【解決手段】監視用レーダ11は、所定の監視領域内の飛行物体を検知する。撮像部12は、検知された飛行物体の画像を撮像する。判定部は、検知した飛行物体を撮像した画像をセンタ装置3へ送信する。センタ装置3は、監視装置2が取得した飛行物体の挙動に基づいて撮像部12を制御する制御部21と、撮像部12が取得した画像を表示する表示装置21を含む。飛行物体の不審度に基づいて最も警戒すべき飛行物体を撮像対象として撮像部12を制御する。
前記不審度算出手段は、前記所定期間内の飛行軌跡において直進性が低いほど前記飛行物体の不審度が高くなるよう算出することを特徴とする請求項1に記載の飛行物体監視システム
前記不審度算出手段は、前記所定期間内の移動距離が短いほど前記飛行物体の不審度が高くなるよう算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の飛行物体監視システム
前記不審度算出手段は、監視領域内に重要監視地点が設定されている場合は、前記不審度に、前記重要監視地点への接近度合いが高いほど高くなる評価値を加算することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の飛行物体監視システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、公共空間を含む監視領域において配送、調査等の目的で事前に許可申請を行っていたとしても、監視領域を通過するドローンを検知する度に確認のため都度監視することは監視員にとって負担となることが予測される。
【0006】
また、空中には飛行物体以外に、飛来物や鳥等の飛行物体が検知される。もちろん、これらを検知して監視対象とすることは好ましくない。
一方、テロ、盗撮目的等の悪意者により操作された飛行物体が監視領域に侵入した場合は、これを確実に検知する必要があるが、複数の飛行物体が同時に検知された場合に、悪意目的のドローンのみを精度良く検出することは困難である。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、監視領域内に飛来する飛行物体を監視するにあたって、複数の飛行物体が存在する場合でも、監視員が優先的に監視すべき飛行物体を適切に判定することができる飛行物体監視システムの実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る飛行物体監視システムは、所定の監視領域内の飛行物体を検知する検知手段と、前記検知された飛行物体の画像を撮像する撮像手段と、前記検知手段が検知した飛行物体の少なくとも位置情報と前記撮像手段が撮像した画像をセンタ装置へ送信する送信手段と、
を含む監視装置と、前記監視装置が取得した飛行物体の位置に基づいて前記撮像手段を制御する制御手段と、前記撮像手段が取得した画像を表示する表示手段と、を備えたセンタ装置からなる飛行物体監視システムであって、
前記検知手段にて追跡した飛行物体の過去所定期間内の飛行軌跡に基づいて不審度を算出する不審度算出手段と、前記不審度が所定値以上の飛行物体を不審飛行物体と判定して、前記撮像手段にて撮像することを特徴とする。
【0009】
また、前記不審度算出手段は、前記所定期間内の飛行軌跡において直進性が低いほど前記飛行物体の不審度が高くなるよう算出するようにしてもよい。
【0010】
さらに、前記不審度算出手段は、前記所定期間内の移動距離が短いほど前記飛行物体の不審度が高くなるよう算出するようにしてもよい。
【0011】
また、前記不審度算出手段は、監視領域内に重要監視地点がある場合は、前記不審度に、前記重要監視地点への接近度合いが高いほど高くなる評価値を加算してもよい。
【0012】
