【解決手段】電動アクチュエータ10は、モータ20と、非通電状態においてモータの回転を制動する電磁ブレーキ30と、モータに連結された減速機構40と、減速機構に連結した回転シャフト41と、回転シャフトの回転に伴って軸方向に移動する可動部材50と、を備える。可動部材は、回転シャフトが通される貫通孔51aを有する本体部51と、被動力伝達部と接触する出力部52と、を有する。回転シャフトは、回転シャフトの外周面に位置する第1螺旋状溝41aを有する。本体部は、貫通孔の内側面に位置する第2螺旋状溝51bを有する。第1螺旋状溝、第2螺旋状溝、および第1螺旋状溝と第2螺旋状溝との間に位置する複数の球状のボール60によって、ボールネジが構成される。出力部は、軸方向に弾性変形する出力弾性部53を有する。
前記出力アームは、前記出力アームを軸方向と前記第1方向との両方と直交する第2方向に貫通するアーム貫通孔を有する、請求項4または5に記載の電動アクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電動アクチュエータについて説明する。図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、X軸方向は、
図1に示す軸方向に延びる第1中心軸J1と平行な方向とする。Z軸方向は、X軸方向と直交する方向であって
図1における上下方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0010】
本明細書においては、X軸方向における
図1の右側(+X側)を「前側」と呼び、左側(−X側)を「後側」と呼ぶ。また、Z軸方向における
図1の上側(+Z側)を単に「上側」と呼び、下側(−Z側)を単に「下側」と呼ぶ。なお、前後方向および上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係および方向を示さない。また、第1中心軸J1に平行な方向(X軸方向)を単に「軸方向」と呼ぶ場合があり、第1中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ場合があり、第1中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ場合がある。
【0011】
図1および
図2に示す電動アクチュエータ10は、例えば、車両の車体に取り付けられ、車両のクラッチの切り換えを行うアクチュエータである。電動アクチュエータ10は、被動力伝達部C(
図4A参照)に対して力を伝達し、被動力伝達部Cを駆動する。被動力伝達部Cは、軸方向に沿って可動する。被動力伝達部Cは、例えば、車両の2つの動力伝達軸同士を連結するクラッチディスクである。
【0012】
図1および
図2に示すように、電動アクチュエータ10は、アクチュエータハウジング11と、軸方向に延びたモータシャフト21を有するモータ20と、電磁ブレーキ30と、減速機構40と、回転シャフト41と、可動部材50と、複数の球状のボール60と、ベアリング70,71,72と、を備える。
【0013】
アクチュエータハウジング11は、第1中心軸J1を中心として軸方向に延びた筒状である。アクチュエータハウジング11は、電動アクチュエータ10の各部を内部に収容する。アクチュエータハウジング11は、アクチュエータハウジング11における上側(+Z側)の壁部を上下方向に貫通するハウジング貫通孔11aを有する。ハウジング貫通孔11aは、アクチュエータハウジング11の前側(+X側)の部分に配置される。
【0014】
モータ20は、モータ本体部20aと、モータシャフト21と、を有する。モータ本体部20aは、アクチュエータハウジング11の内側面に固定される。モータシャフト21は、モータ本体部20aから前側(+X側)に延びる。モータシャフト21は、第1軸部21aと、第2軸部21bと、を有する。
【0015】
第1軸部21aは、第1中心軸J1を中心として軸方向に延びた部分である。第1軸部21aは、モータ本体部20aから前側(+X側)に延びる。第2軸部21bは、第1軸部21aの前側(軸方向一方側)において、第1中心軸J1と異なる第2中心軸J2を中心として軸方向に延びた部分である。第2中心軸J2は、第1中心軸J1と平行な軸であり、
図1および
図2では第1中心軸J1よりも下側(−Z側)に配置される。第2軸部21bは、第1軸部21aの前側の端部から前側に延びる。第2軸部21bの外径は、第1軸部21aの外径よりも小さい。第2軸部21bは、減速機構40に接続される。より詳細には、第2軸部21bは、ベアリング70の内輪に嵌め合わされ、ベアリング70を介して減速機構40に接続される。
