特開2017-16759(P2017-16759A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-16759(P2017-16759A)
(43)【公開日】2017年1月19日
(54)【発明の名称】シーズヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/18 20060101AFI20161222BHJP
   H05B 3/48 20060101ALI20161222BHJP
【FI】
   H05B3/18
   H05B3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-129505(P2015-129505)
(22)【出願日】2015年6月29日
(71)【出願人】
【識別番号】515177664
【氏名又は名称】日本シーズ線販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 彰一
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP03
3K092PP05
3K092PP20
3K092QA03
3K092QB02
3K092QC02
3K092RA01
3K092RB04
3K092RB19
3K092RC07
3K092RD02
3K092RD04
3K092VV09
(57)【要約】
【課題】高腐蝕性の気体に晒されても、シーズパイプ並びにヒータ端子の腐蝕を防止でき、しかもメンテナンス作業にも最適なシーズヒータを提供する。
【解決手段】
ニクロム線8が配置される第1シーズパイプ3をNi−Cr−Fe系ニッケル合金で形成し、この第1シーズパイプ3の内部に熱伝導性を有する絶縁体でなるマグネシア9の焼結粉末を充填し、さらに前記ニクロム線8の両端にニッケルでなるヒータ端子5を接続し、このヒータ端子5を開口可能な封止構造でなる口金絶縁部3aを介して第1シーズパイプ3に取付けることを特徴としている。この構成によれば、第1シーズパイプ3やヒータ端子5が高腐蝕性の気体に晒されても、第1シ−ズパイプ3が耐食性の良好なNi−Cr−Fe系ニッケル合金で、またヒータ端子5が耐食性の良好なニッケルで形成されているため、第1シーズパイプ3やヒータ端子5が腐蝕することがない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体が配置されるシーズパイプをNi−Cr−Fe系ニッケル合金で形成し、このシーズパイプの内部に熱伝導性を有する絶縁体の焼結粉末を充填し、さらに前記発熱体の両端にニッケルでなるヒータ端子を接続し、このヒータ端子を開口可能な封止構造でなる口金絶縁部を介してシーズパイプに取付けることを特徴とするシーズヒータ。
【請求項2】
シーズパイプはヒータ端子を露出させてアルミ板に鋳込まれていることを特徴とする請求項1に記載のシーズヒータ。
【請求項3】
Ni−Cr−Fe系ニッケル合金のFe成分は10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のシーズヒータ。
【請求項4】
Ni−Cr−Fe系ニッケル合金のFe成分はおおよそ40%であることを特徴とする請求項1または2に記載のシーズヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種気体、特に高耐食性の気体が充満される雰囲気あるいは当該雰囲気内の部品を加熱する際に最適なシーズヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種ヒータの原点といわれるシーズヒータは一般家庭用の暖房器具、電気調理器、電気温水器はもとより、樹脂成形金型、半導体ウエハ等を加熱する工業用加熱器に至るまで、金属部品の加熱、液体・気体の加熱等々と多方面で利用されている。