(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-168104(P2017-168104A)
(43)【公開日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】静電付着に基づく触覚出力デバイス
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20170825BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/041 640
G06F3/041 495
G06F3/041 460
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2017-52071(P2017-52071)
(22)【出願日】2017年3月17日
(31)【優先権主張番号】15/072,485
(32)【優先日】2016年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】500390995
【氏名又は名称】イマージョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】IMMERSION CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ヴァヒド コシュカヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン マニュエル クルツ−ヘルナンデス
(57)【要約】
【課題】本発明の目的の1つは、触覚出力デバイスであって、従来のモーター及びアクチュエーターを用いることなくこのデバイスの可動部品間の力を制御することができる、触覚出力デバイスを提供することである。
【解決手段】触覚出力デバイスは、基板と、基板の上に配置された電極のアレイと、電極のアレイの上に配置された誘電材料の層とを含む。誘電材料の層は露出した外面を有し、露出した外面は、露出した外面と、この露出した外面と接触している接触面との間の付着力を増大させるように構成されたマイクロパターニングされたテクスチャーを備える。触覚出力デバイスは、電極のアレイにわたって電位をかけて、露出した外面と接触面との間に触覚効果として静電付着力を発生させるように構成されたコントローラーを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に配置された電極のアレイと、
前記電極のアレイの上に配置された誘電材料の層であって、露出した外面を有し、該露出した外面は、該露出した外面と、該露出した外面と接触している接触面との間の付着力を増大させるように構成されたマイクロパターニングされたテクスチャーを備える、誘電材料の層と、
前記電極のアレイにわたって電位をかけて、前記露出した外面と前記接触面との間に触覚効果として静電付着力を発生させるように構成されたコントローラーと、
を備える、触覚出力デバイス。
【請求項2】
前記基板は、ポリメチルシロキサン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン及びそれらの組合せからなる群から選択された材料を含む、請求項1に記載の触覚出力デバイス。
【請求項3】
前記基板は可撓性フィルムである、請求項1に記載の触覚出力デバイス。
【請求項4】
前記誘電材料の層は、パリレン、二酸化ケイ素、有機絶縁体、無機絶縁体及びそれらの組合せからなる群から選択された誘電材料を含む、請求項1に記載の触覚出力デバイス。
【請求項5】
電子機器であって、
該電子機器のユーザーの行動を検知するように構成されたセンサーと、
前記センサーによって検知された前記ユーザーの前記行動に応じて触覚効果を発生させるように構成された触覚出力デバイスであって、
基板と、
前記基板の上に配置された電極のアレイと、
前記電極のアレイの上に配置された誘電材料の層であって、露出した外面を有し、該露出した外面は、該露出した外面と、該露出した外面と接触している接触面との間の付着力を増大させるように構成されたマイクロパターニングされたテクスチャーを備える、誘電材料の層と、
を備える、触覚出力デバイスと、
前記センサーから入力信号を受け取り、該入力信号に基づいて前記触覚出力デバイスによって生成される前記触覚効果を決定し、前記電極のアレイにわたって電位をかけて、前記露出した外面と前記接触面との間に触覚効果として静電付着力を発生させるように構成されたコントローラーと、
を備える、電子機器。
【請求項6】
前記センサーは、近接センサー又は圧力センサーである、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記基板は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、エラストマー又はそれらの組合せを含む、請求項5に記載の電子機器。
【請求項8】
前記基板は可撓性フィルムである、請求項5に記載の電子機器。
【請求項9】
前記誘電材料の層は、パリレン又は二酸化ケイ素を含む誘電材料を含む、請求項5に記載の電子機器。
