【課題】平板状ケーブルが傾斜した姿勢で挿入されても、平板状ケーブルが損傷を受けることがなく、平板状ケーブルを容易に挿入することができ、かつ、平板状ケーブルが外れることがなく、構造が簡素で、コストが低く、信頼性が高くなるようにする。
【解決手段】幅方向外側に突出する係合用凸部を有する平板状ケーブルが挿入される挿入口を含むハウジングと、ハウジングに装填され、平板状ケーブルの導電線と電気的に接続する端子と、ハウジングに取付けられたロック部材であって、挿入口に挿入された平板状ケーブルをロックするロック部材とを備えるコネクタであって、ロック部材は、ハウジングの上下方向に変位可能な自由端を含むばね部材と、ばね部材の自由端に接続された係合突起であって、平板状ケーブルの挿入方向手前側に形成された傾斜縁部を含む係合突起とを含み、傾斜縁部は、平面視において、平板状ケーブルの挿入方向に対して傾斜している。
前記係合突起は、前記平板状ケーブルの挿入方向奥側に形成された垂直縁部を含み、該垂直縁部が前記係合用凸部と係合して前記平板状ケーブルをロックする請求項1又は2に記載のコネクタ。
前記係合突起は、前記挿入口の両端のロック用凹部内に位置し、該ロック用凹部におけるハウジングの幅方向中心と反対側は、ハウジングの前面から突出する前方凸部の側壁部によって画定され、
該側壁部は、前記平板状ケーブルの挿入方向手前側に形成された傾斜面であって、前記平板状ケーブルの挿入方向手前に向うに連れてハウジングの幅方向中心からの距離が漸増するように傾斜している傾斜面を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル回路基板(FPC)、フレキシブルフラットケーブル(FFC)等と称される平板状ケーブルを接続するためにケーブル用のコネクタが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図7は従来のコネクタを示す斜視図である。
【0004】
図において、811は、絶縁性材料から成るコネクタのハウジングであり、平板状ケーブル901の先端部が挿入されて収容されるケーブル挿入凹部813が形成されている。該ケーブル挿入凹部813内には複数の図示されない端子が取付けられ、該端子の各々は、平板状ケーブル901の先端部において表面に露出する導電トレース951の各々と接触可能となっている。そして、前記コネクタは、図示されない回路基板等の基板上に実装されて使用される。これにより、ハウジング811のケーブル挿入凹部813内に挿入された平板状ケーブル901の導電トレース951は、前記端子を介して、前記基板の導電トレースと電気的に接続される。
【0005】
また、前記コネクタは、ハウジング811に保持されるロック部材881を有する。該ロック部材881は、前記ケーブル挿入凹部813の両端に接続されたロック収容凹部817内に収容されて保持される。そして、前記ロック部材881は、後方から前方に向けて延出するカンチレバー状の可動アーム部883と、該可動アーム部883の先端近傍に形成された上方に向けて突出する係合突起885及び解除操作片886とを備える。前記係合突起885は、略三角形状の側面形状を備え、前側に斜辺が形成されている。また、前記解除操作片886の上端は、ロック収容凹部817の天井に形成されたスリットを通して、ハウジング811の上面に突出している。
【0006】
そして、平板状ケーブル901の先端部がハウジング811の前方からケーブル挿入凹部813に挿入されると、前記平板状ケーブル901の先端部における左右の側端部分は、ロック収容凹部817に挿入される。すると、前記側端部分が係合突起885の前側の斜辺に乗上げるようにして進行するので、前記可動アーム部883が弾性的に変形し、係合突起885は押下げられる。そして、平板状ケーブル901の先端部がケーブル挿入凹部813の奥に向けて更に進行し、平板状ケーブル901の先端部における側端部分に形成された切欠部914が係合突起885の位置に到達すると、前記可動アーム部883のばね力によって、係合突起885が上昇させられて、切欠部914と係合する。
【0007】
これにより、平板状ケーブル901は、ロックされるので、ハウジング811から不必要に抜けて外れることがない。なお、平板状ケーブル901を取外す場合には、解除操作片886を下方に変位させることによって、係合突起885が下降させられて、切欠部914との係合が解除され、平板状ケーブル901のロックが解除される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は第1の実施の形態におけるコネクタの斜視図、
図2は第1の実施の形態におけるコネクタの分解図、
図3は第1の実施の形態におけるコネクタのシェルの斜視図である。なお、