【0016】
電磁ブレーキ30は、非電通状態においてモータシャフト21の回転を制動する。電磁ブレーキ30は、ブレーキケース80と、第1ブレーキ部材31と、第2ブレーキ部材32と、吸着部材33と、弾性部材35と、ソレノイド34と、を有する。
【0017】
ブレーキケース80は、軸方向に延びる筒状である。ブレーキケース80は、内部に電磁ブレーキ30の各部を収容する。ブレーキケース80の外側面は、アクチュエータハウジング11の内側面に固定される。ブレーキケース80は、筒部80aと、円板部80bと、を有する。
【0018】
筒部80aは、後側(−X側)に開口し、第1中心軸J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。筒部80aの後端は、モータ本体部20aの前端に接触する。円板部80bは、筒部80aの前端に接続される。円板部80bは、第1中心軸J1を中心として、径方向に拡がる円板状である。円板部80bは、中央に円板部80bを軸方向に貫通するブレーキケース貫通孔80cを有する。ブレーキケース貫通孔80cには、モータシャフト21が通される。
【0019】
円板部80bの前側(+X側)の面には、複数の支持ピン81が設けられる。支持ピン81は、円板部80bから前側に突出する円柱状である。
図3に示すように、複数の支持ピン81は、周方向に沿って等間隔に配置される。
図3では、支持ピン81は、例えば、9つ設けられる。支持ピン81は、減速機構40の一部である。なお、
図3においては、アクチュエータハウジング11およびベアリング70の図示を省略している。
【0020】
図1および
図2に示すように、第1ブレーキ部材31は、円環状である。第1ブレーキ部材31は、内側に第1軸部21aが通され、モータシャフト21に取り付けられる。第1ブレーキ部材31は、モータシャフト21に対する周方向の回転が防止され、モータシャフト21の回転と共に第1中心軸J1周りに回転する。第1ブレーキ部材31は、モータシャフト21に対して、軸方向に移動可能に取り付けられている。第1ブレーキ部材31の後側(−X側)の内縁は、第1軸部21aに設けられた後側に向かって外径が大きくなる段差に接触可能である。これにより、第1ブレーキ部材31が、第1軸部21aの段差よりも後側に移動することが防止される。
【0021】
第2ブレーキ部材32は、円環板状である。第2ブレーキ部材32は、筒部80aの内側に嵌め合わされ、円板部80bの後側(−X側)の面に固定される。第2ブレーキ部材32は、第1ブレーキ部材31の前側(軸方向一方側,+X側)において第1ブレーキ部材31と対向する。第2ブレーキ部材32の内縁は、例えば、ブレーキケース貫通孔80cの内縁と径方向において同じ位置にある。第2ブレーキ部材32の内側には、モータシャフト21が通される。
【0022】
第1ブレーキ部材31と第2ブレーキ部材32とにおける互いに接触した際の摩擦係数は、比較的大きいことが好ましい。電磁ブレーキ30によって、モータシャフト21の回転を好適に制動できるためである。
【0023】
吸着部材33は、円環板状である。吸着部材33の内側には、モータシャフト21が通される。吸着部材33は、第1ブレーキ部材31の後側(軸方向他方側,−X側)において第1ブレーキ部材31と対向する。これにより、第1ブレーキ部材31は、第2ブレーキ部材32と吸着部材33とによって、軸方向に挟まれて配置される。吸着部材33は、軸方向に移動可能に配置される。吸着部材33は、磁性体製である。
【0024】
弾性部材35は、例えば、軸方向に延びる圧縮コイルバネである。弾性部材35の内側には、モータシャフト21が通される。弾性部材35は、ソレノイド34の内側に配置される。弾性部材35の後側(−X側)の端部は、モータ本体部20aの前側(+X側)の面と接触する。弾性部材35の前側の端部は、吸着部材33の後側の面と接触する。弾性部材35は、吸着部材33に対して前側(軸方向一方側)に向けて力を加える。
【0025】
ソレノイド34は、吸着部材33の後側(軸方向他方側,−X側)においてモータシャフト21の径方向外側を囲んで配置される。ソレノイド34は、吸着部材33を励磁する。ソレノイド34は、ヨーク34aと、コイル34bと、を有する。
【0026】
