【解決手段】 本発明の内装シート1は、熱可塑性樹脂を糸表面に有する糸4からなる織物2と、前記織物2の裏面に設けられた支持層3と、を有し、前記支持層3が、熱可塑性樹脂を含み、前記支持層3によって前記織物2の糸間の隙間が閉塞されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、ある層又は部材の「表面」は、内装シートを施工する施工面から遠い側の面を指し、「裏面」は、その反対側(内装シートを施工する施工面に近い側)の面を指す。
本明細書において、「〜」で表される数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0012】
[内装シート]
図1は、1つの実施形態の内装シートの平面図であり、
図2は、同内装シートの断面図であり、
図3及び
図4は、同内装シートの表面及び裏面の一部拡大平面図であり、
図5は、同内装シートの拡大断面図である。
図2の断面図は、織物及び支持層の詳細を表さない概略図である。
図1に示すように、内装シート1は、例えば、平面視長尺帯状に形成されている。本明細書において、長尺帯状は、長さ方向の長さが幅方向(幅方向は長さ方向に対して直交する方向)の長さに比して十分に長い長方形状であり、例えば、長さ方向の長さが幅方向の長さの2倍以上、好ましくは4倍以上である。
長尺帯状の内装シート1は、通常、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。
内装シート1の具体的な寸法としては、幅方向の長さが、例えば、500mm〜4000mmであり、長さ方向の長さが、10m以上である。
もっとも、内装シート1は、平面視略正方形状などの枚葉状に形成されていてもよい。
【0013】
本発明の内装シート1は、
図1乃至
図5に示すように、織物2と、前記織物2の裏面に設けられた支持層3と、を有する。前記織物2の糸間の隙間は、前記支持層3によって閉塞されている。なお、本発明において、織物の糸間の隙間が支持層によって閉塞されているとは、実質的に閉塞されていることをいう。実質的に閉塞されているとは、内装シートの施工時に、織物の糸間の隙間から接着剤が滲み出ない程度にその隙間が支持層によって閉塞されていることを含む。
内装シート1は、柔軟性を有する。内装シート1の柔軟性の程度としては、例えば、直径10cmの巻き芯の周囲にロール状に巻き付けることができる。
内装シート1の全体の厚みは、特に限定されず、例えば、0.5mm〜5mmであり、好ましくは、1mm〜2mmである。
以下、具体的に説明する。
【0014】
<織物>
織物2は、熱可塑性樹脂を糸表面に有する糸4から構成されている。織物2は、柔軟性を有する。
織物2は、通常、縦方向に延びる経糸41及び横方向に延びる緯糸42を含む糸4を、織り込んで得られたシート状物である。前記経糸41及び緯糸42は、何れも熱可塑性樹脂を糸表面に有する糸4であることを条件として、同じものを使用してもよく、或いは、異なるものを使用してもよい。経糸41及び緯糸42が異なる場合としては、何れも熱可塑性樹脂を糸表面に有する糸であって、(a)太さが異なる、(b)色又は柄が異なる、(c)一方がモノフィラメントで、もう一方がマルチフィラメントである、(d)材質が異なる、(e)一方が捩られ、もう一方が捩られていない、(f)前記(a)乃至(e)から選ばれる少なくとも2つの場合などが例示できる。
織物2の織り方は、特に限定されず、平織り、綾織り、朱子織りなどが挙げられる。
織物2の厚みは、特に限定されず、例えば、0.5mm〜3mmであり、好ましくは0.8mm〜2.5mmである。ただし、織物2は、経糸41及び緯糸42の織りにより、表裏面において凹凸状となっているため、前記織物2の厚み2Hは、
図5に示すように、表面側に突出した凸部の最上端Xから裏面側に突出した凸部の最下端Yまでの長さをいう。
【0015】
織物2を構成する糸4は、その糸表面に熱可塑性樹脂を有する。つまり、前記糸4は、その表面を含む表面部が少なくとも熱可塑性樹脂で構成されている。このような糸4としては、芯材と芯材を被覆した被覆層とを有し、且つ、被覆層が熱可塑性樹脂で構成されている、又は、糸4全体が熱可塑性樹脂で構成されているものが挙げられる。
前記糸4の断面視における外形は、特に限定されず、円状又は楕円状の他、星形状などの異形状であってもよい。
また、前記芯材の断面視における外形も、特に限定されず、円状又は楕円状の他、星形状などの異形状であってもよい。
【0016】
