【解決手段】吸収ヒートポンプは、伝熱管12を複数有する吸収器10と、気液分離器80と、第1の流路84と、第2の流路81、82とを備える。吸収器10は、分配部14と収集部15とを有し、複数の伝熱管12のそれぞれの一端が分配部14に接続されると共に複数の伝熱管12のそれぞれの他端が15収集部に接続され、複数の伝熱管12のそれぞれの内部を流れる被加熱媒体Wが分配部14から収集部15に至る間に合流も分流もしないように構成され、収集部15の容積が分配部14の容積よりも大きく形成されている。収集部15は、第1の流路84に連通する被加熱媒体流出口15hが上部に形成されている。気液分離器80は、分離された被加熱媒体の液体Wqが貯留される部分80cが、分配部14又は収集部15よりも上方になるように配置されている。
被加熱媒体の液体を導入して内部に流す伝熱管を複数有し、前記伝熱管の外側で吸収液が冷媒の蒸気を吸収したときに生じた吸収熱で前記被加熱媒体を加熱して前記被加熱媒体の液体を蒸発させる吸収器と;
前記吸収器で加熱された前記被加熱媒体を導入して前記被加熱媒体の液体と蒸気とに分離する気液分離器と;
前記吸収器で加熱された前記被加熱媒体を前記気液分離器に導く第1の流路と;
前記気液分離器で分離された前記被加熱媒体の液体を前記吸収器に導く第2の流路とを備え;
前記吸収器は、前記被加熱媒体の液体を複数の前記伝熱管に分配する分配部と、複数の前記伝熱管から前記被加熱媒体を収集する収集部とを有し、複数の前記伝熱管のそれぞれの一端が前記分配部に接続されると共に複数の前記伝熱管のそれぞれの他端が前記収集部に接続され、複数の前記伝熱管のそれぞれの内部を流れる前記被加熱媒体が前記分配部から前記収集部に至る間に合流も分流もしないように構成され、前記収集部の容積が前記分配部の容積よりも大きく形成され;
前記収集部は、前記第1の流路に連通する被加熱媒体流出口が上部に形成され;
前記気液分離器は、分離された前記被加熱媒体の液体が貯留される部分が、前記収集部よりも上方になるように配置されている;
吸収ヒートポンプ。
被加熱媒体の液体を導入して内部に流す伝熱管を複数有し、前記伝熱管の外側で吸収液が冷媒の蒸気を吸収したときに生じた吸収熱で前記被加熱媒体を加熱して前記被加熱媒体の液体を蒸発させる吸収器と;
前記吸収器で加熱された前記被加熱媒体を導入して前記被加熱媒体の液体と蒸気とに分離する気液分離器と;
前記吸収器で加熱された前記被加熱媒体を前記気液分離器に導く第1の流路と;
前記気液分離器で分離された前記被加熱媒体の液体を前記吸収器に導く第2の流路とを備え;
前記吸収器は、前記被加熱媒体の液体を複数の前記伝熱管に分配する分配部と、複数の前記伝熱管から前記被加熱媒体を収集する収集部とを有し、複数の前記伝熱管のそれぞれの一端が前記分配部に接続されると共に複数の前記伝熱管のそれぞれの他端が前記収集部に接続され、複数の前記伝熱管のそれぞれの内部を流れる前記被加熱媒体が前記分配部から前記収集部に至る間に合流も分流もしないように構成され、前記収集部の容積が前記分配部の容積よりも大きく形成され;
前記収集部は、前記第1の流路に連通する被加熱媒体流出口が上部に形成され;
前記気液分離器は、分離された前記被加熱媒体の液体が貯留される部分が、前記分配部よりも上方になるように配置されている;
吸収ヒートポンプ。
前記収集部は、複数の前記伝熱管が取り付けられた伝熱管取付壁と、前記伝熱管取付壁に対向する対向壁とを有し、前記伝熱管取付壁と前記対向壁との間における前記伝熱管取付壁に直交する断面の面積が、上部から下部に向けて減少するように構成された;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸収ヒートポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チューブを流れる被加熱媒体は、吸収熱で加熱されることによって液体の一部が蒸発し、気体を伴って流れることになる。このとき、例えば被加熱媒体が水の場合、蒸発した気体の体積は液体の体積の数百倍大きいことから、ある水室において被加熱媒体が下方のチューブ群から流出して次の上方のチューブ群に流入する際、流れの状況により気体だけが流入して液体が流入しないチューブが現れることがあった。気体だけが流入したチューブでは、吸収熱が被加熱媒体に効率よく伝達されないこととなる。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、被加熱媒体の液体が流入せずに被加熱媒体の蒸気が流入してしまう蒸発管が生じることを防いで、被加熱媒体への伝熱効率の低下を抑制した、伝熱効率が優れた吸収ヒートポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1及び
図2に示すように、被加熱媒体の液体Wqを導入して内部に流す伝熱管12を複数有し、伝熱管12の外側で吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収したときに生じた吸収熱で被加熱媒体Wqを加熱して被加熱媒体の液体Wqを蒸発させる吸収器10と;吸収器10で加熱された被加熱媒体Wmを導入して被加熱媒体の液体Wqと蒸気Wvとに分離する気液分離器80と;吸収器10で加熱された被加熱媒体Wmを気液分離器80に導く第1の流路84と;気液分離器80で分離された被加熱媒体の液体Wqを吸収器10に導く第2の流路81、82とを備え;吸収器10は、被加熱媒体の液体Wqを複数の伝熱管12に分配する分配部14と、複数の伝熱管12から被加熱媒体Wを収集する収集部15とを有し、複数の伝熱管12のそれぞれの一端が分配部14に接続されると共に複数の伝熱管12のそれぞれの他端が15収集部に接続され、複数の伝熱管12のそれぞれの内部を流れる被加熱媒体Wが分配部14から収集部15に至る間に合流も分流もしないように構成され、収集部15の容積が分配部14の容積よりも大きく形成され;収集部15は、第1の流路84に連通する被加熱媒体流出口15hが上部に形成され;気液分離器80は、分離された被加熱媒体の液体Wqが貯留される部分80cが、収集部15よりも上方になるように配置されている。
【0007】
このように構成すると、分配部が被加熱媒体の液体で満たされて、各伝熱管に被加熱媒体の液体が流入することとなり、複数本の伝熱管のうち被加熱媒体の液体が流入せずに被加熱媒体の蒸気が流入してしまう伝熱管が生じることを防ぐことができて、被加熱媒体への吸収熱の伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第2の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1及び
図2に示すように、被加熱媒体の液体Wqを導入して内部に流す伝熱管12を複数有し、伝熱管12の外側で吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収したときに生じた吸収熱で被加熱媒体Wqを加熱して被加熱媒体の液体Wqを蒸発させる吸収器10と;吸収器10で加熱された被加熱媒体Wmを導入して被加熱媒体の液体Wqと蒸気Wvとに分離する気液分離器80と;吸収器10で加熱された被加熱媒体Wmを気液分離器80に導く第1の流路84と;気液分離器80で分離された被加熱媒体の液体Wqを吸収器10に導く第2の流路81、82とを備え;吸収器10は、被加熱媒体の液体Wqを複数の伝熱管12に分配する分配部14と、複数の伝熱管12から被加熱媒体Wを収集する収集部15とを有し、複数の伝熱管12のそれぞれの一端が分配部14に接続されると共に複数の伝熱管12のそれぞれの他端が15収集部に接続され、複数の伝熱管12のそれぞれの内部を流れる被加熱媒体Wが分配部14から収集部15に至る間に合流も分流もしないように構成され、収集部15の容積が分配部14の容積よりも大きく形成され;収集部15は、第1の流路84に連通する被加熱媒体流出口15hが上部に形成され;気液分離器80は、分離された被加熱媒体の液体Wqが貯留される部分80cが、分配部14よりも上方になるように配置されている。
