特開2017-166769(P2017-166769A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-166769(P2017-166769A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】光学照準装置
(51)【国際特許分類】
   F41G 1/387 20060101AFI20170825BHJP
【FI】
   F41G1/387
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-53544(P2016-53544)
(22)【出願日】2016年3月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】林田 雅人
【テーマコード(参考)】
2C014
【Fターム(参考)】
2C014AA04
(57)【要約】
【課題】光軸方向に可動する内筒の光軸のズレを抑える構造を有した光学照準装置を得る。
【解決手段】焦点距離の調整が可能な光学照準装置100であって、外筒101、外筒101の内側に配置され、外筒に101対して軸方向に移動可能なフォーカス用内筒104、フォーカス用内筒104を軸方向に弾性的に押すコイルバネ111、フォーカス用内筒104を外筒101に対して軸方向に移動させるピン108を備え、フォーカス用内筒104は、焦点距離の調整を行うフォーカスレンズ105、フォーカス用内筒104の外周に配置され、外筒101の内側を弾性的に押す複数の板バネを備え、前記板バネは、軸方向から見た径方向外側の方向に凸形状となるように弾性的に湾曲させられた状態でフォーカス用内筒104の外側に固定され、その凸形状の部分が外筒101の内側に弾性的に接触している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点距離の調整が可能な光学照準装置であって、
外筒と、
前記外筒の内側に配置され、前記外筒に対して軸方向に移動可能な内筒と、
前記内筒を前記外筒に対して軸方向に移動させる移動機構と、
前記内筒に配置され、焦点距離の調整を行うレンズと、
前記内筒を軸方向に弾性的に押すコイルバネと、
前記内筒に配置され、前記外筒の内側を弾性的に押す複数の板バネと
を備え、
前記板バネは、
軸方向から見た径方向外側の方向に凸形状となるように弾性的に湾曲させられた状態で前記内筒の外側に固定され、
前記凸形状の部分が前記外筒の内側に弾性的に接触していることを特徴とする光学照準装置。
【請求項2】
前記板バネは、その長手方向の両端が前記内筒の外周に突き当たる状態で接触することで変形していることを特徴とする請求項1に記載の光学照準装置。
【請求項3】
前記外筒の内側には、前記板バネが摺動する光軸方向に延在するガイド溝が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学照準装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフル等の銃器の照準を行う光学照準装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライフル等の銃器の照準を行う照準装置として、筒形状を有した光学照準装置(ライフルスコープとも称される)が知られている。この光学照準装置において、焦点距離の調整用のつまみが筒の側部や上部についているものが知られている(例えば特許文献1や2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8449131号公報
【特許文献2】米国特許第6005711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学照準装置は、外筒と、この外筒に対して可動する内筒を備え、つまみを回すことで内筒が光軸上で移動する構造を有している。光学照準装置は、レチクル(視準用の十字線等)を備えているが、レチクルの表示と狙点の位置にずれが生じると、銃器の命中精度が低下する。上記の焦点距離の調整機構は可動部を有するが、この可動部の光軸のずれは、上記のレチクルの目盛と狙点の位置のずれの要因となる。
【0005】