前記糸表面の熱可塑性樹脂(糸4が芯材と被覆層からなる場合には、被覆層の熱可塑性樹脂)としては、特に限定されず、塩化ビニル系樹脂;オレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;アミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどが挙げられる。機械的強度及び加工性に優れ、解れ難い糸を構成できる上、比較的安価であることから、前記糸4は、少なくとも表面部が塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂で構成されていることが好ましい。
なお、本明細書において、主成分とは、その層を構成する樹脂成分(ただし、添加剤を除く)の中で最も多い成分(質量比)をいう。主成分樹脂の量は、その層を構成する樹脂成分全体の量を100質量%とした場合、50質量%を超え、好ましくは、70質量%以上であり、より好ましくは80質量以上%である。主成分樹脂の量の上限は、100質量%である。主成分樹脂の量が100質量%未満である場合において、その層に含まれる主成分樹脂以外の樹脂は、公知の樹脂成分を用いることができる。
【0017】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマーを付加重合させて合成される。前記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造された樹脂が挙げられる。加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましい。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
織物2の糸4又は被覆層が塩化ビニル系樹脂を主成分とする場合、その塩化ビニル系樹脂としては、ペースト塩化ビニル系樹脂又は/及びサスペンション塩化ビニル系樹脂を用いることができる。特に、織物2の糸4は、熱可塑性樹脂としてサスペンション塩化ビニル系樹脂を主成分として含むことが好ましい。
【0018】
サスペンション塩化ビニル系樹脂は、例えば、懸濁重合法で得られるポリ塩化ビニル系樹脂である。サスペンション塩化ビニル系樹脂は、粒子径が好ましくは20μm〜100μmの微細粉末である。ただし、前記粒子径は、体積基準の粒度分布におけるメディアン径(D50)である。サスペンション塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、700〜1500程度が好ましく、700〜1100程度がより好ましく、700〜1000程度がさらに好ましい。ただし、前記粒子径は、体積基準の粒度分布におけるメディアン径(D50)である。
前記サスペンション塩化ビニル系樹脂は、K値50〜90程度のものが好ましく、55〜75のものがより好ましい。
また、織物2の糸4又は被覆層は、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂以外に、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、可塑剤、充填剤、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、防黴剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
織物2の糸4又は被覆層は、熱可塑性樹脂及び必要に応じて添加される添加剤を含む樹脂の硬化物である。
【0019】
糸4が芯材と被覆層とを有する場合、その被覆層は、芯材を被覆し且つ糸表面を構成している。
被覆層は、芯材の周囲において略均一な厚みで被覆していてもよく、或いは、不均一な厚みで被覆していてもよい。
被覆層の肉厚は、特に限定されず、例えば、芯材が断面視円形状である場合を基準して、芯材の直径×0.2倍〜芯材の直径×1.3倍程度である。ただし、芯材の外形は、断面視円形状に限られないので、前記芯材が断面視円形状以外の異形状である場合の前記芯材の直径は、その異形状の面積と同じ面積の円を想定し、その想定円の直径に相当する。なお、前記被覆層の肉厚は、被覆層が不均一な厚みである場合には、その最大厚みに相当する。
前記芯材は、モノフィラメント(単繊維)から構成されていてもよく、或いは、複数本の単繊維を引き揃えたもの又は複数本の単繊維を撚り合わせたものから構成されていてもよい。また、芯材の断面視外形は、特に限定されず、円状又は楕円状の他、星形状などの異形状であってもよい。