ヨーク34aは、モータシャフト21の径方向外側を囲む円環状である。ヨーク34aは、筒部80aの内側面に固定される。ヨーク34aの後側(−X側)の面は、モータ本体部20aの前側(+X側)の面に固定される。ヨーク34aは、磁性体製である。コイル34bは、ヨーク34aの前側の面に設けられた後側に窪む凹部に配置される。コイル34bは、導線が周方向に巻かれて構成される。
【0027】
コイル34bに電流が供給されると、コイル34bから生じる磁界によって、ヨーク34aおよび吸着部材33が励磁される。これにより、ヨーク34aと吸着部材33とを磁束が通る磁気回路が生じて、
図1に示すように吸着部材33がソレノイド34に吸着される。すなわち、ソレノイド34に電流が供給された通電状態において、吸着部材33は、ソレノイド34に吸着される。このとき、ヨーク34aと吸着部材33との間の磁気回路による磁力(吸着力)は、弾性部材35によって吸着部材33に加えられる前向き(+X向き)の弾性力よりも大きい。
【0028】
コイル34bへの電流の供給が停止されると、ヨーク34aと吸着部材33との間の磁気回路が生じなくなり、ヨーク34aと吸着部材33との間の磁力(吸着力)が消失する。これにより、
図2に示すように、弾性部材35の前向き(+X向き)の弾性力によって、吸着部材33がソレノイド34から離れて前側(+X側)に移動する。すなわち、ソレノイド34への電流の供給が停止された非通電状態において、吸着部材33は、ソレノイド34から前側(軸方向一方側)に離れて位置する。
【0029】
吸着部材33は、弾性部材35に押されて移動することで、第1ブレーキ部材31に後側(−X側)から接触し、第1ブレーキ部材31を前側(+X側)に移動させる。これにより、第1ブレーキ部材31の前側の面が、第2ブレーキ部材32の後側の面に押し付けられる。すなわち、第1ブレーキ部材31は、吸着部材33を介して弾性部材35から前側(軸方向一方側)に向けて力を加えられ、第2ブレーキ部材32に押し付けられる。これにより、第1ブレーキ部材31と第2ブレーキ部材32との間の摩擦力により、第1ブレーキ部材31が周方向に回転することが抑制され、モータシャフト21の周方向の回転が抑制される。このようにして、電磁ブレーキ30は、非通電状態においてモータシャフト21の回転を制動する。
【0030】
この構成によれば、ソレノイド34への電流の供給を切り換えることのみによって、電磁ブレーキ30によるモータシャフト21の制動状態を切り換えることができるため、モータシャフト21の制動操作が、簡便である。また、非通電状態でモータシャフト21の回転を制動できるため、モータ20およびソレノイド34のいずれにも電流を供給せずに、可動部材50の移動を制動することができる。したがって、電動アクチュエータ10の消費電力を低減できる。
【0031】
また、本実施形態では、第1ブレーキ部材31が軸方向に移動可能である。そのため、モータシャフト21の軸方向の位置を固定したまま、吸着部材33によって第1ブレーキ部材31を移動させて、電磁ブレーキ30によるモータシャフト21の制動状態を切り換えることができる。
【0032】
減速機構40は、モータシャフト21に連結される。より詳細には、減速機構40は、第2軸部21bにベアリング70を介して連結される。減速機構40は、外歯ギア42と、内歯ギア43と、上述した複数の支持ピン81と、を有する。
【0033】
外歯ギア42は、径方向に拡がる略円環板状である。外歯ギア42の中心には、第2中心軸J2が通される。外歯ギア42の径方向外側面には、歯車部が設けられる。外歯ギア42は、第2軸部21bにベアリング70を介して接続される。外歯ギア42は、ベアリング70の外輪に径方向外側から嵌め合わされる。これにより、ベアリング70は、モータシャフト21と外歯ギア42とを、第2中心軸J2周りに相対的に回転自在に連結する。
【0034】
外歯ギア42は、外歯ギア42を軸方向に貫通する外歯ギア貫通孔42aを有する。
図3に示すように、外歯ギア貫通孔42aは、複数設けられ、第2中心軸J2を中心とする周方向に沿って等間隔に配置される。
図3では、外歯ギア貫通孔42aは、例えば、9つ設けられる。外歯ギア貫通孔42aの軸方向に沿って視た形状は、円形状である。
図1から
図3に示すように、複数の外歯ギア貫通孔42aには、複数の支持ピン81がそれぞれ挿入される。外歯ギア貫通孔42aの内径は、支持ピン81の外径よりも大きい。支持ピン81の外周面は、外歯ギア貫通孔42aの内周面と内接する。支持ピン81は、外歯ギア42を第2中心軸J2周りに揺動可能に支持する。
【0035】