図3において、(a)は一部を破断した図、(b)は(a)に平板状ケーブルを付加した図である。
【0021】
図において、1は本実施の形態におけるケーブル用コネクタとしてのコネクタであり、図示されない回路基板等の基板の面に実装され、フレキシブル回路基板、フレキシブルフラットケーブル等と称され、図示されない導電線を備える平板状ケーブル101を電気的に接続するために使用される。ここでは、説明の都合上、前記コネクタ1が、いわゆるNON−ZIF(Zero Insertion Force)構造のケーブル用コネクタであって、アクチュエータ等の可動部材を必要とせず、平板状ケーブル101を挿入口13に挿入するだけで、平板状ケーブル101を接続することができるタイプのものであるとして説明するが、いわゆるZIF構造のケーブル用コネクタであってもよいし、アクチュエータ等の可動部材を必要とするケーブル用コネクタであってもよい。また、前記平板状ケーブル101は、導電線(導電トレース)を備える平板状のケーブルであれば、いかなる種類のものであってもよい。
【0022】
なお、本実施の形態において、コネクタ1及び平板状ケーブル101に含まれる各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、コネクタ1及び平板状ケーブル101に含まれる各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、コネクタ1及び平板状ケーブル101に含まれる各部の姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0023】
前記コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたハウジング11と、金属等の導電性材料によって一体的に形成され、平板状ケーブル101の導電線と電気的に接続する複数の端子51と、金属板等によって一体的に形成され、ハウジング11に取付けられるカバー部材としてのシェル71とを有する。
【0024】
そして、前記ハウジング11は、下部12、上部15、左右の側部16、並びに、前記下部12、上部15及び側部16の間に形成され、前方(
図1及び2における左下方)から平板状ケーブル101が挿入される開口部としての挿入口13を有する。本実施の形態においては、該挿入口13の入口側(
図1及び2における左下側)の面をコネクタ1又はハウジング11の前面11fと呼び、前記挿入口13の奥側(
図1及び2における右上側)の面をコネクタ1又はハウジング11の後面11rと呼び、前記挿入口13を含め、下部12、上部15及び側部16から成る部分を本体部19と呼ぶこととする。
【0025】
前記ハウジング11の下部12には前記端子51が装填される端子受入溝14が複数形成されている。該端子受入溝14は、所定のピッチ(例えば、0.5〔mm〕)で並んで形成され、各端子受入溝14には端子51が1つずつ装填されるようになっている。なお、端子51は、例えば、金属板に打抜き加工、曲げ加工等を施すことによって形成され、端子受入溝14に装填される。また、必ずしもすべての端子受入溝14に端子51が装填される必要はなく、平板状ケーブル101の導電線の配列に対応させて、端子51を適宜省略することができる。
【0026】
該端子51は、端子受入溝14に挟持されて保持される本体部52と、該本体部52の前端から前方斜め上に向って延出する腕部53と、該腕部53の先端近傍に形成され、上方に向けて膨出するように湾曲した接触部54と、前記本体部52の後端から下方に向って延出する基板接続部としてのテール部58とを有する。該テール部58の下端は、後方に向って延出し、その下面が前記基板の面に形成された接続パッドに、はんだ付等の導電性の固着手段によって固着される。これにより、端子51は、前記接続パッドに接続された図示されない導電トレースに電気的に接続される。また、前記接触部54は、平板状ケーブル101の下面に露出する導電線と電気的に接続する。
【0027】
ここで、平板状ケーブル101は、
図3(b)に示されるように、細長い帯状の形状を備える絶縁性の薄板部材である基板部111、及び、該基板部111の一面(図に示される例では下面)に配設された複数本の図示されない導電線を有する。なお、
図3(b)においては、平板状ケーブル101におけるコネクタ1の前面11fに開口する挿入口13に挿入される先端115の近傍部分のみが示されており、他の部分は省略されている。また、前記導電線は、例えば、銅等の導電性金属から成る箔状の線状体であり、所定のピッチ(例えば、0.5〔mm〕)で並列に配設され、電気的絶縁性を示すフィルム状の絶縁層によって表面が被覆されているが、平板状ケーブル101における先端115から所定の長さに亘る範囲では、前記絶縁層が除去され、導電線の面が露出している。そして、導電線の露出した面が下側となるようにして、前記挿入口13に挿入されるものとする。
