(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-166767(P2017-166767A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 7/00 20060101AFI20170825BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20170825BHJP
【FI】
F25D7/00 A
A23L3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-53382(P2016-53382)
(22)【出願日】2016年3月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
(72)【発明者】
【氏名】前田 康晶
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
【テーマコード(参考)】
3L044
4B022
【Fターム(参考)】
3L044AA01
3L044BA01
3L044CA11
3L044DD04
3L044FA08
3L044GA01
3L044JA03
3L044JA04
3L044KA01
3L044KA05
4B022LP10
4B022LT06
(57)【要約】
【課題】安定的な冷却運転を行うことのできる真空冷却装置を提供する。
【解決手段】被冷却物を収容する処理槽2、処理槽2と真空経路9によって接続した真空ポンプ1、前記処理槽2と真空ポンプ1を繋ぐ真空経路9の途中で真空経路を遮断する真空弁11、前記真空経路の真空弁11より下流であって真空ポンプ1より上流の部分における真空経路内圧力を検出する真空配管圧力センサ13、前記の真空ポンプ1や真空弁11の作動を制御する運転制御装置5を持ち、処理槽内を真空化することで処理槽内に収容している被冷却物の冷却を行うようにしている真空冷却装置において、前記運転制御装置5では、真空冷却を行っていない時間を利用し、真空経路内が大気圧にあり、かつ真空弁11を閉じた状態で真空ポンプ1の作動を行い、その場合おける経過時間と真空配管圧力センサ13で検出している圧力値に基づいて真空ポンプの能力低下を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する処理槽、処理槽と真空経路によって接続しており処理槽内の気体を吸引する真空ポンプ、前記処理槽と真空ポンプを繋ぐ真空経路の途中で真空経路を遮断する真空弁、前記真空経路の真空弁より下流であって真空ポンプより上流の部分における真空経路内圧力を検出する真空配管圧力センサ、前記の真空ポンプや真空弁の作動を制御する運転制御装置を持ち、処理槽内を真空化することで処理槽内に収容している被冷却物の冷却を行うようにしている真空冷却装置において、前記運転制御装置では、真空冷却を行っていない時間を利用し、真空経路内が大気圧にあり、かつ真空弁を閉じた状態で真空ポンプの作動を行い、その場合おける経過時間と真空配管圧力センサで検出している圧力値に基づいて真空ポンプの能力低下を判定するようにしているものであることを特徴とする真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理槽内を真空化し、処理槽内の被冷却物から水分を蒸発させた際に発生する気化熱を利用して被冷却物を冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
処理槽内に加熱調理した食品などの被冷却物を収容しておき、処理槽内を減圧することで被冷却物を冷却する真空冷却装置がある。被冷却物を収容している処理槽内を減圧すると、処理槽内での飽和蒸気温度が低下し、飽和蒸気温度を被冷却物の温度よりも低下させると、被冷却物中の水分が蒸発する。その際に被冷却物から気化熱を奪うため、被冷却物を短時間で冷却することができる。真空冷却装置に使用する真空発生装置としては、水又は蒸気によるエジェクタや水封式又はドライ式の真空ポンプが使用されている。ドライ式の真空ポンプを使用した場合、蒸気の供給や水の循環が必要ないために装置の構成としては単純なものとすることができる。
【0003】