【請求項10】
ハウジングを更に備え、前記触覚出力デバイスは該ハウジングに取り付けられている、請求項5に記載の電子機器。
【請求項11】
前記触覚出力デバイスは、前記ハウジングの外面に取り付けられている、請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記電子機器の前記ユーザーによって回されるように構成された回転つまみを更に備え、該回転つまみは前記接触面を備える、請求項5に記載の電子機器。
【請求項13】
前記コントローラーは、前記電子機器が電子メール又はテキストメッセージを受け取ったというインジケーションを受け取り、該インジケーションと前記入力信号とに基づいて前記触覚効果を決定するように更に構成される、請求項5に記載の電子機器。
【請求項14】
触覚出力デバイスを用いて触覚効果を発生させる方法であって、
コントローラーによって、電子機器のユーザーの行動を検知するように構成されたセンサーから入力信号を受け取ることと、
前記コントローラーによって、前記入力信号に基づいて、前記触覚出力デバイスによって生成される前記触覚効果を決定することと、
前記触覚出力デバイスの電極のアレイにわたって電位をかけて、該触覚出力デバイスの露出した外面と接触面との間に前記触覚効果として静電付着力を発生させることと、
を含む方法。
【請求項15】
前記触覚出力デバイスは基板を備え、前記電極のアレイは該基板の上に配置され、誘電材料の層が該電極のアレイの上に配置され、前記誘電材料の層は前記露出した外面を備え、該露出した外面は、該露出した外面と、該露出した外面と接触している前記接触面との間の付着力を増大させるように構成されたマイクロパターニングされたテクスチャーを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コントローラーにより、前記電子機器が電子メール又はテキストメッセージを受け取ったというインジケーションを受け取ることを更に含み、前記触覚効果は、前記インジケーションと前記入力信号とに基づいて前記コントローラーによって決定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記材料は、ポリメチルシロキサン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電付着(electrostatic adhesive)に基づく触覚(haptic:ハプティック)出力デバイスと、静電付着に基づく触覚出力デバイスを組み込んだ電子機器とに関する。
【0002】
本出願は、2016年3月17日に出願された米国特許出願第15/072,485号の利益を主張し、その開示内容は、全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
電子機器メーカーは、ユーザーのために豊富なインターフェースを製造する努力をしている。従来のデバイスは、視覚キュー及び聴覚キューを用いて、ユーザーにフィードバックを提供する。幾つかのインターフェースデバイスでは、運動感覚フィードバック(能動フィードバック及び抵抗力フィードバック等)及び/又は触知性(tactile)フィードバック(振動、触感及び熱等)、より一般的には、まとめて「触覚フィードバック」又は「触覚効果」として知られるフィードバックもまた、ユーザーに提供される。触覚フィードバックは、ユーザーインターフェースを改善しかつ簡略化するキューを提供することができる。特に、振動効果、すなわち振動触知性触覚(vibrotactile haptic)効果は、電子機器のユーザーに、特定のイベントについて通知するように、又は現実的なフィードバックを提供して、シミュレート環境又は仮想環境内で感覚的没入感(sensory immersion)を増大させるように、ユーザーにキューを提供するのに有用である可能性がある。
【0004】
振動効果を発生させるために、多くの機器は、幾つかのタイプのアクチュエーター又は触覚出力デバイスを利用する。この目的で使用される既知の触覚出力デバイスとしては、偏心質量がモーターによって移動する偏心回転質量(「ERM」)等の電磁アクチュエーター、ばねに取り付けられた質量が前後に駆動されるリニア共振アクチュエーター(「LRA」)、又は圧電材料、電気活性ポリマー若しくは形状記憶合金等の「スマート材料」が挙げられる。触覚出力デバイスはまた、広義には、静電摩擦(「ESF」)、超音波表面摩擦(「USF」)を使用するデバイス、又は超音波触覚変換器を用いて音響放射圧を誘発するデバイス、又は触覚基板及び可撓性若しくは変形可能な表面を使用するデバイス、又はエアジェットを用いて空気パフ等の噴出された触覚出力をもたらすデバイス等、非機械的又は非振動性デバイスも含む。
【0005】
