【解決手段】単セル10が積層されている積層体140と、第1開口部126を有しかつ積層体140が配置されるセルケース120と、第1開口部126を密閉する第1蓋部材170と、を有する。第1開口部126は、単セル積層方向Sに関する積層体140の一方の面142に相対するように位置決めされている。第1蓋部材170は、セルケース120の内部圧力が大気圧よりも低い場合に密閉を維持した状態で変形し、積層体140の一方の面142と当接し、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を、当接した面に付与するように構成されている。
前記第1蓋部材は、前記単セルを前記積層方向から平面視した状態において、積層された前記単セルのうち発電に寄与する部分よりも大きい範囲において、前記積層体の前記一方の面と当接することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池パック。
前記第1蓋部材は、前記セルケースの内部圧力が前記セルケースの外部圧力と同じである場合の状態から、前記積層方向に少なくとも1mmを超えて変形した状態において、前記積層体の前記一方の面と当接することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池パック。
前記第1蓋部材は、弾性体膜から形成されており、前記セルケースの内部圧力が前記セルケースの外部圧力よりも低い場合に弾性変形し、前記積層体の前記一方の面と当接して前記差圧に基づく圧力を、前記当接した面に付与することを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
前記正極集電体層および/又は前記負極集電体層は、導電性フィラーと樹脂とを主に含む樹脂集電体であることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の電池パック。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図面の厚み比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0010】
図1は、実施の形態1に係る電池パックを説明するための概略図、
図2は、電池パックの用途を説明するための概略図、
図3は、
図1に示される本体部を説明するための断面図、
図4は、
図3に示される第1蓋部材の減圧前の形状を説明するための断面図である。
【0011】
実施の形態1に係る電池パック100は、例えば、
図2に示される車両198の電源として適用され、
図1および
図3に示されるように、本体部110、減圧装置190および制御部194を有する。車両198は、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車である。電池パック100は、後述するように、高エネルギー密度化することが容易であるため、例えば、1回の充電あたりの走行距離を延長させることが可能である。
【0012】
本体部110は、剛性を有する材料から形成されたセルケース120、可撓性を有する材料から形成された第1蓋部材170、および第1カバープレート176を有する。本明細書において、「剛性を有する材料から形成されたセルケース120」とは、セルケース120に外部から力が作用した場合に、セルケース120が容易に変形せず、内部に配置した積層体140を十分に保護できる程度に、セルケース120が剛体であることを意味する。また、「可撓性を有する材料から形成された第1蓋部材170」とは、セルケース120の内部を減圧(セルケース120の内部圧力を外部圧力(少なくとも大気圧)よりも低くする)ことにより、外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧によって第1蓋部材が変形できる程度に、第1蓋部材170が柔軟性を有していることを意味する。後述する第2蓋部材についても同様に、「可撓性を有する材料から形成された第2蓋部材173」とは、セルケース120の内部を減圧(セルケース120の内部圧力を外部圧力(少なくとも大気圧)よりも低くする)ことにより、外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧によって第2蓋部材が変形できる程度に、第2蓋部材173が柔軟性を有していることを意味する。
【0013】
セルケース120は、高剛性の材料から形成されており、略矩形の底面122と、底面を取り囲む側壁部124とを有し、その上面が第1開口部126を構成し、その内部に、積層体140が配置されている。積層体140は、積層されている単セル10、強電タブ150,152およびスペーサー160,162を有し、第1開口部126は、単セル10の積層方向Sに関する積層体140の上面(一方の面)142に相対するように位置決めされている。
【0014】
強電タブ150および152は、例えば、略板状の銅であり、積層体140(積層された単セル10)から電流を取り出すために使用され、最下層に位置する単セル10および最上層に位置する単セル10に当接している。
【0015】
スペーサー160および162は、積層体140に付加される振動を吸収する機能を有する絶縁シートであり、強電タブ150および152の外側に配置されている。つまり、スペーサー160および162は、積層体140の上面(一方の面)142および下面(他方の面)144に位置している。スペーサー160,162は、必要に応じ、適宜省略することも可能である。
【0016】
第1蓋部材170は、第1開口部126を密閉しており、実施の形態1においては、弾性体膜から形成されている。弾性体膜は、例えば、ウレタンゴムから形成される。
【0017】
第1カバープレート176は、開口部178を有しており、第1蓋部材170を覆うように配置されて、第1蓋部材170をガードしている。第1カバープレート176は、例えば、アルミニウム等の良好な剛性を有する軽量の材料から構成されるバックアッププレートである。第1カバープレート176および第1蓋部材170は、ビス等の締結部材を利用してセルケース120に固定されている。締結部材は、電池パック100を車両198に搭載するために使用される締結部材として兼用することも可能である。
【0018】
減圧装置190は、真空ポンプから構成される圧力付与装置であり、セルケース120の内部を減圧してセルケース120の内部圧力を大気圧(外部圧力)よりも低くするために使用される。制御部194は、減圧装置190を制御するために使用される。
【0019】
第1開口部126を覆っている第1蓋部材170は、セルケース120の内部が減圧される前(セルケース120の内部圧力が大気圧と同じ場合)においては、
図4に示されるように、積層体140から離間している。そして、減圧装置190によってセルケース120の内部が減圧されると、第1蓋部材170は、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づいて、密閉を維持した状態で変形し、スペーサー160と当接して、差圧に基づく圧力を付与する。
【0020】
つまり、第1蓋部材170は、第1開口部126を密閉したまま変形可能であり、セルケース120の内部が減圧された(セルケース120の内部圧力が大気圧よりも低い)場合に変形し、積層体140の上面142と当接して差圧に基づく圧力を、当接した面に付与するように構成されており、積層体140の押し付け圧力は、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力から構成されている。したがって、例えば、セルケース120の内部を減圧する減圧装置(圧力付与装置)190の大型化を伴うことなく、単セル(電極)の面積の増加に応じてトータルの押し付け圧力も増大するため、電極の面積が大きい場合であっても、積層体140に適切な押し付け圧力を容易に付与することが可能である。