特許文献2には、内筒に外側から接触する板バネ116によって光軸方向に可動する内筒を弾性的に保持する構造が記載されている。しかしながら、特許文献2の構造は、板バネ116が光軸方向に延在し、その先端部分が内筒の外周に接触する構造である。このため、内筒を光軸方向に動かした際に、光軸方向における内筒への板バネの接触位置が変化し、光軸のズレや衝撃を受けた際の光軸のズレが懸念される。
【0006】
このような背景において、本発明は、光軸方向に可動する内筒の光軸のズレを抑える構造を有した光学照準装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、焦点距離の調整が可能な光学照準装置であって、外筒と、前記外筒の内側に配置され、前記外筒に対して軸方向に移動可能な内筒と、前記内筒を前記外筒に対して軸方向に移動させる移動機構と、前記内筒に配置され、焦点距離の調整を行うレンズと、前記内筒を軸方向に弾性的に押すコイルバネと、前記内筒に配置され、前記外筒の内側を弾性的に押す複数の板バネとを備え、前記板バネは、軸方向から見た径方向外側の方向に凸形状となるように弾性的に湾曲させられた状態で前記内筒の外側に固定され、前記凸形状の部分が前記外筒の内側に弾性的に接触していることを特徴とする光学照準装置である。
【0008】
本発明によれば、コイルバネによって、内筒の軸方向におけるガタが抑えられ、特に焦点距離の調整時におけるガタが抑えられる。また、板バネによって当該内筒の光軸方向のずれが抑えられる。特に板バネが湾曲した状態で両端が内筒に束縛され、湾曲した凸の部分で外筒の内側を付勢することで、内筒の軸方向における外筒に対する位置の違いによる保持力の偏差が生じない構造とできる。この構造によれば、焦点の調整に起因する光軸のずれが生じ難く、また高い耐衝撃性が得られる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記板バネは、その長手方向の両端が前記内筒の外周に突き当たる状態で接触することで変形していることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記外筒の内側には、前記板バネが摺動する光軸方向に延在するガイド溝が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光軸方向に可動する内筒の光軸のズレを抑える構造を有した光学照準装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の全体斜視図である。
図2】実施形態の全体断面図である。
図3】フォーカス機構の展開図である。
図4】フォーカス機構の断面拡大図である。
図5】フォーカス機構の断面図である。
図6】フォーカス機構の45度方向からの断面図である。
図7】フォーカス機構の部分斜視図である。
図8】外筒(鏡筒)の分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(構造)
図1および図2には、実施形態の光学照準装置100が示されている。光学照準装置100は、外筒101を有している。外筒101は、鏡筒と呼ばれる部材であり、断面が円形の筒状の筐体である。外筒101の軸方向(光軸方向)の内側両端には、それぞれが複数のレンズで構成される対物レンズ群102と接眼レンズ103群が固定されている。外筒101の内側には、断面が円形のフォーカス用内筒(フォーカスセル)104が軸方向(光軸方向)に移動可能な状態で収められている。フォーカス用内筒104は、フォーカスレンズ105を備えている。フォーカスレンズ105が、フォーカス用内筒104と共に光軸上を移動することで、光学照準装置100の焦点距離の調整、すなわちピントの調整が行われる。
【0013】
フォーカス用内筒104には、軸方向(光軸方向)から見て90°間隔の位置の二か所に板バネ107が嵌め込まれ固定されている。2つの板バネ107は、軸方向から見て100°や120°といった角度位置に配置されていてもよい。板バネ107は、細長い板状(短冊状)の形状を有し、軸中心(光軸中心)から離れる方向(径外側の方向)に凸となる湾曲形状に弾性的に変形させられた状態でフォーカス用内筒104の外周に設けられた板バネ収容用の凹部106(図3参照)に嵌め込まれて固定されている。板バネ107は、その長手方向の長さが凹部106の軸方向の長さより大きな寸法に設定されている。そして、板バネ107を軸方向から見て径方向外側(外筒101の内周面に向かう方向)に凸となるように撓めた状態で板バネ107の長手方向の両端を凹部106内側の軸方向の両端の内壁に突き当てて接触させることで、上記の凸形状に弾性的に湾曲させられた状態が得られている。板バネ107の数は、3つ以上であってもよい。