図8に示すように、このシーズヒータ51にあっては、特に機械的振動や衝撃に強い発熱体とするため、絶縁体の一例であるマグネシア59の焼結粉末に覆われたニクロム線58をシーズパイプ53内に配置し、このニクロム線58の両端にヒータ端子55を接続する構造が一般的となっている。また、このシーズヒータ51にあってはニクロム線58が収納されるシーズパイプ53は折り曲げ加工の容易な鋼管で形成されている。これにより、シーズパイプ53は被加熱液体の貯留槽(図示せず)や被加熱金属部品(図示せず)の形状に応じた広い面で被加熱物を均一に加熱することが可能となっている。
【0003】
このシーズヒータ51にあっては、前記ヒータ端子55は耐熱・絶縁性を備えるラバーシリコン60の中心穴60aに圧入され、このラバーシリコン60がシーズパイプ53に圧入されて口金絶縁部53aが構成されている。そのため、このシーズヒータ51が液体中や気体内で使用される時には、口金絶縁部53aの封止を完全に行う必要が生じている。ところが、このシーズヒータ51にあっては、ニクロム線58とシーズパイプ53との間を絶縁するマグネシア59の絶縁抵抗が内部の湿気により低下することがあり、これを絶縁復帰させるため、マグネシア59の乾燥を行うようなメンテナンス作業が必要となっている。その際、口金絶縁部53aを開口する必要があることから、口金絶縁部53aを比較的簡単に開口可能な封止構造としておかねばならず、口金絶縁部53aを覆う耐熱パッキン66をナット62により固着する程度の簡単な封止構造が採用されている。
【0004】
シーズヒータの構成は一般的であるため、特許文献の記載を省略している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の封止構造を備えるシーズヒータ51は、高温下高腐蝕性気体が使用される半導体の製造現場においても多用されるが、これまではこのシーズヒータ51は高腐蝕性の気体とは隔離されて当該気体の加熱、半導体ウエハ(図示せず)の加熱に使用されていた。近年、製造工程の簡略化を進めるに際して、半導体ウエハを高温に加熱する熱源により腐蝕性気体も同時に加熱することが要求されるようになっている。そのため、前述のシーズヒータ51ではアルミ鋳込みされたシーズパイプ53が使用され、その外周面を腐蝕性気体に晒さないようにした腐蝕防止策が施されている。これにより、シーズヒータ51は腐蝕性気体内で使用可能となっている。
【0006】
しかしながら、シーズヒータ51の口金絶縁部53aは前述の簡単な封止構造となっているため、高腐蝕性気体が口金絶縁部53aの間隙から侵入するのを避けることができない。そのため、シーズヒータ51の使用が長期間に及ぶと、鋼製のシーズパイプ53がその内面側から腐蝕してしまい、シ−ズヒータ53の寿命が短くなってしまうというような問題が生じている。
【0007】
また、この種のシーズヒータ51ではヒータ端子55の腐蝕を考慮して一定の耐食性を備えたステンレス製のヒータ端子55が使用されているが、シーズヒータ51が前述の高腐蝕性気体内で使用される時にはこのヒータ端子55も腐蝕し、このヒータ端子55の腐蝕からもシーズヒータ51の寿命が短くなるという問題が生じている。
【0008】
本発明の目的は、上記問題を解決することであり、高腐蝕性の気体に晒されても、シーズパイプ並びにヒータ端子が腐蝕することがないシーズヒータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、発熱体が配置されるシーズパイプをNi−Cr−Fe系ニッケル合金で形成し、このシーズパイプの内部に熱伝導性を有する絶縁体の焼結粉末を充填し、さらに前記発熱体の両端にニッケルでなるヒータ端子を接続し、このヒータ端子を開口可能な封止構造でなる口金絶縁部を介してシーズパイプに取付けることを特徴としている。この構成によれば、発熱体のヒータ端子間に所定の電圧が印加されると、発熱体がシーズパイプから絶縁されながら発熱する。そのため、発熱体から所定の熱エネルギーが出力され、発熱体の周りに充填される絶縁体に、さらにはシ−ズパイプに熱伝導されるので、シーズパイプの温度が上昇する。このシーズパイプの温度上昇にともなって、シーズパイプに熱伝導された熱エネルギーが放熱または熱伝導により周辺の気体、金属部品等の被加熱物に熱伝導され、これら被加熱物を加熱することが可能となっている。