特許文献1は、静電付着と、それがロボット(壁面走行ロボット)のような用途に転用される方法とに関して考察している。静電付着は、何世紀にもわたって基本的な力の1つであったが、近年、非常に注目を集めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0251701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スマートフォン等のスマート電子機器は、ますます薄くなってきているが、機器の部品の動きを制御するために使用される通常の電磁ベースのモーターは、比較的かさばりかつ騒音が大きい。従来のモーター及びアクチュエーターを使用せずにスマート電子機器の移動体の間の力を制御することが望ましい。薄い及び/又は可撓性のスマート電子機器の次世代において触覚フィードバックを提供することもまた望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、基板と、基板の上に配置された電極のアレイと、電極のアレイの上に配置された誘電材料の層とを含む触覚出力デバイスが提供される。誘電材料の層は露出した外面を有し、露出した外面は、この露出した外面と、この露出した外面と接触している接触面との間の付着力を増大させるように構成されたマイクロパターニングされたテクスチャーを備える。触覚出力デバイスは、電極のアレイにわたって電位をかけて、露出した外面と接触面との間に触覚効果として静電付着力を発生させるように構成されたコントローラーを含む。
【0009】
一実施形態では、基板は、ポリメチルシロキサン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン及びポリプロピレンからなる群から選択された材料を含むことができる、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びエラストマー材料を含む。
【0010】
一実施形態では、基板は可撓性フィルムである。
【0011】
一実施形態では、誘電材料の層は、パリレン、及び二酸化ケイ素からなる群から選択される誘電材料を含む。
【0012】
本発明の一態様によれば、電子機器であって、電子機器のユーザーの行動を検知するように構成されたセンサーと、センサーによって検知されたユーザーの行動に応じて触覚効果を発生させるように構成された触覚出力デバイスとを含む電子機器が提供される。触覚出力デバイスは、基板と、基板の上に配置された電極のアレイと、電極のアレイの上に配置された誘電材料の層であって、露出した外面を有し、露出した外面は、この露出した外面と、この露出した外面と接触している接触面との間の付着力を増大させるように構成されたマイクロパターニングされたテクスチャーを備える、誘電材料の層とを含む。電子機器は、センサーから入力信号を受け取り、入力信号に基づいて触覚出力デバイスによって生成される触覚効果を決定し、電極のアレイにわたって電位をかけて、露出した外面と接触面との間に触覚効果として静電付着力を発生させるように構成されたコントローラーを含む。
【0013】
一実施形態では、センサーは、近接センサー又は圧力センサーである。
【0014】
一実施形態では、電子機器はハウジングを含み、触覚出力デバイスは該ハウジングに取り付けられている。一実施形態では、触覚出力デバイスは、ハウジングの外面に取り付けられている。
【0015】
一実施形態では、電子機器は、電子機器のユーザーによって回されるように構成された回転つまみを含み、回転つまみは接触面を含む。
【0016】
一実施形態では、コントローラーは、電子機器が電子メール又はテキストメッセージを受け取ったというインジケーションを受け取り、そのインジケーションと入力信号とに基づいて触覚効果を決定するように更に構成される。
【0017】
本発明の一態様によれば、触覚出力デバイスを用いて触覚効果を発生させる方法が提供される。本方法は、コントローラーによって、電子機器のユーザーの行動を検知するように構成されたセンサーから入力信号を受け取ることと、コントローラーによって、入力信号に基づいて、触覚出力デバイスによって生成される触覚効果を決定することと、触覚出力デバイスの電極のアレイにわたって電位をかけて、触覚出力デバイスの露出した外面と接触面との間に触覚効果として静電付着力を発生させることとを含む。
【0018】
一実施形態では、コントローラーにより、電子機器が電子メール又はテキストメッセージを受け取ったというインジケーションを受け取ることを含み、触覚効果は、このインジケーションと入力信号とに基づいてコントローラーによって決定される。
【0019】
本発明のこれらの及び他の態様、特徴及び特性は、構造の関連する要素の動作方法及び機能並びに部品の組合せ及び製造の経済性とともに、全てが本明細書の一部を形成する添付図面を参照して以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮することでより明らかとなろう。しかしながら、図面は、例示及び説明することのみを目的としており、本発明の範囲を定義するものとして意図されていないことが明確に理解されるべきである。本明細書及び特許請求の範囲において用いられる「ある(a、an)」及び「その(the)」という単数形は、明確に別段の指示がない限り、複数の対象物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態による電子機器を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の電子機器の触覚出力デバイスの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図3】