【0014】
また、フォーカス用内筒104を外筒101の内側に組み込む前の状態では、板バネ107が凹部106に嵌め込まれた状態において、凸形状に湾曲した板バネ107の凸部の先端がフォーカス用内筒104の外周より外側(径方向外側の方向)に僅かに突出している構造とされている。
【0015】
フォーカス用内筒104が外筒101に対して動くように、フォーカス用内筒104の外径は、外筒101の内径よりも僅かに小さい値(相対的な移動が可能な程度の寸法)に設定されている。フォーカス用内筒104が外筒101の内側に収められている状態において、弾性的に湾曲した2つの板バネ107は、その凸形状の部分で外筒101内側に設けられたガイド溝101aに接触する。ガイド溝101aは、光軸方向に延在し、板バネ107(フォーカス用内筒104)の光軸方向への動きをガイドする。板バネ107は、ガイド溝101aに接触することで、外筒101の内側を弾性的に押している(図6参照)。この板バネ107の反発力の反力により、フォーカス用内筒104は弾性的に押され、外筒101の内側にガタが抑えられた状態で保持されている。
【0016】
フォーカス用内筒104の側面には、径方向に延在する円柱形状のピン108が固定されている。ピン108は、サイドフォーカスノブ109に係合している。サイドフォーカスノブ109は、ピント調整のための調整ダイヤルであり、サイドフォーカスノブ109を回すことで、フォーカスレンズ105が光軸上を動く。サイドフォーカスノブ109は、ダイヤル部109a、カム押さえ部109b、カム109cにより構成されている。
【0017】
サイドフォーカスノブ109は、光軸に対して垂直な方向に回転軸を有する。カム109cには、ピン108が摺動可能な状態で嵌るピン溝110が形成されている。ピン溝110は、サイドフォーカスノブ109の回転中心からの距離が徐々に変化(単調増加または単調減少)する可変半径溝構造のC型形状を有している。
【0018】
外筒101には、光軸方向に延在する長孔101bが設けられ、そこをピン108が貫通している。長孔101bがあることでピン108は、光軸方向に動くことができるが、フォーカス用内筒104が光軸の回りを回転することはできないように、その動きが規制されている。
【0019】
サイドフォーカスノブ109を回すと、カム109cが一体となって回転し、ピン108に対してピン溝110が相対的に摺動して動く。ピン溝110は、回転中心からの距離が徐々に変化する構造で、且つ、ピン108は光軸方向のみに動けるので、サイドフォーカスノブ109を回すと、ピン溝110に摺動可能に嵌合し、その位置がピン溝110に束縛されたピン108は、光軸方向に移動する。そして、ピン108が光軸方向に動くことで、フォーカス用内筒104が光軸方向で移動し、焦点の調整(ピントの調整)が行われる。
【0020】
上記のメカニズムにより、サイドフォーカスノブ109を回すことによるフォーカスの調整(光学照準装置100の光学焦点の調整)が行われる。上記のフォーカス用内筒104の光軸方向における移動において、板バネ107が外筒101の内周に対して摺動し、フォーカス用内筒104の偏心が抑えられつつフォーカス用内筒104の光軸方向への移動が許容される。
【0021】
また、フォーカス用内筒104は、コイルバネ111(図2図3図4参照)によって軸方向(接眼レンズ103の方向)に弾性的に押され、光軸方向のガタの発生が抑えられている。なお、コイルバネ111のフォーカス用内筒104に接触する側と軸方向の反対側は、外筒101の内側に固定された位置決めリング112に接触している。
【0022】
