラチェット軸34の端部には、前記ラチェット35と連動回転するラチェットレバー44が設けられる。ラチェットレバー44は好適には金属板製で、その一部を屈曲させてラチェット35に係合させ、連動可能としている。
【0020】
前記ラチェットレバー44には、前記ラッチ用動力ユニット30のリリースレバー45を操作的に接続し、リリースレバー45の回転によりラチェットレバー44は解除回転してラチェット35をラッチ33から解放して、車両ドア11を開扉可能状態にする。リリースレバー45は、後述するようにラッチ用動力ユニット30のパワーリリース機構46の動力若しくはオープンハンドル23、24の開扉操作力により作動回転する。
【0021】
前記ラッチボディ31の正面側の上部には、図7、8のように、ラッチユニット用のスイッチアッセンブリー47が設けられ、その合成樹脂製のスイッチケース48はネジ等の止着手段49によりラッチボディ31に固定される。スイッチケース48には、3個のスイッチ収納部50、51、52が一体的に形成され、スイッチ収納部50にはラチェットスイッチ53が、スイッチ収納部51にはハーフラッチスイッチ54が、スイッチ収納部52にはフルラッチスイッチ55が、それぞれ予め収納されてアッセンブリーとして別に製造され、各スイッチ53〜55が取り付けられた状態でスイッチケース48は、ラッチボディ31に止着手段49で固定される。
【0022】
前記ハーフラッチスイッチ54およびフルラッチスイッチ55は、前記ラッチ33と共に連動回転する前記ラッチスイッチレバー40のラッチカム面56と順次当接し、ラッチ33がハーフラッチになるとハーフラッチスイッチ54がONになり、ラッチ33がフルラッチになるとハーフラッチスイッチ54に加えてフルラッチスイッチ55もONになる。なお、ハーフラッチスイッチ54とフルラッチスイッチ55は、ラッチ33の回転位置を相対的に検出するだけであるから、実際にラチェット35がラッチ33のハーフラッチ係合部38又はフルラッチ係合部39に係合しているかを示すものではない。
【0023】
前記ラチェットスイッチ53は、前記ラチェットレバー44と一体回転する図4のラチェットカムレバー57との当接によりON・OFFする。実施例のラチェットスイッチ53は「ノーマルクローズ型」を使用しており、ラチェット35がラッチ33に係合するとスイッチが押されてOFFになり、動作チャート図に示したように出力を停止させる。スイッチケース48は、前記進入通路36を区画するラッチボディ31の背面側膨出部58より実質的に上方に配置される。
【0024】
前記パワークローズ機構43と前記パワーリリース機構46を有するラッチ用動力ユニット30は、共通の1つのモータ59(図4)により駆動され、モータ59の正転および逆転によりリング状の駆動ギア60が中立位置から反時計回転(パワークローズ回転・シンチ回転)および時計回転(パワーリリース回転)する。ラッチ用動力ユニットの構成自体は、特開2016−17361号公報や特開2014−9477号公報に記載された従来構成を代用でき細部構成の説明は省略するが、図4において、モータ59の動力で駆動ギア60が中立位置から反時計回転すると、パワークローズ機構43を介して図6のパワークローズレバー41がフルラッチ方向に回転し、ラッチ33がフルラッチ位置に至ると、ラッチ33のフルラッチ係合部39にラチェット35が係合し、閉扉状態になる。また、駆動ギア60が中立位置から時計回転(パワーリリース回転)すると、パワーリリース機構46が作動し、ワイヤーケーブルからなる伝達手段28を介して中継装置25に動力が伝達され、中継装置25から再度伝達手段28を介してリリースレバー45に動力が戻され、図6のラチェットレバー44を回転させ、ラチェット35をラッチ33から離脱させ開扉可能状態になる。中継装置25を経由させるのは前側ラッチ装置18にもパワーリリース機構46の動力を伝達させるためである。
【0025】
前記駆動ギア60は、パワークローズ回転又はパワーリリース回転した後、反転して中立位置に戻されるが、後述するように、駆動ギア60の中立位置には、主にパワークローズ回転により閉扉状態なった後に戻される閉扉時中立位置と、パワーリリース回転により開扉状態になった後に戻される開扉時中立位置の2種類が存在する。なお、正確に述べると、動力によらない閉扉又は開扉が行われた後の駆動ギア60の中立位置は、必ずしも「閉扉時中立位置」や「開扉時中立位置」と完全には一致しないが、本願は、動力による開閉制御に関するものであるため、これを中心に説明する。
【0026】
前記駆動ギア60にはギア連動カム体61が取り付けられ、ギア連動カム体61の近傍には、図9のように、動力ユニット用のスイッチアッセンブリー62が設けられる。スイッチアッセンブリー62の合成樹脂製のスイッチケース63はラッチ用動力ユニット30のベースプレート64にネジ等の止着手段65により固定される。スイッチケース63には、3個のスイッチ収納部66、67、68が一体的に形成され、スイッチ収納部66には中立スイッチ69が収納され、スイッチ収納部67にはギア検出スイッチ70が収納され、中央のスイッチ収納部68にはリターンスイッチ71が収納され、スイッチケース63と各スイッチ69〜71はアッセンブリーとして別製造される。
【0027】
前記中立スイッチ69は、ギア連動カム体61の端部に形成した山型の第1カム面72との当接によりON・OFFする。実施例の中立スイッチ69は「ノーマルクローズ型」を使用しており、第1カム面72に押されるとOFFになり、動作チャート図に示したように出力を停止さる。
【0028】
図9のように、第1カム面72の左傾斜カム面73が中立スイッチ69に接触してOFFになっている状態が、駆動ギア60の閉扉時中立位置となる。図9の状態からパワーリリース作動が開始されると、駆動ギア60は時計回転し、中立スイッチ69は第1カム面72を乗り越えてその右傾斜カム面74から離間してOFFからONになる。
【0029】
前記ギア検出スイッチ70は、ギア連動カム体61には単一円弧面で形成された第2カム面75との当接によりONになる構成である。
【0030】
図10は、開扉時中立状態の時のギア連動カム体61とスイッチ69〜71との関係を示しており、開扉中立状態では、第1カム面72の右傾斜カム面74に中立スイッチ69が接触してOFFになっており、また、第2カム面75の左端部にギア検出スイッチ70が接触してONになっている。
【0031】
(パワークローズ機構による閉扉作動)
パワークローズ機構43による閉扉作動について図11のチャート図に基づいて説明すると、動力スライド装置16又はマニュアルにより車両ドア11を閉扉方向へ移動させ、後側ストライカ19がラッチ33に当接して、ラッチ33をフルラッチ方向に回転させ、ラッチ33のハーフラッチ係合部38がラチェット35の爪部を通り過ぎると、ラチェット35が回転して「ノーマルクローズ型」のラチェットスイッチ53が押されてONからOFFになり、システム上、ハーフラッチ状態が検出されて、モータ59が起動してパワークローズ機構43がパワークローズ回転し、駆動ギア60が図10の開扉時中立位置から反時計回転しする。なお、動力スライド装置16はここで閉扉作動(シンチ作動)をパワークローズ機構43に引き継ぎ作動を終了し初期状態に復帰させる。
【0032】
パワークローズ機構43によりギア連動カム体61が図10においてパワークローズ方向に更に移動すると、ギア検出スイッチ70が第2カム面75から解放されてOFFになり、続いて「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69が第1カム面72を乗り越えて左傾斜カム面73から離間してOFFからONになり、継続して駆動ギア60が反時計回転することで、パワークローズ機構43を介して図6のパワークローズレバー41がフルラッチ方向に回転し、ラッチ33もフルラッチ方向に回転する。
【0033】
ラッチ33のフルラッチ方向の回転が継続されると、ラッチスイッチレバー40のカム面35がハーフラッチスイッチ54に接触してこれをONにし、続いて、フルラッチスイッチ55がカム面35との当接によりONなる。なお、この途中で、ラチェットスイッチ53はラッチ33の側面との当接でいったん開扉方向に押し戻されてOFFからONになっている。ラッチ33のフルラッチ方向の回転により、ラッチ33のフルラッチ係合部39がラチェット35の爪部を通り過ぎると、再度ラチェット35が回転してラチェットスイッチ53はONからOFFになり、システム上、フルラッチ状態が検出される。