【0021】
積層体140は、上記のように、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力によって、高剛性のセルケース120に強固に固定されているため、電池パック100を車両198に固定することにより、電池パック100全体が安定する。
【0022】
また、セルケース120は、絶縁フィルム層128、強電用コネクタ130,132、排気用コネクタ134、圧力解放弁136、圧力センサー138、および、弱電用コネクタ(不図示)を、さらに有する。
【0023】
絶縁フィルム層128は、底面122および側壁部124の内壁に形成されている。底面122の絶縁フィルム層128上には、スペーサー162が位置決めされている。強電用コネクタ130,132は、側壁部124に気密的に取り付けられており、かつ、強電タブ150,152と電気的に接続されている。排気用コネクタ134は、側壁部124に気密的に取り付けられており、かつ、減圧装置190から配管の連結されている。したがって、減圧装置190は、セルケース120の内部の空気を排気して、セルケース120の内部を減圧にすることが可能である。
【0024】
圧力解放弁136は、側壁部124に気密的に取り付けられており、例えば、予期せぬ原因により、セルケース120の内部圧力が過度に上昇した際に、セルケース120内部の気体を排出し、セルケース120の内部圧力を降下させるために使用される。圧力解放弁136における気体を排出する機構は、特に限定されず、例えば、所定の圧力で開裂する金属の薄膜を利用することが可能である。
【0025】
圧力センサー138は、セルケース120の内部に配置され、セルケース120の内部圧力を計測するために使用される。弱電用コネクタ(不図示)は、側壁部124に気密的に取り付けられており、積層体140に含まれる単セルの電圧を監視(検出)するために使用される。
【0026】
減圧装置190は、圧力センサー138によって計測された内部圧力に基づいて、制御部194によって制御されており、圧力センサー138によって計測された内部圧力が上限値以上になった場合、稼働されて、セルケース120の内部を減圧するように構成されている。
【0027】
内部圧力の上限値は、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧を考慮して設定されている。したがって、セルケース120の内部圧力の予期せぬ上昇が防止される一方、良好な押し付け圧力(差圧に基づく圧力)が確保される。内部圧力の上限値は、例えば、0.25気圧に設定されており、この場合、十分な押し付け圧力を得ることが可能である。
【0028】
減圧装置190は、圧力センサー138によって計測された内部圧力が下限値に到達した場合、セルケース120の内部の減圧を停止するように構成されている。内部圧力の下限値は、例えば、0.15気圧に設定されており、この場合、多目的で利用される真空度と同レベルのため、電池パック100が搭載される装置(車両198)において別の用途で利用される減圧装置(真空源)を、減圧装置190として兼用することが可能である。
【0029】
次に、積層体140に含まれる単セル10を詳述する。
【0030】
図5は、
図3に示される積層体を説明するための断面図、
図6は、
図5に示される正極層および負極層を説明するための断面図である。
【0031】
積層体140において積層されている単セル10は、直列接続されており、
図6に示されるように、正極集電体層20と、正極層30と、セパレーター40と、負極層50と、負極集電体層60と、が順に積層され、周辺部分がシールされることによって構成されている。
【0032】
正極集電体層20および負極集電体層60は、導電性フィラーと樹脂とを主に含む樹脂集電体から構成される。これにより、正極集電体層20および負極集電体層60の軽量化および内部短絡耐性の向上により、より高容量の活物質を使用することが可能となる。
【0033】
導電性フィラーの構成材料は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン、銀、金、銅、チタンである。樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、これらの混合物である。
【0034】
正極集電体層20および負極集電体層60は、樹脂集電体によって構成する形態に限定されず、例えば、金属や導電性高分子材料によって構成することが可能である。金属は、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅である。導電性高分子材料は、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、これらの混合物である。
【0035】
必要に応じ、正極集電体層20および負極集電体層60の一方のみを、樹脂集電体によって構成することも可能である。
【0036】
正極層30は、正極集電体層20とセパレーター40との間に位置するシート状電極であり、
図5に示されるように、正極活物質粒子32および繊維状物質38を含んでいる。
【0037】
正極活物質粒子32は、その表面の少なくとも一部に被覆層33を有する。被覆層33は、導電助剤35と被覆用樹脂34とから構成されており、正極層30の体積変化を緩和し、電極の膨脹を抑制することが可能である。
【0038】
正極活物質粒子32の構成材料は、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、導電性高分子などである。リチウムと遷移金属との複合酸化物は、例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2およびLiMn
2O
4である。遷移金属酸化物は、例えば、MnO
2およびV
2O
5である。遷移金属硫化物は、例えば、MoS
2およびTiS
2である。導電性高分子は、例えば、ポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンおよびポリカルバゾールである。
【0039】
被覆用樹脂34は、好ましくは、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂であるが、必要に応じ、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネートなどを適用することも可能である。
【0040】
導電助剤35は、例えば、金属、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン、これらの混合物である。金属は、アルミニウム、ステンレス鋼、銀、金、銅、チタン、これらの合金などである。カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラックなどである。導電助剤は、必要に応じて、2種以上併用することが可能である。なお、導電助剤35は、電気的安定性の観点から、好ましくは、銀、金、アルミニウム、ステンレス鋼、カーボンであり、より好ましくは、カーボンである。
【0041】