芯材としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリアミドなどのアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる合成繊維;セルロース、ウールなどの天然繊維;レーヨンなどの半合成繊維などを用いることができる。好ましくは、芯材として、ポリエステル系樹脂などの合成繊維が用いられる。
【0020】
また、織物2を構成する糸4は、モノフィラメント(単繊維)でもよく、或いは、マルチフィラメント(複数本の単繊維を撚り合わせて1本の糸4としたもの)でもよい。なお、マルチフィラメントからなる糸4を使用する場合、そのマルチフィラメントを構成する複数本の単繊維の全てが、糸表面に熱可塑性樹脂を有する。
寸法安定性に優れた内装シート1を構成できる点から、織物2を構成する糸4は、モノフィラメントであることが好ましい。
前記糸4は、その軸周りに捩られていてもよく、或いは、捩られていない直線状であってもよい。前記糸4が捩られている場合、右撚りでもよく、或いは、左撚りでもよい。その撚り数は、特に限定されないが、例えば、50T/m〜500T/mである。
織物2を構成する糸4の太さは、特に限定されないが、余りに細いと、織物2の表面に異物が当たった際に糸4が擦り切れるおそれがあり、余りに太いと、糸4自体が目立ち過ぎる。かかる観点から、織物2を構成する糸4の太さは、500d(デニール)〜5000dが好ましく、さらに、1500d〜3000dがより好ましい。
【0021】
図6は、織物2を構成する糸の第1例を示している。この糸4aは、ポリエステル系樹脂の単繊維から構成された芯材51と、塩化ビニル系樹脂から構成された被覆層52と、からなる。芯材51及び糸4aは、それぞれモノフィラメントである。また、この糸4aは、断面視円状であり、軸周りに捩られている。
図7は、織物2を構成する糸の第2例を示している。この糸4bは、前記第1例に比して、被覆層52が2色に色分けされている点において異なっている。すなわち、第2例の被覆層52は、断面視で周方向半分521が第1色に着色され、もう半分522が第1色とは異なる第2色に着色されている。
芯材51と被覆層52からなる糸4は、芯材51となる繊維を繰り出しながら、その周囲を被覆層52となる熱可塑性樹脂にて被覆するなどの従来公知の方法で得ることができる。
織物2は、任意の色に着色された糸4を、所望の織り方で織り込むことによって得られる。かかる織物2は、様々な柄が表出される。
【0022】
織物2は、糸4を織り込んだものであるため、その糸間に無数の隙間を有する。例えば、織物2は、交差する経糸41と緯糸42の間、隣接する緯糸42と緯糸42の間、又は/及び、隣接する経糸41と経糸41の間に、隙間を有する。特に、織物2は、交差する経糸41と緯糸42の間において、比較的大きな隙間を有する。
このような隙間は、織物2を光に翳して観察すると視認でき、少なくとも空気や接着剤のような液状物が通過し得る程度の間隙である。
後述するように、本発明の内装シート1は、織物2の隙間が支持層3によって閉塞されているので、施工時に、施工用の接着剤が織物2の表面に滲み出ることがない。
【0023】
また、本発明では、後述する製造時の塗工工程において、支持層を形成する樹脂の塗布量を最適化することによって、織物2の糸間の隙間が大きくても、支持層の形成材料である樹脂材料が前記隙間から表出することを防止できる。
このような織物2の糸間の隙間は、主として糸4の密度や太さを適宜設定することにより調整できる。
例えば、太さ500d〜5000dの糸4を用い、経糸41が35本/インチ〜55本/インチ、緯糸42が5本/インチ〜20本/インチの密度で打ち込まれた織物2などが挙げられる。もっとも、本発明の織物2の経糸41と緯糸42の密度は、これに特に限定されるわけではない。なお、前記本/インチは、縦方向又は横方向に1インチ(2.54cm)当たりに打ち込まれた経糸41又は緯糸42の本数をいう。
【0024】
<支持層>
支持層3は、織物2の裏面に設けられ、織物2をサポートすると共に、織物2の糸間の隙間を閉塞している。
支持層3は、熱可塑性樹脂を含む。