内歯ギア43は、第1中心軸J1を中心とする円筒状である。内歯ギア43は、外歯ギア42の径方向外側を囲む。内歯ギア43の内周面には、歯車部が設けられる。内歯ギア43は、外歯ギア42と噛み合う。より詳細には、
図3に示すように、内歯ギア43の歯車部は、外歯ギア42の歯車部と一部(
図3では下側部分)において噛み合う。
図1および
図2に示すように、内歯ギア43は、内周面に歯車部が設けられる筒状の内歯ギア本体43aと、内歯ギア本体43aの前側(+X側)の端部から径方向内側に拡がる円環板状の接続部43bと、を有する。
【0036】
内歯ギア43は、回転シャフト41に設けられる。より詳細には、接続部43bの径方向内端は、回転シャフト41の後側(−X側)の端部と接続される。本実施形態では、内歯ギア43と回転シャフト41とは、単一の部材の部分である。そのため、電動アクチュエータ10の部品点数および組み立て工数を少なくできる。回転シャフト41には、減速機構40を介してモータシャフト21の回転が伝達される。
【0037】
モータシャフト21が第1中心軸J1周りに回転されると、第2軸部21b(第2中心軸J2)は、第1中心軸J1を中心として周方向に公転する。第2軸部21bの公転はベアリング70を介して外歯ギア42に伝達され、外歯ギア42は、外歯ギア貫通孔42aの内周面と支持ピン81の外周面との内接する位置が変化しつつ、揺動する。これにより、外歯ギア42の歯車部と内歯ギア43の歯車部とが噛み合う位置が、周方向に変化する。したがって、内歯ギア43が第1中心軸J1周りに回転し、回転シャフト41が第1中心軸J1周りに回転する。
【0038】
回転シャフト41の回転は、減速機構40によって、モータシャフト21の回転に対して減速される。具体的に、本実施形態の減速機構40の構成では、モータシャフト21の回転に対する回転シャフト41の回転の減速比Rは、R=(N2−N1)/N2で表される。N1は、外歯ギア42の歯数であり、N2は、内歯ギア43の歯数である。一例として、外歯ギア42の歯数N1が59で、内歯ギア43の歯数N2が60の場合、減速比Rは、1/60となる。
【0039】
このように、本実施形態の減速機構40によれば、モータシャフト21の回転に対する回転シャフト41の回転の減速比Rを比較的大きくできる。そのため、回転シャフト41の回転トルクを比較的大きくでき、可動部材50の出力を大きくできる。
【0040】
回転シャフト41は、第1中心軸J1を中心として軸方向に延びた円筒状の中空シャフトである。回転シャフト41は、軸方向両端に開口する。回転シャフト41の後側(−X側)の端部は、アクチュエータハウジング11の内側面に固定されたベアリング71によって、第1中心軸J1周りに回転可能に支持される。回転シャフト41の前側(+X側)の端部は、アクチュエータハウジング11の内側面に固定されたベアリング72によって、第1中心軸J1周りに回転可能に支持される。回転シャフト41は、第1螺旋状溝41aを有する。第1螺旋状溝41aは、回転シャフト41の外周面に位置する螺旋状の溝である。
【0041】
可動部材50は、本体部51と、出力部52と、を有する。本体部51は、回転シャフト41が通される貫通孔51aを有する筒状である。貫通孔51aは、本体部51を軸方向に貫通する。貫通孔51aの内側面は、第1中心軸J1を中心とする円筒状である。
【0042】
本体部51は、第2螺旋状溝51bを有する。第2螺旋状溝51bは、貫通孔51aの内側面に位置する螺旋状の溝である。第1螺旋状溝41aと第2螺旋状溝51bとの間には、複数の球状のボール60が位置する。
【0043】
第1螺旋状溝41a、第2螺旋状溝51b、および複数のボール60によって、ボールネジ90が構成される。これにより、可動部材50は、回転シャフト41に連結され、回転シャフト41の回転に伴って軸方向に移動する。
【0044】
回転シャフト41と可動部材50との連結部がボールネジ90であるため、回転シャフト41と可動部材50との間の摩擦力を小さくできる。これにより、モータ20の回転トルクを効率よく可動部材50の軸方向の駆動力に変換できる。したがって、モータ20の回転トルクが比較的小さい場合であっても、出力部52を介して被動力伝達部Cに伝達される軸方向の駆動力を十分に得ることができる。これにより、モータ20を小型化することができ、結果として電動アクチュエータ10を小型化できる。
【0045】
また、回転シャフト41と可動部材50との間の摩擦力を小さくできるため、摩擦によって第1螺旋状溝41aと第2螺旋状溝51bとが損耗することを抑制できる。したがって、回転シャフト41と可動部材50との連結部が損耗することを抑制でき、結果として電動アクチュエータ10の耐久性を向上できる。