繊維状物質38は、その少なくとも一部が正極層30の導電通路を形成し、かつ、導電通路の周囲の正極活物質粒子32と接している。したがって、正極活物質(正極活物質粒子32)から発生した電子は、導電通路に速やかに到達し、正極集電体層20までスムーズに導かれる。
【0042】
繊維状物質38は、例えば、PAN系カーボン繊維、ピッチ系カーボン繊維等のカーボン繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、導電性繊維から構成される。
導電性繊維は、合成繊維の中に金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維などである。なお、電気伝導度の観点から、導電性繊維の中では、カーボン繊維が好ましい。
【0043】
繊維状物質38の電気伝導度は、50mS/cm以上であることが好ましい。この場合、導電通路の抵抗が小さいため、正極集電体層20から遠い位置に存在する正極活物質(正極活物質粒子32)からの電子の移動がよりスムーズに行われる。電気伝導度は、JIS R 7609(2007)の「カーボン繊維−体積抵抗率の求め方」に準じて体積抵抗率を測定し、体積抵抗率の逆数を取ることによって求められる。
【0044】
繊維状物質38の平均繊維径は、好ましくは、0.1〜20μm、より好ましくは、0.5〜2.0μmである。平均繊維径は、例えば、30μm角視野中に存在する任意の繊維10本についてそれぞれ中央付近の直径を測定し、この測定を三視野について行い、合計30本の繊維の径の平均値として得られる。
【0045】
電極の単位体積あたりに含まれる繊維状物質38の繊維長の合計は、好ましくは、10000〜50000000cm/cm
3、より好ましくは、20000000〜50000000cm/cm
3、さらに好ましくは、1000000〜10000000cm/cm
3である。
【0046】
繊維長の合計は、(活物質層の単位体積あたりに含まれる繊維状物質の繊維長合計)=((繊維状物質の平均繊維長)×(活物質層の単位面積あたりに使用した繊維状物質の重量)/(繊維状物質の比重))/((活物質層の単位面積)×(活物質層厚さ))で表わされる式によって算出される。
【0047】
負極層50は、負極集電体層60とセパレーター40との間に位置するシート状電極であり、
図5に示されるように、負極活物質粒子52および繊維状物質58を含んでいる。
【0048】
負極活物質粒子52は、その表面の少なくとも一部に被覆層53を有する。被覆層53は、導電助剤55と被覆用樹脂54とから構成されており、負極層50の体積変化を緩和し、電極の膨脹を抑制することが可能である。
【0049】
負極活物質粒子52の構成材料は、黒鉛、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体、コークス類、カーボン繊維、導電性高分子、スズ、シリコン、金属合金、リチウムと遷移金属との複合酸化物などである。高分子化合物焼成体は、例えば、フェノール樹脂およびフラン樹脂を焼成し炭素化したものである。コークス類は、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスである。導電性高分子は、例えば、ポリアセチレン、ポリピロールである。金属合金は、例えば、リチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム−マンガン合金である。リチウムと遷移金属との複合酸化物は、例えば、Li
4Ti
5O
12である。
【0050】
被覆層53、被覆用樹脂54、導電助剤55および繊維状物質58は、正極層30の被覆層33、被覆用樹脂34、導電助剤35および繊維状物質38と略同一の構成を有するため、その説明は省略される。なお、繊維状物質58は、その少なくとも一部が負極層50の導電通路を形成し、かつ、導電通路の周囲の負極活物質粒子52と接している。
【0051】
正極層30および負極層50は、上記構造により、150〜1500μmの厚さを有することが可能となっている。これにより、多くの活物質を含ませることが可能となり、高容量化およびエネルギー密度向上が図られる。なお、正極層30の厚さおよび負極層50の厚さは、好ましくは、200〜950μm、さらに好ましくは250〜900μmである。
【0052】
セパレーター40は、正極層30と負極層50との間に位置する多孔性(ポーラス)の絶縁体である。セパレーター40は、電解質が浸透することによって、イオンの透過性および電気伝導性を呈する。電解質は、例えば、ゲルポリマー系であり、電解液およびホストポリマーを有する。
【0053】
電解液は、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートからなる有機溶媒、支持塩としてのリチウム塩(LiPF
6)を含んでいる。有機溶媒は、その他の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を適用することが可能である。リチウム塩は、その他の無機酸陰イオン塩、LiCF
3SO
3等の有機酸陰イオン塩を、適用することが可能である。
【0054】
ホストポリマーは、HFP(ヘキサフルオロプロピレン)コポリマーを10%含むPVDF−HFP(ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)である。
ホストポリマーは、その他のリチウムイオン伝導性を持たない高分子や、イオン伝導性を有する高分子(固体高分子電解質)を適用することも可能である。その他のリチウムイオン伝導性を持たない高分子は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートである。イオン伝導性を有する高分子は、例えば、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドである。
【0055】
次に、実施の形態1に係る変形例1〜8を順次説明する。
【0056】
図7は、実施の形態1に係る変形例1を説明するための断面図である。
【0057】
第1蓋部材170は、第1カバープレート176と、セルケース120の側壁部124の上方端面125とによって挟まれ、固定されることで、セルケース120の第1開口部126を密閉している。そのため、
図7に示されるように、第1蓋部材170が密着するセルケース120の側壁部124の上方端面125を、階段状に構成することが好ましい。この場合、良好な気密を達成することが可能である。
【0058】
図8は、実施の形態1に係る変形例2を説明するための断面図である。
【0059】
積層体140は、実際の使用において、単セル10の積層方向Sと直交する横方向Lの加振や振動を受ける虞がある。そのため、
図8に示されるように、横方向Lに突出しているストッパー129を、セルケース120の側壁部124に配置し、横方向Lに関する積層体140の移動を制止することが好ましい。例えば、ストッパー129は、積層体140の上面142と当接している第1蓋部材170の部位の近傍に位置するように配置される。
【0060】
図9および
図10は、実施の形態1に係る変形例3および変形例4を説明するための断面図である。
【0061】
第1蓋部材170は、単一の弾性体膜から構成される形態に限定されず、弾性体膜の表面あるいは内部に、水蒸気等のガスの透過を抑制するガスバリヤー性の金属層を有する多層構造とすることも可能である。
【0062】
例えば、
図9に示されるように、弾性体膜171の一方の面に金属層172を被覆したり、
図10に示されるように、金属層172の両側に弾性体膜171に配置したりすることが可能である。金属層172は、例えば、多少の伸縮に追随できるように構成されたアルミニウムから構成される。なお、弾性体膜171の両方の面に、金属層172を被覆することも可能である。