図2の触覚出力デバイスのマイクロパターニングされた外面の一部の詳細図を概略的に示す図である。
【
図4】
図1の電子機器のコントローラーの一実施形態を概略的に示す図である。
【
図5】
図1の電子機器の一実施形態の概略斜視図である。
【
図6】
図1の電子機器の一実施形態の概略斜視図である。
【
図7】
図1の電子機器のユーザーに対して触覚効果を与える方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の図の構成要素は、本開示の全体的な原理を強調するように図示されており、必ずしも正確な縮尺で描かれていない。対応する構成要素を示す参照符号は、一貫性及び明確さのために図を通して必要に応じて繰り返されている。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による電子機器100を示す。電子機器100は、デスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、電子ワークブック、電子ハンドヘルドデバイス(携帯電話、スマートフォン、ゲーム機、携帯情報端末(「PDA」)、ポータブル電子メールデバイス、ポータブルインターネットアクセスデバイス、計算機等)、キオスク(現金自動預け払い機、チケット販売機等)、プリンタ、販売時点情報管理デバイス、ゲームコントローラー、ウェアラブルデバイス、又はタッチスクリーン、タッチパッド若しくはボタンパネル等、車両の一部の電子機器等、他の電子機器を含むか又はその一部とすることができる。
【0023】
図示するように、電子機器100は、入出力デバイス110、コントローラー120及びメモリデバイス130を含む。入出力デバイス110は、バス140を介してコントローラー120及び/又はメモリデバイス130に相互接続することができ、それにより、コントローラー120と信号通信する。バス140は、有線通信リンク、無線通信リンク、及び/又はコントローラー120と入出力デバイス110との間の他の通信リンクを含むことができる。入出力デバイス110によってコントローラー120に信号を出力することができ、コントローラー120によって入出力デバイス110に信号を出力することができる。
【0024】
入出力デバイス110は、電子機器100のユーザーから入力を受け取るように構成された少なくとも1つのユーザー入力デバイスを含むことができる。一実施形態では、ユーザー入力デバイスは、ユーザーからの入力を検知するように構成されたセンサー150を含むことができる。センサー150は、タッチセンサーの形態であり、センサー150の表面をタップする、スライドする、こする又は押す等、ユーザーからのジェスチャーを検出するように構成することができる。この目的で、例えば、容量若しくは抵抗検知、圧力感知抵抗器又は光スイッチ等、様々な技術を使用することができる。一実施形態では、センサー150は、タッチパッドの一部とすることができる。一実施形態では、センサー150は、ユーザーに情報を出力しかつ表示するように構成されたディスプレイ160の上に重なるタッチスクリーンの一部とすることができる。一実施形態では、センサー150及びディスプレイ160を結合してタッチスクリーンデバイスにすることができる。一実施形態では、センサー150は、電子機器100に向かうユーザーの行動を検出するように構成されている近接センサー又は存在センサーの形態とすることができる。電子機器100は、異なる機能を有する複数のセンサーを含むことができる。
【0025】
入出力デバイス110は、ユーザーに音声フィードバックを提供するように構成された、スピーカー等の音声出力デバイス(図示せず)を含むことができる。一実施形態では、入出力デバイス110は、ユーザーが電子機器100に入力を与えるために操作することができるボタン、回転つまみ又はジョイスティック等、他のタイプのユーザー入力デバイスを含むことができる。ボタン、回転つまみ及びジョイスティックは、例えば、種々のゲーム周辺機器及び車両におけるユーザー入力デバイスとして、現時点で使用されており、こうしたデバイスの実施態様は、当業者には既知である。
【0026】
入出力デバイス110はまた、例えば入力が電子機器100によって受け取られたという確認として、ユーザーに触覚効果又はフィードバックを与えるように構成された触覚出力デバイス170も含む。触覚出力デバイス170は、1つ又は複数のアクチュエーター、駆動回路、及びアクチュエーター(複数の場合もあり)に対する駆動信号を生成するように構成された触覚エンジンを含むことができる。
【0027】