支持層3の熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、塩化ビニル系樹脂;オレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;アミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどが挙げられる。優れた柔軟性を有する点から、支持層3は、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂で構成されていることが好ましい。特に、織物2が塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂を糸表面に有する糸4から構成されている場合、支持層3は、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂で構成されていることが好ましい。支持層3と織物2が何れも塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とすることにより、より柔軟性に優れた内装シート1を構成できる上、支持層3と織物2の熱による収縮挙動が近似するようになり、経時的に厚み方向へ変形し難い内装シート1を構成できる。
【0025】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルモノマーを付加重合させて合成される。前記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造された樹脂が挙げられる。加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましい。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
支持層3が塩化ビニル系樹脂を主成分とする場合、その塩化ビニル系樹脂としては、ペースト塩化ビニル系樹脂又は/及びサスペンション塩化ビニル系樹脂を用いることができる。特に、柔軟性に優れていることから、支持層3は、熱可塑性樹脂としてペースト塩化ビニル系樹脂を主成分として含むことが好ましい。
【0026】
前記ペースト塩化ビニル系樹脂は、例えば、乳化重合法で得られるペースト状のポリ塩化ビニル系樹脂であり、可塑剤により、適宜粘度を調整できる。ペースト塩化ビニル系樹脂は、多数の微粒子集合体からなる粒子径が0.1〜10μm、好ましくは1〜3μmの微細粉末であり、好ましくは、前記微細粉末の表面に界面活性剤がコーティングされている。ただし、前記粒子径は、体積基準の粒度分布におけるメディアン径(D50)である。
ペースト塩化ビニル系樹脂は、K値60〜95程度のものが好ましく、65〜80のものがより好ましい。
なお、支持層3は、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂以外に、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、上記のようなものが挙げられる。
支持層3は、熱可塑性樹脂及び必要に応じて添加される添加剤を含む樹脂の硬化物である。
【0027】
支持層3は、織物2の裏面全体に積層されている。支持層3の裏面は、平滑な平面とされている。
前記織物2の裏面は、経糸41及び緯糸42の織りにより、凹凸状となっている。つまり、織物2の裏面は、支持層3側に突出した凸部61と、その凸部61とは相対的に凹んだ凹部62と、を有し、この凸部61及び凹部62は、経糸41及び緯糸42に起因して生じている。
支持層3は、織物2の裏面の凹部62において深く入り込み且つ凸部61において浅くなっており、織物2の裏面全体に亘って層を成している。従って、支持層3の表面は、面方向において起伏のある無秩序な凹凸状を成しており、支持層3の厚みは、均等ではない。例えば、織物2の裏面の凹部62において支持層3の厚みは大きく、織物2の凸部61において支持層3の厚みは小さい。支持層3の厚みは、特に限定されないが、余りに大き過ぎると、柔軟性が低下する。かかる観点から、支持層3の最大厚み3Hmax(織物2の凹部62に対応する部分における支持層3の厚み)は、例えば、1mm〜1.5mmであり、支持層3の最小厚み3Hmin(織物2の凸部61に対応する部分における支持層3の厚み)は、零を超え0.2mm以下である。
なお、
図5に示すように、織物2の凸部61の最下端Yが、支持層3の裏面と略一致している部分もある。このような部分における支持層3の厚みは、ほぼ零であるため、支持層3の最小厚み3Hminは、「零を超え」としている。このような部分は、
図4に示すように、内装シート1の裏面から見ると、織物2の凸部61の最下端Yである糸4の一部が、点状となって視認できる又は薄く透けて視認できる場合もある。
【0028】
支持層3は、織物2の裏面において糸4に強固に接着されており、従って、織物2の糸間の隙間は支持層3を構成する樹脂によって閉塞されている。
支持層3が織物2に積層された内装シート1の通気度は、零である。