【0063】
図11は、実施の形態1に係る変形例5を説明するための断面図である。
【0064】
強電タブ150,152は、
図11に示されるように、弾性層153と、弾性層153の一方の面に配置される支持層154と、から構成される2層構造を有すことが好ましい。この場合、弾性層153は、単セル10の表面形状に追従して変形する弾力性を有し、かつ、積層された単セル10に相対するように位置決めされる。したがって、弾性層153は、最上層に位置する(当接する)単セル10との接触抵抗を低減することが可能である。一方、支持層154は、例えば、略板状の銅からなり、強電タブ150,152として必要とされる強度および剛性を確保しており、支持層154の強度および剛性は、弾性層153の強度および剛性より大きい。
【0065】
弾性層153は、例えば、導電布153A、導電ウレタンフォーム153Bおよび導電不織布153Cを有する。導電布153Aは、支持層154に相対しており、支持層154と密着性を考慮して選択される。導電不織布153Cは、単セル10に相対しており、単セル10と密着性を考慮して選択される。導電ウレタンフォーム153Bは、導電布153Aと導電不織布153Cとの間に位置しており、単セル10の表面形状(凹凸)に追従して変形することを考慮して選択される。
【0066】
図12は、実施の形態1に係る変形例6を説明するための断面図である。
【0067】
図12に示されるように、積層体140を、積層方向Sに関して複数のブロック141A,141Bに分割し、かつ、隣接するブロック間に、導電性の弾性部材146を配置することが、好ましい。この場合、弾性部材146は、略板状であり、ブロック141A,141Bの最上層に位置する単セル10の表面形状に追従して変形する弾力性を有しており、積層体140内部の接触抵抗を低減することが可能である。積層体140の分割数は、特に限定されず、例えば、単セル10の積層数や単セル10(電極)の面積などを考慮し、適宜設定される。
【0068】
図13は、実施の形態1に係る変形例7を説明するための断面図である。
【0069】
図13に示されるように、隣接する単セル10間に、導電層70を配置することが、好ましい。この場合、単セル10間の接触抵抗を低減することが可能である。
【0070】
図14は、実施の形態1に係る変形例8を説明するための断面図である。
【0071】
積層体140の上面(一方の面)142に対してのみ、大気圧(外部圧力)とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を付与する形態に限定されず、積層体140の下面(他方の面)144に対しても、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を付与することが可能である。
【0072】
この場合、本体部110は、
図14に示されるように、可撓性を有する材料から形成された第2蓋部材173、および第2カバープレート177をさらに有し、セルケース120は、底面122の代わりに第2開口部127を有する。
【0073】
第2開口部127は、積層体140の下面(他方の面)144に相対するように位置決めされており、第2蓋部材173によって密閉される。第2蓋部材173は、第2開口部127を密閉したまま変形可能であり、減圧装置190によってセルケース120の内部が減圧された(セルケース120の内部圧力が大気圧よりも低い)場合に変形し、スペーサー162と当接して差圧を付与する。つまり、第2蓋部材173は、積層体140の下面144と当接して差圧に基づく圧力を、当接した面に付与するように構成されている。
第2カバープレート177は、開口部179を有しており、第2蓋部材173を覆うように配置されて、第2蓋部材173をガードする。
【0074】
以上のように実施の形態1においては、セルケースの内部を減圧する(セルケースの内部圧力を外部圧力(大気圧)よりも低くする)ことにより、外部圧力とセルケースの内部圧力との差圧に基づく圧力が、密閉を維持した状態で変形した第1蓋部材によって、単セルが積層されている積層体の一方の面に付与される。つまり、単セルが積層されている積層体の押し付け圧力は、差圧に基づく圧力から構成されており、例えば、セルケースの内部を減圧する減圧装置(圧力付与装置)の大型化を伴うことなく、単セル(電極)の面積の増加に応じてトータルの押し付け圧力も増大する。したがって、電極の面積が大きい場合であっても、単セルが積層されている積層体に適切な押し付け圧力を容易に付与することが可能である電池パックを提供することが可能である。
【0075】
積層体の他方の面に、第2蓋部材によって差圧に基づく圧力を付与する場合、積層体の他方の面に相対するセルケースの部位(底面)を省略することが可能である。
【0076】
第1蓋部材は、弾性体膜から形成することによって、単純な構成で具現することが可能である。
【0077】
弾性体膜は、その表面あるいは内部に、金属層を有する場合、ガスバリヤー性を向上させることが可能である。
【0078】
単セルの積層方向と直交する横方向に関し、積層体の移動を制止するストッパーを設ける場合、電池パックが横方向の加振や振動を受けた場合において、積層体に対する影響を抑制することが可能である。
【0079】
圧力センサーによって計測された内部圧力が、差圧を考慮して設定される上限値以上になった場合、減圧装置によってセルケースの内部を減圧することによって、セルケースの内部圧力の予期せぬ上昇が防止される一方、良好な押し付け圧力(差圧に基づく圧力)が確保される。
【0080】
内部圧力の上限値が、0.25気圧である場合、十分な押し付け圧力を得ることが可能である。
【0081】
内部圧力が、0.15気圧に設定されている下限値に到達した場合、セルケースの内部の減圧を停止するように構成する場合、内部圧力は、多目的で利用される真空度と同レベルのため、電池パックが搭載される装置において別の用途で利用される減圧装置(真空源)を、電池パックの減圧装置として兼用することが可能である。
【0082】
強電タブを、単セルの表面形状に追従して変形する弾力性を有する弾性層と、弾性層の強度および剛性より大きい強度および剛性を有する支持層と、から構成する場合、強電タブと単セルとの接触抵抗を低減することが可能である。
【0083】
セルケースの内部圧力を降下させる圧力解放弁を設ける場合、予期せぬ原因によるセルケースの内部圧力の過度の上昇を抑制することが可能である。
【0084】
積層体を、積層方向に関して複数のブロックに分割し、隣接するブロック間に、ブロックの表面形状に追従して変形する弾力性を有する略板状の弾性部材を配置する場合、積層体内部の接触抵抗を低減することが可能である。
【0085】
正極層の厚さおよび負極層の厚さを150μm以上とする場合、単セルの高容量化およびエネルギー密度向上を図ることが可能である。
【0086】
繊維状物質は、カーボン繊維である場合、良好な電気伝導度を得ることが可能である。
【0087】
隣接する単セルの間に配置される導電層を有する場合、単セルの間の接触抵抗を低減することが可能である。
【0088】
正極集電体層および/又は記負極集電体層が、導電性フィラーと樹脂とを主に含む樹脂集電体である場合、集電体層の軽量化および内部短絡耐性の向上により、より高容量の活物質を使用することが可能となる。
【0089】