【0034】
ラチェットスイッチ53からの切り替わり信号によりフルラッチ状態が検出されると、モータ59は逆転され、駆動ギア60はリリース方向に回転して中立復帰する。この中立復帰は、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69が第1カム面72の左傾斜カム面73に当接してONからOFFに切り替わることで検出され、駆動ギア60は図9に示した閉扉時中立位置で停止し、パワークローズ作動は終了し、車両ドア11の閉扉は完了する。
【0035】
以上のパワークローズ作動において、モータ59の回転制御は全て各種スイッチからの検出信号(ON/OFF信号)に基づいて行われる。このため、モータ59の動力で回転・移動・変位する駆動ギア60・パワークローズ機構43等の部材は、正常時の制御においては、機械的可動範囲を規定する当接ストッパー(不動部材)に当接することはなく、機械的当接時に発生する可能性がある過大な負荷電流がモータ59の制御回路に流れて、制御回路を損傷させる事態を回避できるとともに、制御回路のコストを削減できる。
【0036】
(パワーリリース機構による開扉作動)
ラチェット35がラッチ33のフルラッチ係合部39に係合した閉扉状態においては、駆動ギア60は図9の閉扉時中立位置にあり、この状態で、外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24が操作されたり、ドア開閉用のリモコンが操作されると、図12のチャート図のように、モータ59がリリース回転して駆動ギア60が図9において時計回転し、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69は第1カム面72を乗り越えて右傾斜カム面74から離間してONになる。また、中立スイッチ69がONに切り替わる前に、ギア検出スイッチ70が第2カム面75に当接してONに切り替わり、パワーリリース作動継続が検出される。
【0037】
駆動ギア60が時計回転を継続すると、パワーリリース機構46が作動し、ワイヤーケーブルからなる伝達手段28を介して中継装置25に動力が伝達され、中継装置25から再度伝達手段28を介してリリースレバー45に動力が戻され、図6のラチェットレバー44を回転させ、ラチェット35がラッチ33から離脱して車両ドア11は開扉可能状態になり、併せて、「ノーマルクローズ型」のラチェットスイッチ53は開放されてOFFからONになる。
【0038】
駆動ギア60が更にリリース回転すると、リターンスイッチ71が第1カム面72の左傾斜カム面73に当接してONになり、これに基づいて、モータ59は反転し、駆動ギア60を中立位置に向けてクローズ回転させ、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69が第1カム面72の右傾斜カム面74に当接してONからOFFに切り替わるると、モータ59は停止し、駆動ギア60は図10の開扉時中立位置に戻され、パワーリリース機構による開扉作動は終了する。なお、通常は、パワーリリース機構により車両ドア11が開扉可能状態、即ち、ラチェットスイッチ53がONになり、フルラッチスイッチ55がOFFになり、ハーフラッチスイッチ54がOFFになったら、動力スライド装置16による開扉方向への動力スライドが開始され、車両ドア11が開扉位置に移動し、全開ロック21により開扉位置に保持される。
【0039】
パワーリリース機構による開扉作動においても、モータ59の回転制御は全て各種スイッチからの検出信号(ON/OFF信号)に基づいて行われるため、駆動部材が機械的可動範囲を規定する当接ストッパーに当接することはなく、従って、回路に損傷をもたらす可能性のある過大な負荷電流の発生を回避できる。
【0040】
(パワーリリース機構による全開ロック解除作動)
車両ドア11が開扉位置に移動し、全開ロック21に全開ストライカ22が係合して車両ドア11が開扉位置に保持された状態において、外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24が操作されたり、ドア開閉用のリモコンが操作されると、モータ59がリリース回転して図10の開扉時中立位置にある駆動ギア60は時計回転し、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69は、第1カム面72を乗り越えて右傾斜カム面74から離間して図13のチャート図にようにONになる。なお、ドア11の開扉状態を監視するギア検出スイッチ70は第2カム面75に継続して当接してONになっている。
【0041】
駆動ギア60が時計回転を継続すると、パワーリリース機構46が作動し、ワイヤーケーブルからなる伝達手段28を介して中継装置25に動力が伝達され、中継装置25を経由して全開ロック21のラチェットを動かしてラッチから離脱させ、全開ロック21と全開ストライカ22との係合を解除する。これにより、車両ドア11は閉扉可能状態となる。
【0042】
駆動ギア60が更にリリース回転すると、リターンスイッチ71が第1カム面72の左傾斜カム面73に当接してONになり、これに基づいて、モータ59は反転し、駆動ギア60を中立位置に向けてクローズ回転させ、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69が第1カム面72の右傾斜カム面74に当接してONからOFFに切り替わるると、モータ59は停止し、駆動ギア60は図10の開扉時中立位置に戻され、パワーリリース機構による全開ロック解除作動は終了する。なお、通常は、リターンスイッチ71が左傾斜カム面73に当接してONになった時点で、パワーリリース機構による全開ロック21の解除は完了とされ、動力スライド装置16による動力閉扉が開始され、車両ドア11が所定位置まで閉扉したら、前述したようにパワークローズ機構による閉扉作動が開始される。
【0043】
開扉時パワーリリース作動においても、モータ59の回転制御は全て各種スイッチからの検出信号(ON/OFF信号)に基づいて行われるため、駆動部材が機械的可動範囲を規定する当接ストッパーに当接することはなく、従って、回路に損傷をもたらす可能性のある過大な負荷電流の発生を回避できる。
【0044】
図2および図3に戻って、前記伝達手段28は、4本のワイヤーケーブルを有しており、4本の一方側はインナーパネル27の室外側に配置したラッチ用動力ユニット30に操作的に連結させている。1本目のワイヤーケーブル76は、ラッチ用動力ユニット30のラチェット動力経路開放レバー77に連結される。ラチェット動力経路開放レバー77は、パワーリリース機構46とリリースレバー45との間の動力伝達経路を遮断・開放するもので、動力伝達経路が開放されると、リリースレバー45はバネ弾力より回転可能となり、仮にパワーリリース機構46がモータ59等の故障により作動不良(駆動系固着)になっても、これに影響されることなく、ラチェット35がラッチ33に係合できるようにして、駆動系の作動不良に基づく閉扉不能状態を解消できる。
【0045】
2本目のワイヤーケーブル78はパワーリリース機構46に連結させ、パワーリリース機構46の回転を中継装置25に伝達する。3本目のワイヤーケーブル79はパワークローズ停止レバー80に連結する。パワークローズ停止レバー80は、外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24の操作力が中継装置25を介して伝達されると、パワークローズ機構43の作動をキャンセルする。4本目のワイヤーケーブル81はリリースレバー45に連結される。ワイヤーケーブル81は、外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24の操作力、また、パワーリリース機構46からワイヤーケーブル78を介して中継装置25に伝達された駆動力を、リリースレバー45に伝達して車両ドア11を開扉可能にする。
【0046】