さらに、前記監視領域内に過去に検知した飛行物体が消失した位置が要警戒地点として登録されている場合、前記要警戒地点の所定範囲内付近を起点として検知された飛行物体に関しては、前記所定値よりも緩和された第2の所定値以上の飛行物体を前記不審飛行物体と判定するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明に係る飛行物体監視装置は、所定の監視領域内の飛行物体を検知する検知手段と、前記検知手段にて追跡した飛行物体の過去所定期間内の飛行軌跡に基づいて不審度を算出する不審度算出手段と、
前記不審度が所定値以上の飛行物体を不審飛行物体と判定する判定手段を備えた飛行物体監視装置であって、
前記不審度算出手段は、前記不審度を、前記所定期間内の飛行軌跡における直進性が低いほど高く、移動距離が短いほど高くなる評価式にて算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の飛行物体監視システムによれば、監視領域内に進入してきた飛行物体が正当な目的を持って飛行しているものか、悪意を持った操作者により操作されているものかを識別することにより、監視員の監視負担を低減させるとともに、監視すべき不審な飛行物体を的確に判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面の
図1〜6を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
[本発明の概要について]
本発明は、監視領域内に飛来する飛行物体(例えばドローン等)を監視対象として監視する飛行物体監視システムに関するものであり、監視領域内で、飛行物体を検知した場合、飛行物体の飛行挙動から不審度が高い場合に、当該飛行物体のカメラ画像を監視卓の表示手段に表示させる機能を有する。
【0018】
具体的には、監視領域内で検知された飛行物体を追跡し、監視領域内に重要監視すべきポイントがない場合は、飛行軌跡の非直線度合いなどに応じて不審度を設定する。一方で監視領域内に飛来する飛行物体の脅威から保護監視すべき重要監視ポイントがある場合は飛行軌跡におる不審度に加えて、当該ポイントへの接近度合いが高い飛行物体の不審度をさらに高く設定する。これにより、不審度が最も高い飛行物体を最優先に警戒すべき対象として適切に設定することができる。
【0019】
[飛行物体監視システムの構成について]
図1に示すように、本実施の形態の飛行物体監視システム1は、監視領域内に飛来する飛行物体を監視する監視装置2と、監視装置2から離れた位置に配置される遠隔のセンタ装置3とから大略構成される。
【0020】
図2は飛行物体監視システム1による監視イメージの概略を示している。
図2において、半球を監視領域Eとする後述する監視用レーダ11を備えた監視装置2が設置され、監視領域E内には飛行物体Wから保護監視すべき重要監視ポイント(地点)Cが存在するものとする。重要監視ポイントは要警戒対象である重要施設や、要人等が滞在する施設等に設定される。
図2では、飛行物体W1と飛行物体W2とが監視領域E内に飛来し、飛行物体W2が重要監視ポイントCに向かって矢印X方向に飛行している例を示している。なお、重要監視ポイントは、監視用レーダ11の監視領域E内に複数設定されることもある。また、重要監視ポイントは監視すべき時間帯を限定して設定されることもある。
【0021】
監視用レーダ11が監視領域E内に飛行する飛行物体W1,W2を検知した場合、重要監視ポイントCが監視領域内に存在し、これに向かって飛行する飛行物体W2の不審度が高いと判定すると撮像対象として選択し、監視用レーダ11近傍の後述する撮像部12に監視用レーダ11が取得した位置情報が送られ、当該位置に撮像部12を制御し、飛行物体W2を撮像したカメラ画像を遠隔のセンタ装置3に送信し、センサ装置3の後述する監視卓の表示装置22にカメラ画像が表示される。また、監視領域内の重要監視ポイントCの有無に関わらず、飛行物体の飛行軌跡が非直線的或いは一箇所に滞留する等の不審な挙動を示す場合に不審度が高いと判定して、これを撮像対象として設定する。監視員は、監視卓の表示装置22に表示されるカメラ画像により飛行物体W2を監視する。
【0022】
なお、