【0009】
このように構成すると、分配部が被加熱媒体の液体で満たされて、各伝熱管に被加熱媒体の液体が流入することとなり、複数本の伝熱管のうち被加熱媒体の液体が流入せずに被加熱媒体の蒸気が流入してしまう伝熱管が生じることを防ぐことができて、被加熱媒体への吸収熱の伝熱効率の低下を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図3に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、分配部14は、内部を上下に分割する区画板14dを含み;第2の流路82は区画板14dよりも上方の分配部14Aの内部に連通し;外部から被加熱媒体の液体Wsを導入する第3の流路85が区画板14dよりも下方の分配部14Bの内部に連通して構成されている。
【0011】
このように構成すると、外側に接触する吸収液の温度が上部よりも低くなる下部の伝熱管に、比較的温度が低い外部からの被加熱媒体の液体が流入することとなり、吸収熱を効率よく被加熱媒体に伝達することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図4に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、収集部15は、複数の伝熱管12が取り付けられた伝熱管取付壁15waと、伝熱管取付壁15waに対向する対向壁15wbとを有し、伝熱管取付壁15waと対向壁15wbとの間における伝熱管取付壁15waに直交する断面の面積が、上部から下部に向けて減少するように構成されている。
【0013】
このように構成すると、気体よりも体積が小さい液体の含有率が大きくなる収集部の下部ほど水平断面積が小さくなり、収集部内の保有液量を少なくすることができ、ひいては被加熱媒体の加熱量を減少することができて、加熱効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図5に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、分配部14は、外部から導入した被加熱媒体の液体Wsを分配部14の内部の下部で吹き出す被加熱媒体液吹き出し部材14pを有し;被加熱媒体液吹き出し部材14pは、複数の吹き出し孔14phが伝熱管12の端部に対向する向きで形成されて構成されている。
【0015】
このように構成すると、分配部の下部で被加熱媒体の液体を均一に吹き出すことが可能になり、下方に配置された伝熱管の複数に均一に被加熱媒体の液体を流入させることが可能になる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図2乃至
図5に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、第2の流路82は、複数の伝熱管12の群の高さ方向の中間よりも低い位置で分配部14に接続されている。
【0017】
このように構成すると、被加熱媒体の液体の吸収器への入口部分を、吸収器内の被加熱媒体の液体の液位よりも下方の液相域に存在させることができ、吸収器内の被加熱媒体の蒸気が第2の流路に逆流することを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明の第7の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図6(C)に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、複数の伝熱管12のそれぞれは、水平部分を複数行路有する。
【0019】
このように構成すると、吸収器の大型化を抑制しつつ伝熱管1つあたりの長さを長くすることができ、伝熱管内を流れる被加熱媒体の受熱量を増加させることができる。
【0020】
また、本発明の第8の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図6(A)及び
図6(B)に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、複数の伝熱管12のそれぞれが傾斜して配置されている。
【0021】
このように構成すると、伝熱管の内部で生じた被加熱媒体の蒸気が伝熱管の内部に留まってしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、分配部が被加熱媒体の液体で満たされて、各伝熱管に被加熱媒体の液体が流入することとなり、複数本の伝熱管のうち被加熱媒体の液体が流入せずに被加熱媒体の蒸気が流入してしまう伝熱管が生じることを防ぐことができて、被加熱媒体への吸収熱の伝熱効率の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0025】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1を説明する。
図1は、吸収ヒートポンプ1の模式的系統図である。最初に吸収ヒートポンプ1全体の構成及び作用を説明し、その後に吸収ヒートポンプ1の構成要素の1つである吸収器10の詳細を説明する。吸収ヒートポンプ1は、吸収液S(Sa、Sw)と冷媒V(Ve、Vg、Vf)との吸収ヒートポンプサイクルが行われる主要機器を構成する吸収器10、蒸発器20、再生器30、及び凝縮器40を備え、さらに、気液分離器80を備えている。
【0026】
本明細書においては、吸収液に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「希溶液Sw」や「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」ということとする。同様に、冷媒に関し、ヒートポンプサイクル上における区別を容易にするために、性状やヒートポンプサイクル上の位置に応じて「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒Vとの混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H
2O)が用いられている。また、被加熱媒体Wは、吸収器10に供給される液体の被加熱媒体Wである被加熱媒体液Wq、気体の被加熱媒体である被加熱媒体蒸気Wv、液体と気体とが混合した状態の被加熱媒体である混合被加熱媒体Wm、吸収ヒートポンプ1外から補充された被加熱媒体である補給液体としての補給水Wsの総称である。本実施の形態では、被加熱媒体Wとして水(H
2O)が用いられている。
【0027】