図14は前記後側ラッチ装置20に取り付けられる防水カバー82を示しており、雨水が浸入しやすいインナーパネル27の室外側に配置される後側ラッチ装置20の防水性を向上させる。防水カバー82の車両を基準にした前縁には取付開口部83を形成する。
【0047】
前記伝達手段28は、前記取付開口部83を蓋するサイドカバー84を備え、サイドカバー84には4本のワイヤーケーブル76、78、79、81を貫通させている。4本のワイヤーケーブル76、78、79、81の他方側は、インナーパネル27のケーブル孔85(図15)を介して室内側に配策する。各ケーブル孔85にはゴム製の防水用環状グロメット86を嵌入させる。防水用環状グロメット86は、予め各ワイヤーケーブル76、78、79、81に取り付ける。サイドカバー84とワイヤーケーブル76、78、79、81と防水用環状グロメット86とは、アッセンブリーとして組み立てる。なお、インナーパネル27の中央の大きな開口部(サービスホール)やその他の小さな開口部は、防水的に蓋部材でシールする。
【0048】
前記伝達手段28は、上記のようにインナーパネル27のケーブル孔85を貫通して室外側から室内側に伸びるが、伝達手段28のワイヤーケーブル76、78、79、81には防水用環状グロメット86を設けているので、ワイヤーケーブル76、78、79、81を伝わって雨水がインナーパネル27の室内側に浸入するのを良好に防止できるとともに、アッセンブリーとして製造される伝達手段28を車両ドア11に取り付ける際の仮止めとしても使用できる。
【0049】
ワイヤーケーブル76、78、79、81の他方側は、インナーパネル27の室内側に配策され、ワイヤーケーブル76の他方側は、手動非常操作部87としてインナーパネル27の室内側面に止着され、常時はトリムパネルにより隠される。手動非常操作部87は手動で引っ張り操作しやすいように環状・輪状に形成され、環状部には手で引っ張る際の保護チューブ88が取り付けられ、折り返したワイヤー端部は潰し加工される固定具89によりワイヤー本体に固定される。ワイヤーケーブル76の一方側は前述したようにラチェット動力経路開放レバー77に連結され、パワーリリース機構46のモータ59等の故障等により駆動系が固着したとき、手動非常操作部87を引っ張ることによりラチェット動力経路開放レバー77を回転させて、モータ59等の駆動系からリリースレバー45を開放し、これにより、駆動系の作動不良に影響されることなく、ラチェット35がラッチ33に係合できるようにし、モータ59等の駆動系が固着しても閉扉不能状態に陥らないようにする。
【0050】
残りの3本の前記ワイヤーケーブル78、79、81の他方側は、前記中継装置25に連結する。中継装置の構成自体は、特開2016−17347号公報に記載された従来構成を代用でき細部構成の説明は省略するが、図17に示したように、ワイヤーケーブル78の他方側は中継装置25のアウターオープンレバー90に連結し、パワーリリース機構46の動力はワイヤーケーブル78を介してアウターオープンレバー90に伝達されるようにする。アウターオープンレバー90には外側オープンハンドル23が連結される。
【0051】
前記ワイヤーケーブル79の他方側は、クローズキャンセルレバー91に連結する。クローズキャンセルレバー91は外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24の操作で回転し、ワイヤーケーブル79を介してパワークローズ停止レバー80を回転させ、パワークローズ機構43の作動をキャンセルする。
【0052】
前記ワイヤーケーブル81の他方側は、開放レバー92に連結する。開放レバー92は、アウターオープンレバー90の回転若しくは内側オープンハンドル24の操作で回転し、リリースレバー45を作動させ、ラチェット35をラッチ33から離脱させて、開扉可能状態にする。
【0053】
前記伝達手段28は4本のワイヤーケーブル76、78、79、81を備え、8個のケーブルエンドを備え、好適には、8個のケーブルエンドは全て異なる形状に形成するが、望ましくは、少なくとも、インナーパネル27の室外側に伸びるワイヤーケーブル76、78、79、81の一方側のケーブルエンドは、互いに異なる形状とし、これに連結される各レバー状部材の回動端部の連結部も互いに異なる独自形状となるから、ケーブルエンドとレバー状部材の連結部は互いに専用連結される専用形状になって、連結ミスが防止される。また、同様に、インナーパネル27の室内側に伸びるワイヤーケーブル76、78、79、81の他方側のケーブルエンドも互いに異なる形状とし、互いに異なる連結部を備えたレバー状部材に連結させ、同様に、連結ミスの防止が図られる。なお、ワイヤーケーブル76の他方側は環状の手動非常操作部87に形成してあるため当然独自形状となる。
【0054】
7個のケーブルエンドの具体的形状は、図18以下に順次示しており、ワイヤーケーブル76の一方側のケーブルエンド93は図18の右方に、ワイヤーケーブル78の他方側のケーブルエンド94は図19の左方に、ワイヤーケーブル78の一方側のケーブルエンド95は図19の右方に、ワイヤーケーブル79の他方側のケーブルエンド96は図20の左方に、ワイヤーケーブル79の一方側のケーブルエンド97は図20の右方に、ワイヤーケーブル81の他方側のケーブルエンド98は図21の左方に、ワイヤーケーブル81の一方側のケーブルエンド99は図21の右方に、それぞれ示してある。
【符号の説明】
【0055】
10…車体、11…車両ドア、12…ドア開口部、13…ガイドレール、14…ブラケット、15…クオータパネル、16…動力スライド装置、17…前側ストライカ、18…前側ラッチ装置、19…後側ストライカ、20…後側ラッチ装置、21…全開ロック、22…全開ストライカ、23…外側オープンハンドル、24…内側オープンハンドル、25…中継装置、26…アウターパネル、27…インナーパネル、28…伝達手段、29…ラッチユニット、30…ラッチ用動力ユニット、31…ラッチボディ、32…ラッチ軸、33…ラッチ、34…ラチェット軸、35…ラチェット、36…進入通路、37…係合溝、38…ハーフラッチ係合部、39…フルラッチ係合部、40…ラッチスイッチレバー、41…パワークローズレバー、42…連結ピン、43…パワークローズ機構、44…ラチェットレバー、45…リリースレバー、46…パワーリリース機構、47…スイッチアッセンブリー、48…スイッチケース、49…止着手段、50…スイッチ収納部、51…スイッチ収納部、52…スイッチ収納部、53…ラチェットスイッチ、54…ハーフラッチスイッチ、55…フルラッチスイッチ、56…ラッチカム面、57…ラチェットカムレバー、58…背面側膨出部、59…モータ、60…駆動ギア、61…ギア連動カム体、62…スイッチアッセンブリー、63…スイッチケース、64…ベースプレート、65…止着手段、66…スイッチ収納部、67…スイッチ収納部、68…スイッチ収納部、69…中立スイッチ、70…ギア検出スイッチ、71…リターンスイッチ、72…第1カム面、73…左傾斜カム面、74…右傾斜カム面、75…第2カム面、76…ワイヤーケーブル、77…ラチェット動力経路開放レバー、78…ワイヤーケーブル、79…ワイヤーケーブル、80…パワークローズ停止レバー、81…ワイヤーケーブル、82…防水カバー、83…取付開口部、84…サイドカバー、85…ケーブル孔、86…防水用環状グロメット、87…手動非常操作部、88…保護チューブ、89…固定具、90…アウターオープンレバー、91…クローズキャンセルレバー、92…開放レバー、93…ケーブルエンド、94…ケーブルエンド、95…ケーブルエンド、96…ケーブルエンド、97…ケーブルエンド、98…ケーブルエンド、99…ケーブルエンド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2016年10月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体10に設けられたストライカ19と係合することで車両ドア11をハーフラッチ状態またはフルラッチ状態に保持するラッチユニット29と、前記ラッチユニット29のラッチ33を回転させて前記車両ドア11を前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