また、織物2の表面には、支持層3を構成する樹脂が表出していない。換言すると、内装シート1においては、織物2の表面が支持層3を構成する熱可塑性樹脂を有さない。
このような支持層3を構成する熱可塑性樹脂の表出の有無は、内装シート1の織物2の表面から、10cm×10cmの範囲を任意に抽出し、その範囲の織物2の表面を目視で観察することによって判断できる。
【0029】
[内装シートの製造方法]
次に、本発明の内装シート1の製造方法について説明する。
ただし、本発明の内装シート1は、次の製造方法によって製造されたものに限定されず、他の製造方法で製造することもできる。
【0030】
本発明の内装シートの製造方法は、離型シート、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料(支持層3の形成材料)、及び、熱可塑性樹脂を糸表面に有する糸4からなる織物2を準備する工程、離型シートの表面に前記樹脂材料を塗工することにより、離型シート上に未硬化の樹脂層を形成する工程、前記未硬化の樹脂層の表面に前記織物2を積層する工程、前記未硬化の樹脂層を硬化させる工程、を有し、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
【0031】
これら各工程を1つの製造ラインで一連に行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を、1つのラインで行い、且つ残る工程を他の1つ又は2つ以上のラインで行ってもよい。また、前記各工程の全てを一の実施者が行ってもよいし、或いは、前記各工程から選ばれる1つ又は2つ以上の工程を一の実施者が行い、且つ残る工程を他の実施者が行ってもよい。
以下、図面を適宜参考しつつ具体的に説明する。
【0032】
<準備工程>
離型シートは、長尺帯状のものを準備する。
前記離型シートは、濡れ性の小さい表面を有するシートからなる。
例えば、
図8に示すように、離型シート7は、基材71と、その基材71の表面全体に積層された離型層72と、を有する。前記離型層72は、基材71の表面の全体にベタ状に形成されている。本明細書において、ある層がベタ状であるとは、その層を構成する材料が面方向に延在して1つの連続した層を成していることをいう。前記離型層72の表面(離型面)が、離型シート7の表面である。離型シート7の表面は、平滑である。
前記離型層72は、代表的には、シリコーン樹脂などを含む剥離剤を基材71の表面に塗布するなどの方法によって形成できる。
【0033】
基材71は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリスチレンなどの合成樹脂シート;異種又は同種の樹脂層が複数積層された積層樹脂シート;合成紙;普通紙、上質紙などの紙;これらの中から選択される2種以上のシートが積層された積層シートなどが挙げられる。好ましくは、基材71は、引っ張りに対して伸び難いものが用いられる。このような伸び難い基材71としては、紙又は紙と任意のシートとの積層シートなどが挙げられる。前記紙の坪量としては、例えば、100g/m
2〜300g/m
2であり、好ましくは、130g/m
2〜200g/m
2である。
前記紙などからなる基材71の引張強度は、特に限定されないが、例えば、縦方向における引張強度が、5kN/m以上であり、好ましくは、9kN/m以上であり、横方向における引張強度が3kN/m以上であり、好ましくは、5kN/m以上である。
なお、前記縦方向は、離型シートの長さ方向であり、横方向は、それと直交する方向である。また、前記引張強度は、JIS P 8113に準じて測定できる。
前記紙などからなる基材71の厚みは、特に限定されず、例えば、0.05mm〜1mmであり、好ましくは、0.1mm〜0.3mmである。また、離型層72の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1μm〜3μm程度である。
なお、濡れ性の小さい基材71を用いる場合には、前記離型層72を省略してもよい。
【0034】
織物2Aも離型シート7と同様に、長尺帯状のものを準備する。織物2Aの幅は、離型シート7の幅と同じでもよく、或いは、それよりも若干小さい又は大きくてもよい。
織物2Aの具体的な構成は、上記で説明したので、ここでは省略する。好ましくは、織物2Aには、熱セット処理を施しておくことが好ましい。熱セット処理は、織物2Aに所定温度の熱を加えて、織物2Aの形状や寸法を安定化させる処理をいう。熱セット処理は、乾熱でもよく、湿熱でもよい。前記所定温度としては、120℃〜160℃が好ましい。