吸収器10は、被加熱媒体Wの流路を構成する伝熱管12と、濃溶液Saを散布する濃溶液散布ノズル13とを内部に有している。吸収器10は、濃溶液散布ノズル13から濃溶液Saが散布され、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱を発生させる。この吸収熱を、伝熱管12を流れる被加熱媒体Wが受熱して、被加熱媒体Wが加熱されるように構成されている。
【0028】
蒸発器20は、熱源流体としての熱源温水hの流路を構成する熱源管22を、蒸発器缶胴21の内部に有している。蒸発器20は、蒸発器缶胴21の内部に冷媒液Vfを散布するノズルを有していない。このため、熱源管22は、蒸発器缶胴21内に貯留された冷媒液Vfに浸かるように配設されている(満液式蒸発器)。吸収ヒートポンプでは、吸収冷凍機よりも蒸発器内の圧力が高いので、熱源管が冷媒液に浸かる構成でも所望の冷媒蒸気を得ることが可能となる。蒸発器20は、熱源管22周辺の冷媒液Vfが熱源管22内を流れる熱源温水hの熱で蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veが発生するように構成されている。蒸発器缶胴21の下部には、蒸発器缶胴21内に冷媒液Vfを供給する冷媒液管45が接続されている。
【0029】
吸収器10と蒸発器20とは、相互に連通している。吸収器10と蒸発器20とが連通することにより、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器10に供給することができるように構成されている。
【0030】
再生器30は、希溶液Swを加熱する熱源流体としての熱源温水hを内部に流す熱源管32と、希溶液Swを散布する希溶液散布ノズル33とを有している。熱源管32内を流れる熱源温水hは、本実施の形態では熱源管22内を流れる熱源温水hと同じ流体となっているが、異なる流体であってもよい。再生器30は、希溶液散布ノズル33から散布された希溶液Swが熱源温水hに加熱されることにより、希溶液Swから冷媒Vが蒸発して濃度が上昇した濃溶液Saが生成されるように構成されている。希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40に移動するように構成されている。
【0031】
凝縮器40は、冷却媒体としての冷却水cが流れる冷却水管42を凝縮器缶胴41の内部に有している。凝縮器40は、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを導入し、これを冷却水cで冷却して凝縮させるように構成されている。再生器30と凝縮器40とは、相互に連通するように、再生器の缶胴と凝縮器缶胴41とが一体に形成されている。再生器30と凝縮器40とが連通することにより、再生器30で発生した再生器冷媒蒸気Vgを凝縮器40に供給することができるように構成されている。
【0032】
再生器30の濃溶液Saが貯留される部分と吸収器10の濃溶液散布ノズル13とは、濃溶液Saを流す濃溶液管35で接続されている。濃溶液管35には、濃溶液Saを圧送する溶液ポンプ35pが配設されている。吸収器10の希溶液Swが貯留される部分と希溶液散布ノズル33とは、希溶液Swを流す希溶液管36で接続されている。濃溶液管35及び希溶液管36には、濃溶液Saと希溶液Swとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器38が配設されている。凝縮器40の冷媒液Vfが貯留される部分と蒸発器缶胴21の下部(典型的には底部)とは、冷媒液Vfを流す冷媒液管45で接続されている。冷媒液管45には、冷媒液Vfを圧送する冷媒ポンプ46が配設されている。
【0033】
蒸発器20の熱源管22の一端には、熱源温水hを熱源管22に導入する熱源温水導入管51が接続されている。熱源管22の他端と再生器の熱源管32の一端とは、熱源温水連絡管52で接続されている。熱源管32の他端には、熱源温水hを吸収ヒートポンプ1の外に導く熱源温水流出管53が接続されている。熱源温水流出管53には、内部を流れる熱源温水hの流量を調節可能な熱源温水切替弁53vが配設されている。熱源温水切替弁53vよりも下流側の熱源温水流出管53と熱源温水導入管51との間には、熱源温水バイパス管55が設けられている。熱源温水バイパス管55には、流路を開閉可能なバイパス弁55vが配設されている。
【0034】
気液分離器80は、吸収器10の伝熱管12を流れて加熱された被加熱媒体Wを導入し、被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとを分離する機器である。気液分離器80には、分離された被加熱媒体液Wqを気液分離器80から流出する分離液管81が下部(典型的には底部)に接続されている。気液分離器80の下部は、分離された被加熱媒体液Wqを貯留する貯留部80cとなっている。分離液管81の他端には、被加熱媒体液Wqを伝熱管12に導く被加熱媒体液管82が接続されている。本実施の形態では、分離液管81と被加熱媒体液管82とで第2の流路を構成している。伝熱管12の他端と気液分離器80の気相部とは、加熱された被加熱媒体Wを気液分離器80に導く加熱後被加熱媒体管84で接続されている。加熱後被加熱媒体管84は、第1の流路に相当する。また、気液分離器80には、分離された被加熱媒体蒸気Wvを需要先に向けて吸収ヒートポンプ1の外に導く被加熱媒体蒸気管89が上部(典型的には頂部)に接続されている。また、主に蒸気として吸収ヒートポンプ1の外に供給された分の被加熱媒体Wを補うための補給水Wsを吸収ヒートポンプ1の外から導入する補給水管85が設けられている。補給水管85は、本実施の形態では、分離液管81と被加熱媒体液管82との接続部に接続されており、分離液管81を流れてきた被加熱媒体液Wqに補給水Wsを合流させるように構成されている。補給水管85には、吸収器10に向けて補給水Wsを圧送する補給水ポンプ86が配設されている。また、気液分離器80には、貯留部80cの被加熱媒体液Wqの液位を検出する液位検出器87が設けられている。貯留部80cの被加熱媒体液Wqの液位は、吸収ヒートポンプ1の動作を制御する制御装置90によって、液位検出器87で検出される液位が所定の液位となるように制御される。典型的には、貯留部80cの被加熱媒体液Wqの液位は、制御装置90による補給水ポンプ86の吐出流量の制御によって所定の液位となるように制御される。気液分離器80の下部(典型的には底部)には、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを吸収ヒートポンプ1の外に導くブロー管95が接続されている。
【0035】
引き続き
図1を参照して、吸収ヒートポンプ1の作用を説明する。通常、熱源温水切替弁53vが開、バイパス弁55vが閉となっている。まず、冷媒側のサイクルを説明する。凝縮器40では、再生器30で蒸発した再生器冷媒蒸気Vgを受け入れて、冷却水管42を流れる冷却水cで冷却して凝縮し、冷媒液Vfとする。凝縮した冷媒液Vfは、冷媒ポンプ46で蒸発器缶胴21に送られる。蒸発器缶胴21に送られた冷媒液Vfは、熱源管22内を流れる熱源温水hによって加熱され、蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなる。蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veは、蒸発器20と連通する吸収器10へと移動する。