態に変位させるパワークローズ機構43と、前記フルラッチ状態を解除して前記車両ドア11を開扉可能状態にするパワーリリース機構46と、モータ59により駆動される駆動ギア60とを備えた車両用ドア開閉装置において、前記パワーリリース機構46は前記駆動ギア60の駆動力により作動する構成とし、前記駆動ギア60の近傍には前記パワーリリース機構46の作動を完了させるに足る所定の駆動範囲を駆動すると切り替わるリターンスイッチ71を配置し、前記モータ59は前記リターンスイッチ71から信号により前記駆動ギア60を復帰させる車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、前記駆動ギア60は前記駆動ギア60の機械的可動範囲を規定する不動部材に当接する前に前記リターンスイッチ71を切り替える構成とした車両用ドア開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ラッチユニット29は前記車両ドア11の後部側に配置し、前記車両ドア11の前部側には前記車両ドア11のオープンハンドルに操作的に連結される中継装置25を配置し、前記中継装置25は前記ラッチユニット29に第1のワイヤーケーブルを有する伝達手段28を介して連結して前記オープンハンドルの操作により前記フルラッチ状態を解除可能に構成し、前記伝達手段28の第1のワイヤーケーブルは前記車両ドア11のインナーパネル27のケーブル孔85を介して前記インナーパネル27を貫通させ、前記伝達手段28の第1のワイヤーケーブルは前記ケーブル孔85に嵌入される防水用環状グロメット86を備えた車両用ドア開閉装置。
【請求項4】
請求項3において、前記伝達手段28の第1のワイヤーケーブルの両側のケーブルエンドは異なる形状とした車両用ドア開閉装置。
【請求項5】
請求項3において、前記伝達手段28は前記パワーリリース機構46の駆動力を前記中継装置25に伝達する第2のワイヤーケーブルを備え、第1のワイヤーケーブルおよび第2のワイヤーケーブルの各ケーブルエンドは互いに異なる形状とした車両用ドア開閉装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記パワーリリース機構46と前記ラッチユニット29との間には、前記パワーリリース機構46と前記ラッチユニット29との間の操作的連結を解除するラチェット動力経路開放レバー77を設け、前記ラチェット動力経路開放レバー77には手動キャンセル用ワイヤーケーブル76の一方側を連結し、前記手動キャンセル用ワイヤーケーブル76の他方側は、ケーブル端部を折り返して輪状に形成した手動非常操作部87を形成した車両用ドア開閉装置。
【請求項7】
山型の第1カム面72を有しモータ59によりパワーリリース方向と反対のパワークローズ方向に移動するギア連動カム体61と、前記第1カム面72との当接により切り替わる中立スイッチ69とを備え、前記中立スイッチ69は前記ギア連動カム体61が前記パワーリリース方向又は前記パワークローズ方向に移動すると前記第1カム面72から離間して切り替わり中立位置からの離脱が検知されると共に、前記ギア連動カム体61が前記パワーリリース方向又は前記パワークローズ方向への移動後反転して前記中立スイッチ69が山型の前記第1カム面72の左傾斜カム面73又は右傾斜カム面74に当接したら中立位置への復帰完了として前記モータ59を停止させる車両用ドア開閉装置において、前記中立スイッチ69の近傍には前記ギア連動カム体61がパワーリリース方向に移動すると前記第1カム面72に当接して切り替わるリターンスイッチ71を設け、前記リターンスイッチ71の切り替わりにより前記モータ59を反転させて前記ギア連動カム体61をパワークローズ方向に移動させる車両用ドア開閉装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開閉装置に関するものであり、特に、車両用ドア開閉装置の動力ユニットの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来周知の動力ユニットは、ラッチユニットのラッチを回転させて車両ドアをハーフラッチ状態からフルラッチ状態に変位させるパワークローズ機構と、前記フルラッチ状態を解除して前記車両ドアを開扉可能状態にするパワーリリース機構とを備えている。
【0003】
前記動力ユニットの制御には、複数のスイッチからの信号が利用されており、ラッチユニットのラッチおよびラチェットの状態(位置)を検出する被駆動側スイッチ群と、ラッチおよびラチェットをモータ動力で回転させる駆動機構の状態(位置)を検知する駆動側スイッチ群とに大別されるが、これらのスイッチからの信号以外に、モータの負荷電流の検知も制御に利用されている。モータの負荷電流とは、モータにより駆動される駆動部材が、機械的に不動部材に当接して駆動停止したときに生じる過剰な電流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−017361号公報
【特許文献2】特開2014−009477号公報
【特許文献3】特開2016−017347号公報
【特許文献4】特開2014−152496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記モータの負荷電流の検知は、動力ユニットの作動後に駆動ギアを中立位置に復帰させる際の信号として利用されているが、自動車においては、使用電圧が低いため、検出される過電流値は非常に高くなり、これに合わせて回路を設計すると、非常に容量の大きなヒューズやタフな基盤が必要になり、コスト的にとても不利であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、本発明は、車体10に設けられたストライカ19と係合することで車両ドア11をハーフラッチ状態またはフルラッチ状態に保持するラッチユニット29と、前記ラッチユニット29のラッチ33を回転させて前記車両ドア11を前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態に変位させるパワークローズ機構43と、前記フルラッチ状態を解除して前記車両ドア11を開扉可能状態にするパワーリリース機構46と、モータ59により駆動される駆動ギア60とを備えた車両用ドア開閉装置において、前記パワーリリース機構46は前記駆動ギア60の駆動力により作動する構成とし、前記駆動ギア60の近傍には前記パワーリリース機構46の作動を完了させるに足る所定の駆動範囲を駆動すると切り替わるリターンスイッチ71を配置し、前記モータ59は前記リターンスイッチ71から信号により前記駆動ギア60を復帰させる車両用ドア開閉装置としたものである。
また、本発明は、山型の第1カム面72を有しモータ59によりパワーリリース方向と反対のパワークローズ方向に移動するギア連動カム体61と、前記第1カム面72との当接により切り替わる中立スイッチ69とを備え、前記中立スイッチ69は前記ギア連動カム体61が前記パワーリリース方向又は前記パワークローズ方向に移動すると前記第1カム面72から離間して切り替わり中立位置からの離脱が検知されると共に、前記ギア連動カム体61が前記パワーリリース方向又は前記パワークローズ方向への移動後反転して前記中立スイッチ69が山型の前記第1カム面72の左傾斜カム面73又は右傾斜カム面74に当接したら中立位置への復帰完了として前記モータ59を停止させる車両用ドア開閉装置において、前記中立スイッチ69の近傍には前記ギア連動カム体61がパワーリリース方向に移動すると前記第1カム面72に当接して切り替わるリターンスイッチ71を設け、前記リターンスイッチ71の切り替わりにより前記モータ59を反転させて前記ギア連動カム体61をパワークローズ方向に移動させる車両用ドア開閉装置としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1、2に係る発明にあっては、リターンスイッチ71からの信号に基づいて駆動ギア60を中立復帰させることが出来るので、駆動ギア60が機械的可動範囲を規定する不動部材に当接することはなく、機械的当接時に発生する可能性がある過大な負荷電流がモータ59の制御回路に流れて、制御回路を損傷させる事態を回避できるとともに、制御回路のコストを削減できる。