図2の例では、1つの監視装置2にて監視領域内に監視領域Eを設定しているが、監視装置2を監視領域内に複数設置し、複数の監視領域Eの一部を重複させて広域の監視領域を設定するようにし、何れかの監視用レーダ11が飛行物体を検知すると、監視用レーダ11近傍の撮像部12によるカメラ画像が遠隔のセンタ装置3に送信されるようにしてもよい。
【0023】
[監視装置]
図1に示すように、監視装置2は、例えば
図2に示す監視領域Eを形成するように監視領域の所定箇所に設置され、検知手段としての監視用レーダ11、撮像部12を含んで構成される。
【0024】
[監視用レーダ]
監視用レーダ11は、監視領域内に飛来する飛行物体Wを検知するもので、監視領域の所定箇所に固定設置され、半球面を監視可能なように複数のレーダで構成される。監視用レーダ11は、レーダから送信される送受信波として周波数変調された連続波を使用して測距を行うFM−CW方式を採用し、所定周期(例えば1回転/1秒)で方位方向に所定の水平ビーム幅(例えば2度)のビームを360度回転させ、所定周期(例えば3ms)ごとに電波を送受信することで、飛行物体Wの方位方向を検知できる。また、監視用レーダ11の回転速度はレーダの最大検知距離(例えば100m)に応じて決定されるビームの往復時間と比較して、アンテナが停止しているみなせるほど小さい速度に設定される。監視用レーダ11からは、レーダを中心とした水平面上の角度(方位角)、距離、速度、受信強度を出力情報として得ることができる。
【0025】
さらに監視用レーダ11の構成について
図3を参照しながら説明する。ここでの監視用レーダ11は、斜方監視用レーダと天面監視用レーダによる2つのレーダ装置を組み合わせて半球面を監視する構成としている。以下、2つのレーダ装置にFM−CWレーダを用いた場合を例にとって説明する。
【0026】
図3は2つのレーダ装置で構成される監視領域のイメージを示している。固定位置に設置されたFM−CWレーダが、斜め上方、及び上空方向におのおの送信ビームТを放射し、斜め上方に送信した領域を上下に分割した領域からの電波Rを受信する2つの受信アンテナ、及び上空方向からの電波Rを受信する2つの受信アンテナを用いて監視領域内に飛来する飛行物体Wからの反射ビームを受信する。
【0027】
ここでは、FM−CWレーダの原理の詳細については省略するが、その概略について説明すると、監視用レーダ11としてのFM−CWレーダは、送信アンテナ、第1の受信アンテナ、第2の受信アンテナ、送受信装置、A/D変換器、信号処理装置を含んで構成される。
【0028】
各部について説明すると、送信アンテナは、送信ビームを前方に放射する。第1の受信アンテナと第2の受信アンテナは、送信ビームの範囲あるいは、送信ビームの範囲を分割した監視領域からの電波を受信する。送受信装置は、FM−CW送信波を生成し、また受信ビームを信号処理装置で処理可能な周波数に変換する。A/D変換器は、送受信装置が出力する受信ビーム強度をデジタル変換する。信号処理装置は、A/D変換器が出力する受信ビーム強度から監視領域にある検知対象物の相対距離、相対速度、及び受信ビーム中の検知対象物からの反射ビーム成分の強度を求める。
【0029】
さらに説明すると、信号処理装置では、A/D変換器から入力した反射ビームの信号の周波数分析を行い、各周波数における信号強度を演算する。次に、信号強度が閾値以上となる周波数を求めて、その周波数を検知対象物からの反射ビーム成分の周波数とする。そして、求めた検知対象物からの反射ビーム成分の周波数と、送信ビームの周波数の差を演算してビート周波数を算出し、このビート周波数から検知対象物の相対距離、相対速度を演算して出力する。また、回転させているレーダがどの位置で飛行物体Wを検知したかに基づいて角度(方位角)を求めることができる。そしていずれの受信アンテナで飛行物体Wを検知したかにより飛行物体Wの存在する仰角(範囲)を求めることができる。
【0030】