【0036】
次に溶液側のサイクルを説明する。吸収器10では、濃溶液Saが濃溶液散布ノズル13から散布され、この散布された濃溶液Saが蒸発器20から移動してきた蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する。蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなる。吸収器10では、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に吸収熱が発生する。この吸収熱により、伝熱管12を流れる被加熱媒体Wが加熱される。吸収器10で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、濃度が低下して希溶液Swとなり、吸収器10の下部に貯留される。貯留された希溶液Swは、吸収器10と再生器30との内圧の差により再生器30に向かって希溶液管36を流れ、溶液熱交換器38で濃溶液Saと熱交換して温度が低下して、再生器30に至る。
【0037】
再生器30に送られた希溶液Swは、希溶液散布ノズル33から散布され、熱源管32を流れる熱源温水h(本実施の形態では約80℃前後)によって加熱され、散布された希溶液Sw中の冷媒が蒸発して濃溶液Saとなり、再生器30の下部に貯留される。他方、希溶液Swから蒸発した冷媒Vは再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器40へと移動する。再生器30の下部に貯留された濃溶液Saは、溶液ポンプ35pにより、濃溶液管35を介して吸収器10の濃溶液散布ノズル13に圧送される。濃溶液管35を流れる濃溶液Saは、溶液熱交換器38で希溶液Swと熱交換して温度が上昇してから吸収器10に流入し、濃溶液散布ノズル13から散布される。濃溶液Saは、溶液ポンプ35pで昇圧されて吸収器10に入り、吸収器10内で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収することに伴い温度が上昇する。吸収器10に戻った濃溶液Saは蒸発器冷媒蒸気Veを吸収し、以降、同様のサイクルを繰り返す。
【0038】
吸収液S及び冷媒Vが上記のような吸収ヒートポンプサイクルを行う過程で、吸収器10において濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生する吸収熱で被加熱媒体液Wqが加熱されて湿り蒸気(混合被加熱媒体Wm)となり、気液分離器80に導かれる。気液分離器80に流入した混合被加熱媒体Wmは、被加熱媒体蒸気Wvと被加熱媒体液Wqとに分離される。気液分離器80で分離された被加熱媒体蒸気Wvは、被加熱媒体蒸気管89に流出し、吸収ヒートポンプ1の外部の蒸気利用場所(需要先)に供給される。つまり、吸収ヒートポンプから被加熱媒体蒸気Wvが取り出される。このように、吸収ヒートポンプ1は、駆動熱源の温度以上の被加熱媒体Wを取り出すことができる第2種の吸収ヒートポンプとして構成されている。他方、気液分離器80で分離されて貯留部80cに所定の液位で貯留された被加熱媒体液Wqは、分離液管81に流出し、被加熱媒体液管82を流れ、伝熱管12内に供給される。このとき、補給水Wsが補給水管85を流れてきた場合は、分離液管81から被加熱媒体液管82に流入する被加熱媒体液Wqに補給水Wsが合流し、被加熱媒体液Wqとして伝熱管12内に供給される。典型的には、被加熱媒体蒸気Wvとして外部に供給された分及びブロー管95から排出された分の被加熱媒体Wが、補給水Wsとして吸収ヒートポンプ1の外部から供給される。なお、上述した吸収ヒートポンプ1を構成する各機器は、制御装置90で制御される。
【0039】
次に
図2を参照して、上述の吸収ヒートポンプ1(
図1参照)を構成する吸収器10の詳細を説明する。
図2は、
図1に示す吸収ヒートポンプ1の吸収器10まわりの断面図である。吸収器10は、伝熱管12と濃溶液散布ノズル13とが缶胴11内に収容され、缶胴11の外側に入口液室14を形成する入口液室形成部材14f及び出口液室15を形成する出口液室形成部材15fが設けられて構成されている。缶胴11は、典型的には設置されたときに横長になるように形成されている。
【0040】
伝熱管12は、本実施の形態では、直線状に形成されたものの複数が缶胴11内に設けられている。伝熱管12は、横長の缶胴11の一端及びその反対側の他端に接合している。缶胴11の、伝熱管12が接合する面は、伝熱管12を挿通することができる孔が形成された管板(伝熱管プレート)として形成されている。缶胴11の両端の管板に接合した伝熱管12は、内部が缶胴11の内部と連通しないようになっている。換言すれば、伝熱管12内を流れる被加熱媒体Wと、缶胴11内に流出入して伝熱管12の外側に存在する流体(吸収液S及び冷媒V)とが混合しないように構成されている。伝熱管12の管板への接合態様の具体例を示すと、伝熱管12は、缶胴11の管板に形成された孔に拡管され固定されている。
【0041】
各伝熱管12は、本実施の形態では、軸線が水平になるように配置されている。伝熱管12内で被加熱媒体液Wqを加熱沸騰させることを考慮すると、伝熱管12をその軸線が鉛直になるように配置することも考えられる。しかし、本実施の形態では、散布された吸収液Sを伝熱管12の外面に薄い液膜としてできるだけ多く接触させる観点から、伝熱管12を軸線が水平になるように配置することとしている。軸線が水平になるように配置された伝熱管12は、水平方向成分が100%、鉛直方向成分が0%であり、鉛直方向成分を持たないこととなる。また、缶胴11内に設けられた複数の伝熱管12は、相互に平行になるように配置されている。
【0042】
缶胴11内に設けられる伝熱管12のうち、鉛直方向最下部に配置される伝熱管12は、その下方に希溶液Swが貯留される部分(空間)が確保される位置に配置されている。このように構成されることで、定常運転時に伝熱管12が吸収液Sに没入することがなく、伝熱管12の表面に濡れ広がった濃溶液Saに蒸発器冷媒蒸気Veが吸収されるようになるため、濃溶液Saと蒸発器冷媒蒸気Veとの接触面積を大きくできると共に、発生した吸収熱が伝熱管12を流れる被加熱媒体Wに速やかに伝わり、吸収能力の回復を早めることができる。他方、缶胴11の最上部に配置される伝熱管12は、濃溶液散布ノズル13が設置できる空間が確保される位置に配置されている。
【0043】
入口液室形成部材14fは、各伝熱管12の一端が接合している缶胴11の面(管板)に取り付けられている。本実施の形態では、入口液室形成部材14fは、両端が開口した筒状の部材の一端に着脱可能な蓋を取り付けて構成されており、開口した面(蓋が取り付けられた面に対向する面)が、缶胴11の管板に取り付けられているすべての伝熱管12の一端を覆うように、缶胴11の管板に取り付けられている。入口液室形成部材14fが缶胴11の管板に取り付けられることにより、入口液室形成部材14fと缶胴11の管板とに囲まれた空間が入口液室14となる。入口液室14は、各伝熱管12の内部と連通している。したがって、入口液室14は、各伝熱管12に被加熱媒体液Wqを供給(分配)することができ、分配部に相当する。また、入口液室形成部材14fが着脱可能な蓋を含んで構成されていることにより、入口液室14を開放したメンテナンスを簡便に行うことができる。