本発明の請求項3に係る発明にあっては、ワイヤーケーブルを伝わって雨水がインナーパネル27の室内側に浸入するのを良好に防止できる。
本発明の請求項4、5に係る発明にあっては、ケーブルエンドの形状が異なるため、ケーブルエンドとレバー状部材の連結部は互いに専用連結される専用形状になり、連結ミスが防止される。
本発明の請求項6に係る発明にあっては、パワーリリース機構46の駆動系が固着等により作動不良になっても、手動キャンセル用ワイヤーケーブル76を引っ張れば、閉扉不能状態を免れることができ、また、手動非常操作部87はケーブル端部を折り返して輪状に形成してあるから、確実容易に操作できる。
本発明の請求項7に係る発明にあっては、リターンスイッチ71による駆動ギア60を中立復帰させる構成を確実に容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による車両用ドア開閉装置を備えた車体および車両ドアの概略を示した側面図。
図2】前記車両ドアの金属製インナーパネルの室外側を示した側面図。
図3】前記インナーパネルの室内側を示した側面図。
図4】前記車両用ドア開閉装置の後側ラッチ装置の室外側を示した側面図。
図5】前記後側ラッチ装置のラッチユニットの背面図。
図6】前記後側ラッチ装置のラッチユニットの正面図。
図7】前記ラッチユニットのラッチボディにスイッチアッセンブリーを取り付けた状態の正面図。
図8】前記ラッチユニットの正面側から見た分解図。
図9】閉扉時中立状態における前記後側ラッチ装置のラッチ用動力ユニットの駆動リングギアとギア連動カム体とスイッチアッセンブリーの拡大側面図。
図10】開扉時中立状態における前記ギア連動カム体と前記スイッチアッセンブリーの拡大側面図。
図11】パワークローズ作動の動作チャート図。
図12】閉扉時からのパワーリリース作動の動作チャート図。
図13】開扉時における全開ロック開放用のパワーリリース作動の動作チャート図。
図14】前記後側ラッチ装置の防水カバーの斜視図。
図15】前記車両用ドア開閉装置の伝達手段の一方側の斜視図。
図16】前記伝達手段の環状グロメットと前記インナーパネルの拡大断面図。
図17】前記車両用ドア開閉装置の中継装置の室内側を示した側面図。
図18】前記伝達手段のパワーリリースキャンセル用のワイヤーケーブルのケーブルエンドを示す一部切り欠き説明図。
図19】前記伝達手段のパワーリリース機構用のワイヤーケーブルのケーブルエンドを示す一部切り欠き説明図。
図20】前記伝達手段のパワークローズキャンセル用のワイヤーケーブルのケーブルエンドを示す一部切り欠き説明図。
図21】前記伝達手段のラチェットリリース用のワイヤーケーブルのケーブルエンドを示す一部切り欠き説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る車両用ドア開閉装置の好適な実施形態を図面により説明する。本発明の車両用ドア開閉装置とは、広義においては、車両ドアを閉扉状態に維持するラッチ機能や、車両ドアを動力により開閉移動させる動力機能や、車両ドア不正開扉を防止するロック機能、および、これらの機能を互いに操作的に連結する中継機能等を備えた装置を意味する。
【0010】
図1は、前記車両用ドア開閉装置を備えた車両の側面を示しており、車両は、車体10と、車両ドア11と、車体10のドア開口部12とを備えている。車体10には前後方向の複数のガイドレール13が固定され、車両ドア11には各ガイドレール13にスライド自在に係合するブラケット14が設けられ、車両ドア11は車体10に対して前後方向にスライド自在に取り付けられる。
【0011】
前記車体10の後部側面であるクオータパネル15の室内側空間には、モータ動力で車両ドア11を前後方向に開閉移動させる動力スライド装置16が設けられる。前記ドア開口部12の前縁部には前側ストライカ17が、また、前記車両ドア11の前端には前側ストライカ17と係合する前側ラッチ装置18が、それぞれ設けられ、同様に、ドア開口部12の後縁部には後側ストライカ19が、また、車両ドア11の後端には後側ストライカ19と係合する後側ラッチ装置20が、それぞれ設けられる。これらのラッチ装置18、20は周知のようにラッチ及びラチェットを備え、ストライカ17、19との係合により車両ドア11を閉扉状態に保持する。
【0012】
また、前記車両ドア11には、ラッチ及びラチェット機構を備えた全開ロック21が設けられ、全開ロック21は車両ドア11が開扉スライドにより所定の全開位置まで移動すると、車体10に固定したストライカ形状の全開ストライカ22と係合して、車両ドア11を全開位置に保持する。
【0013】
前記車両ドア11の室外面には外側オープンハンドル23が設けられ、車両ドア11の室内面には内側オープンハンドル24が設けられる。車両ドア11の内部空間には業界においてリモートコントロール部と称される手動操作力やモータ駆動力の中継装置25が配設される。外側オープンハンドル23および内側オープンハンドル24の操作力は中継装置25を介して前側ラッチ装置18、後側ラッチ装置20および全開ロック21に伝達される。閉扉時に各オープンハンドル23、24が操作されると、前側ラッチ装置18と前側ストライカ17との係合、および後側ラッチ装置20と後側ストライカ19との係合が解除され、車両ドア11は開扉可能になり、また、開扉時に各オープンハンドル23、24が操作されると、全開ロック21と全開ストライカ22との係合が解除され、車両ドア11は閉扉可能になる。
【0014】
前記車両ドア11は、周知のように、車外に面する金属製アウターパネル26と、室内に面するトリムパネル(図示なし)と、アウターパネル26とトリムパネルとの間の金属製インナーパネル27との3重構造になっており、図2にはインナーパネル27の室外側を、また、図3にはインナーパネル27の室内側を示している。前記後側ラッチ装置20はインナーパネル27の室外側面の後部に配置され、前記中継装置25はインナーパネル27の室内側面の前部に配置される。後側ラッチ装置20と中継装置25とは複数のワイヤーケーブルからなる伝達手段28により機能的に連結する。
【0015】
前記後側ラッチ装置20は、図4のように、前記後側ストライカ19と噛み合うラッチユニット29と、ラッチ用動力ユニット30とを備えている。ラッチ用動力ユニット30は、ラッチユニット29をハーフラッチ状態からフルラッチ状態にモータ動力で変位させるパワークローズ機構と、ラッチユニット29と後側ストライカ19との噛合状態をモータ動力で解除して車両ドア11を開扉可能状態にするパワーリリース機構とを有する。なお、パワーリリース機構の操作力は中継装置25を経由して前側ラッチ装置18のラッチユニットにも伝達される。
【0016】
前記ラッチユニット29は、図5のように、合成樹脂等で形成されるラッチボディ31を有し、ラッチボディ31にはラッチ軸32によりラッチ33が軸止されるとともに、ラチェット軸34によりラチェット35が軸止される。車両ドア11が閉扉移動すると、車体10に固定された後側ストライカ19が相対的にラッチボディ31の進入通路36内に進入し、ラッチ33の係合溝37と係合して、点線で示したアンラッチ位置のラッチ33をフルラッチ方向(反時計回転方向)に回転させる。ラチェット35はバネ弾力により反時計回転方向に付勢されていて、ラッチ33がハーフラッチ位置になると、ラチェット35は反時計回転してラッチ33のハーフラッチ係合部38に係合し、ラッチ33が更に回転してフルラッチ位置になると、ラッチ33のフルラッチ係合部39に係合し、車両ドア11は閉扉状態に維持される。
【0017】
図6は、前記ラッチボディ31の裏側(車両を基準にした前側)を示しており、前記ラッチ軸32の端部にはラッチスイッチレバー40およびパワークローズレバー41が取り付けられる。ラッチスイッチレバー40およびパワークローズレバー41は、前記ラッチ33と一体的に連動回転する構成で、実施例においては、ラッチボディ31を貫通する連結ピン42により互いに連結されていて、ラッチ軸32を中心に連動回転する。
【0018】