なお、監視用レーダ11は、監視領域にある検知対象物の相対距離、方位角、仰角(範囲)、相対速度、及び受信ビーム中の検知対象物からの反射ビーム成分の強度などの検知対象物に関する各種情報を取得できればよく、
図3に示す構成に限定されるものではない。例えばレーダ方式としてFM−CWではなく、2周波CW等の他の方式を採用することもできる。
【0031】
[撮像部]
撮像部12は、パン、チルト、ズーム機能を備えた高解像度、高感度のカメラで構成される。撮像部12は、監視領域を撮像可能な位置に固定設置され、センタ装置3の後述する制御部21の制御により、パン、チルト及びズームが可能であり、飛行物体Wが画面中央に映し出せるように撮像範囲が可変される。撮像部12は、監視用レーダ11と連動し、監視用レーダ11で検知した飛行物体Wの位置情報(方位角、仰角範囲、距離情報)に基づくセンタ装置3の後述する制御部21の制御により、飛行物体Wが移動しても画像中心になるように飛行物体の方位角に応じて旋回台を旋回、仰角範囲に応じて上下方向、ズームを調整し、カメラ画像をセンタ装置3に送信する。
【0032】
なお、撮像部12は、監視用レーダ(FM−CWレーダ)11の上部または下部、あるいは別の場所に固定設置してもよい。
【0033】
なお、
図1の構成では、監視装置2が監視用レーダ11、撮像部12を含む構成としているが、監視用レーダ11、撮像部12はそれぞれ個別に構成して配置してもよい。
また、監視用レーダ11にセンタ装置3における信号処理部211、判定部212の機能を備えた飛行物体監視装置として構成し、センタ装置3にて飛行物体監視装の出力に基づき、別途備えた撮像部の制御を行うようにしてもよい。
【0034】
[センタ装置]
図1に示すように、センタ装置3は、監視センタ等に設けられ、制御部21と監視卓の表示部(表示手段)22、記憶部23を含んで構成される。
【0035】
[制御装置]
制御部21は、システム全体を統括制御するものであり、信号処理部211、判定部212を含んで構成される。
【0036】
[信号処理部]
信号処理部211は、監視用レーダ11から取得した出力情報(レーダを中心とした水平面上の角度、距離、速度、受信強度などの情報)からノイズ除去処理や固定物体除去処理、検知した飛行物体の可能性がある場合には膨張処理等の画像処理を施して、ラベルを設定し、追跡処理を行う。信号処理部211の処理結果は判定部212へ出力する。
【0037】
[判定部]
判定部212は、後述する
図4の処理において、監視用レーダ11が飛行物体Wを検知したか否かの判定、検知した飛行物体Wの不審度に基づいて撮影すべき対象か否かの判定を行う。
制御部21は、さらに判定部212で撮影すべきと判断した場合に飛行物体に基づく撮像部12のパン・チルト・ズーム制御(以下、PTZ制御という)、表示部22の表示制御などを行う。
【0038】
[表示部]
監視卓の表示部22は、制御部21と接続され、レーダ画像及び監視用レーダ11で検知した付近の撮像部12のカメラ画像を表示するモニタである。
【0039】
表示部22は、監視用レーダ11が監視領域内に飛来する不審度の高い飛行物体Wを検知すると、制御部21の制御により、監視用レーダ11近傍の撮像部12が撮像したカメラ画像を表示させる。その際、制御部21は、監視用レーダ11から取得した飛行物体Wの位置情報に基づき撮像部12のPTZ制御を行い、飛行物体Wが画面中央に映し出せるようにする。
【0040】
[記憶部]
記憶部23は、監視用レーダ11および撮像部12の位置情報(緯度情報、経度情報、高度情報)、重要監視ポイントの位置情報、監視すべき時間帯などの情報が予め記憶される。
【0041】
次に、上記のように構成される飛行物体監視システム1におけるセンタ装置3の制御部21の具体的な制御について
図4のフローチャートを参照しながら説明する。以降の処理は、監視用レーダ11を360度回転するごとに実行される。
【0042】
まず、制御部21は、監視用レーダ11が監視領域内に飛来する飛行物体Wを検知しているか否かを判定する(S101)。
【0043】