【0010】
その際に、被加熱物が腐蝕性の気体であったり、当該気体内で被加熱物の金属部品を加熱したりするような場合には、シーズパイプの外周面が周囲の腐蝕性の気体に晒される。また、シーズパイプとヒータ端子との間は開口可能な封止構造となっているに過ぎないため、腐蝕性の高い気体がシーズパイプと口金絶縁部との間隙やヒータ端子と口金絶縁部との間隙から侵入する。この時、シ−ズパイプが耐食性の良好なNi−Cr−Fe系ニッケル合金で形成されていると、シーズパイプの外周面はもとより内面に至っても高腐蝕性気体により腐蝕するようなことはない。また、ヒータ端子もシーズパイプの内外で腐蝕性の気体に晒されるが、ヒータ端子は耐食性の良好なニッケルでなっているため、高腐蝕性気体により腐蝕するようなことはない。これにより、シーズヒータの寿命を伸張させることができる。
【0011】
また、本発明は被加熱物の液体、気体、金属部品等を広い面で均等に加熱できるようにするためには、シーズパイプをヒータ端子が露出するようにアルミ板に鋳込んでなる構成であることが望ましい。
【0012】
さらに、本発明はシーズパイプを被加熱物またはその貯留槽の形状に沿って折り曲げて被加熱物を均等に加熱できるようにするためには、Ni−Cr−Fe系ニッケル合金のFe成分を10%以下とすることが望ましい。
【0013】
そのほかに、本発明はシーズパイプの耐熱・耐食性を高めるとともに高圧下の応力割れを防ぐため、Ni−Cr−Fe系ニッケル合金のFe成分をおおよそ40%としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した本発明によれば、高腐蝕性の気体に晒されることがあってもシーズパイプ並びにヒータ端子の腐蝕を防止でき、しかもメンテナンス作業にも最適なシーズヒータを提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るアルミ鋳込み型シーズヒータのヒータ端子の要部拡大断面図。
図2】本発明に係るアルミ鋳込み型シーズヒータの下面図。
図3図2のA−A線断面図。
図4】本発明に係るアルミ鋳込み型シーズヒータのヒータ端子の取付構造を説明する分解斜視図。
図5】本発明に係るアルミ鋳込み型シーズヒータの第1の製造工程図。
図6】本発明に係るアルミ鋳込み型シーズヒータの第2の製造工程図。
図7】本発明に係るアルミ鋳込み型シーズヒータの第3の製造工程図。
図8】従来のシーズヒータの一部を切欠いた要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るシーズヒータの一例のアルミ鋳込み型シーズヒータ(以下、シーズヒータという)を図面に基づき説明する。
【0017】
図1ないし図4に示すように、このシーズヒータ1は被加熱物の一例をなす極薄の半導体ウエハ(以下、ウエハという)2の円板形状に対応してその外周を覆うほぼ円形に折り曲げられた第1シーズパイプ3と、この第1シーズパイプ3の内側のほぼ全域に至るように馬蹄形状に折り曲げられた第2シーズパイプ4とを有している。また、前記シーズヒータ1は前記第1・第2シーズパイプ3,4をそのヒータ端子5が露出するように鋳込む円板状のアルミ板6を有し、このアルミ板6には前記ウエハ2が載置されるセラミック製の載置プレート7が密着するように取付けられている。これにより、この載置プレート7はアルミ板6との接触面、すなわちウエハ2の形状に対応する範囲で均等に加熱可能となっている。
【0018】