前記パワークローズレバー41には、前記ラッチ用動力ユニット30のパワークローズ機構43(図4参照)が関連的に連結され、パワークローズ機構43の回転力によりパワークローズレバー41が回転すると、ハーフラッチ位置のラッチ33がフルラッチ位置に回転する(ドアをフルラッチ状態に向かって閉めることを「CINCH(締め込み)」と表現することもある)。なお、図6はフルラッチ状態を示しており、パワークローズレバー41はフルラッチ位置にある。
【0019】
前記ラチェット軸34の端部には、前記ラチェット35と連動回転するラチェットレバー44が設けられる。ラチェットレバー44は好適には金属板製で、その一部を屈曲させてラチェット35に係合させ、連動可能としている。
【0020】
前記ラチェットレバー44には、前記ラッチ用動力ユニット30のリリースレバー45を操作的に接続し、リリースレバー45の回転によりラチェットレバー44は解除回転してラチェット35をラッチ33から解放して、車両ドア11を開扉可能状態にする。リリースレバー45は、後述するようにラッチ用動力ユニット30のパワーリリース機構46の動力若しくはオープンハンドル23、24の開扉操作力により作動回転する。
【0021】
前記ラッチボディ31の正面側の上部には、図7、8のように、ラッチユニット用のスイッチアッセンブリー47が設けられ、その合成樹脂製のスイッチケース48はネジ等の止着手段49によりラッチボディ31に固定される。スイッチケース48には、3個のスイッチ収納部50、51、52が一体的に形成され、スイッチ収納部50にはラチェットスイッチ53が、スイッチ収納部51にはハーフラッチスイッチ54が、スイッチ収納部52にはフルラッチスイッチ55が、それぞれ予め収納されてアッセンブリーとして別に製造され、各スイッチ53〜55が取り付けられた状態でスイッチケース48は、ラッチボディ31に止着手段49で固定される。
【0022】
前記ハーフラッチスイッチ54およびフルラッチスイッチ55は、前記ラッチ33と共に連動回転する前記ラッチスイッチレバー40のラッチカム面56と順次当接し、ラッチ33がハーフラッチになるとハーフラッチスイッチ54がONになり、ラッチ33がフルラッチになるとハーフラッチスイッチ54に加えてフルラッチスイッチ55もONになる。なお、ハーフラッチスイッチ54とフルラッチスイッチ55は、ラッチ33の回転位置を相対的に検出するだけであるから、実際にラチェット35がラッチ33のハーフラッチ係合部38又はフルラッチ係合部39に係合しているかを示すものではない。
【0023】
前記ラチェットスイッチ53は、前記ラチェットレバー44と一体回転する図6、8のラチェットカムレバー57との当接によりON・OFFする。実施例のラチェットスイッチ53は「ノーマルクローズ型」を使用しており、ラチェット35がラッチ33に係合するとスイッチが押されてOFFになり、動作チャート図に示したように出力を停止させる。スイッチケース48は、前記進入通路36を区画するラッチボディ31の背面側膨出部58より実質的に上方に配置される。
【0024】
前記パワークローズ機構43と前記パワーリリース機構46を有するラッチ用動力ユニット30は、共通の1つのモータ59(図4)により駆動され、モータ59の正転および逆転によりリング状の駆動ギア60が中立位置から反時計回転(パワークローズ回転・シンチ回転)および時計回転(パワーリリース回転)する。ラッチ用動力ユニットの構成自体は、特開2016−17361号公報や特開2014−9477号公報に記載された従来構成を代用でき細部構成の説明は省略するが、図4において、モータ59の動力で駆動ギア60が中立位置から反時計回転すると、パワークローズ機構43を介してパワークローズレバー41がフルラッチ方向に回転して図6の位置に変位し、これによりラッチ33がフルラッチ位置に至ると、ラッチ33のフルラッチ係合部39にラチェット35が係合し、閉扉状態になる。また、駆動ギア60が中立位置から時計回転(パワーリリース回転)すると、パワーリリース機構46が作動し、ワイヤーケーブルからなる伝達手段28(後記のワイヤーケーブル78)を介して中継装置25に動力が伝達され、中継装置25から再度伝達手段28(後記のワイヤーケーブル81)を介してリリースレバー45に動力が戻され、図6のラチェットレバー44を回転させ、ラチェット35をラッチ33から離脱させ開扉可能状態になる。中継装置25を経由させるのは前側ラッチ装置18にもパワーリリース機構46の動力を伝達させるためである。
【0025】
前記駆動ギア60は、パワークローズ回転又はパワーリリース回転した後、反転して中立位置に戻されるが、後述するように、駆動ギア60の中立位置には、主にパワークローズ回転により閉扉状態なった後に戻される閉扉時中立位置と、パワーリリース回転により開扉状態になった後に戻される開扉時中立位置の2種類が存在する。なお、正確に述べると、動力によらない閉扉又は開扉が行われた後の駆動ギア60の中立位置は、必ずしも「閉扉時中立位置」や「開扉時中立位置」と完全には一致しないが、本願は、動力による開閉制御に関するものであるため、これを中心に説明する。
【0026】
前記駆動ギア60にはギア連動カム体61が取り付けられ、ギア連動カム体61の近傍には、図9のように、動力ユニット用のスイッチアッセンブリー62が設けられる。スイッチアッセンブリー62の合成樹脂製のスイッチケース63はラッチ用動力ユニット30のベースプレート64にネジ等の止着手段65により固定される。スイッチケース63には、3個のスイッチ収納部66、67、68が一体的に形成され、スイッチ収納部66には中立スイッチ69が収納され、スイッチ収納部67にはギア検出スイッチ70が収納され、中央のスイッチ収納部68にはリターンスイッチ71が収納され、スイッチケース63と各スイッチ69〜71はアッセンブリーとして別製造される。
【0027】
前記中立スイッチ69は、ギア連動カム体61の端部に形成した山型の第1カム面72との当接によりON・OFFする。実施例の中立スイッチ69は「ノーマルクローズ型」を使用しており、第1カム面72に押されるとOFFになり、動作チャート図に示したように出力を停止さる。
【0028】
図9のように、第1カム面72の左傾斜カム面73が中立スイッチ69に接触してOFFになっている状態が、駆動ギア60の閉扉時中立位置となる。図9の状態からパワーリリース作動が開始されると、駆動ギア60は時計回転し、中立スイッチ69は第1カム面72を乗り越えてその右傾斜カム面74から離間してOFFからONになる。
【0029】
前記ギア検出スイッチ70は、ギア連動カム体61に単一円弧面で形成された第2カム面75との当接によりONになる構成である。
【0030】
図10は、開扉時中立状態の時のギア連動カム体61とスイッチ69〜71との関係を示しており、開扉中立状態では、第1カム面72の右傾斜カム面74に中立スイッチ69が接触してOFFになっており、また、第2カム面75の左端部にギア検出スイッチ70が接触してONになっている。
【0031】
(パワークローズ機構による閉扉作動)
パワークローズ機構43による閉扉作動について図11のチャート図に基づいて説明すると、動力スライド装置16又はマニュアルにより車両ドア11を閉扉方向へ移動させ、後側ストライカ19がラッチ33に当接して、ラッチ33をフルラッチ方向に回転させ、ラッチ33のハーフラッチ係合部38がラチェット35の爪部を通り過ぎると、ラチェット35が回転して「ノーマルクローズ型」のラチェットスイッチ53が押されてONからOFFになり、システム上、ハーフラッチ状態が検出されて、モータ59が起動してパワークローズ機構43がパワークローズ回転し、駆動ギア60が図10の開扉時中立位置から反時計回転する。なお、動力スライド装置16はここで閉扉作動(シンチ作動)をパワークローズ機構43に引き継ぎ作動を終了し初期状態に復帰させる。
【0032】
パワークローズ機構43によりギア連動カム体61が図10においてパワークローズ方向に更に移動すると、ギア検出スイッチ70が第2カム面75から解放されてOFFになり、続いて「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69が第1カム面72を乗り越えて左傾斜カム面73から離間してOFFからONになり、継続して駆動ギア60が反時計回転することで、パワークローズ機構43を介して図6のパワークローズレバー41がフルラッチ方向に回転し、ラッチ33もフルラッチ方向に回転する。