制御部21は、監視用レーダ11が飛行物体を検知していると判定すると、信号処理部211にて監視用レーダ11で検知した全ての飛行物体に対し、ノイズ除去処理、膨張処理などを行う(S102)。
【0044】
また、制御部21は、監視用レーダ11で検知した飛行物体Wを信号処理した結果、大きさが所定の範囲内にあるか否かを判定し、検知した飛行物体が監視すべき可能性があるか否かを判定する(S103)。
【0045】
次に制御部21は、S103にて、検知した飛行物体が監視すべき可能性があると判定した場合、S104にて、検知した飛行物体Wが監視領域内に新規に出願したものか判定する。新規物体である場合、以降の追跡を行うためラベルを設定する(S105)。
【0046】
制御部21は新規物体でないと判定した場合、既にラベルが設定されているが不審度が所定基準値以上と判定されていない物体であるためS106へ進む。
この新規物体でないとする判定、即ち、過去検知されたラベル付与済みの飛行物体であるか否かの判定は、過去に検知されたラベル付与済みの飛行物の位置、移動方向、速度と新たに検知された飛行物体の、位置、移動方向、速度を比較して同一物体か否かを判定する。
【0047】
ついで、制御部21は、検知した飛行物体の不審度を算出する(S106)。S106の不審度の算出についてはサブルーチン化されており、後に詳述する。
【0048】
次に、制御部21は、検知した飛行物体のうち、不審度が予め定めた基準値以上のものがあるか否か判定し(S107)、不審度が基準値以上である飛行物体がある場合は、検知した飛行物体Wが撮像可能なように撮像部12をPTZ制御する(S108)。これにより、PTZ制御された撮像部12が撮像したカメラ画像は、制御部21に送信される。
【0049】
そして、制御部21は、PTZ制御した撮像部12が撮像したカメラ画像を監視卓の表示装置22に表示制御する。
【0050】
次に、制御部21は、撮像部12にて監視中の飛行物体が消失したか否かを判定する(S109)。制御部21は、監視中の飛行物体Wが監視用レーダ11から消失したと判定すると(S109-YES)、S107へ戻り、他に不審度が所定基準値以上の飛行物体Wが監視領域内に存在するか否かを判定する。存在する場合は、当該飛行物体Wの移動に追随して撮像部12をPTZ制御する。不審度が所定基準値以上の飛行物体Wが存在しない場合は、S101へ戻る(図中のA)
【0051】
なお、上述した処理において、一度不審度が基準以上と判定した飛行物体Wが監視用レーダ11から消失するまで撮像部12をPTZ制御して追随するようにしているが、監視領域内で複数の飛行物体Wが検知されている場合に不審度が更新されるごとに、現在撮像中の飛行物体よりも、不審度が高い飛行物体が出現すれば、最も不審度が高い飛行物体Wに対し、撮像部12を制御してカメラ画像を取得するようにしてもよい。
【0052】
或いは、不審度が所定以上の飛行物体を撮像中に、現在撮像中の飛行物体より不審度が高く、かつ重要監視ポイントに接近する飛行物体がある場合は撮像部12を制御して、当該重要監視ポイントに接近する飛行物体を撮像するよう制御するが、重要監視ポイントに接近する飛行物体でない場合は、現在撮像中の飛行物体を優先して消失するまで撮像するようにしてもよい。
【0053】
次に、S106の不審度算出について
図5のフローチャートを用いて説明する。
不審度は、監視用レーダ11が1回転するごとに過去所定期間の飛行軌跡等から算出される評価値である。
【0054】
制御部21は、S1061にて監視領域内に重要監視ポイントが設定されているか否かを判定する。この重要監視ポイントは、例えば重要施設などの所在地(緯度、経度)が設定される。或いは要人が滞在する場所、時間帯に限定されて設定される。
【0055】
制御部21は、監視領域内に重要監視ポイントが設定されている場合は、検知した飛行物体が重要監視ポイントへ向かっているか否かを判定する(S1062)。この判定には後述する接近脅威度を用いて判定する。検知した飛行物体が重要監視ポイントへ向かっている場合は、不審度として接近驚異度を加算する(S1063)。