前記アルミ板6には、第1・第2シーズパイプ3,4を避ける3個所の等配位置に段付き穴6a,6a,6aが、またこれら段付き穴6a,6a,6aの中間の位置で第1・第2シーズパイプ3,4を避ける3か所の等配位置に位置決めピン用穴6b,6b,6bが穿設されている。前記段付き穴6a,6a,6aには、取付けボルト(図示せず)が挿入され、加熱器本体(図示せず)に螺入されて、アルミ板6を加熱器本体に取付け可能に構成されている。また、前記位置決めピン用穴6b,6b,6bには、位置決めピン(図示せず)が植設され、この位置決めピンにより載置プレート7を位置決めしながら、載置プレート7とアルミ板6とが密接して固定可能に構成されている。
【0019】
前記第1・第2シーズパイプ3,4は、その折り曲げ形状以外同一の構造を有している(以下、これらの構造を第1シーズパイプ3について説明する)。この第1シーズパイプ3は、Ni−Cr−Fe系ニッケル合金(特に、Fe成分が10%以下であるものは、商品名をインコネルとして普及しているので、以下インコネルという)で形成されており、その材質から第1シーズパイプ3をウエハ2の外周形状に沿って折り曲げ可能で、第2シーズパイプ4とともにウエハ2の形状に応じた広い面に対応可能となっている。また、前記第1シ−ズパイプ3の両端には拡開穴3b,3bが形成されており、この拡開穴3b,3bは後記ラバーシリコン10,10が収納可能に構成されている。なお、前記Ni−Cr−Fe系ニッケル合金は、インコネルに限定されるものでなく、折り曲げを考慮しない場合には、Fe成分がおおよそ40%である商品名をインコロイとして普及しているものであってもよい。この場合、第1シーズパイプ3の耐熱・耐食性が高まり、高圧下の応力割れも防ぐことが可能となる。
【0020】
前記第1シーズパイプ3には、発熱体の一例であるニクロム線8が配置されており、またこのニクロム線8を覆うように絶縁体の一例であるマグネシア9の焼結粉末が高密度に充填されている。このマグネシア9は、高温下にあっても熱伝導性の良好な絶縁体で、耐熱温度も2800℃と高くなっている。
【0021】
前記ニクロム線8の端部は、それぞれヒータ端子5の端面に穿設された収納穴(図示せず)に挿入され、その位置でヒータ端子5に溶着されている。このヒータ端子5はニッケルでなっており、ステンレス鋼の耐食性よりも高い耐食性を示し、高腐蝕性の気体に晒されても腐蝕することはない。また、前記ヒータ端子5はその先端側に配置された耐熱性を備えるラバーシリコン10の中心穴10aに圧入され、このラバーシリコン10が第1シーズパイプ3の拡開穴3bに圧入されて口金絶縁部3aが構成されている。さらに、前記ヒータ端子5はラバーシリコン10に隣接して配置される耐熱.高絶縁性のセラミック碍子11の中心穴11aに挿通されており、マグネシア9に熱伝導される熱エネルギーがヒータ端子5側に伝達されないように構成されている。
【0022】
前記ヒータ端子5のニクロム線溶着側と反対側には、ねじ部5aが設けられており、このねじ部5aにナット12aが螺合して鋼製の平ワッシャ13aを介して前記セラミック碍子11を第1シーズパイプ3の縁部に押圧するように構成されている、この構成により、口金絶縁部3aには比較的簡単に開口可能な封止構造が得られている。また、前記ヒータ端子5には前述のナット12aとの間に2枚の平ワッシャ13b,13cを挟んで別のナット12bが螺合しており、これら平ワッシャ13b,13c間に電圧印加用のリード線(図示せず)が接続可能に構成されている。
【0023】