長尺帯状の離型シート7及び織物2Aは、それぞれロール状に巻き取った状態で保管・運搬される。
【0035】
支持層3の形成材料として、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を準備する。かかる樹脂材料は、塗工可能な程度の流動性を有する。
塩化ビニル系樹脂を主成分とする支持層3を形成する場合には、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂及び必要に応じて各種添加剤を含む樹脂材料を準備する。
前記樹脂材料は、塗工に適した粘度に調整される。例えば、ペースト塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂材料は、可塑剤を適切量配合することによって粘度を調整できる。
前記樹脂材料の粘度は、例えば、1000mPa・s〜6000mPa・sであり、好ましくは、2000mPa・s〜4000mPa・sである。このような粘度の樹脂材料は、離型シート7の表面に良好に塗工でき、未硬化の樹脂層に織物2Aを積層した際に、樹脂材料が織物2Aの表面に表出することを防止できる。
なお、前記粘度は、20℃下での粘度であり、BM型粘度計(東京計器式会社製の商品名「B型BM式粘度計」)を用いて、ローターNo.4、6rpmにて測定した値である。
【0036】
<塗工工程>
図9に示すように、ロール91から長尺帯状の離型シート7を、長さ方向一方側へと搬送する。各シートの搬送方向を矢印で示す。
離型シート7がロール91からロール98に巻き取られる間に、支持層及び織物の積層が実施される。離型シート7は、張力を加えられながら搬送される。
その搬送途中で、離型シート7の表面(離型面)に、前記樹脂材料92をベタ状に塗工する。塗工方法は、特に限定されない。例えば、樹脂材料92をナイフコーター93などの従来公知のコーターを用いて塗工する。
樹脂材料を塗工することにより、離型シート7の表面に、
図10(a)に示すように、未硬化の樹脂層31が形成される。この樹脂層31は、その厚みが略均一である。
未硬化の樹脂層31を形成する樹脂材料92の塗布量は、適宜設定されるが、余りに大きいと、樹脂材料92が織物2Aの表面に表出するおそれがあり、余りに小さいと、織物の糸間の隙間を十分に閉塞できないおそれがある。かかる観点から、未硬化の樹脂層31を形成する樹脂材料92の塗布量は、例えば、150g/m
2〜500g/m
2であり、好ましくは200g/m
2〜450g/m
2である。
また、前記未硬化の樹脂層31の厚みは、適宜設定されるが、樹脂材料92の表出防止と隙間閉塞の観点から、未硬化の樹脂層31の厚みは、織物の厚み×1/10〜織物の厚み×1/4が好ましく、さらに、織物の厚み×1/8〜織物の厚み×1/5がより好ましい。具体的な数値では、未硬化の樹脂層31の厚みは、例えば、0.15mm〜0.3mmである。
【0037】
<積層工程>
ロール94から長尺帯状の織物2Aを引き出し、その織物2Aの裏面を前記未硬化の樹脂層31の表面に積層し、押圧ローラー95,95間に通すことにより、上から順に、織物2A/未硬化の樹脂層31/離型シート7からなる積層体10を形成する。
押圧ローラー95,95の間に積層体10を通すことにより、織物2Aが離型シート7側に押しつけられ、
図10(b)に示すように、織物2Aの裏面が未硬化の樹脂層31内に埋没し、流動性を有する樹脂材料92が、織物2Aの凸部において逃げ且つ凹部に流れ込むと共に、織物2Aの隙間に進入する。
なお、上述のように、離型シート7は張力が掛かりながら搬送されているが、積層工程においては、織物2Aには実質的に張力が掛からないように、離型シート7の搬送に追従して織物2Aを搬送するようになっている。すなわち、積層工程の当初において、織物2Aの下流側端部(長さ方向一方側の端部)を離型シート7の表面に固定し、その状態で離型シート7を引張り、上流側から下流側(長さ方向一方側)へと搬送する。すると、離型シート7の移動に従動して織物2Aがロール94から引き出される。織物2Aを直接引っ張らないので、織物2Aには実質的に張力が加わらず、織物2Aが引き延ばされたり、或いは、面方向に歪むことを防止できる。
【0038】
<硬化工程>
前記積層体10の未硬化の樹脂層31を硬化させる。硬化方法は、樹脂層31の樹脂材料に応じて適宜選択される。塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂材料については、加熱することにより、材料が硬化する。加熱は、一時に行ってもよく、或いは、複数に分けて順に行ってもよい。