電池パックは、電極の面積が大きい場合であっても、単セルが積層されている積層体に適切な押し付け圧力を容易に付与することが可能であり、単セルの電極の面積を増加させて、高エネルギー密度化することが容易であるため、車両の電源として使用する場合、例えば、1回の充電あたりの走行距離を延長させることが可能である。
【0091】
図15は、実施の形態2に係る電池パックを説明するための断面図、
図16は、
図15に示される第1蓋部材の減圧前の形状を説明するための平面図である。
【0092】
セルケース120の内部が減圧された(セルケース120の内部圧力を大気圧(外部圧力)よりも低くする)場合、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づいて、密閉を維持した状態で変形し、積層体140の一方の面と当接して差圧に基づく圧力を、当接した面に付与するように構成される第1蓋部材は、弾性体膜から形成される第1蓋部材170によって具現される形態に限定されない。例えば、
図15および
図16に示される第1蓋部材180を適用することが可能であり、この場合も、単純な構成で具現される。なお、実施の形態2は、第1蓋部材180を除いて実施の形態1の場合と略同一であるため、他の構成の説明は適宜省略する。
【0093】
第1蓋部材180は、平板状部181および伸縮自在部182を有する。平板状部181は、積層体140の上面(一方の面)142と略一致する形状を有する。伸縮自在部182は、平板状部181の外周を取り囲んでおり、セルケース120の内部が減圧された場合、伸張することにより、平板状部181が積層体140の上面142と当接して差圧に基づく圧力を、当接した面に付与するように構成されている。
【0094】
伸縮自在部182は、蛇腹構造を有する。この場合、伸縮自在部182を単純な構造で具現することが可能である。
【0095】
次に、実施の形態2に係る変形例1〜3を順次説明する。
【0096】
図17は、実施の形態2に係る変形例1を説明するための断面図である。
【0097】
第1蓋部材180の伸縮自在部182は、第1カバープレート176と、セルケース120の側壁部124の上方端面125とによって挟まれ、固定されることで、セルケース120の第1開口部126を密閉している。そのため、実施の形態1に係る変形例1(
図7)の場合と同様に、
図17に示されるように、伸縮自在部182の端部が密着するセルケース120の側壁部124の上方端面125を、階段状に構成することが好ましい。
【0098】
図18は、実施の形態2に係る変形例2を説明するための断面図である。
【0099】
図18に示されるように、実施の形態1に係る変形例2(
図8)の場合と同様に、横方向Lに突出しているストッパー129を、セルケース120の側壁部124に配置し、横方向Lに関する積層体140の移動を制止することが好ましい。
【0100】
図19は、実施の形態2に係る変形例3を説明するための断面図である。
【0101】
実施の形態2においても、実施の形態1に係る変形例8(
図14)の場合と同様に、積層体140の下面(他方の面)144に対しても、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を付与することが可能である。
【0102】
この場合、本体部110は、
図19に示されるように、第2蓋部材183および第2カバープレート177を、さらに有する。第2蓋部材183は、平板状部184および伸縮自在部185を有しており、セルケース120の内部が減圧された場合、伸縮自在部185が伸張することにより、平板状部184が積層体140の下面(他方の面)144と当接して差圧に基づく圧力を付与することとなる。
【0103】
以上のように、実施の形態2においては、平板状部および伸縮自在部を有する単純な構造の第1蓋部材によって、外部圧力(大気圧)とセルケースの内部圧力との差圧に基づく圧力が、単セルが積層されている積層体の一方の面に付与されるため、例えば、セルケースの内部を減圧してセルケースの内部圧力を外部圧力よりも低くする減圧装置(圧力付与装置)の大型化を伴うことなく、単セル(電極)の面積の増加に応じてトータルの押し付け圧力も増大する。したがって、実施の形態2においても、電極の面積が大きい場合であっても、単セルが積層されている積層体に適切な押し付け圧力を容易に付与することが可能である電池パックを提供することが可能である。
【0104】
また、伸縮自在部は、蛇腹構造を有するため、伸縮自在部を単純な構造で具現することが可能である。
【0106】
図20Aは、実施の形態3に係る電池パックを説明するための断面図である。
図20Aにおいては、差圧によって第1蓋部材が変形した状態を示している。
図20Bは、第1蓋部材が積層体と当接する範囲と、単セルのうち発電に寄与する部分との関係を、単セルを積層方向から平面視した状態において模式的に示す図である。
図21は、積層体に含まれる単セルの周辺部分がシールされた状態を示す断面図である。
【0107】
セルケース120の内部が減圧された(セルケース120の内部圧力を大気圧(外部圧力)よりも低くする)場合、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づいて、密閉を維持した状態で変形し、積層体140の一方の面142と当接して差圧に基づく圧力を、当接した面に付与するように構成される第1蓋部材は、弾性体膜から形成される第1蓋部材170によって具現される形態(実施の形態1)、平板状部181および伸縮自在部182を有する第1蓋部材180によって具現される形態(実施の形態2)に限定されない。例えば、
図20Aに示される第1蓋部材200を適用することが可能であり、この場合も、単純な構成で具現される。実施の形態3では、積層体140は、積層されている単セル10、強電タブ150,152を有しているが、スペーサー160,162を配置していない。スペーサー160,162を廃止することによって、電池パック100の高さ寸法を小さくすることができる。なお、実施の形態3は、第1蓋部材200、スペーサー160,162を除いて実施の形態1、2の場合と略同一であるため、他の構成の説明は省略する。
【0108】
第1蓋部材200は、単層の金属プレートから形成されている。この第1蓋部材200は、セルケース120の内部圧力がセルケース120の外部圧力よりも低い場合に弾性変形し、積層体140の一方の面142と当接して差圧に基づく圧力を、当接した面に付与する。単層の金属プレートから形成することによって、第1蓋部材200を単純な構造で具現することが可能である。
【0109】
図21に示すように、実施の形態3に係る単セル10は、外周部分をシールするシール部80を有している。単セル10は、直列接続されており、正極集電体層20と、正極層30と、セパレーター40と、負極層50と、負極集電体層60と、が順に積層されている。正極層30および負極層50の周辺部分は、シール部80によってシールされている。なお、実施の形態3の単セル10は、シール部80を除いて実施の形態1の単セル10と略同一であるため、他の構成の説明は適宜省略する。
【0110】
シール部80は、正極層30および負極層50の周囲をそれぞれ取り囲むように配置されている。シール部80の形成材料は、絶縁性、シール性、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。シール部80は、例えば、熱可塑性樹脂からなる。具体的には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられ得る。
【0111】
積層された単セル10のうち発電に寄与する部分は、