図1に示すように、メモリデバイス130はまた、バス140を介してコントローラー120とかつ入出力デバイス110に相互接続することもできる。メモリデバイス130は、1つ若しくは複数の内部に固定された記憶ユニット、取外し可能な記憶ユニット及び/又はリモートアクセス可能な記憶ユニットを含むことができる。様々な記憶ユニットは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの任意の組合せを含むことができる。記憶ユニットは、情報、データ、命令、ソフトウェアコード等の任意の組合せを格納するように構成することができる。より詳細には、記憶ユニットは、触覚効果プロファイル、触覚出力デバイス170がいかに駆動されるべきかに対する命令、又は触覚効果を発生させる他の情報を含むことができる。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態による触覚出力デバイス170の断面を概略的に示す。触覚出力デバイス170の製造は、更に詳細に後述するように、電子パターニング(electro-patterning)及び表面処理(surface engineering)を含む。図示するように、触覚出力デバイス170は、基板210と、基板210の上面に配置された複数の電極220、222、224と、電極220、222、224の上及び間に配置された誘電材料層230と、誘電材料230の基板210とは反対の側にあるマイクロパターニングされた外面240とを含む。電極220、222、224は、コントローラー120によって制御することができる電圧源Vと信号通信する。
図3は、マイクロパターニングされた外面240の一部のより詳細な図を示す。
【0029】
基板210は、シリコーンの薄い層、又は、例えば、有機絶縁体、無機絶縁体、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)等から作製された薄い及び/又は可撓性ポリマーフィルムとすることができる。形状が円形又は矩形である電極のより大きいアレイの一部とすることができる電極220、222、224は、スパッタリング又は蒸着法を用いて基板210の上にパターニングすることができる。電極220、222、224に対して、Au、Al、Cr、Cu、Ag、カーボンナノチューブ、グラファイト、半導体等、異なる導電性材料を使用することができる。電極220、222、224及び基板210の上に、誘電材料230を堆積させることができる。一実施形態では、誘電材料230は、電極220、222、224を封入することができる。誘電材料層230は、パリレン、二酸化ケイ素等、誘電材料を含むことができる。
【0030】
誘電材料層230の外面240の有効表面積を増大させるために、外面240に対し、イオンビーム融合、ソフトリソグラフィー、又はポジティブ及びネガティブモールディング技法、鋳造技法、若しくはレーザーエッチング等の表面エッチング技法等、微細加工技法を用いることによって、マイクロパターニングすることができる。こうした技法を用いて、プラスチック(導電性又は非導電性)又は金属からナノ/マイクロパターニングされた面を生成することができる。これらの技法は、誘電材料層230に直接、又は後に誘電材料層230に接合若しくは接着することができる別個の基板に適用することができる。触覚出力デバイス170の一実施形態を製造するために使用することができる製造技法の一例については、全体として引用することにより本明細書の一部をなす、D. Ruffatto III他による「Improving controllable adhesion on both rough and smooth surfaces with a hybrid electrostatic/gecko-like adhesive」(Journal of the Royal Society Interface 11: 20131089 (2014))に記載されている。外面240に生成された微細構造は、
図3に示すように、複数のマイクロウェッジ(microwedge)を含むことができる。一実施形態では、微細構造は、複数のフィブリル、又は表面積の大きい他の要素を含むことができる。一実施形態では、微細構造は、ヤモリの足の微細構造を模倣するように構成し、ヤモリ状微細構造であるとみなすことができる。
【0031】
誘電材料層230にマイクロパターニングされた表面240が生成されない実施形態では、表面に絶縁体として誘電材料の非常に薄い層を堆積させることができる。外面240をマイクロ(又はナノ)パターニングすることにより、電極220、222、224に電界を印加することなく、外面240と、外面240と接触している別の面250との間の相互作用を増大させることができる。パターニングは、多面体、マイクロピラー、球形ドット等の特徴を含むことができる。
【0032】
図2及び
図3に関連する更に別の実施形態では、本明細書に記載するように2つの接触領域の間の接触面積を増大させるようにパターニングされた表面に加えて又はその代わりに、印加電圧を上昇させ、そのため、2つの接触面の間の誘引力を有効に増大させることにより、同様の又は改善された効果を達成することができる。電圧は、誘電材料の厚さ及び誘電強度値に応じて数百ボルト〜数千ボルトの範囲とすることができる。一般に、電圧が高いほど力が大きくなる。
【0033】
電圧源Vによって電極220、222、224に電位が与えられるとき、触覚出力デバイス170の外面240と、外面240と接触している表面250との間に、静電付着力を発生させることができ、それにより、電子機器100のユーザーは、触覚効果として外面240と表面250との間の付着力の増大を感じることができる。