【0028】
また、前記平板状ケーブル101の先端115の近傍には、平板状ケーブル101の左右両側の側端112から幅方向内側に凹入する凹部114、及び、該凹部114に対して相対的に幅方向外側に突出する係合用凸部としての耳部113が形成されている。なお、図に示される例において、前記耳部113は側端112に対しては幅方向外側に突出するものでなく、耳部113の側端の位置は、前記側端112と同様である。また、前記耳部113は平板状ケーブル101の先端115から所定距離内に形成され、前記凹部114は耳部113の後方に隣接して位置する。
【0029】
前記シェル71は、ハウジング11の上部15の上面の少なくとも一部を覆う上板部72と、ハウジング11の下部12の下面の少なくとも一部を覆う下板部73と、ハウジング11の後面11rの少なくとも一部を覆う後板部75と、ハウジング11の側部16の外側面の少なくとも一部を覆う側板部76とを備える。そして、前記上板部72、下板部73及び側板部76の前端縁には、単数又は複数の前方に向って延出する上取付片72a、下取付片73a及び側取付片76aが一体的に接続されている。また、前記後板部75には、単数又は複数の前方に向って延出する中間取付片75aが一体的に接続されている。そして、前記上取付片72a、中間取付片75a、下取付片73a及び側取付片76aが、前面11fに開口するようにハウジング11に形成された上取付凹部11c、中間取付凹部11b、下取付凹部11a及び側取付凹部11dに嵌入されることによって、シェル71がハウジング11に取付けられて固定される。また、前記側板部76の下端からは、基板接続部としてのテール部77が、外方に向って延出する。該テール部77は、その下面が前記基板の面に形成された固定用パッドに、はんだ付等の固着手段によって固着される。
【0030】
さらに、前記シェル71は、左右の側板部76の内側に該側板部76に隣接して配設されたロック部材としてのケーブル保持部81を備える。該ケーブル保持部81は、後板部75から前方(平板状ケーブル101の挿入方向手前方向)に向って延出する本体部83と、該本体部83の側縁に接続された取付部86と、前記本体部83の先端の側縁に接続された係合突起85とを含んでいる。
【0031】
そして、前記シェル71がハウジング11に取付けられた状態において、前記ケーブル保持部81は、ハウジング11の前面11fに幅方向に細長く延在するように開口する挿入口13の幅方向両端に形成されたロック用凹部17内に収容される。なお、前記ハウジング11の挿入口13の幅方向両端には、前面11fよりも前方に向って延出する前方凸部18が形成されており、前記ロック用凹部17の幅方向外側(ハウジング11の幅方向中心と反対側)は、前記前方凸部18の側壁部18aによって画定されている。また、両側の側壁部18aの内側面の前端近傍は、前方に向うに連れてハウジング11の幅方向中心からの距離が漸増するようなテーパ状の傾斜面18bとなっている。
【0032】
前記ケーブル保持部81の取付部86は、前記側壁部18aに取付けられて固定される。そして、前記ケーブル保持部81の本体部83における少なくとも取付部86よりも前方の部分は、ハウジング11の上下方向(ハウジング11の幅方向及び平板状ケーブル101の挿入方向に直交する方向)に弾性的に変形可能な板ばねであるばね部材としてのカンチレバー部83aとなっている。したがって、該カンチレバー部83aの自由端に接続された係合突起85は、ハウジング11の上下方向に弾性的に変位可能である。
【0033】
図に示される例において、前記係合突起85は、前後方向及び幅方向に延在する板状の本体部83から上方向にほぼ垂直に延出する板状の突出片であり、略直角三角形のような側面形状を有する。そして、該側面形状における斜辺に相当する係合突起85の前側の上端部は、後方(平板状ケーブル101の挿入方向の奥方向)に向うに連れて高くなるように傾斜した誘込み傾斜部としての傾斜縁部85aとなっている。また、該傾斜縁部85aの後端に接続された係合突起85の後端部は、本体部83に対してほぼ垂直な垂直縁部85bとなっている。したがって、平板状ケーブル101が挿入口13に挿入される際に、
図3(b)に示されるように、耳部113は、傾斜縁部85aに沿って進行し、スムーズに係合突起85に乗上げることができる。そして、該係合突起85が凹部114内に進入すると、垂直縁部85bが凹部114の前端、すなわち、耳部113の後端と係合するので、係合の解除が効果的に防止される。
【0034】