例えば、2回に分けて加熱する場合、前記積層体10に予備加熱工程を行った後、主加熱工程を行う。予備加熱工程における加熱温度は、樹脂材料の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、織物2Aの表面における温度が120℃〜160℃である。主加熱工程における加熱温度は、樹脂材料の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、主加熱手段としてオーブンを用いた場合を基準にすると、オーブン内の空気温度が、120℃〜200℃である。
前記予備加熱及び主加熱工程は、積層体10の表面側又は/及び裏面側から行われる。図示例では、予備加熱手段96が積層体10の表面側に配置され、その後、主加熱手段97が積層体10の表裏面側にそれぞれ配置されている。予備加熱手段96としては、例えば、ヒーターを用いることができ、主加熱手段97としては、オーブンを用いることができる。
このように複数回に分けて段階的に加熱することにより、塩化ビニル系樹脂のゲル化が促進されるので、優れた強度の支持層3を形成できる上、急激な加熱でないので、積層体が厚み方向に歪むことを防止でき、さらに、織物表面の光沢度の劣化を防止できる。
【0039】
<巻き取り工程>
以上のようにして、
図11に示すように、上から順に、織物2A/支持層3/離型シート7からなる離型シート付き内装シート11が得られる。この離型シート付き内装シート11の離型シート7を内装シート1から剥離し、
図9に示すように、離型シート7のみをロール98に回収することにより、
図1乃至
図5のような構造の内装シート1が得られる。この内装シート1は、必要に応じて、ロール99に巻き取られ、保管・運搬される。
離型シート付き内装シート11においては、内装シート1の支持層3の裏面が離型シート7の表面に剥離可能に添付されているので、内装シート1を離型シート7から容易に引き剥がすことができる。
なお、離型シート付き内装シート11をロール状に巻き取って保管・運搬し、施工時に、離型シート7を引き剥がして内装シート1を得てもよい。
【0040】
[内装シートの用途]
本発明の内装シート1は、接着剤を用いて、施工面に施工される。前記内装材を施工する施工面としては、例えば、床面、壁面、天井面などが挙げられるが、これらに限定されない。特に、本発明の内装シート1は、比較的薄く且つ柔軟性に優れるので、不陸に容易に追随して表面に段差が表れ難く、壁面や天井面に好適に施工できる。また、内装シート1は、表面の織物2が強度的に優れるので、腰壁シートとして好適に利用できる。なお、本発明の内装シート1は、屋内又は半屋内の施工面のほか、屋外に施工してもよい。
施工に際して、内装シート1の裏面(支持層3の裏面)に接着剤を塗布し、それを施工面に貼り付けてもよく、或いは、施工面に接着剤を塗布し、それに内装シート1の裏面を貼り付けてもよく、或いは、内装シート1の裏面(支持層3の裏面)及び施工面にそれぞれ接着剤を塗布し、内装シート1を施工面に貼り付けてもよい。施工に用いられる接着剤は、特に限定されず、従来公知の溶剤型接着剤、無溶剤型接着剤などが挙げられる。
【0041】
また、本発明の内装シート1は、熱可塑性樹脂を糸表面に有する糸からなる織物2を有するので、高い強度を有し、施工後にストレッチャー、台車、車椅子などが衝突しても、裂け難く、孔も開き難い。さらに、施工後、織物2を構成する糸4の一部損傷や施工面の微弱な陥没程度の損傷が生じたとしても、糸を織った表面構造を有する織物2により、その全体的な見た目はほとんど変わらないという利点もある。
さらに、内装シート1は、表面側に織物2を有するので、複数の内装シート1をつなぎ合わせて貼り付けた際、その目地部分が目立ち難く、あたかも継ぎ目のない1枚のシートのような施工外観が得られる。
また、内装シート1は、薄く且つ柔軟であるので、ロール状に巻くことができ、保管・運搬の便に優れている。
【0042】
本発明の内装シート1は、その最表面が織物2の表面によって構成されているので、織物の風合いを有する。
本発明の内装シート1は、織物2の隙間が支持層3によって閉塞されているので、施工用の接着剤が織物2の表面に滲み出すことがなく、施工後においても織物特有の風合いを維持できる。
さらに、本発明の内装シート1は、熱可塑性樹脂を糸表面に有する糸4からなる織物2の裏面に、熱可塑性樹脂を含む支持層3が設けられているので、織物2と支持層3の熱による収縮挙動が同様な傾向を示し、経時的に、厚み方向に変形し難くなる。特に、織物2及び支持層3の熱可塑性樹脂として、何れも塩化ビニル系樹脂が用いられている場合には、織物2と支持層3の熱による収縮挙動が近似し、内装シート1の端部が反り上がるような厚み方向の変形を効果的に防止できる。