【0044】
出口液室形成部材15fは、本実施の形態では、両端が開口した筒状の部材の一端に着脱可能な蓋を取り付け、他端が開口して構成されている。出口液室形成部材15fは、各伝熱管12の他端が接合している缶胴11の面(管板)に取り付けられている。つまり、出口液室形成部材15fは、一端が入口液室14に連通したすべての伝熱管12の他端を、開口した面(蓋が取り付けられた面に対向する面)で覆うように、缶胴11の管板に取り付けられている。出口液室形成部材15fが缶胴11の管板に取り付けられることにより、出口液室形成部材15fと缶胴11の管板とに囲まれた空間が出口液室15となる。出口液室15は、一端が入口液室14に連通した各伝熱管12の内部と連通している。したがって、出口液室15は、各伝熱管12を介して入口液室14と連絡していることとなり、各伝熱管12から被加熱媒体Wを収集することができ、収集部に相当する。また、出口液室形成部材15fが着脱可能な蓋を含んで構成されていることにより、出口液室15を開放したメンテナンスを簡便に行うことができる。
【0045】
缶胴11内に配設されたすべての伝熱管12は、1パスで構成されている。ここで、「パス」とは、ある伝熱管12内を流れる流体が、他の伝熱管12内の流体と合流も分流もせずに流れる流路の単位である。したがって、1パスは、ある伝熱管12を流れて一旦出口液室15に流入した被加熱媒体Wが、さらに伝熱管12に流入することがない構成であり、流体が流れる伝熱管12の数は問わない。
【0046】
入口液室形成部材14f及び出口液室形成部材15fは、出口液室15の容積が入口液室14の容積よりも大きくなるような大きさに形成されている。出口液室15の容積が入口液室14の容積よりも大きいとは、本実施の形態では、出口液室15における缶胴11の管板と出口液室形成部材15fの蓋との距離を、入口液室14における缶胴11の管板と入口液室形成部材14fの蓋との距離よりも大きくして容積を変えたものであるが、出口液室15の水平断面積を入口液室14の水平断面積よりも大きくすることで容積を変えたものであってもよい。出口液室15の容積は、典型的には、被加熱媒体液Wqが伝熱管12内で加熱され蒸発することによって生ずる体積膨張の分だけ入口液室14よりも大きくすることを基準として、出口液室15内の被加熱媒体Wの流速を加味して決定するとよい。出口液室15における被加熱媒体Wの流速は、出口液室15の容積を、小さくすると速くなり、大きくすると遅くなる。なお、定常運転時の出口液室15内の被加熱媒体Wは、典型的には被加熱媒体液Wqと被加熱媒体蒸気Wvとが混合した混合被加熱媒体Wmであるので、定常運転時以外の状況を特に説明する場合を除き、出口液室15内の被加熱媒体Wが混合被加熱媒体Wmであるものとして説明する。
【0047】
出口液室形成部材15fの上部には、出口液室15内の混合被加熱媒体Wmを流出する被加熱媒体流出口としての流出口15hが形成されている。流出口15hが形成される出口液室形成部材15fの上部は、典型的には出口液室形成部材15fの頂部であるが、少なくとも最上部に配置された伝熱管12よりも流出口15hの最下部が高くなる位置である。流出口15hが出口液室形成部材15fの上部に形成されていることで、出口液室15内を流れる混合被加熱媒体Wmは上昇流となり、伝熱管12の出口液室15への開口端に気体溜まりが生じることを抑制することができる。仮に、伝熱管12の出口液室15への開口端に気体が溜まると、流れの状況によっては、溜まった気体が伝熱管12を介して入口液室14に逆流し、入口液室14の一部が気体に占有されて被加熱媒体液Wqが流入しない伝熱管12が出現する場合があるが、伝熱管12の出口液室15への開口端に気体溜まりが生じることを抑制することができる本実施の形態では、伝熱管12を介して入口液室14に気体が逆流することを防ぐことができる。流出口15h(出口液室15の上部)には、加熱後被加熱媒体管84が接続されている。他方、出口液室形成部材15fの下部(典型的には底部)には、被加熱媒体液Wqを排出することができるブロー排出管17が設けられている。ブロー排出管17には、ブロー排出弁17vが配設されている。被加熱媒体Wは、入口液室14から出口液室15に向けて一方向に流れるので、伝熱管12内で発生する蒸発残留物は出口液室15に溜まりやすい。出口液室15の下部(典型的には底部)にブロー排出管17を設けていることで、1個のブロー排出管17があれば溜まった蒸発残留物を排出することができる。また、出口液室15よりも上方に気液分離器80の貯留部80cが位置するように(出口液室15が貯留部80cよりも下方に位置するように)、気液分離器80が配置されている。本実施の形態では、伝熱管12が水平に配置されていることで入口液室14が出口液室15と同じ高さに配置されるため、入口液室14も貯留部80cより下方に位置することとなる。また、流出口15h及びブロー排出管17共に、出口液室15の着脱可能な蓋には設けられていないので、出口液室15を開放する際に、流出口15hに接続された加熱後被加熱媒体管84及びブロー排出管17を取り外す作業が不要となり、出口液室15の保守点検作業が容易になる。
【0048】
缶胴11内に収容されている濃溶液散布ノズル13は、各伝熱管12に満遍なく濃溶液Saを散布することができるように、鉛直上方から見て複数の伝熱管12を覆う広範囲に広がって配置されている。濃溶液散布ノズル13に接続される濃溶液管35は、缶胴11の一面を貫通している。なお、上述のように、複数の伝熱管12は缶胴11内に水平に配置されているが、水平に配置されているとは、厳密に水平であることを要求するものではなく、被加熱媒体Wが伝熱管12内で液体から気体(蒸気)に変化しても被加熱媒体Wの流動を阻害しない程度に水平であればよい。しかしながら、濃溶液散布ノズル13から散布された濃溶液Saが伝熱管12の外表面に接している量を増加させる観点から、水平に近づくほど好ましい。缶胴11の底部に貯留されている希溶液Swを再生器30(
図1参照)に導く希溶液管36は、缶胴11の底部に接続されている。
【0049】
気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを吸収器10に導く被加熱媒体液管82は、入口液室形成部材14fに接続されている。被加熱媒体液管82は、複数配置された伝熱管12の群の高さ方向の中間より低い位置で入口液室形成部材14fに接続されていることが好ましく、本実施の形態では入口液室形成部材14fの下部に接続されている。換言すれば、本実施の形態では、被加熱媒体液管82から入口液室14内へ被加熱媒体液Wqが流入する流入口14hが入口液室形成部材14fの下部に形成されていることになる。このような構成により、以下のような不都合を回避することができる。その前提として、吸収ヒートポンプ1の起動時は、被加熱媒体Wが加熱され蒸発することによって生ずる体積膨張に起因する被加熱媒体蒸気Wvのキャリオーバー(液滴随伴)やその対処として行う被加熱媒体Wのブロー排液操作を回避するために、缶胴11内の被加熱媒体液Wqの液位を気液分離器80の貯留部80cよりも低い位置に設ける場合がある。このような場合であっても、吸収ヒートポンプ1の起動時の吸収器10における被加熱媒体液Wqの液位を流入口14hよりも高く設定することで、流入口14hが常に被加熱媒体液Wqの液面より下方の液相域に存在することとなり、伝熱管12内で発生した被加熱媒体蒸気Wvが被加熱媒体液管82に逆流することを防ぐことができる。仮に、被加熱媒体蒸気Wvが被加熱媒体液管82に逆流すると、被加熱媒体液Wqの伝熱管12への流入が滞るが、流入口14hが入口液室形成部材14fの下部に形成されていることで、この不都合を回避することができる。なお、起動時の被加熱媒体液Wqの液位を気液分離器80の貯留部80cよりも低い位置に設けた場合であっても、定常運転時の被加熱媒体液Wqの液位は気液分離器80の貯留部80cに設定するとよい。補給水管85は、本実施の形態では、前述のように、分離液管81と被加熱媒体液管82との接続部に接続されている。この構成により、被加熱媒体Wを入口液室14に流入させる管の接続部が1箇所で済むこととなり、構成を簡便にすることができると共に、入口液室14を開放する際の保守点検作業が容易になる。また、流入口14hが入口液室14の着脱可能な蓋には設けられていないので、入口液室14を開放する際に、流入口14hに接続された被加熱媒体液管82を取り外す作業が不要となり、入口液室14の保守点検作業が容易になる。