また、前記係合突起85は、上方から視た状態において、すなわち、平面視において、前後方向(平板状ケーブル101の挿入方向)に対して傾斜している。具体的には、平面視において、傾斜縁部85aは、前後方向に延在しておらず、前方(平板状ケーブル101の挿入方向の手前方向)に向うに連れてハウジング11の幅方向中心からの距離が漸減するように傾斜して延在している。そのため、係合突起85における内側側面85cは、前方に向うに連れてハウジング11の幅方向中心からの距離が漸減するように傾斜している。
【0035】
これにより、
図3(b)に示されるように、平板状ケーブル101が傾斜した姿勢で挿入口13に挿入される場合、すなわち、平面視において、ハウジング11の前面11fと平板状ケーブル101の先端115とが、互いに平行ではなく、傾斜している姿勢であって、一方(図に示される例において左方)の耳部113がハウジング11の幅方向中心側(図に示される例において右側)から係合突起85に当接するような場合であっても、前記耳部113は、傾斜縁部85aに乗上げることができる。したがって、耳部113は、傾斜縁部85aに沿って進行することができる。なお、
図3(b)においては、耳部113と係合突起85との位置関係の理解を容易にするために、左側のケーブル保持部81の一部が破断されていることに留意されたい。
【0036】
次に、前記構成のコネクタ1に平板状ケーブル101を接続する動作について説明する。なお、ここでは、平板状ケーブル101が傾斜した姿勢でコネクタ1の挿入口13に挿入される場合、すなわち、平面視において、ハウジング11の前面11fと平板状ケーブル101の先端115とが、互いに平行ではなく、傾斜している姿勢で、コネクタ1に平板状ケーブル101を接続する動作について説明する。
【0037】
図4は第1の実施の形態におけるコネクタに平板状ケーブルを接続する動作を説明する第1の図、
図5は第1の実施の形態におけるコネクタに平板状ケーブルを接続する動作を説明する第2の図である。なお、
図4において、(a)はコネクタの正面図、(b)は(a)におけるA−A矢視断面を含むコネクタと平板状ケーブルとの位置関係を示す第1の図であり、
図5において、(a)は
図4(a)におけるA−A矢視断面を含むコネクタと平板状ケーブルの位置関係を示す第2の図、(b)は
図4(a)におけるA−A矢視断面を含むコネクタと平板状ケーブルとの位置関係を示す第3の図である。
【0038】
まず、オペレータは、手指等によって、平板状ケーブル101をコネクタ1に位置させ、平板状ケーブル101の先端115をコネクタ1の挿入口13に対向させる。このとき、平面視において、ハウジング11の前面11fと平板状ケーブル101の先端115とが互いに平行であることが望ましいが、コネクタ1が電気機器、電子機器等の装置内の奥まった箇所に実装されている場合のように、ハウジング11の前面11fの視認が困難であったり、平板状ケーブル101の姿勢制御が困難であったりする場合には、平板状ケーブル101が傾斜した姿勢、すなわち、平面視において、ハウジング11の前面11fと平板状ケーブル101の先端115とが互いに傾斜している姿勢となることがある。
【0039】
このような場合、オペレータが平板状ケーブル101をコネクタ1に対して相対的に前進させると、
図4(b)に示されるように、一方(図に示される例において左方)の耳部113だけが先行して挿入口13の幅方向一端(図に示される例において左端)に連結されたロック用凹部17内に進入する。この際、該ロック用凹部17の幅方向外側には、前面11fよりも前方に向って延出する前方凸部18が存在しているので、平板状ケーブル101の先端115近傍の一方の側端112は、前記前方凸部18の側壁部18aの内側面に当接して停止する。なお、該側壁部18aの内側面の前端近傍が傾斜面18bとなっているので、前記側端112は、当接しても損傷を受けることがない。
【0040】
オペレータが平板状ケーブル101を更に前進させると、該平板状ケーブル101は、側端112における側壁部18aの傾斜面18bに当接している部分を中心として、平面視において回動し、
図5(a)に示されるように、他方(図に示される例において右方)の耳部113が挿入口13の幅方向他端(図に示される例において右端)に連結されたロック用凹部17に向って進行する。この際、平板状ケーブル101が回動することによって、前記一方の耳部113は、ハウジング11の幅方向中心側(図に示される例において右側)から係合突起85に当接する。つまり、図において、左側の耳部113は、左側の側端112における側壁部18aの傾斜面18bに当接している部分を中心として反時計回り方向に回動し、左側の係合突起85に対し、右から左に進行して当接する。
【0041】