前記第1シーズパイプ3の詳細な構造を説明するため、その製造工程を説明する。この第1シーズパイプ3は、図5(a)に示すように所定の折り曲げ形状に対応する長さに切断されており、その両端部分にはラバーシリコン10(図1参照)を収納する拡開穴3bが形成される。続いて、図5(b)および(c)に示すように第1シーズパイプ3の長さとほぼ同等のコイル長さを持つニクロム線8の両端部に、係合部5bを先端に持つヒータ端子5が溶着され、このニクロム線8が第1シーズパイプ3内に挿入される。この時、第1シーズパイプ3を直立させ、第1シーズパイプ3の下端側の拡開穴3bにヒータ端子5が圧入された仮止めラバーシリコン15(図6(b)参照)を圧入しておいてもよい。この状態で、両ヒータ端子5,5はそれぞれの係合部5bを利用してわずかに引き離す方向に引っ張られ、第1シーズパイプ3の端部の開口からマグネシア9が充填される。その後、図6(a)に示すように第1シーズパイプ3内にマグネシア9がほぼ満杯になるまで充填されると、第1シーズパイプ3の端部の拡開穴3b内からマグネシア9が取り除かれ、さらにその開口からシリコンオイルが塗布され、マグネシア9の端部にシリコン薄膜14(図1参照)が形成される。この状態で、第1シーズパイプ3を乾燥させ、マグネシア9の内部の湿気が取り除かれて、湿気による絶縁抵抗の低下が防止される。この時、シリコン薄膜14は空気を通過させることができるので、マグネシア9の乾燥に支障はない。その後、図6(b)に示すよう仮止めラバ−シリコン15の中心穴15aにヒータ端子5を挿通させながら、この仮止めラバーシリコン15が第1シーズパイプ3の拡開穴3bに圧入される。さらに、この仮止めラバーシリコン15は小径の耐熱パッキン16を介してナット12aにより仮止めされる。
【0024】
前記第1シーズパイプ3がスウェージング加工機(図示せず)に送られ、その外形が縮径され、第1シーズパイプ3内のマグネシア9の充填密度が高められる。この第1シーズパイプ3が図6(c)に示すように前記ウエハ2の外周を覆うほぼ円形状に折り曲げられ、さらにそのヒータ端子5が折り曲げ部分が形成する面と交差する方向に折り曲げられる(図2および図3参照)。同様に、第2シーズパイプ4が図6(d)に示すように第1シーズパイプ3の内側のほぼ全域を覆う馬蹄形状に折り曲げられ、さらにそのヒータ端子5に近い部分が折り曲げ部分により形成される面と交差する方向に折り曲げられる(図2および図3参照)。
【0025】
前記第1・第2シーズパイプ3,4は、図7(a)および(b)に示すようにそれぞれの折り曲げ部分を同一面上に位置させながらアルミ鋳込み工程に送られ、ウエハ2の形状に対応するアルミ板6に鋳込まれる。この時、アルミ板6には、第1・第2シーズパイプ3,4を避ける3個所の等配位置に段付き穴6a,6a,6aが、またこれら段付き穴6a,6a,6aの中間の位置にあって第1・第2シーズパイプ3,4を避ける3か所の等配位置に位置決めピン用穴6b,6b,6bが設けられてもよく、またアルミ鋳込み後、アルミ板6に当該穴が穿設されてもよい。前記第1・第2シーズパイプ3,4のアルミ鋳込み完了後に、第1・第2シーズパイプ3,4のヒータ端子5に取付けられた耐熱パッキン16、平ワッシャ13a、ナット12aが取り外されて、各シーズパイプ3,4の拡開穴3b、3b内の仮止めラバーシリコン15(図6(b)参照)が取り除かれる。
【0026】
その後、再度第1・第2シーズパイプ3,4の開口からシリコンオイルが塗布される。この塗付されたシリコンオイルが乾燥すると、図7(c)に示すように、前述の仮止めラバーシリコン15、耐熱パッキン16、平ワッシャ13aおよびナット12aの取付けと同様に、ラバーシリコン10、セラミック碍子11、平ワッシャ13aおよびナット12aがヒータ端子5に取付けられる。また、このヒータ端子5には前述のナット12aに続いて2枚の平ワッシャ13b,13cが別のナット12bにより固定され、その後ヒータ端子5の係合部5bが切り落とされ、シーズヒータ1が完成する。
【0027】