真空発生装置にて処理槽内の気体を吸引する場合、気体と同時に被冷却物から発生した蒸気も吸引することになる。しかし、水は液体から気体に変わると体積が大幅に増大するため、蒸気をそのまま真空発生装置に吸引させたのでは、真空発生装置で排出しなければならない気体量が多くなる。そしてその場合には、処理槽内の減圧に要する時間が長くなるため、冷却工程時間が長くなってしまう。そのため、特開2014−159931号公報に記載があるように、処理槽内の気体を真空発生装置へ送る真空経路の途中に、真空発生装置が吸引している気体を冷却する熱交換器を設け、真空経路の途中で気体を冷却することを行っている。熱交換器によって気体の冷却を行うと、気体の体積が縮小する。特に蒸気を冷却し液体に戻すと体積は大幅に小さくなるため、真空発生装置が吸引しなければならない気体の体積が小さくなり、真空冷却の効率を高めることができる。
【0004】
特開2014−159931号公報に記載の発明では、蒸気の冷却によって発生した凝縮水は熱交換器の下方に設置しているドレンタンクにためておき、ドレンとして排出するようにしている。真空発生装置がドライ式の真空ポンプの場合、真空ポンプが水滴を吸い込んでしまうと、排気能力が低下することになり、さらに真空ポンプが故障する原因ともなる。そのため、真空経路内で発生した水滴はドレンとしてドレンタンクにためておき、真空ポンプにはできるだけ送られないようにしている。しかし、一部の水分は真空ポンプまで送られ、真空ポンプ内に水滴が残留するということがあるため、特開2014−66384号公報に記載の発明では、冷却運転を行った後に真空ポンプの乾燥運転を行うようにしている。
【0005】
真空ポンプは、内部の羽根車を回転させることでポンプ内部の空気を搬送し、ポンプ外へ押し出すことで内部の圧力を低下させ、圧力の低下によって処理槽内の空気が真空ポンプ内へ流れ込むということで処理槽内を減圧化するものである。真空ポンプでは、長期間の使用による消耗部材の摩耗などで真空ポンプの能力を低下させることがある。真空ポンプの能力が低下してくると、真空冷却に要する時間が長くなり、時間内に目標温度まで冷却することができなくなるということがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−66384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、真空ポンプを用いている真空冷却装置において、真空ポンプが安定的に能力を発揮することができるようにし、安定的な冷却運転を行うことのできる真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
被冷却物を収容する処理槽、処理槽と真空経路によって接続しており処理槽内の気体を吸引する真空ポンプ、前記処理槽と真空ポンプを繋ぐ真空経路の途中で真空経路を遮断する真空弁、前記真空経路の真空弁より下流であって真空ポンプより上流の部分における真空経路内圧力を検出する真空配管圧力センサ、前記の真空ポンプや真空弁の作動を制御する運転制御装置を持ち、処理槽内を真空化することで処理槽内に収容している被冷却物の冷却を行うようにしている真空冷却装置において、前記運転制御装置では、真空冷却を行っていない時間を利用し、真空経路内が大気圧にあり、かつ真空弁を閉じた状態で真空ポンプの作動を行い、その場合おける経過時間と真空配管圧力センサで検出している圧力値に基づいて真空ポンプの能力低下を判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施した場合、真空ポンプの能力低下を早期に検出することができ、適切なメンテナンスを実施することで、適正な真空ポンプの能力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例における真空冷却装置のフロー図
【
図2】本発明の一実施例における真空冷却運転時のタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例における真空冷却装置のフロー図、
図2は本発明の一実施例における真空冷却運転時のタイムチャートである。真空冷却装置は、処理槽2、真空ポンプ1、熱交換器4、冷水ユニット3、ドレンタンク6、運転制御装置5などからなっている。真空冷却装置は、処理槽2の内部を減圧することによって、処理槽2に収容した被冷却物から水分を蒸発させ、その際に発生する気化熱の作用によって冷却を行う。