【0046】
また、モータ20の回転トルクを比較的小さくできるため、モータ20の消費エネルギを低減することができる。
【0047】
ボールネジ90において複数のボール60は、第1螺旋状溝41aと第2螺旋状溝51bとが対向して構成される螺旋状の螺旋状通路90aを通る。螺旋状通路90aにおいて複数のボール60は、第1螺旋状溝41aの内側面および第2螺旋状溝51bの内側面に接触する。複数のボール60は、転がりながら螺旋状通路90aに沿って周方向に移動する。複数のボール60が転がりながら螺旋状通路90aを移動することで、回転シャフト41の回転を可動部材50の軸方向の移動に変換できる。
【0048】
ボールネジ90は、例えば、図示しないボール循環部を有する。ボール循環部は、本体部51に設けられる。ボール循環部は、螺旋状通路90aの両端を繋ぐ通路である。螺旋状通路90aの一端へ到達したボール60は、ボール循環部内を通り、螺旋状通路90aの他端へと移動する。これにより、ボール60は、螺旋状通路90a内を循環可能である。
【0049】
なお、本明細書において、ボールネジとは、上述した構成のボールネジに限られず、いかなる公知のボールネジであってもよい。
【0050】
図4Aに示すように、出力部52は、被動力伝達部Cと接触する部分である。出力部52は、本体部51に接続された出力アーム(出力弾性部)53と、出力アーム53に接続され被動力伝達部Cと接触する接触部54と、連結部55と、を有する。
【0051】
出力アーム53は、本体部51から軸方向と交差する上下方向(第1方向)に延びる。
図1および
図2に示すように、出力アーム53は、ハウジング貫通孔11aを通ってアクチュエータハウジング11の外部まで延びる。
【0052】
図4Bは、
図4Aに示す接触部54が被動力伝達部Cと接触した状態から、可動部材50(本体部51)をさらに前側(+X側)に移動させた場合を示している。
図4Bに示すように、出力アーム53は、可動部材50が軸方向に移動することで被動力伝達部Cから反力を受けて弾性変形し、出力アーム53の下端を支点として軸方向(
図4Bでは後側)に傾く。すなわち、出力アーム53は、軸方向に弾性変形する出力弾性部である。
【0053】
そのため、例えば、
図4Bの状態で可動部材50の軸方向の移動が停止した場合であっても、出力アーム53の弾性変形に応じた弾性力を、出力部52を介して被動力伝達部Cに加え続けることができる。
図4Bでは、矢印で示すように、出力部52は、被動力伝達部Cに対して前向き(+X向き)の弾性力を加える。これにより、被動力伝達部Cがクラッチディスクの場合、2つの動力伝達軸同士を連結した状態を維持できる。
【0054】
ここで、上述したように、本実施形態によれば、モータ20および電磁ブレーキ30に電流を供給しない状態であっても、電磁ブレーキ30によってモータシャフト21の回転を制動でき、可動部材50の軸方向の移動を制動できる。したがって、モータ20および電磁ブレーキ30に電流を供給することなく可動部材50を停止させ、被動力伝達部Cに力を加え続けることができる。これにより、電動アクチュエータ10を省電力化できる。
【0055】
また、出力アーム53は上下方向に延びるため、軸方向に傾いて弾性変形しやすい。これにより、出力アーム53によって比較的大きな弾性力を被動力伝達部Cに加えやすい。また、出力アーム53の弾性変形の変形幅を大きくできるため、可動部材の50の軸方向の位置を比較的細かく調整して、出力部52によって被動力伝達部Cに加えられる力を比較的細かく調整できる。
【0056】
なお、本明細書において、「出力弾性部が軸方向に弾性変形する」とは、弾性変形した出力弾性部によって被動力伝達部Cに加えられる弾性力が軸方向成分を含むように、出力弾性部が弾性変形することを含む。
【0057】
出力アーム53は、出力アーム53を軸方向と上下方向との両方と直交する直交方向(第2方向,Y軸方向)に貫通するアーム貫通孔53aを有する。そのため、アーム貫通孔53aの軸方向両側の部分のそれぞれにおいて、出力アーム53の軸方向の寸法を小さくできる。これにより、出力アーム53の軸方向の剛性を小さくでき、出力アーム53をより軸方向に弾性変形させやすい。
【0058】
図4Aに示すように、アーム貫通孔53aは、上下方向に延びる長孔である。そのため、出力アーム53をより軸方向に弾性変形させやすい。
【0059】
連結部55は、出力アーム53に対して、軸方向と上下方向との両方と直交する方向(第2方向,Y軸方向)に沿った軸J3周りに回転可能に接続されている。連結部55は、軸方向に延びる。