【0033】
ラッチ33のフルラッチ方向の回転が継続されると、ラッチスイッチレバー40のラッチカム面56がハーフラッチスイッチ54に接触してこれをONにし、続いて、フルラッチスイッチ55がラッチカム面56との当接によりONなる。なお、この途中で、ラチェットスイッチ53はラッチ33の側面との当接でいったん開扉方向に押し戻されてOFFからONになっている。ラッチ33のフルラッチ方向の回転により、ラッチ33のフルラッチ係合部39がラチェット35の爪部を通り過ぎると、再度ラチェット35が回転してラチェットスイッチ53はONからOFFになり、システム上、フルラッチ状態が検出される。
【0034】
ラチェットスイッチ53からの切り替わり信号によりフルラッチ状態が検出されると、モータ59は逆転され、駆動ギア60はリリース方向に回転して中立復帰する。この中立復帰は、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69が第1カム面72の左傾斜カム面73に当接してONからOFFに切り替わることで検出され、駆動ギア60は図9に示した閉扉時中立位置で停止し、パワークローズ作動は終了し、車両ドア11の閉扉は完了する。
【0035】
以上のパワークローズ作動において、モータ59の回転制御は全て各種スイッチからの検出信号(ON/OFF信号)に基づいて行われる。このため、モータ59の動力で回転・移動・変位する駆動ギア60・パワークローズ機構43等の部材は、正常時の制御においては、機械的可動範囲を規定する当接ストッパー(不動部材)に当接することはなく、機械的当接時に発生する可能性がある過大な負荷電流がモータ59の制御回路に流れて、制御回路を損傷させる事態を回避できるとともに、制御回路のコストを削減できる。
【0036】
(パワーリリース機構による開扉作動)
ラチェット35がラッチ33のフルラッチ係合部39に係合した閉扉状態においては、駆動ギア60は図9の閉扉時中立位置にあり、この状態で、外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24が操作されたり、ドア開閉用のリモコンが操作されると、図12のチャート図のように、モータ59がリリース回転して駆動ギア60が図9において時計回転し、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69は第1カム面72を乗り越えて右傾斜カム面74から離間してONになる。また、中立スイッチ69がONに切り替わる前に、ギア検出スイッチ70が第2カム面75に当接してONに切り替わり、パワーリリース作動継続が検出される。
【0037】
駆動ギア60が時計回転を継続すると、パワーリリース機構46が作動し、ワイヤーケーブルからなる伝達手段28(後記のワイヤーケーブル78)を介して中継装置25に動力が伝達され、中継装置25から再度伝達手段28(後記のワイヤーケーブル81)を介してリリースレバー45に動力が戻され、図6のラチェットレバー44を回転させ、ラチェット35がラッチ33から離脱して車両ドア11は開扉可能状態になり、併せて、「ノーマルクローズ型」のラチェットスイッチ53は開放されてOFFからONになる。
【0038】
駆動ギア60が更にリリース回転すると、リターンスイッチ71が第1カム面72の左傾斜カム面73に当接してONになり、これに基づいて、モータ59は反転し、駆動ギア60を中立位置に向けてクローズ回転させ、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69が第1カム面72の右傾斜カム面74に当接してONからOFFに切り替わるると、モータ59は停止し、駆動ギア60は図10の開扉時中立位置に戻され、パワーリリース機構による開扉作動は終了する。なお、通常は、パワーリリース機構により車両ドア11が開扉可能状態、即ち、ラチェットスイッチ53がONになり、フルラッチスイッチ55がOFFになり、ハーフラッチスイッチ54がOFFになったら、動力スライド装置16による開扉方向への動力スライドが開始され、車両ドア11が開扉位置に移動し、全開ロック21により開扉位置に保持される。
【0039】
パワーリリース機構による開扉作動においても、モータ59の回転制御は全て各種スイッチからの検出信号(ON/OFF信号)に基づいて行われるため、駆動部材が機械的可動範囲を規定する当接ストッパーに当接することはなく、従って、回路に損傷をもたらす可能性のある過大な負荷電流の発生を回避できる。
【0040】
(パワーリリース機構による全開ロック解除作動)
車両ドア11が開扉位置に移動し、全開ロック21に全開ストライカ22が係合して車両ドア11が開扉位置に保持された状態において、外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24が操作されたり、ドア開閉用のリモコンが操作されると、モータ59がリリース回転して図10の開扉時中立位置にある駆動ギア60は時計回転し、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69は、右傾斜カム面74から離間して図13のチャート図にようにONになる。なお、ドア11の開扉状態を監視するギア検出スイッチ70は第2カム面75に継続して当接してONになっている。
【0041】
駆動ギア60が時計回転を継続すると、パワーリリース機構46が作動し、ワイヤーケーブルからなる伝達手段28を介して中継装置25に動力が伝達され、中継装置25を経由して全開ロック21のラチェットを動かしてラッチから離脱させ、全開ロック21と全開ストライカ22との係合を解除する。これにより、車両ドア11は閉扉可能状態となる。
【0042】
駆動ギア60が更にリリース回転すると、リターンスイッチ71が第1カム面72の左傾斜カム面73に当接してONになり、これに基づいて、モータ59は反転し、駆動ギア60を中立位置に向けてクローズ回転させ、「ノーマルクローズ型」の中立スイッチ69が第1カム面72の右傾斜カム面74に当接してONからOFFに切り替わるると、モータ59は停止し、駆動ギア60は図10の開扉時中立位置に戻され、パワーリリース機構による全開ロック解除作動は終了する。なお、通常は、リターンスイッチ71が左傾斜カム面73に当接してONになった時点で、パワーリリース機構による全開ロック21の解除は完了とされ、動力スライド装置16による動力閉扉が開始され、車両ドア11が所定位置まで閉扉したら、前述したようにパワークローズ機構による閉扉作動が開始される。
【0043】
開扉時パワーリリース作動においても、モータ59の回転制御は全て各種スイッチからの検出信号(ON/OFF信号)に基づいて行われるため、駆動部材が機械的可動範囲を規定する当接ストッパーに当接することはなく、従って、回路に損傷をもたらす可能性のある過大な負荷電流の発生を回避できる。
【0044】
図2および図3に戻って、前記伝達手段28は、4本のワイヤーケーブルを有しており、4本の一方側はインナーパネル27の室外側に配置したラッチ用動力ユニット30に操作的に連結させている。1本目のワイヤーケーブル76の一方側は、ラッチ用動力ユニット30のラチェット動力経路開放レバー77に連結される。ラチェット動力経路開放レバー77は、パワーリリース機構46とリリースレバー45との間の動力伝達経路を遮断・開放するもので、動力伝達経路が開放されると、リリースレバー45はバネ弾力よりリリース回転可能となり、仮にパワーリリース機構46がモータ59等の故障により作動不良(駆動系固着)になっても、これに影響されることなく、ラチェット35がラッチ33に係合できるようにして、駆動系の作動不良に基づく閉扉不能状態を解消できる。
【0045】