【0012】
処理槽2と真空ポンプ1の間は、真空経路9によって接続しておき、真空ポンプ1を作動することによって処理槽2内の気体を排出する。このとき、処理槽2内の気体とともに被冷却物から発生した蒸気も真空ポンプ1で吸引するようにしていると、真空ポンプ1が吸引しなければならない気体の体積が大きくなり、処理槽2内の減圧に時間が掛かることになるため、冷却時間が長くなる。そのため真空経路9には途中に熱交換器4を設けておき、真空ポンプ1が吸引している気体や蒸気を熱交換器4によって冷却することで、吸引しなければならない気体の体積を縮小している。
【0013】
熱交換器4は冷水ユニット3と接続しておき、冷水ユニット3で発生させた冷水を熱交換器4が持つタンクにためるようにしている。熱交換器4では、冷水をためているタンクを貫通するようにした複数の伝熱管を設置し、伝熱管内に処理槽2から吸引してきた気体を分散して流すことによって、吸引気体の冷却を行う。熱交換器4の下部には、吸引気体を冷却することで発生した凝縮水をドレンとして集合させるためのドレン集合室12を設ける。ドレンはドレン集合室12に集合させた後に熱交換器4の下方に接続しているドレンタンク6にドレン排出経路を通して送るようにしており、ドレン排出経路にあるドレンタンク6内にためられる。
【0014】
処理槽2は、内部に被冷却物を収容して密閉することができるようにしており、処理槽2には内部の圧力を検出する槽内圧力検出装置7と、処理槽2内に収容した被冷却物の温度を検出する品温検出装置8を設けている。そして処理槽2内にも真空冷却の終了後に処理槽2内へ大気導入するための処理槽真空解除弁10を設置している。処理槽真空解除弁10での大気導入は、真空冷却で処理槽内を減圧した状態では、処理槽の扉を開くことはできず、処理槽内から被冷却物を取り出すことができないため、真空冷却の処理が終了すると処理槽真空解除弁10を通して処理槽内に大気を導入し、その後に冷却の終わった被冷却物を取り出すようにしている。
【0015】
真空経路9の熱交換器4と真空ポンプ1の間には真空弁11を設置し、真空弁11より真空経路9下流側に真空ポンプ吸気温度センサ15と真空配管圧力センサ13を設置する。また、真空経路9の真空弁11と真空配管圧力センサ13及び真空ポンプ吸気温度センサ15の間に大気を導入するために真空ポンプ用空気導入手段を設け、真空ポンプ用空気導入手段に設けた真空ポンプ空気導入弁14を開くことで真空ポンプ1の吸引側へ外気が供給されるようにしておく。それぞれの検出装置や操作弁などは、各部の作動を制御する運転制御装置5と接続しておく。運転制御装置5は運転制御のプログラムと、センサ類で検出している各計測値に基づいて真空冷却装置の各機器の作動を制御する。
【0016】
実施例での真空冷却運転動作を説明する。
図2に記載しているように、運転制御装置5で行う真空冷却の工程は、冷却の準備を行う冷却準備工程、処理槽2内を減圧する真空冷却工程、冷却終了後に処理槽2内を復圧させる真空解除工程からなる。そして真空冷却のバッチ運転を連続して行う場合には、真空解除工程後に次バッチ分の冷却準備工程を開始する。1日の最終バッチを終了した場合は、次バッチの準備は必要ないが、真空ポンプの乾燥運転と真空ポンプの能力低下判定は行う。
【0017】
冷却準備の工程では、処理槽2内に被冷却物の収容を行い、処理槽2の扉を閉じることで処理槽2を密閉する。また冷水ユニット3を作動して熱交換器4の冷却用水タンクに冷却用水をためておく。冷却準備を行っている間に、真空ポンプ1の能力低下確認を行う。能力低下確認時は、真空弁11と真空ポンプ空気導入弁14は閉じておき、真空配管圧力センサ13で検出している圧力は大気圧の状態から開始する。真空ポンプ1を作動すると、真空配管圧力センサ13で測定している圧力値は低くなっていき、この値によって真空ポンプ1の能力低下を判定する。ここで真空ポンプの能力が低下していると、真空冷却に要する時間は長くなるが、能力低下だけで真空冷却自体は行えるというのであれば、メンテナンス警報の出力は行うが、次の冷却工程を行う。能力低下がなければメンテナンス警報の出力を行うこともなく、次の冷却工程を行う。
【0018】