また、本発明の製造方法によれば、織物2Aを変形させることなく離型シート7上に積層し、その後、未硬化の樹脂層31を硬化させるので、面方向における寸法安定性に優れた内装シート1が得られる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
[使用材料]
ペースト塩化ビニル系樹脂:K値は70。粘度は3000mPa・s。粘度は、上述の通り、20℃、BM型粘度計(東京計器式会社製の商品名「B型BM式粘度計」、ローターNo.4、6rpm)にて測定した。
離型シート:坪量が170g/m
2で、引張強度が15kN/mの紙に、シリコーン樹脂からなる離型層が積層されたもの。縦方向の長さ200m以上、横方向の長さ200cmの長尺状。
塩ビ被覆糸織物:芯材がポリエステル系樹脂で且つ被覆層が塩化ビニル系樹脂であるモノフィラメントからなる糸(2500デニール)を用い、経糸45本/インチ、緯糸15本/インチで打ち込んだ平織りの織物。離型シートと同様に横方向長さが200cmの長尺状。
【0045】
[実施例1]
ロールから離型シートを引き出し、その長さ方向一方側の端部の表面に塩ビ被覆糸織物の長さ方向一方側の端部を固定し、離型シートを長さ方向(縦方向)に引っ張ると、それに連れられて塩ビ被覆糸織物がロールから引き出されるように準備した。
この離型シートを
図9に示すような製造ライン上に長さ方向(縦方向)に搬送し、その離型面上にペースト塩化ビニル系樹脂を350g/m
2でベタ状に塗布し、厚み約0.25mmの未硬化の樹脂層を形成した。この樹脂層の上に、離型シートの搬送に追従して搬送される塩ビ被覆糸織物を積層し、押圧ローラーを用いて塩ビ被覆糸織物の表面を樹脂層側に押圧した。その後、ヒーターを用いて、塩ビ被覆糸織物の表面温度が約150℃となる程度で予備加熱した後、150℃のオーブン内に通過させ、前記未硬化の樹脂層を硬化させることにより、
図11に示すような織物/支持層/離型シートからなる離型シート付き内装シートを作製した。なお、離型シートの搬送速度は、10m/分に設定した。この離型シート付き内装シートの離型シートを引き剥がすことにより、実施例1の内装シートを得た。
【0046】
[実施例2]
ペースト塩化ビニル系樹脂の塗布量を200g/m
2に代えたこと以外は、実施例1と同様にして内装シートを得た。
【0047】
[実施例3]
ペースト塩化ビニル系樹脂の塗布量を250g/m
2に代えたこと以外は、実施例1と同様にして内装シートを得た。
【0048】
[実施例4]
ペースト塩化ビニル系樹脂の塗布量を300g/m
2に代えたこと以外は、実施例1と同様にして内装シートを得た。
【0049】
[実施例5]
ペースト塩化ビニル系樹脂の塗布量を400g/m
2に代えたこと以外は、実施例1と同様にして内装シートを得た。
【0050】
[実施例6]
ペースト塩化ビニル系樹脂の塗布量を450g/m
2に代えたこと以外は、実施例1と同様にして内装シートを得た。
【0051】
[内装シートの表面確認]
実施例1乃至6の内装シートの表面について、支持層を形成する塩化ビニル系樹脂が浸み出しているか否かを目視で観察した。
その結果、実施例1乃至5の内装シートについては、織物の表面から支持層を形成する塩化ビニル系樹脂を確認できなかった。一方、実施例6の内装シートについては、よく注視すると織物の表面から支持層を形成する塩化ビニル系樹脂を僅かに確認できたが、外見上目立たず、全く問題のない程度であった。
【0052】
[施工試験]
壁面に300g/m
2でアクリル系樹脂エマルション接着剤(東リ株式会社製、製品名:エコAR600)を塗布し、この壁面に実施例1の内装シートの裏面(支持層の裏面)を貼り付けた後、その内装シートの表面を目視にて観察した。
その結果、実施例1の内装シートの表面からは接着剤が滲み出ていなかった。
【0053】
実施例1の内装シートに代えて、チルウィッチ社製の商品名「ウォールテキスタイル ミニバスケットウィーブ、色:ピスタチオ」を用いたこと以外は、前記と同様にして施工し、その表面を目視で観察した(比較試験)。その結果、表面から接着剤が滲み出ていた。
なお、この「ウォールテキスタイル ミニバスケットウィーブ」は、塩ビ被覆糸織物(ただし、この塩ビ被覆織物は、芯材に塩化ビニル系樹脂が被覆されたモノフィラメントからなる糸を、経糸24本/インチ、緯糸24本/インチで打ち込んだ織物である)の裏面に不織布が積層されたものである。