上記シーズヒータ1では、マグネシア9が優れた電気絶縁性を有するので、ニクロム線8のヒータ端子5,5間に所定の電圧が印加されると、ニクロム線8が第1・第2シーズパイプ(以下、第1シーズパイプについて説明する)3,4から絶縁されながら発熱する(図1ないし図3参照)。そのため、ニクロム線8の発熱により所定の熱エネルギーが出力され、ニクロム線8の周りに充填されたマグネシア9に、さらにはマグネシア9から第1シ−ズパイプ3に熱伝導される。これにより、第1シーズパイプ3の温度が上昇し、第1シーズパイプ3に熱伝導された熱エネルギーが第1シーズパイプ3を鋳込むアルミ板6に熱伝導され、アルミ板6が加熱される(被加熱物が液体または気体の時には、この被加熱物は第1シーズパイプ3の放熱により加熱される)。そのため、アルミ板6に取付けられた載置プレート7を介してウエハ2がその形状に応じた広い面積で均等に加熱され、同時にウエハ2を覆う気体も加熱される。
【0028】
その際に、ウエハ2を覆う気体が高腐蝕性の気体である場合には、第1シーズパイプ3の外周面が周囲の高腐蝕性の気体に晒される。また、第1シーズパイプ3とヒータ端子5との間は簡単に開口可能な封止構造となっているため、封口が完全でなく、高腐蝕性の気体が第1シーズパイプ3と口金絶縁部3aとの間の間隙やヒータ端子5と口金絶縁部3aとの間の間隙から侵入する。この時、第1シ−ズパイプ3はアルミ板6に覆われ、また耐食性の良好なインコネルで形成されているため、第1シーズパイプ3の外周面はもとより内面に至っても高腐蝕性の気体により腐蝕するようなことはない。さらに、ヒータ端子5も第1シーズパイプ3の内外で高腐蝕性の気体に晒されるが、ヒータ端子5は耐食性の良好なニッケルでなっているため、同様に高腐蝕性の気体により腐蝕するようなことはない。これにより、シーズヒータ1は高腐蝕性の気体内で使用されることがあっても、その寿命を伸張させることができる。
【0029】
また、前記第1・第2シーズパイプ3,4の口金絶縁部3a,4aは比較的簡単に開口できる封止構造であるため、第1シーズパイプ3または第2シーズパイプ4とニクロム線8との間の絶縁抵抗が低下しても、当該口金絶縁部3a,4aを開口した後、マグネシア9を乾燥させて内部の湿気を取り除き、絶縁回復を図るようなメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0030】
さらに、前記第1・第2シーズパイプ3,4はヒータ端子5が露出するようにアルミ板6に鋳込まれ、またウエハ2の形状に対応して折り曲げられているので、アルミ板6がウエハ2の形状に対応できる。これにより、載置プレート7がウエハ2の形状に対応する広い面で均等に加熱されることとなって、ウエハ2を効率よく均等に加熱することができる。
【0031】
しかも、第1・第2シーズパイプ3,4はインコネルと称されるFe成分を10%以下とするNi−Cr−Fe系ニッケル合金でなっているため、ウエハ2の形状に対応して折り曲げ易く、ウエハ2の均等加熱を容易に行うことができる。
【0032】
そのほかに、前記第1・第2シ−ズパイプ3,4はインコロイと称されるFe成分をおおよそ40%とするNi−Cr−Fe系ニッケル合金でなっていてもよい。この場合、第1・第2シ−ズパイプ3,4の耐熱・耐食性が高まるとともに高圧下の応力割れを防ぐことができる。
【0033】
なお、前記第1・第2シーズパイプ3,4はアルミ板6に鋳込まれているが、これらを露出させて使用することもできる。また、前記被加熱物はウエハ2に限定されるものでなく、金属部品はもとより、液体、気体のいずれであってもよく、被加熱物が液体または気体の時にはその貯留槽の形状に応じた広い面での均等加熱が可能となる。さらに、前記絶縁体はマグネシア9に限定されるものでなく、同様の電気絶縁性と熱伝導性を示す他の絶縁体であってもよい。その他、本発明の各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…アルミ鋳込み型シーズヒータ
3…第1シーズパイプ
3a…口金絶縁部
5…ヒータ端子
8…ニクロム線
9…マグネシア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8