冷却工程では、真空弁11は開いており、処理槽真空解除弁10と真空ポンプ空気導入弁14は閉じている。真空ポンプ1の作動を行うと、真空ポンプ1は真空経路9を通して処理槽2内の気体を吸引して排出するため、処理槽2内の圧力が低下していく。処理槽2内の圧力が低下し、処理槽2内の飽和蒸気温度が被冷却物温度よりも低くなると、処理槽2内に収容している被冷却物から水分が蒸発する。水分が蒸発する際には周囲から気化熱を奪うため、被冷却物の温度は急激に低下していく。処理槽2内の被冷却物が持っていた熱は、真空ポンプ1が吸引している空気とともに真空経路9内を送られ、真空ポンプ1を通した後に系外へ排出される。
【0019】
運転制御装置5では、品温検出装置8で検出している処理槽2内の被冷却物温度が目標温度になることを目指して冷却運転を行う。このときに冷却速度を調節する徐冷を行う場合には、処理槽真空解除弁10の開度を調節し、空気を導入しながら減圧を行うことで、処理槽2内の圧力低下速度を調節する。被冷却物を目標温度まで冷却して冷却工程を終了すると、処理槽2内に外気を導入して処理槽内の圧力を大気圧まで復圧する真空解除の工程を行う。運転制御装置5は真空ポンプ1の運転を停止し、処理槽真空解除弁10を開くことで処理槽内の圧力を上昇させる。この場合も復圧速度を調節する徐戻しを行う場合には、処理槽真空解除弁10の開度を調節して処理槽2内の圧力上昇速度を調節する。
【0020】
槽内圧力検出装置7にて検出している処理槽2内の圧力が大気圧まで戻ると、真空解除の工程を終了する。真空解除が終了すると、処理槽2の扉を開くことができ、処理槽2内からの被冷却物の取り出しを行う。続けて次バッチの真空冷却を行うのであれば、次バッチ分の処理物の搬入等準備を行う。準備の間に、真空ポンプ1の乾燥運転と真空ポンプの能力低下確認を行う。真空ポンプの乾燥は、真空弁11を閉じ、真空ポンプ空気導入弁14は開いた状態で真空ポンプを作動することで行う。この時の真空配管圧力センサ13を設置している部分での圧力は、真空ポンプ1が空気を吸引しても、真空ポンプ空気導入弁14からの空気導入があるため、大気圧となっている。
【0021】
真空ポンプ能力低下確認は、真空経路9内が大気圧にある状態で開始する。ここでは真空弁11は閉じたままであるが、開いていた真空ポンプ空気導入弁14は閉じており、その状態で真空ポンプ1を作動する。真空ポンプ空気導入弁14を閉じると、空気の導入が無くなるため真空ポンプ1の一次側での圧力は低下していく。真空弁11を閉じた状態で真空ポンプ1を作動すると、真空ポンプ1は真空弁11より下流の真空経路9内にある空気のみを吸引する。真空弁11は熱交換器4よりも下流に設置しているため、真空弁11を閉じると、真空弁11より上流側から空気を吸引することはなく、吸引する容積量は真空経路9内のわずかな管内だけであって非常に小さなものとなり、真空配管圧力センサ13を設置している真空弁11より下流の区間では圧力は急激に低下する。運転制御装置5では、真空ポンプ能力確認のための真空ポンプ作動開始からの経過時間を測定しておき、真空配管圧力センサ13で検出している圧力に基づき、真空ポンプの能力を確認する。能力低下確認の開始から時間Tが経過した時点で、真空配管圧力センサ13で検出している圧力が能力確認用の基準値より低くなっていることを検出すると、真空ポンプの能力は足りていると判定する。しかし、基準値(例えば10秒以内に-0.02MPa未満等)を満たさなかった場合、運転制御装置5は真空ポンプの能力低下の判定を行い、メンテナンスの警報を発報して真空ポンプの状態確認を促す。真空冷却装置の管理者は、警報に基づき真空ポンプの状態を確認し、必要な対処を行う。
【0022】
減圧する範囲が広い場合には、真空経路の途中にあった水滴の蒸発や、真空漏れの発生があるなど、真空ポンプ以外の外乱によって減圧速度が影響されることがある。真空ポンプ能力確認は、真空弁11を閉じることで減圧する範囲を制限し、狭い範囲内で減圧するようにしているため、真空ポンプ以外の影響を受けにくいものとすることができる。
【0023】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0024】
1 真空ポンプ
2 処理槽
3 冷水ユニット
4 熱交換器
5 運転制御装置
6 ドレンタンク
7 槽内圧力検出装置
8 品温検出装置
9 真空経路
10 処理槽真空解除弁
11 真空弁
12 ドレン集合室
13 真空配管圧力センサ
14 真空ポンプ空気導入弁
15 真空ポンプ吸気温度センサ