【0034】
図1に戻ると、コントローラー120は、電子機器100の動作及び機能を管理又は制御する汎用若しくは専用プロセッサ又はマイクロコントローラーとすることができる。例えば、コントローラー120は、視覚的情報を与えるためにディスプレイ160に対する出力信号と、触覚効果をもたらすために触覚出力デバイス170に対する出力信号とを制御するように、特定用途向け集積回路(「ASIC」)として特に設計することができる。幾つかの実施形態では、コントローラー120は、触覚出力デバイス170の一部とすることができる。コントローラー120は、事前に定義された要素に基づいて、発生させるべき触覚効果(複数の場合もあり)のタイプ(複数の場合もあり)、触覚効果が発生する順序、並びに、触覚効果の大きさ、頻度、持続時間及び/又は他のパラメーターを求めるように構成することができる。コントローラー120はまた、特定の触覚効果をもたらすように触覚出力デバイス170を駆動するために使用することができるストリーミングコマンドを与えるように構成することもできる。幾つかの実施形態では、コントローラー120は、実際には、複数のプロセッサを含むことができ、その各々が、電子機器100内で幾つかの機能を実行するように構成されている。
【0035】
図4は、コントローラー120の一実施形態のより詳細な図を示す。コントローラー120は、1つ又は複数のコンピュータープログラムモジュールを実行するように構成することができる。1つ又は複数のコンピュータープログラムモジュールは、コンテンツ提供モジュール122、入力判定モジュール124、触覚効果決定モジュール126、触覚出力デバイス制御モジュール128及び/又は他のモジュールのうちの1つ又は複数を含むことができる。コントローラー120は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、ハードウェア及び/若しくはファームウェアの何らかの組合せ、並びに/又はコントローラー120における処理能力を構成するための他の機構により、モジュール122、124、126及び/又は128を実行するように構成することができる。
【0036】
モジュール122、124、126及び128は、
図4では、単一処理ユニット内にともに配置されているものとして示されているが、コントローラー120が複数の処理ユニットを含む実施形態では、モジュール122、124、126及び/又は128のうちの1つ又は複数は他のモジュールから遠隔に位置することができることが理解されるべきである。後述する異なるモジュール122、124、126及び/又は128によって提供される機能の説明は、モジュール122、124、126及び/又は128のうちのいずれも記載するものより多いか又は少ない機能を提供することができるため、例示を目的とし、限定するように意図されていない。例えば、モジュール122、124、126及び/又は128のうちの1つ又は複数をなくすことができ、その機能のうちの幾つか又は全てを、モジュール122、124、126及び/又は128のうちの他のものによって提供することができる。別の例として、コントローラー120は、以下、モジュール122、124、126及び/又は128のうちの1つに属する機能のうちの幾つか又は全てを行うことができる、1つ又は複数の追加のモジュールを実行するように構成することができる。
【0037】
コンテンツ提供モジュール122は、ディスプレイ160を介する電子機器100のユーザーに対するコンテンツの提供を制御するように構成されている。コンテンツが、コンピュータ生成画像を含む場合、コンテンツ提供モジュール122は、ディスプレイ160を通してユーザーに表示する画像及び/又はビューを生成するように構成されている。コンテンツ、又はコンテンツが導出される情報は、
図4に示すように、コントローラー120の一部とすることができる電子記憶装置129から、又は、
図1に示すメモリデバイス130の一部等、コントローラー120とは別個とすることができる電子記憶装置からコンテンツ提供モジュール122によって取得することができる。
【0038】
入力判定モジュール124は、センサー150から入力信号を受け取るように構成されている。入力信号は、センサー150が電子機器100のユーザーの行動を検出したときに生成される。そうした行動は、ユーザーによるタッチ入力、又はユーザーが電子機器に近づくこと、すなわち、センサー150が、ユーザーがセンサー150に近接していることを検知することとすることができる。入力判定モジュール124は、入力信号の強度を意図された行動に対応する所定の閾値強度と比較することにより、検知された行動が、意図的な行動であるか、又は、センサー150への不注意の接触又はユーザーがセンサー150をわずかに横切った場合等、単なる不注意の行動であるかを判断するように構成することができる。入力判定モジュール124はまた、ユーザーが、センサー150に入力を与えているか又は電子機器100に向かって行動をとっているときに何を意図したかを判断するようにも構成されている。例えば、ユーザーは、センサー150の一定位置にタッチし、又は電子機器100によって一定の機能が実行されるべきであることを示す特定のジェスチャーをセンサー150に与えることができる。入力判定モジュール124は、所定のジェスチャー及びセンサー150上のタッチ位置のライブラリを用いてプログラムすることができる。それにより、ユーザーが、センサー150の特定の位置にタッチするか、又はセンサー150にジェスチャーを与えると、入力判定モジュール124は、対応する出力を決定することができる。