【0050】
引き続き
図2を主に参照し、適宜
図1を参照して、吸収器10まわりの作用を説明する。濃溶液散布ノズル13から散布される濃溶液Saは、再生器30から溶液ポンプ35pで圧送されてくる。濃溶液Saは、濃溶液散布ノズル13から散布されると、重力によって落下し、伝熱管12に降りかかる。濃溶液Saは、まず、缶胴11内で上方に配置されている伝熱管12に降りかかり、上方に配置された伝熱管12に接触しなかった分及び伝熱管12の表面を伝わって滴下してきた分が、その下方に配置された伝熱管12に降りかかるように移動しながら、各伝熱管12の表面に濡れ広がる。各伝熱管12の表面に濡れ広がった濃溶液Saは、蒸発器20から供給された蒸発器冷媒蒸気Veを吸収し、その際に発生した吸収熱で内部を流れる被加熱媒体Wを加熱する。蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した濃溶液Saは、希溶液Swとなって缶胴11の下部に一旦貯留された後、希溶液管36を介して再生器30に導かれる。
【0051】
その一方で、吸収器10内の入口液室14には、分離液管81及び被加熱媒体液管82を介して気液分離器80からの被加熱媒体液Wqが流入する。このとき、入口液室14が気液分離器80の貯留部80cよりも下方に配置されているので、定常運転時の液位を気液分離器80の貯留部80cに設定することにより、入口液室14が被加熱媒体液Wqで満たされる。また、入口液室14に流入する被加熱媒体液Wqには、入口液室14に流入する前に、適宜、補給水ポンプ86の稼働により補給水Wsが混合される。なお、補給水管85及び気液分離器80から入口液室14に流入する被加熱媒体液Wqの合計質量流量は、典型的には、吸収器10で生成される被加熱媒体蒸気Wvの質量流量の2〜10倍程度である。入口液室14に流入した被加熱媒体液Wqは伝熱管12を流れて出口液室15に流入する。このとき、入口液室14が被加熱媒体液Wqで満たされているので、各伝熱管12に被加熱媒体液Wqが流入することとなる。換言すれば、被加熱媒体液Wqが流入せずに気体が流入してしまう伝熱管12が生じることを回避することができる。
【0052】
被加熱媒体液Wqは、伝熱管12内を流れるとき、伝熱管12の外表面に濡れ広がった濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した際に発生した吸収熱で加熱され、出口液室15に至るまでに一部又は全部が蒸発する。本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1では、上述のように、すべての伝熱管12に被加熱媒体液Wqが流入する。仮に、被加熱媒体液Wqが流入せずに気体のみが流入する伝熱管12が存在する場合、当該伝熱管12では吸収熱が被加熱媒体液Wqに伝わる効率が悪化することとなってしまう。本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1では、すべての伝熱管12に被加熱媒体液Wqが流入することで、吸収熱が効率よく被加熱媒体液Wqに伝わり、効率的に被加熱媒体蒸気Wvを生成することができる。伝熱管12を流れる際に加熱された被加熱媒体液Wqは、混合被加熱媒体Wmとなって出口液室15に到達する。出口液室15内の混合被加熱媒体Wmは、加熱後被加熱媒体管84を流れて吸収器10から流出する。このように、1パスで構成された伝熱管12で生成された混合被加熱媒体Wmは、その後は伝熱管12を通過せずに吸収器10から流出する。
【0053】
吸収器10から流出した混合被加熱媒体Wmは、加熱後被加熱媒体管84を介して気液分離器80に流入する。気液分離器80に流入した混合被加熱媒体Wmは、バッフル板80aに衝突して気液分離され、被加熱媒体液Wqと、被加熱媒体蒸気Wvとに分かれる。分離された被加熱媒体蒸気Wvは、吸収ヒートポンプ1外の蒸気利用場所に向かって被加熱媒体蒸気管89を流れる。他方、気液分離器80で分離された被加熱媒体液Wqは、気液分離器80下部の貯留部80cに貯留される。貯留部80cに貯留されている被加熱媒体液Wqは、分離液管81に流出した後に、被加熱媒体液管82を流れる。被加熱媒体液管82を流れる被加熱媒体液Wqは、補給水管85からの補給水Wsと合流して入口液室14に流入し、以降、上述の作用を繰り返す。
【0054】
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収ヒートポンプ1によれば、各伝熱管12が1パスで構成されていると共に、定常運転時の入口液室14が被加熱媒体液Wqで満たされるので、被加熱媒体液Wqが流入せずに気体が流入してしまう伝熱管12が発生することを防ぐことができ、被加熱媒体液Wqへの吸収熱の伝達効率の低下を抑制することができる。また、各伝熱管12が水平に配置されているので、蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する濃溶液Saが濡れ広がる面積を最大化することができ、多くの吸収熱を発生させることができる。また、各伝熱管12を1パスで構成していることから、被加熱媒体Wが各伝熱管12を流動する際の流路断面積を最大にして、流動抵抗を最小にすることができる。このため、気液分離器80と各伝熱管12との間で被加熱媒体Wを循環させるための循環駆動力は小さくてよく、循環駆動力を得るためのポンプを不要にして、被加熱媒体Wの循環流路における比重量の差による気泡ポンプ作用で充分な循環駆動力を得ることができる。また、気泡ポンプ作用による循環駆動力は、吸収器10の伝熱管12に対する気液分離器80の高さに比例して増大するので、本実施の形態では、必要な循環駆動力が小さく気液分離器80の高さを抑制することができ、高さを抑制した吸収ヒートポンプ1にすることができる。
【0055】
次に
図3を参照して、第1の変形例に係る吸収器10Aを説明する。吸収器10Aは、吸収器10(