2本目のワイヤーケーブル78の一方側はパワーリリース機構46に連結させ、パワーリリース機構46の回転を中継装置25に伝達する。3本目のワイヤーケーブル79の一方側はパワークローズ停止レバー80に連結する。パワークローズ停止レバー80は、外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24の操作力が中継装置25を介して伝達されると、パワークローズ機構43の作動をキャンセルする。4本目のワイヤーケーブル81の一方側はリリースレバー45に連結される。ワイヤーケーブル81は、外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24の操作力、また、パワーリリース機構46からワイヤーケーブル78を介して中継装置25に伝達された駆動力を、リリースレバー45に伝達して車両ドア11を開扉可能にする。
【0046】
図14は前記後側ラッチ装置20に取り付けられる防水カバー82を示しており、雨水が浸入しやすいインナーパネル27の室外側に配置される後側ラッチ装置20の防水性を向上させる。防水カバー82の車両を基準にした前縁には取付開口部83を形成する。
【0047】
前記伝達手段28は、前記取付開口部83を蓋するサイドカバー84を備え、サイドカバー84には4本のワイヤーケーブル76、78、79、81の一方側を貫通させている。4本のワイヤーケーブル76、78、79、81の他方側は、インナーパネル27のケーブル孔85(図16)を介して室内側に配策する。各ケーブル孔85にはゴム製の防水用環状グロメット86を嵌入させる。防水用環状グロメット86は、予め各ワイヤーケーブル76、78、79、81に取り付ける。サイドカバー84とワイヤーケーブル76、78、79、81と防水用環状グロメット86とは、アッセンブリーとして組み立てる。なお、インナーパネル27の中央の大きな開口部(サービスホール)やその他の小さな開口部は、防水的に蓋部材でシールする。
【0048】
前記伝達手段28は、上記のようにインナーパネル27のケーブル孔85を貫通して室外側から室内側に伸びるが、伝達手段28のワイヤーケーブル76、78、79、81には防水用環状グロメット86を設けているので、ワイヤーケーブル76、78、79、81を伝わって雨水がインナーパネル27の室内側に浸入するのを良好に防止できるとともに、アッセンブリーとして製造される伝達手段28を車両ドア11に取り付ける際の仮止めとしても使用できる。
【0049】
ワイヤーケーブル76、78、79、81の他方側は、インナーパネル27の室内側に配策され、ワイヤーケーブル76の他方側は、手動非常操作部87としてインナーパネル27の室内側面に止着され、常時はトリムパネルにより隠される。手動非常操作部87は手動で引っ張り操作しやすいように環状・輪状に形成され、環状部には手で引っ張る際の保護チューブ88が取り付けられ、折り返したワイヤー端部は潰し加工される固定具89によりワイヤー本体に固定される。ワイヤーケーブル76の一方側は前述したようにラチェット動力経路開放レバー77に連結され、パワーリリース機構46のモータ59等の故障等により駆動系が固着したとき、手動非常操作部87を引っ張ることによりラチェット動力経路開放レバー77を回転させて、モータ59等の駆動系からリリースレバー45を開放し、これにより、駆動系の作動不良に影響されることなく、ラチェット35がラッチ33に係合できるようにし、モータ59等の駆動系が固着しても閉扉不能状態に陥らないようにする。
【0050】
残りの3本の前記ワイヤーケーブル78、79、81の他方側は、前記中継装置25に連結する。中継装置の構成自体は、特開2016−17347号公報に記載された従来構成を代用でき細部構成の説明は省略するが、図17に示したように、ワイヤーケーブル78の他方側は中継装置25のアウターオープンレバー90に連結し、パワーリリース機構46の動力はワイヤーケーブル78を介してアウターオープンレバー90に伝達されるようにする。アウターオープンレバー90には外側オープンハンドル23連結される。
【0051】
前記ワイヤーケーブル79の他方側は、クローズキャンセルレバー91に連結する。クローズキャンセルレバー91は外側オープンハンドル23や内側オープンハンドル24の操作で回転し、ワイヤーケーブル79を介してパワークローズ停止レバー80を回転させ、パワークローズ機構43の作動をキャンセルする。
【0052】
前記ワイヤーケーブル81の他方側は、開放レバー92に連結する。開放レバー92は、アウターオープンレバー90の回転若しくは内側オープンハンドル24の操作で回転し、リリースレバー45を作動させ、ラチェット35をラッチ33から離脱させて、開扉可能状態にする。
【0053】
前記伝達手段28は4本のワイヤーケーブル76、78、79、81を備え、8個のケーブルエンドを備え、好適には、8個のケーブルエンドは全て異なる形状に形成するが、望ましくは、少なくとも、インナーパネル27の室外側に伸びるワイヤーケーブル76、78、79、81の一方側のケーブルエンドは、互いに異なる形状とし、これに連結される各レバー状部材の回動端部の連結部も互いに異なる独自形状となるから、ケーブルエンドとレバー状部材の連結部は互いに専用連結される専用形状になって、連結ミスが防止される。また、同様に、インナーパネル27の室内側に伸びるワイヤーケーブル76、78、79、81の他方側のケーブルエンドも互いに異なる形状とし、互いに異なる連結部を備えたレバー状部材に連結させ、同様に、連結ミスの防止が図られる。なお、ワイヤーケーブル76の他方側は環状の手動非常操作部87に形成してあるため当然独自形状となる。
【0054】
7個のケーブルエンドの具体的形状は、図18以下に順次示しており、ワイヤーケーブル76の一方側のケーブルエンド93は図18の右方に、ワイヤーケーブル78の他方側のケーブルエンド94は図19の左方に、ワイヤーケーブル78の一方側のケーブルエンド95は図19の右方に、ワイヤーケーブル79の他方側のケーブルエンド96は図20の左方に、ワイヤーケーブル79の一方側のケーブルエンド97は図20の右方に、ワイヤーケーブル81の他方側のケーブルエンド98は図21の左方に、ワイヤーケーブル81の一方側のケーブルエンド99は図21の右方に、それぞれ示してある。
【符号の説明】
【0055】
10…車体、11…車両ドア、12…ドア開口部、13…ガイドレール、14…ブラケット、15…クオータパネル、16…動力スライド装置、17…前側ストライカ、18…前側ラッチ装置、19…後側ストライカ、20…後側ラッチ装置、21…全開ロック、22…全開ストライカ、23…外側オープンハンドル、24…内側オープンハンドル、25…中継装置、26…アウターパネル、27…インナーパネル、28…伝達手段、29…ラッチユニット、30…ラッチ用動力ユニット、31…ラッチボディ、32…ラッチ軸、33…ラッチ、34…ラチェット軸、35…ラチェット、36…進入通路、37…係合溝、38…ハーフラッチ係合部、39…フルラッチ係合部、40…ラッチスイッチレバー、41…パワークローズレバー、42…連結ピン、43…パワークローズ機構、44…ラチェットレバー、45…リリースレバー、46…パワーリリース機構、47…スイッチアッセンブリー、48…スイッチケース、49…止着手段、50…スイッチ収納部、51…スイッチ収納部、52…スイッチ収納部、53…ラチェットスイッチ、54…ハーフラッチスイッチ、55…フルラッチスイッチ、56…ラッチカム面、57…ラチェットカムレバー、58…背面側膨出部、59…モータ、60…駆動ギア、61…ギア連動カム体、62…スイッチアッセンブリー、63…スイッチケース、64…ベースプレート、65…止着手段、66…スイッチ収納部、67…スイッチ収納部、68…スイッチ収納部、69…中立スイッチ、70…ギア検出スイッチ、71…リターンスイッチ、72…第1カム面、73…左傾斜カム面、74…右傾斜カム面、75…第2カム面、76…ワイヤーケーブル、77…ラチェット動力経路開放レバー、78…ワイヤーケーブル、79…ワイヤーケーブル、80…パワークローズ停止レバー、81…ワイヤーケーブル、82…防水カバー、83…取付開口部、84…サイドカバー、85…ケーブル孔、86…防水用環状グロメット、87…手動非常操作部、88…保護チューブ、89…固定具、90…アウターオープンレバー、91…クローズキャンセルレバー、92…開放レバー、93…ケーブルエンド、94…ケーブルエンド、95…ケーブルエンド、96…ケーブルエンド、97…ケーブルエンド、98…ケーブルエンド、99…ケーブルエンド。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4