【0039】
例えば、電子機器100がスマートフォンの形態である実施形態では、ユーザーは、自身の指でセンサー150上に記号を描くことができ、入力判定モジュール124は、描かれた記号が、ユーザーがスマートフォンと自由にインタラクトすることができるようにスマートフォンのロックを解除する等、特定のコマンドに対応すると判断することができる。センサー150が近接センサー又は存在センサーである実施形態では、入力判定モジュール124は、センサー150がセンサー150に近接しているユーザーを検知する時間の持続時間に基づいて、対応する出力を判断するようにプログラムすることができる。
【0040】
一実施形態では、入力判定モジュール124は、タイマー等、リモートデバイスから信号を受け取るように構成することができ、リモートデバイスは、センサー150から受け取られた信号の代わりに又はそれに加えて、触覚効果が生成されるべきであることを示す入力を与える。さらに、入力判定モジュール124はまた、触覚効果決定モジュール126及び/又は触覚出力デバイス制御モジュール128に信号を出力することもでき、それにより、入力が検出され及び/又は許容されたことを確認する触覚効果をユーザーにもたらすことができる。
【0041】
触覚効果決定モジュール126は、触覚出力デバイス170によって生成され電子機器100のユーザーに出力されるべき触覚効果又は感覚を決定するように構成されている。触覚効果の決定は、触覚効果のタイプ、及び、大きさ、頻度、持続時間等、触覚効果の1つ又は複数のパラメーターを求めることを含むことができる。
【0042】
触覚出力デバイス制御モジュール128は、触覚効果決定モジュール126によって決定された触覚効果を発生させるように触覚出力デバイス170を制御するように構成されている。これは、コントローラー120によって生成された触覚出力信号を、バス140を介して触覚出力デバイス170に通信することを含む。一実施形態では、触覚出力デバイス制御モジュール128に属する機能の少なくとも一部を、触覚出力デバイス170が所有するコントローラー又はプロセッサに配置することができる。
【0043】
本発明の実施形態による触覚出力デバイス170は、種々の実施態様において電子機器100において使用することができる。一実施形態では、センサー150を用いて、触覚出力デバイス170を含む電子機器100に向かうユーザーの行動を検出することができ、それにより、触覚出力デバイス170によって静電付着(electro-adhesion)を作動させて触覚効果をもたらすことができる。例えば、電子機器100がスマートフォンであり、スマートフォンのユーザーが、スマートフォンを引くか又は持ち上げ、スマートフォンとスマートフォンのすぐ下の接触面との間の摩擦/付着の増大を感じたとき、触覚効果は、ユーザーに対して、未読の電子メール若しくはテキストメッセージ又は不在着信があることを示すことができる。
【0044】
図5に示す電子機器500の一実施形態では、触覚出力デバイス170は、電子機器500用のハウジング510又はケースに適用することができ、電子機器500はスマートフォンとすることができる。例えば、上述した触覚出力デバイス170は、電子機器500のハウジング510の背面520にパッチ530として適用することができる。一実施形態では、電子機器500のユーザーは、電子機器500をつかんだときに電子機器500と下にある接触面との間の付着力の増大を感じることができ、それは、ユーザーが、例えば新たな電子メール又はテキストメッセージを受け取ったことを意味する。一実施形態では、電子機器500のユーザーは、パッチ530に直接タッチし、ユーザーが電子機器をつかんだときに電子機器500とユーザーの皮膚との間の付着力の増大を感じることができ、それは、ユーザーが、例えば新たな電子メール又はテキストメッセージを受け取ったことを意味する。
【0045】
一実施形態では、ハウジング用のカバーの内側面に触覚出力デバイス170を設けることができ、ユーザーが、カバーを開こうと試み、カバーとハウジング又はスマートフォンとの間の付着力の増大を感じたとき、ユーザーが新たな電子メール若しくはテキストメッセージを受け取ったか、又は電話を受け損ねたことをユーザーに対して通知することができる。
【0046】
図6に示す一実施形態では、触覚出力デバイス170は、回転つまみ600とともに、下にある面との回転つまみ600の摩擦/付着力を制御するように実施することができる。図示する実施形態では、触覚出力デバイス170は、ハウジング620の上面610の回転つまみ600のすぐ下に設けられている。一実施形態では、回転つまみ600の外面に触覚出力デバイス170を設けることができる。回転つまみ600を回しているユーザーにもたらされる触覚効果は、ユーザーが回転つまみ600を間違った方向に回したとき、増大した付着力/摩擦の形態とすることができる。他の触覚効果としては、回り止め(detent)、障壁(barrier)及び衝突(bump)が挙げられる。