図21において符号81によって示されるように、シール部80が配置された周辺部よりも内側の範囲である。「積層された単セル10のうち発電に寄与する部分」を、以下単に、発電領域81ともいう。
【0112】
図20Aにおいて、符号cは、セルケース120の内面と積層体140の側面との間のクリアランスを示している。符号s1は、積層体140の側面からのシール部80の長さ、換言すれば、積層された単セル10のうち発電に寄与しない部分の長さを示している。符号Rは、R=c+s1であり、セルケース120の内面から発電領域81が始まる位置までの長さを示している。符号Stは、第1蓋部材200が、セルケース120の内部圧力がセルケース120の外部圧力と同じである場合の状態から、減圧によって積層体140の一方の面142と当接する状態となるまでの、単セル10の積層方向に沿う第1蓋部材200の変形量を示している。「単セル10の積層方向に沿う第1蓋部材200の変形量」を、以下、ストローク寸法ともいう。符号Prは、第1蓋部材200が積層体140の一方の面142に当接し始める部位を示している。符号rは、セルケース120の内面からPrまでの水平長さを示している。
【0113】
図20Aおよび
図20Bを参照して、第1蓋部材200が積層体140と当接する範囲と、発電領域81との関係を説明する。
図20Bにおいては、第1蓋部材200が積層体140に当接し始める部位Prを二点鎖線によって示し、発電領域81を破線によって示している。
【0114】
図20Bに示すように、第1蓋部材200は、単セル10を積層方向から平面視した状態において、発電領域81よりも大きい範囲において、積層体140の一方の面142と当接する。実施の形態3の単セル10は、外周部分をシールするシール部80を有し、シール部80よりも内側が発電領域81である。したがって、第1蓋部材200は、シール部80の少なくとも一部および発電領域81において、積層体140の一方の面142と当接している。
【0115】
発電領域81に、第1蓋部材200が当接している部分と当接していない部分とが存在すると、両者の間では抵抗値が異なるのに起因して、出力電圧値が異なる。その結果、単セル10の局所的な劣化が生じてしまう。
図20Aに示すように、符号R(セルケース120の内面から発電領域81が始まる位置までの長さ)の範囲内において、第1蓋部材200が積層体140の一方の面142に当接しているため(R≧r)、第1蓋部材200は、発電領域81に相当する部分を全面にわたって平坦に加圧することができる(均等加圧特性)。したがって、単セル10の局所的な劣化を抑えることができる。
【0116】
第1蓋部材200は、発電領域81に相当する部分を平坦に加圧することができる均等加圧特性を満足したうえで、ストローク寸法Stが大きいことが好ましい。ストローク寸法を大きく設定できることは、積層体140の高さ寸法の公差の吸収代が大きいことを意味し、ひいては、単セル10の厚み寸法の公差の吸収代が大きいことを意味する。単セル10の厚み寸法の公差の吸収代が大きくなることによって、単セル10を製造するときの寸法管理が比較的緩やかになる。これによって、製造が比較的容易になり、製品歩留まりの向上に寄与できる。
【0117】
図示を省略するが、実施の形態1、2と同様に、実施の形態3も改変できる。たとえば、実施の形態1に係る変形例1(
図7)の場合、および実施の形態2に係る変形例1(
図17)の場合と同様に、単層の金属プレートから形成された第1蓋部材200の端部が密着するセルケース120の側壁部124の上方端面125を、階段状に構成することが好ましい。
【0118】
また、実施の形態1に係る変形例2(
図8)の場合、および実施の形態2に係る変形例2(
図18)の場合と同様に、横方向Lに突出しているストッパー129を、セルケース120の側壁部124に配置し、横方向Lに関する積層体140の移動を制止することが好ましい。
【0119】
また、実施の形態1に係る変形例8(
図14)の場合、および実施の形態2に係る変形例3(
図19)の場合と同様に、積層体140の下面(他方の面)144に対しても、大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を付与することが可能である。
【0120】
この場合、本体部110は、第2蓋部材および第2カバープレート177を、さらに有する(
図14、
図19を参照)。第2蓋部材は、第1蓋部材200と同様に、単層の金属プレートから形成されている。この第2蓋部材は、セルケース120の内部圧力がセルケース120の外部圧力よりも低い場合に弾性変形し、積層体140の下面(他方の面)144と当接して差圧に基づく圧力を付与することとなる。
【0121】
以上のように、実施の形態3においては、単層の金属プレートから形成された単純な構造の第1蓋部材によって、外部圧力(大気圧)とセルケースの内部圧力との差圧に基づく圧力が、単セルが積層されている積層体の一方の面に付与されるため、例えば、セルケースの内部を減圧してセルケースの内部圧力を外部圧力よりも低くする減圧装置(圧力付与装置)の大型化を伴うことなく、単セル(電極)の面積の増加に応じてトータルの押し付け圧力も増大する。したがって、実施の形態3においても、電極の面積が大きい場合であっても、単セルが積層されている積層体に適切な押し付け圧力を容易に付与することが可能である電池パックを提供することが可能である。
【0122】
また、第1蓋部材は、単セルを積層方向から平面視した状態において、積層された単セルのうち発電に寄与する部分よりも大きい範囲において、積層体の一方の面と当接する。このように構成することによって、発電に寄与する部分を全面にわたって平坦に加圧することができ、単セルに局所的な劣化が生じることを抑制できる。
【0123】
単セルは、外周部分をシールするシール部を有し、シール部よりも内側が発電に寄与する部分である。第1蓋部材は、シール部の少なくとも一部および発電に寄与する部分において、積層体の一方の面と当接する。このように構成することによって、シール部を有する単セルの場合において、発電に寄与する部分を全面にわたって平坦に加圧することができ、単セルに局所的な劣化が生じることを抑制できる。
【0124】
なお、実施の形態1、2に関する
図3および
図15に明らかに示されるように、第1蓋部材170、180は、積層体140の端部から、一方の面142と当接する。したがって、実施の形態1、2の第1蓋部材170、180も、単セルを積層方向から平面視した状態において、積層された単セルのうち発電に寄与する部分よりも大きい範囲において、積層体140の一方の面142と当接している。このため、実施の形態1、2においても、発電に寄与する部分を全面にわたって平坦に加圧することができ、単セルに局所的な劣化が生じることを抑制できる。
【0125】
次に、第1蓋部材の材質や肉厚の選択について説明する。
【0126】
第1蓋部材の材質や肉厚を選択する場合には、まず、圧力リーク量が少なく、差圧を維持する真空保持性に優れていることを考慮する必要である。さらに、上述したように、第1蓋部材は、発電領域に相当する部分を平坦に加圧することができる均等加圧特性を満足したうえで、ストローク寸法を大きく設定できることを考慮する必要がある。
【0127】
第1蓋部材の材質や肉厚を選択するために行った実験を説明する。
【0128】
図22は、第1蓋部材の材質や肉厚を選択するために行った実験装置を示す概略構成図である。
【0129】