【0060】
接触部54は、例えば、直方体状である。
図4Aでは、接触部54は、連結部55の軸方向両端にそれぞれ固定される。そのため、出力部52の軸方向のいずれの側に被動力伝達部Cが設けられる場合であっても、接触部54を介して、被動力伝達部Cに軸方向の力を加えることができる。
図4Aおよび
図4Bでは、被動力伝達部Cが出力部52の前側(+X側)に配置され、前側の接触部54によって前向きの力が加えられる場合について示している。
【0061】
接触部54は、連結部55を介して、出力アーム53に対して、軸J3周りに回転可能に接続されている。そのため、
図4Bに示すように、出力アーム53が軸方向に傾いて弾性変形した際に、出力アーム53と接触部54および連結部55とが軸J3周りに相対的に回転する。これにより、
図4Aに示す出力アーム53が弾性変形していない場合と、
図4Bに示す出力アーム53が弾性変形した場合とで、被動力伝達部Cに対する接触部54の角度および姿勢を同じにできる。すなわち、出力アーム53が弾性変形した場合であっても、接触部54を被動力伝達部Cに対して適切に接触させて、被動力伝達部Cに対して力を加えやすい。
【0062】
以上の構成により、本実施形態によれば、省エネルギ、かつ、高効率的な、小型軽量の電動アクチュエータ10が得られる。
【0063】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明において上記説明と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0064】
内歯ギア43と回転シャフト41とは、互いに別部材であってもよい。回転シャフト41は、円柱状の中実シャフトであってもよい。出力アーム53は、軸方向と交差する方向であれば、いずれの方向に延びてもよい。
【0065】
上記説明において、出力弾性部は、本体部51から上下方向に延びた出力アーム53としたが、これに限られない。出力弾性部は、軸方向に弾性変形するならば、特に限定されない。出力弾性部は、例えば、
図5Aおよび
図5Bに示す構成であってもよい。
【0066】
図5Aに示すように、可動部材150の出力部152は、出力アーム153と、出力弾性部154と、を有する。出力アーム153は、本体部51から上下方向に延びる。出力アーム153は、剛体である。出力アーム153は、
図4A等に示す出力アーム53に対して、アーム貫通孔53aを有しない。
【0067】
出力弾性部154は、出力アーム153から軸方向(X軸方向)に延びる。より詳細には、出力弾性部154は、出力アーム153の上端から軸方向に延びる。
図5Aでは、出力弾性部154は、出力アーム153の上端の軸方向両側にそれぞれ設けられる。
【0068】
出力弾性部154は、被動力伝達部Cと接触する部分である。すなわち、可動部材150の構成においては、出力弾性部154が、被動力伝達部Cと接触する接触部でもある。そのため、
図5Bに示すように、可動部材150を前側(+X側)に移動させて、出力弾性部154が弾性変形した場合であっても、出力弾性部154と被動力伝達部Cとの接触する角度および姿勢が変化しない。したがって、出力部152の構成を簡単化し、かつ、被動力伝達部Cに対して力を適切に加えやすい。出力弾性部154は、例えば、ゴム製である。
【0069】
被動力伝達部Cに加えられる弾性力が軸方向成分を含むならば、出力弾性部はどのように変形してもよい。すなわち、出力弾性部は、
図4Bに示す出力アーム53のように軸方向に傾いて弾性変形してもよいし、
図5Bに示す出力弾性部154のように軸方向に圧縮変形してもよい。
【0070】
例えば、
図4Aおよび
図4Bの構成に対して接触部54と出力アーム53とを繋ぐバネが取り付けられてもよい。この場合、出力部は、接触部54が被動力伝達部Cに押し付けられた場合に、出力アーム53が変形する代わりに接触部54が軸J3周りに回転し、接触部54と出力アーム53とを繋ぐバネが弾性変形する構成でもよい。この場合、出力アーム53は、例えば、剛体であり、バネが出力弾性部に相当する。
【0071】
電動アクチュエータ10によって動力が伝達される被動力伝達部Cは、特に限定されず、車両におけるクラッチ以外の部分であってもよいし、車両以外の装置および製品等の部分であってもよい。
【0072】
上記実施形態の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。