【0056】
制御部21は、S1061で監視領域内に重要監視ポイントが設定されていない場合、或いは検知した飛行物体が重要監視ポイントへ向かっていない場合、もしくは、S1063で重要監視ポイントへ向かっているとして不審度が加算された場合、S1064へ進む。
【0057】
S1064では飛行軌跡に基づく不審度が判定される。
飛行軌跡に基づいて不審と判定される例としては、上下又は左右に蛇行する場合、或いは一定の場所付近に停滞する場合(いわゆるホバリング)などが挙げられる。配送や調査目的等の悪意のない飛行物体は監視領域を一次通過する目的のため飛行することが想定されるので飛行軌跡は直線的なものとなる。よってジグザグ飛行等の非直線的な飛行軌跡をとるものは不審度が高く算出される。また一箇所に滞留する飛行物体も盗撮等の悪意目的である可能性が高いので不審度が高く算出される。
【0058】
また、別の例として監視領域内で飛行物体が消失したポイントを要警戒ポイントとして設定し、当該要警戒ポイント付近を起点として突然現れた飛行物体に関しては、不審な飛行物体と判定され易くする。これは、例えば重要なイベント(重要監視ポイントとして設定)の開催前に付近の建物の屋上等の人目の付かない場所にドローン等の飛行物体を着陸させておき、重要イベント当日に悪意目的で急速に接近させようと目論んでいる悪意者に対し、早期対応を行うためである。
【0059】
制御部21は、検知した飛行物体の飛行軌跡に基づく不審度算出して(S1065)、
図4のフローチャートへ戻る。
【0060】
次に本実施の形態の飛行物体監視システム1の具体例について、監視用レーダ11が検知した飛行物体Wの不審度に応じた制御の例を
図6を参照しながら説明する。
【0061】
図6に示すように、監視領域内に重要監視ポイントCが配置されているものとする。ここでは重要監視ポイントCは、特定の時間帯のみ飛行物体からの警戒を行う性質を持つ重要施設として説明する。監視装置はAの位置に設置され監視用レーダ11の監視範囲E内で不審な飛行物体を検知すると監視カメラ21を当該飛行物体を撮影するためにPTZ制御する。
【0062】
今、
図6において、監視領域E内にはW1〜W4の飛行物体が監視用レーダ11にて検知されているものとする。
図6において黒丸は飛行物体の現在位置を示し、白丸は過去の検知位置を示す。
【0063】
監視システムの制御部21は、監視領域内に重要監視ポイントの有無をまず判定する。制御部21は、監視領域内に重要監視ポイントCが設置され、現時点が監視すべき時間帯である場合、重要監視ポイントCに向かって接近するW2は不審度が高く算出される。
監視ポイントCが重要監視すべき時間帯でない場合は、W2は直線的な飛行軌跡を示しているので不審度は高くはならない。
一方、重要監視ポイントの有無に関わらず、左右に蛇行飛行する飛行物体W1や一定場所に滞留しているW3は不審度が高く算出される。
【0064】
別の例として、監視領域内には過去に飛行物体を見失ったポイントとして要警戒ポイントX1の地点が登録されているものとする。この場合、X1付近を起点として飛行物体が検知された場合は、通常よりも不審と判定され易い第2の基準値が設定される。この場合当該判定期間内で算出された不審度が第2の基準値以上となると不審な飛行物体と判定される。
【0065】
監視用レーダ11が監視対象の飛行物体Wを検知すると、検知した飛行物体Wの不審度が所定基準値以上であれば、当該飛行物体Wが撮像可能なように撮像部12をPTZ制御し、PTZ制御された撮像部12の撮像画像をセンタ装置3へ送信して監視卓の表示装置22に表示制御する。
複数の飛行物体を検出した場合は、最も不審度が高い飛行物体が撮像可能なように撮像部12をPTZ制御する。
【0066】
以下、不審度の具体的な算出方法について説明する。ここでは一例として、
不審度D=[接近脅威度]+[移動軌跡に基づく不審度]
として2つの評価値を算出する場合について説明する。