実験装置210は、収容空間211を有する箱形状の下ケース212と、下ケース212の上部に固定される枠形状の上ケース213と、下ケース212の収容空間211に収容されるプレート体214とを有する。第1蓋部材用のテストピース215は、その周囲が下ケース212と上ケース213との間に挟持され固定される。下ケース212の側壁に、排気用コネクタ216が気密的に取り付けられている。排気用コネクタ216は真空ポンプ217に接続されている。真空ポンプ217は、下ケース212の内部の空気を排気して、下ケース212の内部を減圧にする。下ケース212は、セルケース120を模したものであり、収容空間211の寸法(図中左右方向の長さ寸法L1、紙面に直交する方向の幅寸法)は、セルケース120の寸法と同じである。プレート体214の長さおよび幅は、積層体140の寸法と同じである。プレート体214は、複数のアクリルプレートを積層することによって形成されている。プレート体214は、アクリルプレートの積層枚数を変えることによって、高さ寸法を変えることができる。プレート体214の高さは、下ケース212の高さと同じ高さから、所定寸法低くすることができる。つまり、アクリルプレートの積層枚数を変えることによって、減圧時におけるテストピース215の変形量であるストローク寸法を設定することができる。ストローク寸法は、0.5mmから10mmまで、0.5mmピッチにて設定可能である。
【0130】
図22において、符号cは、セルケース120の内面と積層体140の側面との間のクリアランスに相当し、5mmに設定した。符号s1は、積層体140の側面からのシール部80の長さ、換言すれば、積層された単セル10のうち発電に寄与しない部分の長さに相当し、10mmに設定した。符号Rは、R=c+sであり、セルケース120の内面から発電領域81が始まる位置までの長さに相当し、R=15mmに設定した。符号Stは、減圧時におけるテストピース215の変形量であるストローク寸法を示している。符号Prは、テストピース215がプレート体214の上面に当接し始める部位を示している。符号rは、下ケース212の内側面からPrまでの水平長さを示している。
【0131】
以下の表1に示すように、第1蓋部材用のテストピース215として、単層の金属プレートから形成したテストピース215(実施の形態3の
図20Aを参照)、および多層構造を有する弾性体膜から形成したテストピース215を準備した(実施の形態1の変形例4の
図10を参照)。
【0132】
単層の金属プレートから形成したテストピース215として、具体的に、引張り強さが520N/mm
2のステンレス鋼(SUS304)から形成した肉厚が0.3mmのテストピース215、引張り強さが110N/mm
2のアルミニウム材(A1050−H24)から形成した肉厚が0.1mm、0.15mm、0.2mmのテストピース215を準備した。
【0133】
多層構造を有する弾性体膜から形成したテストピース215として、基材の両側に弾性体層を配置したラミネート材を準備した。基材は、引張り強さが110N/mm
2のアルミニウム材から形成されており、弾性体層は、PET、ナイロン、PP材から形成されている。ラミネート材の全体として、引張り強さが70N/mm
2、肉厚が0.18mmのテストピース215を準備した。
【0134】
上述したように、単セル10の局所的な劣化を抑えるためには、
図22の符号R(セルケース120の内面から発電領域81が始まる位置までの長さ)の範囲内において、第1蓋部材が積層体140の一方の面142に当接することが必要である。そして、単セル10の厚み寸法の公差の吸収代を大きくするために、均等加圧特性を満足した条件のもとで、ストローク寸法の最大値が大きいことが好ましい。
【0135】
テストピース215の真空保持性、および均等加圧特性を満足した条件のもとでのストローク寸法の最大値は、次のようにして試験した。
【0136】
まず、ストローク寸法を0.5mmに設定したプレート体214を下ケース212に収容し、テストピース215を固定した後、下ケース212の内部を−90kPa Gaugeまで減圧する。その状態を5分間維持し、圧力リーク量(kPa/min)を測定する。下ケース212の内側面からPrまでの水平長さrをスケールを用いて計測する。テストピース215がプレート体214の上面に当接している範囲については、テストピース215がプレート体214の上面に当接していることを確認した。
【0137】
圧力リーク量がしきい値0.06kPa/min未満の場合には、真空保持性を「OK」とした。しきい値以上の場合には、リークが発生したと判断し、真空保持性を「NG」とした。計測した水平長さrがR(=15mm)以下の場合には、均等加圧特性を「OK」とした。計測した水平長さrがR(=15mm)を越える場合には、均等加圧特性を「NG」とした。
【0138】
真空保持性または均等加圧特性が「OK」であれば、下ケース212の内部を大気圧に開放し、ストローク寸法を1mmに設定(0.5mm増加)したプレート体214を下ケース212に収容し、テストピース215を固定した後、下ケース212の内部を−90kPa Gaugeまで減圧する。その状態を5分間維持し、上記しきい値に基づいて真空保持性の良否を判定した。水平長さrをスケールを用いて計測し、上記のRの値に基づいて均等加圧特性の良否を判定した。
【0139】
真空保持性が「NG」となるまで、ストローク寸法を0.5mmずつ増やしながら、真空保持性についての試験を繰り返した。これと同時に、均等加圧特性が「NG」となるまで、均等加圧特性についての試験を繰り返した。表1には、真空保持性が「NG」となったときのストローク寸法を記載した。また、表1には、均等加圧特性を満足した条件のもとでのストローク寸法の最大値を記載した。
【0141】
製品条件として、たとえば、真空保持性については「ストローク寸法が少なくとも6mmにおいて真空保持性が「OK」であること」が要求され、均等加圧特性を満足した条件のもとでのストローク寸法の最大値については「1mmを超えること」が要求される。
【0142】
ストローク寸法の最大値が1mmを超える場合には、単セル10の厚み寸法の公差の吸収代が大きく、単セル10の製造が比較的容易になり、製品歩留まりの向上に寄与できる。一方、ストローク寸法の最大値が1mm以下の場合には、単セル10の厚み寸法の公差の吸収代が小さすぎるため、単セル10の製造の容易化や製品歩留まりの向上を図ることができなくなる。また、ストローク寸法が少なくとも6mmにおいて真空保持性が「OK」である場合には、気密性を比較的長期にわたって維持することができる。ストローク寸法が6mmにおいて真空保持性が「NG」である場合には、減圧操作の頻度が多くなるため好ましくない。
【0143】
表1における総合判定の欄の「○」は、真空保持性、および均等加圧特性を満足した条件のもとでのストローク寸法の最大値がともに製品条件を満たすことを示している。総合判定の欄の「×」は、真空保持性、および均等加圧特性を満足した条件のもとでのストローク寸法の最大値の少なくとも一方が製品条件を満たしていないことを示している。
【0144】
表1に示した結果を参照して、第1蓋部材を単層の金属プレートから形成する場合には(実施の形態3の
図20Aを参照)、引張り強さが110N/mm
2のアルミニウム材(A1050−H24)から形成されており、肉厚が0.15mmから0.2mmを選定できることがわかった。
【0145】
上記の単層の金属プレートから形成した第1蓋部材によれば、まず、圧力リーク量が少なく、差圧を維持する真空保持性に優れている。これによって、外部圧力とセルケースの内部圧力との差圧による第1蓋部材の弾性変形を安定して維持することができる。さらに、均等加圧特性を満足した条件のもとでのストローク寸法を大きくとることができる。これによって、単セル10の厚み寸法の公差の吸収代が大きくなり、単セル10を製造するときの寸法管理が比較的緩やかになる。この結果、製造が比較的容易になり、製品歩留まりの向上に寄与できる。