ここで、係合突起85は、平面視において、前後方向に対して傾斜し、傾斜縁部85aは、前方に向うに連れてハウジング11の幅方向中心からの距離が漸減するように傾斜している。図において、左側の係合突起85は、その傾斜縁部85aの先端が斜め右下方向に向うように傾斜している。なお、前記傾斜縁部85aは、前方(図における下方)に向うに連れて低くなるように傾斜している。
【0042】
したがって、一方の耳部113は、係合突起85の傾斜縁部85aに乗上げ、該傾斜縁部85aに沿って進行することができる。つまり、図において、左側の耳部113は、左側の係合突起85の傾斜縁部85aに乗上げ、該傾斜縁部85aに沿って更に左にスムーズに進行することができる。この際、カンチレバー部83aが弾性的に変形可能なので、係合突起85は、耳部113によって押下げられ、弾性的に下方に変位する。これにより、前記耳部113は、傾斜縁部85aの内側側面85cに当接して損傷を受けることがない。
【0043】
そして、平板状ケーブル101が更に回動すると、他方(図に示される例において右方)の耳部113が挿入口13の幅方向他端(図に示される例において右端)に連結されたロック用凹部17内に進入し、係合突起85の傾斜縁部85aに乗上げる。
【0044】
このように、両方の耳部113が挿入口13の幅方向両端に連結されたロック用凹部17内に進入して係合突起85の傾斜縁部85aに乗上げた状態で、オペレータが平板状ケーブル101を更に前進させると、両方の耳部113は、係合突起85を押下げつつ、傾斜縁部85aに沿って更に進行する。そして、耳部113の後方に隣接する凹部114が係合突起85の真上に到達すると、該係合突起85は、カンチレバー部83aのばね力によって上方に急激に復帰し、
図5(b)に示されるように、凹部114内に進入して係合する。この際、両方の係合突起85がカンチレバー部83aのばね力によって上方に急激に復帰したことにより生じる衝撃を、オペレータは、クリック感として感知することができる。また、垂直縁部85bが凹部114の前端、すなわち、耳部113の後端と係合するので、係合の解除が効果的に防止される。
【0045】
これにより、平板状ケーブル101のコネクタ1への接続が完了し、平板状ケーブル101が一対のケーブル保持部81によって保持されてロックされ、コネクタ1から平板状ケーブル101が外れることが防止される。また、オペレータは、前記クリック感を感知することによって、平板状ケーブル101のコネクタ1への接続が完了したことを確認することができる。
【0046】
なお、平板状ケーブル101がコネクタ1に対して傾斜した姿勢となることなく、先端115がハウジング11の前面11fと平行な状態を維持したままで、平板状ケーブル101の先端115をコネクタ1の挿入口13に挿入させることができた場合には、両方の耳部113が挿入口13の幅方向両端に連結されたロック用凹部17内に進入して係合突起85の傾斜縁部85aに乗上げることとなる。そして、両方の係合突起85が凹部114内に進入して耳部113の後端と係合し、平板状ケーブル101が一対のケーブル保持部81によって保持されてロックされ、平板状ケーブル101のコネクタ1への接続が完了する。
【0047】
このように、本実施の形態において、コネクタ1は、幅方向外側に突出する耳部113を有する平板状ケーブル101が挿入される挿入口13を含むハウジング11と、ハウジング11に装填され、平板状ケーブル101の導電線と電気的に接続する端子51と、ハウジング11に取付けられたケーブル保持部81であって、挿入口13に挿入された平板状ケーブル101をロックするケーブル保持部81とを備える。そして、ケーブル保持部81は、ハウジング11の上下方向に変位可能な自由端を含むカンチレバー部83aと、カンチレバー部83aの自由端に接続された係合突起85であって、平板状ケーブル101の挿入方向手前側に形成された傾斜縁部85aを含む係合突起85とを含み、傾斜縁部85aは、平面視において、平板状ケーブル101の挿入方向に対して傾斜している。より具体的には、傾斜縁部85aは、平板状ケーブル101の挿入方向手前に向うに連れてハウジング11の幅方向中心からの距離が漸減するように傾斜している。
【0048】
これにより、平板状ケーブル101が傾斜した姿勢で挿入口13に挿入されても、平板状ケーブル101の耳部113等の部分が損傷を受けることがなく、平板状ケーブル101を容易に挿入することができる。また、両側の係合突起85が平板状ケーブル101の両側の耳部113と確実に係合するので、平板状ケーブル101が確実にロックされ、平板状ケーブル101がコネクタ1から外れることがない。さらに、コネクタ1の構造が簡素なので、コネクタ1のコストを低減することができ、コネクタ1の信頼性を向上させることができる。
【0049】