図2参照)と比較して、以下の点で異なっている。吸収器10Aは、入口液室14を、上部入口液室14Aと下部入口液室14Bとに分割する区画板14dが、入口液室14内に設けられている。つまり、区画板14dは、入口液室14の内部を上下に分割する部材である。そして、被加熱媒体液管82は、上部入口液室14Aに接続されている。補給水管85は、分離液管81と被加熱媒体液管82との接続部ではなく、下部入口液室14Bに接続されており、第3の流路に相当する。区画板14dが設けられる位置は、入口液室14内の容積を、被加熱媒体液管82から入口液室14に流入する被加熱媒体液Wqの流量と、補給水管85から入口液室14に流入する補給水Wsの流量との比で分割する位置とするとよい。このようにして分割された下部入口液室14Bは、最下列の伝熱管12が水平方向の1列分全部が含まれなくとも、最下列の伝熱管12の一部が含まれるだけでもよい。吸収器10Aの、上記以外の構成は、吸収器10(
図2参照)と同様である。
【0056】
上述のように構成された吸収器10Aでは、比較的温度が高い気液分離器80内の被加熱媒体液Wqが分離液管81及び被加熱媒体液管82を介して上部入口液室14Aに流入し、比較的温度が低い補給水Wsが補給水管85を介して下部入口液室14Bに流入する。上部入口液室14Aに流入した被加熱媒体液Wqは、区画板14dよりも上方に配置された伝熱管12に流入し、下部入口液室14Bに流入した補給水Ws(被加熱媒体液Wq)は、区画板14dよりも下方に配置された伝熱管12に流入する。他方、伝熱管12の外側を滴下する吸収液Sは、上方から下方に進むにつれて、順次吸収熱が被加熱媒体液Wqに奪われるため、また、吸収液Sの濃度が低下するため、温度が低下していく。本変形例に係る吸収器10Aでは、下方に配置された伝熱管12において、比較的温度が低い被加熱媒体液Wqが内部を流れるので、温度が低下した吸収液Sから被加熱媒体液Wqへの熱伝達が行われることとなり、吸収熱を効率よく被加熱媒体液Wqに伝達することができる。
【0057】
次に
図4を参照して、第2の変形例に係る吸収器10Bを説明する。吸収器10Bは、吸収器10(
図2参照)と比較して、以下の点で異なっている。吸収器10Bは、出口液室15を区画する対向壁15wbが斜めに設けられている。対向壁15wbは、取付壁15waに対向する壁であり、本実施の形態では着脱可能な蓋として構成されている。取付壁15waは、各伝熱管12が取り付けられた管板として構成されている。出口液室15を形成する取付壁15waと対向壁15wbとの間の筒状の部材は、鉛直断面が矩形(長方形又は正方形)に形成されている。取付壁15waは、垂直に(法線が水平になるように)設けられている。対向壁15wbは、取付壁15waとの間における出口液室15の水平断面積が、上部から下部に向けて漸減するような傾きで設置されている。吸収器10Bの、上記以外の構成は、吸収器10(
図2参照)と同様である。
【0058】
上述のように構成された吸収器10Bでは、出口液室15の下部ほど水平断面積が小さくなり、吸収器10Bの保有液量(保有する被加熱媒体Wの量)を少なくすることができる。出口液室15では、混合被加熱媒体Wmが、下部から上部の流出口15hに向けて流れる上昇流であり、下部から上部に至るほど各伝熱管12から流出する混合被加熱媒体Wmが混合して混合被加熱媒体Wmの流量が増大するので、混合被加熱媒体Wmの流量が少ない下部側ほど水平断面積を小さくすることができる。吸収器10Bの保有液量を少なくすることができると、被加熱媒体Wの加熱量を少なくすることができ、加熱効率を向上させることができる。
【0059】
次に
図5を参照して、第3の変形例に係る吸収器10Cを説明する。吸収器10Cは、吸収器10(
図2参照)と比較して、以下の点で異なっている。吸収器10Cは、補給水管85が、分離液管81と被加熱媒体液管82との接続部に接続されておらず、入口液室14内に配置された補給水内管14pに接続されている。補給水管85は、入口液室形成部材14fの蓋部でないところを貫通している。補給水内管14pは、被加熱媒体液吹き出し部材に相当する。補給水内管14pは、入口液室14内の下部に、水平に延びるように配置されている。補給水内管14pは、補給水Wsを吹き出す吹き出し孔14phが、長手方向に沿って、適宜の間隔で複数形成されている。補給水内管14pは、吹き出し孔14phが伝熱管12の開口端に対向する向きで、入口液室14内に配置されている。なお、本変形例では、補給水内管14pは水平に延びるように形成されているが、入口液室14が正方形に近いのであれば補給水内管14pも正方形に近いリング状にするとよい。吸収器10Cの、上記以外の構成は、吸収器10(
図2参照)と同様である。
【0060】
上述のように構成された吸収器10Cでは、比較的温度が低い補給水Wsが、入口液室14の下部において、補給水内管14pの吹き出し孔14phから、下部に配置された伝熱管12に向けて吹き出され、その多くが当該下部に配置された伝熱管12内に流入する。気液分離器80の貯留部80cにある比較的温度が高い被加熱媒体液Wqは、被加熱媒体液管82を介して入口液室14に流入し、概ね補給水内管14pよりも上方の入口液室14に行き渡り、補給水Wsが専ら流入した伝熱管12以外の伝熱管12内に流入する。本変形例では、区画板14d(
図3参照)を設けなくても、缶胴11内の下部に配置された伝熱管12に比較的温度が低い補給水Wsを流入させ、上部に配置された伝熱管12に気液分離器80からの比較的温度が高い被加熱媒体液Wqを流入させることができる。したがって、下部に配置された伝熱管12において、比較的温度が低い被加熱媒体液Wqが内部を流れるので、上部に配置された伝熱管12から滴下してきた温度が低下した吸収液Sからも被加熱媒体液Wqへの熱伝達が行われることとなり、吸収熱を効率よく被加熱媒体液Wqに伝達することができる。
【0061】
なお、補給水内管14pに代えて、缶胴11内の下部に配置された伝熱管12に対向する入口液室形成部材14fの壁面に吹き出し孔14phに相当する孔を形成すると共に、当該孔が形成された壁面の外側に補給水Wsのヘッダーを設けた構成を、被加熱媒体液吹き出し部材としてもよい。つまり、被加熱媒体液吹き出し部材は、液体(本変形例では補給水Ws)を下部に配置された伝熱管12に概ね均等に流入させることができる構成であればよい。
【0062】
以上の説明では、伝熱管12が水平に配置されていることで入口液室14が出口液室15と同じ高さに配置されるため、出口液室15よりも上方に気液分離器80の貯留部80cが位置するように気液分離器80が配置されたときに、入口液室14も貯留部80cより下方に位置することとなるとしたが、入口液室14が出口液室15と同じ高さに配置されていない場合であっても(入口液室14が出口液室15よりも低い場合であっても高い場合であっても)、入口液室14よりも上方に気液分離器80の貯留部80cが位置するように気液分離器80が配置されているとよい。ここで、入口液室14、出口液室15、貯留部80cのそれぞれの高さは、入口液室14及び出口液室15についてはその最上部を基準とし、貯留部80cについてはその最下部を基準とする。貯留部80cの最下部は気液分離器80の最下部でもあり、常用液位(定常運転時の液位)を貯留部80c内に所定の液位で制御すると、常用液面高さは、少なくとも入口液室14より上方になり(出口液室15より上方になることを妨げるものではない)、入口液室14が出口液室15よりも高い場合は入口液室14及び出口液室15より上方になる。なお、運転中の負荷変動等により液位が貯留部80cより下方に低下する場合や起動時に貯留部80cより低い液位に制御する場合があるが、いずれも常用液位とは言わない。入口液室14が出口液室15よりも低い場合として、以下の例が挙げられる。