【0146】
また、第1蓋部材を多層構造を有する弾性体膜から形成する場合には(実施の形態1の変形例4の
図10を参照)、弾性体膜は、基材の両側に弾性体層を配置したラミネート材であって、引張り強さが70N/mm
2、肉厚が0.18mmであるラミネート材を選定できることがわかった。
【0147】
上記のラミネート材から形成した第1蓋部材によれば、上述したのと同様に、外部圧力とセルケースの内部圧力との差圧による第1蓋部材の弾性変形を安定して維持することができる。さらに、単セル10の厚み寸法の公差の吸収代が大きくなり、製造が比較的容易になり、製品歩留まりの向上に寄与できる。
【0148】
以上説明したように、第1蓋部材は、セルケースの内部圧力がセルケースの外部圧力と同じである場合の状態から、積層方向に少なくとも1mmを超えて変形した状態において、積層体の一方の面と当接することが好ましい。このように構成することによって、第1蓋部材は、発電領域81に相当する部分を全面にわたって平坦に加圧する条件を満たしながら、単セル10の積層方向に沿う変形量(ストローク寸法)を大きくとることができる。これによって、単セル10の厚み寸法の公差の吸収代が大きくなり、単セル10を製造するときの寸法管理が比較的緩やかになる。この結果、製造が比較的容易になり、製品歩留まりの向上に寄与できる。
【0149】
第1蓋部材は、引張り強さが70〜110N/mm
2、肉厚が0.15〜0.2mmであることが好ましい。このように構成した第1蓋部材によれば、まず、圧力リーク量が少なく、差圧を維持する真空保持性に優れている。これによって、外部圧力とセルケースの内部圧力との差圧による第1蓋部材の弾性変形を安定して維持することができる。さらに、発電領域81に相当する部分を全面にわたって平坦に加圧する条件を満たしながら、単セル10の積層方向に沿う変形量(ストローク寸法)を大きくとることができる。これによって、単セル10の厚み寸法の公差の吸収代が大きくなり、単セル10を製造するときの寸法管理が比較的緩やかになる。この結果、製造が比較的容易になり、製品歩留まりの向上に寄与できる。
【0151】
図23は、実施の形態4に係る電池パックを説明するための断面図である。
図23においては、差圧によって第1蓋部材が変形した状態を示している。
【0152】
外部圧力としての大気圧とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を、積層体140に付与する形態に限定されない。大気圧よりも高い外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を、積層体140に付与することが可能である。
【0153】
この場合、第1カバープレートに代えて、封止プレート220が第1蓋部材200を覆うように配置されている。封止プレート220は、例えば、アルミニウム等の良好な剛性を有する軽量の材料から構成される。封止プレート220および第1蓋部材200は、ビス等の締結部材を利用してセルケース120に固定されている。締結部材は、電池パック100を車両198に搭載するために使用される締結部材として兼用することも可能である。なお、実施の形態4は、封止プレート220を除いて実施の形態3の場合と略同一であるため、他の構成の説明は省略する。
【0154】
封止プレート220と第1蓋部材200との間の空間221は密閉されている。封止プレート220に、給気用コネクタ222が気密的に取り付けられている。給気用コネクタ222は、大気圧よりも高い圧力の空気を吐出するポンプ223に接続されている。封止プレート220と第1蓋部材200との間の空間221にポンプ223から給気することによって、第1蓋部材200には、大気圧よりも高い外部圧力が作用する。したがって、第1蓋部材200は、大気圧よりも高い外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を、積層体140に付与することができる。
【0155】
図示を省略するが、実施の形態1に係る変形例8(
図14)の場合、および実施の形態2に係る変形例3(
図19)の場合と同様に、積層体140の下面(他方の面)144に対しても、大気圧よりも高い外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧に基づく圧力を付与することが可能である。
【0156】
この場合、本体部110は、第2蓋部材および封止プレート220を、さらに有する。第2蓋部材は、第1蓋部材200と同様に、単層の金属プレートから形成されている。封止プレート220と第2蓋部材との間の空間にポンプ223から給気することによって、第2蓋部材には、大気圧よりも高い外部圧力が作用する。したがって、第2蓋部材は、大気圧よりも高い外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧によって弾性変形し、積層体140の下面(他方の面)144と当接して差圧に基づく圧力を付与することとなる。
【0157】
以上のように、実施の形態4においては、大気圧よりも高い外部圧力を給気し、セルケースの内部を減圧する(セルケースの内部圧力を大気圧よりも低くする)ことにより、大気圧よりも高い外部圧力とセルケースの内部圧力との差圧に基づく圧力が、密閉を維持した状態で変形した第1蓋部材によって、単セルが積層されている積層体の一方の面に付与される。つまり、単セルが積層されている積層体の押し付け圧力は、差圧に基づく圧力から構成されており、単セル(電極)の面積の増加に応じてトータルの押し付け圧力も増大する。したがって、電極の面積が大きい場合であっても、単セルが積層されている積層体に適切な押し付け圧力を容易に付与することが可能である電池パックを提供することが可能である。
【0158】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、実施の形態1に係る変形例1〜8を適宜組み合わせて、実施の形態1に適用したり、実施の形態2に係る変形例1〜3および実施の形態1に係る変形例3〜7を適宜組み合わせて、実施の形態2に適用したりすることも可能である。また、実施の形態1〜4、および実施の形態1〜4に係る変形例を適宜組み合わせた実施の形態とすることも可能である。
本体部110は、剛性を有する材料から形成されたセルケース120、可撓性を有する材料から形成された第1蓋部材170、および第1カバープレート176を有する。本明細書において、「剛性を有する材料から形成されたセルケース120」とは、セルケース120に外部から力が作用した場合に、セルケース120が容易に変形せず、内部に配置した積層体140を十分に保護できる程度に、セルケース120が剛体であることを意味する。また、「可撓性を有する材料から形成された第1蓋部材170」とは、セルケース120の内部を減圧
(セルケース120の内部圧力を外部圧力(少なくとも大気圧)よりも低くする)ことにより、外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧によって第1蓋部材が変形できる程度に、第1蓋部材170が柔軟性を有していることを意味する。後述する第2蓋部材についても同様に、「可撓性を有する材料から形成された第2蓋部材173」とは、セルケース120の内部を減圧
(セルケース120の内部圧力を外部圧力(少なくとも大気圧)よりも低くする)ことにより、外部圧力とセルケース120の内部圧力との差圧によって第2蓋部材が変形できる程度に、第2蓋部材173が柔軟性を有していることを意味する。