接近脅威度は、検知した飛行物体が監視領域内の重要監視ポイントへの接近する確度に基づいて算出される評価値である。従って、接近脅威度に基づく評価値は監視領域内に重要監視ポイントがなければ算出されない。
飛行軌跡に基づく不審度は、重要監視ポイントの有無に関わらず、検知した飛行物体の過去所定期間内の飛行軌跡に基づいて算出される評価値である。
【0067】
接近脅威度としては、所定の条件に基づく評価値を採用することができる。例えば、重要監視ポイントから飛行物体までの距離d、重要監視ポイントを基準とした飛行物体の進行方向(水平角度θ、仰角φ)、飛行物体の速度vからなる複数の要素を基準とし、各基準d,θ,φ,vについて所定の範囲ごとに評価値E(d),E(θ),E(φ),E(v)を設定する。
【0068】
例えば飛行物体の水平角度θの評価値E(θ)を例にとって説明すると、θ≦±10°の場合はE(θ)=10、±10°<θ≦±20°の場合はE(θ)=5、±20°<θ≦±40°の場合はE(θ)=3に設定する。その他の基準d,φ,vについても所定の範囲ごとに評価値E(d),E(φ),E(v)を設定する。
【0069】
このように、各基準d,θ,φ,vごとに評価値E(d),E(θ),E(φ),E(v)を設定し、これら評価値E(d),E(θ),E(φ),E(v)に適宜重み係数を掛け、その評価値の合計、或いは積算値を接近脅威度として定義する。
【0070】
次に移動軌跡に基づく不審度について説明する。移動軌跡に基づく不審度は監視領域内に重要監視ポイントの有無に関わらず、検知した飛行物体Wの飛行軌跡に応じて算出される評価値である。
【0071】
移動軌跡に基づく不審度は、[飛行軌跡の非直線度合い]/[滞留度合い]に所定の重み係数を掛けた値として算出される。
[飛行軌跡の非直線度合い]は、所定期間内における飛行軌跡を直線で近似したときの、各検知地点から近似直線に下ろした垂線の長さの合計値に基づき算出される。この値が大きいほど、飛行物体の飛行軌跡の非直線度合いが高くなる。
【0072】
また[滞留度合い]は、検知さいた飛行物体の過去所定期間内の移動総距離に基づき算出される。この移動距離は、具体的には、所定期間内の各検知地点の重心位置を算出し、重心位置と各検知地点間の距離の絶対値の総和として求めることができる。或いは所定期間内の各検知地点間の移動距離の絶対値を総和して求めるようにしてもよい。
この値が小さいほど一箇所に留まっていることを示し、滞留度合いが高くなる。
移動軌跡に基づく不審度は、上述のように[飛行軌跡の非直線度合い]を[滞留度合い]で除して、所定の重み係数を掛け合わせた評価式にて算出される。この重み係数は用途に応じて実験的に定められる。
算出した不審度が所定の基準値以上であると不審な飛行物体と判定する。
【0073】
尚、上述のように監視領域内に要警戒ポイントXが設定されている場合は、当該ポイントX付近から出現した飛行物体に対しては、通常よりも緩和された判定基準に基づき、不審な飛行物体か否かを判定する。これにより、予め悪意目的で飛行物体を隠しておかれた場合でも迅速な対応が可能となる。具体的には通常の基準値よりも低く設定された第2の基準値以上で不審な飛行物体と判定される。
さらに、通常よりも短い期間で不審な飛行物体と判定できるようにしてもよい。
【0074】
以上、監視用レーダ11から得られる出力情報を用いて不審な飛行物体を判定する監視装置について説明した。監視装置の構成として監視用レーダ11に、マイクロホンアレイを用いて音源方向を推定する手段を設け、監視用レーダ11の検知に加え、マイクロホンアレイの出力に遅延和処理を行い、遅延和信号の強度に応じて不審度を算出するようにしてもよい。
これにより、ドローン等を検知対象とする場合は、プロペラ等の回転音を発していない飛行物体の不審度が低くなるため、監視員の負担が低減される。
【0075】
以上、本発明に係る飛行物体監視システムの最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。