出口液室15に接続される加熱後被加熱媒体管84は、発生した被加熱媒体蒸気Wvを含む混合被加熱媒体Wmを流通させるために大口径となっている。大口径の加熱後被加熱媒体管84を取り付けるための取り付け部を出口液室15に用意するために、出口液室15を入口液室14よりも上方に延長することで、入口液室14が出口液室15よりも低くなる場合がある。また、吸収器10(以下、この段落において、変形例の吸収器10A、10B、10Cを含む。)とその周辺の機器の配置の都合上、入口液室14が出口液室15よりも低くなる場合がある。他方、入口液室14が出口液室15よりも高い場合として、吸収器10とその周辺の機器の配置の都合上、入口液室14が出口液室15よりも高くなる場合がある。このように、気液分離器80の貯留部80cが入口液室14よりも上方になるように気液分離器80が配置されている場合に、あるいは気液分離器80の貯留部80cが出口液室15よりも上方になるように気液分離器80が配置されている場合であっても、入口液室14の高さと出口液室15の高さとが異なることとしてもよい。入口液室14が出口液室15よりも低い場合であっても高い場合であっても、入口液室14よりも上方に気液分離器80の貯留部80cが位置するように気液分離器80を配置すると、入口液室14は被加熱媒体液Wqで満たされて各伝熱管12に被加熱媒体液Wqが流入することとなり、被加熱媒体液Wqが流入せずに被加熱媒体Wの蒸気が流入してしまう伝熱管12が生じることを防ぐことができる。
【0063】
以上の説明では、各伝熱管12が水平に配置されているとしたが、傾いていてもよい。この場合、各伝熱管12は、濃溶液Saを伝熱管12の外表面に確実に接触させる観点から水平方向成分を有する(換言すれば軸線が鉛直ではない)ように配置することが好ましく、濃溶液Saが伝熱管12の外表面にできるだけ広がった状態で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収させる観点から水平方向成分が鉛直方向成分よりも多いほど好ましい。
【0064】
図6に、各伝熱管12を傾けて配置した例を示す。
図6(A)のように、管板を垂直に配置した状態で伝熱管12が傾斜配置されるようにしてもよく、
図6(B)に示すように管板の面と伝熱管12の軸線とを直角に保ったまま管板ごと各伝熱管12を傾斜させてもよい。いずれの場合も、伝熱管12で発生した被加熱媒体蒸気Vwが出口液室15に流入するように、先上りの勾配で配置するとよい。伝熱管12の上り勾配は、伝熱管12の外表面に濡れ広がる吸収液Sの範囲を考慮して、所望の吸収熱を得ることができる範囲内で決定するとよい。伝熱管12に上り勾配がついていると、伝熱管12内で生じた被加熱媒体蒸気Wvが出口液室15に抜けやすくなる。他方、伝熱管12を水平に配置した場合は、外表面に濡れ広がる吸収液Sの範囲を広くすることができる。あるいは、
図6(C)に示すように、各伝熱管12をU字状に形成して曲部以外の大部分が水平になるように配置してもよい。この場合も、下流側が上方に配置されるようにするとよい。この例の伝熱管12は、水平管部を2行路備え、入口液室14の反対側端部をU字状の反転で接続して、一続きにしたものである。この構成のほか、伝熱管12は、水平管部を3行路備えて、3行路の水平管部を流れの向きに沿って、入口液室14の反対側端部、次に入口液室14側端部と交互にU字状の反転で接続して一続きにしたS字状としてもよい。又は、伝熱管12は、水平管部を4行路備えてその端部をU字状の反転で交互に次々と接続して一続きにしたM字状、あるいは、さらに多くの水平管部の行路を備えてその端部をU字状の反転で交互に次々と接続して一続きにした蛇行状としてもよい。いずれの場合も、水平管部の端部をU字状の反転部で次々と接続して、ある伝熱管12内を流れる流体が他の伝熱管12内の流体と合流も分流もせず、他の伝熱管12と交わることがない一続きの伝熱管12複数個から構成され、入口液室14及び出口液室15は、これらの伝熱管12の入口及び出口に各々接続される。なお、
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)に示す例では、いずれも、入口液室14が出口液室15よりも低くなっており、これらの場合でも、入口液室14よりも上方に気液分離器80の貯留部80cが位置するように気液分離器80を配置することで、入口液室14は被加熱媒体液Wqで満たされて各伝熱管12に被加熱媒体液Wqが流入することとなり、被加熱媒体液Wqが流入せずに被加熱媒体Wの蒸気が流入してしまう伝熱管12が生じることを防ぐことができる。
【0065】
以上の説明では、典型的には補給水管85が分離液管81と被加熱媒体液管82との接続部に接続されて補給水Wsが被加熱媒体液導入流路に供給されることで補給水Wsが間接的に気液分離器80に供給されることとしたが、補給水管85が気液分離器80に接続されて補給水Wsが直接気液分離器80に供給されることとしてもよく、補給水管85が吸収器10の伝熱管12あるいは加熱後被加熱媒体管84等の被加熱媒体Wが存在する部分に接続されて補給水Wsが間接的に気液分離器80に供給されることとしてもよい。また、気液分離器80と各伝熱管12との間で被加熱媒体Wを循環させるためのポンプは不要であるとしたが、被加熱媒体Wを循環させるためのポンプを、気液分離器80内の被加熱媒体液Wqを入口液室14に導く配管に設けることとしてもよい。
【0066】
以上の説明では、蒸発器20が満液式であるとしたが、散布式であってもよい。蒸発器を散布式とする場合は、蒸発器缶胴の上部に冷媒液Vfを散布する冷媒液散布ノズルを設け、満液式の場合に蒸発器缶胴21の下部に接続することとしていた冷媒液管45の端部を、冷媒液散布ノズルに接続すればよい。また、蒸発器缶胴の下部の冷媒液Vfを冷媒液散布ノズルに供給する配管及びポンプを設けてもよい。
【0067】
以上の説明では、吸収ヒートポンプ1が単段であるとして説明したが、多段でもよい。
図7に、二段昇温型の吸収ヒートポンプ1Aの構成を例示する。吸収ヒートポンプ1Aは、
図1に示されている吸収ヒートポンプ1における吸収器10及び蒸発器20が、高温側の高温吸収器10H及び高温蒸発器20Hと、低温側の低温吸収器10L及び低温蒸発器20Lとに分かれている。高温吸収器10Hは低温吸収器10Lよりも内圧が高く、高温蒸発器20Hは低温蒸発器20Lよりも内圧が高い。高温吸収器10Hと高温蒸発器20Hとは、高温蒸発器20Hの冷媒Vの蒸気を高温吸収器10Hに移動させることができるように上部で連通している。低温吸収器10Lと低温蒸発器20Lとは、低温蒸発器20Lの冷媒Vの蒸気を低温吸収器10Lに移動させることができるように上部で連通している。被加熱媒体液Wqは、高温吸収器10Hで加熱される。熱源温水hは、低温蒸発器20Lに導入される。低温吸収器10Lは低温蒸発器20Lから移動してきた冷媒Vの蒸気を吸収液Sが吸収する際の吸収熱で高温蒸発器20H内の冷媒液Vfを加熱して高温蒸発器20H内に冷媒Vの蒸気を発生させ、発生した高温蒸発器20H内の冷媒Vの蒸気は高温吸収器10Hに移動して高温吸収器10H内の吸収液Sに吸収される際の吸収熱で被加熱媒体液Wqを加熱するように構成されている。吸収ヒートポンプ1Aでは、被加熱媒体Wのほか、低温吸収器10L内の伝熱管内を流れる冷媒Vも、被加熱媒体に相当する。低温吸収器10Lは、伝熱管内を流れる被加熱媒体が冷媒Vであるので、被加熱媒体(冷媒V)のブロー排出管の設置やブロー排液操作を行わなくてよい。