【0047】
一実施形態では、ラップトップスクリーンのコーナーに触覚出力デバイス170を適用して、ユーザーがラップトップを開いたときに触覚出力デバイス170のラップトップの基部との付着力を制御することができる。ユーザーは、触覚出力デバイス170によって与えられる抵抗を感じたとき、電子メールの下書きを終了していないか、又は電子メールを送信するために送信ボタンを押すのを忘れていたことに気付くことができる。一実施形態では、コンピューターマウスのすぐ下で、マウスパッド又は支持面との触覚出力デバイス170の付着を制御して、ユーザーに対する触覚効果を発生させるように、触覚出力デバイス170を実施することができる。本発明の実施形態は、電子機器において互いに対して1つ又は複数の部品を移動させる(例えば、上下、摺動、折畳み、持上げ、引張り等)必要がある用途において実施することができ、それにより、電子機器と、触覚出力デバイス170と接触している面との間の付着力/摩擦の制御を用いて、ユーザーに対して通知を与えることができる。
【0048】
上述した触覚出力デバイス170に加えて、電子機器100は、入出力デバイス110の一部として複数の触覚出力デバイスを含むことができ、振動、変形、運動感覚、静電又は超音波摩擦等、触覚効果をもたらす方法のうちの任意のものによって、追加の触覚フィードバックをもたらすことができる。一実施形態では、追加の触覚出力デバイスは、アクチュエーター、例えば、偏心質量がモーターによって移動する偏心回転質量(「ERM」)等の電磁アクチュエーター、ばねに取り付けられた質量が前後に駆動されるリニア共振アクチュエーター(「LRA」)、又は圧電材料、イオン系又は電子系の電気活性ポリマー、形状記憶材料、スマートヒドロゲル等の「スマート材料」、マクロコンポジットファイバー(macrocomposite fiber)アクチュエーター、静電アクチュエーター、電気触知性(electrotactile)アクチュエーター、ナノコンポジットアクチュエーター、空気圧式アクチュエーター、及び/又は振動触覚フィードバック等の物理的フィードバックをもたらす別のタイプのアクチュエーターを含むことができる。追加の触覚出力デバイスは、静電摩擦(ESF)、超音波摩擦(USF)を使用するデバイス、又は超音波触覚変換器を用いて音響放射圧を誘発するデバイス、又は触覚基板及び可撓性若しくは変形可能な表面を使用するデバイス、又は熱効果をもたらすデバイス、又はエアジェットを用いて空気パフ等の噴出された触覚出力をもたらすデバイス等、非機械的又は非振動性デバイスを含むことができる。
【0049】
図7は、本発明の実施形態による、上述した触覚出力デバイス170等、触覚出力デバイスを用いて触覚効果を発生させる方法700を示す。図示するように、方法は710で開始する。720において、方法は、コントローラーにより、電子機器のユーザーの行動を検知するように構成されたセンサーから入力信号を受け取ることを含む。センサーは、上述したセンサー150とすることができ、コントローラーは、上述したコントローラー120とすることができる。730において、方法は、コントローラーにより、入力信号に基づいて触覚出力デバイスによって生成される触覚効果を決定することを含む。740において、方法は、触覚出力デバイスの電極のアレイにわたって電位をかけることにより、触覚出力デバイスの露出した外面と接触面との間に触覚効果として静電付着力を発生させることを含む。方法は750で終了する。一実施形態では、方法はまた、コントローラーにより、電子機器が電子メール又はテキストメッセージを受け取ったというインジケーションを受け取ることも含み、触覚効果は、そのインジケーション及び入力信号に基づいてコントローラーによって決定される。
【0050】
静電付着に基づく触覚出力デバイスと、静電付着に基づく触覚出力デバイスを組み込んだ電子機器との他の実施形態は、確認効果として接触面にある場合がある。一例では、ユーザーがタッチセンシティブ面にタッチすると、ユーザーの行動を確認するためにその効果が起動され、ユーザーは粘着面を感じるか、又はインタラクションが記録されていなかった場合は、何も感じない。
【0051】
本明細書に記載した実施形態は、複数のあり得る実施態様及び例を表し、必ずしも本開示をいずれかの特定の実施形態に限定するようには意図されていない。当業者には理解されるように、これらの実施形態に対して様々な変更を行うことができる。任意のこうした変更は、本開示の趣旨及び範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されるように意図されている。
【0052】
本明細書で言及した全ての米国特許及び米国特許出願公開は、全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【外国語明細書】