また、係合突起85は、平板状ケーブル101の挿入方向奥側に形成された垂直縁部85bを含み、垂直縁部85bが耳部113と係合して平板状ケーブル101をロックする。したがって、平板状ケーブル101の耳部113が確実にロックされるので、平板状ケーブル101がコネクタ1から外れてしまうことが、効果的に防止される。
【0050】
さらに、係合突起85は、挿入口13の両端のロック用凹部17内に位置し、ロック用凹部17におけるハウジング11の幅方向中心と反対側は、ハウジング11の前面11fから突出する前方凸部18の側壁部18aによって画定され、側壁部18aは、平板状ケーブル101の挿入方向手前側に形成された傾斜面18bであって平板状ケーブル101の挿入方向手前に向うに連れてハウジング11の幅方向中心からの距離が漸増するように傾斜している傾斜面18bを含む。これにより、平板状ケーブル101は、側端112が傾斜面18bに当接している部分を中心に回動し、傾斜した姿勢を正しい姿勢、すなわち、先端115がハウジング11の前面11fと平行な姿勢に修正することができる。なお、側端112は、傾斜面18bに当接しても損傷を受けることがない。
【0051】
さらに、カンチレバー部83aは、平板状ケーブル101の挿入方向に延在するカンチレバー状の板ばねである。したがって、カンチレバー部83aの自由端に接続された係合突起85は、スムーズに上下方向に変位することができ、平板状ケーブル101に損傷を与えることなく、平板状ケーブル101を確実にロックすることができる。
【0052】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0053】
図6は第2の実施の形態におけるコネクタのシェルの斜視図である。
【0054】
本実施の形態におけるコネクタ1のシェル71は、図に示されるような形状のケーブル保持部81を有する。該ケーブル保持部81は、シェル71がハウジング11に取付けられた状態において、ロック用凹部17内に収容される。なお、図には、都合により、シェル71のほぼ左半分のみが示され、シェル71のほぼ右半分は省略されている。
【0055】
そして、前記ケーブル保持部81の本体部83は、後板部75から前方に向って延出する下部83bと、該下部83bの先端に接続され、上向きに180度曲がった後、後方に向って延出するUターン部83cと、該Uターン部83cの先端に接続され、後方に向って延出する上下方向に弾性的に変形可能なカンチレバー部83aとを含んでいる。なお、側壁部18aに取付けられて固定される取付部86は、前記Uターン部83cの先端の側縁に接続されている。
【0056】
また、カンチレバー部83aの先端側縁には、係合突起85が接続されている。該係合突起85は、前記第1の実施の形態における係合突起85と同様の構成を備え、該係合突起85の前側の上端部は、後方に向うに連れて高くなるように傾斜した傾斜縁部85aであり、該傾斜縁部85aの後端に接続された係合突起85の後端部は、カンチレバー部83aに対してほぼ垂直な垂直縁部85bとなっている。さらに、前記係合突起85は、平面視において、前後方向に対して傾斜し、具体的には、傾斜縁部85aは、前後方向に延在しておらず、前方に向うに連れてハウジング11の幅方向中心からの距離が漸減するように傾斜して延在している。
【0057】
なお、シェル71のその他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0058】
このように、本実施の形態においては、ケーブル保持部81のカンチレバー部83aは、その自由端が平板状ケーブル101の挿入方向に関してトレーリング方向に向って延出する板ばねであって、係合突起85がカンチレバー部83aのトレーリング方向端である自由端に位置する。したがって、耳部113がロック用凹部17に進入して係合突起85の傾斜縁部85aに乗上げる際に、カンチレバー部83aがスムーズに変形し、係合突起85がスムーズに下方に変位するので、前記耳部113は、係合突起85から大きな抵抗を受けることがなく、損傷を受けることがない。
【0059】
また、コネクタ1及び平板状ケーブル101の構成及び動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0060】
このように、本実施の形態において、カンチレバー部83aは、平板状ケーブル101の挿入方向手前側から奥に向けて延在するカンチレバー状の板ばねである。したがって、カンチレバー部83aの自由端に接続された係合突起85は、よりスムーズに上下方向に変位することができ、平板状ケーブル101に損傷を与える可能性がより低くなる。
【0061】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。