コイルバネ111には以下の機能がある。まず、ピン108と溝110の相対的な摺動を利用し、しかもピン108がフォーカス用内筒104の片側側面に固定されている関係で、駆動力の伝達にロスがある。そのため、サイドフォーカスノブ109の回転量とフォーカス用内筒108の移動量との対応には、誤差が存在する。仮にコイルバネ111がないと、上記の誤差の影響により、サイドフォーカスノブ109を回転させてのピントの調整にガタが生じ易く、サイドフォーカスノブ109の回転に対するフォーカス用内筒108の追従性が悪い。コイルバネ111があると、その反発力により、フォーカス用内筒104に常に軸方向へのバイアス力が加わるため、上記の誤差の発生が抑えられ、サイドフォーカスノブ109の回転に対するフォーカス用内筒108の追従性が改善される。また、コイルバネ111の付勢力によってサイドフォーカスノブ109の回転に適度な抵抗が生じ、ピントの微調整を行う際の操作性が改善される。
【0023】
図1における符号120は、レチクル(照準用の十字線やマーク)を照明するLED(図示省略)の輝度を調整する調整ノブである。外筒101の内側には、レチクルを微動させるための内筒121が配置されている(図2参照)。内筒121の内側には、レチクルが設けられたレチクル配置部113および図示省略したズームレンズ群が配置されている。内筒121は、ボ−ル支持部122を支点として三次元的に可動する。レチクル配置部113は、ガラス等の光学的に透明で円形の2枚の光透過部材の間に十字線等のレチクルパターンを挟んだ構造を有している。
【0024】
内筒121の可動は、左右方向微動用ノブ123および上下方向微動用ノブ124によって行われる。この2つのノブを回すことで、照準視野内におけるレチクルの位置の調整が行われる。なお、左右方向微動用ノブ123および上下方向微動用ノブ124は、通常保護キャップが被せてあり、レチクルの調整は、この保護キャップを外した状態で行われる。また、内筒121は、上記の光軸の上下左右方向への微調整時にガタが生じないようにコイルばね114(図2図4参照)によって軸に垂直な方向に付勢されている。
【0025】
外筒101の下部には、銃器上部の光学照準器取り付け部132(図1参照)に光学照準装置100を固定するための取り付けマウント130が固定されている。符号131は、取り付けマウント130を銃器に取り付けた状態を固定するためのレバーである。
【0026】
(優位性)
以上述べたように、焦点距離の調整が可能な光学照準装置100は、外筒101、外筒101の内側に配置され、外筒101に対して軸方向に移動可能なフォーカス用内筒104、フォーカス用内筒104を外筒101に対して軸方向に移動させるピン108、フォーカス用内筒104を軸方向に弾性的に押すコイルバネ111を備え、フォーカス用内筒104は、焦点距離の調整を行うフォーカスレンズ105、フォーカス用内筒104の外周に配置され、外筒101の内側を弾性的に押す複数の板バネ107を備え、板バネ107は、軸方向から見た径方向外側の方向に凸形状となるように弾性的に湾曲させられた状態でフォーカス用内筒104の外側に固定され、その凸形状の部分が外筒101の内側に弾性的に接触している構造を有している。
【0027】
この構造によれば、コイルバネ111によってフォーカスレンズ105を備えたフォーカス用内筒104の軸方向におけるガタが抑えられる。この軸方向のガタが抑えられることで、ピント調整の操作性が改善される。板バネ107によるフォーカス用内筒104の保持構造は、外筒101に対するフォーカス用内筒104の軸方向における位置が違ってもフォーカス用内筒104における板バネ107の位置は同じであるので、フォーカス用内筒104の軸方向における位置の違いによる保持力の偏差が生じない構造とできる。このため、焦点の調整に起因する光軸のずれが生じ難くまた、高い耐衝撃性が得られる。
【0028】
特に上記の構造では、レチクル配置部113の前にフォーカスレンズ105が配置されているので、フォーカス用内筒104の光軸のずれがレチクルと狙点のずれにつながり易い。本実施形態では、フォーカス用内筒104の光軸のずれが生じ難い構造となっているので、照準時における視野内でのレチクルと狙点のずれが効果的に抑えられる。
【符号の説明】
【0029】
100…光学照準装置、101…外筒、102…対物群、103…接眼群、104…フォーカス用内筒、105…フォーカスレンズ、106…凹部、107…板バネ、108…ピン、109…サイドフォーカスノブ、110…ピン溝、111…コイルバネ、112…内筒、113…レチクル配置部、121…位置決めリング、122…ボール支持部、123…左右方向微動ノブ、124…上下方向微動ノブ、130…台座、131…固定用レバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8